JP2011117063A - 溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 - Google Patents

溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】外観性状(具体的には、不めっきや合金化ムラが発生していない)と、素地鋼板に対するめっき層の密着性を幅方向に亘って向上させた溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する方法を提供する。
【解決手段】予備加熱炉内の酸素量を0.00010〜0.05体積%、水蒸気量を10〜30体積%に制御した雰囲気下で、焼鈍開始温度が550〜700℃となるように制御して加熱する第一の工程と、焼鈍炉内の酸素量を0.0001体積%以上、0.10体積%未満、水蒸気量を10〜30体積%に制御した雰囲気下で、素地鋼板に含まれるSi量(質量%)、焼鈍時間t(秒)、および焼鈍終了温度T(℃)を適切に制御して加熱する第二の工程を含んで製造する。
【選択図】なし

Description

本発明は、溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法に関し、特に、外観性状(具体的には、不めっきや合金化ムラ発生の防止)が良好で、且つ、素地鋼板と、溶融亜鉛めっき層または合金化溶融亜鉛めっき層との密着性を向上させる技術に関するものである。
自動車や家電等には軽量化が求められており、これらの素材として、強度が高く、延性や加工性に優れた鋼板の需要が増大している。このような特性を満足した鋼板としては、Siを積極的に添加した鋼板が知られている。Siを添加すると、強度を損なうことなく延性や加工性を高めることができる。
一方、自動車や家電等には耐食性が良好であることも求められている。耐食性を高めた素材としては、素地鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を形成した溶融亜鉛めっき鋼板(GI鋼板)や、更に合金化処理を施した合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA鋼板)が知られている(以下、これらをまとめて単に「めっき鋼板」と呼ぶことがある。)。
強度、延性、加工性、および耐食性の全てを改善することを目的として、Siを積極的に添加した素地鋼板の表面に、溶融亜鉛めっき層や合金化溶融亜鉛めっき層(以下、これらをまとめて単に「めっき層」と呼ぶことがある。)を形成することが考えられる。しかしSiは易酸化性元素であり、Si添加鋼板の表面にめっき層を形成すると、不めっきや合金化ムラが発生し易く、外観性状が悪くなり易い傾向がある。また、成形加工時等にめっき層が応力を受けると、素地鋼板からめっき層が剥離するという問題が発生する。Si添加鋼板を加熱処理すると、SiやMnが選択的に酸化され、素地鋼板の表面に濃化して酸化物を形成する。この酸化物は、溶融亜鉛めっき処理時に溶融亜鉛との濡れ性を劣化させるため、不めっきや合金化ムラが発生する原因となる。また、特に、GA鋼板では、応力を受けたときに合金化溶融亜鉛めっき層自体が破壊し、粉状になってパウダリングを発生するという問題が生じる。そこでめっき層には、素地鋼板から剥離し難く、且つパウダリングを発生せず、めっき密着性が良好であることが求められる。
こうした問題を解決する技術として、特許文献1には、高Si含有鋼板を母材とした場合に不めっきのない美麗な表面外観を有し、めっき密着性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板を製造する技術が提案されている。具体的には、O2≧0.1%、H2O≧1%を含有する雰囲気中で、400〜750℃の温度で加熱(A帯加熱)し、次いで、O2<0.1%、H2O≧1%を含有する雰囲気中で、600〜850℃の温度で加熱(B帯加熱)し、次いで、H2=1〜50%を含み露点が0℃以下の雰囲気中で、加熱(C帯加熱)した後、溶融亜鉛めっき処理を施す酸化−還元法が開示されている。
特開2007−291498号公報
上記特許文献1では、B帯加熱における処理時間について考慮されていないため、本発明者らが検討したところ、処理時間によっては素地鋼板からめっき層が剥離することが分かった。
また、Si添加鋼板の表面にめっき層を形成した場合には、鋼板の端部と中央部で品質の差が認められ、幅方向に亘って均質なめっき鋼板は得られ難いことが分かった。即ち、めっき鋼板の端部では外観性状とめっき密着性が良好であるが、中央部では外観性状やめっき密着性が劣化している場合や、めっき鋼板の中央部では外観性状とめっき密着性が良好であるが、端部では外観性状やめっき密着性が劣化している場合があった。
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、外観性状(具体的には、不めっきや合金化ムラが発生していない)と、素地鋼板に対するめっき層の密着性を幅方向に亘って向上させた溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する方法を提供することにある。
上記課題を解決することのできる本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼鈑の製造方法は、C:0.04〜0.2%(質量%の意味。以下化学成分について同じ。)、Si:0.1〜3%、Mn:0.1〜3%、Al:0.06%以下(0%は含まない)を満足する素地鋼板の表面に、溶融亜鉛めっき層が形成された溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法であって、上記化学成分組成を満足する素地鋼板を予備加熱炉で加熱する第一の工程、焼鈍炉で加熱して素地鋼板の表面に酸化層を形成する第二の工程、前記酸化層を形成した素地鋼板を還元炉で加熱して前記酸化層を還元する第三の工程、溶融亜鉛めっきを施す第四の工程、をこの順で含み、前記第一の工程は、前記予備加熱炉内の酸素量を0.00010〜0.05体積%、水蒸気量を10〜30体積%に制御した雰囲気下で、前記第二の工程における焼鈍開始温度が550〜700℃となるように制御し、前記第二の工程は、前記焼鈍炉内の酸素量を0.0001体積%以上、0.10体積%未満、水蒸気量を10〜30体積%に制御した雰囲気下で、素地鋼板に含まれるSi量(質量%)と、焼鈍時間t(秒)と、焼鈍終了温度T(℃)が、下記式(1)を満足するように制御するものである。下記式(1)中、[ ]は素地鋼板に含まれるSi量(質量%)を示し、焼鈍時間tは20〜70秒、焼鈍終了温度Tは750〜900℃である。
0.0062×[Si]×(T−675)×(t)1/3≦7.0 ・・・(1)
上記素地鋼板は、更に他の元素として、
(a)Cr:0.3%以下(0%を含まない)、
(b)Ti:0.05%以下(0%を含まない)、
(c)Ni:2%以下(0%を含まない)、Cu:2%以下(0%を含まない)、Mo:2%以下(0%を含まない)、およびB:0.01%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される少なくとも1種、
(d)Nb:1%以下(0%を含まない)、V:1%以下(0%を含まない)、およびW:0.3%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される少なくとも1種、
(e)Ca、Mg、およびREMよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素:0.03%以下(0%を含まない)、
等を含有してもよい。
上記素地鋼板の残部は、鉄および不可避不純物である。
本発明には、上記製造方法で得られた溶融亜鉛めっき鋼板に、合金化処理を施して合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する方法も包含される。
本発明では、Siを0.1〜3%含有している素地鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を形成する際に、予備加熱炉における加熱条件を厳密に制御しているため、外観性状を幅方向に亘って良好にできる。また、焼鈍炉における条件を厳密に制御しているため、素地鋼板に対するめっき層の密着性を幅方向に亘って向上できる。
図1は、内方酸化層に含まれるSi量と、テープ剥離幅との関係を示すグラフである。 図2は、素地鋼板に含まれるSi量と、内方酸化層に含まれるSi量との関係を示すグラフである。 図3は、焼鈍時間と、内方酸化層に含まれるSi量との関係を示すグラフである。 図4は、焼鈍終了温度と、内方酸化層に含まれるSi量の関係を示すグラフである。 図5は、焼鈍炉内の酸素量と、内方酸化層の厚み割合との関係を示すグラフである。 図6は、予備加熱炉、焼鈍炉、および還元炉における薄鋼板の加熱状態(ヒートパターン)を示す模式図である。
本発明者らは、溶融亜鉛めっき鋼板や合金化溶融亜鉛めっき鋼板の外観性状と、素地鋼板に対するめっき層の密着性を幅方向に亘って改善することを目指して検討を重ねてきた。その結果、(A)めっき鋼板の幅方向に亘る外観性状とめっき密着性は、素地鋼板とめっき層の界面に形成される酸化層に影響を受けること、(B)この酸化層は、予備加熱炉と焼鈍炉で形成されるため、特に予備加熱炉と焼鈍炉における加熱条件を適切に制御すれば、外観性状とめっき密着性を幅方向に亘って改善できることを見出し、本発明を完成した。
以下、本発明を完成した経緯について説明した後、本発明を特徴付ける溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法について説明する。
本発明者らは、素地鋼板を予備加熱炉で加熱した後、焼鈍炉で加熱して素地鋼板の表面に酸化層を形成し、次いで還元炉で加熱して前記酸化層を還元し、溶融亜鉛めっきを施して溶融亜鉛めっき鋼板を製造するにあたり、予備加熱炉と焼鈍炉で形成される酸化層に注目し、この酸化層と、外観性状およびめっき密着性との関係について検討した。その結果、外観性状とめっき密着性を改善するには、焼鈍炉における加熱条件を適切に制御すればよいこと、これらの特性を幅方向に亘って改善するには、予備加熱炉における加熱条件を適切に制御すればよいことが明らかになった。具体的には、予備加熱炉内の酸素量を0.00010〜0.05体積%、水蒸気量を10〜30体積%に制御した雰囲気下で、焼鈍開始温度が550〜700℃となるように加熱し、次いで焼鈍炉内の酸素量を0.0001体積%以上、0.10体積%未満、水蒸気量を10〜30体積%に制御した雰囲気下で、素地鋼板に含まれるSi量(質量%)、焼鈍時間t(秒)、および焼鈍終了温度T(℃)が、下記式(1)を満足するように加熱すれば、外観性状とめっき密着性が幅方向に亘って改善できる。下記式(1)中、[ ]は素地鋼板に含まれるSi量(質量%)を示し、焼鈍時間tは20〜70秒、焼鈍終了温度Tは750〜900℃である。
0.0062×[Si]×(T−675)×(t)1/3≦7.0 ・・・(1)
[1]酸化層について
素地鋼板を酸化性雰囲気で加熱すると、素地鋼板の表面に酸化層が形成される。この酸化層は、外方酸化層と内方酸化層に分けられる。これらのうち外方酸化層は、素地鋼板表面よりも外側(めっき層側)に向かって形成される酸化層であり、主としてFeの酸化物で構成される。一方、内方酸化層は、素地鋼板表面よりも内側(鋼板側)に向かって形成される酸化層であり、主としてFeとSiの酸化物で構成される。
[2]酸化層と外観性状との関係について
こうした酸化層と、めっき鋼板の外観性状との関係について検討したところ、めっき鋼板の外観性状は、酸化層のうち外方酸化層の厚みに影響を受けることが分かった。即ち、外方酸化層が薄く、概ね0.5μm以下になると、この外方酸化層が還元炉で還元されて形成されるFe層(還元層)が薄くなるため、溶融亜鉛めっきとの濡れ性が悪くなり、不めっきが発生しやすくなる。また、外方酸化層が薄くなると、めっき層に含まれるFe量が不足するため、合金化処理したときに合金化ムラが発生する傾向が認められる。そこでめっき鋼板の外観性状を改善するには、外方酸化層をできるだけ厚くするのが良いと考えられる。
外方酸化層を厚くするには、予備加熱炉内の酸素量を0.00010体積%以上、水蒸気量を10体積%以上、焼鈍炉内の酸素量を0.0001体積%以上、水蒸気量を10体積%以上とする必要がある。
[3]酸化層とめっき密着性との関係について
一方、外方酸化層とめっき密着性との関係について検討したところ、外方酸化層の厚みを制御しただけでは以下に説明するようなめっき剥離に対応できず、めっき密着性は改善されないことがわかった。即ち、素地鋼板からめっき層が剥離する現象は、めっき層が応力を受けたときにめっき層自体が粉状に破壊され、パウダリングを発生して素地鋼板から剥離する場合と、めっき層が応力を受けたときに素地鋼板とめっき層の界面に応力が集中し、この界面から剥離する場合とに大別される。しかし特に後者のめっき剥離現象については外方酸化層の厚みを制御するだけでは不充分であることが分かった。
[3−1]パウダリングについて
これらのうち前者のパウダリングは、素地鋼板としてSi添加鋼板を用いるか否かによらず発生する現象であり、発生原因はめっき層の厚みにある。即ち、めっき層が厚くなり過ぎると加工時にめっき層が破壊され易くなり、パウダリングが発生し易くなる。めっき層が厚くなり過ぎる原因は、めっき付着量過多の他、外方酸化層が厚くなり過ぎることにもある。外方酸化層が厚くなり過ぎると、還元炉で還元して形成されるFe層が厚くなり過ぎるため、この表面に溶融亜鉛めっき層を形成し、これを合金化するとFe層がめっき層に取り込まれる結果、めっき層が厚くなり過ぎてしまう。そこでパウダリングの発生を防止するには、外方酸化層をできるだけ薄くするのが良いと考えられる。
外方酸化層を薄くするには、予備加熱炉内の水蒸気量を30体積%以下、焼鈍炉内の水蒸気量を30体積%以下に抑える必要がある。
[3−2]めっき層の剥離について
これに対し、後者の素地鋼板からめっき層が剥離する現象は、素地鋼板としてSi添加鋼板を用いたときに特有に見られるものであり、パウダリングが発生しない場合であっても、めっき剥離が発生することがある。
そこで本発明者らは素地鋼板としてSi添加鋼板を用いたときに、めっき層の剥離を防止するために更に検討を重ねた。その結果、内方酸化層の厚みをできるだけ小さくしてやれば、めっき剥離を防止できることが判明した。
内方酸化層は、還元炉で加熱しても還元されず、溶融亜鉛めっき層や合金化溶融亜鉛めっき層を形成した後においても素地鋼板とめっき層の界面に酸化物の形態で残留する。そのため、素地鋼板としてSi添加鋼板を用いると、内方酸化層に含まれるSi量が多くなるため、素地鋼板とめっき層の界面にSiO2やFe2SiO4のようなSi酸化物が多く
残留する。こうしたSi酸化物は、他の元素の酸化物に比べてもろいため、応力を受けたときにSi酸化物に応力が集中し易く、その結果、めっき層が素地鋼板から剥離することが分かった。
[3−2−1]めっき層の剥離とSi酸化物との関係について
このように内方酸化層に含まれるSi酸化物がめっき剥離の原因になるという上記知見は、次に示す予備実験1によって得られたものである。
(予備実験1)
Cを0.1%とSiを1.5%含有する標準鋼(残部は鉄および不可避不純物)を、100mm×200mm×厚み2mmの板状に加工し、加熱温度と加熱雰囲気を調整して素地鋼板の表面に種々の酸化層を形成した試験片を作製した。試験片の縦断面のうち、素地鋼板と酸化層の界面近傍を電子線マイクロプローブX線分析計(Electron Probe X-ray Micro Analyzer;EPMA)で分析し、内方酸化層に含まれるSi量を定量した。
次に、酸化層を形成した試験片を、H2ガスを15体積%含有するN2ガス雰囲気(露点は−40℃)で、850℃で2分間加熱して酸化層を還元し、素地鋼板の表面に純鉄層が形成された試験片を製造した。この試験片を500℃の溶融亜鉛めっき浴に3秒間浸漬し、溶融亜鉛めっきを施した。
溶融亜鉛めっき層を形成した試験片を、V曲げ戻し試験して素地鋼板に対する溶融亜鉛めっき層の密着性を評価した。
V曲げ戻し試験では、まず、溶融亜鉛めっき層を形成した試験片に、V曲げ試験用の金型を用いてV曲げ加工を行った後、プレス加工して試験片を平坦に戻す曲げ戻し加工を行った。V曲げ加工時の曲げ角度は60°とした。なお、V曲げ戻し試験は、実際のプレス成形よりも厳しい条件を模擬している。
V曲げ戻し加工した後、V曲げしたときの内側にセロハンテープを貼り付け、これを剥がした後、セロハンテープに付着した溶融亜鉛めっき層の剥離幅を測定した。本発明では、剥離幅が5mm以下の場合を合格と評価し、剥離幅が3mm以下の場合にめっき密着性が特に優れていると評価する。なお、V曲げ戻し試験した後に測定した剥離幅が5mm以下である場合は、実際にプレス加工したときの曲げ角度を90°としても素地鋼板からめっき層が剥離しないことを確認している。また、剥離幅が3mm以下である場合は、実際にプレス加工したときの曲げ角度を80°としても素地鋼板からめっき層が剥離しないことを確認している。
図1に、内方酸化層に含まれるSi量とテープ剥離幅との関係を示す。図1から明らかなように、内方酸化層に含まれるSi量とめっき密着性との間には相関関係が認められ、テープ剥離幅が5mm以下となるようにめっき密着性を向上させるには、内方酸化層に含まれるSi量を7.0%以下に抑えればよいことが分かる。
以上の通り、予備実験1から、めっき剥離の原因は、内方酸化層に含まれるSi酸化物にあり、内方酸化層に含まれるSi量を7.0%以下に抑えればめっき剥離を防止できるという知見が得られた。
[3−2−2]内方酸化層に含まれるSi量を7.0%以下に抑える手段について
上記知見に基づき内方酸化層に含まれるSi量を7.0%以下に抑えるための方法を検討したところ、素地鋼板に含まれるSi量に応じて焼鈍条件を適切に調整すればよいことが分かった。具体的には、下記式(1)の左辺の値が7.0以下になるように素地鋼板に含まれるSi量(質量%)、焼鈍時間t(秒)、および焼鈍終了温度T(℃)を制御すればよい。下記式(1)中、[ ]は素地鋼板に含まれるSi量(質量%)を示している。左辺の値の上限値である7.0は、内方酸化層に含まれるSi量7.0%に対応している。
0.0062×[Si]×(T−675)×(t)1/3≦7.0 ・・・(1)
上記式(1)は、次に示す予備実験2によって導き出された実験式である。
(予備実験2)
焼鈍炉内の酸素量を0.04体積%、水蒸気量を20体積%に制御した雰囲気下で、素地鋼板を焼鈍したときに、素地鋼板に含まれるSi量(質量%)、焼鈍時間t(秒)、および焼鈍終了温度T(℃)が、内方酸化層に含まれるSi量に及ぼす影響を調べた。
図2は、Cを0.1%含有し、Si量が異なる標準鋼(残部は鉄および不可避不純物)からなる素地鋼板を、焼鈍時間tを40秒、焼鈍終了温度Tを800℃で焼鈍したときの結果を示すグラフである。図2から明らかなように、素地鋼板に含まれるSi量(x)と内方酸化層に含まれるSi量(y)との間には良好な比例関係が認められ、内方酸化層に含まれるSi量は、素地鋼板に含まれるSi量に応じて直線的に増加することが分かる。なお、図2に示した直線は、y=2.67xで示される。
図3は、Cを0.1%とSiを1.5%含有する標準鋼(残部は鉄および不可避不純物)からなる素地鋼板を、焼鈍時間tを変化させて焼鈍したときの結果を示すグラフである。なお、焼鈍終了温度Tは800℃に固定した。図3から明らかなように、焼鈍時間tの1/3乗(立方根;x)と内方酸化層に含まれるSi量(y)との間には良好な比例関係が認められ、焼鈍時間が長くなるほど内方酸化層に含まれるSi量は直線的に増加することが分かる。なお、図3に示した直線は、y=1.17xで示される。
図4は、Cを0.1%とSiを1.5%含有する標準鋼(残部は鉄および不可避不純物)からなる素地鋼板を、焼鈍終了温度Tを変化させて焼鈍したときの結果を示すグラフである。なお、焼鈍時間tは40秒に固定した。図4から明らかなように、焼鈍終了温度T(x)と内方酸化層に含まれるSi量(y)との間には良好な比例関係が認められ、焼鈍終了温度Tが高くなるほど内方酸化層に含まれるSi量は直線的に増加することが分かる。なお、図4に示した直線は、y=0.032x−21.6で示される。
以上、予備実験2の結果に基づいて、上記式(1)が導出された。
[4]外観性状とめっき密着性の両立について
上述したようにめっき鋼板の外観性状を改善するには、外方酸化層を厚くする必要があるが、外方酸化層を厚くし過ぎるとパウダリングが発生し、めっき密着性が劣化する。また、素地鋼板からのめっき剥離を防止してめっき密着性を改善するには、内方酸化層に含まれるSi量を7.0%以下に抑える必要がある。しかし内方酸化層に含まれるSi量は、内方酸化層が厚くなるほど増加するため、内方酸化層に含まれるSi量を7.0%以下に抑えるには、内方酸化層の厚みを薄くする必要がある。ところが外方酸化層と内方酸化層の厚みは相関しており、一方の厚みを増大させようとすると他方の厚みも増大する。そのため、外観性状とめっき密着性の両方を改善するには、酸化層全体の厚みに対する外方酸化層の厚みは大きく、内方酸化層の厚みは小さくする必要がある。
そこで本発明では、内方酸化層のみを薄くすることを目指して検討した。その結果、内方酸化層の厚みは、高温に加熱したときに、雰囲気中に含まれる酸素量に大きく影響を受けることが明らかとなった。即ち、550〜700℃程度の温度以上に加熱される焼鈍炉内の雰囲気中に含まれる酸素量が増加するに伴って外方酸化層と内方酸化層の厚みはいずれも大きくなる。ところが、この酸素量が1体積%を超えると、鋼中のFeの拡散が律速となるため、焼鈍炉内の雰囲気中に含まれる酸素量が増加しても外方酸化層と内方酸化層の厚みはほぼ一定となる。このとき酸化層全体の厚みに対する内方酸化層の厚みの割合は40〜50%程度となる。これに対し、焼鈍炉内に含まれる酸素量が1体積%以下の場合は、焼鈍炉内の雰囲気に含まれる酸素量の増加に伴って鋼中のFeの拡散は促進され、外方酸化層と内方酸化層はいずれも厚くなる。しかし酸素量の増加量に対する内方酸化層の厚みの増加量は、酸素量の増加量に対する外方酸化層の厚みの増加量よりも小さいため、焼鈍炉内に含まれる酸素量を減らすほど、酸化層全体の厚みに対する内方酸化層の厚みを小さくできる。こうした知見は、次に示す予備実験3によって得られたものである。
(予備実験3)
Cを0.1%とSiを1.5%含有する標準鋼(残部は鉄および不可避不純物)を、10mm×20mm×厚み2mmの板状に加工し、800℃で、1分間加熱して素地鋼板の表面に種々の酸化層を形成した試験片を作製した。加熱雰囲気は、焼鈍炉内の水蒸気量を20体積%に調整し、酸素量を変化させた。試験片の縦断面のうち、素地鋼板と酸化層の界面近傍を走査型電子顕微鏡(SEM)で分析し、酸化層全体の厚みに対する内方酸化層の厚みの割合を算出した。
図5に、焼鈍炉内の酸素量と、酸化層全体の厚みに対する内方酸化層の厚みの割合との関係を示す。図5から明らかなように、焼鈍炉内の酸素量が増加すると、酸化層全体の厚みに対する内方酸化層の厚みの割合が増加することが分かる。この酸化層全体の厚みに対する内方酸化層の厚みの割合が、25%以下(好ましくは20%以下)であれば、めっき剥離やパウダリング発生を防止でき、めっき密着性を改善できることが経験的に分っている。従って、図5から明らかなように、焼鈍炉内の酸素量を0.10体積%未満に抑えれば、酸化層全体に対する内方酸化層の厚み割合を25%以下に制御でき、めっき剥離を防止できることが分かる。
以上、予備実験3の結果から、焼鈍炉での加熱条件を適切に制御すれば、外観性状とめっき密着性の両方を改善できることが分かる。
[5]幅方向の品質について
上記では、めっき鋼板の外観性状とめっき密着性について個別に検討してきた。ところが、外観性状とめっき密着性をめっき鋼板の幅方向に亘って調べたところ、めっき鋼板の端部と中央部では、品質にバラつきがあることがあった。そこで本発明者らは、この品質のバラツキが発生する原因を解明するために検討した。その結果、品質のバラツキの原因は、熱間圧延時に形成される酸化物にあることが判明し、予備加熱炉内の酸素量を0.05体積%以下に抑えればよいことが明らかとなった。
即ち、素地鋼板は、スラブを熱間圧延し、表面酸化物を酸洗して除去してから冷間圧延することにより製造される。熱間圧延して得られる熱延鋼板は、コイル状に巻き取るが、コイルの幅方向の端部は外気に接しているのに対し、コイルの幅方向の中央部は低酸素ポテンシャルの雰囲気となっている。そのためコイルの幅方向の端部と中央部では、生成している酸化層の組成が異なっていた。具体的には、コイルの端部は外気に接しているため、酸素ポテンシャルが高く、ヘマタイト(Fe23)を多く含む酸化層が生成する。このヘマタイトは、酸洗性が悪く、酸洗後にも鋼板表面に残留する傾向がある。一方、コイルの中央部における酸素ポテンシャルは低いため、ヘマタイトは生成せず、ウスタイト(FeO)やマグネタイト(Fe34)を多く含む酸化層が生成する。ウスタイトやマグネタイトは、酸洗性が良好で、酸洗によってこれらの酸化物は除去され易い。このように端部と中央部では生成している酸化物が異なっているが、酸洗は鋼板の幅方向に亘って均一に行なわれるため、素地鋼板の中央部では残留物が少なくなるのに対し、端部では残留物が多くなる。この残留物は、上述した予備加熱炉や焼鈍炉において素地鋼板の表面を酸化する抵抗となるため、鋼板の幅方向に亘って酸化のバラつきが発生する。このバラつきが原因となり、めっき品質のムラが発生すると考えられる。
そこで、このような熱間圧延時に生成する酸化物による品質にムラ発生を防止するために、検討を重ねてきた。そして、本発明者らは、低温域で加熱したときの初期酸化挙動に注目した。700℃未満の低温域(予備加熱炉に相当)で加熱すると、外方酸化層は生成するが、内方酸化層は殆ど生成しない。そのため低温域では、外方酸化層の組成や性状のみに注目して加熱条件を制御すればよい。その結果、端部では熱延圧延時に生成した酸化物の残留物による酸化抵抗が大きいため、予備加熱炉内の余剰酸素が予備加熱炉で生成した初期酸化層を高次化することで薄いヘマタイトの酸化物層が生成しやすいのに対し、中央部では予備加熱炉の酸化抵抗が少ないためウスタイトやマグネタイトの酸化物が生成しやすいことが分かった。ヘマタイトは、ウスタイトやマグネタイトと比較して拡散抵抗が大きいため、ヘマタイト生成後の酸化層の成長速度は著しく遅延する。よって、焼鈍工程を経た後、端部で酸化層が薄く、中央部で酸化層が厚くなるという板幅方向の酸化バラつきが顕著になることを掴んだ。こうした知見に基づいて予備加熱炉内における加熱条件を検討したところ、ヘマタイトの生成を抑えるには、予備加熱炉内の酸素量を0.05体積%以下に抑えればよいことを見出した。
以上、[1]〜[5]で得られた知見に基づいて、導き出された本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法は、C:0.04〜0.2%、Si:0.1〜3%、Mn:0.1〜3%、Al:0.06%以下(0%は含まない)を満足する素地鋼板の表面に、溶融亜鉛めっき層を形成することを前提としており、この溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法は、上記化学成分組成を満足する素地鋼板を予備加熱炉で加熱する第一の工程、焼鈍炉で加熱して素地鋼板の表面に酸化層を形成する第二の工程、前記酸化層を形成した素地鋼板を還元炉で加熱して前記酸化層を還元する第三の工程、溶融亜鉛めっきを施す第四の工程、をこの順で含み、
前記第一の工程は、前記予備加熱炉内の酸素量を0.00010〜0.05体積%、水蒸気量を10〜30体積%に制御した雰囲気下で、前記第二の工程における焼鈍開始温度が550〜700℃となるように制御し、
前記第二の工程は、前記焼鈍炉内の酸素量を0.0001体積%以上、0.10体積%未満、水蒸気量を10〜30体積%に制御した雰囲気下で、素地鋼板に含まれるSi量(質量%)と、焼鈍時間t(秒)と、焼鈍終了温度T(℃)が、下記式(1)を満足するように制御するものである。
下記式(1)中、[ ]は素地鋼板に含まれるSi量(質量%)を示し、焼鈍時間tは20〜70秒、焼鈍終了温度Tは750〜900℃である。
0.0062×[Si]×(T−675)×(t)1/3≦7.0 ・・・(1)
以下、このような範囲を規定した理由について説明する。
まず、本発明の製造方法で用いる素地鋼板の成分組成について説明する。
Cは、鋼板の強度を高めるために必要な元素であり、その効果を発揮させるために0.04%以上含有させる。Cは、0.05%以上含有することが好ましく、より好ましくは0.10%以上である。しかしCを過剰に含有すると冷間加工性が低下する。従ってCは0.2%以下、好ましくは0.15%以下、より好ましくは0.13%以下とする。
Siは、延性や加工性を劣化させることなく強度を高めるのに作用する元素であり、このような作用を有効に発揮させるには0.1%以上含有させる。Siは易酸化性元素であるため、従来では、Siを0.1%以上含有させると合金化溶融亜鉛めっき層の外観性状と密着性が劣化するという問題があった。これに対し、本発明では、焼鈍炉における加熱条件を適切に制御し、Siを素地鋼板と合金化溶融亜鉛めっき層の界面に濃化させているため、Siを0.1%以上含有させても良好な外観性状と密着性を確保できる。Siは、0.3%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.5%以上、更に好ましくは1.0%以上である。しかし3%を超えて過剰に含有させると延性が劣化するため、上限は3%とする。Siは、好ましくは2.5%以下であり、より好ましくは2%以下である。
Mnは、強度と靭性を確保するために必要な元素であり0.1%以上添加する。従来では、Siと同様の理由で積極添加は避けられていたが、本発明によれば、焼鈍炉における加熱条件を適切に制御しているため、素地鋼板と合金化溶融亜鉛めっき層の界面にMnは濃化しない。従ってMnを0.1%以上含有しても上記の問題を回避できる。Mnは、0.5%以上含有することが好ましく、より好ましくは1%以上である。しかし過剰に含有させると延性を損なうため、上限は3%とする。Mnは、好ましくは2.8%以下、より好ましくは2.5%以下である。
Alは、脱酸剤として作用する元素である。また、Alは、焼鈍の際にオーステナイト結晶粒が粗大化するのを防止し、材質が改善する。しかし過剰に含有させてもその添加効果は飽和する。また、結晶粒が不安定になって材質にムラが出やすくなる。従ってAlは、0.06%以下、好ましくは0.05%以下、より好ましくは0.04%以下とする。
上記素地鋼板は、上記元素を含有するものであり、残部は鉄および不可避不純物である。不可避不純物のうち、例えば、Pは0.02%以下(0%は含まない)、Sは0.004%以下(0%は含まない)、Nは0.01%以下(0%を含まない)とすることが好ましい。
Pを過剰に含有すると、素地鋼板の延性が劣化する。また、合金化溶融亜鉛めっき層の密着性が悪化する。従ってPは0.02%以下、好ましくは0.01%以下、より好ましくは0.005%以下とする。
Sを過剰に含有すると、鋼中に硫化物系介在物(例えば、MnS)を多く形成し、この介在物が熱間圧延時に偏析して鋼板を脆化させる原因となる。従ってSは0.004%以下、好ましくは0.003%以下とする。
Nは、粗大な窒化物を形成し、曲げ性や穴拡げ性を劣化させ、また溶接時のブローホールの原因となるため、0.01%以下に制御することが好ましい。より好ましいN量は0.005%以下である。
上記素地鋼板は、更に他の元素として、
(a)Crを0.3%以下(0%を含まない)、
(b)Tiを0.05%以下(0%を含まない)、
(c)Ni:2%以下(0%を含まない)、Cu:2%以下(0%を含まない)、Mo:2%以下(0%を含まない)、およびB:0.01%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される少なくとも1種、
(d)Nb:1%以下(0%を含まない)、V:1%以下(0%を含まない)、およびW:0.3%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される少なくとも1種、
(e)Ca、Mg、およびREMよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素:0.03%以下(0%を含まない)、
等を含有してもよい。
(a)Crは、鋼板の強度を高めるのに有効に作用する元素である。こうした作用を有効に発揮させるには、0.01%以上、好ましくは0.04%以上、より好ましくは0.08%以上含有させるのがよい。しかし過剰に含有させると延性が劣化する。従ってCrは0.3%以下、好ましくは0.25%以下、より好ましくは0.2%以下とする。
(b)Tiは、脱酸剤として有効に作用する元素である。こうした作用を有効に発揮させるには、0.01%以上、好ましくは0.02%以上含有させるのがよい。しかし過剰に含有させると靱性が低下する。従ってTiは0.05%以下、好ましくは0.04%以下とする。
(c)Ni、Cu、Mo、およびBは、いずれも焼入れ性向上に有用な元素であり、これらの元素を単独または併用することができる。具体的には以下の通りである。
Niは、焼入れ性向上に有用な元素である。Niを適量添加するとCAL焼鈍、冷却時にマルテンサイト比率が増大し、またマルテンサイトのラス構造が微細化され、次工程のCGL焼鈍時における2相域再加熱・冷却処理時の焼入れ性が良好となる。また冷却後の最終的な複合組織が良好なものとなるため、各種成形加工性を向上させることができる。このような作用を有効に発揮させるため、Ni量を好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.2%以上とする。しかし、Niは高価な元素であり、製造コストの上昇を招くため、Ni量の上限は2%とすることが好ましい。Ni量のより好ましい上限は1.5%、更に好ましい上限は1.0%である。
Cuは、Niと同様、焼入れ性向上に有用な元素である。CuもNiと同様の作用により各種成形加工性を向上させることができる。このような作用を有効に発揮させるため、Cu量を好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.2%以上とする。しかし、Cuは高価な元素であり、製造コストの上昇を招くため、Cu量の上限は2%とすることが好ましい。Cu量のより好ましい上限は1.5%、更に好ましい上限は1.0%である。
Moは、NiやCuと同様、焼入れ性向上に有用な元素である。また、Moは、CuやNiと同様の作用により各種成形加工性を向上させることができる。また、Moは、めっき性を損ねることなく、固溶強化を図る上で重要な元素である。このような作用を有効に発揮させるため、Mo量を好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.2%以上とする。しかし、Moは高価な元素であり、製造コストの上昇を招くため、Mo量の上限は2%とすることが好ましい。Mo量のより好ましい上限は1.5%、更に好ましい上限は1.0%である。
Bは、焼入れ性向上に有用な元素である。このような作用を有効に発揮させるため、B量を好ましくは0.0001%以上、より好ましくは0.0002%以上とする。しかし、Bを過剰に添加すると、めっき性が低下するため、B量の上限は0.01%とすることが好ましい。B量のより好ましい上限は0.005%、更に好ましい上限は0.001%である。
(d)Nb、V、およびWは、いずれも強度向上に有用な元素であり、これらの元素を単独または併用することができる。具体的には以下の通りである。
Nbは、微量の添加で微細組織を得ることができ、靱性を劣化させることなく強度を高めるのに有用な元素である。このような作用を有効に発揮させるため、Nb量を好ましくは0.001%以上、より好ましくは0.005%以上とする。しかし、Nbを過剰に添加するとNb炭化物が過剰に生成し、マルテンサイトの体積率減少やその析出強化によって強度と加工性のバランスを失わせるため、Nb量の上限は1%とすることが好ましい。Nb量のより好ましい上限は0.5%、更に好ましい上限は0.1%である。
Vは、Nbと同様、強度を高めるのに有用な元素である。このような作用を有効に発揮させるため、V量を好ましくは0.001%以上、より好ましくは0.005%以上とする。しかし、Vを過剰に添加すると、製造コストの上昇を招くだけでなく、降伏点(降伏比)が上昇して加工性が低下するため、V量の上限は1%とすることが好ましい。V量のより好ましい上限は0.5%、更に好ましい上限は0.1%である。
Wは、析出物強化や、フェライト結晶粒の成長を抑制して細粒強化、および再結晶の抑制による転移強化によって、強度を高めるのに有用な元素である。このような作用を有効に発揮させるため、W量を好ましくは0.001%以上、より好ましくは0.005%以上とする。しかし、Wを過剰に添加すると、炭窒化物の析出が過剰となって成形性が低下するため、W量の上限は0.3%とすることが好ましい。W量のより好ましい上限は0.2%、更に好ましい上限は0.1%である。
(e)Ca、Mg、およびREMは、いずれも脱酸剤として作用する元素である。このような作用を有効に発揮させるため、Ca、Mg、およびREMよりなる群から選ばれる1種以上の元素を合計量で好ましくは0.002%以上、より好ましくは0.003%以上とする。しかし、これら元素を過剰に添加すると、成形性が低下するため、Ca、Mg、およびREMよりなる群から選ばれる1種以上の元素の合計量の上限は0.03%とすることが好ましい。合計量のより好ましい上限は0.02%であり、更に好ましい上限は0.01%である。
なお、本発明において、REMとは、ランタノイド元素(LaからLuまでの15元素)およびSc(スカンジウム)とY(イットリウム)を含む意味である。これらの元素のなかでも、La、CeおよびYよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有することが好ましく、より好ましくはLaおよび/またはCeを含有するのがよい。
上記化学成分組成を満足する素地鋼板を用い、上記第一の工程から第四の工程を経ることで溶融亜鉛めっき鋼板を製造できるが、特に、本発明の製造方法を最も特徴付ける上記第一の工程(予備加熱工程)と第二の工程(酸化工程)を行うときの条件は次の通りである。
《第一の工程(予備加熱工程)》
予備加熱炉内の酸素量は0.00010〜0.05体積%(1.0〜500ppm)に調整する。酸素量が0.00010体積%を下回ると素地鋼板の表面が酸化されないため、第三の工程(還元工程)で所望とするFe層(還元層)が形成されず、不めっきが発生する。酸素量は、好ましくは0.001体積%以上、より好ましくは0.005体積%以上である。しかし酸素量が0.05体積%を超えると、上述したように、幅方向の品質が低下する。従って酸素量は0.05体積%以下、好ましくは0.03体積%以下、より好ましくは0.02体積%以下である。
予備加熱炉内の水蒸気量は10〜30体積%に調整する。水蒸気は、外方酸化層と内方酸化層の両方の成長を促進する作用を有している。しかしながら、水蒸気量が30体積%を超えると、外方酸化層が厚くなり過ぎてパウダリングが発生し易くなる。また、内方酸化層が厚くなり過ぎて素地鋼板とめっき層の界面におけるSi量が過剰になり、めっき剥離を発生してめっき密着性が劣化する。従って水蒸気量は30体積%以下、好ましくは25体積%以下、より好ましくは23体積%以下である。しかし水蒸気量が10体積%を下回ると、素地鋼板の表面が酸化されないため、不めっきや合金化ムラが発生する。従って水蒸気量は10体積%以上、好ましくは15体積%以上、より好ましくは17体積%以上である。
予備加熱炉内の雰囲気に含まれる酸素量と水蒸気量は、予備加熱炉内を加熱するときに用いるバーナーに供給する燃焼ガスの流量や、燃焼ガスと空気の流量比(空燃比)を調整すれば制御できる。
予備加熱炉内における加熱条件は、後工程の第二の工程(酸化工程)における焼鈍開始温度が550〜700℃となるように制御する。予備加熱炉内において、第二の工程における焼鈍開始温度が550℃以上となるように加熱しておかないと、焼鈍炉の負荷が大きくなり過ぎる。好ましくは580℃以上、より好ましくは600℃以上となるように予備加熱炉内で加熱する。しかし予備加熱炉において、第二の工程における焼鈍開始温度が700℃を超える温度にまで加熱すると、酸化層が厚くなり過ぎるためめっき層が厚くなり過ぎてパウダリングが発生し、めっき密着性が悪くなる。従って予備加熱炉内では、第二の工程における焼鈍開始温度が700℃以下となるように加熱する。好ましくは680℃以下であり、より好ましくは650℃以下である。
第二の工程における焼鈍開始温度が上記範囲になるように調整するには、例えば、炉内の温度や通板速度を制御すればよい。素地鋼板の表面温度は、例えば、放射温度計を用いて測定できる。
予備加熱炉での加熱時間(トータル時間)は、おおむね30〜70秒程度であることが好ましい。
《第二の工程(酸化工程)》
焼鈍炉内の酸素量は0.0001体積%以上、0.10体積%未満(1ppm以上、1000ppm未満)に調整する。酸素量が0.0001体積%を下回ると素地鋼板の表面が酸化されないため、第三の工程で所望とするFe層が形成されず、不めっきが発生する。酸素量は、好ましくは0.001体積%以上、より好ましくは0.005体積%以上である。しかし酸素量が0.10体積%以上になると、内方酸化層が生成し過ぎて、内方酸化層に含まれるSi量が過剰になるため、めっき剥離を発生し、めっき密着性が劣化する。従って酸素量は0.10体積%未満、好ましくは0.05体積%以下、より好ましくは0.03体積%以下である。
焼鈍炉内の水蒸気量は10〜30体積%に調整する。水蒸気は、焼鈍炉内においても外方酸化層と内方酸化層の両方の成長を促進するのに作用する。水蒸気量が10体積%を下回ると、素地鋼板の表面が酸化されないため、不めっきや合金化ムラが発生する。従って水蒸気量は10体積%以上、好ましくは15体積%以上、より好ましくは17体積%以上である。水蒸気量の上限は、30体積%以下、好ましくは25体積%以下、より好ましくは23体積%以下である。
焼鈍炉内の雰囲気に含まれる酸素量と水蒸気量は、焼鈍炉内を加熱するときに用いるバーナーに供給する燃焼ガスの流量や、燃焼ガスと空気の流量比(空燃比)を調整すれば制御できる。
素地鋼板に含まれるSi量(質量%)と、焼鈍時間t(秒)と、焼鈍終了温度T(℃)の関係は、上述したように、上記式(1)を満足するように制御する。左辺の値は、好ましくは6以下である。なお、左辺の値の下限値は、小さければ小さいほど良く、式(1)を構成する各要件(Si量、焼鈍時間t、焼鈍終了温度T)との関係で自動的に算出され、例えば、0.1である。
上記焼鈍時間tは20〜70秒、焼鈍終了温度Tは750〜900℃である。焼鈍時間tが20秒を下回ると、短時間のうちに焼鈍工程を完了させる必要があるため、焼鈍炉の負荷が大きくなり過ぎる。また、焼鈍時間が短過ぎると所望の材料特性が得られない。従って焼鈍時間tは20秒以上、好ましくは25秒以上、より好ましくは30秒以上である。しかし焼鈍時間tが70秒を超えると、内方酸化層が厚くなり過ぎて内方酸化層に含まれるSi量が多くなり、めっき剥離を発生してめっき密着性が劣化する。従って焼鈍時間tは70秒以下、好ましくは60秒以下、より好ましくは50秒以下である。
次に、第三の工程(還元工程)と第四の工程(めっき・合金化工程)について説明する。これらの工程は、GI鋼板やGA鋼板を製造する際に通常採用される方法を採用できる。
《第三の工程(還元工程)》
第三の工程では、上記酸化工程で形成した酸化層を還元炉で還元することで、素地鋼板の表面に還元Fe層を形成する。還元炉内の雰囲気は、還元性ガス雰囲気とすればよい。還元性ガス雰囲気としては、例えば、H2ガス含有N2ガス雰囲気である。還元炉内の温度は、例えば、800〜950℃程度、還元時間は30秒〜3分程度とすればよい。
上記以外の予備加熱炉と焼鈍炉での加熱条件について、例えば、素地鋼板の昇温速度は図6に示すように一定であってもよいが、これに限定する趣旨ではない。
《第四の工程(めっき・合金化工程)》
第四の工程では、還元Fe層の表面に、溶融亜鉛めっきを施す。溶融亜鉛めっき浴の温度は、400〜600℃程度に制御すればよい。溶融亜鉛めっき層の付着量は、30〜70g/m2程度に制御すればよい。
本発明の溶融亜鉛めっき鋼板は、上記第一の工程から第四の工程(予備加熱工程→酸化工程→還元工程→めっき・合金化工程)を経ることで製造できる。この溶融亜鉛めっき鋼板には、合金化処理を施してもよい。合金化処理の条件は特に限定されず、公知の条件を採用できる。合金化温度は、500〜600℃程度に制御すればよい。
このようにして得られた溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、外観性状とめっき密着性が幅方向に亘って良好に改善されている。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
下記表1または表2に示す化学成分を含有する鋼(残部は鉄および不可避不純物)を溶製し、スラブを製造した。スラブを製造するにあたって、REMはLaを約25%とCeを約50%含有するミッシュメタルを用いて成分調整した。得られたスラブを1200℃に加熱して、熱間圧延し、厚さ2.5mmの熱延鋼板を得た。得られた熱延鋼板を酸洗してスケール除去し、冷間圧延して厚さ2.0mmの薄鋼板(素地鋼板)を作製した。
得られた薄鋼板を酸洗してスケール除去し、予備加熱炉で室温から所定の温度に加熱した後、次いで焼鈍炉で加熱して表面に酸化層を形成し、この酸化層を還元炉で還元してから表面に溶融亜鉛めっきを施した(下記表3のNo.1〜12、下記表4のNo.27〜30、36〜39)。
予備加熱炉、焼鈍炉、および還元炉における具体的な条件は以下の通りである。なお、薄鋼板の表面温度は放射温度計、酸素量は磁気式濃度計、水蒸気量は露点計をそれぞれ用いて測定した。
《予備加熱炉》
予備加熱炉内では、燃焼ガスと空気の混合ガスをバーナーで燃焼させて上記薄鋼板を加熱した。燃焼ガスとしてはCOGガスを用い、このCOGガスは、55体積%のH2ガス
と6体積%のN2ガスを含み、残部は炭化水素ガスで構成されている。
燃焼ガスの流量、および燃焼ガスと空気の流量比(空燃比)を制御して予備加熱炉内の酸素量と水蒸気量を制御した。予備加熱炉内の酸素量と水蒸気量を下記表3または表4に示す。
予備加熱炉では、後工程の焼鈍炉における焼鈍開始温度が下記表3または表4に示す温度となるように加熱した。予備加熱炉における加熱条件は、予備加熱炉内の温度と、予備加熱炉内における通板速度を調整することによって制御した。なお、予備加熱炉内での全在炉時間(トータル時間)は、後述する焼鈍炉における焼鈍時間t(秒)とほぼ同じとした。
《焼鈍炉》
焼鈍炉では、上記予備加熱炉と同様に、燃焼ガスと空気の混合ガスをバーナーで燃焼させて上記薄鋼板を加熱して薄鋼板の表面に酸化層を形成した。焼鈍炉内の酸素量と水蒸気量を下記表3または表4に示す。
下記表3または表4には、焼鈍時間t(秒)と焼鈍終了温度T(℃)を併せて示した。焼鈍時間tは、焼鈍炉内における通板速度を調整することによって制御した。焼鈍終了温度Tは、焼鈍炉内の温度と、焼鈍炉内における通板速度を調整することによって制御した。
《還元炉》
還元炉では、ラジアントチューブ式炉を用いて薄鋼板を間接的に加熱して薄鋼板の表面に形成された酸化層を還元した。還元炉内では、H2を20体積%含有するN2ガス雰囲気(還元性雰囲気)で、還元炉出口における薄鋼板の温度が950℃となるように上記薄鋼板を加熱した。
また、下記表3または表4には、薄鋼板に含まれるSi量、焼鈍時間t、および焼鈍終了温度Tに基づいて、上記式(1)の左辺の値を算出し、その結果を示す。なお、下記表3に示すNo.24は、焼鈍時間tが80秒であり、上記式(1)を適用できない。そのため、No.24については、内方酸化層に含まれるSi量を上記予備実験1と同様にEPMAで分析し、定量した。その結果、No.24の内方酸化層に含まれるSi量は7.5質量%であった。
還元炉で酸化層を還元した後は、還元性雰囲気を維持したまま冷却し、大気と接触させることなく上記薄鋼板を溶融亜鉛浴に浸漬して溶融亜鉛めっきを行い、溶融亜鉛めっき鋼板(GI鋼板)を製造した。溶融亜鉛浴の温度は450℃とした。
下記表3に示すNo.13〜26、および下記表4に示すNo.31〜35、40〜44については、溶融亜鉛めっき後、合金化炉で更に500℃で加熱して合金化処理を施し、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA鋼板)を製造した。下記表3または表4に、合金化処理の有無を示す。
得られた溶融亜鉛めっき鋼板(GI鋼板)または合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA鋼板)について、外観性状と、めっき層の密着性を次の手順で評価した。
《外観性状》
外観性状は目視で観察し、GI鋼板については不めっき発生の有無を調べ、GA鋼板については合金化ムラ発生の有無を調べて評価した。外観性状の観察は、GI鋼板、GA鋼板ともに、鋼板の幅方向に対して端部と中央部の2箇所で行った。端部とは、鋼板の端から20cm程度位置までの範囲を意味し、中央部とは、鋼板幅の中央近傍を意味している。下記基準で評価した結果を下記表5または表6に示す。
(外観性状の評価基準)
◎(合格) :不めっきまたは合金化ムラが発生していない
○(合格) :不めっきまたは合金化ムラが少し発生しているが、製品としては問題が無い
×(不合格):不めっきまたは合金化ムラが発生している
《めっき密着性》
めっき密着性は、上記予備実験1と同じ条件でV曲げ戻し試験を行い、曲げ戻し加工した後、V曲げしたときの内側にセロハンテープ(ニチバン社製;「セロテープ(登録商標)CT405AP−24」)を貼り付け、これを手で剥がし、めっき層の剥離幅を測定して評価した。剥離幅の測定位置は、GI鋼板、GA鋼板ともに、鋼板の幅方向に対して端部と中央部の2箇所で行った。
測定した剥離幅に基づいて次の基準で評価した。評価結果を下記表5または表6に示す。なお、GA鋼板については、めっき剥離の原因が、薄鋼板からめっき層が剥離したことによるか(めっき剥離)、パウダリングが発生したことによるか観察し、その結果も併せて示した。
(めっき剥離の評価基準)
◎(合格) :めっき剥離無し
○(合格) :剥離幅が5mm以下であり、製品としては問題が無い
×(不合格):剥離幅が5mmを超えており、製品として問題がある
下記表3〜表6から次のように考察できる。
No.1〜12、27〜30、36〜39では、GI鋼板について評価しており、No.13〜26、31〜35、40〜44では、GA鋼板について評価している。
《GI鋼板》
No.3〜5、7、8、11、27〜30、36〜39は、本発明で規定する要件を満足する製造方法で得られたGI鋼板であり、幅方向に亘って外観性状とめっき密着性が良好である。
これに対し、No.1、2、6、9、10、12は、以下に詳述するように、本発明で規定する要件のいずれかを満足しない製造方法で得られたGI鋼板である。
これらのうちNo.1は、予備加熱炉内の雰囲気のうち酸素量が過剰な例であり、鋼板の端部に不めっきが発生しており、外観性状が劣っていた。No.2は、焼鈍終了温度Tが低過ぎる例であり、鋼板全体に亘って不めっきが発生しており、外観性状が劣っていた。No.6、9、10、12は、焼鈍炉における焼鈍条件が適切に制御されておらず、上記式(1)を満足していない例である。鋼板全体に亘ってめっき層剥離が発生しており、めっき密着性が悪かった。
《GA鋼板》
No.13、15、17、20、21、25、26、31〜35、40〜44は、本発明で規定する要件を満足する製造方法で得られたGA鋼板であり、幅方向に亘って外観性状とめっき密着性が良好である。
これらに対し、No.14、16、18、19、22〜24は、以下に詳述するように、本発明で規定するいずれかの要件を満足しない製造方法で得られたGA鋼板である。
これらのうちNo.14は、焼鈍開始温度が高過ぎる例であり、鋼板全体に亘ってパウダリングが発生しており、めっき密着性が悪かった。No.16は、焼鈍終了温度Tが高過ぎる例であり、鋼板全体に亘ってパウダリングが発生しており、めっき密着性が悪かった。No.18は、焼鈍炉における焼鈍条件が適切に制御されておらず、上記式(1)を満足していない例である。鋼板全体に亘ってめっき層の剥離が発生しており、めっき密着性が悪かった。No.19は、予備加熱炉内の雰囲気のうち酸素量が少な過ぎる例であり、鋼板全体に亘って合金化ムラが発生しており、外観性状が劣っていた。No.22と23は、予備加熱炉内の雰囲気のうち酸素量が過剰な例であり、鋼板の端部に不めっきが発生しており、外観性状が劣っていた。特にNo.23は、焼鈍炉内の雰囲気のうち酸素量も過剰な例であり、鋼板の中央部にパウダリングが発生しており、めっき密着性が悪かった。No.24は、焼鈍炉における焼鈍時間tが長過ぎる例であり、鋼片全体に亘ってめっき剥離が発生しており、めっき密着性が悪かった。
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Claims (8)

  1. C :0.04〜0.2%(質量%の意味。以下化学成分について同じ。)、
    Si:0.1〜3%、
    Mn:0.1〜3%、
    Al:0.06%以下(0%は含まない)を満足する素地鋼板の表面に、溶融亜鉛めっき層が形成された溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法であって、
    上記化学成分組成を満足する素地鋼板を予備加熱炉で加熱する第一の工程、
    焼鈍炉で加熱して素地鋼板の表面に酸化層を形成する第二の工程、
    前記酸化層を形成した素地鋼板を還元炉で加熱して前記酸化層を還元する第三の工程、
    溶融亜鉛めっきを施す第四の工程、をこの順で含み、
    前記第一の工程は、前記予備加熱炉内の酸素量を0.00010〜0.05体積%、水蒸気量を10〜30体積%に制御した雰囲気下で、前記第二の工程における焼鈍開始温度が550〜700℃となるように制御し、
    前記第二の工程は、前記焼鈍炉内の酸素量を0.0001体積%以上、0.10体積%未満、水蒸気量を10〜30体積%に制御した雰囲気下で、素地鋼板に含まれるSi量(質量%)と、焼鈍時間t(秒)と、焼鈍終了温度T(℃)が、下記式(1)を満足するように制御することを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼鈑の製造方法。
    0.0062×[Si]×(T−675)×(t)1/3≦7.0 ・・・(1)
    [上記式(1)中、[ ]は素地鋼板に含まれるSi量(質量%)を示し、焼鈍時間tは20〜70秒、焼鈍終了温度Tは750〜900℃である。]
  2. 前記素地鋼板が、更に他の元素として、
    Cr:0.3%以下(0%を含まない)を含有する請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記素地鋼板が、更に他の元素として、
    Ti:0.05%以下(0%を含まない)を含有する請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記素地鋼板が、更に他の元素として、
    Ni:2%以下(0%を含まない)、
    Cu:2%以下(0%を含まない)、
    Mo:2%以下(0%を含まない)、および
    B :0.01%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 前記素地鋼板が、更に他の元素として、
    Nb:1%以下(0%を含まない)、
    V :1%以下(0%を含まない)、および
    W :0.3%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 前記素地鋼板が、更に他の元素として、
    Ca、Mg、およびREMよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素:0.03%以下(0%を含まない)を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
  7. 前記素地鋼板の残部が、鉄および不可避不純物である請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法で得られた溶融亜鉛めっき鋼板に、合金化処理を施すことを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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