JP2002256406A - 合金化溶融亜鉛めっき鋼板 - Google Patents

合金化溶融亜鉛めっき鋼板

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JP2002256406A JP2001061719A JP2001061719A JP2002256406A JP 2002256406 A JP2002256406 A JP 2002256406A JP 2001061719 A JP2001061719 A JP 2001061719A JP 2001061719 A JP2001061719 A JP 2001061719A JP 2002256406 A JP2002256406 A JP 2002256406A
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Masaaki Yamashita
正明 山下
Masayasu Nagoshi
正泰 名越
Kaoru Sato
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 プレス成形時の摺動性に優れた合金化溶融め
っき鋼板を提供することを目的とする。 【解決手段】 めっき表面に平坦部を有し、その平坦部
の表層にZnとSを含む酸化物層が形成され、その厚さが1
0nm以上であることを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき
鋼板。上記ZnとSを含む酸化物層中のSの含有量が、at%
で0.005〜10%の範囲にある。鉄−亜鉛合金めっき表面に
おける前記平坦部の面積率が20〜80%である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、プレス成形時に
おける摺動性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】合金化溶融亜鉛めっき鋼板は亜鉛めっき
鋼板と比較して溶接性および塗装性に優れることから、
自動車車体用途を中心に広範な分野で広く利用されてい
る。そのような用途での合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、
プレス成形を施されて使用に供される。しかし、合金化
溶融亜鉛めっき鋼板は、冷延鋼板に比べてプレス成形性
が劣るという欠点を有する。これはプレス金型での合金
化溶融めっき鋼板の摺動抵抗が冷延鋼板に比べて大きい
ことが原因である。すなわち、金型とビードでの摺動抵
抗が大きい部分で合金化溶融亜鉛めっき鋼板がプレス金
型に流入しにくくなり、鋼板の破断が起こりやすい。
【0003】合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、鋼板に亜鉛
めっきを施した後、加熱処理を行い、鋼板中のFeとめっ
き層中のZnが拡散する合金化反応が生じることにより、
Fe-Zn合金相を形成させたものである。このFe-Zn合金相
は、通常、Γ相、δ1相、ζ相からなる皮膜であり、Fe
濃度が低くなるに従い、すなわち、Γ相→δ1相→ζ相
の順で、硬度ならびに融点が低下する傾向がある。この
ため、摺動性の観点からは、高硬度で、融点が高く凝着
の起こりにくい高Fe濃度の皮膜が有効であり、プレス成
形性を重視する合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、皮膜中の
平均Fe濃度を高めに製造されている。
【0004】しかしながら、高Fe濃度の皮膜では、めっ
き−鋼板界面に硬くて脆いΓ相が形成されやすく加工時
に、界面から剥離する現象、いわゆるパウダリングが生
じ易い問題を有している。このため、特開平1-319661号
公報に示されているように、摺動性と耐パウダリング性
を両立するために、上層に硬質のFe-Zn合金を電気めっ
きなどの手法により第二層を付与する方法がとられてい
る。
【0005】亜鉛系めっき鋼板使用時のプレス成形性を
向上させる方法としては、この他に、高粘度の潤滑油を
塗布する方法が広く用いられている。しかし、この方法
では、潤滑油の高粘性のために塗装工程で脱脂不良によ
る塗装欠陥が発生したり、また、プレス時の油切れによ
り、プレス性能が不安定になる等の問題がある。従っ
て、合金化溶融亜鉛めっき自身のプレス成形性が改善さ
れることが強く要請されている。
【0006】上記の問題を解決する方法として、特開昭
53-60332号公報および特開平2-190483号公報には、亜鉛
系めっき鋼板の表面に電解処理、浸漬処理、塗布酸化処
理、または加熱処理を施すことにより、ZnOを主体とす
る酸化膜を形成させて溶接性、または加工性を向上させ
る技術を開示している。
【0007】特開平4-88196号公報は、亜鉛系めっき鋼
板の表面に、リン酸ナトリウム5〜60g/lを含みpH2〜6の
水溶液にめっき鋼板を浸漬するか、電解処理を行う、ま
たは、上記水溶液を塗布することにより、P酸化物を主
体とした酸化膜を形成して、プレス成形性及び化成処理
性を向上させる技術を開示している。
【0008】特開平3-191093号公報は、亜鉛系めっき鋼
板の表面に電解処理、浸漬処理、塗布処理、塗布酸化処
理、または加熱処理により、Ni酸化物を生成させること
により、プレス成形性および化成処理性を向上させる技
術を開示している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
先行技術を合金化溶融亜鉛めっき鋼板に適用した場合、
プレス成形性の改善効果を安定して得ることはできな
い。本発明者らは、その原因について詳細な検討を行っ
た結果、合金化溶融めっき鋼板はAl酸化物が存在するこ
とにより表面の反応性が劣ること、及び表面の凹凸が大
きいことが原因であることを見出した。即ち、先行技術
を合金化溶融めっき鋼板に適用した場合、表面の反応性
が低いため、電解処理、浸漬処理、塗布酸化処理及び加
熱処理等を行っても、所定の皮膜を表面に形成すること
は困難であり、反応性の低い部分、すなわち、Al酸化物
量が多い部分では膜厚が薄くなってしまう。また、表面
の凹凸が大きいため、プレス成型時にプレス金型と直接
接触するのは表面の凸部となるが、凸部のうち膜厚の薄
い部分と金型との接触部での摺動抵抗が大きくなり、プ
レス成形性の改善効果が十分には得られない。
【0010】本発明は上記の問題点を改善し、プレス成
形時の摺動性に優れた合金化溶融めっき鋼板を提供する
ことを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、合金化溶融め
っき鋼板表面に存在する平坦部表層の酸化物層厚さを制
御することで、安定して優れたプレス成形性が得られる
ことを知見した。
【0012】合金化溶融亜鉛めっき鋼板表面の上記平坦
部は、周囲と比較すると凸部として存在する。プレス成
形時に実際にプレス金型と接触するのは、この平坦部が
主体となるため、この平坦部における摺動抵抗を小さく
すれば、プレス成形性を安定して改善することができ
る。この平坦部における摺動抵抗を小さくするには、め
っき層と金型との凝着を防ぐのが有効であり、そのため
には、めっき層の表面に、硬質かつ高融点の皮膜を形成
することが有効である。この観点から検討を進めた結
果、平坦部表層の酸化物層厚さを制御することが有効で
あることを見出した。
【0013】本発明は、以上の知見に基いてなされたも
のであり、第1発明は、めっき表面に平坦部を有し、そ
の平坦部の表層にZnとSを含む酸化物層が形成され、そ
の厚さが10nm以上であることを特徴とする合金化溶融亜
鉛めっき鋼板を提供する。
【0014】第2発明は、第1発明において、上記ZnとS
を含む酸化物層中のSの含有量が、at%で0.005〜10%の範
囲にあることを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板を
提供する。
【0015】第3発明は、第1発明および第2発明におい
て、鉄−亜鉛合金めっき表面における前記平坦部の面積
率が20〜80%であることを特徴とする合金化溶融亜鉛め
っき鋼板を提供する。
【0016】
【発明の実施の形態】合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造
の際には、鋼板に溶融亜鉛めっきを施した後に、さらに
加熱し合金化処理が施されるが、この合金化処理時の鋼
板−めっき界面の反応性の差により、合金化溶融亜鉛め
っき鋼板表面には凹凸が存在する。しかしながら、合金
化処理後には、通常、材質確保のために調質圧延が施さ
れ、この調質圧延時のロールとの接触により、めっき表
面は平滑化され凹凸が緩和される。従って、プレス成型
時には、金型がめっき表面の凸部を押しつぶすのに必要
な力が低下し、摺動特性を向上させることができる。
【0017】合金化溶融亜鉛めっき鋼板表面の平坦部
は、プレス成形時に金型が直接接触する部分であるた
め、金型との凝着を防止する硬質かつ高融点の物質が存
在することが、摺動性の向上には重要である。この点で
は、表層にζ相を含まないδ1単相の皮膜とすると、摺
動性の向上には効果的であるが、表層が完全にδ1相と
なるためには、皮膜中のFe濃度が高くなるよう合金化処
理を施さなければならず、この結果、めっき−鋼板界面
には、硬質で脆いΓ相が厚く生成し、プレス成形の際に
パウダリングを生じやすい問題がある。一方、パウダリ
ングを防止するために、Γ相が薄くなるような合金化処
理を施すと、表層にはζ相が残存し、摺動性に劣る問題
がある。
【0018】この観点から、本発明で用いる合金化溶融
亜鉛めっき鋼板のめっき皮膜のFe濃度及びAl濃度につい
ては特に規定しないが、めっき層としては、主としてδ
1相からなり、更にζ相を含んでいる構造が理想的であ
る。
【0019】一方、表層に酸化物層を存在させること
は、ζ相が残存する皮膜でも、酸化物層が金型との凝着
を防止するため、摺動特性の向上に有効であるが、実際
のプレス成形時には、表層の酸化物は摩耗し、削り取ら
れるため、金型と被加工材の接触面積が大きい場合に
は、十分に厚い酸化膜の存在が必要である。この観点か
ら、ZnとSを含む酸化物層は効果的である。この原因に
ついては明らかではないが、以下のように考えることが
できる。通常、亜鉛めっき鋼板表面にZn系酸化物層を生
成する際には、酸化物の成長速度が遅く、ある所要の酸
化膜厚さを得るのに長時間を有するなど処理コストが高
い。これに対して、酸化皮膜中にSを含む場合には、こ
のSがめっき表面において酸化物成長を促進する効果が
あり、短時間で厚い酸化物層を形成でき、最終的に、厚
いZnとSを含む酸化物層がめっき表面に形成され、摺動
性の向上に寄与するものと考えられる。すなわち、酸化
皮膜中に存在するSが一種の触媒の働きをすることによ
り、厚い酸化皮膜をめっき表層に形成できるものと考え
られる。
【0020】また、表面にζ相を含まない皮膜は、ζ相
が残存する皮膜と比較すると厚い酸化膜を容易に付与す
ることができる点で有利である。この原因については明
らかではないが、δ1相と比較するとζ相は、合金相内
のAlの固溶量が少ないため、合金化処理後の表層にAlの
酸化物層が多く形成され、酸化処理前に表面を活性化す
ることが困難であることが考えられる。
【0021】めっき表面の平坦部に、このようなZnとS
を含む酸化物層を形成させるには、合金化処理後の合金
化溶融亜鉛めっき鋼板に調質圧延を施した後に、硫酸イ
オンを含む酸性溶液に接触させることなどで得られる
が、最終的にめっき表層にZnとSを含む酸化物層が形成
されていればよく、その手法に制限はない。
【0022】合金化処理後のめっき表面には合金化処理
時の加熱により酸化物層が形成されており、調質圧延な
どの方法により平坦化された際に、一部破壊されている
ものの、大部分が残存しているため、表面の反応性が十
分ではないが、表層に残存した酸化膜を除去することに
より、表面を活性化でき、その後の酸化処理で十分に厚
い酸化物層をより短時間で付与することができるため、
酸化処理の前に残存した酸化膜を除去することが有利で
ある。
【0023】ここで、表層にζ相が残存する皮膜である
か否かについてはX線回折あるいはめっき表面のSEM像を
撮影した写真より判断することができる。すなわち、め
っき表面のX線回折ピークの中から、d=1.900Å(ζ
相)、およびd=1.990Å(δ相)に対するピーク強度か
らそれぞれバックグラウンド値を引いたものの比率(ζ
/δ)が0.2以上であればζ相が残存する皮膜、0.2未満
であればζ相が残存しない皮膜とみなすことができる。
まためっき表面のSEM像より形状が柱状晶であるものを
ζ相として、写真全体に対するζ相の割合(面積率)が
10%以上のものをζ相が残存する皮膜、10%未満のものを
ζ相が残存しない皮膜とみなすことができる。なお、調
圧などによりつぶされた部分がめっき表面に存在する場
合は、形状より判断することが困難であるため、このよ
うな部分はあらかじめ除外して面積率の計算を行うこと
とする。
【0024】めっき表層の平坦部における酸化物層の厚
さを10nm以上とすることにより、良好な摺動性を示す合
金化溶融亜鉛めっき鋼板が得られるが、酸化物層の厚さ
を20nm以上とするとより効果的である。これは、金型と
被加工物の接触面積が大きくなるプレス成形加工におい
て、表層の酸化物層が摩耗した場合でも残存し、摺動性
の低下を招くことがないためである。また、ZnとSを含
む酸化物層中のSの含有量は、at%で0.005〜10%の範囲に
あることが必要である。これは、Sの含有量が0.005%未
満であると、Sの酸化物層成長のための触媒作用として
の働きが十分でなく、結果的に酸化物層の生成に長時間
を有し、酸化膜の厚さを厚くできないため、摺動性の改
善効果が小さく、逆に、10%を超えると、十分に厚い酸
化物層が形成されているものの、腐食が進行しやすく耐
食性に劣るためである。一方、前記酸化物層の厚さの上
限は特に設けないが、200nmを超えると表面の反応性が
極端に低下し、化成処理皮膜を形成するのが困難になる
ため、200nm以下とするのが望ましい。
【0025】なお、平坦部表面の酸化物層の厚さは、Ar
イオンスパッタリングと組み合わせたオージェ電子分光
(AES)により求めることができる。この方法において
は、所定厚さまでスパッタした後、測定対象の各元素の
スペクトル強度から相対感度因子補正により、その深さ
での組成を求めることができる。酸化物または水酸化物
に起因するOの含有率は、ある深さで最大値となった後
(これが最表層の場合もある)、減少し、一定となる。
Oの含有率が最大値より深い位置で、最大値と一定値と
の和の1/2となる深さを、酸化物の厚さとする。また、X
線光電子分光法(XPS)を用いて同様の測定を行うこと
により、深さ方向でのS濃度プロファイルを求め、酸化
物層の厚さに相当する深さに対してS濃度が最大となる
値を、酸化物層中のS含有量とする。
【0026】ここで、めっき表面における平坦部の面積
率は、20〜80%とするのが望ましい。20%未満では、平坦
部を除く部分(凹部)での金型との接触面積が大きくな
り、実際に金型に接触する面積のうち、酸化物厚さを確
実に制御できる平坦部の面積率が小さくなるため、プレ
ス成形性の改善効果が小さくなる。また、平坦部を除く
部分は、プレス成型時にプレス油を保持する役割を持
つ。従って、平坦部を除く部分の面積率が20%未満にな
ると(平坦部の面積率が80%を超えると)プレス成形時
に油切れを起こしやすくなり、プレス成形性の改善効果
が小さくなる。
【0027】なお、めっき表面の平坦部は、光学顕微鏡
あるいは走査型電子顕微鏡等で表面を観察することで容
易に識別可能である。めっき表面における平坦部の面積
率は、上記顕微鏡写真を画像解析することにより求める
ことができる。
【0028】本発明に係る合金化溶融亜鉛めっき鋼板を
製造するに関しては、めっき浴中にAlが添加されている
ことが必要であるが、Al以外の添加元素成分は特に限定
されない。すなわち、Alの他に、Pb、Sb、Si、Sn、Mg、
Mn、Ni、Ti、Li、Cuなどが含有または添加されていて
も、本発明の効果が損なわれるものではない。
【0029】また、酸化処理などに使用する処理液中に
不純物が含まれることにより、P、N、B、Cl、Na、Mn、C
a、Mg、Ba、Sr、Siなどが酸化物層中に取り込まれて
も、本発明の効果が損なわれるものではない。
【0030】
【実施例】次に、本発明を実施例により更に詳細に説明
する。 (実施例1)板厚0.8mmの冷延鋼板上に、常法の合金化
溶融亜鉛めっき皮膜を形成し、さらに調質圧延を行っ
た。この際に、合金化条件を変更することで表層のζ相
比率を変化させ、調質圧延の圧下荷重を変化させること
で、表面における平坦部面積率を変化させた。引き続
き、50℃、pH2.0の硫酸酸性溶液に浸漬し、水洗するこ
とにより、平坦部の表層にZn、Sを含む酸化物層を形成
させる処理を行った。また上記処理前にはpH12の水酸化
ナトリウム水溶液に浸漬し、合金化処理時の加熱により
生成した酸化物層を除去した。
【0031】次いで、上記方法で作製した供試材につい
て、めっき皮膜中のFe含有率、ζ/δ値、ζ相面積率、
平坦部面積率、酸化物層の厚さ、酸化物層中のS含有量
の測定及びプレス成形性試験を行った。平坦部の酸化物
層厚さ及び酸化物層中のS含有量の測定、プレス成形性
試験は次のようにして行った。
【0032】(1)酸化物層の厚さ及びS含有率測定 オージェ電子分光(AES)により平坦部の各元素の含有
率(at%)を測定し、引き続いて所定の深さまでArスパ
ッタリングした後、AESによりめっき皮膜中の各元素の
含有率の測定を行い、これを繰り返すことにより、深さ
方向の各元素の組成分布を測定した。酸化物、水酸化物
に起因するOの含有率はある深さで最大となった後、減
少し一定となる。Oの含有率が、最大値より深い位置
で、最大値と一定値との和の1/2となる深さを、酸化物
の厚さとした。なお、予備処理として30秒のArスパッタ
リングを行って、供試材表面のコンタミネーションレイ
ヤーを除去した。
【0033】また、X線光電子分光法(XPS)を用いて同
様の測定を行うことにより、深さ方向でのS濃度プロフ
ァイルを求め、酸化物層の厚さに相当する深さに対して
S濃度が最大となる値を、酸化物層中のS含有量とした。
【0034】(2)プレス成形性評価試験(摩擦係数測定
試験) プレス成形性を評価するために、各供試材の摩擦係数を
以下のようにして測定した。
【0035】図1は、摩擦係数測定装置を示す概略正面
図である。同図に示すように、供試材から採取した摩擦
係数測定用試料1が試料台2に固定され、試料台2は、水
平移動可能なスライドテーブル3の上面に固定されてい
る。スライドテーブル3の下面には、これに接したロー
ラ4を有する上下動可能なスライドテーブル支持台5が設
けられ、これを押上げることにより、ビード6による摩
擦係数測定用試料1への押付荷重Nを測定するための第1
ロードセル7が、スライドテーブル支持台5に取付けら
れている。上記押付力を作用させた状態でスライドテー
ブル3を水平方向へ移動させるための摺動抵抗力Fを測定
するための第2ロードセル8が、スライドテーブル3の一
方の端部に取付けられている。なお、潤滑油として、日
本パーカライジング社製ノックスラスト550HNを試料1の
表面に塗布して試験を行った。
【0036】図2、3は使用したビードの形状・寸法を示
す概略斜視図である。ビード6の下面が試料1の表面に押
し付けられた状態で摺動する。図2に示すビード6の形状
は幅10mm、試料の摺動方向長さ12mm、摺動方向両端の下
部は曲率4.5mmRの曲面で構成され、試料が押し付けられ
るビード下面は幅10mm、摺動方向長さ3mmの平面を有す
る。図3に示すビード6の形状は幅10mm、試料の摺動方向
長さ69mm、摺動方向両端の下部は曲率4.5mmRの曲面で構
成され、試料が押し付けられるビード下面は幅10mm、摺
動方向長さ60mmの平面を有する。摩擦係数測定試験は下
に示す2条件で行った。 (条件1)図2に示すビードを用い、押し付け荷重N:400
kgf、試料の引き抜き速度(スライドテーブル3の水平移
動速度):100cm/minとした。 (条件2)図3に示すビードを用い、押し付け荷重N:400
kgf、試料の引き抜き速度(スライドテーブル3の水平移
動速度):20cm/minとした。供試材とビードとの間の摩
擦係数μは、式:μ=F/Nで算出した。
【0037】試験結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】表1に示すように、表層の酸化膜厚およびS
含有量、表層の平坦部面積率が本発明範囲内にある場合
(本発明例7〜17)には、ζ/δ値、ζ相面積率が高く、
明らかに表層にζ相が残存する皮膜でも、条件1の摩擦
係数はすべて非常に低い値であり、さらに、酸化膜厚が
20nm以上と厚い場合(本発明例10〜17)には、条件2の
摩擦係数も低い値となり、さらに良好な摺動特性を示し
た。これに対して、表層の酸化膜厚が本発明範囲をはず
れる比較例(比較例1〜3)は、いずれの摩擦係数も高い
値を示し、摺動特性は低下した。
【0040】一方、表層の酸化膜厚が本発明範囲内に含
まれていても、平坦部面積率が本発明範囲内をはずれる
場合(本発明例1〜4)は、条件1の摩擦係数がわずかに
低下したが、条件2の摩擦係数はまったく低下せず、摺
動特性の改善効果はなかった。また、酸化物層中のS含
有量が本発明範囲内をはずれる場合(本発明例5、6)
は、摺動性の改善は見られるものの本発明例7〜17と比
較すると改善効果は小さかった。
【0041】(実施例2)板厚0.8mmの冷延鋼板上に、
常法の合金化溶融亜鉛めっき皮膜を形成し、更に調質圧
延を行った。この際に、合金化条件を変更することで、
表面にζ相が存在しない皮膜を形成し、調質圧延の圧下
荷重を変化させることで、表面における平坦部面積率を
変化させた。引き続き、50℃、pH2.0の硫酸酸性溶液に
浸漬し、水洗することにより、平坦部の表層にZn、Sを
含む酸化物層を形成させる処理を行った。また上記処理
前にはpH12の水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、合金化
処理時の加熱により生成した酸化物層を除去した。
【0042】次いで、上記方法で作製した供試材につい
て、実施例1と同様にして、めっき皮膜中のFe含有率、
ζ/δ値、ζ相面積率、平坦部面積率、酸化物層の厚
さ、酸化物層中のS含有量の測定及びプレス成形性試験
を行った。
【0043】試験結果を表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】表2に示すように、ζ/δ値、ζ相面積率が
低く表面にζ相を含まない皮膜であり、かつ表層の酸化
膜厚およびS含有量、表層の平坦部面積率が本発明範囲
内にある場合(本発明例7〜17)には、条件1の摩擦係数
はすべて非常に低い値であり、さらに、酸化膜厚が20nm
以上と厚い場合(本発明例10〜17)には、条件2の摩擦
係数も低い値となり、さらに良好な摺動特性を示した。
これに対して、表層の酸化膜厚が本発明範囲をはずれる
比較例(比較例1〜3)は、いずれの摩擦係数も高い値を
示し、摺動特性は低下した。
【0046】一方、表層の酸化膜厚が本発明範囲内に含
まれていても、平坦部面積率が本発明範囲内をはずれる
場合(本発明例1〜4)は、条件1の摩擦係数がわずかに
低下したが、条件2の摩擦係数はまったく低下せず、摺
動特性の改善効果はなかった。また、酸化物層中のS含
有量が本発明範囲内をはずれる場合(本発明例5、6)
は、摺動性の改善は見られるものの本発明例7〜17と比
較すると改善効果は小さかった。
【0047】
【発明の効果】本発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、
めっき層中にζ相の残存有無によらず、プレス成形時の
摺動抵抗が小さく、安定して優れたプレス成形性が得ら
れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】摩擦係数測定装置を示す概略正面図。
【図2】図1中のビード形状・寸法を示す概略斜視図。
【図3】図1中のビード形状・寸法を示す概略斜視図。
【符号の説明】 1 摩擦係数測定用試料 2 試料台 3 スライドテーブル 4 ローラ 5 スライドテーブル支持台 6 ビード 7 第1ロードセル 8 第2ロードセル 9 レール N 押付荷重 F 摺動抵抗力 P 引張荷重
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 稲垣 淳一 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 山下 正明 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 名越 正泰 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 佐藤 馨 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 Fターム(参考) 4K027 AA05 AA22 AB02 AB28 AB36 AB42 AC87

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 めっき表面に平坦部を有し、その平坦部
    の表層にZnとSを含む酸化物層が形成され、その厚さが1
    0nm以上であることを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき
    鋼板。
  2. 【請求項2】 上記ZnとSを含む酸化物層中のSの含有量
    が、at%で0.005〜10%の範囲にあることを特徴とする請
    求項1に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
  3. 【請求項3】 鉄−亜鉛合金めっき表面における前記平
    坦部の面積率が20〜80%であることを特徴とする請求項1
    および請求項2に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
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