JP2008144264A - 高強度溶融亜鉛めっき鋼板及び高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 - Google Patents

高強度溶融亜鉛めっき鋼板及び高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高Si含有鋼板を母材とした場合に、不めっきのない美麗な表面外観を有しめっき密着性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板、不めっきのない美麗な表面外観を有し耐パウダリング性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する
【解決手段】質量%で、Siを0.10〜3.0%含有する鋼組成を有する鋼板に溶融亜鉛めっきするに際し、下記Zの中から選ばれる元素の1種以上からなる金属及び/又は合金を、式(1)を満足するように鋼板表面に付着させるプレめっきを行った後に焼鈍し、その後溶融亜鉛めっきを施す。またはさらに合金化処理を行う。Z:Fe、Ni、Co、Cu、Sn。〔Z〕≧0.2×〔Si〕…(1)、〔Z〕:Zの元素の合計付着量(g/m)、〔Si〕:鋼中Si量(質量%)
【選択図】なし

Description

本発明は、Si含有高強度鋼板を母材とする溶融亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法に関し、特に不めっきのない美麗な表面外観を有しめっき密着性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板を製造する方法、また不めっきのない美麗な表面外観を有し耐パウダリング性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板を経済的にかつ高い生産性を有して製造する方法に関する。
近年、自動車、家電、建材等の分野において素材鋼板に防錆性を付与した表面処理鋼板として、安価に製造できかつ防錆性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板が使用されている。
一般的に、溶融亜鉛めっき鋼板は、スラブを熱延、冷延あるいは熱処理した薄鋼板を母材として用い、この母材鋼板表面を前処理工程にて脱脂および/または酸洗して洗浄した後、あるいは前処理工程を省略して予熱炉内で母材鋼板表面の油分を燃焼除去した後、還元性雰囲気中で600〜900℃程度の温度で加熱することで焼鈍され、また還元処理される。その後、非酸化性雰囲気中あるいは還元性雰囲気中で鋼板をめっきに適した温度まで冷却して大気に触れることなく微量Al(0.1〜0.2質量%程度)を添加した溶融亜鉛浴中に浸漬することで製造される。また合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、溶融亜鉛めっき後の鋼板を引き続いて合金化炉内で熱処理し、めっき層をFe-Zn合金化することで製造される。
ところで、近年、自動車、家電、建材等の分野で使用される鋼板では高性能化とともに軽量化が推進され、鋼板の高強度化が求められており、防錆性を兼ね備えた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の使用量が増加している。鋼板の高強度化にはSi、Mn、P、Al等の固溶強化元素の添加が行われている。中でもSiは鋼の延性を損なわずに高強度化できる利点があり、Si含有鋼板は高強度鋼板として有望である。しかしながら、Si含有高強度鋼板を母材とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板および高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板には以下の問題がある。
前述のように溶融亜鉛めっき鋼板は還元雰囲気中で600〜900℃程度の温度で加熱焼鈍を行った後溶融亜鉛めっき処理を行う。しかし、鋼中のSiは易酸化性元素であり、一般的に用いられる還元雰囲気中で選択表面酸化されて表面に濃化し、酸化物を形成する。Siの酸化物はめっき処理時の溶融亜鉛との濡れ性を低下させて不めっきを生じさせるので、鋼中Si濃度の増加とともに濡れ性が急激に低下し不めっきが多発する。また、不めっきに至らなくても、めっき密着性に劣るという問題がある。
さらに鋼中のSiが選択表面酸化されて表面に濃化すると、溶融亜鉛めっき後の合金化処理工程において著しい合金化遅延が生じる。その結果生産性を著しく阻害する問題、また生産性を確保するために過剰に高温で合金化処理すると耐パウダリング性の劣化を招く問題があり、そのため高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板では、高い生産性と良好な耐パウダリング性を両立させることが困難である。またSiを添加することで残留オーステナイト相が形成しやすくなることで機械的特性が良好であるメリットがある反面、合金化遅延を回避するため高温合金化すると残留オーステナイト相が不安定になり、機械的特性が劣化するため、Si添加によるメリットを享受できなくなる。
このような問題に対して、予め酸化性雰囲気中で鋼板を加熱して表面に酸化鉄を形成した後加熱することで還元焼鈍を行うことにより溶融亜鉛との濡れ性が改善されることが知られている(特許文献1参照)。
また、特許文献2には、溶融めっきに先立って硫黄または硫黄化合物をS量として0.1〜1000mg/m2付着させた後、予熱工程を弱酸化性雰囲気で行い、その後水素を含む非酸化性雰囲気中で焼鈍することで、めっき密着性と耐パウダリング性を向上させる方法が開示されている。
しかし、鋼中Si濃度の高い鋼板の場合、特許文献1に記載される方法だけでは酸化が進まず、不めっきの発生を防止するのに必要な量の酸化鉄を得ることが困難である。そのため還元処理後のSiの表面濃化の抑制が不十分になり、良好なめっき品質を得ることが出来なかった。
特許文献2に記載される方法では、鋼中Si濃度が0.2%を超えるような鋼板の場合、Si表面濃化を抑制できないことから、不めっきの発生を確実に防止することが困難である。
特許第2587724号公報 特開平11−50223号公報
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、高Si含有鋼板を母材とした場合に、不めっきのない美麗な表面外観を有しめっき密着性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板を製造する方法、また不めっきのない美麗な表面外観を有し耐パウダリング性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板を高い生産性を有して製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、高Si含有鋼板を母材とし、この鋼板を焼鈍した後溶融亜鉛めっきする際に、焼鈍前に鋼板表面にFe、Ni、Co、Cu、Snのうちから選ばれる少なくとも1種以上の元素を含む化合物を所定量プレめっきすることにより、溶融めっき前の還元処理後の表面状態を最適化できることを見出した。すなわち上述の元素をプレめっきすることにより、焼鈍加熱時に鋼中のSiの選択酸化に伴う鋼板表面への拡散が、プレめっき層直下において阻害されるため、還元焼鈍時に鋼板表面が清浄化され溶融亜鉛との反応性に優れるようになる。この結果、溶融亜鉛との濡れ性が改善され、良好なめっき外観が得られるようになることを見出した。
さらに前記プレめっき後、前記還元焼鈍前にS、Cl、Na、K、Ni、C、N、B、Se、Brのうちから選ばれる少なくとも1種以上の元素を付着させることにより、さらに良好な表面状態が得られることを見出した。すなわちこれらの元素を付着させておくことにより、鋼中Si、Mn表面濃化がさらに抑制され、溶融亜鉛との反応性が向上し、めっき密着性が向上することを見出した。
さらに、前記プレめっきを行うことで、またプレめっき後還元焼鈍前にS、Cl、Na、K、Ni、C、N、B、Se、Brのうちから選ばれる少なくとも1種以上の元素を付着させることで、合金化処理時の合金化反応が促進されることを見出した。
本発明はこの知見に更に検討を加えてなされた。上記課題を解決する本発明の手段は、下記のとおりである。
[1]質量%で、Siを0.1〜3%含有する鋼組成を有する鋼板に溶融亜鉛めっきするに際し、下記Zの中から選ばれる元素の1種以上からなる金属及び/又は合金を、下記式(1)を満足するように鋼板表面に付着させるプレめっきを行った後に焼鈍し、その後溶融亜鉛めっきを施すことを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
Z:Fe、Ni、Co、Cu、Sn
〔Z〕≧0.2×〔Si〕…(1)
ただし、
〔Z〕:Zの元素の合計付着量(g/m2)
〔Si〕:鋼中Si量(質量%)
[2]前記プレめっきを施した後、前記焼鈍する前に、下記のXの中から選ばれる元素の内の1種以上を含有する化合物の1種以上を、下記式(2)を満足するように鋼板表面に付着させることを特徴とする[1]の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
X:S、Cl、Na、K、Ni、C、N、B、Se、Br
〔X〕≧(1/500)×〔M〕+0.2×〔Si〕…(2)
ただし、
〔X〕:Xの元素の合計付着量(mg/m2
〔M〕:片面あたり溶融亜鉛めっき付着量(g/m2
〔Si〕:鋼中Si量(質量%)
[3]前記鋼板は、質量%で、C:0.0001〜0.5%を含有するとともに、Mn:0.1〜5.0%及びAl:0.01〜5.0%のうちの1種以上を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1または2に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[4]前記鋼板は、さらに、質量%で、Cr:0.01〜2.0%、Mo:0.01〜1.0%及びB:0.001〜0.01%のうちから選ばれる1種以上を含有することを特徴とする[3]に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[5]前記鋼板は、さらに、質量%で、V:0.001〜0.1%、Nb:0.001〜0.1%及びTi:0.001〜0.1%のうちから選ばれる1種以上を含有することを特徴とする[3]又は[4]に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[6]前記鋼板は、さらに、質量%で、Cu:0.01〜2.0%、Ni:0.01〜2.0%及びW:0.001〜0.1%のうちから選ばれる1種以上を含有することを特徴とする[3]〜[5]のいずれかに記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[7] [1]〜[6]のいずれかの高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法で溶融亜鉛めっきしたのち、さらに合金化処理を行うことを特徴とする高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
本発明によれば、めっき処理時に溶融亜鉛とのめっき濡れ性が改善されて不めっきの発生が防止される。また、合金化処理の際に合金化反応が促進され、合金化処理温度を高温にする必要がなくなることで、耐パウダリング性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造できるようになる。合金化処理温度を高温にする必要がなくなることで、強度延性バランスが良好な高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造できるようになり、また高い生産性で高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造できるようになる。
以下、本発明について詳しく説明する。
先ず、鋼板の化学成分について説明する。なお、各元素の含有量の単位はいずれも「質量%」であるが、特に断らない限り単に「%」で示す。
Si:0.1〜3.0%
Siは、固溶強化により鋼を強化するとともに、炭化物の生成を抑制し、オーステナイトを安定化し、残留オーステナイト相の生成を促進する作用を有し、良好な材質を得るために有効な元素である。このような作用は、Si含有量が0.1%以上で認められる。また、Si量が0.1%であれば還元処理時のSi表面濃化はそれほど顕著ではなく、従って不めっきが多発することがなく、また著しい合金化遅延がないためである。一方、3.0%を超えて含有すると、めっき性が顕著に劣化する弊害が生じる。以上より、Siは0.3%以上3.0%以下の範囲が好ましい。
その他の添加元素については本発明の効果を妨げるものではなく、特に限定するものではないが、必要に応じて、以下の元素を適量加えることで、めっき特性を向上させることができる。
C:0.01〜2.0%
Cは、鋼板の高強度化に有効な元素であり、さらに残留オーステナイトや低温変態相の生成に効果があり、TS×Elの向上を確保するために有効な元素である。しかし、C含有量が0.01%未満では所望の機械特性(TS×El)を得がたい。一方、2.0%を超えると、溶接性の劣化を招く。以上より、Cは0.01%以上2.0%以下の範囲が好ましい。
さらに、強度−伸びバランスの向上を有効に発現させるために、下記の元素のうちの1種または2種以上を含有させることが好ましい。
Mn:0.1〜5.0%
Mnは、固溶強化により鋼を強化するとともに、鋼の焼入性を向上し、さらに残留オーステナイトや低温変態相の生成を促進する作用を有し、良好な材質を得るための有効な元素である。このような作用は、Mn含有量が0.1%以上で認められる。一方、5.0%を超えて含有しても効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できなくなりコストの上昇を招く。以上より、Mnは0.1%以上5.0%以下の範囲が好ましい。
Al:0.01〜5.0%
Alは、Siと同様に炭化物の生成を抑制し、残留オーステナイト相の生成を促進する作用を有し、良好な材質を得るために有効な元素である。このような作用は、0.01%以上の含有で認められる。一方、5.0%を超える含有は、鋼中の介在物量を増加させ、延性を低下させる。以上より、Alは0.01%以上5.0%以下の範囲が好ましい。
以上の添加元素で、本発明が目的とする特性は得られるが、上記の添加元素に加えて、所望の特性に応じてさらに以下の元素を含有することができる。
Cr:0.01〜2.0%、Mo:0.01〜1.0%、B:0.001〜0.01%の1種または2種以上
鋼の焼入性を向上し、低温変態相の生成を促進する作用を有する元素である。このような作用は、Cr:0.01%以上、Mo:0.01%以上、B:0.001%以上含有して認められる。一方、Cr:2.0%、Mo:1.0%、B:0.01%を超えて含有しても効果が飽和し、含有量に見合う効果を期待できず、経済的に不利となる。以上より、含有する場合、Crは0.01%以上2.0%以下、Moは0.01%以上1.0%以下、Bは0.001%以上0.01%以下が好ましい。
V:0.001〜0.1%、Nb:0.001〜0.1%、Ti:0.001〜0.1%の1種または2種以上
炭窒化物を形成し、鋼を析出効果により高強度化する作用を有する元素であり、必要に応じて添加できる。このような作用は、V、Nb、Tiいずれも0.001%以上含有して認められる。一方、V、Nb、Tiいずれも0.1%を超えて含有する場合、過度に高強度化し、延性が劣化してしまう。以上より、含有する場合、Vは0.001%以上0.1%以下、Nbは0.001%以上0.1%以下、Tiは0.001%以上0.1%以下が好ましい。
Cu:0.01〜2.0%、Ni:0.01〜2.0%、W:0.001〜0.1%の1種または2種以上
Si、Mnと複合添加する事により、Γ相の生成を抑制し、めっき密着性を向上させる効果がある。このような作用はCu:0.01%以上、Ni:0.01%以上、W:0.001%以上含有して認められる。一方、Cu:2.0%、Ni:2.0%、W:0.1%を超えて含有しても効果が飽和し、含有量に見合う効果を期待できず、経済的に不利となる。以上より、含有する場合、Cuは0.01%以上2.0%以下、Niは0.01%以上2.0%以下、Wは0.001%以上0.1%以下が好ましい。
なお、本発明に用いる鋼板は、上記した化学成分以外は、残部Feおよび不可避的不純物からなる。不可避的不純物としては、P:0.2%以下、S:0.02%以下が許容できる。
上記組成を有する鋼板は、熱間圧延後酸洗工程で脱スケール処理された熱延鋼板、冷延圧延された冷延鋼板のいずれでもよい。該鋼板の製造方法は限定されず、常法でよい。
本発明では、上記組成を有する鋼板の表面に、Z:Fe、Ni、Co、Cu、Snの中から選ばれる元素の1種以上からなる金属及び/又は合金を、電気めっきなどによるプレめっきにより鋼板表面に付着させる。前記元素の鋼板表面の付着量(プレめっき付着量)は、鋼中Si量で決定される下式(1)を満たすことが必要である。これは鋼中Si量が増加するに伴い、Siの表面濃化抑制効果を大きくする必要があり、そのために鋼中Si量に応じてプレめっき付着量を多くする必要があるからである。
〔Z〕≧0.2×〔Si〕 …(1)
ここで、
〔Z〕:Zの元素の合計付着量(g/m2)
〔Si〕:鋼中Si量(質量%)
である。
なお、プレめっき付着量が多い場合に鋼中Siの表面濃化抑制効果が高く溶融亜鉛との濡れ性が改善する理由は必ずしも明らかではないが、焼鈍加熱時にプレめっき、下地鋼板界面において、鋼中Siの表面濃化が阻害され、その後の還元焼鈍時のSiの表面濃化挙動に影響を及ぼしていると考えられる。
Zの元素のプレめっき方法は特に問わないが、一般的な方法として電気めっきによるプレめっき方法が挙げられる。電気めっきによるプレめっき方法は公知の方法でよい。
前記プレめっきの付着量(片面当たりの付着量)は、Zの元素の鋼板表面の合計付着量(g/m2)として、0.02〜10g/m2であれば好適である。下限を0.02g/m2と規定したのは、これ未満であれば前述の本発明の効果が得られず、上限を10g/m2と規定したのは、10g/m2超えの場合には本発明の効果が飽和して経済的に不利になるからである。
プレめっき付着量は、単位面積あたりのサンプルについて、プレめっきを剥離して剥離液中の元素を定量分析し、その分析値から求めることができる。
本発明においては、さらにSiの表面濃化を抑制する効果をより促進させ、還元焼鈍後の鋼板表面を活性化させる効果を促進させるため、前述のプレめっきを行った後、焼鈍を行う前に、さらに、X:S、Cl、Na、K、Ni、C、N、B、Se、Brの中から選ばれる1種以上の元素を含有する化合物を、鋼板表面に下記式(2)を満足するように付着させることがより好ましい。
〔X〕≧(1/500)×〔M〕+0.2×[Si] …(2)
ここで、
〔X〕:Xの元素の合計付着量(mg/m2
〔M〕:片面あたり溶融亜鉛めっき付着量(g/m2)、
〔Si〕:鋼中Si量(質量%)
である。
これら元素を付着させることで鋼板表面が活性化され、めっき浴中におけるFeとZnの初期合金化が促進され、めっき密着性に極めて優れた溶融亜鉛めっき鋼板が得られ、また、耐パウダリングに優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板が得られる。
ここで、前記式(2)は、以下の考えに基き決定された。
Xの元素はSiの表面濃化を抑制するために鋼板表面に付着させる。同一条件下ではSi表面濃化量は鋼中Si量にほぼ比例し、これを抑制するのに必要なXの量も鋼中Si量にほぼ比例する。また、Xはめっき密着性及びパウダリング性を向上させるために鋼板表面に付着させる。めっき密着性及びパウダリング性はめっき付着量にほぼ比例して劣化し、劣化を防止するのに必要なXの元素量もめっき付着量にほぼ比例する。Si表面濃化を抑制し、また、めっき密着性及びパウダリング性の劣化を防止するのに必要なXの付着量〔X〕は、〔X〕≧a×〔M〕+b×[Si]を満足させる必要があると考えた。係数a、bは試験結果から決定した。
これら元素を付着させることで表面が活性化される理由は明らかでないが、例えばNOF(無酸化炉)やDFF(直火加熱炉)型焼鈍炉での酸化では表面状態を変化させることで、プレめっきを行わない場合に比べて、Feの酸化を促進してSiの選択酸化を防止し、次工程の還元焼鈍時にFeのみが還元されるため、結果としてSi酸化物を内部酸化としてトラップさせることが促進される。その結果、最表層は還元された活性な純金属により覆われる。この結果、溶融めっき時に溶融亜鉛との濡れ性がさらに向上するのみならず、溶融亜鉛との反応性が向上するため、めっき密着性が向上する。また、RTF(ラジアントチューブ炉)型の焼鈍炉では、鋼板表層での再結晶時に鋼中の易酸化元素や不可避的不純物の鋼板表面への濃化を抑制する効果があると考えられる。
ここで、鋼板表面に、S、Cl、Na、K、Ni、C、N、B、Seの元素を含有する化合物を付着させるために使用する化合物としては、以下の化合物を例示できる。
(1)水酸化ナトリウム(NaOH)、硫酸ナトリウム(Na2SO4)、硫化ナトリウム(Na2S)、チオ硫酸ナトリウム(Na2S2O3)、塩化ナトリウム(NaCl)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、クエン酸ナトリウム(Na3C6H5O7)、シアン酸ナトリウム(NaCNO)、酢酸ナトリウム(CH3COONa)、リン酸水素ナトリウム(Na2HPO4)、リン酸ナトリウム(Na3PO4)、フッ化ナトリウム(NaF)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、硝酸ナトリウム(NaNO3)、シュウ酸ナトリウム((COONa)2)、四ほう酸ナトリウム(Na2B4O7)、酸化ナトリウム(Na2O)等のNa含有化合物
(2)水酸化カリウム(KOH)、酢酸カリウム(CH3COOK)、ほう酸カリウム(K2B4O7)、炭酸カリウム(K2CO3)、塩化カリウム(KCl)、シアン酸カリウム(KCNO)、クエン酸水素カリウム(KH2C6H5O7)、フッ化カリウム(KF)、モリブデン酸カリウム(K2MoO4)、硝酸カリウム(KNO3)、過マンガン酸カリウム(KMnO4)、リン酸カリウム(K3PO4)、硫酸カリウム(K2SO4)、チオシアン酸カリウム(KSCN)、シュウ酸カリウム((COOK)2)等のK含有化合物
(3)塩酸(HCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化アンモニウム(NH4Cl)、塩化アンチモン(SbCl3)、塩化カリウム(KCl)、塩化鉄(FeCl2、FeCl3)、塩化チタン(TiCl4)、塩化銅(CuCl)、塩化バリウム(BaCl2)、塩化モリブデン(MoCl5)、塩素酸ナトリウム(NaClO3)等のCl含有化合物
(4)臭化鉄等のBr含有化合物
(5)硫酸(H2SO4)、硫酸ナトリウム(Na2SO4)、亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)、硫化ナトリウム(Na2S)、硫酸アンモニウム((NH4)2SO4)、硫化アンモニウム((NH4)2S)、チオ硫酸ナトリウム(Na2S2O3)、硫酸水素ナトリウム(NaHSO4)、硫酸水素アンモニウム(NH4HSO4)、硫酸カリウム(K2SO4)、硫酸鉄(FeSO4、Fe2(SO4)3)、硫酸アンモニウム鉄(Fe(NH4)2(SO4)2、FeNH4(SO4)2)、硫酸バリウム(BaSO4)、硫化アンチモン(Sb2S3)、硫化鉄(FeS)、チオ尿素(H2NCSNH2)、二酸化チオ尿素((NH2)2CSO2)、SCH基のチオフェン酸塩類、SCN基を有するチオシアン酸塩類等のS含有化合物
(6)セレン酸カリウムなどのSe含有化合物
(7)タンニン酸、アジピン酸等のカルボン酸含有化合物、糖類、フマル酸、フタル酸、フェノール、アニリン、安息香酸等の芳香族環含有化合物、グリシン、アラニンなどのアミノ酸、エチレングリコール、アセチレングリコール等の多価アルコール類、アクリル酸、ポリエステル、エポキシ、それらの変性化合物等の樹脂類等のC含有化合物
(8)Ni3O4、NiOOH(オキシ水酸化ニッケル)、NiCl2、LiNiO2、Ni(OH)2、Ni(OH)3等のNi含有化合物
(9)NH3、HNO3、HNO2、ピクリン酸、NCl3、BN、ALN、I3N等のN含有化合物
(10)BN、ホウ酸、ホウ砂、ジボラン等のB含有化合物
なお、上記は代表的な例を示したのであって、上記以外のS、Cl、Na、K、Ni、C、N、B、Se、Brを含有する化合物を使用しても本発明の効果を好適に得られることは言うまでもない。
前記Xの元素を含む化合物を鋼板に付着させる方法は特に限定するものではなく、例えば物理的に付着させればよいので、前記化合物を水または有機溶剤等に溶解し、またはこれらと混合したものを用い、この溶解液又は混合液中に鋼板を浸漬させる方法、この溶解液又は混合液をスプレー等で噴霧する方法、ロールコーター等で塗布する方法を用いることができる。また、その後に乾燥させても本発明の効果は変わらない。また前記化合物を鋼板に直接塗布しても同様に本発明の効果を得ることができる。
処理温度は特に規定するものではないが、概ね5℃〜90℃程度が望ましい。これは、5℃未満及び90℃を超える場合、温度の管理が困難であり、経済的に不利になるためである。
前記化合物を付着させる前に必要に応じて電解脱脂や酸洗等の従来から用いられている前処理を施しても本発明の効果を得ることができる。また、前記化合物を付着させた後に必要に応じて電解脱脂や酸洗等の従来から用いられている前処理を施したとしても、前記化合物が鋼板上に付着していれば本発明の効果を得ることができる。さらに、前記化合物を含む圧延油を用いて圧延時に付着させる方法を用いてもよい。いずれにしても、鋼板を酸化させる際に前記Xの元素を含む化合物が鋼板表面に付着していれば良いのである。
前記Xの元素を含む化合物の付着量(片面当たりの付着量)は、Xの元素の合計量として0.05〜1000mg/m2であれば好適である。下限を0.05mg/m2と規定したのは、これ未満であれば前述の本発明の効果が得られず、上限を1000mg/m2と規定したのは、1000mg/m2超えの場合には本発明の効果が飽和して経済的に不利になるからである。
鋼板に付着させたXの元素の付着量の定量方法としては湿式分析法により測定することができる。すなわち、Xの元素を含む化合物を付着させた鋼板をから、プレめっきとXの元素を含む塗布層を溶解し、溶解液中のXの元素の合計量をICP法等の手法で定量して求めることができる。
本発明では、前述の処理を行った鋼板を焼鈍する。前記の処理後鋼板表面を酸化させた後焼鈍を行ってもよいし、前記の処理後鋼板表面を酸化させずに焼鈍を行ってもよい。
鋼板を酸化させる手段としては、例えば酸化性雰囲気中で鋼板を加熱することで容易に達成することができるが、酸化手段の違いが本発明の効果を妨げるものではなく、鋼板を酸化することができる手段であれば特に限定するものではない。
鋼板を加熱する手段としては、バーナ加熱、誘導加熱、放射加熱、通電加熱等の従来から使用されている加熱方式でよく、特に限定するものではない。例えば、バーナ熱方式としては従来から用いられている酸化炉や無酸化炉等の加熱炉を使用することができる。無酸化炉(NOF)の場合、例えば直火バーナの空気比を1.0超えとすることで容易に鋼板を酸化することができる。ここで、空気比は、燃料ガスを完全燃焼させるのに必要な理論空気量に対する燃焼用空気量の比である。空気比1.0超えでは、直火バーナに、燃焼ガスの完全燃焼に必要な理論空気量よりも過剰の空気が供給される。
また、誘導加熱方式、放射加熱方式、通電加熱方式の場合は、加熱する鋼板近傍の雰囲気を酸化性雰囲気とすることで容易に鋼板を酸化することができる。酸化性雰囲気としては、酸素、水蒸気、二酸化炭素等の酸化性ガスを1種または2種以上含有する雰囲気が一般的であるが、鋼板を酸化することができれば特に限定するものではない。
なお、上記は代表的な例を示したのであって、いずれにしても鋼板を酸化させることができれば良く、その手段は特に限定するものではない。
溶融めっき前の焼鈍方法は従来から行われている方法に準じて行えばよく、特に限定するものではない。例えば放射加熱方式の焼鈍炉で水素を含む還元性雰囲気中で鋼板を600〜900℃程度の温度に加熱して還元焼鈍処理するのが一般的ではあるが、特に限定するものではなく、鋼板表面の酸化皮膜を還元することができる方法であれば本発明の効果を妨げるものではない。また雰囲気は水素-窒素系が好ましく、水素は1〜90%(vol%)が好ましい。1%未満だと露点を下げても還元が不十分であり、90%以上は経済的に不利である。
本発明は、前記還元焼鈍処理後に非酸化性あるいは還元性雰囲気中でめっきに適した温度まで冷却され、めっき浴中に浸漬してめっきする。溶融亜鉛めっき処理は従来から行われている方法に従えばよい。例えば、めっき浴温は440〜520℃程度、鋼板のめっき浴浸漬温度はほぼめっき浴温に等しくし、亜鉛めっき浴中のAl濃度は0.1〜0.2質量%とするのが一般的ではあるが、特に限定するものではない。あるいは、めっき鋼板の用途によってはめっき温度、めっき浴組成等の上記めっき条件を変更する場合があるが、めっき条件の違いは本発明の効果に何ら寄与するものではなく、特に限定するものではない。例えば、めっき浴中にAl以外にPb、Sb、Fe、Mg、Mn、Ni、Ca、Ti、V、Cr、Co、Sn等の元素が混入していても本発明の効果は何ら変わらない。
めっき後のめっき層の厚さを調整する方法は特に限定するものではないが、一般的にガスワイピングが使用され、ガスワイピングのガス圧、ワイピングノズル/鋼板間距離等により調整される。このとき、めっき層の厚さは特に限定するものではないが、20〜150g/m2が好ましい。20g/m2未満では防錆性が充分得られない。一方、150g/m2超えでは防錆性が飽和し、一方で加工性、経済性を損なうので好ましくは150g/m2以下とする。但し、めっき層の厚さの違いは本発明の効果を妨げるものではなく、特に限定するものではない。
本発明では前記溶融亜鉛めっきの後に必要に応じて合金化処理を施す。前述のように本発明によれば、焼鈍時のSi表面濃化を抑制することができるのでSi含有鋼板での著しい合金化遅延という従来技術での問題を解消することができる。その結果、耐パウダリング性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板を、生産性を阻害することなく製造することができる。合金化処理方法はガス加熱、インダクション加熱や通電加熱等の従来から行われているどのような加熱方法を用いてもよく、特に限定するものではない。
また、合金化処理条件は特に限定するものではなく、例えば合金化処理板温は460〜600℃程度、合金化保持時間は5〜60秒程度とするのが一般的ではあるが、合金化処理条件の違いが本発明の効果を妨げるものではない。
以上説明したとおり、本発明によれば、不めっきを防止して美麗な外観を有し、まためっき密着性に優れる溶融亜鉛めっき鋼板を製造できる。また合金化処理の際に合金化温度を低下できることから、耐パウダリング性に優れるだけでなく、生産性を損なうことなく、経済的に、外観ムラがなく美麗な外観を有する合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造できる。また、機械的特性については、残留オーステナイト相を安定化できることから、強度伸びバランスの優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得ることができる。
以下、本発明を、実施例に基づいて具体的に説明する。
表1に示した鋼組成を有し、残部Fe及び不可避的不純物からなる鋼スラブを加熱炉で1260℃、60分加熱し、引き続き2.8mmまで熱間圧延をして540℃で巻き取った。その後酸洗で黒皮スケールを除去して、1.6mmまで冷間圧延した。
Figure 2008144264
前記で作製した鋼板を脱脂、酸洗の後、電気めっきにより、本発明で規定するZの元素のいずれか1種を含有する化合物をプレめっきした。一部鋼板は、さらにプレめっきした鋼板表面にロールコーター法で、本発明で規定するXの元素の1種以上を含む化合物の水溶液を塗布し、オーブンで乾燥した。
前記処理の後、焼鈍炉に直火型炉(DFF)を備えるCGL又はRTF型焼鈍炉を備えるCGLで、焼鈍したあと引き続き溶融亜鉛めっき、合金化処理をした。また、一部合金化処理を行わない溶融亜鉛めっき鋼板を作成した。
プレめっき、Xの元素の1種以上を含む化合物の水溶液の塗布、CGLの各条件を以下に記載する。
(1)プレめっき
プレめっきのめっき浴組成とめっき条件を以下に記載する。Fe、Ni、Cu、Sn付着量は、めっき時間を調整することで調整した。Coめっきについては、浸漬時間を調整することでCo付着量を調整した。
Feめっき:
浴組成:塩化第一鉄(FeCl2・4H2O)300g/L、塩化カルシウム(CaCl2)180g/L
めっき条件:浴温88℃、pH1.5、電流密度5A/dm2
Niめっき:
浴組成:塩酸浴;塩化ニッケル(NiCl2・6H2O)100g/L
めっき条件:浴温20℃、pH1.5、電解条件5A/dm2
Cuめっき:
浴組成:ピロリン酸(銅)浴;ピロリン酸銅(Cu2P2O7・3H2O)100g/L、ポリりん酸カリ(K4P2O7・3H2O)300g/L、アンモニア(NH3)3mL/L、
めっき条件:浴温55℃、pH8.5、電解条件5A/dm2
Snめっき:
浴組成:硫酸浴:硫酸第一すず(SnSO4)40g/L、硫酸50g/L、フェノールスルホン酸40g/L、ゼラチン2g/L、β−ナフトール1g/L
めっき条件:浴温20℃、pH1.5、電解条件10A/dm2
Coめっき(無電解めっき):下記溶液に浸漬させることでCoめっきした。
浴組成:塩化コバルト(CoCl2・6H2O)30g/L、次亜リン酸ナトリウム(NaH2PO2・H2O)20g/L、くえん酸ナトリウム(Na2(CH2)2(COOH)2)35g/L、塩化アンモン(NH4Cl)50g/L
めっき条件:pH9.5、浴温95℃
(2)Xの元素を含む化合物の塗布
ロールコーター法で本発明のXの元素を含有する化合物の水溶液(50℃)を塗布し、オーブンで、200℃で20秒乾燥した。Xの元素の付着量は、水溶液濃度を変化させることで制御した。
(3)CGL
DFF型焼鈍炉を備えるCGLでは、DFFは空気比:0.8〜1.2で550〜650℃まで加熱し、鋼板表面を酸化し、RTFで850℃で加熱することで還元焼鈍した(N2-H2雰囲気でH2濃度が5vol%)後引き続き、460℃のAl含有Zn浴(Al濃度0.135%)にて溶融亜鉛めっきを施した。亜鉛めっき付着量はガスワイピングにより片面当たり20〜150g/m2に調節した。合金化処理温度は540℃で行い、処理時間を調整してFe濃度が10%(質量%)になるようにした。
RTF型焼鈍炉を備えるCGLでは、RTFで850℃で加熱することで還元焼鈍した。還元焼鈍後は、前述のDFF型焼鈍炉を備えるCGLでの条件と同様の条件とした。
(4)Z、Xの元素の付着量
Zの元素の合計付着量(プレめっき付着量)は、プレめっき後のサンプルについて、プレめっきを剥離して剥離液中の元素を定量分析し、その分析値から片面単位面積当たりの付着量を求めた。
Xの元素の付着量は、20質量%NaOH-10質量%トリエタノールアミン水溶液195ccと35質量%過酸化水素溶液7ccの混合溶液に、Xの元素含有化合物の水溶液を塗布後の鋼板を浸漬してプレめっき層と塗布層を溶解し、溶解液中のXの元素の合計量をICP法で定量し、片面単位面積当たりの付着量として求めた。
<めっき外観>
溶融亜鉛めっきままのめっき鋼板(溶融亜鉛めっき鋼板)の表面外観を目視観察し、不めっき有無を評価した。不めっきがない場合は良好、不めっきがある場合は不良とした。
合金化処理後のめっき鋼板(合金化溶融亜鉛めっき鋼板)の表面外観を目視観察し、合金化遅延による外観ムラの有無を評価した。ムラがないものは良好、ムラがあるものは不良とした。さらに、両方の評価がいずれも良好なものは、○:外観良好と判定し、少なくともいずれか一方が不良のものは、×:外観不良と判定した。
<溶融亜鉛めっき鋼板のめっき密着性>
ボールインパクト試験を行い、テープ剥離した際のめっき剥離状態を評価した。試験条件は、直径1/2インチの半球状突起の上に載せた溶融亜鉛めっき鋼板上に、2.8kgの重りを1mの高さから落下させた後、凸側面のテープ剥離を行い、めっき剥離程度に応じて以下の通り評価した。○、◎が合格である。
◎:めっき剥離なし(良好)
○:めっき剥離僅かにあり(概ね良好)
×:めっき剥離あり(不良)
<合金化溶融亜鉛めっき鋼板の耐パウダリング性>
耐パウダリング性は、めっき鋼板に粘着テープを貼り、テープ貼り付け面を内側にして曲げ半径1.6mmで90°曲げ戻しを行った場合の単位長さ当たりの剥離量を蛍光X線によりZnカウント数を測定し、下記の基準に照らしてランク1、2、3のものを良好(◎)、4のものを概ね良好(○)、5のものを不良(×)として評価した。○、◎が合格である。
蛍光X線カウント数:ランク
0−500未満 :1(良)
500−1000未満 :2
1000−3000未満:3
3000−5000未満:4
5000以上 :5(劣)
<耐食性>
寸法70mm×150mmの合金化溶融亜鉛めっき鋼板について、JIS Z 2371(2000年)に基づく塩水噴霧試験を3日間行い、腐食生成物をクロム酸(濃度200g/L、80℃)を用いて1分間洗浄除去し、試験前後のめっき腐食減量片面あたり;g/m2・日)を重量法にて測定し、下記基準で評価した。○、◎が合格である。
◎(良好):15g/m2・日未満
○(概ね良好):15g/m2・日〜20g/m2・日未満
×(不良):20g/m2・日以上
<機械的特性>
機械的特性の評価は、合金化処理溶融亜鉛めっき鋼板からJIS5号引張試験片を採取し、引張試験を行って測定した引張強さTS(MPa)及び伸びEl(%)より、TS×Elの値が20000MPa・%以上である場合を良好な強度延性バランスを示すとして、機械的特性良好(○)とし、TS×Elの値が20000MPa・%以未満である場合を機械的特性不良(×)とした。TS×Elの値が20000MPa・%以上であれば、自動車用用途として十分な強度・伸びバランスを有すると考えられるためである。
供試材の構成及び評価結果を表2〜表5に示す。
Figure 2008144264
Figure 2008144264
Figure 2008144264
Figure 2008144264
表2〜表5から明らかなように、本発明法で製造された実施例のめっき鋼板は、Siを高濃度で含有するにも係わらず、溶融亜鉛めっきまま、合金化処理後のいずれの場合もめっき外観が良好であり、まためっき密着性、耐パウダリング性が良好である。また、合金化処理温度が540℃であるので、Si添加鋼において残留オーステナイト相が形成しやすくなり、強度延性バランスに優れ、また合金化処理の際に生産性が低下する問題もない。
本発明法で製造された実施例のめっき鋼板のうちでは、例えば実施例7と実施例9の対比からわかるように、請求項2に係る発明範囲を満足するものは、めっき密着性、耐パウダリング性がより良好である。
一方、本発明範囲を満足しない比較例の合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、耐パウダリング性が劣る。
本発明は、不めっきのない美麗が表面外観を有し、密着性に優れるSi含有高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法として利用できる。また、本発明は、不めっきのない美麗が表面外観を有し、耐パウダリング性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法として利用することができる。

Claims (7)

  1. 質量%で、Siを0.1〜3%含有する鋼組成を有する鋼板に溶融亜鉛めっきするに際し、下記Zの中から選ばれる元素の1種以上からなる金属及び/又は合金を、下記式(1)を満足するように鋼板表面に付着させるプレめっきを行った後に焼鈍し、その後溶融亜鉛めっきを施すことを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
    Z:Fe、Ni、Co、Cu、Sn
    〔Z〕≧0.2×〔Si〕…(1)
    ただし、
    〔Z〕:Zの元素の合計付着量(g/m2)
    〔Si〕:鋼中Si量(質量%)
  2. 前記プレめっきを施した後、前記焼鈍する前に、下記のXの中から選ばれる元素の内の1種以上を含有する化合物の1種以上を、下記式(2)を満足するように鋼板表面に付着させることを特徴とする請求項1記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
    X:S、Cl、Na、K、Ni、C、N、B、Se、Br
    〔X〕≧(1/500)×〔M〕+0.2×〔Si〕…(2)
    ただし、
    〔X〕:Xの元素の合計付着量(mg/m2
    〔M〕:片面あたり溶融亜鉛めっき付着量(g/m2
    〔Si〕:鋼中Si量(質量%)
  3. 前記鋼板は、質量%で、C:0.0001〜0.5%を含有するとともに、Mn:0.1〜5.0%及びAl:0.01〜5.0%のうちの1種以上を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1または2に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  4. 前記鋼板は、さらに、質量%で、Cr:0.01〜2.0%、Mo:0.01〜1.0%及びB:0.001〜0.01%のうちから選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項3に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  5. 前記鋼板は、さらに、質量%で、V:0.001〜0.1%、Nb:0.001〜0.1%及びTi:0.001〜0.1%のうちから選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項3又は4に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  6. 前記鋼板は、さらに、質量%で、Cu:0.01〜2.0%、Ni:0.01〜2.0%及びW:0.001〜0.1%のうちから選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項3〜5のいずれかの項に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかの項に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法で溶融亜鉛めっきしたのち、さらに合金化処理を行うことを特徴とする高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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