JP2011214102A - めっき密着性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明に係る合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法は、Si:1.0〜3.0%を含有する鋼を熱間圧延した後、600〜800℃で巻取りを行い、70〜90℃で10秒以上酸洗を行なった後、片面当たり付着量3〜8g/m2の鉄系プレめっきを施すことを特徴とするものである。
【選択図】なし
Description
はじめに、本発明者らは、合金化溶融亜鉛めっき鋼板のめっき層に形成されるΓ層とめっき層中のFe含有量との関係について調べた。その結果、溶融亜鉛めっき後のめっき層中のFe量を低減しておけば、合金化処理によって生成するΓ相も抑制できるため、加工時にΓ層が起点となってクラックが生じるという従来技術の問題を解決できることが分かった。特に溶融亜鉛めっき処理に先立って鉄系プレめっきを施しておけば、めっき層中のFe量の制御が容易であることから、本発明では鉄系プレめっきを行うこととした。しかし鉄系プレめっきだけでは不十分であり、合金化処理時に素地鋼板側からFeが拡散してくると、めっき層中のFe量が増加してΓ層が生成することから、素地鋼板側から拡散してくるFeを抑制しなければならない。
Siは、延性や加工性を劣化させることなく強度を高めるのに有効な元素であり、このような作用を有効に発揮させると共に、Si酸化物をめっき層と素地鋼板との界面に形成するためにはSi含有量は1.0%以上であることが必要である。一方、Si含有量が3.0%を超えると合金化溶融亜鉛めっき鋼板の延性が劣化してしまう。Si含有量は好ましくは1.3%以上、より好ましくは1.6%以上であって、好ましくは2.8%以下、より好ましくは2.7%以下である。
Mnは、強度と靭性を確保するために有効な元素であり、1.0%以上添加することが好ましい。従来では、Siと同様の理由でMnの多量添加は避けられていたが、本発明によれば、巻き取り温度を適切に制御しているため、素地鋼板と合金化溶融亜鉛めっき層の界面にMnは濃化しない。したがってMnを1.0%以上含有しても上記問題を回避できる。Mnは、1.2%以上含有させることがより好ましく、更に好ましくは1.4%以上である。しかしMnを過剰に含有すると延性を損なうため、3.0%以下とすることが好ましく、より好ましくは2.8%以下、更に好ましくは2.6%以下である。
Cは、鋼板の強度を高めるために有効な元素であり、その効果を発揮させるために0.03%以上含有させることが好ましい。Cは、0.05%以上含有することがより好ましく、更に好ましくは0.07%以上である。しかしCを過剰に含有すると冷間加工性が低下する。したがってCは好ましくは0.30%以下、より好ましくは0.28%以下、更に好ましくは0.26%以下である。
Pを過剰に含有すると、素地鋼板の延性が劣化する。また合金化溶融亜鉛めっき層の密着性が悪化する。したがってPは好ましくは0.1%以下、より好ましくは0.05%以下とする。
Sを過剰に含有すると、鋼中に硫化物系介在物(例えば、MnS)を多く形成し、この介在物が熱間圧延時偏析して鋼板を脆化させる原因となる。したがってSは0.005%以下が好ましく、より好ましくは0.003%以下とする。
Tiは、炭化物を形成し、高強度化に有効な元素である。またCやNを固定し鋼板のr値を上昇させるのに有効に作用する元素である。こうした作用を有効に発揮させるには、Tiは、0.003%以上含有することが好ましく、より好ましくは0.005%以上である。しかしTiを過剰に含有させると加工性が低下する。また製造コストの上昇をもたらすため、Tiは、1.0%以下含有することが好ましく、より好ましくは0.90%以下である。
Alは、Tiと同様、脱酸剤として作用する元素である。またAlは焼鈍の際にオーステナイト結晶粒が粗大化するのを防止し、材質が改善する。このような作用を有効に発揮させるには、Alは、0.01%以上含有することが好ましく、より好ましくは0.03%以上である。しかしAlを過剰に含有させても、その効果は飽和する。また結晶粒が不安定になって材質にムラが出やすくなる。したがってAlは、0.30%以下含有することが好ましく、より好ましくは0.28%以下である。
本発明法の大きな特徴の一つは、熱延後の巻き取り温度を600℃以上とする点にある。巻き取り温度が600℃未満の場合、内部酸化物が素地鋼板側に向けて十分に生成、成長しないため、素地鋼板の巻き取り後、酸洗すると内部酸化物が除去されてしまい、内部酸化物による上記バリアー効果やアンカー効果が得られない。その結果、めっき密着性が低下する。好ましい巻き取り温度は610℃以上、より好ましくは620℃以上である。
本発明のもう一つの大きな特徴は、酸洗温度を70〜90℃で行う点にある。酸洗温度を70℃以上に高めることによって、厚く形成された内部酸化物を一部除去して最適化できるので望ましい。酸洗温度は70℃以上、好ましくは75℃以上である。一方、酸洗温度が高すぎると内部酸化物が容易に除去されてしまい、内部酸化物を最適化することが難しくなる。したがって酸洗温度は90℃以下、好ましくは85℃以下である。
鉄系プレめっきは付着量が片面当たり3〜8g/m2となるように制御することが望ましい。鉄系プレめっきの付着量が3g/m2を下回ると、めっき層中のFe量が不足するため、十分に合金化することができない。一方、鉄系プレめっきの付着量が8g/m2を超えると、Γ層が形成されてしまい、十分な耐パウダリング性が得られない。プレめっきの付着量は、好ましくは3g/m2以上、より好ましくは4g/m2以上であって、好ましくは8g/m2以下、より好ましくは7g/m2以下である。
加熱温度:1000〜1300℃
仕上げ温度:表2記載の温度
(2)冷間圧延前の酸洗条件
インヒビター添加した酸洗
(3)鉄系プレめっき処理:
1.電解脱脂:3%オルソ珪酸ナトリウム 60℃ 20A×20秒
2.水洗:水道水中で流水水洗を5秒
3.酸洗:5%H2SO4 常温で5秒
4.水洗:水道水中で流水水洗を5秒
5.Feめっき:4L中
・めっき液:400g/LのFeSO4・7H2Oを1600g、
5g/LのH2SO4を20g
・pH:1.8〜2.0
・温度:60℃
・攪拌:あり
・Feめっきは表1に示す付着量となるように制御した。
6.電流密度:70A/dm2
7.水洗:水道水中で流水水洗を5秒
8.乾燥:ブロア→40℃乾燥機で60分
(4)溶融亜鉛めっき処理および合金化処理:
1.雰囲気:5容量%H2−N2
2.焼鈍温度:400℃
3.焼鈍時間:300秒
4.めっき処理
・めっき浴組成:Zn−0.13%Al
・めっき浴温度:460℃
5.めっき付着量(片面):50〜60g/m2(ガスワイピングを実施することによって制御)
6.合金化:500℃で30〜60秒(赤外線加熱炉)
めっき鋼板断面を走査型電子顕微鏡(ZEISS製SUPRA35)を用いて酸化物を確認した後、走査型電子顕微鏡(キーエンス製VE−8800)を用いて、倍率10000倍、視野12.5μm×9.38μmとして、該視野内にある内部酸化物を観察した。具体的にはめっき鋼板断面についてSEMで反射電子像を観察し、その際、素地鋼板とめっき層の界面で確認できる暗い部分(濃淡の濃い部分)について、SEMで定量分析して、Si含有率が素地鋼板よりも1.0%以上高いものを内部酸化物とし、その長さ(めっき層界面から素地鋼板厚み方向)を測定した。実施例No.2、8〜10の断面写真を図2A〜Dに示す。
めっき層中のΓ層は、供試鋼板をエポキシに埋め込み後、エッチングした供試鋼板の断面をSEM(倍率:3000倍、視野:41.7μm×31.2μm)で観察し、めっき面積に対するΓ相の面積割合を測定し、以下の基準で評価した。
評価基準
めっき面積に対するΓ層の面積の割合が5%未満:なし
めっき面積に対するΓ層の面積の割合が5%以上:あり
めっき層中のFe量を、めっき層を塩酸で溶解させて、ICP(誘導結合高周波プラズマ発光分光分析)により定量し、Fe量が6.5%以上の場合を合格とし、Fe量が6.5%未満の場合を不合格とした。また合金化評価については、Fe量が6.5%以上の場合を合金化されていると評価し(○)、Fe量が6.5%未満の場合を合金化不良と評価した(×)。
素地鋼板とめっき層との密着性を耐パウダリング性で評価した。詳細には、得られた合金化溶融亜鉛めっき鋼板を用い、以下の条件でビード付きU曲げビード成形し、得られた成形品の側壁外側にテープ剥離試験を行い、以下の基準で評価した。
(i)成形条件
プレスの種類:80tクランクプレス (メーカー:アイダエンジニアリング株式会社、製品名:80tfハイフレックスプレス、型番:NC1−80(2))
供試GAの大きさ:幅40mm×長さ250mm
金型:ビードr:5mm(半丸ビード)、パンチ肩半径:5mm、ダイ肩半径:5mm、成形高さ:65mm、しわ押さえ荷重:2t
(ii)評価基準
めっき剥離無し:○
めっき剥離有り:×
Claims (3)
- Si:1.0〜3.0%(質量%の意味。以下化学成分について同じ。)を満足する素地鋼板の表面に、合金化溶融亜鉛めっき層が形成された合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法であって、
上記化学成分組成を満足する鋼を熱間圧延した後、600〜800℃で巻取りを行い、70〜90℃で10秒以上酸洗を行なった後、片面あたり付着量3〜8g/m2の鉄系プレめっきを施すことを特徴とするめっき密着性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。 - 前記鋼板は、さらに、C:0.03〜0.30%、及びMn:1.0〜3.0%を含有する請求項1に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 前記鋼板は、さらに、Ti:0.003〜1.0%、および/またはAl:0.01〜0.30%を含有する請求項1または2に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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