JP2004238677A - 溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】溶融亜鉛めっき鋼板において、表層部に厚さ2〜100μmの窒素濃化層を有するとともに、0.3〜3.0重量%のSiを含有する鋼を母材とする。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、Si含有量が高い高張力鋼板等を母材とする溶融亜鉛めっき鋼板、及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、地球規模での二酸化炭素総排出量の削減が求められている。化石燃料を多量に消費している自動車においては、かかる要請から排ガス量の削減、あるいは燃費向上の目的で、車体重量の軽量化が進められている。
【0003】
その一環として、クロスメンバーやサイドメンバー等の部材に、薄肉化しても強度を確保することが可能な高張力鋼板の採用が増加している。高張力鋼板は、通常は、製鋼段階で充分に脱炭処理して、例えば炭素0.01%以下の極低炭素鋼としてからTiを添加した極低炭素Ti添加鋼や、炭素0.05〜0.2%の範囲の中低炭素アルミキルド鋼をベースに、P、Si、Mn、Cr、Alを添加して強度を上げた高張力鋼を素材としており、その組成等について多くの提案がされている。特に、Siについては、強度向上、延性向上のいずれにも有効であり、耐食性を向上する観点からもSi含有量の高い高張力鋼板が有望視されている。
【0004】
また、自動車の車体には、高張力鋼板の採用と合わせて、耐食性や外観を向上させるため、めっき鋼板の導入も進められており、通常、溶融亜鉛めっきによる亜鉛めっきが行われている。従って、自動車の車体に高張力鋼板を使用する場合には、高張力鋼板表面へのめっき密着性も必要かつ重要となる。
【0005】
ところが、SiはFeに比較して易酸化性である。そのため、Si含有量の高い高張力鋼板では、焼鈍工程において、鋼板表面にSiが濃化しやすく、めっき密着性を阻害したり、プレス成形など後の加工工程において、めっき皮膜の加工剥離を招く原因になり、極端な場合は、不めっき欠陥を発生させることもある。
【0006】
溶融亜鉛めっきにおける母材鋼板表面へのめっき密着性(以下において「めっき密着性」というときには、めっきの濡れ性を含む概念をさすことがある。)改善の技術としては、母材鋼板を弱酸化性雰囲気で加熱して鋼板表面にFe系酸化皮膜を形成し、その後、鋼板を還元性雰囲気で加熱して、表面を活性でポーラスな状態にする前処理が、特許文献1に開示されている。また、特許文献2および特許文献3には、Cu、Ni、Fe等のプレめっきを行った後、還元性雰囲気で熱処理を行う前処理の方法が開示されている。また、特許文献4には、鋼中のN量を高めてめっき密着性を改善する手法が開示されている。
【特許文献1】
特公昭53−44141号公報
【特許文献2】
特開昭56−33463号公報
【特許文献3】
特開昭57−79160号公報
【特許文献4】
特開2001−303229号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、母材鋼板を弱酸化性雰囲気で加熱して鋼板表面にFe系酸化皮膜を形成し、その後、鋼板を還元性雰囲気で加熱してポーラス還元鉄を形成させる特許文献1の手法は、通常の鋼板に対しては有効であるが、0.3%以上のSiを含有する高Si鋼板に適用する場合は、不めっきを完全に防止できず、めっき密着性の点でも満足すべき製品を得ることができないのが現状である。また、Cu、Ni、Fe等のプレめっきを行った後、還元性雰囲気で熱処理を行う前処理を開示した特許文献2および特許文献3の方法によれば、現有設備に加えて新たに電気めっき装置の設置が必要か、別途電気めっきラインに通板する必要があるため、コスト増加は免れない。さらに、特許文献4には、鋼中のN量を高め、更には焼鈍雰囲気中にアンモニアを10%以上添加し、合金化溶融めっき鋼板とする手法が提案されているが、鋼中への過剰のN添加は、母材の延性を著しく低下させるため材料特性として満足できるものではない。
【0008】
このようなことから、自動車用高強度材料として魅力のあるSi含有鋼板もこれを溶融亜鉛めっきする合理的な手段を欠いているのが実情である。
【0009】
そこで本発明は、高Si鋼板を母材とする場合のめっき不良を防ぎ、更には難成形部位に用いられた場合にも高摺動に耐えうる軟鋼並のめっき密着性を備えた溶融亜鉛めっき鋼板とその製造方法を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
Si含有量の高い鋼板に対して溶融亜鉛めっきを行う場合のめっき不良の原因が、焼鈍時における母材鋼板表面へのSiの濃化にあることは既に述べた。本発明者らは、従来のめっき密着性改善策を、主にSiの濃化という観点から再検討した。
【0011】
その結果、母材鋼板の表面にFe系酸化皮膜を形成した後、その表面を還元によって活性でポーラスにする方法やCu、Ni、Fe等のプレめっきを行った後、還元性雰囲気で加熱する方法の場合は、インライン処理を前提とする現状のめっき設備では、焼鈍中にその還元鉄層やプレめっき層中を鋼中Siが容易に表面に拡散濃化し、めっき密着性をもたらすに充分な亜鉛濡れ性を確保することが困難となることが分った。
【0012】
また、鋼中の窒素(N)量を高め、更には焼鈍雰囲気中にアンモニアを10vol.%以上存在させた場合には、濡れ性の改善効果は認められるが、効果にバラツキが大きく、前述したように材料特性との両立が困難である。これは、鋼中窒素(N)量が通常鋼より高いためでもあるが、アンモニア濃度が10vol.%以上と高いため、分解した窒素(N)が一旦鋼中に拡散侵入する条件になれば、材質に影響を及ばす程度の窒化層(硬化層)が形成されるためであることが判明した。
【0013】
そこで、本発明者らは、焼鈍時に鋼中Siが容易に表層に濃化しないバリヤー層を形成させることが不可欠と考え、材料特性に悪影響を及ぼさない程度に窒素濃化層を制御した。この機構は明確には分かっていないが、窒素(N)を固溶した鋼中のSiの拡散速度が低下するためと、Siが窒化珪素(SiN)の形で固定されるためであると推定している。
【0014】
また、界面の密着力を向上させる手段として、表面粗さRzが0.5μm以上のめっき母材(原板)を用いることにより、十分にアンカー効果を付与でき、めっき密着性を改善することができる。ここにRzは、JIS B0601(2001)に規定される10点平均粗さをいう。η相が全てFe−Zn合金相になる合金化溶融亜鉛めっき鋼板とは異なり、溶融亜鉛めっき鋼板では、冷延母材の表面粗さが、ある程度めっき後も温存されるため、上記表面粗さの母材を使用することは特に有効である。
【0015】
さらに、溶融亜鉛めっき鋼板においては、めっき皮膜の経時剥離を抑制するため、亜鉛浴中のPb、Sn、Cd、Bi等の元素を200ppm以下に設定することは、従来より知られている技術である。
【0016】
本発明はこれらの知見を基にして完成されたものであり、その要旨は下記二態様に集約される。
【0017】
本発明の第一の態様は、表層部に厚さ2〜100μmの窒素濃化層を有するとともに、0.3〜3.0重量%のSiを含有する鋼を母材とする、溶融亜鉛めっき鋼板である。
【0018】
上記態様の溶融亜鉛めっき鋼板において、めっき皮膜のAl濃度を0.15重量%以上、Fe含有量を0.5g/m2以下で、残部Znと不可避不純物であるように構成することが好ましい。
【0019】
また、上記態様の溶融亜鉛めっき鋼板において、前記めっき皮膜を除去した後の母材の表面粗さRzが5.0μm以上であることが好ましい。
【0020】
本発明の第二の態様は、0.3〜3.0重量%のSiを含有する鋼を母材として、連続溶融めっきライン中において前記母材表面を、H2濃度2vol.%以上、アンモニア濃度1〜10vol.%、残部が窒素と不可避的ガスからなる雰囲気中で還元する還元工程を備えた、溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法である。
【0021】
上記第二の態様の製造方法において、前記母材を前記還元工程に引き続き、Al濃度が0.13重量%以上の亜鉛めっき浴中に浸漬するめっき工程を備えることが好ましい。
【0022】
また、上記第二の態様の製造方法において、前記還元工程前に、予め前記母材の表面粗さRzを5μm以上に調整する工程を含むことが好ましい。
【0023】
かくして、本発明の溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法によれば、母材鋼板が還元される前か同時に、鋼板表層に2〜100μmの窒素濃化層を形成することによって、鋼中Siの表面濃化を抑制するため、優れためっき密着性を確保できる。更に皮膜中の界面合金層の形成量を所定量以下に抑え、且つ、予め母材の表面粗さRzを5μm以上に調整することにより、軟鋼並のめっき密着性を確保することが可能となる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の主要な構成を項目に分けて説明する。なお、濃度等の表示で「%」とあるのは特に断りのない限り、重量%を意味する。
【0025】
(1)母材鋼板の合金成分
本発明の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法において、母材鋼板中のSi含有量を重量比で0.3〜3.0%としたのは、次の理由による。0.3%未満では、強度の増加等に不充分であり、また焼鈍時に鋼板表面に濃化するSi量も僅かであるので、特別な前処理を施さなくても従来の連続焼鈍条件で充分なめっき付着性が得られる。また、3%を超えると、鋼板の強度が高くなりすぎ成形性が急激に困難になる。より好ましい範囲は、0.5〜2.0%である。このような理由から、母材鋼板中のSi量は母材強度の実用範囲として汎用的な0.3〜3.0%とした。Si以外には、C、Mn、P、S、Ti、Mo、Nb、Cr、Cu、Ni等が、一般量含有される。鋼中Al濃度については、残留オーステナイト形成元素として知られており、2.0%まで含有しても特に問題はない。
【0026】
(2)鋼板表層の窒素濃化層
鋼板表層の窒素濃化層は、還元時に鋼中Siの鋼表層への拡散濃化を抑制するために、めっき濡れ性を向上させていると考えられる。窒素濃化層が2μm未満であると十分な濡れ性を確保できず、100μmを越えると、窒素濃化層自身の硬度が、母材硬度に較べて上昇するため伸びが低下し、目的とする材料特性が出なくなる。このため窒素濃化層の厚さを2〜100μmに限定したものである。窒素濃化層の厚さのより好ましい範囲は、3〜50μm、さらに好ましくは5〜20μmである。窒素濃化層の形成手段であるが、連続めっきラインの還元工程及び/又はそれより前の工程でアンモニアを含む雰囲気がス中で加熱する手法があげられる。特に、還元工程でFeに対してアンモニアを含む還元性ガス中で行う手法が最も効率がよい。または、オフライン工程で予め、バッチ炉内でガス軟窒化を行っても良い。
【0027】
(3)めっき皮膜成分
表面品質を重視する製品では、浴中のドロス付着の防止が重要である。溶融めっきのドロス欠陥は大きく分けて、トップドロス(Fe2Al5)系とボトムドロス(FeZn7)系がある。トップドロスは粒径も小さく操業中でも簡単に除去できるが、ボトムドロスは粒径が大きいため欠陥となりやすく、操業中の除去が困難である。このため極力ボトムドロスの発生を抑制するため、浴中のトータルAl濃度を0.13%以上にすることが望ましい。一般的にこの程度の低Al濃度でめっきされためっき鋼板の皮膜Al濃度は浴中Al濃度より増加するため、必然的に皮膜Al濃度は0.15%以上となる。より好ましい範囲は、0.20%以上である。特に皮膜Al濃度の上限は規定しないが、残部Znの犠牲防食が十分に働くように70%以下が望ましい。
【0028】
皮膜中のFe量とは、主にめっき皮膜と母材との界面に形成されたFe−Al合金層、或いは、Fe−Zn合金相中のFe量を意味している。浴中Al濃度がそれほど高くない場合、Fe−Al合金層が厚く形成されることが無いため問題ない。しかし、Fe−Zn合金相は、浴温度が高い場合、侵入材温が高い場合、あるいは、板厚が厚い場合などに厚く形成され易くなり、めっき密着性が低下する。このため、皮膜中のFe含有量は0.5g/m2以下であることが好ましい。より好ましい範囲は、0.3g/m2以下である。
【0029】
不可避不純物としては、Fe、Ni、Cr、Ti、Mo、W、La、Ce、Si等が含まれていても特に問題はない。また、さらなる耐食性の向上を目的として、Mgを4%以下含有しても良い。但し、経時剥離の問題から、Pb、Sn、Cd、Bi等の元素は合計で200PPm以下に設定されることが好ましい。またこの場合、溶融亜鉛めっき特有のスパングルも開華しにくくなるという効果もある。
【0030】
本発明において、めっき付着量は特に限定する必要はなく、一般的に市場に出回っている範囲、すなわち片面当たり30〜400g/m2程度で良い。
【0031】
(4)母材鋼板の表面粗さRz
鋼板の表面粗さRzが5μm未満であると、めっき/鋼板界面でアンカー効果が十分に働かず、高面圧摺動下でめっき剥離を起こすことがある。このため、鋼板の表面粗さRzは5μm以上であることが好ましい。より好ましくは6μm以上である。また、鋼板の表面粗さRzの上限は特に規定はしないが、表面外観に影響を及ぼさない15μm以下であることが望ましい。高Si鋼などのめっき反応性が低い鋼種については、めっき前鋼板表面粗さはめっき後でも概ね温存されるため、Rzを5μm以上に調整すればよい。また、鋼板表面粗さの調整方法は、調質圧延時のロールマット粗度や、連続めっきラインの鋼板洗浄時のブラシ研削によっても調整できる。
【0032】
(5)H2濃度、及びアンモニア濃度
本発明では、鋼板表面にSiが濃化する前に窒素濃化層を形成させる。連続溶融亜鉛めっきラインでは、還元工程かそれより前の工程で、アンモニアを含む雰囲気ガス中で加熱する必要がある。特に短時間内に所定厚みの窒素濃化層を形成させるためには、鋼板表面の酸化物を極力低減しておく必要があるので、還元焼鈍工程で、H2濃度やアンモニア濃度を調整した雰囲気中で加熱するのがよい。このとき、H2濃度が2vol.%未満では、十分に窒素濃化層が形成されない。このためH2濃度は2vol.%以上に設定する。より好ましくは、5vol.%以上である。また、水素が3vol.%以上含有された雰囲気下でも、アンモニア濃度が1vol.%未満では十分な窒素濃化層が形成されない。また、反対にアンモニア濃度が10vol.%以上では、過度に窒素濃化層が形成され、目標とする機械特性から外れやすくなる。このため、アンモニア濃度は、l〜10vol.%とする。より好ましくは、2〜8vol.%である。残部はN2ガスで、不可避的ガスとして、H2O、CO2、CO等微量含まれても良い。加熱条件は、皮膜還元の観点からは、600〜900℃×20秒以上が望ましいが、これは、通常の焼鈍条件(700〜850℃×30〜60秒)により満足される。
【0033】
(製造方法):
本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼板を製造するには、基本的には溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法に準じて行えばよいが、好適な製造方法を、連続溶融亜鉛めっき設備の一例を示す図1を参照しつつ以下に例示する。
【0034】
図1において、連続溶融亜鉛めっき設備100は、入り側部10、処理部20及び出側部30より構成されている。入り側部10はコイル状の鋼板を巻き戻すためのペイオフリール11、剪断装置12、及び溶接装置13などからなっている。処理部20は、連続炉21、亜鉛めっき浴22、エアワイパー23、空冷帯24などにより構成されている。連続加熱炉21は、無酸化炉21aと、還元焼鈍炉21bとを備えており、還元焼鈍炉21b内にはN2ガスとともに、H2ガスとNH3ガスとが所定濃度に調整されて炉内雰囲気を構成している。出側部30には、スキンパスミル31、テンションレベラー32、クロメート処理装置33、剪断装置34、静電塗油機35、及び最終的に鋼板を巻き取るカローゼルリール36などがライン上に配置されている。
【0035】
ペイオフリール11から巻き出された母材は通常の方法に従って、例えば連続加熱炉21で再結晶焼鈍した後にめっき浴温度近傍まで冷却し、亜鉛めっき浴22に浸漬し、引き上げてエアワイパー23により亜鉛付着量を調整する。母材が再結晶焼鈍を必要としない場合には、母材を少なくとも600℃以上の還元雰囲気下で加熱した後めっき浴温度近傍まで冷却した後に亜鉛めっき浴22に浸漬する。
【0036】
めっき浴温度を過度に高くすると、亜鉛めっき浴22に浸漬中に合金層が過度に発達する。逆に過度に低くするとめっき付着量の調整が困難となる。このため、亜鉛めっき浴22の温度は、その融点よりも30〜60℃高く設定するのがよい。
【0037】
亜鉛めっき浴22に浸漬した母材はめっき浴22から引き上げて、エアワイパー23を用いた通常の気体絞り法でめっき付着量を調整するが、さざ波等の表面ムラを抑制するために非酸化性のガスでワイピング処理を用いる場合もある。ガス種は、N2、Ar、He等いずれでも良く、純度も97%以上であれば問題ない。
【0038】
めっき後の製品表面には、静電塗油機35により防錆油が塗布されるが、必要に応じて、クロメート処理装置33により、クロム酸処理等を行ってもよい。またクロメート処理装置に代えて、リン酸塩処理装置、あるいは樹脂皮膜塗布装置等を設置して、リン酸塩処理、樹脂皮膜塗布などの単層あるいは複層の後処理を施しても良い。これらの処理の後鋼板はカローゼルリール36により所定長巻きとられて、次工程に送られ、あるいは出荷される。
【実施例】
表1に示す化学組成を有する0.8mm厚の母材を表面粗さの異なるロールを用いて調質圧延し、鋼板の表面粗さRzを4.2〜8.2μmに変化させた。これら鋼板を連続溶融亜鉛めっき設備にて水素やアンモニアガス濃度を変更した還元性雰囲気中で焼鈍し、Al濃度が0.10〜5.40%である亜鉛めっき浴に浸漬し、引き上げて気体絞り法で片面当たり100g/m2のめっきを行った。
【表1】
得られためっき鋼板のめっき皮膜の性状を以下の方法で調査した。その結果をまとめて表2〜4に示す。
【0039】
(1)化学組成
めっき皮膜のZn、Al、Feなどの含有量は、めっき鋼板を、インヒビターを添加した10%塩酸水溶液中に浸漬してめっき皮膜を溶解し、得られた溶液をICP分光分析法で測定した。(表中の表示:皮膜Al濃度、皮膜Fe含有量)
【0040】
(2)めっき皮膜除去後の母材鋼板表面粗さ(Rz)
皮膜の化学組成分析のため溶解した後の母材表面粗さは、JIS−B0601(2001)に従って東京精密製サーフコムを用い測定を行った。得られた断面曲線については、カットオフ0.8mmを採用し、10点平均粗さRzを算出した。
【0041】
(3)めっき前母材の表面粗さ(Rz)
上記に準じて測定した。
【0042】
(4)めっき濡れ性
1m2当たりのピンホールの数を計測して、めっき濡れ性を評価した。評価基準は以下のとおりとした。
◎:ピンホールが全くない。
○:1〜5個/m2
△:6〜20個/m2
×:21個/m2以上〜ほとんど濡れない。
【0043】
(5)めっき密着性
あまり加工の厳しくない部位への適用判断には密着曲げ試験法を、絞り成形加工等の加工の厳しい部位への適用判断にはデュポン衝撃試験法を採用した。
(密着曲げ試験):曲げ部外側のガムテープ剥離によって、以下の試験条件及び、評価基準に従って評価した。
試験温度 23℃
評価基準
○:めっき層の剥離なし
△:めっき層の一部剥離
×:めっき層の全部剥離
(デュポン衝撃試験):デュポン衝撃試験機を用いめっき面に衝撃を与え、そのめっき面のテープ剥離状況を目視観察することにより評価した。試験条件および評価基準は以下のとおりである。
試験条件
ポンチ径:6mm
ダイス径:12mm
荷重:1.6kg
高さ:500mm
試験温度:23℃
評価基準
○:剥離なし
△:めっき層一部剥離
×:めっき層全部剥離
【0044】
(6)窒素濃化層の厚み
マイクロビッカース硬度計を用い、窒化によって硬化した厚みを荷重9.8×10−2Nで行った。母材中央部の平均硬さに較べて20Hv以上の硬さ上昇が認められた部分を有効な窒素濃化層と定義した。
【0045】
(7)機械特性(伸び低下代)
鋼板圧延方向に採取したJIS Z2204(1996)に規定の5号試験片を用い破断伸びEl(%)を測定した。窒素濃化処理を施さない同一母材のElに対して、そのEl低下代が10%以下であるものを合格として「○」、10%を越える機械特性のものを不合格として「×」を表示した。
【表2】
【表3】
【表4】
【0046】
以上の結果を総合すると以下の点が明らかになる。
1.焼鈍ガス中のNH3濃度が1vol.%未満であると窒素濃化層の厚さが2μm未満となって、めっき濡れ性、めっき密着性がともに悪い(比較例1)。
2.逆に焼鈍ガス中のNH3濃度が10vol.%を超えると窒素濃化層の厚さが100μmを超えてしまい、めっき濡れ性、めっき密着性は改善されるが、機械的特性(伸び低下代)が悪くなる(比較例3〜7)。
3.焼鈍ガス中のH2濃度が2vol.%未満であるとき、窒素濃化層の厚さが十分でなく、めっき濡れ性、めっき密着性ともに悪い(比較例2)。
4.皮膜Fe含有量が0.5g/m2を超えると、めっき密着性の悪化傾向が認めらる(比較例8)。
5.母材表面粗さRz、及びめっき除去後の母材表面粗さRzが5μm未満であるとめっき密着性のうち、過酷な加工条件に対応するデュポン衝撃試験において、めっき層の一部剥離が認められる(実施例4〜15、17〜20、22〜29)。
6.これに対して母材表面粗さRz、及びめっき除去後の母材表面粗さRzが5μm以上であれば、デュポン衝撃試験においても、めっき層の剥離が認められない(実施例30〜32)。
7.焼鈍ガス中H2濃度、及びNH3濃度が本発明の範囲内にあってもそれらがともに低い場合、過酷な加工条件に対応するデュポン衝撃試験において、めっき層の全部剥離が認められる(実施例1〜3)。
8.参考例16は、鋼中Si量が少なければ、焼鈍ガス中にアンモニアを混合しなくてもめっき密着性に問題が出ないことを示すものである。また、参考例21は、3%を超えるSi量では前記したように成形性が悪化して、プレス加工に困難が伴うので「参考例」とした。なお、実施例22では、表中の各評価項目については良好な性能を示したが、浴中Alが低く、表面にドロス欠陥が観察された。
【0047】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【発明の効果】
本発明の溶融亜鉛めっき鋼板は、母材に高Siを用いた場合にも不めっきが無く、めっき密着性にも優れているため、自動車や建築用途などの高強度で耐食性が必要な材料用途として、内装材のみならず外装材としても極めて好適である。
【0048】
また本発明のめっき鋼板は、安価に製造できるので、工業的な価値が極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】連続溶融亜鉛めっき設備を示す図である。
【符号の説明】
10 入り側部
20 処理部
21 連続加熱炉
22 亜鉛めっき浴
23 エアワイパー
30 処理部
100 連続溶融亜鉛めっき設備
Claims (6)
- 表層部に厚さ2〜100μmの窒素濃化層を有するとともに、0.3〜3.0重量%のSiを含有する鋼を母材とする、溶融亜鉛めっき鋼板。
- めっき皮膜のAl濃度が0.15重量%以上、Fe含有量が0.5g/m2以下で、残部Znと不可避不純物である請求項1に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
- 前記めっき皮膜を除去した後の母材の表面粗さRzが5μm以上である請求項1又は2に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
- 0.3〜3.0重量%のSiを含有する鋼を母材として、
連続溶融めっきライン中において前記母材表面を、H2濃度2vol.%以上、アンモニア濃度1〜10vol.%、残部が窒素と不可避的ガスからなる雰囲気中で還元する還元工程を備えた、溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。 - 前記母材を前記還元工程に引き続き、Al濃度が0.13重量%以上の亜鉛めっき浴中に浸漬するめっき工程を備えた、請求項4に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 前記還元工程前に、予め前記母材の表面粗さRzを5μm以上に調整する工程を含む、請求項4又は5に記載された溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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