【発明の詳細な説明】
ジアステレオマーエステルの蒸留分離を含むラセミ体α−アリール
プロピオン酸の光学的に純粋なα−アリールプロピオン酸への転化 発明の分野
この発明は、α−アリールプロピオン酸類(プロフェン類ともいう)に関し、
より特定的には、ラセミ体プロフェン類の光学的に純粋なプロフェン類への転化
に関する。背景
プロフェン類は、多様に置換された芳香族基を有するα−アリールプロピオン
酸類からなる非ステロイド系抗炎症剤の構成部類である。イブプロフェン(2−
〔4'−イソブチルフェニル〕プロピオン酸)、つまり式1、及びナプロキセン
(2−〔6'−メトキシ−2'−ナフチル〕プロピオン酸)、つまり式2は、この
部類の最も知られた構成要素である。
プロフェン類は、芳香環に対してα位にキラル中心を含有する。ナプロキセン
及びそのナトリウム塩は、現在、鏡像体的に純粋な形態で販売されている。イブ
プロフェン並びにケトプロフェンやフルルビプロフェンのような他のプロフェン
類は、ラセミ体として販売されている。多数の企業が、商業的に適する条件下で
キラルな又は鏡像体的に豊富化されたプロフェン類を製造する方法を研究してき
た。一般に、キラルなプロフェン類又はアリールプロピオン酸類は、ジアステレ
オマー塩分割、化学的及び速度論的分割、優先的結晶化、キラルな助剤を用いる
不斉合成、及びキラルな触媒を用いる不斉合成のような技術を介して単離される
。
これら技術は、しばしば、労力を要しかつ溶媒を必要とする。
イブプロフェン(式1)は、周知の非ステロイド系抗炎症(NSAI)剤であ
って、S-(+)及びR-(−)−鏡像体のラセミ混合物である。S-(+)−異性体が
薬学的に活性な形態であることが研究により示された。ヒトの体内で、R-(−)
−異性体は、S-(+)−異性体に転化されもする。Avgerinos ら,Chirality,Vo
l.2,249(1990)。その結果として、光学的に純粋なS-(+)−イブプロフェンの
商業化に興味が高まっている。
最近、ラセミ混合物からS-(+)−異性体を単離する試みがなされている。米
国特許第5,015,764号(譲受人:Ethyl Corp.)は、ラセミ体イブプロフ
ェンをジアステレオマー塩の混合物に転化する方法を開示している。それら2種
の異性体塩は分別結晶化によって分離される。米国特許第4,994,604号(
譲受人:Merck & Co.)は、ラセミ体イブプロフェンの分割にS−リシンを用い
ている。酵素的分割及びクロマトグラフィーのような他の方法も、分割用に提案
されている。そのような方法に伴う不利益は、時間浪費的でありかつ収率が概し
て低いことである。
米国特許第4,874,473号(譲受人:Bayer AG)は、ジアステレオマー、
cis/trans ペルメトリン酸(permethric acid)エステル又は酸塩化物、メント
ール/イソメントール及び cis/trans カロムアルデヒド酸(caromaldehyde ac
id)のメチルエステルを分離する方法を開示している。この方法は、キラルな分
割剤又は助剤をジアステレオマーに添加して抽出的に蒸留することを包含する。
両方の異性体が単離される。ジアステレオマーが分離されるとはいえ、純粋な鏡
像体を生成する方法の示唆はない。
E-Fritz-Langhals,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,32(1993),p.753-54 は、
ラセミ体テトラヒドロフラン−2−カルボン酸とアミノ酸(S)−バリンのメチ
ルエステルとの反応から得られる2種のジアステレオマーアミドの蒸留分離を報
告している。Langhals は、これらジアステレオマーアミドとは対照的に、“複
素環カルボン酸と種々の光学活性なアルコールとから調製されたジアステレオマ
ーエステル間には、あまり沸点の差がない(<1°K)。このことは、分別結晶
化による分割と同じように、種々の誘導体は、それらが蒸留による分離に適して
いるか否かを確認するために試験されなければならないことを示すものである”
と述べている。
キラルな助剤でのラセミ混合物の分割は公知であるが、そのような公知の方法
は一般に50%収率の各々の鏡像体をもたらすに過ぎない。より高い収率で一方
の鏡像体を獲得するためには、他方の鏡像体は、典型的には、ラセミ化及び再利
用の前にキラルな助剤から分離されなければならない。そのようなキラルな助剤
の分離は、特別な工程及び装置を必要とし、しばしば化学物質を浪費し、そして
化学量論量の廃棄物を生ずる。更には、追加の装置及びエネルギーは、しばしば
、ラセミ化及び分割にとって根本的に相違する条件(温度、溶媒、pH等)の間
の交互の行き来を必要とする。
かくして、ラセミ体プロフェン類を全ラセミ体供給量を基準として50%収率
を越える各々の鏡像体に分割する方法を見出すことに、継続的な興味が存在して
いる。
上記の事柄から、本発明の目的は、キラルな分割剤又は助剤でプロフェン類を
光学分割するための及び該キラルな分割剤の存在下でプロフェン類のベンジル炭
素をラセミ化するための方法であって、分割又はラセミ化の条件が容易に相互転
換されかつ該キラルな分割剤又は助剤の配置純度が該プロフェン類のベンジル炭
素のラセミ化の間に実質的に不変である方法を提供することである。
本発明の他の目的は、キラルな分割剤でプロフェン類を光学分割する方法であ
って、該プロフェン又は該キラルな分割剤の検出可能な分解も配置純度の損失も
なしに、該キラルな分割剤が分割されたプロフェンから分離及び回収される方法
を提供することである。図面の簡単な説明
図1は、ラセミ体イブプロフェンとキラルな、つまり光学活性なアルコールと
から得られたジアステレオマーエステルの蒸留分離を説明するものである。発明の要旨
イブプロフェンについて検討を行い、そのラセミ体を光学的に純粋な鏡像体に
経済的に転化する方法を確認した。従って、本発明の全体を通してイブプロフェ
ンが頻繁に言及される。しかしながら、記載された方法は、α−アリールプロピ
オン酸類の分離に広く応用可能である。
本発明は、少なくとも1つのキラルなベンジル炭素中心を有するα−アリール
プロピオン酸を少なくとも1つのキラルな炭素中心を有するC1〜C20アルカノ
ールと接触させて、少なくとも2点のキラル性を有するエステルを形成すること
を含むキラルなエステルの製造方法であって、前記点の少なくとも1点のキラル
性が1つの立体化学配置において他よりも豊富となる方法に関する。
本発明の他の態様は、ラセミ体アリールプロピオン酸類からS-(+)−アリー
ルプロピオン酸類を選択的に製造する方法であって、(a)キラルなベンジル炭
素を有するラセミ体アリールプロピオン酸をC1〜C20光学活性アルカノールと
反応させて、ジアステレオマーエステルの混合物を製造し;(b)前記混合物を
適する条件下で分別蒸留して、該アリールプロピオン酸のS体を組み込んでいる
ジアステレオマーを留出物とする一方で、該アリールプロピオン酸のR体を組み
込んでいるジアステレオマーを蒸留残渣として蓄積させ;(c)該蒸留残渣中の
ベンジルプロフェン炭素を適する条件下でラセミ化して、実質的に1:1のジア
ステレオマーエステルの混合物を再生し;そして(d)該留出物を場合により加
水分解して、所望のS-(+)−豊富化アリールプロピオン酸並びに再利用のため
に該C1〜C20光学活性アルコールを得ることを含む方法に関する。
本発明の好ましい態様は、ラセミ体イブプロフェンからS-(+)−イブプロフ
ェン又はその塩を選択的に製造する方法であって、(a)ラセミ体イブプロフェ
ンを光学活性なアルコールと反応させて、ジアステレオマーエステルの混合物を
製造し;(b)前記混合物を適する条件下で蒸留して、イブプロフェンのS体を
組み込んでいるジアステレオマーを選択的に留出物とする一方で、イブプロフェ
ンのR体を組み込んでいるジアステレオマーを蒸留残渣として蓄積させ;(c)
該蒸留残渣中のベンジル炭素を適する条件下でラセミ化して、実質的に1:1の
ジアステレオマーエステルの混合物を再生し;そして(d)工程(b)の留出物
を場合によりS-(+)−イブプロフェンに加水分解することを含む方法に関する
。この方法は、(a)ラセミ体イブプロフェンを光学活性なアルコールの他方の
鏡像体と反応させて、もう一方のジアステレオマーエステルの混合物を製造し;
(b)該ジアステレオマーエステルの混合物を適する条件下で蒸留して、イブプ
ロフェンのR体を組み込んでいるジアステレオマーを選択的に留出物とする一方
で、S体を組み込んでいるジアステレオマーを蒸留残渣として蓄積させ;(c)
該蒸留残渣を適する条件下でラセミ化して、実質的に1:1のジアステレオマー
エステルの混合物を再生し;そして(d)工程(b)の留出物を場合によりR-(
−)−イブプロフェンに加水分解することにより、R-(−)−イブプロフェン又は
その塩の選択的製造にも用いることができる。
本発明を、(a)光学活性なアリールプロピオン酸とのエステル化;(b)得
られるジアステレオマーエステルの蒸留分離;及び(c)一方又は両方の分離し
たジアステレオマーエステルの加水分解により、キラルなアルコールを光学的に
豊富化するために用いることもできる。好ましい態様の説明
この発明の目的のために、以下の定義及び取決めが用いられる。化合物が重ね
合わせ不能な互いの鏡像である2つの異性体を有してるなら、それは不斉又はキ
ラルであると言われる。そのような異性体は鏡像体と言われる。キラルな化合物
の中心原子は、そのキラルな化合物が、その中心原子に直接結合している諸原子
の幾何学的配置が重ね合わせ不能な鏡像であるという意味においてのみ異なる2
つの鏡像体を有しているなら、キラル中心である。キラル中心の2つの重ね合わ
せ不能な鏡像性幾何学的配置は、幾何学的、光学的、又は立体化学的配置と呼ば
れる。“不斉”及び“キラル”という用語の使用は、一方の鏡像体又は配置が他
方よりも過剰であることを仄めかすものではない。1又はそれを越えるキラル中
心における立体化学配置によってのみ異なるキラルな化合物の異性体は、立体異
性体である。キラルな化合物が一対を越える鏡像体的に関連する立体異性を有す
るなら、各々の対の鏡像体的に関連する立体異性体はジアステレオマーと呼ばれ
る。鏡像体純度、配置純度、又はジアステレオマー純度とは、それぞれ、特定の
鏡像体、配置、又はジアステレオマーの、全ての鏡像体、配置、又はジアステレ
オマーのパーセンテージとしての量である。ここで“全て”とは、通常は“両方
”を意味する。対照的に、鏡像体過剰度、配置過剰度、又はジアステレオマー過
剰度とは、2つの鏡像体、配置、又はジアステレオマー純度の間の差である。光
学純度と鏡像体過剰度は、同一の意味を有する相互変換可能な用語である。サン
プルがキラルな化合物の一方の鏡像体を他方の鏡像体よりも多く含有するなら、
それは光学活性であると考えられる。キラルな化合物のサンプルが、殆ど又は全
く、光学活性、光学純度、又は鏡像体過剰度(ee)を持たないなら、それはラ
セミ体である。
光学活性なキラルなアルコール(又はアルカノール)とのエステル化及び得ら
れるジアステレオマーエステルの蒸留によるα−アリールプロピオン酸鏡像体の
分離は、当該技術分野で記載されてきた古典的な分割方法とはおそらく非常に大
きな隔たりがあろう。ラセミ体(R,S)−イブプロフェンをラセミ体(R,S)
−アルコールとエステル化すると、4種の立体化学的に異なるエステル、つまり
RS、RR、SS、及びSR(この最初の文字はベンジルプロフェン炭素の立体
化学的配置を意味し、2番目の文字はこのエステルのアルコール成分の立体化学
的配置を意味する)を生ずる。それらの中で、二対のジアステレオマー、つまり
RR/SS及びRS/SRは、それらの物性、例えば、蒸気圧及び沸点が僅かに
相違している。光学的に純粋な(S)−アルコールを(R,S)−イブプロフェ
ンのエステル化に用いると、一対のジアステレオマー、つまりRSとSSが得ら
れる。本発明者らは、ジアステレオマーエステルの対、RR/SSの方が標準的
なガスクロマトグラフィーカラムをRS/SR対よりも速く通過することを発見
した。
図1は、所望のプロフェン鏡像体を単離するための多工程方法を示すもので、
例示のためにイブプロフェンが示されており、ラセミ体イブプロフェンの光学的
に純粋な(S)−アルカノールとのエステル化の後に、得られるジアステレオマ
ーエステルの分別蒸留、不要なRSジアステレオマーのベンジル炭素のラセミ化
、及びS,S−ジアステレオマーの加水分解を用いるものである。
本発明は、所望ではない鏡像体からキラルな分割剤又は助剤を分離する必要な
しに、ラセミ体イブプロフェンからS-(+)−イブプロフェン又はR-(−)−イブ
プロフェンをそのラセミ体供給量の50%を越える収率で作る方法を開示する。
これは、(a)ラセミ体イブプロフェンとキラルなアルコールの光学的に純粋な
鏡像体とのエステル化であって、該アルコールのために、所望のイブプロフェン
鏡像体とのエステルの方が所望でないイブプロフェン鏡像体とのジアステレオマ
ーエステルよりも揮発性となるエステル化;(b)所望のイブプロフェン鏡像体
を組み込んでいるジアステレオマーエステルの連続式又はバッチ式分別蒸留であ
って、他方のジアステレオマーエステルが豊富化される蒸留残渣からの蒸留;(
c)該蒸留残渣の蒸留への再利用であって、イブプロフェンベンジル炭素中心の
ラセミ化後の再利用;(d)該留出物の任意の加水分解であって、該所望のイブ
プロフェン鏡像体を生成させかつ該光学活性なアルコールを再生するための加水
分解により、優先的に達成される。
本発明は、より一般的には、少なくとも1つのキラルなベンジル炭素中心を有
するα−アリールプロピオン酸を少なくとも1つのキラルな炭素中心を有するC1
〜C20アルカノールと接触させて、少なくとも2点のキラル性を有するエステ
ルを形成することを含むキラルなエステルの製造方法であって、前記点の少なく
とも1点のキラル性が1つの立体化学配置において他よりも豊富となる方法に関
する。
α−アリールプロピオン酸は、ナプロキセン、ケトプロフェン、フルルビプロ
フェン、フェノプロフェン、インドプロフェン、ピルプロフェン、スプロフェン
(suprofen)、イブプロフェン、シクロプロフェン、及びミノキシプロフェンか
らなる群から選択することができ、イブプロフェン及びナプロキセンが最も好ま
しい。
好ましい態様においては、本発明は、ラセミ体α−アリールプロピオン酸類か
らS-(+)−アリールプロピオン酸類を選択的に製造する方法であって、(a)
キラルなベンジル炭素を有するラセミ体アリールプロピオン酸をC1〜C20光学
活性アルカノールと反応させて、ジアステレオマーエステルの混合物を製造し;
(b)前記混合物を適する条件下で分別蒸留して、該アリールプロピオン酸のS
体を組み込んでいるジアステレオマーエステルを留出物とする一方で、該プロピ
オン酸のR体を組み込んでいるジアステレオマーエステルを蒸留残渣として蓄積
させ;そして(c)該蒸留残渣中のベンジルプロフェン炭素原子を適する条件下
でラセミ化して、実質的に1:1のジアステレオマーエステルの混合物を再生す
ることを含む方法に関する。この方法は、更に、工程(b)の留出物を場合によ
り適する条件下で加水分解してS-(+)−アリールプロピオン酸を生成させるこ
とを含む。
本発明は、更に、ラセミ体イブプロフェンからR-(−)−イブプロフェン又は
その塩を選択的に製造する方法であって、(a)ラセミ体イブプロフェンを光学
活性なアルコールの他方の鏡像体と反応させて、ジアステレオマーエステルの混
合物を製造し;(b)前記混合物を適する条件下で蒸留して、イブプロフェンの
R体を組み込んでいるジアステレオマーを選択的に留出物とする一方で、S体を
組み込んでいるジアステレオマーを蒸留残渣として蓄積させ;(c)該蒸留残渣
を適する条件下でラセミ化して、ジアステレオマーエステルの混合物を再生し;
そして(d)工程(b)の留出物を場合によりR-(−)−イブプロフェンに加水
分解することを含む方法に関する。
(A)エステル化
ラセミ体イブプロフェンの分割は、該ラセミ体を実質的に純粋な光学活性アル
コール(又は本明細書中ではアルカノールともいう)と反応させて、2つのジア
ステレオマーエステルの混合物を製造することにより進行する。この光学活性な
アルコールが(S)−アルコールである場合、例えば、得られるジアステレオマ
ーは(S,S)及び(R,S)配置を有することになる。
このアルカノールは、概してC4〜C12S-(+)−アルカノールからなる。例と
なるアルカノールには、S-(+)−2−ブタノール、2−ペンタノール、2−ヘ
キサノール、2−ヘプタノール、2−オクタノール、2−ノナノール、2−デカ
ノール、3−メチル−1−ブタノール、3−ヘパノール、3−ヘキサノール、2
−アミノ−1−プロパノール、メントール、イソメントール、ノポール、2−メ
チルシクロペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、trans 2−メチルシク
ロペンタノール、trans 2−メチルシクロヘキサノール、及び cis 2−メチル
シクロヘキサノールが含まれるがこれらに限定されず、2−ブタノールが好まし
い。
本発明の蒸留分割法で最大の成功を収めるには、鏡像体的に純粋なアルカノー
ルを使用するのが好ましい。
このキラルなアルコールは、対応する2つのジアステレオマーが、分別蒸留に
よるそれらの分離を可能とするのに十分な熱安定性と揮発性の差を有するように
選ばれる。そのような蒸留分離は、典型的には約0.1〜100mmHg絶対圧
、好ましくは約0.2〜10.0mmHg絶対圧で達成される。アルコールは好
ましくは僅かに過剰で用いられる。プロピオン酸に比べて、一般に約5〜30モ
ル%、より好ましくは約10〜20モル%過剰である。
ラセミ体イブプロフェンと幾つかのキラルな非環式及び環式アルコールとのジ
アステレオマーエステルを調製してもよく、それらエステルの相対的な沸点又は
揮発性は、気液クロマトグラフィーのような当業者に公知の方法により評価する
ことができる。比較的大きな沸点差を有する比較的低沸点のジアステレオマーの
対が、本蒸留分離にとって好ましいであろう。
このエステル化反応は、慣用的な方法により進行させることができる。本発明
に関連して有用な方法は、ラセミ体イブプロフェンと光学活性なアルコールを酸
触媒の存在下で還流することである。適する酸には、硫酸、p−トルエンスルホ
ン酸、メタンスルホン酸、及び塩酸が含まれるがこれらに限定されない。固体酸
ができる。
触媒は、一般に、プロピオン酸を基準として約1〜10重量%の量で用いられ
る。
このエステル化反応は、溶媒の存在下で進行させてもよい。アルコールが液体
であるなら、それ自体が溶媒として働くことができる。エステル化操作に適する
溶媒には、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロオクタン、
ノナン、デカン、デカリン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、
ジイソプロピルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニ
ソール、ジフェニルエーテル等のような、C6〜C12脂肪族炭化水素、芳香族炭
化水素、及びエーテル類が含まれるがこれらに限定されない。溶媒は、プロピオ
ン酸の重量の約半分から約10倍の量で用いることができる。
このエステル化反応は、好ましくは約50〜200℃、より好ましくは約10
0〜150℃、最も好ましくは還流温度で行われる。反応の間に生成する水を共
沸混合物として蒸留により留去するのが好ましい。
このエステル化反応は、1モルのプロピオン酸当たり約0.01〜0.1モル、
より好ましくは約0.02〜0.06モルの量の上記の酸触媒と共に、好ましくは
約0.5〜10時間、より好ましくは約1〜4時間にわたって行われる。
エステル生成物は、単離してもよく、また、反応の完了についてガスクロマト
グラフィー(GC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、赤外吸収スペ
クトル(IR)等のような慣用的な方法により分析することができる。
(B)分別蒸留
次いで、エステル化反応により生成したジアステレオマーの混合物を、一方の
異性体が優先的に留出し、他方が蒸留残渣として残留するように分別蒸留しても
よい。
この蒸留は、好ましくは、低圧落下式分別蒸留塔(low-pressure drop fracti
onal distillation column)の中間位置にジアステレオマーの混合物を連続的に
注入しながら、蒸留オーバーヘッド(留出物)及び蒸留ボトム(残渣)を蒸留塔
の頂部及び底部からそれぞれ連続的に分離することにより行われる。全ての蒸留
オーバーヘッド(留出物)画分及び全ての蒸留残渣(ボトム)画分が、蒸留生成
物であると考えられる。ラセミ体イブプロフェンのS−2−アルカノールエステ
ルでは、蒸留オーバーヘッドはS,Sジアステレオマーで豊富化されており、蒸
留残渣はR,Sジアステレオマーで豊富化されている。ラセミ体イブプロフェン
のR−2−アルカノールエステルでは、蒸留オーバーヘッドはR,Rジアステレ
オマーで豊富化されており、蒸留残渣はS,Rジアステレオマーで豊富化されて
いる。より一般的には、ラセミ体α−アリールプロピオン酸類の分割では、エス
テルのキラルなアルコール成分の立体化学配置は、好ましくは、所望の鏡像体で
豊富化されたα−アリールプロピオン酸の蒸留オーバーヘッドからの回収が可能
となりかつ所望ではない配置で豊富化されたベンジル炭素のラセミ化が蒸留残渣
中で可能となるように選択される。従って、ラセミ体イブプロフェンからS-(+
)−イブプロフェンを単離するには、好ましくはS−2−アルカノールが選択さ
れ、そしてラセミ体イブプロフェンからR-(−)−イブプロフェンを単離するに
は、好ましくはR−2−アルカノールが選択されるだろう。
逆に、光学的に純粋なα−アリールプロピオン酸類をキラルな分割剤又は助剤
として用いてラセミ体アルコールを分割することができる。例えば、S-(+)−
イブプロフェンとラセミ体2−アルコール(例えば、2−オクタノール)から調
製されたジアステレオマーエステルの混合物を蒸留すると、S,Sエステルジア
ステレオマーの留出物とS,Rエステルジアステレオマーの残渣が得られるであ
ろう。この留出物と残渣を分けて加水分解すると、エステル化への再利用のため
のS-(+)−イブプロフェンに加えて、光学的に豊富化されたS−2−アルカノ
ールと光学的に豊富化されたR−2−アルカノールが別々に得られるであろう。
S-(+)−イブプロフェンのS−2−オクチルエステルは、ベンジル炭素の配置
純度を低下させることなく、酸触媒加水分解を受けることが分かった。
より揮発性の成分Aを揮発性の劣る成分Bから分離するための蒸留係数(a)
は、下式により表される:
a=(〔A〕v〔B〕l)/(〔A〕l〔B]v)
式中、添字v及びlは、それぞれ平衡にある気相及び液相中の濃度を表わす。蒸
留における理論段数の増加は、留出物の純度を高めるか又はより低い“a”値を
有する成分と同じ留出物純度を達成するのに役立つ。より大きな理論段数は、よ
り長い蒸留塔、より効率的な塔充填物、より大きな還流比、又はこれら要因の組
み合わせで達成される。還流比とは、蒸留塔に戻ってくるオーバーヘッド凝縮物
の、蒸留物から引き抜かれて蒸留塔には戻ってこないオーバーヘッド凝縮物に対
する比のことである。蒸留は、好ましくは、約50〜250℃及び約0.01〜
100mmHg絶対圧で約1:1〜100:1の還流比で行われ、より好ましく
は、約100〜200℃及び約0.2〜10mmHg絶対圧で約5:1〜20:
1の還流比で行われる。エステルのアルコール成分及び蒸留温度、蒸留圧、還流
比、及び塔の高さ、直径、充填物、及び注入部位は、蒸留の分野の当業者により
最適化されることができる相関的要因である。
蒸留における優勢なジアステレオマーの収率は、蒸留残渣中のベンジル炭素を
ラセミ化した後にその蒸留残渣を蒸留塔に戻して再利用することにより、全供給
混合物の50%を大きく越える収率まで上昇させることができる。イブプロフェ
ン鏡像体をラセミ化するために酸又は塩基触媒を用いる方法は公知である。例え
ば、米国特許第5,015,764号は、塩基を用いるイブプロフェン鏡像体のラ
セミ化を開示している。しかしながら、そのようなラセミ化は、溶媒、低操作温
度、及び長い反応時間を要するので、分別蒸留法と容易には一体化されない。例
えば、蒸留残渣を冷却し溶媒で希釈し、次いでベンジル炭素をラセミ化した後、
蒸留塔に再利用する前に、再加熱して溶媒を留去することが必要になるかも知れ
ない。そのような冷却、希釈、再加熱、及び溶媒留去は、全て余分な工程を付加
することになるので、装置及びエネルギーの必要量を増加させることになる。
エステルのアルコール成分の化学的及び配置的安定性は、蒸留残渣の再利用に
とって重要であるが、公知のラセミ化条件下でそのような安定性が存在するかか
なり疑わしい。例えば、公知のラセミ化条件下では、イブプロフェンの2−アル
キルエステルは、アルコール成分のキラルな2−炭素のラセミ化も、アルコール
成分をオレフィン性廃棄物に変換してしまうイブプロフェンの脱フリー酸も受け
得る。殆どのキラル分離においては、通常、キラルな助剤又は分割剤の配置的又
は化学的不安定さが、不要な鏡像体をラセミ化して再利用する前に、そのキラル
な助剤又は分割剤の除去及び回収を余儀なくさせる。本発明の場合には、そのよ
うなキラルな助剤の除去は、エステルの加水分解及び生成する2−アルカノール
とイブプロフェンの蒸留又は抽出による分離に関係するであろう。分離したイブ
プロフェンをラセミ化した後、そのラセミ化イブプロフェン及び2−アルカノー
ルは、ジアステレオマーの蒸留分離に再利用する前に、エステルに再転化される
ことを要するであろう。そのような加水分解及び再エステル化は、再び余分な工
程を付加することになり、装置及びエネルギーの必要量を増加させ、化学物質を
浪費し、そして化学量論量の廃棄物を生ずるであろう。
(C)ベンジル炭素のラセミ化
塩基触媒としてのアルカリ金属炭酸塩又はアルカリ土類金属炭酸塩で、蒸留残
渣中のベンジル炭素のラセミ化が、迅速に、効率的に、かつ、実質的に冷却、希
釈、加水分解、再加熱、溶媒の除去、再エステル化、又は2−アルキルエステル
結合の配置純度の変化なしに達成されることが分かった。
この目的のために有用であることが見出された炭酸塩の例は、炭酸ナトリウム
、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸マグネシウム、カリウムt−ブトキシド、
ポリビニルピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、及び1,4−ジアザビシク
ロ〔2.2.2〕オクタン等である。炭酸セシウムが特に有用であることが分かっ
た。
このラセミ化に常に溶媒が必要であるとは限らない。蒸留残渣は、直接、適切な
量の炭酸塩でスラリー中で約70〜約200℃の温度で、実質的に完全なラセミ
化にとって十分に長い時間、通常は約0.5〜5時間処理される。
本発明のラセミ化方法は、好ましくは、1モルのエステル当たり0.05〜0
.25モルの炭酸塩触媒のスラリーを約80〜200℃、より好ましくは約12
0〜160℃でベンジル炭素の実質的に完全なラセミ化を達成するのに十分な時
間(約0.1〜24時間、より典型的には約1〜6時間)混合することにより、
添加溶媒の不存在下で行われる。“実質的に完全な”は、2つのジアステレオマ
ー(RS)と(SS)の混合物が1:1又は50:50の比率であることを示す
GCによる分析により決定することができる。
所望により、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、
N−メチル−2−ピロリジノン、ポリエチレングリコール、ジイソプロピルエー
テル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、トルエン等のような溶媒を
用いてもよい。
ラセミ化は、ポリ(4−ビニルピリジン)、4−(ジメチルアミノ)ピリジン
、及び1,4−ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタンのような3級アミン、並び
にt−ブトキシド又は好ましくはエステルのアルカノール成分に対応する光学的
に純粋なアルコキシドのナトリウム塩又は好ましくはカリウム塩のようなアルコ
キシド塩を含むがこれらに限定されない他の塩基触媒ででも行うことができる。
反復的又は連続的なラセミ化及び蒸留操作により、所望のジアステレオマーを、
混合ジアステレオマーの全供給量を基準として50%を越える収率で、おそらく
は98%もの高い収率で単離することができる。
(D)加水分解
次いで、蒸留オーバーヘッド又は残渣を、各々別々に、場合により加水分解し
て、鏡像体的に豊富化されたイブプロフェンフリー酸又はその種々の塩のいずれ
か(例えば、ナトリウム塩)を生成させることができる。加水分解は、酸又は塩
基を触媒として行うことができ、キラルな助剤又は分割剤として用いられたアル
コールを再生させる。イブプロフェンの2−ブチル及び2−オクチルエステルの
ようなプロフェンエステルの加水分解は、1モルのエステル当たり好ましくは約
0.5〜4.0モル、より好ましくは約0.5〜2.0モルの水、1モルのエステル
当たり好ましくは約0.01〜1.0モル、より好ましくは約0.05〜0.3モル
の酸触媒(塩酸、硫酸、好ましくはメタンスルホン酸、より好ましくはp−トル
エンスルホン酸)、固体酸触媒(たとえば、酸性イオン交換樹脂、例えば、Ambe
水混和性有機溶媒(例えば、ポリエチレングリコール、酢酸、又は好ましくはテ
トラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDE))で、好ましくは約5
0〜200℃、より好ましくは約100〜150℃で、好ましくは約1〜24時
間、より好ましくは約2〜8時間、再生したキラルなアルコールを水共沸混合物
として連続的に留去し、その共沸留出物から水を連続的に相分離させて回収し、
そして回収した水を加水分解に連続的に再利用しながら行われる。明らかに、水
とエステルが非混和性で互いに非常に低い溶解性しか有さないので、高温(約1
40〜200℃)及び高圧でなければ、水とエステルの両方を溶解することがで
きる溶媒の不存在下では加水分解は殆どないしは全く起こらない。一方、過剰量
の水は、おそらく水を溶媒から相分離させることによって、現実には加水分解を
妨害する。イブプロフェンの2−ブチル又は2−オクチルエステルのような2−
アルキルプロフェンエステルの加水分解は、約25重量%NaOH水溶液中でも
約125℃でうまく行うことができる。エステル化、蒸留、ベンジル炭素のラセ
ミ化、及び加水分解の工程によって鏡像体純度の検出可能な損失を受けないので
、再生されるキラルなアルコールはエステル化に再利用される。キラルなα−ア
ルカノールのオレフィン又は他の分解生成物への損失は、約2%未満に維持され
得る。イブプロフェンも、検出可能な分解又は配置純度の損失なしに加水分解反
応から回収される。実施例
以下は、本発明の説明を意図した非限定的実施例である。
実験的検討をイブプロフェンのS,S2−ブチル及びS,S2−オクチルエステ
ルで行った(この最初の頭文字はイブプロフェン中のキラル中心の配置を表し;
2番目はアルコール中のキラル中心の配置を表す)。出発原料は、Boots からの
S-(+)−イブプロフェン(S/R=99/1)及び Aldrich からのS-(+)
−2−ブタノール(S/R=92/8)又はS-(+)−2−オクタノール(S/
R>99/1)であった。エステル化、ラセミ化及び加水分解は10〜30gス
ケールで行ったが、熱処理に関する検討はもっと少ない量の原料で行った。実験
装置は標準的なものであった。表I及びIIに、反応条件、結果、及びコメントを
示す。
標準的なアキラルなカラムでのガスクロマトグラフィーで、これらイブプロフ
ェンエステルについての(SS+RR)/(SR+RS)ジアステレオマー比の
測定が可能であった。キラルなカラムでのガスクロマトグラフィーでは、イブプ
ロフェン、2−ブタノール、及び2−オクタノールについてのR/S鏡像体比の
測定は可能であったが、2−ブチル又は2−オクチルイブプロフェンエステルの
2つのジアステレオマーについてRR/SS及びRS/SR鏡像体比の測定はい
ずれも可能ではなかった。エステル化
エステル化条件を最適化して、高イブプロフェン転化率(85〜90%)及び
穏当な反応時間(2時間)でアルケン形成を1%未満に抑えた。好ましいイブプ
ロフェン/アルコール/MSA(メタンスルホン酸)モル比は1.0/1.1/0
.04であった。これら条件下で、エステルへのイブプロフェン効率は>98%
であった。ブチルエステルについて92/8及びオクチルエステルについて98
/2の(SS+RR)/(SR+RS)ジアステレオマー比が、出発原料の品質
によってのみ制限されたので、いずれのキラル中心(イブプロフェン及びアルコ
ール)のラセミ化もエステル化の間に起こらなかったことが分かった。
当初のエステル化では、アルコールのアルケン形成への損失があった。15%
までのブテンが冷却管の下流のドライアイストラップ(−70℃)中に捕集され
、1%収率のオクテンが Dean Stark トラップのエステル相内に検出された。ア
ルケン形成は、メタンスルホン酸で行ったよりも硫酸又はp−トルエンスルホン
酸で行った方が多く、触媒量に伴っても増加した。ラセミ化
純粋はエステルをCs2CO3(4:1のモル比)で450℃で6時間熱処理す
ると、イブプロフェン基内のキラル中心の有意なラセミ化が起こったが、アルコ
ール基内のキラル中心は不変であった。これら条件下で、(SS+RR)/(S
R+RS)ジアステレオマー比は、ブチルエステルについて92/8から53/
46に変化し、オクチルエステルについて98/2から64/36に変化した。
得られたエステルの加水分解及びイブプロフェンとアルコール加水分解生成物に
ついてのS/R鏡像体比の測定で、イブプロフェンのキラル中心はラセミ化を受
けたが、アルコールのキラル中心は不変であったことが分かった。加水分解
酸触媒加水分解(表I)で、ブチルエステルの40%転化率及びオクチルエス
テルの90%転化率で0〜2%のアルケン形成があった。逆さ Dean Stark トラ
ップで、アルコール加水分解生成物の連続的除去及び捕集、並びに未反応の共沸
水の反応混合液への連続的再利用が可能になった。加水分解結果は、次の事柄を
示した:
S-(+)−イブプロフェンのS-(+)−2−オクタノールでのエステル化及び得
られたエステルの加水分解の間、イブプロフェン(98.5/1.5)と2−オク
タノール(>99/1)のS/R鏡像体比は出発原料のものと不変のままであり
、
S-(+)−イブプロフェンのS-(+)−2−ブタノールでのエステル化及び得ら
れたエステルのラセミ化及び加水分解の間、イブプロフェンのS/R鏡像体比は
殆どラセミ体である53/47まで降下したが、2−ブタノールのそれ(92/
8)は出発原料のものと不変のままであり、
S-(+)−イブプロフェンのS-(+)−2−オクタノールでのエステル化及び得
られたエステルのラセミ化及び加水分解の間、イブプロフェンのS/R鏡像体比
はラセミ体に近い60/40まで降下したが、2−オクタノールのそれ(>99
/1)は出発原料のものと不変のままであった。熱処理
150℃で22時間後、S,S−ブチル及びS,S−オクチルエステルは殆どラ
セミ化を受けなかった(<<1%;表II)。しかしながら、オクチルエステルは
、これら条件下で僅かな分解を受けた。180℃では、ラセミ化及び分解の両方
が両エステルで認められた。
S-(+)−イブプロフェンのニートのエステルを150℃で22時間加熱する
と、ジアステレオマー過剰度は、S−2−ブチルエステルについて83.0%か
ら82.3%に低下し、S−2−オクチルエステルについて95.8%から95.
0%に低下した。ジアステレオマー過剰度は、更に、S−2−ブチルエステルに
ついて170〜200℃で22時間加熱中に61.8%に低下し、S−2−オク
チルエステルについて180℃で21時間加熱中に80.4%に低下した。得ら
れたエステルの加水分解及びイブプロフェンとアルコール生成物の分析で、イブ
プロフェン成分の熱的配置劣化は、2−オクチル成分の約2倍で、2−ブチル成
分の約6倍であることが明らかになった。
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(51)Int.Cl.6 識別記号 FI
// C07M 7:00
(72)発明者 フリッチ,ジョン・アール
アメリカ合衆国テキサス州78410,コーパ
ス・クリスティ,ファイヴ・ポインツ・ロ
ード 4334
(72)発明者 フォルハイム,トマス・ゲー
ドイツ連邦共和国デー−60529 フランク
フルト,ガイセンハイマー・シュトラーセ
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