JPH1148709A - 空気入りタイヤ - Google Patents

空気入りタイヤ

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JPH1148709A
JPH1148709A JP9209165A JP20916597A JPH1148709A JP H1148709 A JPH1148709 A JP H1148709A JP 9209165 A JP9209165 A JP 9209165A JP 20916597 A JP20916597 A JP 20916597A JP H1148709 A JPH1148709 A JP H1148709A
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裕二 山口
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 他性能を低下させること無くウエット性能、
氷上性能及び偏摩耗性を向上できる空気入りタイヤを提
供すること。 【解決手段】 ゴム層20と繊維層22とをタイヤ幅方
向に交互に積層してトレッド12のキャップ部12Aを
構成し、繊維層22とゴム層20との間には剥離性を向
上するための発泡ゴム層23を配置する。走行入力によ
って繊維層22が剥離し、トレッド12の表面に細溝2
4が多数出現する。細溝24は、接地面内の水を排水す
る排水路の役目をするのでウエット性能や氷上性能等が
向上する。また、繊維層22は、発泡ゴム層23の存在
によってゴム層20から容易に剥離でき、トレッド12
全体に均一に細溝24を形成することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は空気入りタイヤに係
り、ウエット性能、氷上性能及び偏摩耗性等を向上させ
ることのできる空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】ウエット性能や氷上性能及び、偏摩耗性
等の性能を向上させるため、タイヤの陸部(ブロック
等)には幅の狭い(例としては、2mm以下のような)い
わゆるサイプと呼ばれる細溝が適用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記サイプは、加硫金
型に植え付けられたブレードと呼ばれる金属板により、
タイヤの加硫成型時にトレッド部に形成される。
【0004】上記性能を向上するために細溝の間隔を狭
くしたり、密度を多くすることが考えられる。
【0005】しかし、従来技術では、金型に植え付けら
れたブレードの植え込み間隔を狭くする、またはブレー
ドの植え込み密度を多くすると、ブロック剛性低下を来
たし、タイヤがモールドから抜け出る際にブロックの一
部又は全てが脱落してしまう問題(ブロック欠け)があ
り、ブレードの間隔を狭めたり、密度を多くするにも自
ずと制限があった。
【0006】一方、上記性能の向上から、トレッド部の
細溝数の増加が要望される場合もあるが、上記のような
問題点から、その要求は達成できなかった。
【0007】また、従来タイヤは、上記性能を摩耗末期
まで維持する為に、サイプ深さを主溝深さ近くまで設定
する必要があった。
【0008】そのため、多数のサイプを配置すると、摩
耗末期対比摩耗初期においてはブロック剛性が低いため
操縦安定性が悪いことや、新品時のブロック剛性と摩耗
末期のブロック剛性が大きく変わり、ドライブフィール
が著しく変化することにより運転者への負担も少なくな
かった。
【0009】また、細溝を形成するために従来よりブレ
ードが用いられていたが、ブレードは、加工の問題及び
曲がりや損傷の抑制のため、例えばトラックバス用のタ
イヤで0.6mm、乗用車用のタイヤで0.4mm以上の厚
さに設定されている。しかし、操縦安定性確保や偏摩耗
性を低下させないためにブロック剛性を高いレベルで維
持したい場合や、接地面積をなるべく低下させないため
に、細溝幅をなるべく小さくすることが望まれていた。
【0010】本発明は上記事実を考慮し、他性能を低下
させること無くウエット性能、氷上性能、偏摩耗性等を
向上できる空気入りタイヤを提供することが目的であ
る。
【0011】
【課題を解決するための手段】発明者らは、ブレードに
よって細溝を形成する従来方法の問題を解消するため
に、ゴム層と、ゴム層よりも強度の低い低強度層(例え
ば、繊維層等)とを交互に積層したトレッドを用い、走
行入力によって低強度層をゴム層から剥離させ(及び低
強度層自身を破壊させ)、ゴム層とゴム層との間に細溝
を形成する方法を考え、タイヤを試作して実験を重ね
た。
【0012】その結果、走行入力によって低強度層のゴ
ム層からの剥離(及び低強度層自身の破壊)が生じ、ゴ
ム層とゴム層との間に細溝が形成されることが確認され
た。
【0013】また、細溝を早期に形成するためには、走
行入力で細溝形成層内(ゴム層とゴム層との間の部分)
で剥離のきっかけをつくるいわゆる核の存在が有効にな
ることを究明した。
【0014】請求項1に記載の発明は上記事実を鑑みて
なされたものであって、一対のビードコア間にトロイド
状をなして跨がるカーカスのクラウン部外周に補強層と
トレッドを順次配置した空気入りタイヤであって、前記
トレッドの少なくとも接地部分の一部は、ゴム層と、前
記ゴム層よりも強度の低い低強度層と、が隣り合うよう
に積層され、かつ、前記低強度層の少なくとも片面に
は、前記ゴム層との剥離性を向上させる剥離層が設けら
れていることを特徴としている。
【0015】次に、請求項1に記載の空気入りタイヤの
作用を説明する。空気入りタイヤが路面上を回転する
と、走行入力によってトレッドのゴムが繰り返し変形す
る。繰り返し変形がトレッドに作用すると、ゴム層との
剥離性を向上させる剥離層が核となって低強度層とゴム
層とが剥離する。なお、この剥離層は、低強度層の両面
に設けられていても良い。
【0016】低強度層とゴム層との剥離は、トレッドの
変形量の大きい部位から生じ始める。トレッドは、一般
的に路面と接する踏面側の変形が大きく、タイヤ内側
(カーカス側)の変形が小さいので、低強度層とゴム層
との剥離は踏面側から生じ、細溝は踏面側から形成され
る。
【0017】ここで、剥離の形態を詳細に説明すると、
剥離層内部で剥離する、剥離層と低強度層との境界
面で剥離する、剥離層とゴム層との境界面で剥離す
る、の3つ形態があるが、何れか1つ有れば良い。
【0018】このように低強度層がゴム層から剥離し、
走行入力により低強度層自身が破壊、離脱することによ
ってゴム層とゴム層との間に細溝が形成される。
【0019】本発明では、ゴム層と低強度層との間に剥
離層を設けたので、ゴム層と低強度層とを容易に剥離で
き、早期に、また、トレッドやブロックの何れの場所に
も均一に細溝を形成することができる。
【0020】また、ゴム層と低強度層との間に剥離層を
設けたので、剥離層によって剥離性(接着性の反対の性
質)をコントロールすることができ、これによって細溝
深さをコントロールすることもできる。
【0021】低強度層の低強度とは、曲げ、引張、圧
縮、剪断等の少なくとも一つの強度が低いことをいう。
【0022】形成された細溝は接地面内の水を排水する
排水路の役目をするので、ウエット性能及び氷上性能が
向上する。
【0023】本発明では、ブレードを用いずに低強度層
(及び剥離層)の厚みを設定するのみで細溝を所望の幅
に設定することができる。即ち、ブレードよりも薄い低
強度層を用いることにより、タイヤ製造上に問題を生じ
させずに従来よりも幅狭の細溝を簡単に形成することが
でき、接地面積の低下を抑えることができる。
【0024】ここで、従来では、ブロック等の陸部に複
数のサイプ(摩耗末期まで消滅しないように溝深さは深
い)を形成すると、ブロック内の剛性に偏りが生じてブ
ロック内の接地圧が不均一になり、これによって偏摩耗
を発生する問題や、サイプで分割された小ブロックが接
地時に倒れ込むことにより各小ブロックに偏摩耗を発生
する問題等があった。一方、本発明では、比較的浅めの
細溝を形成でき、タイヤ径方向内側では低強度層が剥離
(又は破壊)しない状態にできるので、ブロック内の剛
性に偏りが生じるのを抑えることができ、また、細溝と
細溝との間の小ブロックの倒れ込みを抑えることができ
るので、上記各偏摩耗の発生を抑えることができる。
【0025】なお、ゴム層と低強度層とが互いに積層さ
れた部分がトレッドの少なくとも接地部分の一部にあれ
ば良く、必ずしもトレッド全体に無くても良い。例え
ば、トレッドがキャップ・ベース構造である場合には、
キャップ部のみをこのような積層構造とすれば良い。
【0026】トレッドは、ブロックパターン、リブパタ
ーン、ラグパターン等の何れのパターンであっても良
く、パターン無し(溝無し)であっても良い。
【0027】請求項2に記載の発明は、請求項1に記載
の空気入りタイヤにおいて、前記剥離層が発泡ゴムであ
ることを特徴としている。
【0028】発泡ゴムは、無数の気泡(空洞)を有して
いるため、発泡ゴムのゴム部分と繊維層との接触面積は
小さいため、繊維層は、発泡ゴムとの境界面から剥離し
易くなる。
【0029】なお、請求項2に記載の発明においては、
剥離のきっかけとなる核は、発泡ゴムの気泡と繊維層の
接着していない個所のことをいう。
【0030】また、請求項2に記載の発明においては、
発泡ゴムの発泡率を変更することにより、剥離性を変更
することができる。
【0031】請求項3に記載の空気入りタイヤは、請求
項1または請求項2に記載の空気入りタイヤにおいて、
前記低強度層が10mm当たり3層以上積層されているこ
とを特徴としている。
【0032】次に、請求項3に記載の空気入りタイヤの
作用を説明する。低強度層の積層数を10mm当たり3層
以上とすることにより、細溝による排水性能を十分に発
揮することができるようになる。
【0033】低強度層の積層数が10mm当たり3層未満
になると形成される細溝の数が少なく、排水性の向上が
余り望めない。
【0034】請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請
求項3の何れか1項に記載の空気入りタイヤにおいて、
前記ゴム層と前記低強度層とは、タイヤ幅方向に積層さ
れていることを特徴としている。
【0035】次に、請求項4に記載の空気入りタイヤの
作用を説明する。請求項4に記載の空気入りタイヤで
は、ゴム層と低強度層とがタイヤ幅方向に積層されてい
るので、形成される細溝の方向はタイヤ周方向となる。
接地面内の水がタイヤ周方向に排出されるので、特に氷
上ブレーキ性能が向上する。
【0036】請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請
求項3の何れか1項に記載の空気入りタイヤにおいて、
前記ゴム層と前記低強度層とは、タイヤ周方向に積層さ
れていることを特徴としている。
【0037】請求項5に記載の空気入りタイヤの作用を
説明する。請求項5に記載の空気入りタイヤでは、ゴム
層と溶解層とがタイヤ周方向に積層されているので、形
成される細溝の方向はタイヤ幅方向となり、特に氷上ト
ラクション性能が向上する。
【0038】請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請
求項5の何れか1項に記載の空気入りタイヤにおいて、
前記低強度層が繊維層であることを特徴としている。
【0039】次に、請求項6に記載の空気入りタイヤの
作用を説明する。請求項6に記載の空気入りタイヤで
は、走行入力により繊維層が剥離したり、繊維同士が離
れて繊維層に破壊が起こり、細溝が形成される。
【0040】繊維層は、同じ厚さでも、繊維の径、密
度、布のような場合には織り方等によってゴムとの剥離
性や自身の強度をコントロールすることができる。剥離
性や自身の強度をコントロールすることによって、形成
される細溝の溝深さをコントロールすることができ、例
えば剥離性を大としたり、自身の強度を低下させること
により溝深さを深くすることができる。
【0041】なお、繊維層は、走行入力によりゴム層と
剥離しても良いので、繊維層に接着を高めるディップ処
理等の接着処理は必ずしも必要ではない。但し、ブロッ
ク剛性の低下を最小限に抑える市場要望がある場合に
は、繊維層に接着処理を行い、剥離層と繊維層との間の
剥離性をコントロールし、走行時に接地している部分近
傍にのみ細溝を形成するようにして、細溝トレッドの深
さ方向の進展を抑えることが可能である。具体的には、
市場での走行時のタイヤへの入力と繊維層と剥離層との
接着の強さを考慮に入れて、適宜接着強さを設定するこ
とにより達成が可能となる。
【0042】請求項7に記載の発明は、請求項6に記載
の空気入りタイヤにおいて、前記繊維層が不織布からな
ることを特徴としている。
【0043】不織布は、例えば、緯糸と経糸とからなる
織物と比較して薄く形成することができ、これによって
幅狭の細溝を形成することが可能となる。さらに、不織
布は、製造方法によって繊維の方向を一方向に揃えた
り、ランダムにすることができ、これによってゴムとの
剥離性や自身の強度をコントロールすることができる。
【0044】不織布の製法としては、カーディング法、
抄紙法、エアレイ法、メルトブロー、スパンボンド法な
どがあり、これらの製法によってウェブを作製する。メ
ルトブロー、スパンボンド法以外のウェブでの繊維の結
合方法として、熱融着、バインダによる方法、水流また
は針の力で繊維を交絡させる水流絡合法、ニードルパン
チ法を好適に利用することができる。とりわけ、水流ま
たは針で繊維を交絡させる水流絡合法、ニードルパンチ
法およびメルトブロー、スパンボンド法により得られた
不織布が好適である。
【0045】剥離性や自身の強度をコントロールするこ
とによって、形成される細溝の溝深さをコントロールす
ることができ、例えば剥離性を大としたり、自身の強度
を低下させることにより溝深さを深くすることができ
る。
【0046】
【発明の実施の形態】本発明の一実施形態に係る空気入
りタイヤ10を図1乃至図3にしたがって説明する。
【0047】本実施形態の空気入りタイヤは、一対のビ
ードコア間にトロイド状をなして跨がるカーカスのクラ
ウン部外周に補強層としてのベルトとトレッドとを順次
配置したラジアル構造の空気入りタイヤである。なお、
トレッド以外の内部構造は、一般のラジアルタイヤの構
造と変わりないので説明は省略する。
【0048】図1に示すように、本実施形態の空気入り
タイヤ10のトレッド12には、複数本の周方向溝14
及びこの周方向溝14と交差する複数本の横溝16とに
よって複数のブロック18が形成されている。
【0049】トレッド12は、直接路面に接地する上層
のキャップ部12Aと、このキャップ部12Aのタイヤ
内方に隣接して配置される下層のベース部12Bとから
構成されており、いわゆるキャップ・ベース構造とされ
ている。
【0050】図2に示すように、キャップ部12Aは、
通常の発泡していないゴムからなるゴム層20と繊維層
22とがタイヤ幅方向(矢印W方向)に交互に配置さ
れ、繊維層22とゴム層20との間に剥離層としての発
泡ゴム層23が配置された構造である。
【0051】本実施形態では、繊維層22に不織布が用
いられている。不織布は、引張、圧縮、剪断等に対して
異方性が小さいことが好ましい。
【0052】不織布を構成するフィラメント繊維の材質
としては、綿、レーヨン、セルロースなどの天然高分子
繊維、脂肪族ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルア
ルコール、ポリイミド、芳香族ポリアミドなどの合成高
分子繊維、及びカーボン繊維、ガラス繊維、スチールワ
イヤのうちから選択した一種又は複数種の繊維を混合す
ることが出来るが他の材質の繊維であっても良い。
【0053】不織布に適用する繊維の直径又は最大径
は、0.1〜100μmの範囲が好ましく、断面形状は
円状のもの、又は円と異なる断面形状のもの、中空部を
有するものを用いることが出来る。さらに、異なる材質
を内層と外層に配置した芯鞘構造、或いは米字形、花弁
形、層状形等の複合繊維も用いることができる。
【0054】また、不織布に使用する繊維の長さは、8
mm以上が好ましい。不織布の厚さは0.05〜2.0mm
の範囲が好ましく、(不織布の厚さは20g/cm2
加圧下で測定した)、目付(1m2 当たりの重量)は、
10〜300gの範囲にあるのが好ましい。
【0055】また、繊維自身は、内層、外層を異なる素
材とする2層構造の繊維も不織布の材料として使用する
ことができる。
【0056】本実施形態の繊維層22は、ポリエステル
(PET)繊維からなる不織布であり、目付40g/m
2 、厚さ0.2mm、繊維径25μm、繊維長さ50mmで
ある。
【0057】発泡ゴム層23の発泡ゴムは、高い剥離性
を得るために発泡率を20%以上とすることが好まし
い。なお、発泡率Vsは、Vs=(ρ0 /ρ1 −1)×
100(%)で表され、ρ1 は発泡ゴムの密度(g/c
3 )、ρ0 は発泡ゴムの固相部の密度(g/cm3
である。
【0058】発泡率Vsが20%未満では、剥離性の向
上が余り望めない。 (作用)次に本実施形態の作用を説明する。
【0059】空気入りタイヤ10が路面上を回転する
と、路面から入力によってブロック18が繰り返し変形
する。ブロック18が繰り返し変形すると、繊維層23
が発泡ゴム層23との境界面で変形の大きい接地面側か
ら剥離し(さらに、剥離した部分から一部の繊維が脱落
する)、図3に示すようにゴム層20とゴム層20との
間に細溝24が形成される。
【0060】本実施形態では、ゴム層20と繊維層22
との間に、繊維層22を容易に剥離させるための発泡ゴ
ム層23が設けられているので、比較的小さな入力で繊
維層22を剥離でき、舗装路等の比較的凹凸の少ない道
路の走行でもトレッド12全体に均一に細溝24を形成
することができる。
【0061】なお、剥離層として発泡ゴム層23を用い
た場合、発泡ゴムの発泡率を変更することで剥離性を変
更することができる。
【0062】これらの細溝24はタイヤ周方向に沿って
延びており、接地面内の水をタイヤ周方向へ排水するの
で、ウエット性能及び氷上ブレーキ性能が向上する。
【0063】なお、繊維層22は少なくとも無数の繊維
によって層状となっており、走行入力によって細溝24
が形成されるものであればその形態は問わない。
【0064】上記実施形態では、繊維層22に非水溶性
のポリエステル繊維からなる不織布を用いたが、水溶性
繊維からなる不織布を用いても良い。
【0065】水溶性繊維としては、ビニルアルコールユ
ニットが50モル%以上、平均重合度が100〜300
0のケン化度80%未満のポリビニルアルコール系ポリ
マーを原料とし、紡出後の繊維に対してホルマール化・
アセタール化等の耐水性を付与する処理を行っていない
繊維を用いることができる。
【0066】ビニルアルコールユニット及び酢酸ビニル
ユニット以外のユニットとしては、エチレン、アリルア
ルコール、イタコン酸、アクリル酸、無水マレイン酸等
のポリビニルアルコールの結晶性を阻害するユニットが
好ましい。
【0067】次に、水溶性繊維の製造方法を簡単に説明
する。先ず、ビニルアルコールユニットが75モル%、
酢酸ビニルユニットが25モル%からなる平均重合度が
500のケン化度75モル%のポリビニルアルコール系
ポリマーとジメチルスルフォキド(DMSO)を混合
し、窒素置換後減圧下にて十分に脱泡を行い、45%の
ジメチルスルフォキド(DMSO)溶液を作製する。
【0068】次に、この紡糸原液を孔径φ0.15mmの
単孔ノズルより、2°Cのアセトン/DMSO(重量
比:85/15)の混合溶液に湿式紡糸する。
【0069】その後、アセトン/DMSO(重量比:9
5/5)の混合溶液中で4.5倍の延伸を行った後、ア
セトン中で十分にDMSOを除去し、80°Cで乾燥を
行うことでポリビニルアルコール系繊維が得られる。な
お、このポリビニルアルコール系繊維は、10°Cの水
で溶解するものである。
【0070】水溶性繊維からなる不織布を繊維層22に
用いた場合、路面の水によって繊維が溶けるので、ウエ
ット路面や氷路面を走行したときに細溝24の溝深さが
より深くなって排水性が向上し、ウエット性能及び氷上
ブレーキ性能が更に向上する。
【0071】また、路面の水によって水溶性繊維がすぐ
に溶けて細溝24を形成するので繊維層22が剥離する
前でも高いウエット性能及び氷上ブレーキ性能が得られ
る。
【0072】なお、上記実施形態では、繊維層22がタ
イヤ周方向に沿って真っ直ぐに延びていたが、波状やジ
グザグ状に延びていても良く、タイヤ周方向に対して傾
斜して延びていても良く、タイヤ幅方向に延びていても
良い。
【0073】また、キャップ部12Aをタイヤ径方向に
複数層とし、上層側と下層側とで繊維層22の積層数を
変えても良い。一般的に、摩耗中期〜摩耗末期にかけて
ウエット性能等が除々に低下するが、下層側の積層数を
大きくすることで、摩耗中期〜摩耗末期に細溝24によ
る排水作用を増大させ、ウエット性能等の低下を抑える
ことも可能である。
【0074】また、細溝24を形成するには、ゴム層2
0とゴム層20との間に、ゴム層20のゴムよりも強度
の低い材質からなる低強度層が設けられていれば良く、
低強度層は繊維層22以外であっても良い。
【0075】繊維層22以外の低強度層の具体例として
は、紙(ボール紙等も含む)、前記水溶性繊維の材質を
フィルム状に形成したもの、オブラート、短繊維を積層
したもの等を上げることができるが、これら以外であっ
ても良い。
【0076】また、前記実施形態では、繊維層22とゴ
ム層20とがタイヤ幅方向に積層されていたが、繊維層
22とゴム層20とはタイヤ周方向に積層しても良い。
繊維層22とゴム層20とをタイヤ周方向に積層する
と、タイヤ幅方向に沿って延びる細溝24が形成され、
細溝24のエッジ効果により、特に氷上トラクション性
能が向上する。 (試験例)本発明の適用された実施例のタイヤ5種、比
較例のタイヤ2種を用い、ウエット性能、氷上ブレーキ
性能及び偏摩耗性の比較を行った。
【0077】氷上ブレーキ性能の試験方法:試験タイヤ
を実車に装着して氷上テストコースを走行させ、時速2
0km/hの時点でブレーキを踏んでタイヤをロックさせ、
停止するまでの制動距離を測定した。結果は、制動距離
の逆数を比較例1のタイヤを100として指数表示し
た。なお、数値が大きいほど氷上ブレーキ性能が良いこ
とを示す。
【0078】ウエット性能の試験方法:試験タイヤを実
車に装着してウエット路面(テストコース)を走行さ
せ、テストドライバーによるフィーリング評価を行っ
た。結果は、比較例1のタイヤを100として指数表示
した。なお、数値が大きいほどウエットフィーリングが
良いことを示す。
【0079】偏摩耗の試験方法:テストタイヤを実車に
装着して2万km走行させ、ブロックの段差量を測定し、
その逆数を比較例1のタイヤを100として指数表示し
た。なお、数値が大きいほど偏摩耗性が良いことを示
す。
【0080】次に供試タイヤの説明をする。各供試タイ
ヤ共に、タイヤ周方向長さ30mm、タイヤ幅方向長さ3
0mm、高さ20mmのブロックを多数有したブロックパタ
ーンのタイヤであり(図1参照)、タイヤサイズはTB
R11R22.5である。
【0081】比較例1及び比較例2のタイヤは、従来通
りブレードを用いてブロックにサイプを形成したタイヤ
である。
【0082】実施例1乃至実施例3は、繊維層にポリエ
ステル繊維からなる不織布を用い、剥離層に発泡ゴムを
用いたタイヤであり、実施例4は繊維層にポリエチレン
繊維からなる不織布を用い、剥離層に発泡ゴムを用いた
タイヤであり、実施例5は繊維層に水溶性繊維(PV
A:ポリビニルアルコール系繊維)からなる不織布を用
い、剥離層に発泡ゴムを用いたタイヤである。なお、実
施例1乃至実施例5のタイヤは、何れも繊維層の両側に
剥離層が設けられている。
【0083】その他の諸元(寸法等)及び試験結果は以
下の表1及び表2に示す通りである。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】ここで、比較例2のタイヤは、モールドに
ブロックが密着して脱落するため、所望のサイプ間隔の
タイヤが製造出来なかった。
【0087】試験の結果、表1及び2に示すように、実
施例1〜5のタイヤはウエット性能、氷上ブレーキ性能
及び偏摩耗性能が比較例1のタイヤに比較して向上して
いることが分かる。
【0088】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1に記載の
空気入りタイヤは上記の構成としたので、他性能を低下
させること無くウエット性能、氷上性能及び偏摩耗性を
向上できる、という優れた効果を有する。
【0089】さらに、ゴム層と低強度層との間に剥離層
が設けられているので、ゴム層と低強度層とを容易に剥
離でき、早期に、また、トレッドやブロックの何れの場
所にも均一に細溝を形成することができる、という優れ
た効果を有する。
【0090】請求項2に記載の空気入りタイヤは上記の
構成としたので、発泡ゴムの発泡率を変更することによ
り剥離性を変更できる、という優れた効果を有する。
【0091】請求項3に記載の空気入りタイヤは上記の
構成としたので、十分な排水性が得られる、という優れ
た効果を有する。
【0092】請求項4に記載の空気入りタイヤは上記の
構成としたので、特に氷上ブレーキ性能を向上できる、
という優れた効果を有する。
【0093】請求項5に記載の空気入りタイヤは上記の
構成としたので、特に氷上トラクション性能を向上でき
る、という優れた効果を有する。
【0094】請求項6に記載の空気入りタイヤは上記の
構成としたので、低強度層の強度をコントロールするこ
とができる、という優れた効果を有する。また、細溝深
さをコントロールすることもできる。
【0095】請求項7に記載の空気入りタイヤは上記の
構成としたので、従来よりも幅狭の細溝を形成すること
ができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る空気入りタイヤ
のトレッドのタイヤ幅方向に沿った断面図である。
【図2】ブロック(新品時)の拡大断面図である。
【図3】走行後のブロックの拡大断面図である。
【符号の説明】
10 空気入りタイヤ 20 ゴム層 22 繊維層(低強度層、溶解層) 23 発泡ゴム層(剥離層)

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一対のビードコア間にトロイド状をなし
    て跨がるカーカスのクラウン部外周に補強層とトレッド
    を順次配置した空気入りタイヤであって、 前記トレッドの少なくとも接地部分の一部は、ゴム層
    と、前記ゴム層よりも強度の低い低強度層と、が隣り合
    うように積層され、かつ、前記低強度層の少なくとも片
    面には、前記ゴム層との剥離性を向上させる剥離層が設
    けられていることを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 【請求項2】 前記剥離層が発泡ゴムであることを特徴
    とした請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 【請求項3】 前記低強度層が10mm当たり3層以上積
    層されていることを特徴とする請求項1または請求項2
    に記載の空気入りタイヤ。
  4. 【請求項4】 前記ゴム層と前記低強度層とは、タイヤ
    幅方向に積層されていることを特徴とする請求項1乃至
    請求項3の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
  5. 【請求項5】 前記ゴム層と前記低強度層とは、タイヤ
    周方向に積層されていることを特徴とする請求項1乃至
    請求項3の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
  6. 【請求項6】 前記低強度層が繊維層であることを特徴
    とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の空気
    入りタイヤ。
  7. 【請求項7】 前記繊維層が不織布からなることを特徴
    とする請求項6に記載の空気入りタイヤ。
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