JPH1150221A - 溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents

溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法

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JPH1150221A
JPH1150221A JP22202797A JP22202797A JPH1150221A JP H1150221 A JPH1150221 A JP H1150221A JP 22202797 A JP22202797 A JP 22202797A JP 22202797 A JP22202797 A JP 22202797A JP H1150221 A JPH1150221 A JP H1150221A
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steel sheet
hot
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alloying
steel
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JP22202797A
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English (en)
Inventor
Michitaka Sakurai
理孝 櫻井
Shoichiro Taira
章一郎 平
Shuji Nomura
修二 野村
Masaru Sagiyama
勝 鷺山
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JFE Engineering Corp
Original Assignee
NKK Corp
Nippon Kokan Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 表面外観が良好で、線状マークが生じず、高
強度でかつめっき皮膜の均一性に優れ、さらに密着性に
優れた溶融亜鉛めっき鋼板、およびさらに合金化ムラが
生じず、耐パウダリング性に優れた合金化溶融亜鉛めっ
き鋼板を下地鋼板の鋼種にかかわらず安定して製造する
ことができる製造方法を提供すること。 【解決手段】 重量%で、Mn含有量が0.2%以上、N
b含有量が0.005%以上、Ti含有量が0.01%以上のう
ち1または2以上を満たす鋼板に溶融亜鉛めっきを行う
に際し、鋼板表面に、炭素化合物、窒素化合物およびホ
ウ素化合物の中から選択される1種または2種以上を
C、B、N量として0.1〜1000mg/m2付着させ、かつ
硫黄または硫黄化合物をS量として0.1〜1000mg/m2
付着させた後、水素を含む非酸化性雰囲気で680℃以上
の温度で焼鈍し、その後、少なくとも0.05〜0.30%のA
lを含む溶融亜鉛浴に浸漬してめっきを行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えば自動車内
外板として用いられる鋼板を下地鋼板とする溶融亜鉛め
っきおよび合金化溶融亜鉛めっき鋼板ならびにそれらの
製造方法に関し、特に、自動車内外板として、めっき皮
膜の均一性と密着性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板および
めっき皮膜の均一性と耐パウダリング性に優れた合金化
溶融亜鉛めっき鋼板、ならびに下地鋼板の鋼種が変わっ
ても安定した操業を行うことができる溶融亜鉛めっき鋼
板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】車体寿命延長の観点から、合金化溶融亜
鉛めっき鋼板が車体用素材として使用され始めて久し
い。合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、電気めっき法に比べ
厚めっき化が容易な溶融亜鉛めっき法により製造される
ため、合金化溶融亜鉛めっき鋼板には、耐食性に優れ製
造コストが低いこと、めっき層が鉄亜鉛合金となってい
るため、塗料密着性、スポット溶接性に優れること等の
材料的優位性がある。
【0003】一方、硬質な鉄亜鉛合金が厚く被覆されて
いる合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、めっき皮膜の拘束に
より縮み変形が抑制されるので、深絞り性に劣る。そこ
で、深絞り成形が必要な部品には、鋼板の深絞り性の指
標であるr値の高い材料が必要となる。このため、合金
化溶融亜鉛めっき鋼板の原板としては、C含有量を10
0ppm以下とした上でC、NなどをTiやNbで析出
固定し、侵入型固溶原子による深絞り性への悪影響をな
くしたIF鋼が多用されることとなった。ところが、I
F鋼においては、以下のような問題点がある。
【0004】(1)合金化速度・耐パウダリング性・め
っき密着性 IF鋼においては、アウトバースト反応と呼ばれる「著
しく速い鋼板粒界での鉄亜鉛反応」のために、合金化制
御が難しく、過合金化状態に陥りやすいので、耐パウダ
リング性の低下を招く。また、IF鋼を下地とした溶融
亜鉛めっき鋼板は、粒界での合金化速度が速いことか
ら、めっき皮膜の初期合金層が大きく発達し、密着性の
低下を招いている。
【0005】(2)皮膜均一性 r値の高い鋼板を得るために、鋼中には多量のTiを添
加する場合がある。この際には、熱延時のスケール生成
によるスケールマークや合金化反応の局部的不均一によ
るスジ状マークが発生し、表面外観の低下を招いて、外
板用途へは使用することができない状態となる。また、
アウトバースト反応の影響から、合金化後あるいは合金
化前のめっき皮膜表面に凹凸を生じる問題もあり、皮膜
の均一性という点で劣っている。
【0006】近年、地球温暖化防止の観点から自動車の
燃費向上が叫ばれ、車体軽量化と安全性確保の観点から
素材の高強度・薄物化が強く求められている。一般的に
鋼板の強度上昇にはSi、Mn、P等の固溶強化元素の
添加が行われている。
【0007】これらの中でSi含有鋼板は以下のような
問題点がある。 (3)濡れ性 Si含有鋼をめっき原板として使用する場合には、Si
はめっき前焼鈍時に選択酸化により鋼板表面を覆うた
め、溶融亜鉛との濡れ性が悪くなり不めっきを生じるた
め、めっき製品にならないという問題がある。
【0008】(4)スケール性スジムラ Si含有鋼の場合には、熱延時に生成する赤スケールが
原因となるスジムラが発生するため、自動車用外板への
Siの適用は特に避けられている。熱延時にデスケーリ
ングを入念に行うなどの配慮をして、熱延後には判別し
にくい程度の軽い赤スケールであったとしても、溶融亜
鉛めっき後の合金化処理時には、Siの濃度差に起因す
る合金化の不均一から、熱延時の赤スケールと同じよう
に鋼板表面に線状のマークを生じるものである。
【0009】(5)合金化速度 Si含有鋼の場合、CGL焼鈍時にSiが鋼板表面に選
択酸化し、これが、溶融亜鉛との濡れ性を阻害する。た
とえ、不めっきに至らなかった場合でも、濡れ性阻害に
基づく合金化の遅れが生じるという問題がある。
【0010】一方、Mnは表面品質や合金化速度に対す
る大きな悪影響は見られないが、強化能力が低いことか
ら大量に添加する必要がある。
【0011】従来、自動車外板用合金化溶融亜鉛めっき
鋼板の下地鋼板としては、上記の問題点を含むものの、
自動車用外板用途の品質への悪影響が少しでも小さいも
のとして、P含有高強度鋼板が多く用いられている。し
かしながら、以下に示すような品質上あるいは製造上の
問題がある。
【0012】(6)合金化速度 P含有高強度鋼板は、Pにより合金化速度が著しく低下
するという問題を有する。これは、焼鈍時に鋼板表面に
Pが濃化し、鋼板がめっき浴に浸漬されたときに、めっ
き浴中に添加されているAlと反応し、Fe−Zn合金
化反応を抑制するFe−Al合金を厚く生成させ、Fe
−Zn反応を強固に抑制するためである。したがって、
ラインスピードを遅くすることにより合金化時の均熱時
間を確保して、合金化を完了させる方法が採られていた
が、この場合には、生産性が大きく低下する問題があ
る。
【0013】(7)耐パウダリング性 上記の生産性低下を防ぐため、合金化処理温度を高くす
ると、ラインスピードをそれほど下げることなく、合金
化を完了させることができるようになる。しかしなが
ら、合金化温度が上昇したことにより、耐パウダリング
性の劣化が顕著になった。これは、合金化温度を上昇さ
せると合金化制御が難しくなり、過合金化し易くなるこ
と、および、高温で生成する合金相は低温で生成する合
金相に比べて脆弱であること等の理由による。
【0014】(8)コイル先端・尾端における合金化ム
ラ P含有鋼では熱延時の条件変動に起因する合金化ムラが
生じやすい。すなわち、冷延コイルの先端・尾端の合金
化速度が特に遅くなり、如何なる手段を講じても合金化
できない場合がある。この現象は、熱延コイルの先端・
尾端の熱履歴が特殊であるために生じるものと推定され
る。このため、コイル先端・尾端の数十メートルが合金
化していないため、この部分を切り落として廃棄するこ
とになり、歩留まりの低下を招く。
【0015】また、先端・尾端部を合金化させるため、
合金化処理条件を調整することも操業中オペレーターに
より行われるが、合金化が特に遅い部分に照準を合わせ
て合金化処理するため、コイル中央部に対しては過剰の
合金化処理になり、耐パウダリング性の低下を招く場合
がある。
【0016】(9)スジ状合金化ムラ 一般にP含有鋼においては鋼中のPが鋼の粒界に濃化し
易く、Pが粒界に濃化すると、めっき後の合金化処理の
際に粒界の合金化反応速度が著しく遅くなる。このた
め、合金化処理後の表面には細かいスジムラが生じ表面
外観が損なわれ、また、このスジムラは化成処理性・塗
装性などにも悪影響を及ぼす。
【0017】(10)線状マーク P含有鋼では、焼鈍時に鋼板表面にPが濃化し、鋼板が
めっき浴に浸漬されたときに、めっき浴中に添加されて
いるAlと反応し、Fe−Zn合金化反応を抑制するF
e−Al合金を厚く生成させる。この反応は、浴組成に
敏感であり、浴中Al濃度の僅かの変動により、Fe−
Al合金の生成量が大きく変動する。したがって、めっ
き浴中のAl分布が局部的に高いあるいは低い部分が存
在すると、P含有鋼の場合には部分的な合金化ムラを生
じ、線状マークを発生させることがある。
【0018】(11)製造条件の安定性 溶融亜鉛めっきラインに挿入される鋼板は多岐にわたっ
ているため、それぞれの鋼板によって合金化条件が異な
る。操業中はオペレーターにより鋼種毎の合金化条件設
定を行っているが、大きく条件が異なる鋼種の接続部で
は、条件設定変更のために時間を要するため、過合金や
合金化不足を生じ、歩留まりの低下を招くとともに、安
定した製造を行うことができない。例えば、比較的合金
化の早いIF鋼の後にP含有鋼が接続されていた場合に
は、P含有鋼の先端部では合金化しない部分が数十メー
トル発生し、逆に、P含有鋼の後にIF鋼が接続されて
いた場合には、IF鋼の先端部では過合金化によりパウ
ダリング不良を生じる部分が数十メートル発生するた
め、切除廃棄する部分が生じるというものである。
【0019】従来、合金化反応を促進させる方法として
は、溶融めっきに先立って鋼板表面にNi、Fe等の金
属あるいは合金をプレめっきする方法(例えば、特開昭
60−110859号公報等。以下、従来技術1とい
う。)が提案されている。また、溶融めっきに先立って
鋼板表面に硫黄化合物水溶液を湿布した後、非酸化性雰
囲気で焼鈍する方法(特開平5−148603号公報。
以下、従来技術2という。)が提案されている。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】従来技術1では、前処
理として電解処理によりプレめっきを行うため、プレめ
っきのための設備コストが増大する問題点がある。
【0021】従来技術2においては、プレめっきのよう
な新たな設備は必要としないので、コストの増大を抑え
ることができる。しかしながら、この方法においては、
SがPの表面濃化を抑制するため、P含有鋼の合金化速
度をある程度促進させることはできるものの、その作用
は、S量によって一定であるため、Pの濃化量が異なる
場合、すなわち、粒界で著しいPの濃化があった場合
や、コイルの先端・尾端などの、コイル内不均一性を解
消することはできない。また、耐パウダリング性を劣化
させるという欠点がある。一方、IF鋼を用いた場合の
鋼板粒界における合金化の不均一という問題は依然とし
て残っている。
【0022】本発明は、かかる事情に鑑みてなされたも
のであって、自動車内外板として用いた場合に、表面外
観が良好で、線状マークが生じず、高強度でかつめっき
皮膜の均一性に優れ、さらに密着性に優れた溶融亜鉛め
っき鋼板、およびさらに合金化ムラを生じず、耐パウダ
リング性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板を提供する
ことを目的とする。また、これらを下地鋼板の鋼種にか
かわらず安定して製造することができる製造方法を提供
することを目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、第1発明は、重量%で、Mn含有量が0.2%以
上、Nb含有量が0.005%以上、Ti含有量が0.
01%以上のうち1または2以上を満たす鋼板に溶融亜
鉛めっきを行うに際し、鋼板表面に、炭素化合物、窒素
化合物およびホウ素化合物の中から選択される1種また
は2種以上をC、N、B量として0.1〜1000mg
/m2付着させ、かつ硫黄または硫黄化合物をS量とし
て0.1〜1000mg/m2付着させた後、水素を含
む非酸化性雰囲気で680℃以上の温度で焼鈍し、その
後、少なくとも0.05〜0.30%のAlを含む溶融
亜鉛浴に浸漬してめっきを行うことを特徴とする、皮膜
の均一性および密着性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製
造方法を提供する。
【0024】第2発明は、第1発明の製造方法におい
て、溶融亜鉛めっきする際に、予熱工程を弱酸化性雰囲
気で行うことを特徴とする、皮膜の均一性および密着性
に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を提供する。
【0025】第3発明は、第1発明または第2発明の製
造方法によって溶融亜鉛めっきした後、さらにめっき層
の合金化熱処理を行うことを特徴とする、皮膜の均一性
および耐パウダリング性に優れた合金化溶融亜鉛めっき
鋼板の製造方法を提供する。
【0026】第4発明は、重量%で、Mn含有量が0.
2%以上、Nb含有量が0.005%以上、Ti含有量
が0.01%以上のうち1または2以上を満たす鋼板
と、前記鋼板の少なくとも1つの表面上に形成された、
S量に換算して0.1〜1000mg/m2の量の硫化
物層と、前記硫化物層の表面上に形成された亜鉛めっき
層とからなることを特徴とする、皮膜の均一性および密
着性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板を提供する。
【0027】第5発明は、第4発明の溶融亜鉛めっき鋼
板において、前記硫化物層は、MnS、NbS2Ti
2化合物のうち1種または2種以上を含み、その表面
にこれらの化合物が均一に分散した状態で析出してお
り、これら析出した化合物の直上に微細なζ相が均一に
生成していることを特徴とする、皮膜の均一性および密
着性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板を提供する。
【0028】第6発明は、第1発明または第2発明のP
含有高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法に従って溶融
亜鉛めっきした後、めっき層の合金化熱処理を行うこと
により製造された、皮膜の均一性および耐パウダリング
性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板を提供する。
【0029】
【発明の実施の形態】以下、本発明について具体的に説
明する。本発明において、Mn含有量が0.2%以上、
Nb含有量が0.005%以上、Ti含有量が0.01
%以上のうち1または2以上を満たす鋼板に溶融亜鉛め
っきを行うに際し、鋼板表面に、炭素化合物、窒素化合
物およびホウ素化合物の中から選択される1種または2
種以上をC、N、B量として0.1〜1000mg/m
2付着させ、かつ硫黄または硫黄化合物をS量として
0.1〜1000mg/m2付着させた後、水素を含む
非酸化性雰囲気で680℃以上の温度で焼鈍すると、鋼
板表面には、MnS、NbS2、TiS2化合物のうち1
種または2種以上が析出し、S量に換算して0.1〜1
000mg/m2の量の硫化物層が形成される。硫化物
層の表面には、上記化合物のうち1種または2種以上が
均一に分散した状態で析出しており、その後少なくとも
0.05〜0.30%のAlを含む溶融亜鉛浴に浸漬し
てめっきを行うと、これら析出した化合物を核として、
Fe−Zn結晶(ζ相)が、微細かつ均一に生成し、皮
膜均一性および密着性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板が得
られる。
【0030】さらにその後、めっき層の合金化熱処理を
行うと、微細かつ均一に生成したFe−Zn結晶(ζ
相)を起点として合金化反応が進行し、皮膜の均一性お
よび耐パウダリング性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼
板となる。
【0031】ここで、下地鋼板がIF鋼の場合には、通
常は鋼板の粒界において鋼中への亜鉛の拡散が非常に速
いため、粒界部でFe−Zn合金が生成し、その体積変
化から抑制層であるFe−Al合金層が破壊され、溶融
亜鉛と鋼板の直接固液反応を開始する、いわゆる「アウ
トバースト反応」が発生する。アウトバースト反応が発
生した場合には、鋼板表面に析出した化合物を核として
生成した、微細かつ均一なFe−Zn結晶(ζ相)の他
に、鋼板粒界部にアウトバースト状のFe−Zn合金が
生成する。また、めっき直後にはアウトバースト反応が
見られない場合でも、その後の合金化熱処理時には、必
ずアウトバースト反応が発生する。これは、IF鋼の場
合には、C、N、B等の侵入型固溶原子がTi、Nbに
より析出固定されているので、一般の鋼において粒界に
存在するこれらの原子が全く存在しないため、これらが
亜鉛の拡散の障害とならないことによる。
【0032】ところが、本発明においては、上述したよ
うに鋼板表面に、炭素化合物、窒素化合物、およびホウ
素化合物の中から選択される1種または2種以上をC、
N、B量として0.1〜1000mg/m2付着させて
おり、付着させた化合物からC、N、Bが焼鈍時にIF
鋼の粒界部に偏析するため、亜鉛拡散の障害とすること
ができる。したがって、アウトバースト反応を抑え、鋼
板表面には、その表面に析出した化合物を核として生成
した、微細かつ均一なFe−Zn結晶(ζ相)だけが存
在する。また、その後の合金化処理においても、アウト
バースト反応は発生せず、均一な合金化が行われる。
【0033】ここで、Mn含有量が0.2%未満、Nb
含有量が0.005%未満、Ti含有量が0.01%未
満では、SによるPの表面濃化抑制効果により、合金化
速度の若干の改善は認められるが、MnS、NbS2
TiS2化合物の析出量が十分でないため、皮膜の均一
性および耐パウダリング性に対する効果が発現されな
い。
【0034】炭素化合物、窒素化合物およびホウ素化合
物の中から選択される1種または2種以上の付着量を
C、N、B量として0.1〜1000mg/m2付着さ
せることとしたのは、IF鋼におけるアウトバースト反
応を抑制するためであり、0.1mg/m2以下では、
アウトバースト反応抑制効果が少なく、1000mg/
2を超えてもその効果が飽和するばかりでなく、材質
が劣化してしまうからである。すなわち、アウトバース
ト反応抑制のためには、C、N、Bを鋼板の極表層の結
晶粒に存在させるだけでよい。
【0035】硫黄または硫黄化合物をS量として0.1
〜1000mg/m2付着させることとしたのは、0.
1mg/m2未満ではMnS、NbS2、TiS2化合物
の析出効果が少なく、1000mg/m2を超えてもそ
の効果が飽和するからである。
【0036】溶融亜鉛浴中に含まれるAl量を0.05
〜0.30%と規定したのは、0.05%未満ではFe
−Al合金の生成量が少ないため、Fe−Zn反応抑制
効果が小さく、耐パウダリング性が劣化し、0.30%
を超えるとFe−Al合金の生成量が多すぎるため、F
e−Zn反応抑制効果が大きすぎ、合金化させることが
できなくなるからである。
【0037】次に、本発明における炭素化合物、窒素化
合物およびホウ素化合物から選択される1種または2種
の付着、硫黄または硫黄化合物の付着、ならびに鋼中M
n、Nb、Tiの効果について、図1〜図3を参照しな
がら説明する。図1の(a)はIF鋼において通常に亜
鉛めっきした場合の状態、(b)はIF鋼において本発
明に従って亜鉛めっきした場合の状態、図2の(c)は
P含有鋼において通常に亜鉛めっきした場合の状態、
(d)はP含有鋼において本発明に従って亜鉛めっきし
た場合の状態、図3の(e)はSi含有鋼において通常
に亜鉛めっきした場合の状態、(f)はSi鋼において
本発明に従って亜鉛めっきした場合の状態をそれぞれ示
すものである。
【0038】図1の(a)に示すように、IF鋼に通常
に亜鉛めっきした場合においては、めっき時に生成され
るFe−Al合金層は薄く、またアウトバースト反応も
発生する。これに対して図1の(b)に示すように、I
F鋼に対し本発明に従って亜鉛めっきした場合には、鋼
板粒界に析出させたC、N、Bの効果により、アウトバ
ースト反応は発生しない。また、焼鈍時に、鋼中に含ま
れているMn、Nb、Tiの1種または2種以上と付着
させた硫黄分とが反応し、鋼板表面にMn−S、Ti−
S、Nb−Sが析出する。この析出物を核としてFe−
Zn結晶(ζ相)が、微細かつ均一に生成する。
【0039】図2の(c)に示すように、P含有鋼に通
常に溶融亜鉛めっきした場合には、表面に濃化したPに
よりFe−Al合金層が厚く生成し、Fe−Zn反応抑
制効果が大きくなる。したがって、初期合金相は、粗大
なζ相がまばらに生成し、その他の部分は強固なFe−
Al合金の抑制層で覆われているために、Fe−Zn反
応を起こす起点がなく、合金化速度が非常に遅くなる。
これに対して図2の(d)に示すように、P含有鋼に対
し本発明に従って亜鉛めっきした場合には、焼鈍時に鋼
中に含まれているMn、Ti、Nbの1種または2種以
上と付着させた硫黄分とが反応し、鋼板表面にMn−
S、Ti−S、Nb−Sが析出する。この析出物を核と
してFe−Zn結晶(ζ相)が、微細かつ均一に生成す
る。
【0040】図3の(e)に示すように、Si含有鋼に
通常に溶融亜鉛めっきした場合には、表面に選択酸化し
たSi酸化物により不めっきが生じる。これに対して図
3の(f)に示すように、Si含有鋼に対して本発明に
従って亜鉛めっきした場合には、焼鈍時に鋼中に含まれ
ているMn、Ti、Nbの1種または2種以上と付着さ
せた硫黄分とが反応し、鋼板表面にMn−S、Ti−
S、Nb−Sが析出する。この析出物を核としてFe−
Zn結晶(ζ相)が、微細かつ均一に生成する。
【0041】本発明において、Fe−Zn結晶(ζ相)
を微細かつ均一に生成させた後、さらにめっき層の合金
化熱処理を行うと、微細かつ均一に生成したFe−Zn
結晶(ζ相)を起点として合金化反応が進行するため、
合金化が促進されるとともに、皮膜の均一性が向上し、
さらには良好な耐パウダリング性を有する皮膜を形成す
ることができる。例えば鋼中P含有量や浴中Al濃度が
高く、Fe−Al合金が厚く生成した場合でも、Mn−
S、Ti−S、Nb−Sはこれとは無関係に析出し、ζ
相核発生の起点となる。したがって、鋼種が変わった
り、浴中Al濃度が変動した場合や、付着するS量が変
動した場合でも、これらの変動要因に無関係に一定のF
e−Zn合金化反応が進行するため、操業安定性にも優
れている。また、上記所定の析出物さえ生成させること
ができれば、少量の硫黄分を付着させるだけで十分な効
果を得ることができる。
【0042】次に、本発明によって皮膜の均一性や耐パ
ウダリング性が向上する理由について説明する。Mn、
Nb、Tiは、鋼中では均一に分散しており、したがっ
て、焼鈍時に付着させた硫黄または硫黄化合物の反応に
よって析出するMnS、NbS2、TiS2化合物も均一
に析出するため、この化合物を核として成長するFe−
Zn合金結晶は均一に分布することとなる。したがっ
て、形成されるFe−Zn合金相にもバラツキはなく、
耐パウダリング性が向上するものと推定される。
【0043】一方、MnS、NbS2、TiS2化合物の
析出がない場合には、初期合金相は、ζ相がまばらに生
成し、Fe−Zn合金はランダムに成長し、皮膜の均一
性は得られない。
【0044】IF鋼の場合には、C、N、Bの鋼板粒界
偏析により、アウトバースト反応が抑えられることによ
り、耐パウダリング性を劣化させるΓ相の成長を抑制す
ることができるほか、凹凸の発生も抑制され、皮膜の均
一性が向上する。
【0045】以上のような本発明の溶融亜鉛めっき鋼板
を製造する際には、硫黄分塗布後の焼鈍を、水素を含む
非酸化性雰囲気中で680℃以上の温度で行わなければ
ならない。これは、水素により鋼板を還元する目的があ
り、さらに、水素の存在に伴うH吸着により、Sの鋼板
表面への析出が促進されるためである。また、Sは68
0℃以上の温度域で安定に析出するが、それ以下の温度
ではCの析出が優先的であり、焼鈍にあたり、MnS、
NbS2、TiS2化合物の析出は起こりにくいためであ
る。逆に、Mn、Nb、Tiが存在すると、一度析出し
たSは680℃以下の温度域になっても安定であるが、
これらの元素が存在しない場合には、680℃以下では
Sは消失し、Pが表面濃化する温度域である500℃付
近では、Sは存在し得なくなり、硫黄分付着の効果が低
下する。
【0046】また、本発明の方法に従って溶融亜鉛めっ
きする際に、予熱工程を弱酸化性雰囲気で行うとさらに
効果的である。すなわち、硫黄または硫黄化合物付着
後、弱酸化性雰囲気にて予熱することにより、鋼板酸化
と同時に硫黄または硫黄化合物が酸化され、硫黄または
硫黄化合物の分解・飛散を抑えることができるため、効
果的にMnS、NbS2、TiS2化合物を析出させるこ
とができる。
【0047】図4に、P含有高強度鋼板に本発明に従っ
て溶融亜鉛めっきした、皮膜の均一性および密着性に優
れた溶融亜鉛めっき鋼板の電子顕微鏡写真を示す。焼鈍
後の鋼板表面には、硫化物層が生成しており、写真に矢
印で示したMnSの析出物が表面に均一に生成してい
る。めっき皮膜断面および初期合金相表面を見ると、鋼
板−めっき皮膜界面には微細なζ相が生成していること
がわかる。
【0048】図5に、P含有高強度鋼板に通常の方法で
溶融亜鉛めっきした溶融亜鉛めっき鋼板の電子顕微鏡写
真を比較例として示す。焼鈍後の鋼板表面には硫化物層
は存在しない。めっき皮膜断面および初期合金相表面を
見ると、鋼板−めっき皮膜界面には粗大なζ相がまばら
に生成していることがわかる。
【0049】図6は、IF鋼、P含有鋼、Si含有鋼を
それぞれ下地鋼板として本発明に従って溶融亜鉛めっき
した、皮膜の均一性および密着性に優れた溶融亜鉛めっ
き鋼板の初期合金相を示す電子顕微鏡写真である。IF
鋼、P含有鋼、Si含有鋼のいずれにおいても、鋼板表
面には微細なζ相が生成していることがわかる。また、
鋼種による違いも少ない。
【0050】図7は、IF鋼、P含有鋼、Si含有鋼を
それぞれ下地鋼板として通常の方法で溶融亜鉛めっきし
た比較例の溶融亜鉛めっき鋼板の初期合金相を示す電子
顕微鏡写真である。IF鋼ではアウトバースト反応が発
生し、P含有鋼では鋼板表面に粗大なζ相がまばらに生
成し、Si含有鋼では不めっきとなるなど、鋼種により
状況が異なる上、均一性に劣っていることがわかる。
【0051】なお、本発明が対象とする鋼板は、Mn含
有量が0.2%以上、Nb含有量が0.005%以上、
Ti含有量が0.01%以上のうち1または2以上を満
たせばよく、その他の成分は特に制限されず、Feおよ
び不可避的不純物の他に、C,Si,P,S,Mg,C
r,Ni,Cu,Ta,Al等の1種または2種以上を
含有してもよい。また、IF鋼ベースの鋼板では、耐2
次加工性脆化を防ぐために、数ppmのBを添加しても
よい。
【0052】また、本発明に用いられる硫黄または硫黄
化合物は、硫黄単体、硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリ
ウム、硫酸ソーダ、亜硫酸ソーダ等の無機硫酸塩、チオ
シアン酸アンモニウム、チオシアン酸カリ等のチオシア
ン酸塩類、アルキルメルカプタンやチオ尿素などの脂肪
族系有機物を、水または有機溶剤に溶解し、またはこれ
らと混合して使用する。また、これらの薬品の溶液の鋼
板への付着性を高める目的で界面活性剤を添加してもよ
い。界面活性剤としてS基を含むものは、界面活性剤単
独で用いても効果がある。さらに、これらの薬品の溶液
への付着性を高める目的では、溶液中に有機樹脂を溶解
させ、バインダーとして用いてもよい。
【0053】本発明に用いられる炭素化合物、窒素化合
物、ホウ素化合物は特に限定されるものではない。これ
らについても水または有機溶剤に溶解しまたはこれらと
混合して使用する。
【0054】なお、冷間圧延時の潤滑油あるいは圧延後
の防錆油に硫黄または硫黄化合物を添加したり、炭素化
合物、窒素化合物、ホウ素化合物から選択される1種ま
たは2種以上を添加した後、脱脂をすることなく、直下
加熱方式の予熱炉を有する焼鈍炉に鋼板を装入すること
もできる。ただし、全ラジアントチューブ方式の焼鈍炉
に対してこの方法を採用した場合には、油分が汚れとし
て残存し、めっき性や合金化処理後の表面外観に影響を
与えるので好ましくないが、本発明によれば、MnS、
NbS2、TiS2化合物のうち1種または2種以上の析
出物が均一に分散し、前記析出物の直上に微細なζ相が
均一に生成していることにより、悪影響は軽減できる。
また、硫黄または硫黄化合物や、炭素化合物、窒素化合
物、ホウ素化合物から選択される1種または2種以上を
付着させる前に、アルカリ電解脱脂等を行っても本発明
の効果は変わらない。
【0055】鋼板表面への硫黄分の付着、および炭素化
合物、窒素化合物、ホウ素化合物から選択される1種ま
たは2種以上の付着は、これらの溶液を鋼板上に噴霧あ
るいは塗布してから乾燥させるか、予熱された鋼板に噴
霧することにより行うことができる。しかし、焼鈍中に
鋼板中のMn、Nb、Tiと、Sとを反応させて、Mn
S、NbS2、TiS2化合物を析出させること、およ
び、C、N、Bを鋼板の粒界に偏析させることが主目的
であるから、焼鈍時に鋼板表面にS、C、N、Bが付着
していればよく、その付着方法は上記溶液塗布法に限定
されず、電気めっき法、無電解めっき法、蒸着法等どの
ような手段で行ってもよい。ただし、設備投資の点を考
慮すると、比較的簡便な溶液塗布法や無電解めっき法が
好ましい。焼鈍炉内での化学反応により、初期付着時の
S、C、N、Bの分布の不均一はある程度緩和されるも
のの、初期付着時に均一にS、C、N、Bを分布させて
おくことがよいことは言うまでもない。
【0056】鋼板の焼鈍は、通常用いられているラジア
ントチューブ方式の焼鈍炉を用いることができる。ま
た、弱酸化雰囲気で予熱を行う場合には、例えば直火加
熱方式の焼鈍炉を用いればよい。硫黄分付着の効率や溶
融亜鉛めっき装置全体の効率を考えると、これらのうち
昇温速度を速くすることができる直火加熱方式のほうが
好ましい。
【0057】本発明のめっき鋼板の溶融亜鉛めっきある
いは合金化溶融亜鉛めっき層中には、耐食性向上などを
目的として、主元素であるZn,Fe,Alの他に、A
s,Bi,Cd,Ce,Co,Cr,In,La,L
i,Mg,Mn,Ni,O,P,Pb,S,Sb,S
n,Ti,Zr等のうち1種または2種以上を含有させ
てもよく、これらを含有していても本発明の効果は損な
われない。
【0058】合金化処理工程においては、ガス加熱方
式、誘導加熱方式、直接通電加熱方式などの方法を採用
することができるが、合金化炉加熱方式の相違によって
本発明の効果に変わりはない。
【0059】本発明は、自動車用外板用途への適用を主
目的としているため、下地鋼板は冷延鋼板が主である
が、本発明は自動車の強度部材である骨組み構造部材や
足廻り部品のような熱延鋼板下地の場合にも本発明の効
果は得られる。また、本発明は、自動車部品に限らず、
建材、電機、家電などの用途にも適用することができ
る。
【0060】
【実施例】表1に示す10種類の冷延成分の鋼板を供試
材とし、炭素、窒素、ホウ素化合物として水溶性樹脂
(ポリビニルアルコール)を50g/L含有し、チオ硫
酸ナトリウム(Na223)を20g/L含有する水
溶液を作成し、バーコーターにより一定量塗布後、誘導
加熱方式の乾燥炉により150℃で瞬時に乾燥させた。
また、同様に水溶性樹脂を含有し、チオ尿素(CH42
S)をそれぞれ2g/L、20g/L、200g/L含
有する水溶液を作成し、バーコーターにより一定量塗布
後、誘導加熱方式の乾燥炉により150℃で瞬時に乾燥
させたものも作成した。さらに、炭素、窒素、ホウ素化
合物としてヘキサメチレンテトラミンを付着させ、かつ
ブチルメルカプタン(C49SH)またはオクタデシル
メルカプタン(C1837SH)の5mMエタノール溶液
に鋼板を浸漬後乾燥させたものも作成した。さらにま
た、ヘキサメチレンテトラミンを付着させ、かつジアル
キル2硫化物をパラフィン系鉱物油に溶解したものを塗
布したものも作成した。
【0061】
【表1】
【0062】これらの鋼板を溶融亜鉛めっきシミュレー
ターを用いて焼鈍しめっきを行った。焼鈍条件は、55
0℃×30秒、700℃×30秒、850℃×30秒の
3水準で、10%H2−N2(露点−40℃)中で行っ
た。焼鈍に際しては、一部について大気中で500℃×
30秒の弱酸化前処理を行う条件を付加した。
【0063】溶融亜鉛めっきは、Alを0.12%含む
460℃亜鉛めっき浴を用いて、侵入板温460℃、浸
漬時間3秒にてめっきした。めっき後、N2ガスワイパ
ーにより亜鉛付着量を片面当たり60g/m2に調整し
た。
【0064】めっき後のサンプルは、不めっき発生状
況、初期合金相形態の観察、0T曲げ試験によるめっき
密着性評価を行い、さらに、誘導加熱装置により、45
0,475,500,525,550,575,600
℃で20秒の合金化処理を行って、表層まで合金化でき
る温度により、合金化速度を比較した。また、皮膜中の
鉄含有率が10%±0.5%となるように合金化温度を
調整し、20秒間の合金化処理を行ったサンプルを用い
て、合金化ムラの発生状況を観察するとともに、90度
曲げ試験を行って耐パウダリング性を評価した。
【0065】以上のようにして製造した溶融亜鉛めっき
鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板について、めっき
品質を評価した結果を製造条件とともに表2〜6に示
す。なお、これらの表に示しためっき品質に関する評価
事項と評価基準は以下の通りである。
【0066】*1.不めっき(目視判定) ○:良好 ×:不めっきが認められる
【0067】*2.初期合金相(SEM観察) ○:微細なζ相が均一に生成 △:細かいζ相がまばらに生成 ×:粗大なζ相がまばらに生成 B:アウトバースト状組織
【0068】*3.めっき密着性 ○:良好 △:めっき皮膜にクラック発生 ×:めっき剥離発生
【0069】*4.合金化速度 ●:速すぎる ○:良好 △:やや遅い ×:非常に遅い
【0070】*5.合金ムラ(目視判定) ○:良好 △:微細なスジムラが認められる ×:明瞭なスジムラが認められる
【0071】*6.耐パウダリング性(90°曲げ) ○:良好 ×:不合格
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
【表4】
【0075】
【表5】
【0076】
【表6】
【0077】表2〜6に示すように、本発明例では全て
のめっき品質評価事項について良好な結果が得られたの
に対し、鋼板の組成が本発明の範囲から外れるか、炭素
化合物、窒素化合物およびホウ素化合物から選択される
1種または2種以上の付着を行わないか、硫黄分の付着
を行わないか、または焼鈍条件が本発明の範囲から外れ
る比較例は、上記めっき品質評価事項のいずれかが劣っ
ていた。
【0078】次に、操業安定性に関する試験結果につい
て説明する。ここでは、硫黄化合物としてチオ硫酸ナト
リウムを用い、炭素化合物としてポリビニルアルコール
を用いた場合の結果について示す。その結果を図8に示
す。図8は、横軸に鋼種をとり、縦軸に20秒で合金化
できる温度をとったものであり、図中○はチオ硫酸ナト
リウム+ポリビニルアルコール塗布、△はチオ硫酸ナト
リウムのみ塗布、×は無処理である。この図に示すよう
に、本発明例であるチオ硫酸ナトリウム+ポリビニルア
ルコール塗布の場合には、鋼種が変動しても、比較例に
比べて20秒で合金化できる温度の変動が小さい。すな
わち、本発明例では鋼種等の変動要因に無関係にほぼ一
定のFe−Zn合金化反応が進行するため、操業安定性
に優れている。
【0079】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
自動車内外板として用いた場合に、表面外観が良好で、
線状マークが生じず、高強度でかつめっき皮膜の均一性
に優れ、さらに密着性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板、お
よびさらに合金化ムラを生じず、耐パウダリング性に優
れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得ることができる。ま
た、これらを下地鋼板の鋼種にかかわらず安定して製造
することができる製造方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】IF鋼に通常に亜鉛めっきした場合および本発
明に従って亜鉛めっきした場合における焼鈍後の鋼板表
面の状態およびめっき後の初期合金層の状態を示す図。
【図2】P含有鋼に通常に亜鉛めっきした場合および本
発明に従って亜鉛めっきした場合における焼鈍後の鋼板
表面の状態およびめっき後の初期合金層の状態を示す
図。
【図3】Si含有鋼に通常に亜鉛めっきした場合および
本発明に従って亜鉛めっきした場合における焼鈍後の鋼
板表面の状態およびめっき後の初期合金層の状態を示す
図。
【図4】P含有高強度鋼板に本発明に従って溶融亜鉛め
っきした、皮膜の均一性および密着性に優れた溶融亜鉛
めっき鋼板の焼鈍後の鋼板表面、めっき皮膜断面、およ
び初期合金相表面の電子顕微鏡写真および初期合金相表
面の電子顕微鏡写真。
【図5】P含有高強度鋼板に通常の方法で溶融亜鉛めっ
きした比較例の溶融亜鉛めっき鋼板の焼鈍後の鋼板表
面、めっき皮膜断面、および初期合金相表面の電子顕微
鏡写真。
【図6】IF鋼、P含有鋼、Si含有鋼をそれぞれ下地
鋼板として本発明に従って溶融亜鉛めっきした、皮膜の
均一性および密着性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の初期
合金相を示す電子顕微鏡写真。
【図7】IF鋼、P含有鋼、Si含有鋼をそれぞれ下地
鋼板として通常の方法で溶融亜鉛めっきした比較例の溶
融亜鉛めっき鋼板の初期合金相を示す電子顕微鏡写真。
【図8】本発明の操業安定性を説明するための図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 鷺山 勝 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、Mn含有量が0.2%以上、
    Nb含有量が0.005%以上、Ti含有量が0.01
    %以上のうち1または2以上を満たす鋼板に溶融亜鉛め
    っきを行うに際し、鋼板表面に、炭素化合物、窒素化合
    物およびホウ素化合物の中から選択される1種または2
    種以上をC、N、B量として0.1〜1000mg/m
    2付着させ、かつ硫黄または硫黄化合物をS量として
    0.1〜1000mg/m2付着させた後、水素を含む
    非酸化性雰囲気で680℃以上の温度で焼鈍し、その
    後、少なくとも0.05〜0.30%のAlを含む溶融
    亜鉛浴に浸漬してめっきを行うことを特徴とする、皮膜
    の均一性および密着性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製
    造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1の製造方法において、溶融亜鉛
    めっきする際に、予熱工程を弱酸化性雰囲気で行うこと
    を特徴とする、皮膜の均一性および密着性に優れた溶融
    亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または請求項2の製造方法によ
    って溶融亜鉛めっきした後、さらにめっき層の合金化熱
    処理を行うことを特徴とする、皮膜の均一性および耐パ
    ウダリング性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造
    方法。
  4. 【請求項4】 重量%で、Mn含有量が0.2%以上、
    Nb含有量が0.005%以上、Ti含有量が0.01
    %以上のうち1または2以上を満たす鋼板と、前記鋼板
    の少なくとも1つの表面上に形成された、S量に換算し
    て0.1〜1000mg/m2の量の硫化物層と、前記
    硫化物層の表面上に形成された亜鉛めっき層とからなる
    ことを特徴とする、皮膜の均一性および密着性に優れた
    溶融亜鉛めっき鋼板。
  5. 【請求項5】 請求項4の溶融亜鉛めっき鋼板におい
    て、前記硫化物層は、MnS、NbS2、TiS2化合物
    のうち1種または2種以上を含み、その表面にこれらの
    化合物が均一に分散した状態で析出しており、これら析
    出した化合物の直上に微細なζ相が均一に生成している
    ことを特徴とする、皮膜の均一性および密着性に優れた
    溶融亜鉛めっき鋼板。
  6. 【請求項6】 請求項1または請求項2の溶融亜鉛めっ
    き鋼板の製造方法に従って溶融亜鉛めっきした後、めっ
    き層の合金化熱処理を行うことにより製造された、皮膜
    の均一性および耐パウダリング性に優れた合金化溶融亜
    鉛めっき鋼板。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007169752A (ja) * 2005-12-26 2007-07-05 Jfe Steel Kk めっき密着性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法
KR100815813B1 (ko) 2006-12-28 2008-03-20 주식회사 포스코 표면거칠기가 개선되는 아연계 도금강판과 그 제조방법
JP2018506644A (ja) * 2014-12-24 2018-03-08 ポスコPosco 溶接性及び加工部耐食性に優れた亜鉛合金めっき鋼材及びその製造方法

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