JPH1150223A - Si含有高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents

Si含有高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法

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JPH1150223A
JPH1150223A JP22202997A JP22202997A JPH1150223A JP H1150223 A JPH1150223 A JP H1150223A JP 22202997 A JP22202997 A JP 22202997A JP 22202997 A JP22202997 A JP 22202997A JP H1150223 A JPH1150223 A JP H1150223A
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JP
Japan
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steel sheet
hot
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strength
galvanized steel
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JP22202997A
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English (en)
Inventor
Michitaka Sakurai
理孝 櫻井
Shoichiro Taira
章一郎 平
Shuji Nomura
修二 野村
Masaru Sagiyama
勝 鷺山
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Engineering Corp
Original Assignee
NKK Corp
Nippon Kokan Ltd
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Publication date
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Publication of JPH1150223A publication Critical patent/JPH1150223A/ja
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 表面外観が良好で、線状マークが生じず、高
強度でかつめっき皮膜の均一性に優れ、さらに密着性に
優れたSi含有高強度溶融亜鉛めっき鋼板、およびさら
に合金化ムラが生じず、耐パウダリング性に優れたSi
含有高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板を提供すること。
また、これらを安定して製造することができる製造方法
を提供すること。 【解決手段】 重量%で、Mn含有量が0.2%以上、
Nb含有量が0.005%以上、Ti含有量が0.01
%以上のうち1または2以上を満たし、かつSiの含有
量が0.2%以上であるSi含有高強度鋼板に溶融亜鉛
めっきを行うに際し、硫黄または硫黄化合物をS量とし
て0.1〜1000mg/m2付着させた後、水素を含
む非酸化性雰囲気で680℃以上の温度で焼鈍し、その
後、少なくとも0.05〜0.30%のAlを含む溶融
亜鉛浴に浸漬してめっきを行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は高Si含有鋼から
なる高強度鋼板を下地鋼板とする高強度溶融亜鉛めっき
鋼板および高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板ならびにそ
れらの製造方法に関し、特に、自動車内外板として用い
られる、高強度でかつめっき皮膜の均一性と密着性に優
れた溶融亜鉛めっき鋼板およびめっき皮膜の均一性と耐
パウダリング性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板、な
らびにそれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、地球温暖化防止の観点から自動車
の燃費向上が叫ばれ、車体軽量化と安全性確保の観点か
ら素材の高強度・薄物化が強く求められている。一方、
車体寿命延長の観点から、合金化溶融亜鉛めっき鋼板が
車体用素材として使用され始めて久しい。したがって、
これら両特性を満足させるために高強度溶融亜鉛めっき
鋼板の開発が行われている。
【0003】一般的に鋼板の強度上昇にはSi、Mn、
P等の固溶強化元素の添加が行われている。しかし、S
iまたはPを含有する鋼板をめっき原板として使用する
場合には、熱延以前の表面不均一性が原因の合金化ムラ
や不めっきなどが生じるという問題がある。とりわけ、
Siはめっき前焼鈍時に選択酸化により鋼板表面を覆う
ため、溶融亜鉛との濡れ性が悪くなり不めっきを生じた
り、熱延時に生成する赤スケールが原因となるスジムラ
が発生するため、自動車用外板へのSiの適用は特に避
けられている。また、SiやPは合金化速度を遅くさせ
るという問題も有している。一方、Mnは表面品質や合
金化速度に対する大きな悪影響は見られないが、強化能
力が低いことから大量に添加する必要がある。
【0004】以下に、Si含有鋼板の問題点を示す。 (1)濡れ性 Si含有鋼をめっき原板として使用する場合には、Si
はめっき前焼鈍時に選択酸化により鋼板表面を覆うた
め、溶融亜鉛との濡れ性が悪くなり不めっきを生じるた
め、めっき製品にならないという問題がある。
【0005】(2)スケール性スジムラ Si含有鋼の場合には、熱延時に生成する赤スケールが
原因となるスジムラが発生するため、自動車用外板への
Siの適用は特に避けられている。熱延時にデスケーリ
ングを入念に行うなどの配慮をして、熱延後には判別し
にくい程度の軽い赤スケールであったとしても、溶融亜
鉛めっき後の合金化処理時には、Siの濃度差に起因す
る合金化の不均一から、熱延時の赤スケールと同じよう
に鋼板表面に線状のマークを生じるものである。
【0006】(3)合金化速度 Si含有鋼の場合、CGL焼鈍時にSiが鋼板表面に選
択酸化し、これが、溶融亜鉛との濡れ性を阻害する。た
とえ、不めっきに至らなかった場合でも、濡れ性阻害に
基づく合金化の遅れが生じるという問題がある。
【0007】(4)めっき密着性 Si含有高強度鋼板では、上記のようにCGL焼鈍時に
Siが鋼板表面に選択酸化し、これが、溶融亜鉛との濡
れ性を阻害する。たとえ、不めっきに至らなかった場合
でも、濡れ性阻害に基づき、初期合金相がまばらに生成
することでめっき皮膜の均一性が損なわれる他、めっき
密着性に劣るという問題がある。
【0008】(5)耐パウダリング性 上記の合金化の遅れによる生産性低下を防ぐため、合金
化処理温度を高くすると、ラインスピードをそれほど下
げることなく、合金化を完了させることができるように
なる。しかしながら、合金化温度が上昇したことによ
り、耐パウダリング性の劣化が顕著になった。これは、
合金化温度を上昇させると合金化制御が難しくなり、過
合金化し易くなること、および、高温で生成する合金相
は低温で生成する合金相に比べて脆弱であること等の理
由による。
【0009】(6)コイル先端・尾端における合金化ム
ラ Si含有鋼では熱延時の条件変動に起因する合金化ムラ
が生じやすい。すなわち、冷延コイルの先端・尾端の合
金化速度が特に遅くなり、如何なる手段を講じても合金
化できない場合がある。この現象は、熱延コイルの先端
・尾端の熱履歴が特殊であるために生じるものと推定さ
れる。このため、コイル先端・尾端の数十メートルが合
金化していないため、この部分を切り落として廃棄する
ことになり、歩留まりの低下を招く。
【0010】また、先端・尾端部を合金化させるため、
合金化処理条件を調整することも操業中オペレーターに
より行われるが、合金化が特に遅い部分に照準を合わせ
て合金化処理するため、コイル中央部に対しては過剰の
合金化処理になり、耐パウダリング性の低下を招く場合
がある。
【0011】(7)製造条件の安定性 溶融亜鉛めっきラインに挿入される鋼板は多岐にわたっ
ているため、それぞれの鋼板によって合金化条件が異な
る。操業中はオペレーターにより鋼種毎の合金化条件設
定を行っているが、大きく条件が異なる鋼種の接続部で
は、条件設定変更のために時間を要するため、過合金や
合金化不足を生じ、歩留まりの低下を招くとともに、安
定した製造を行うことができない。例えば、比較的合金
化の早いIF鋼の後にSi含有鋼が接続されていた場合
には、Si含有鋼の先端部では合金化しない部分が数十
メートル発生し、逆に、Si含有鋼の後にIF鋼が接続
されていた場合には、IF鋼の先端部では過合金化によ
りパウダリング不良を生じる部分が数十メートル発生す
るため、切除廃棄する部分が生じるというものである。
【0012】従来、濡れ性を改善する方法あるいは合金
化反応を促進させる方法としては、溶融めっきに先立っ
て鋼板表面にNi、Fe等の金属あるいは合金をプレめ
っきする方法(例えば、特開昭60−110859号公
報等。以下、従来技術1という。)が提案されている。
また、溶融めっきに先立って鋼板表面に硫黄化合物水溶
液を湿布した後、非酸化性雰囲気で焼鈍する方法(特開
平5−163558号公報。以下、従来技術2とい
う。)が提案されている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】従来技術1では、前処
理として電解処理によりプレめっきを行うため、プレめ
っきのための設備コストが増大する問題点がある。
【0014】従来技術2においては、プレめっきのよう
な新たな設備は必要としないので、コストの増大を抑え
ることができる。しかしながら、この方法においては、
SがSiの表面濃化を抑制するため、Si含有鋼の合金
化速度をある程度促進させることはできるものの、その
作用は、S量によって一定であるため、Siの濃化量が
異なる場合、すなわち、粒界で著しいSiの濃化があっ
た場合や、コイルの先端・尾端などの、コイル内不均一
性を解消することはできない。また、耐パウダリング性
を劣化させるという欠点がある。
【0015】本発明は、かかる事情に鑑みてなされたも
のであって、自動車内外板として用いた場合に、表面外
観が良好で、線状マークが生じず、高強度でかつめっき
皮膜の均一性に優れ、さらに密着性に優れたSi含有高
強度溶融亜鉛めっき鋼板、およびさらに合金化ムラが生
じず、耐パウダリング性に優れたP含有高強度合金化溶
融亜鉛めっき鋼板を提供することを目的とする。また、
これらを安定して製造することができる製造方法を提供
することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、第1発明は、重量%で、Mn含有量が0.2%以
上、Nb含有量が0.005%以上、Ti含有量が0.
01%以上のうち1または2以上を満たし、かつSiの
含有量が0.2%以上であるSi含有高強度鋼板に溶融
亜鉛めっきを行うに際し、硫黄または硫黄化合物をS量
として0.1〜1000mg/m2付着させた後、水素
を含む非酸化性雰囲気で680℃以上の温度で焼鈍し、
その後、少なくとも0.05〜0.30%のAlを含む
溶融亜鉛浴に浸漬してめっきを行うことを特徴とする、
皮膜の均一性および密着性に優れたSi含有高強度溶融
亜鉛めっき鋼板の製造方法を提供する。
【0017】第2発明は、第1発明の製造方法におい
て、溶融亜鉛めっきする際に、予熱工程を弱酸化性雰囲
気で行うことを特徴とする、皮膜の均一性および密着性
に優れたSi含有高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法
を提供する。
【0018】第3発明は、第1発明または第2発明の製
造方法によって溶融亜鉛めっきした後、さらにめっき層
の合金化熱処理を行うことを特徴とする、皮膜の均一性
および耐パウダリング性に優れたSi含有高強度合金化
溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を提供する。
【0019】第4発明は、重量%で、Mn含有量が0.
2%以上、Nb含有量が0.005%以上、Ti含有量
が0.01%以上のうち1または2以上を満たし、かつ
Siの含有量が0.2%以上であるSi含有高強度鋼板
と、前記鋼板の少なくとも1つの表面上に形成された、
S量に換算して0.1〜1000mg/m2の量の硫化
物層と、前記硫化物層の表面上に形成された亜鉛めっき
層とからなることを特徴とする、皮膜の均一性および密
着性に優れたSi含有高強度溶融亜鉛めっき鋼板を提供
する。
【0020】第5発明は、第4発明のSi含有高強度溶
融亜鉛めっき鋼板において、前記硫化物層は、MnS、
NbS2、TiS2化合物のうち1種または2種以上を含
み、その表面にこれら化合物が均一に分散した状態で析
出しており、これら析出した化合物の直上に微細なζ相
が均一に生成していることを特徴とする、皮膜の均一性
および密着性に優れたSi含有高強度溶融亜鉛めっき鋼
板を提供する。
【0021】第6発明は、第1発明または第2発明のS
i含有高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法に従って溶
融亜鉛めっきした後、めっき層の合金化熱処理を行うこ
とにより製造された、皮膜の均一性および耐パウダリン
グ性に優れたSi含有高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板
を提供する。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明について具体的に説
明する。本発明において、Mn含有量が0.2%以上、
Nb含有量が0.005%以上、Ti含有量が0.01
%以上のうち1または2以上を満たし、かつSiの含有
量が0.2%以上であるSi含有高強度鋼板に溶融亜鉛
めっきを行うに際し、硫黄または硫黄化合物をS量とし
て0.1〜1000mg/m2付着させた後、水素を含
む非酸化性雰囲気で680℃以上の温度で焼鈍すると、
鋼板表面にはMnS、NbS2、TiS2化合物のうち1
種または2種以上が析出する。その後少なくとも0.0
5〜0.30%のAlを含む溶融亜鉛浴に浸漬してめっ
きを行うと、鋼板表面に析出した化合物を核として、F
e−Zn結晶(ζ相)が、微細かつ均一に生成し、皮膜
均一性および密着性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板が得ら
れる。さらにその後、めっき層の合金化熱処理を行う
と、微細かつ均一に生成したFe−Zn結晶(ζ相)を
起点として合金化反応が進行し、皮膜の均一性および耐
パウダリング性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板とな
る。
【0023】ここで、Mn含有量が0.2%未満、Nb
含有量が0.005%未満、Ti含有量が0.01%未
満では、SによるSiの表面濃化抑制効果により、合金
化速度の若干の改善は認められるが、MnS、Nb
2、TiS2化合物の析出量が十分でないため、皮膜の
均一性および耐パウダリング性に対する効果が発現され
ない。
【0024】Si含有量を0.2%以上と規定したの
は、0.2%が本発明で対象とする高強度レベルの鋼板
を得るために最低限必要な量だからである。
【0025】硫黄または硫黄化合物をS量として0.1
〜1000mg/m2付着させることとしたのは、0.
1mg/m2未満ではMnS、NbS2、TiS2化合物
の析出効果が少なく、1000mg/m2を超えてもそ
の効果が飽和するからである。
【0026】溶融亜鉛浴中に含まれるAl量を0.05
〜0.30%と規定したのは、0.05%未満ではFe
−Al合金の生成量が少ないため、Fe−Zn反応抑制
効果が小さく、耐パウダリング性が劣化し、0.30%
を超えるとFe−Al合金の生成量が多すぎるため、F
e−Zn反応抑制効果が大きすぎ、合金化させることが
できなくなるからである。
【0027】次に、本発明における硫黄または硫黄化合
物、および鋼中Mn、Nb、Tiの効果について、図1
を参照しながら説明する。図1の(a)はSi含有鋼
(Mn含有量0.2%未満、Nb含有量0.005%未
満、Ti含有量0.01%未満。従来技術2)において
硫黄または硫黄化合物を付着させて亜鉛めっきした場
合、図1の(b)は本発明の組成範囲のSi含有鋼にお
いて硫黄または硫黄化合物を付着させて亜鉛めっきした
場合の状態をそれぞれ示すものである。
【0028】図1の(a)に示すように、従来のSi含
有鋼の場合には、表面に選択酸化したSi酸化物によ
り、硫黄または硫黄化合物を付着させても不めっきが生
じる。
【0029】図1の(b)に示すように、本発明のSi
含有鋼を用いた場合には、焼鈍時に鋼中のMn、Nb、
Tiと付着させた硫黄分とが反応し、鋼板表面にMn−
S、Nb−S、Ti−Sが析出する。これら析出物を核
として、Fe−Zn結晶(ζ相)が、微細かつ均一に生
成する。
【0030】さらにその後、めっき層の合金化熱処理を
行うと、微細かつ均一に生成したFe−Zn結晶(ζ
相)を起点として合金化反応が進行するため、合金化が
促進されるとともに、皮膜の均一性が向上し、さらには
良好な耐パウダリング性を有する皮膜を形成することが
できる。鋼中Si含有量が多く、Siの選択酸化物が厚
く生成した場合でも、Mn−S、Nb−S、Ti−Sは
これとは無関係に析出し、ζ相核発生の起点となる。し
たがって、鋼種が変わったり、付着するS量が変動した
場合でも、これらの変動要因に無関係に一定のFe−Z
n合金化反応が進行するため、操業安定性にも優れてい
る。また、上記所定の析出物さえ生成させることができ
れば、少量の硫黄分を付着させるだけで十分な効果を得
ることができる。
【0031】次に、本発明によって皮膜の均一性や耐パ
ウダリング性が向上する理由について説明する。Mn、
Nb、Tiは、鋼中では均一に分散しており、したがっ
て、焼鈍時に付着させた硫黄または硫黄化合物の反応に
よって析出するMnS、NbS2、TiS2化合物も均一
に析出するため、この化合物を核として成長するFe−
Zn合金結晶は均一に分布することとなる。したがっ
て、形成されるFe−Zn合金相にもバラツキはなく、
耐パウダリング性が向上するものと推定される。
【0032】一方、MnS、NbS2、TiS2化合物の
析出がない場合には、硫黄または硫黄化合物の塗布によ
り多少Siの選択酸化物の生成は抑えられるものの、依
然として濡れ性の劣る部分が生じるため、不めっきに至
らなかったとしても、生成するFe−Zn合金はランダ
ムに成長し、皮膜の均一性は得られない。また、このよ
うな濡れ性の差が生じていることにより、合金化完了し
た時点での合金化度が部分的に異なっており、過合金化
状態となっている部分も存在するため、耐パウダリング
性に劣る結果となる。
【0033】以上のような本発明の溶融亜鉛めっき鋼板
を製造する際には、硫黄分塗布後の焼鈍を、水素を含む
非酸化性雰囲気で680℃以上の温度で行わなければな
らない。これは、水素により鋼板を還元する目的があ
り、さらに、水素の存在に伴うH吸着により、Sの鋼板
表面への析出が促進されるためである。また、Sは68
0℃以上の温度域で安定に析出するが、それ以下の温度
ではCの析出が優先的であり、焼鈍にあたり、MnS、
NbS2、TiS2化合物の析出は起こりにくいためであ
る。逆に、Mn、Nb、Tiが存在すると、一度析出し
たSは680℃以下の温度域になっても安定であるが、
これらの元素が存在しない場合には、680℃以下では
Sは消失し、Siが選択酸化し得る温度域である500
℃付近では、Sは存在し得なくなり、硫黄分付着の効果
が低下する。
【0034】また、本発明の方法に従って溶融亜鉛めっ
きする際に、予熱工程を弱酸化性雰囲気で行うとさらに
効果的である。すなわち、硫黄または硫黄化合物付着後
弱酸化性雰囲気にて予熱することにより、鋼板酸化と同
時に硫黄または硫黄化合物が酸化され、硫黄または硫黄
化合物の分解・飛散を抑えることができるため、効果的
にMnS、NbS2、TiS2化合物を析出させることが
できる。
【0035】図2に、本発明に係る皮膜の均一性および
密着性に優れたSi含有高強度溶融亜鉛めっき鋼板の初
期化合金相表面の電子顕微鏡写真を示す。焼鈍後の鋼板
表面には微細なζ相が均一に生成していることがわか
る。一方、通常の方法で製造したSi含有高強度溶融亜
鉛めっき鋼板は不めっきが生じる。
【0036】なお、本発明が対象とする鋼板は、Siを
0.2%以上含有する高強度鋼板であり、Mn含有量が
0.2%以上、Nb含有量が0.005%以上、Ti含
有量が0.01%以上のうち1または2以上を満たせば
よく、その他の成分は特に制限されず、Feおよび不可
避的不純物の他に、C,P,S,Mg,Cr,Ni,C
u,Ta,Al等の1種または2種以上を含有してもよ
い。また、IF鋼ベースの鋼板では、耐2次加工性脆化
を防ぐために、数ppmのBを添加してもよい。
【0037】また、本発明に用いられる硫黄または硫黄
化合物は、硫黄単体、硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリ
ウム、硫酸ソーダ、亜硫酸ソーダ等の無機硫酸塩、チオ
シアン酸アンモニウム、チオシアン酸カリ等のチオシア
ン酸塩類、アルキルメルカプタンやチオ尿素などの脂肪
族系有機物を、水または有機溶剤に溶解し、またはこれ
らと混合して使用する。また、これらの薬品の溶液の鋼
板への付着性を高める目的で界面活性剤を添加してもよ
い。界面活性剤としてS基を含むものは、界面活性剤単
独で用いても効果がある。さらに、これらの薬品の溶液
の鋼板への付着性を高める目的では、溶液中に有機樹脂
を溶解させ、バインダーとして用いてもよい。なお、冷
間圧延時の潤滑油あるいは圧延後の防錆油に硫黄または
硫黄化合物を添加した後、脱脂をすることなく、直下加
熱方式の予熱炉を有する焼鈍炉に鋼板を装入することも
できる。ただし、全ラジアントチューブ方式の焼鈍炉に
対してこの方法を採用した場合には、油分が汚れとして
残存し、めっき性や合金化処理後の表面外観に影響を与
えるので好ましくないが、本発明によれば、MnS、N
bS2、TiS2化合物のうち1種または2種以上の析出
物が均一に分散し、前記析出物の直上に微細なζ相が均
一に生成していることにより、悪影響は軽減できる。ま
た、硫黄または硫黄化合物を付着させる前に、アルカリ
電解脱脂等を行っても本発明の効果は変わらない。
【0038】鋼板表面への硫黄分の付着は、これらの溶
液を鋼板上に噴霧あるいは塗布してから乾燥させるか、
予熱された鋼板に噴霧することにより行うことができ
る。しかし、焼鈍中に鋼板中のMn、Nb、Tiと、S
とを反応させて、MnS、NbS2、TiS2化合物を析
出させることが主目的であるから、焼鈍時に鋼板表面に
Sが付着していればよく、その付着方法は上記溶液塗布
法に限定されず、電気めっき法、無電解めっき法、蒸着
法等どのような手段で行ってもよい。ただし、設備投資
の点を考慮すると、比較的簡便な溶液塗布法や無電解め
っき法が好ましい。焼鈍炉内での化学反応により、初期
付着時のS分布不均一はある程度緩和されるものの、初
期付着時に均一にSを分布させておくことがよいことは
言うまでもない。
【0039】鋼板の焼鈍は、通常用いられているラジア
ントチューブ方式の焼鈍炉を用いることができる。ま
た、弱酸化雰囲気で予熱を行う場合には、例えば直火加
熱方式の焼鈍炉を用いればよい。硫黄分付着の効率や溶
融亜鉛めっき装置全体の効率を考えると、これらのうち
昇温速度を速くすることができる直火加熱方式のほうが
好ましい。
【0040】本発明のめっき鋼板の溶融亜鉛めっきある
いは合金化溶融亜鉛めっき層中には、耐食性向上などを
目的として、主元素であるZn,Fe,Alの他に、A
s,Bi,Cd,Ce,Co,Cr,In,La,L
i,Mg,Mn,Ni,O,P,Pb,S,Sb,S
n,Ti,Zr等のうち1種または2種以上を含有させ
てもよく、これらを含有していても本発明の効果は損な
われない。
【0041】合金化処理工程においては、ガス加熱方
式、誘導加熱方式、直接通電加熱方式などの方法を採用
することができるが、合金化炉加熱方式の相違によって
本発明の効果に変わりはない。
【0042】本発明は、自動車用外板用途への適用を主
目的としているため、下地鋼板は冷延鋼板が主である
が、本発明は自動車の強度部材である骨組み構造部材や
足廻り部品のような熱延鋼板下地の場合にも本発明の効
果は得られる。また、本発明は、自動車部品に限らず、
建材、電機、家電などの用途にも適用することができ
る。
【0043】
【実施例】表1に示す6種類の冷延成分の鋼板を供試材
として、チオ硫酸ナトリウム(Na223)を20g
/L、またはチオ尿素(CH42S)を2g/L、20
g/L、200g/L含有する水溶液を作成し、バーコ
ーターにより一定量塗布後、誘導加熱方式の乾燥炉によ
り150℃で瞬時に乾燥させた。また、ブチルメルカプ
タン(C49SH)またはオクタデシルメルカプタン
(C1837SH)の5mMエタノール溶液に鋼板を浸漬
後乾燥させたものも作成した。さらに、ジアルキル2硫
化物をパラフィン系鉱物油に溶解したものを塗布したも
のも作成した。
【0044】
【表1】
【0045】これらの鋼板を溶融亜鉛めっきシミュレー
ターを用いて焼鈍しめっきを行った。焼鈍条件は、55
0℃x30秒、700℃x30秒、850℃x30秒の
3水準で、10%H2−N2(露点−40℃)中で行っ
た。焼鈍に際しては、一部について大気中で500℃x
30秒の弱酸化前処理を行う条件を付加した。
【0046】溶融亜鉛めっきは、Alを0.12%含む
460℃亜鉛めっき浴を用いて、侵入板温460℃、浸
漬時間3秒にてめっきした。めっき後、N2ガスワイパ
ーにより亜鉛付着量を片面当たり60g/m2に調整し
た。
【0047】めっき後のサンプルは、不めっき発生状
況、初期合金相形態の観察、0T曲げ試験によるめっき
密着性評価を行い、さらに、誘導加熱装置により、45
0,475,500,525,550,575,600
℃で20秒の合金化処理を行って、表層まで合金化でき
る温度により、合金化速度を比較した。また、皮膜中の
鉄含有率が10%±0.5%となるように合金化温度を
調整し、20秒間の合金化処理を行ったサンプルを用い
て、合金化ムラの発生状況を観察するとともに、90度
曲げ試験を行って耐パウダリング性を評価した。
【0048】以上のようにして製造した溶融亜鉛めっき
鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板について、めっき
品質を評価した結果を製造条件とともに表2〜5に示
す。なお、これらの表に示しためっき品質に関する評価
事項と評価基準は以下の通りである。
【0049】*1.不めっき(目視判定) ○:良好 ×:不めっきが認められる
【0050】*2.初期合金相(SEM観察) ○:微細なζ相が均一に生成 ×:ζ相がまばらに生成
【0051】*3.めっき密着性 ○:良好 △:めっき皮膜にクラック発生 ×:めっき剥離発生
【0052】*4.合金化速度 ○:良好 △:やや遅い ×:非常に遅い
【0053】*5.合金ムラ(目視判定) ○:良好 ×:スジムラが認められる
【0054】*6.耐パウダリング性(90°曲げ) ○:良好 ×:不合格
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
【0058】
【表5】
【0059】表2〜5に示すように、本発明例では全て
のめっき品質評価事項について良好な結果が得られたの
に対し、鋼板の組成が本発明の範囲から外れるか、硫黄
分の付着を行わないか、または焼鈍条件が本発明の範囲
から外れる比較例は、上記めっき品質評価事項のいずれ
かが劣っていた。
【0060】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
自動車内外板として用いた場合に、表面外観が良好で、
線状マークが生じず、高強度でかつめっき皮膜の均一性
に優れ、さらに密着性に優れたSi含有高強度溶融亜鉛
めっき鋼板、およびさらに合金化ムラが発生せず、耐パ
ウダリング性に優れたSi含有高強度合金化溶融亜鉛め
っき鋼板を得ることができる。また、これらを安定して
製造することができる製造方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のSi含有鋼において硫黄または硫黄化合
物を付着させて亜鉛めっきした場合および本発明の組成
範囲のSi含有鋼において硫黄または硫黄化合物を付着
させて亜鉛めっきした場合における焼鈍後の鋼板表面の
状態およびめっき後の初期合金層の状態を示す図。
【図2】本発明に係る皮膜の均一性および密着性に優れ
たSi含有高強度溶融亜鉛めっき鋼板の初期化合金相表
面の電子顕微鏡写真。
フロントページの続き (72)発明者 鷺山 勝 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、Mn含有量が0.2%以上、
    Nb含有量が0.005%以上、Ti含有量が0.01
    %以上のうち1または2以上を満たし、かつSiの含有
    量が0.2%以上であるSi含有高強度鋼板に溶融亜鉛
    めっきを行うに際し、硫黄または硫黄化合物をS量とし
    て0.1〜1000mg/m2付着させた後、水素を含
    む非酸化性雰囲気で680℃以上の温度で焼鈍し、その
    後、少なくとも0.05〜0.30%のAlを含む溶融
    亜鉛浴に浸漬してめっきを行うことを特徴とする、皮膜
    の均一性および密着性に優れたSi含有高強度溶融亜鉛
    めっき鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1の製造方法において、溶融亜鉛
    めっきする際に、予熱工程を弱酸化性雰囲気で行うこと
    を特徴とする、皮膜の均一性および密着性に優れたSi
    含有高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または請求項2の製造方法によ
    って溶融亜鉛めっきした後、さらにめっき層の合金化熱
    処理を行うことを特徴とする、皮膜の均一性および耐パ
    ウダリング性に優れたSi含有高強度合金化溶融亜鉛め
    っき鋼板の製造方法。
  4. 【請求項4】 重量%で、Mn含有量が0.2%以上、
    Nb含有量が0.005%以上、Ti含有量が0.01
    %以上のうち1または2以上を満たし、かつSiの含有
    量が0.2%以上であるSi含有高強度鋼板と、前記鋼
    板の少なくとも1つの表面上に形成された、S量に換算
    して0.1〜1000mg/m2の量の硫化物層と、前
    記硫化物層の表面上に形成された亜鉛めっき層とからな
    ることを特徴とする、皮膜の均一性および密着性に優れ
    たSi含有高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
  5. 【請求項5】 請求項4のSi含有高強度溶融亜鉛めっ
    き鋼板において、前記硫化物層は、MnS、NbS2
    TiS2化合物のうち1種または2種以上を含み、その
    表面にこれら化合物が均一に分散した状態で析出してお
    り、これら析出した化合物の直上に微細なζ相が均一に
    生成していることを特徴とする、皮膜の均一性および密
    着性に優れたSi含有高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
  6. 【請求項6】 請求項1または請求項2のSi含有高強
    度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法に従って溶融亜鉛めっ
    きした後、めっき層の合金化熱処理を行うことにより製
    造された、皮膜の均一性および耐パウダリング性に優れ
    たSi含有高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
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