JP5045231B2 - 合金化溶融亜鉛めっき鋼板 - Google Patents

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本発明は、高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板などの成形荷重が高く型かじりを生じやすい材料においても、優れたプレス成形性を有する、合金化溶融亜鉛めっき鋼板に関するものである。
合金化溶融亜鉛めっき鋼板は合金化処理を施さない亜鉛めっき鋼板と比較して溶接性および塗装性に優れることから、自動車車体用途を中心に広範な分野で広く利用されている
。そのような用途での合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、プレス成形を施されて使用に供される。しかし、合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、冷延鋼板に比べてプレス成形性が劣るという欠点を有する。これはプレス金型での合金化溶融亜鉛めっき鋼板の摺動抵抗が冷延鋼板に比べて大きいことが原因である。すなわち、金型とビードでの摺動抵抗が大きい部分で合金化溶融亜鉛めっき鋼板がプレス金型に流入しにくくなり、鋼板の破断が起こりやすい。
合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、鋼板に亜鉛めっきを施した後、加熱処理を行い、鋼板中のFeとめっき層中のZnが拡散し合金化反応が生じることにより、Fe−Zn合金相を形成させたものである。このFe−Zn合金相は、通常、Γ相、δ相、ζ相からなる皮膜であり、Fe濃度が低くなるに従い、すなわち、Γ相→δ1相→ζ相の順で、硬度ならびに融点が低下する傾向がある。このため、摺動性の観点からは、高硬度で、融点が高く凝着の起こりにくい高Fe濃度の皮膜が有効であり、プレス成形性を重視する合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、皮膜中の平均Fe濃度を高めに製造されている。
しかしながら、高Fe濃度の皮膜では、めっき−鋼板界面に硬くて脆いΓ相が形成されやすく、加工時に界面から剥離する現象、いわゆるパウダリングが生じやすい問題を有している。このため特許文献1に示されているように、摺動性と耐パウダリング性を両立するために、上層に第二層として硬質のFe系合金を電気めっきなどの手法により付与する方法がとられている。
亜鉛系めっき鋼板使用時のプレス成形性を向上させる方法としては、この他に、高粘度の潤滑油を塗布する方法が広く用いられる。しかし、この方法では、潤滑油の高粘性のために塗装工程で脱脂不良による塗装欠陥が発生したり、また、プレス時の油切れにより、プレス性能が不安定になる等の問題がある。従って、合金化溶融亜鉛めっき鋼板自身のプレス成形性が改善されることが強く要請されている。
上記の問題を解決する方法として、特許文献2および特許文献3には、亜鉛系めっき鋼板の表面に電解処理、浸漬処理、塗布酸化処理、または加熱処理を施すことにより、ZnOを主体とする酸化膜を形成させて溶接性、加工性を向上させる技術が開示されている。
特許文献4には亜鉛系めっき鋼板表面に、リン酸ナトリウム5〜60g/lを含みpH2〜6の水溶液にめっき鋼板を浸漬するか、電解処理を行う、または上記水溶液を塗布することにより、P酸化物を主体とした酸化膜を形成して、プレス成形性および化成処理性を向上させる技術が開示されている。
特許文献5には、亜鉛系めっき鋼板の表面に電解処理、浸漬処理、塗布処理、塗布酸化処理、または加熱処理により、Ni酸化物を生成させることにより、プレス成形性および化成処理性を向上させる技術が開示されている。
特許文献6には、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を酸性溶液に接触させることで鋼板表面にZnを主体とする酸化物を形成させ、めっき層とプレス金型の凝着を抑制し、摺動性を向上させる技術が開示されている。
特許平1−319661号公報 特開昭53-60332号公報 特開平2−190483号公報 特開平4−88196号公報 特開平3−191093号公報 特開2003-306781号公報
しかしながら、特許文献1〜6は、自動車外板に多く使用される比較的強度の低い合金化溶融亜鉛めっき鋼板に対しては有効であるが、プレス成形時の荷重が高いがゆえに金型との接触面圧が上昇する高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板においては、必ずしもプレス成形性の改善効果を安定して得ることはできない。
本発明は、かかる事情に鑑み、高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板などの成形荷重が高く型かじりが生じやすい材料においても優れたプレス成形性を有する合金化溶融亜鉛めっき鋼板を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、さらに鋭意研究を重ねた。その結果、以下の知見を得た。
特許文献6の方法により製造される合金化溶融亜鉛めっき鋼板表面には、Znを主体とする酸化物層が形成されており、このZnを主体とする酸化物層がプレス時に金型との凝着を抑制し摺動抵抗を低減している。このZnを主体とする酸化物(以下、Zn系酸化物と称することもある)は、主に、調質圧延等により形成される平坦部に形成される。実際のプレス成形において、金型と優先的に接触する面はこの平坦部であり、接触面圧が低い場合には、平坦部表面のZn系酸化物が、金型とめっき層表面の直接接触を抑制することでプレス成形性の向上効果が得られる。しかし、めっきの下地鋼板として高強度鋼を使用する場合は、軟質鋼よりも成形荷重が高く型かじりや割れを生じやすく、このような場合には、特許文献6に記載されるZn系酸化物層では効果が不十分であることがわかった。
そして、本発明者らは、この原因を突き止めるべくさらに鋭意研究を重ねた結果、Zn系酸化物層で成形荷重が高い場合でも高い潤滑性を発現するためには、酸化物層の密着性が重要であることを知見した。この理由として、酸化物層の密着性が低いと酸化物層が金型との接触により容易に除去され、めっきの合金相と金型が直接接触し凝着を起こしやすくなるからと考える。成形荷重が高い場合は特に、プレス直前の鋼板と金型との接触面圧が高く、プレス時に酸化物が除去される効果が大きく、その傾向が顕著になると考えられる。本発明者らは、Zn主体の酸化物に、Zrを含有させることが上記の解決に有効であることを見出した。
本発明は、以上の知見に基づきなされたものであり、その要旨は以下の通りである。
[1]Fe-Zn合金めっき相を少なくとも鋼板の片面に有し、かつ、該Fe-Zn合金めっき相の表面には平坦部を有し、さらに、該平坦部表面には、ZrをZr/Znの原子比で0.01〜0.4含み、Znを必須成分とする酸化物が、平均厚さ10nm以上200nm以下で形成されていることを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
本発明によれば、プレス成形時の摺動抵抗が小さく、優れたプレス成形性を有する合金化溶融亜鉛めっき鋼板が得られる。
合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、合金化処理時の鋼板−めっき界面の反応性の差およびFe-Zn合金の角張った形状により、めっき相表面にマクロな凹凸が存在している。このような合金化溶融亜鉛めっき鋼板に、例えば、調質圧延によりめっき相表面に平坦部を設けることによって、めっき相表面の凹凸を緩和し表面を平滑にすると同時にめっき相表面の凸部を平坦にする(以下、平坦化された凸部を平坦部と称す)。このようにして形成された合金化溶融亜鉛めっき鋼板表面の平坦部は、プレス成形時に金型が直接接触する部分であるため、この平坦部の摺動抵抗を小さくすることが、プレス成形性を安定して改善することにつながり重要となる。平坦部の摺動抵抗を小さくする方法としては、金型との凝着を防止する硬質かつ高融点の物質を平坦部に存在させる方法が挙げられる。この点で、平坦部表面にZn系の酸化物層を存在させることは、酸化物層が金型との凝着を防止するため、摺動特性の向上に有効である。
プレス成形時の荷重が高い場合には、めっき相表面と金型との高面圧で接触し、高面圧で摺動を受ける。そのため、Zn系酸化物層とめっき相表面との密着性が低いと、酸化物層が剥離することでめっき合金表面が金型と接触し凝着抑制効果が低下する。ここで、Zn系酸化物層にZrを含有させると、めっき相表面とZn系酸化物層との密着性が向上し、摺動性が向上する。この理由は明確になってはいないが、ZrがZn系酸化物の物性や皮膜形状を変化させめっき相表面との密着性を向上させているものと推定する。
さらに、本発明では、平坦部表面に含有するZr量は、Zr/Znの原子比で0.01〜0.4とする。Zr/Znの原子比が0.01より小さいとZrを含有させた効果が不十分である。Zr/Znの原子比が0.4を越えた場合、効果はあるものの、製造することが困難になり工業的に不利である。
本発明において、Zrを含有した酸化物層とは、ZrをZr/Znの原子比で0.01〜0.4含み、Znを必須成分とする酸化物などからなる層のことである。なお、ここでいうZnを必須成分とする酸化物層とは、少なくともZnとOを含んでいればよく、水酸化物や処理液に含まれる成分など、その他の元素が結合している場合も含まれる。
そして、このような酸化物層の平均厚さは平坦部において、10 nm以上200nm以下とする。酸化物層の平均厚さが10nm未満になるとZrを含有させても摺動抵抗を低下させる効果が不十分となる。一方、酸化物層の平均厚さが200nmを越えると、プレス加工中に皮膜が破壊し摺動抵抗が上昇し、また溶接性が低下する傾向にある。本発明では、平坦部における酸化物層の厚さと組成を規定しているが、同様の酸化物層が平坦部以外の領域に存在していても問題ない。摺動性の点からは酸化物層が平坦部以外の領域に存在することで、摺動性が向上する傾向にあり、好ましい。その理由は、接触面圧が高い場合、平坦部に加え、平坦部以外の領域も金型と直接接触するようになると考えられる。
以上より、本発明では、ZrをZr/Znの原子比で0.01〜0.4含み、Znを必須成分とする酸化物を、平均厚さ10nm以上200nm以下で、平坦部表面に形成するものとする。
なお、本発明では、Zn系酸化物中にZrを含有していれば摺動性に優れるため、その他の金属イオンや無機化合物などを不純物として、あるいは故意に含有していても本発明の効果が損なわれるものではない。
ここで、平坦部表面にZrを含むZn系酸化物を形成させる方法としては、Zrを含む酸性溶液に接触させる方法が挙げられる。具体的には、鋼板に溶融亜鉛めっきを施し、さらに加熱処理により合金化し、調質圧延を施して平坦部を形成した後、Zrを含む酸性溶液に接触させ、接触終了後1〜120秒放置した後、水洗を行うことにより、亜鉛めっき鋼板表面に10nm以上のZn系酸化物層を形成するのである。酸性溶液にはZnを含有させても良い。酸性溶液中のZr、Zn濃度は、皮膜中の含有量が本発明で規定する範囲内にはいるように調整すればよいが、その一例を下記に示す。
酸性溶液中にZrイオンを含有させるためには、酸性溶液にZrの硫酸塩、硝酸塩、塩化物、リン酸塩のうち、少なくとも1種類以上をZrイオン濃度として0.1〜50g/lの範囲で含有することが好ましい。イオン濃度が0.1g/l未満では、Zrの含有が不十分であり摺動性向上効果が不十分な場合がある。一方、100g/lを超えると、酸化物の形成が不安定になる。
使用する酸性溶液は、pH2.0〜5.0の領域においてpH緩衝作用を有するものが好ましい。これは、pH2.0〜5.0の領域でpH緩衝作用を有する酸性溶液を使用すると、酸性溶液に接触後、所定時間保持することで、酸性溶液とめっき層の反応によるZnの溶解とZn系酸化物の形成反応が十分に生じ、鋼板表面に酸化物層を安定して得ることができるためである。Zrはこの間にZn系酸化物に効果的に取り込まれると考えられる。このようなpH緩衝性を有する酸性溶液としては、酢酸ナトリウム(CH3COONa)などの酢酸塩やフタル酸水素カリウム((KOOC)2C6H4)などのフタル酸塩、クエン酸ナトリウム(Na3C6H5O7)やクエン酸二水素カリウム(KH2C6H5O7)などのクエン酸塩、コハク酸ナトリウム(Na2C4H4O4)などのコハク酸塩、乳酸ナトリウム(NaCH3CHOHCO2)などの乳酸塩、酒石酸ナトリウム(Na2C4H4O6)などの酒石酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩等が挙げられ、これらのうち少なくとも1種類以上を、前記各成分含有量を5〜50g/lの範囲で含有する水溶液を使用することが好ましい。前記濃度が5g/l未満では、亜鉛の溶解とともに溶液のpH上昇が比較的すばやく生じるため、摺動性の向上に十分な酸化物層を形成することができない。一方、50g/lを超えると、亜鉛の溶解が促進され、酸化物層の形成に長時間を有するだけでなく、めっき層の損傷も激しく、本来の防錆鋼板としての役割も失うことが考えられるためである。
酸性溶液のpHは0.5〜2.0の範囲にあることが望ましい。これはpHが2.0を超えると、溶液中でZrイオンの沈殿(水酸化物の形成)が生じ、酸化物層中にZr系酸化物が効果的に取り込まれなくなるためである。一方、pHが低すぎると、亜鉛の溶解が促進され、めっき付着量の減少だけでなく、めっき皮膜に亀裂が生じ加工時に剥離が生じやすくなるため、pH0.5以上であることが望ましい。なお、酸性溶液のpHが0.5〜2.0の範囲より高い場合は硫酸等のpH緩衝性のない無機酸でpH調製することができる。
酸性溶液の温度は、20〜70℃の範囲であることが好ましい。20℃未満では、酸化物層の生成反応に長時間を有し、生産性の低下を招く場合がある。一方、温度が高い場合には、反応は比較的すばやく進行するが、逆に鋼板表面に処理ムラを発生しやすくなるため、70℃以下の温度に制御することが望ましい。
合金化溶融亜鉛めっき鋼板を酸性溶液に接触させる方法には特に制限はないが、例えば、めっき鋼板を酸性溶液に浸漬する方法、めっき鋼板に酸性溶液をスプレーする方法、塗布ロールを介して酸性溶液をめっき鋼板に塗布する方法等があり、最終的に薄い液膜状で鋼板表面に存在することが望ましい。これは、鋼板表面に存在する酸性溶液の量が多いと、亜鉛の溶解が生じても溶液のpHが上昇せず、次々と亜鉛の溶解が生じるのみであり、酸化物層を形成するまでに長時間を有するだけでなく、めっき層の損傷も激しく、本来の防錆鋼板としての役割も失うことが考えられるためである。この観点から、鋼板表面に形成する溶液膜量は、10g/m2以下に調製することが好ましく有効である。なお、溶液膜量の調整は、絞りロール、エアワイピング等で行うことができる。
また、酸性溶液に接触後、水洗までの時間(水洗までの保持時間)は、1〜120秒間が好ましい。これは水洗までの時間が1秒未満であると、溶液のpHが上昇しZr系酸化物層およびZn系酸化物層が形成される前に、酸性溶液が洗い流されるために、摺動性の向上効果が得られず、また120秒を超えても、酸化物層の量に変化が見られないためである。
また、これらの製品を製造するにあたっては、溶融金属と素地鋼板との界面に硬くて脆い合金層が成長するのを抑制しめっき密着性を向上させるために、主成分(ZnやAl等)である溶融金属中に主成分以外の成分(例えば主成分Znに対するAl等)が少量添加されることが多い。
また本発明に係る合金化溶融亜鉛めっき鋼板への添加元素成分は特に限定されるものではなく、通常添加されるAl以外にも、例えば、Fe、Pb、Sb、Si、Sn、Mg、Mn、Ni、Ti、Li、Cuなどが含有または添加されていても、本発明の効果が損なわれるものではない。
さらに、酸化処理などに使用する処理液中に不純物が含まれることによりS、N、Pb、Cl、Na、Mn、Ca、Mg、Ba、Sr、Si、Pなどが酸化物層中に取り込まれても、本発明の効果が損なわれるものではない。
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明する。
板厚0.8mmの冷延鋼板上に、常法の合金化溶融亜鉛めっき皮膜を形成し、更に調質圧延を行い、めっき相表面に平坦部を形成した。引き続き、酸化物形成処理として、酢酸ナトリウム40g/lの酸性水溶液に表1に示す濃度にてZrを添加した酸性溶液に3秒浸漬した。なお、温度は表1に示す通り、適宜変えて行った。その後、ロール絞りを行い、液量を調整した後、1〜30秒間大気中、室温にて放置し、十分水洗を行った後、乾燥を実施した。比較材として、Zrを添加しないで上記と同様の処理を行った材料を作製した。なお、Zrイオン源としてZr(SO4)2・4H2Oを用いた。
以上のように作製した鋼板について、めっき表層の平坦部における酸化物層の厚さおよびZrの含有量を測定するとともに、酸化物層の密着性と、プレス成形性を簡易的に評価する手法として摩擦係数の測定を行った。なお、測定方法は以下の通りである。
(1) 酸化物層厚さの測定
オージェ電子分光(AES)によりめっき表層の平坦部について、Arイオンスパッタリングを用いて、構成元素の深さ方向分析を行い、深さ方向の各元素の組成分布を測定した。その組成分布において、O濃度が、最大値より深い位置で、最大値と一定値との和の1/2となる深さを酸化物層の厚さとした。そして、平坦部の2箇所について酸化物層の厚さを測定し、平均値を酸化物層の厚さとした。
(2) 酸化物層のZr含有量の測定
平坦部における酸化物層中のZr含有量の評価は、レプリカ法を用いた。酸化物層が存在する合金化溶融亜鉛めっき鋼板の表面に、アセチルセルロースフィルムを、アセトンを介して試料表面に30秒間圧着し、剥離した。剥離面にカーボンを蒸着したのちアセチルセルロースを溶解して透過電子顕微鏡(TEM)用の試料とした。TEM(フィリップス社製 CM30)を用い加速電圧200kVで、平坦部の酸化物層から採取した酸化物層の薄片について、エネルギー分散型X線分光器(EDS)を用いてスタンダードレス定量(薄膜近似法)を行い、得られた結果からZrとZnの原子比を計算した。測定は、1試料あたり5ヶ所以上について実施し平均した。
(3) 酸化物層の密着性の評価
酸化物層が存在する合金化溶融亜鉛めっき鋼板の表面に、アセチルセルロースフィルムを、アセトンを介して試料表面に30秒間圧着し、剥離する試験を行った。SEM(LEO1530)を用い、加速電圧0.5kVで上記試料表面を走査し、画像をデジタルデータで取り込んだ。画像の取り込みは、剥離試験前後で同一視野について同一条件にて行った。ここでは、表面酸化物の分布を可視化できる条件でSEM画像の取り込みを実施した(酸化物層が存在する領域が暗いコントラストで示される(特開2005-121467号参照)。それぞれの画像データから、平坦部の明るさの平均を数値化した。それぞれの画像データを酸化物が存在する領域としない領域(自然酸化膜厚程度は存在すると考えられる)を明るさで二値化した。その後、酸化物が存在する面積を求め、剥離試験前後のその面積の減少率を密着性の指標とした。すなわち、剥離試験により剥離された皮膜面積率が求まり値が小さいほど密着性が高くなる。ここでSEMの観察倍率は2000倍で、1試料あたり異なる5視野を測定して平均を求めた。なお明るさの数値化は、市販のソフトウエアPhotoshop(Adobe製)を用いて256階調で数値化した。
(4) 摺動性評価試験(摩擦係数測定試験)
プレス成形性を評価するために、各供試材の摩擦係数を以下のようにして測定した。
図1は、摩擦係数測定装置を示す概略正面図である。同図に示すように、供試材から採取した摩擦係数測定用試料1が試料台2に固定され、試料台2は、水平移動可能なスライドテーブル3の上面に固定されている。スライドテーブル3の下面には、これに接したローラ4を有する上下動可能なスライドテーブル支持台5が設けられ、これを押し上げることにより、ビード6による摩擦係数測定用試料1への押し付け荷重Nを測定するための第1ロードセル7が、スライドテーブル支持台5に取り付けられている。上記押し付け力を作用させた状態でスライドテーブル3を水平方向へ移動させるための摺動抵抗力Fを測定するために第2ロードセル8が、スライドテーブル3の一方の端部に取り付けられている。なお、潤滑油としてスギムラ化学社製のプレス用洗浄油プレトンR352Lを摩擦係数測定用試料1の表面に塗布して試験を行った。
図2は使用したビードの形状・寸法を示す概略斜視図である。ビード6の下面が摩擦係数測定用試料1の表面に押し付けられた状態で摺動する。図2に示すビード6の形状は幅10mm、試料の摺動方向長さ12mm、摺動方向両端の下部は曲率4.5mmRの曲面で構成され、試料が押し付けられるビード下面は幅10mm、摺動方向長さ3mmの平面を有する。
摩擦係数の測定に対しては、成形荷重が高く型かじりが生じやすい高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板での過酷なプレス環境を想定して、室温(25℃)において、押し付け荷重Nを400kgfおよび1500kgfに変化させて行った。なお試料の引抜き速度(スライドテーブル3の水平移動速度)は100cm/min。これらの条件で、押し付け荷重Nと引抜き荷重Fを測定し、供試材とビードとの間の摩擦係数μは、式:μ=F/Nで算出した。
以上より得られた試験結果を表1に示す。なお、表1において条件1は、押付荷重400kgf、試料温度25℃(室温)を、条件2は押付荷重1500kgf、試料温度25℃(室温)をそれぞれ指す。
Figure 0005045231
表1に示す試験結果から下記事項が明らかとなった。
No.1、2は、酸性溶液での処理を行っているものの酸化物層がZrを含有していない比較例である。酸性溶液処理を行わない比較例の摩擦係数に比べると、めっき相表面の平坦部にはZnを主体とする酸化物層が形成されているため、低くなっているが、本発明例に比べると高い。また、酸化物層の密着性試験では平均して面積率50%強で剥離が生じている。
No.3〜12は、Zrを含む酸化物層を平坦部に付与した本発明例である。面積減少率は20%弱と比較例より低く、密着性は良好である。
また、本発明例の摩擦係数は比較例よりも低くなっている。特に、面圧の高い条件2において摩擦係数が低位で安定している。
酸化物層の密着性は、Zrの含有量が高いほど良好であることがわかる。摩擦係数は酸化物層厚に関連しており、層が厚いほど摩擦係数は小さくなる傾向がある。そして、酸化物層厚が同程度でZrを含む本発明例とZrを含まない比較例で比べると、本発明例の方が明らかに、密着性が高く、摩擦係数が低い。この特性発現は、酸化物層にZrを含むことによる効果である。
No.13の比較例3は、酸化処理を行っていないものである。摩擦係数は条件1、2とも本発明例よりも高い。
摺動性に優れることから、優れたプレス成形性を有しており、自動車車体用途を中心に広範な分野で適用できる。
摩擦係数測定装置を示す概略正面図 図1中のビード形状・寸法を示す概略斜視図
符号の説明
1 摩擦係数測定用試料
2 試料台
3 スライドテーブル
4 ローラ
5 スライドテーブル支持台
6 ビード
7 第一ロードセル
8 第二ロードセル
N 押付荷重
F 摺動抵抗力

Claims (1)

  1. Fe-Zn合金めっき相を少なくとも鋼板の片面に有し、かつ、該Fe-Zn合金めっき相の表面には平坦部を有し、さらに、該平坦部表面には、ZrをZr/Znの原子比で0.01〜0.4含み、Znを必須成分とする酸化物が、平均厚さ10nm以上200nm以下で形成されていることを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
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