JPH05247614A - 珪素含有鋼板の溶融亜鉛めっき方法 - Google Patents

珪素含有鋼板の溶融亜鉛めっき方法

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JPH05247614A
JPH05247614A JP4895492A JP4895492A JPH05247614A JP H05247614 A JPH05247614 A JP H05247614A JP 4895492 A JP4895492 A JP 4895492A JP 4895492 A JP4895492 A JP 4895492A JP H05247614 A JPH05247614 A JP H05247614A
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Masahiko Hori
雅彦 堀
Toshio Nakamori
俊夫 中森
Tetsuaki Tsuda
哲明 津田
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Nippon Steel Corp
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Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】高強度のSi含有鋼板を母材として、不めっきの
ない溶融亜鉛めっき鋼板または合金化溶融亜鉛めっき鋼
板を製造する。 【構成】Siを含有する鋼板表面に、予め、硫黄単体およ
び/または硫黄化合物〔例えば、硫黄や、チオシアン酸
メチル(CH3SCN)、チオフェン(C4H4S) など〕をSの量に
換算して0.01mg/m2 以上含有する皮膜を形成させた後、
非酸化性雰囲気中で加熱し、続いて溶融亜鉛めっきを行
う。合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造するには、溶融亜
鉛めっきを行った後合金化処理を行えばよい。 【効果】不めっきのない、表面品質に優れた溶融亜鉛め
っき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造するこ
とができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、珪素含有鋼板を母材と
する、不めっきのない表面品質に優れた溶融亜鉛めっき
鋼板または合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】近年、家電、建材、および自動車等の産
業分野においては溶融亜鉛めっき鋼板が大量に使用され
ているが、とりわけ経済性とその防錆機能および塗装後
の性能に優れる合金化溶融亜鉛めっき鋼板が広く用いら
れている。
【0003】溶融亜鉛めっき鋼板は、通常、適当な脱脂
洗浄を行い、もしくは脱脂洗浄を行わずに、弱酸化性雰
囲気中もしくは還元性雰囲気中で予熱した後、水素+窒
素の還元性雰囲気中で焼鈍し、次いで、めっきに適した
温度まで冷却した後、溶融亜鉛に浸漬することにより製
造される。焼鈍の前工程の予熱時には鋼板表面に80nm程
度の厚さの酸化膜が形成される方が溶融亜鉛との濡れ性
の点から望ましいとされており、それ以上の厚さの酸化
膜の形成はむしろドロスの発生、溶融めっきの密着性に
悪影響を及ぼすと考えられている。亜鉛浴は後述の合金
化溶融亜鉛めっき鋼板の製造の範囲も含めると0.08〜0.
18重量%のAlを含むものが用いられている。また、めっ
き皮膜の耐食性を向上させるために、1〜60重量%のAl
を含有する亜鉛浴も用いられる。
【0004】合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、前記のよう
にして連続的に溶融亜鉛めっきを施した鋼板を熱処理炉
で 500〜600 ℃の材料温度に3〜30秒加熱し、亜鉛層と
鋼板素地との間でFeとZnの相互拡散を行わせ、めっき層
をFe−Zn合金とすることにより製造される。従って、合
金化溶融亜鉛めっき鋼板のめっき層はFe−Znの金属間化
合物からなり、一般にその平均Fe濃度は8〜12重量%に
なるように調整されている。
【0005】合金化溶融亜鉛めっき鋼板のめっき付着量
は片面当たり25〜70g/m2であり、25g/m2を下回るものは
通常の手段で製造することが難しく、70g/m2を上回るも
のはめっき層の耐パウダリング性を確保することが困難
であることから一般には供給されていない。また、めっ
き皮膜中には0.12〜0.2 重量%前後のAlが含有されてい
ることが多い。これは合金化溶融亜鉛めっき鋼板と同一
設備で製造される溶融亜鉛めっき鋼板のめっき層と鋼の
界面における合金層の生成を抑制し、めっき皮膜の加工
性を保持するためにめっき浴に添加されるAlが不可避的
にめっき皮膜中に混入することもあるが、合金化溶融亜
鉛めっき皮膜の耐パウダリング性を確保し、かつ製造時
のドロスの発生を抑制するうえから、めっき浴中に0.08
〜0.11重量%程度のAlを混入させることがむしろ適当で
あると考えられている。めっき浴中のAlはめっき層中に
富化する傾向があるため、0.08〜0.11重量%程度のAlを
含むめっき浴でめっきを行うと、めっき皮膜中のAl濃度
は0.12〜0.2 重量%の範囲となる。
【0006】ところで、従来、溶融亜鉛めっき鋼板およ
び合金化溶融亜鉛めっき鋼板の母材には、主として低炭
素Alキルド鋼板、極低炭素Ti添加鋼板等が用いられてい
たが、近年、自動車材料の高強度化が要求されることも
あり、Siを含む珪素含有鋼板が用いられようとしてい
る。Siは鋼の延性を損なわずに強度を向上させる利点が
あり、その意味では珪素含有鋼板は自動車用の溶融亜鉛
めっき高強度材料として有望である。
【0007】しかしながら、珪素含有鋼板を母材とする
溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板は
以下に述べるように品質面および生産面で問題がある。
【0008】珪素含有鋼板を前述の通常のプロセスで溶
融亜鉛めっきすると、めっき前の焼鈍過程でその雰囲気
中の極微量の水分と鋼板中のSiが反応し、Si−Oxide を
鋼板表面に形成するため、鋼中のSi濃度の増加とともに
溶融亜鉛との濡れ性が急激に低下する。特に、鋼板の成
形性を向上させるためにTiを添加した極低炭素鋼をベー
スとして、これにSiを添加した鋼板の場合は、再結晶化
のための焼鈍温度が 800℃以上と高温になるため、鋼板
表面へのSi−Oxide の析出が一層顕著になり、濡れ性の
確保がさらに困難となる。その結果、不めっきが多発す
る。
【0009】このような問題に対して、予め酸化雰囲気
中で鋼板を加熱し、その表面に酸化鉄を形成させること
により濡れ性が改善されることが知られている。しか
し、Si含有量が増加するにつれて、通常の溶融亜鉛めっ
きプロセスにおける酸化雰囲気、例えば無酸化炉の空燃
比を1〜1.35とする酸化雰囲気での予熱では濡れ性が改
善されるまでの十分な酸化鉄が形成されないばかりか、
めっき後に合金化処理する場合の合金化速度が著しく遅
く、生産能率が大きく阻害されるという欠点がある。
【0010】また、溶融亜鉛との濡れ性を改善する別の
方法として、溶融めっきに先だって鋼板の表面にNi、Fe
等の金属を下地めっきする方法も知られているが、この
方法はコストの上昇を招くほか、Si含有量の高い鋼板で
は十分な効果が得られず、さらに、Si含有量の高い鋼板
の場合には均一な合金化処理が非常に難しいという問題
がある。
【0011】このようなことから、自動車用高強度材料
として魅力のある珪素含有鋼板も、これを溶融亜鉛めっ
きないしは更に合金化処理する実際的な手段を欠いてい
るのが実情である。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような実
情に鑑みてなされたもので、珪素含有鋼板を母材とす
る、不めっきのない溶融亜鉛めっき鋼板または合金化溶
融亜鉛めっき鋼板を製造することができる溶融亜鉛めっ
き方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】前記のように、溶融亜鉛
めっき鋼板を製造するに際し、焼鈍前の予熱段階で鋼板
を酸化してその表面に予め酸化鉄を形成させた後還元焼
鈍を行うことにより、鋼板の溶融亜鉛との濡れ性が改善
されることが、従来から知られている。
【0014】しかしながら、鋼中のSi含有量の増加に伴
い鋼板表面における酸化速度が大きく低下するため、従
来技術による酸化手段のみでは到底酸化が進まず、酸化
鉄の形成に限界がある。即ち、珪素含有鋼板では鋼板の
予熱過程での望ましい酸化鉄量が、酸化鉄に含まれるFe
の量に換算して0.5g/m2 以上であるにもかかわらず、従
来の技術では0.05〜0.25g/m2程度の酸化鉄量しか得られ
ない。また、間接加熱バーナのみを用いたオール・ラデ
ィアントチューブ型の鋼板予熱炉においては、前記の焼
鈍前の予熱段階で鋼板表面に酸化鉄を形成させる前酸化
方式を活用することができないという問題がある。従っ
て、何らかの方法で鋼板表面の酸化鉄量を 0.5g/m2以上
にするか、あるいは酸化鉄量の影響を受けない別の方法
で鋼板と溶融亜鉛との濡れ性を確保する手段を採らなけ
ればならない。
【0015】この問題について検討を加えた結果、珪素
含有鋼板においては、予め鋼板の表面に硫黄単体および
/または硫黄化合物〔例えば、チオシアン酸メチル(CH3
SCN)、チオフェン(C4H4S) など〕を付着させた後、予熱
し、還元焼鈍することにより、鋼板と溶融亜鉛との濡れ
性を格段に向上させることが可能であることを見出し
た。
【0016】本発明はこのような知見に基づいてなされ
たもので、その要旨は、下記およびの溶融亜鉛めっ
き方法にある。
【0017】 Siを含有する鋼板表面に、予め硫黄単
体および/または硫黄化合物をSの量に換算して0.01mg
/m2 以上含有する皮膜を形成させた後、非酸化性雰囲気
中で加熱し、続いて溶融亜鉛めっきを施すことを特徴と
する珪素含有鋼板の溶融亜鉛めっき方法。
【0018】 Siを含有する鋼板表面に、予め硫黄単
体および/または硫黄化合物をSの量に換算して0.01mg
/m2 以上含有する皮膜を形成させた後、非酸化性雰囲気
中で加熱し、続いて溶融亜鉛めっきを施した後、合金化
処理することを特徴とする珪素含有鋼板の溶融亜鉛めっ
き方法。
【0019】前記の硫黄化合物とは、例えば、 SCN基を
有する有機化合物(例えば、CH3SCN)、チオフェン(C4H
4S) 及びその誘導体〔C4H3(CH3)S、C4H3(NH2)S、C4H3(N
O2)S、C4H3(OH)S など〕、一般式 R-SO3-R′で表される
有機化合物(CH3-SO3-C2H5)、一般式 R-S-Hで表される
有機化合物(C2H5-S-H、CH3-S-H)、 R-S-R′で表される
有機化合物(CH3-S-CH3 、C2H5-S-CH3) 、S-S 結合を有
する有機化合物(C6H5S2H 、C6H5S2CH3)等をいう。な
お、R および R′はアルキル基だけでなく、それ以外の
有機物であってもよい。以下、これらの硫黄化合物と硫
黄単体(S)を併せ、「硫黄成分」という。
【0020】上記の方法は、亜鉛めっき浴中に、Alの他
にPb、Sb、Si、Fe、Sn、Mg、Mn、Ni、Cr、Co、Ca、Li、
Ti、希土類元素などが少量混入していても、悪影響をう
けることはない。
【0021】
【作用】以下、本発明方法を処理工程順に詳細に説明す
る。
【0022】本発明が対象とする鋼板は、Siを含有する
鋼板である。Si含有鋼板は、前記のように溶融亜鉛との
濡れ性が劣り、不めっきを多発しやすい。Siが0.03重量
%以上で不めっきが発生し始め、Si含有量が 0.2重量%
になると不めっきは極めて顕著になる。
【0023】このSi含有鋼板をめっき母材とし、次のよ
うに溶融亜鉛めっきを行う。
【0024】まず、鋼板表面に前記の硫黄成分(硫黄単
体および/または硫黄化合物)を付着させる。鋼板表面
に硫黄成分を付着させるには、鋼板を脱脂して、圧延油
とともに鋼板表面に付着しているFe、Fe酸化物、Si酸化
物などの粉(異物)をそれらがめっき皮膜中に侵入しな
いように除去した後、硫黄成分のうち1種または2種以
上を、動物油、植物油、合成油のうち1種あるいは2種
以上を主成分とする油に含ませ、鋼板表面に塗布すれば
よい。また、硫黄成分を1種または2種以上溶解させた
有機溶剤、または、この有機溶剤を少量含む水溶液をス
プレーにより鋼板表面に塗布し、 100℃程度で有機溶剤
や水を蒸発させてもよい。なお、硫黄成分付着処理前の
脱脂は、例えば60〜95℃の2〜10%NaOH水溶液中で数秒
〜数分処理する程度でよい。
【0025】前記の異物を除去する必要がない場合は、
硫黄成分のうち1種または2種以上を含ませた、動物
油、植物油、合成油のうち1種あるいは2種以上を主成
分とする油を冷間圧延時に圧延油として使用し、鋼板表
面に硫黄成分を付着させる方法を採ってもよい。
【0026】いずれにしても、焼鈍前に鋼板表面に硫黄
成分を物理的に付着させればよく、上記のように油や、
水、有機溶剤中に硫黄成分を溶解させ、塗布する他、硫
黄成分を直接鋼板表面に塗布してもよい。
【0027】鋼板表面に付着させる硫黄成分は、Sの量
に換算して 0.01mg/m2以上であれば効果がある。圧延油
に含ませて塗布する場合は、圧延後、残存する油の量が
10〜100mg/m2程度であるから、圧延油中に硫黄成分をS
の量に換算して 0.1重量%以上含有させればよい。圧延
後、油に含ませて塗布する場合も同様である。
【0028】水、またはアルコール、シンナーなどの有
機溶剤、または有機溶剤と水との混合溶媒に硫黄成分を
溶解させ、鋼板上に塗布する場合は、硫黄成分の鋼板表
面への付着量が溶剤によって異なっており、一概には決
定できない。しかし、アルコールを 0.1〜90%含有する
水溶液を溶媒として用いる場合は、Sの量に換算して0.
1重量%以上含有していれば、乾燥後の鋼板表面にS量
として 0.01mg/m2の皮膜を形成させることができる。
【0029】上記の鋼板表面に硫黄成分を塗布する硫黄
成分付着処理は、オンラインで、圧延工程、あるいはそ
の後の溶融亜鉛めっきの前処理工程で行う場合である
が、本発明方法における硫黄成分付着処理はこれらの工
程内での処理に限定されず、ライン外で単独の工程とし
て行ってもよい。また、スキンパス潤滑剤に硫黄成分を
添加したり、洗浄ラインで酸洗液や水洗液に添加して、
鋼板表面に硫黄成分を含有する皮膜を形成させてもよ
い。
【0030】鋼板表面に硫黄成分を付着させることによ
ってめっき濡れ性を改善することができるのは、以下の
ような理由によるものと推測される。すなわち、Siなど
鋼板(Fe)より酸素と親和性の高い合金元素が鋼中に存在
すると、予熱および還元焼鈍過程でこの合金元素が鋼板
表面に濃化し、非常に還元されにくい酸化膜が形成さ
れ、この酸化膜がめっき濡れ性を低下させるのである
が、上記のように鋼板表面に硫黄成分を含有する皮膜が
存在すると、硫黄成分は前記の合金元素、例えばSiの還
元剤として作用し、Siの酸化物が形成されにくい状態に
なる。従って、めっき直前の鋼板表面にSiなどの酸化物
が存在せず、鋼板(Fe)とめっき浴(Zn)が直接反応する
ことになり、濡れ性が向上する。
【0031】上記の硫黄成分の付着処理に続いて、鋼板
を非酸化性雰囲気中で加熱(予備加熱および焼鈍)す
る。これは、従来用いられている方法に準じて行えばよ
く、例えば、鋼板を還元性雰囲気中で予熱した後、水素
を含む還元性雰囲気中で 600〜900 ℃で焼鈍する。ただ
し、熱延鋼板のように鋼板の特性が既に決定されている
ときは還元処理を行うだけでよいので、 400〜600 ℃で
還元して直ちに溶融めっきを行う、いわゆるfull-hard
heat cycleによって処理してもよい。
【0032】上記の処理を施した後、溶融亜鉛めっきを
行うのであるが、これも従来技術に従って行えばよい。
溶融亜鉛めっきのみで製品とする場合は、浴温 460±10
℃、Al濃度0.03〜60重量%のめっき浴を用いる。めっき
後合金化するものについては、浴温 460±10℃、Al濃度
0.03〜0.12重量%のめっき浴を用いる。Al濃度が0.03重
量%未満では、Fe−Zn反応が速すぎて目付量が安定せ
ず、Fe−Znドロスの発生が多いという操業上の問題もあ
り、好ましくない。
【0033】溶融亜鉛めっき後合金化する場合も従来の
方法に準じて 420〜600 ℃で行えばよい。加熱方式とし
ては、燃焼ガスによる直接加熱、溶融塩浴浸漬、赤外線
加熱、直接通電加熱、誘導加熱等、従来使用されている
どのような加熱方式を用いてもよい。
【0034】以上、通常のゼンジマー型の連続溶融亜鉛
めっき設備、あるいはそれに若干の改善を加えた設備で
の実施を主体として説明したが、本発明方法の適用範囲
はこれらの設備での実施に限定されることなく、例え
ば、焼鈍のみを別ラインで行う場合のように、予め鋼板
表面に硫黄成分を含有する皮膜を形成させて、その表面
にSi酸化物を生成させずに焼鈍し、フラックス処理など
で酸化を防ぎながら溶融亜鉛めっきを施すような工程で
もよい。
【0035】
【実施例】表1に示す4種類の極低炭素鋼の熱延鋼板
(未焼鈍材、板厚0.8mm )を供試材とし、下記Aおよび
Bの方法でめっき前の鋼板表面に硫黄成分(硫黄単体お
よび/または硫黄化合物)を付着させ、めっき後の不め
っきの発生状況を調査した。
【0036】
【表1】
【0037】〔硫黄成分付着方法A〕上記供試材を通常
の圧延油を使用して冷間圧延し(板厚0.08mm)、 250mm
(長さ)×100mm (幅)に裁断した後、予め10%NaOH溶
液で脱脂し、下記(イ) または(ロ) に示す方法で硫黄成分
を鋼板に付着させた後、竪型溶融めっき装置を用いて溶
融めっきを行った。このめっき装置によれば、供試材を
所定の雰囲気で熱処理することができ、かつ、還元雰囲
気中から直接溶融めっき浴中に装入することができる。
【0038】めっきに際しては、前記の竪型めっき装置
内で酸素5ppm 〜15体積%を含有する窒素雰囲気 (絶対
圧で1atm)中で 500℃で予備加熱を行い、次いで、酸素
濃度2ppm のN2+20%H2混合ガス(露点が−30℃)中で
850℃×60秒の焼鈍処理を行い、 520℃まで冷却した
後、溶融亜鉛浴に浸漬してめっきを行った。めっき時間
は1秒であり、ガスワイパーによりZn付着量を約50g/m2
(片面当り)に調整した。
【0039】(イ) 硫黄単体(S)、二硫化メチル(CH3SS
CH3)、チオフェン(C4H4S) 、メルカプタン(C2H5-S-H)お
よびチオシアン酸メチル(CH3SCN)のうち1種または2種
を、動物油(牛脂)を主成分とする油に所定量含有さ
せ、鋼板表面に塗布する。
【0040】(ロ) 硫黄単体(S)、メルカプタン(C2H5-
S-H)およびチオシアン酸メチル(CH3SCN)のうち1種また
は2種を、5重量%のイソプロピルアルコールを含む水
に所定量含有させ、噴霧器により鋼板表面に塗布し、 1
00℃でアルコールおよび水を蒸発させる。
【0041】〔硫黄成分付着方法B〕上記供試材を、硫
黄単体(S)、二硫化メチル(CH3SSCH3)、チオフェン(C
4H4S) 、チオシアン酸メチル(CH3SCN)およびメルカプタ
ン(C2H5-S-H)のうち1種または2種を、動物油(牛脂)
を主成分とする油に所定量含有させ、これを圧延油とし
て使用して冷間圧延を行い(板厚0.08mm)、 250mm(長
さ)×100mm (幅)に裁断した後、脱脂を行わずに、ま
たは10%オルソ珪酸ソーダ水溶液中で1〜10A/dm2 の電
流密度で電解脱脂を行い、前記の付着方法Aで用いた竪
型溶融めっき装置で溶融めっきを行った。
【0042】めっきに際しては、付着方法Aの場合と同
様に、酸素5ppm 〜15体積%を含有する窒素雰囲気 (絶
対圧で1atm)中で 500℃で予備加熱を行い、次いで、酸
素濃度2ppm のN2+20%H2混合ガス(露点が−30℃)中
で 850℃×60秒の焼鈍処理を行い、 520℃まで冷却した
後、溶融亜鉛浴に浸漬してめっきを施した。めっき時間
は1秒であり、ガスワイパーによりZn付着量を約50g/m2
(片面当り)に調整した。
【0043】また、不めっきがなく、良好にめっきする
ことができた供試材で、Al濃度が0.12%以下のめっき浴
でめっきしたものについては、 500℃の塩浴中で合金化
処理を行い、それに要する時間を測定した。
【0044】表2に調査結果をまとめて示す。なお、同
表には、鋼板表面への硫黄成分付着方法(前記のAまた
はB)、用いた硫黄成分、溶媒中の硫黄成分含有量(S
換算値)、電解脱脂の有無、鋼板表面における硫黄成分
付着量(S換算値)、予備加熱時のO2濃度およびめっき
条件(Al濃度、浴温度)も併せて示した。電解脱脂の有
無の欄は、付着方法Bで硫黄を付着させた場合にのみ、
有または無と記載した。めっき後の不めっきの発生状況
の評価は、不めっきの有無により行い、10回以上の観察
で1m2当たり1mm2 以上の不めっきが全くない場合は
○、1mm2 以上の不めっきが10回以上の観察で1回でも
認められた場合は×とした。また、合金化処理は、25秒
以下で合金化を完了するものを合格とした。
【0045】表2の結果から明らかなように、鋼板表面
に予め硫黄成分を付着させると、不めっきの発生がな
く、表面品質に優れた溶融亜鉛めっき鋼板が得られる。
また、合金化も容易であった。
【0046】
【表2(1)】
【0047】
【表2(2)】
【0048】
【発明の効果】以上説明したように、Siを含有する鋼板
に対して本発明方法を適用すれば、不めっきのない、表
面品質に優れた溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜
鉛めっき鋼板を製造することができる。
【0049】

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Siを含有する鋼板表面に、予め硫黄単体お
    よび/または硫黄化合物をSの量に換算して0.01mg/m2
    以上含有する皮膜を形成させた後、非酸化性雰囲気中で
    加熱し、続いて溶融亜鉛めっきを施すことを特徴とする
    珪素含有鋼板の溶融亜鉛めっき方法。
  2. 【請求項2】Siを含有する鋼板表面に、予め硫黄単体お
    よび/または硫黄化合物をSの量に換算して0.01mg/m2
    以上含有する皮膜を形成させた後、非酸化性雰囲気中で
    加熱し、続いて溶融亜鉛めっきを施した後、合金化処理
    することを特徴とする珪素含有鋼板の溶融亜鉛めっき方
    法。
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