JP2007169752A - めっき密着性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Si:0.1〜3mass%、Mn:0.5〜3.0mass%、Al:0.01〜3.0mass%の1種以上を含む鋼板を下地鋼板とし、該鋼板の表面に、B、C、S、Se、Br、Na、K、Mg、Ca、AlおよびPからなる元素群のうちの1種以上の元素を含む化合物を付着させたのち、該鋼板に酸化雰囲気中で加熱する酸化処理を施し、引続いて還元性雰囲気中で加熱する還元処理を行うに当り、還元処理の加熱温度を、Si、Mn、Alのうちの1種以上を含む酸化物と特定元素Xとが共存する時の該酸化物の融点Mp(℃)未満700℃以上の温度とし、ついで溶融亜鉛めっき処理を施す。これにより、不めっき等の表面欠陥がなく美麗な表面外観を有しめっき密着性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板を、また、過剰な合金化処理を施すことなく、美麗な表面外観を有し耐パウダリング性、耐食性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板を安定して生産性高く製造できる。
【選択図】なし
Description
一般に、溶融亜鉛めっき鋼板は、スラブを熱間圧延したのちに冷間圧延あるいは熱処理された薄鋼板を下地鋼板として用い、この下地鋼板の表面を前処理工程にて脱脂および/または酸洗して洗浄するか、あるいは前処理工程を省略して予熱炉内で下地鋼板表面の油分を燃焼除去した後、非酸化性雰囲気中あるいは還元性雰囲気中で再結晶焼鈍を施し、ついで、非酸化性雰囲気中あるいは還元性雰囲気中で鋼板をめっきに適した温度まで冷却して大気に触れることなく微量Al(0.1〜0.2mass%程度)を添加した溶融亜鉛浴中に浸漬することによって製造されている。また、合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、溶融亜鉛めっき後の鋼板を引き続いて合金化炉内で熱処理することによって製造されている。
鋼板の高強度化の手段として、Si、Mn、P、Al等の固溶強化元素の添加が考えられている。なかでもSi、MnやAlは、鋼の延性を損なうことなく高強度化できる利点があり、高強度鋼板として、Si、MnやAlを含有した高強度鋼板が有望視されている。
溶融亜鉛めっき鋼板は、上記したように下地鋼板に還元雰囲気中で600〜900℃程度の温度で焼鈍を行ったのち、溶融亜鉛めっき処理を施して製造される。しかし、鋼中のSi、MnやAlは易酸化性元素であり、溶融亜鉛めっき前の焼鈍において一般的に用いられる還元雰囲気中でも選択的に酸化されて、表面に濃化し、酸化物を形成する。これらSi、Mnの酸化物、あるいはAlの酸化物は、溶融めっき処理時に鋼板と溶融亜鉛との濡れ性を低下させて不めっきを生じさせる。このため、下地鋼板のSi、MnあるいはAl含有量が増加すると、下地鋼板と溶融亜鉛との濡れ性が急激に低下して不めっきが多発するようになるか、あるいは不めっきに至らなかった場合でも、めっき密着性が低下するという問題がある。
さらに、鋼中のSi、Mn、Alが選択的に酸化して表面に濃化し酸化物を形成すると、Si、Mn、Alの酸化物がZn−Fe合金化反応を阻害するため、溶融亜鉛めっき後の合金化過程において著しい合金化遅延を生じる。その結果、生産性が著しく低下するという問題がある。生産性を確保するために、過剰に高温で合金化処理を行うと、耐パウダリング性の低下を招くという問題があり、高い生産性と良好な耐パウダリング性を両立させることは困難であった。また、Siや、Mn、Alを含有する高強度鋼板では、Si、Mn、Alを含有させて残留γ相を形成しやすくし鋼板の機械的特性を向上させているが、高温での合金化処理は、残留オーステナイト(γ)相を不安定にし、良好であった下地鋼板の機械的特性を低下させるという問題がある。
(1)C:0.25mass%以下を含み、さらにSi:0.1〜3mass%、Mn:0.5〜3.0mass%、Al:0.01〜3.0mass%のうちの少なくとも1種以上を含む鋼板を下地鋼板とし、該鋼板の表面に、B、C、S、Se、Br、Na、K、Mg、Ca、AlおよびPからなる元素群から選ばれた1種または2種以上の特定元素Xを含む化合物を付着させたのち、該鋼板に酸化雰囲気中で加熱する酸化処理を施し、引続いて還元性雰囲気中で加熱する還元処理を行うに当り、該還元処理の加熱温度を、Si、Mn、Alのうちの1種以上を含む酸化物と前記特定元素Xとが共存する時の該酸化物の融点Mp(℃)未満700℃以上の温度とし、ついで溶融亜鉛めっき処理を施すことを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
(3)(1)または(2)において、前記特定元素Xが、B、Na、Kのうちの1種または2種以上を含むことを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
(4)C:0.25mass%以下を含み、さらにSi:0.1〜3mass%、Mn:0.5〜3.0mass%、Al:0.01〜3.0mass%のうちの少なくとも1種以上を含む鋼板を下地鋼板とし、該鋼板の表面に、B、C、S、Se、Br、Na、K、Mg、Ca、Al、およびPからなる元素群から選ばれた1種または2種以上の特定元素Xを含む化合物を付着させたのち、該鋼板に酸化雰囲気中で加熱する酸化処理を施し、引続いて還元性雰囲気中で加熱する還元処理を行うに当り、該還元処理の加熱温度を、Si、Mn、Alのうちの1種以上を含む酸化物と前記特定元素Xとが共存する時の該酸化物の融点Mp(℃)未満でかつ700℃以上の温度とし、ついで溶融亜鉛めっき処理を施し溶融亜鉛めっき層を形成し、さらに該溶融亜鉛めっき層の合金化処理を施すことを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
(6)(4)または(5)において、前記特定元素Xが、B、Na、Kのうちの1種または2種以上を含むことを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
C:0.25mass%以下
Cは、鋼の強度を増加させ高強度化に有効に寄与する元素であるとともに、強度−延性バランスを向上させる残留オーステナイトを生成させる等、組織制御を行う際に有用な元素である。C含有量の下限はとくに限定する必要はなく、要求される特性に応じて決定すればよいが、0.05mass%以上とすることが好ましい。0.05mass%未満では、延性等加工性向上に有効に作用する残留γ相の形成が難しくなる。しかし、0.25mass%を超えて含有すると溶接性が低下するため、0.25mass%以下とする。
Si、Mn、Alの含有量がそれぞれSi:0.1mass%未満、Mn:0.5mass%未満、Al:0.01mass%未満である場合には、還元処理時のこれら元素の表面濃化が顕著でなく、不めっきや合金化遅延の発生の危険性が少ない。一方、Si含有量が3.0mass%、Mn含有量が3.0mass%、Al含有量が3.0mass%をそれぞれ超えて含有すると、還元処理時の表面濃化が顕著となり、めっき性が低下する。このため、Siは0.1〜3.0mass%、Mn:0.5〜3.0mass%、Al:0.01〜3.0mass%の範囲に、それぞれ限定した。
P:0.1 mass%以下
Pは、通常、0.1mass%以下の範囲で鋼中に含有される。本発明で下地鋼板として使用する鋼板も上記した範囲でPが含有されていてもよい。なお、Pは、鋼の強度を増加させる元素であり、このような作用を発現するためには、0.02 mass%以上含有させることが好ましい。一方、0.1 mass%を超えて含有すると、高強度となり延性が低下する。このため、Pは0.02 〜0.1 mass%とすることが好ましい。
また特定元素Xを含む化合物を鋼板表面に付着させる方法は、特に限定されるものではなく、少なくとも物理的に鋼板表面に付着させることができればよい。例えば、特定元素Xを含む化合物を水または有機溶剤等に溶解し、またはこれらを混合した溶液を用い、これら溶液中に鋼板を浸漬する方法、これら溶液をスプレー等で噴霧する方法、これら溶液をロールコーター等で塗布する方法、これら溶液中に浸漬あるいはスプレー等で噴霧したのちリンガーロールで付着量を調整する方法とすることが好ましい。鋼板に付着させられた化合物はその後乾燥させても、あるいは化合物を直接塗布してもその効果は変わらない。
また、上記した化合物を付着させる前に、必要に応じて電解脱脂や酸洗等の、従来から用いられている前処理を施してもよい。また、上記した化合物を付着させた後に、必要に応じて電解脱脂や酸洗等の処理を施しても、上記した化合物が鋼板上に付着していれば本発明の効果を得ることができる。さらに、上記した化合物を含む圧延油を用いて圧延時に付着させる方法を用いてもよい。
酸化処理における鋼板最高到達温度が500℃以下では、酸化鉄の生成量が不足し、特定元素を酸化鉄/鋼板の界面近傍に十分に濃化させることができない。また、酸化処理における鋼板最高到達温度を500℃超えの温度とすることにより、Si、Mn、Alの表面濃化を抑制するに足る十分な量の酸化鉄を形成することができる。Si、Mn、Alの表面濃化を抑制するに足る十分な酸化鉄の生成量とは、酸素量換算で0.1g/m2以上5g/m2以下とすることが好ましい。これにより、鋼板と溶融亜鉛との濡れ性が向上し不めっきを防止できる。
バーナー加熱方式では、例えばCGLにおける、酸化炉、無酸化炉等の加熱炉を使用することができる。無酸化炉の場合、例えば直火バーナーの空燃比を1.0超とすることにより容易に酸化性雰囲気とすることができ、鋼板を酸化できる。また、誘導加熱方式、放射加熱方式、通電加熱方式では、被加熱鋼板の近傍を酸化性雰囲気とすることで容易に、鋼板を酸化できる。酸化性雰囲気としては、鋼板を酸化できる雰囲気であればとくに限定されるものではないが、酸素、水蒸気、二酸化炭素等の酸化性ガスを1種または2種以上を含有する雰囲気とすることが好ましい。
還元処理の加熱温度が、700℃未満では、再結晶が十分に進行しないため、機械的特性が劣化する。一方、Mp(℃)以上の高温となると、めっき性が低下する。還元処理の加熱温度をMp(℃)未満とすることにより、めっき性が改善される機構については、現在までに完全に明らかになっているわけではないが、本発明者らは、つぎのように考えている。
なお、還元処理は、酸化鉄層が還元できる還元雰囲気であれば、その条件はとくに限定されないが、水素‐窒素系雰囲気とすることが好ましく、水素含有量は1〜90体積%とすることがより好ましい。雰囲気の水素含有量が1体積%未満では、露点を下げても還元能力が不足する。一方、水素含有量が、90体積%を超えると経済的に不利となる。なお、雰囲気の露点は、−60℃〜0℃の範囲とすることが好ましい。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。
まず、下地鋼板に、前処理として、電解脱脂処理を施し、鋼板表面の脱脂を行ったのち、下地鋼板表面に、表2に示す特定元素Xを含む化合物の水溶液をロールコーター法で塗布し、特定元素換算で表2に示す量の特定元素Xを含む化合物を付着させた。なお、特定元素Xの付着量の調整は水溶液の濃度を変化させて行った。
表面に特定元素を含む化合物を付着させた鋼板に、ついで酸化処理を施した。酸化処理は、直火型(DFF)CGLを使用して、空燃比:1.1として、鋼板到達温度:550℃で行った。なお、酸化処理で生成したFe酸化物量は、めっきセクション、均熱セクションを空通しして酸化された鋼板を採取して、酸化鉄層中の酸素量を、鋼中の酸素分析法により定量分析して求めた。
なお、めっき層中の特定元素Xの含有量は、20mass%NaOH‐10mass%トリエタノールアミン水溶液195ccと35mass%過酸化水素溶液7ccの混合溶液にめっき鋼板を浸漬してめっき層を溶解し、溶解液中の元素XをICP法で定量し、片面単位面積当たりの含有量とした。
(1)めっき外観
得られためっき鋼板の表面外観を目視で観察し、不めっきの有無を調査した。目視で不めっきが多数観察できる場合を×、不めっきが少し観察される場合を△、不めっきが全く観察されない場合を○としてめっき外観を評価した。なお、合金化処理が施されためっき鋼板については、不めっきの有無に加えて、合金化遅延による外観ムラの有無も加味して評価した。
(2)耐パウダリング性調査
得られためっき鋼板から試験片(t×幅40mm×長さ80mm)を採取し、試験片の長さ方向中央の位置にセロハンテープ(ニチバン製:幅23mm)を貼り、テープ面を90°内側に曲げた後、曲げ戻しを行った。曲げ‐曲げ戻し後、セロハンテープを剥がし、付着したZn量を蛍光X線によりカウント数として測定した。測定したZnカウント数を基準として、カウント数が0〜500以下の場合をランク1、カウント数が500超え〜1000以下の場合をランク2、カウント数が1000超え〜2000以下の場合をランク3、カウント数が2000超え〜3000以下の場合をランク4、カウント数が3000超えの場合をランク5とし、ランク1、2のものを○(良好)とし、ランク3を△、ランク4、5を×(不良)として耐パウダリング性を評価した。
得られた結果を表2に示す。
Claims (4)
- C:0.25mass%以下を含み、さらにSi:0.1〜3mass%、Mn:0.5〜3.0mass%、Al:0.01〜3.0mass%のうちの少なくとも1種以上を含む鋼板を下地鋼板とし、該鋼板の表面に、B、C、S、Se、Br、Na、K、Mg、Ca、Al、およびPからなる元素群から選ばれた1種または2種以上の特定元素Xを含む化合物を付着させたのち、該鋼板に酸化雰囲気中で加熱する酸化処理を施し、引続いて還元性雰囲気中で加熱する還元処理を行うに当り、該還元処理の加熱温度を、Si、Mn、Alのうちの1種以上を含む酸化物と前記特定元素Xとが共存する時の該酸化物の融点Mp(℃)未満でかつ700℃以上の温度とし、ついで溶融亜鉛めっき処理を施すことを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 前記特定元素Xを含む化合物の付着量が、特定元素X量換算で片面当たり1.0mg/m2以上であることを特徴とする請求項1に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- C:0.25mass%以下を含み、さらにSi:0.1〜3mass%、Mn:0.5〜3.0mass%、Al:0.01〜3.0mass%のうちの少なくとも1種以上を含む鋼板を下地鋼板とし、該鋼板の表面に、B、C、S、Se、Br、Na、K、Mg、Ca、Al、およびPからなる元素群から選ばれた1種または2種以上の特定元素Xを含む化合物を付着させたのち、該鋼板に酸化雰囲気中で加熱する酸化処理を施し、引続いて還元性雰囲気中で加熱する還元処理を行うに当り、該還元処理の加熱温度を、Si、Mn、Alのうちの1種以上を含む酸化物と前記特定元素Xとが共存する時の該酸化物の融点Mp(℃)未満でかつ700℃以上の温度とし、ついで溶融亜鉛めっき処理を施し溶融亜鉛めっき層を形成し、さらに該溶融亜鉛めっき層の合金化処理を施すことを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 前記特定元素Xを含む化合物の付着量が、特定元素X量換算で片面当たり1.0mg/m2以上であることを特徴とする請求項3に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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