JPH1147479A - ミシンの糸張力調整装置 - Google Patents

ミシンの糸張力調整装置

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JPH1147479A
JPH1147479A JP9203328A JP20332897A JPH1147479A JP H1147479 A JPH1147479 A JP H1147479A JP 9203328 A JP9203328 A JP 9203328A JP 20332897 A JP20332897 A JP 20332897A JP H1147479 A JPH1147479 A JP H1147479A
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JP
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thread
sewing machine
upper thread
adjusting device
tension
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Application number
JP9203328A
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English (en)
Inventor
Takashi Tsukioka
高志 月岡
Kazuaki Ishii
一明 石井
Mitsuhiro Tachikawa
充宏 立川
Yasuaki Hirano
靖明 平野
Takayuki Shiina
隆行 椎名
Hiroshi Oda
洋 小田
Toshiaki Kasuga
俊明 春日
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Juki Corp
Original Assignee
Juki Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 この発明は、天秤と針との間で上糸に抵抗力
を与える糸張力調整装置において、必要なときだけ抵抗
力を与え、不必要なときには抵抗力を小さくすることの
できる糸張力調整装置を提供することを目的とする。 【解決手段】 ミシン1の上糸に抵抗を与えて該上糸の
張力を調整するミシンの糸張力調整装置10である。そ
して、天秤3から針4に渡る上糸に対して可変的な抵抗
力を付与可能な張力調整器13と、この張力調整器13
による抵抗力をミシンの主軸の1回転中に変化可能に前
記張力調整器13を動作させる駆動装置11とから構成
される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、ミシンの上糸に
抵抗を与えて該上糸の張力を調整するミシンの糸張力調
整装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ミシンの上糸に抵抗を与えて該上
糸の張力を調整する糸調子として、例えば、天秤から針
に渡る上糸を押圧して抵抗を与える糸調子皿などがあ
る。このような糸調子皿は、例えば3〜5グラム程度の
小さな張力を上糸に掛けて、天秤の上下運動による上糸
のあばれの影響を止めようとするものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記従来の
糸調子皿は、上糸に対して常時一定の抵抗を与えるた
め、上糸の張力が必要な位相には良いが、上糸の張力が
必要のない位相では悪くつく。例えば、針先にループを
形成する位相では糸調子皿の張力により安定したループ
の形成が行われ極めて有効であるが、天秤が上糸を引き
上げる位相では逆に糸締りを悪くさせてしまう。天秤が
上糸を引き上げるストロークは非常に大きいため、糸調
子皿の影響も大きくなり、それ故、糸調子皿の抵抗力を
大きくすることが出来なかった。
【0004】この発明は、上記実状に鑑みてなされたも
ので、上糸に与える抵抗力を可変的にして、必要なとき
だけ抵抗力を与え、不必要なときには抵抗力を小さくす
ることの可能なミシンの糸張力調整装置を提供すること
を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、請求項1記載の発明は、ミシンの上糸に抵抗を与え
て該上糸の張力を調整するミシンの糸張力調整装置であ
って、天秤と針との間に設置され、該間を渡る上糸に対
して可変的な抵抗力を付与可能な張力調整器を備えた構
成とした。
【0006】この請求項1記載の発明によれば、張力調
整器が天秤から針に渡る上糸に対して抵抗を与えて上糸
の張力を調整し、且つ、上糸に与える抵抗力が可変なの
で、例えば、ミシンの運転中に様々なバリエーションで
上糸の張力を調整することが可能となり、様々な縫製技
術に応用可能である。
【0007】請求項2記載の発明は、請求項1記載のミ
シンの糸張力調整において、装置前記張力調整器による
抵抗力をミシンの主軸の1回転中に変化可能に前記張力
調整器を動作させる駆動装置を備えた構成とした。
【0008】この請求項2記載の発明によれば、張力調
整器が天秤から針に渡る上糸に対して抵抗を与えて上糸
の張力を調整するが、上記駆動装置がこの張力調整器を
動作させて、上糸に与える抵抗力をミシンの主軸の1回
転中に変化させることが可能であるので、ミシンの運転
中に様々なバリエーションで上糸の張力を調整すること
が出来る。従って、主軸の1回転中の各位相における上
糸の張力を、様々な縫製条件、様々な縫製パターンに合
わせて自由に変化させ、仕上がりの美しい縫製を行うこ
とが出来る。例えば、針先にループを形成するループ形
成時など、上糸に張力を与えると有用な位相と、天秤に
よる糸締め時など、上糸に張力を与えることが不要な位
相とに、それぞれ対応させて、上糸に抵抗力を与えたり
上糸を開放したりすることが可能となり、仕上がりの美
しい縫製を行うことが出来る。従って、上糸に強い抵抗
が掛かった状態で天秤が上糸を引き上げると、糸の縒り
が戻される現象が生じたり、糸が摩耗したり上糸を引き
上げきらないといった不具合が生じるが、この発明によ
れば、このような位相において抵抗を低くして上記不具
合を回避すると共に、その他、抵抗を与えることが有用
な位相においては、抵抗を付与することが出来る。
【0009】ここで、張力調整器は、例えば、上糸を可
変的な押圧力で押圧して可変的な抵抗を与える形式や、
上糸を周りに沿わせたプーリーに可変的なトルクを与え
ることで上糸に可変的な抵抗を与える形式などが可能で
あり、その他、可変的な抵抗を与えられればどのような
形式でも良い。可変的な抵抗力とは、任意な2つの抵抗
力の何れかに変化可能な2値的なものから、連続量で抵
抗力を変化可能なものまで含まれる。
【0010】請求項3記載の発明は、請求項2記載のミ
シンの糸張力調整装置において、前記駆動装置が高応答
性を有する電磁アクチュエーターである構成とした。
【0011】この請求項3記載の発明によれば、高回転
ミシンにおいても1針の間に張力調整器による抵抗を変
化させることが出来る。従って、例えば、毎分およそ5
000回転するような工業用ミシンにも対応可能であ
る。
【0012】具体的には、上記の電磁アクチュエーター
としては、例えばボイスコイルモーターやヒステリシス
ブレーキや積層圧電素子などが適用可能である。抵抗力
を多値で変化させる場合には、電流量にほぼ比例して動
力を変化させるボイスコイルモーターやヒステリシスブ
レーキなどが適用できる。
【0013】請求項4記載の発明は、請求項2又は3記
載のミシンの糸張力調整装置において、前記上糸に与え
られる抵抗力をミシンの主軸の回転周期に同期させて変
化するように前記駆動装置を制御する制御手段と、この
制御手段の制御内容である前記抵抗力の変化する位相を
設定変更する設定手段とを備えた構成とした。
【0014】この請求項4記載の発明によれば、張力調
整器により上糸に与えられる抵抗力の変化する位相を、
ユーザーが設定手段を用いて変更することが出来るの
で、ミシンの利用状況に応じた細かい調整、様々なユー
ザーの要求に応じた様々な設定を行うことが出来る。
【0015】ここで、制御手段は、例えばCPU(Cent
ral Processing Unit )RAM(Random Access Memor
y)ROM(Read Only Memory)を備えた、デジタル制
御可能な制御回路などにより構成可能であり、ミシンの
その他の部分を制御する制御回路と兼用しても良いし、
別個に糸張力調整装置専用の制御回路を設けても良い。
主軸の回転周期に同期させる制御は、公知の技術であ
り、例えば主軸の回転角度を示す信号を読み込んで、こ
の回転角度に応じて駆動装置をコントロールすれば良
い。設定手段は、例えば、ディスプレーや操作パネルを
用いて抵抗力変化の位相をほぼ連続量で変更できる形式
のものから、ディップスイッチなどを用いて抵抗力変化
の位相が所定の複数パターンの中から選択する形式のも
のまで含まれる。
【0016】請求項5記載の発明は、請求項2〜4のい
ずれかに記載のミシンの糸張力調整装置において、前記
上糸に与えられる抵抗力をミシンの主軸の回転周期に同
期させて変化するように前記駆動装置を制御する制御手
段と、上糸の張力を検知する張力検知手段とを備え、前
記制御手段が、前記張力検知手段からの検知出力に基づ
き、前記張力調整器が上糸に与える抵抗力の大きさ、或
いは、前記抵抗力を変化させる位相の、少なくともいず
れか一方を変化させる構成とした。
【0017】この請求項5記載の発明によれば、上糸の
張力を実時間で検知して、その張力検知のフィードバッ
クによって、前記張力調整器が上糸に与える抵抗力の大
きさ、或いは、前記抵抗力を変化させる位相の、少なく
ともいずれか一方を変化させるので、例えば、縫製物や
糸の太さなどの縫製条件に変化があったり、その他、何
らかの要因によって、上糸の張力が所望のパターンから
ずれてしまう場合でも、上記の制御により、上糸の張力
を所望の張力パターンに戻すことが可能である。なお、
上糸の張力が所望のパターンからずれた場合に、同じ所
望のパターンに戻すのではなく、そのずれに応じて、違
ったパターンを生成するように制御しても良い。
【0018】請求項6記載の発明は、請求項2〜4のい
ずれかに記載のミシンの糸張力調整装置において、前記
上糸に与えられる抵抗力をミシンの主軸の回転周期に同
期させて変化するように前記駆動装置を制御する制御手
段と、ミシンの回転数を検知する回転数検知手段とを備
え、前記制御手段が、ミシンの回転数に基づき、前記張
力調整器が上糸に与える抵抗力の大きさ、或いは、前記
抵抗力を変化させる位相の、少なくともいずれか一方を
変化させる構成とした。
【0019】一般に、ミシンの回転数に応じて張力調整
器が上糸に与えるべき抵抗力は変化するが、この請求項
5記載の発明によれば、ミシンの回転数に応じて、上糸
の張力変化のパターンが変更できるので、上記ミシンの
回転数の変更に自動的に対応することが出来る。従っ
て、回転数を変化させて縫製を行う場合でも、いちいち
回転数に応じて設定をしなおす必要がなく、全ての回転
数において、適切な上糸の張力変化を実現可能である。
【0020】請求項7記載の発明は、請求項2〜4のい
ずれかに記載のミシンの糸張力調整装置において、前記
上糸に与えられる抵抗力をミシンの主軸の回転周期に同
期させて変化するように前記駆動装置を制御する制御手
段と、縫製条件を入力する入力手段、又は、縫製条件を
検知する縫製条件検知手段とを備え、前記制御手段が、
縫製条件に基づいて、前記張力調整器が上糸に与える抵
抗力の大きさ、或いは、前記抵抗力を変化させる位相
の、少なくともいずれか一方を変化させる構成とした。
【0021】この請求項7記載の発明によれば、縫製条
件の変化に応じて、上糸の張力変化のパターンを自動的
に変更できて都合が良い。即ち、一般に、縫製条件に応
じて張力調整器が上糸に与えるべき抵抗力は変化する
が、縫製条件を変えて縫製を行う場合でも、いちいち縫
製条件に応じて糸張力調整装置の設定をしなおす必要が
なく、様々な縫製条件において、自動的に適切な上糸の
張力パターンに変化可能である。
【0022】ここで、縫製条件には、被縫製物の布種
類、布枚数、糸の種類、太さ、針番手等が含まれる。
【0023】請求項8記載の発明は、請求項2〜4のい
ずれかに記載のミシンの糸張力調整装置において、前記
上糸に与えられる抵抗力をミシンの主軸の回転周期に同
期させて変化するように前記駆動装置を制御する制御手
段を備え、前記上糸に与えられる抵抗力を該抵抗力が最
も低い基底値に対して大きくなるように前記駆動装置を
動作させる位相が、天秤が上糸を引き上げる糸締め時に
設定されている構成とした。
【0024】この請求項8記載の発明によれば、糸締め
時に上糸に抵抗が与えられるので、天秤による上糸の引
き上げ力を張力調整器により制御することが出来る。例
えば、天秤による上糸の引き上げ力が小さくなって、縫
目に風合いをつけることが出来る。
【0025】請求項9記載の発明は、請求項2〜4のい
ずれかに記載のミシンの糸張力調整装置において、前記
上糸に与えられる抵抗力をミシンの主軸の回転周期に同
期させて変化するように前記駆動装置を制御する制御手
段を備え、前記上糸に与えられる抵抗力を該抵抗力が最
も低い基底値に対して大きくなるように前記駆動装置を
動作させる位相が、針が被縫製物にささる針ささり時に
設定されている構成とした。
【0026】この請求項9記載の発明によれば、針ささ
り時に上糸に抵抗が与えられて上糸の張力が増すので、
たるんだ上糸に間違って針がささってしまうという不具
合を防止することが出来る。
【0027】請求項10記載の発明は、請求項2〜4の
いずれかに記載のミシンの糸張力調整装置において、前
記上糸に与えられる抵抗力をミシンの主軸の回転周期に
同期させて変化するように前記駆動装置を制御する制御
手段を備え、前記上糸に与えられる抵抗力を該抵抗力が
最も低い基底値に対して大きくなるように前記駆動装置
を動作させる位相が、針先にループの形成されるループ
形成時に設定されている構成とした。
【0028】この請求項10記載の発明によれば、ルー
プ形成時に上糸に抵抗が与えられて上糸の張力が制御さ
れるので、ループの形成が安定化されて縫目の目飛びを
防止することが出来る。
【0029】請求項11記載の発明は、請求項2〜4の
いずれかに記載のミシンの糸張力調整装置において、前
記上糸に与えられる抵抗力をミシンの主軸の回転周期に
同期させて変化するように前記駆動装置を制御する制御
手段を備え、前記上糸に与えられる抵抗力を該抵抗力が
最も低い基底値に対して大きくなるように前記駆動装置
を動作させる位相が、上糸が釜を越える釜越時に設定さ
れている構成とした。
【0030】この請求項11記載の発明によれば、上糸
の釜越時に上糸に抵抗が与えられて上糸が張られるの
で、上糸の釜渡りの適正化を計ることが出来る。即ち、
上糸がスムーズに内釜の周りを流れるようにすることが
出来る。
【0031】請求項12記載の発明は、請求項2〜4の
いずれかに記載のミシンの糸張力調整装置において、前
記上糸に与えられる抵抗力をミシンの主軸の回転周期に
同期させて変化するように前記駆動装置を制御する制御
手段を備え、前記上糸に与えられる抵抗力を該抵抗力が
最も低い基底値に対して大きくなるように前記駆動装置
を動作させる位相が、針先が被縫製物に刺さろうとする
針ささり時、天秤が上糸を引き上げる糸締め時、針先に
ループが形成されるループ形成時、上糸が釜を越える釜
越時の、いずれか複数を組み合わせた期間に設定されて
いる構成とした。
【0032】この請求項12記載の発明によれば、請求
項8〜11の作用効果を組み合わて得ることが出来る。
【0033】請求項13記載の発明は、請求項2〜4の
いずれかに記載のミシンの糸張力調整装置において、糸
を針板の下で自動的に切断する糸切り装置によって行わ
れる糸切り時に、前記上糸に与えられる抵抗力を該抵抗
力が最も低い基底値に対して大きくなるように前記駆動
装置を動作させる制御手段を備えた構成とした。
【0034】この請求項13記載の発明によれば、糸切
り時に上糸に抵抗が与えられるので、糸切り装置が糸を
さばく際、糸が張られて糸の位置が安定する。従って、
糸切り装置が確実に糸をつかまえて切断することとな
り、糸切りの確実性が高められる。
【0035】請求項14記載の発明は、請求項2〜4の
いずれかに記載のミシンの糸張力調整装置において、前
記張力調整器により前記上糸に与えた抵抗力を低い方に
戻す時に、前記駆動装置の抵抗を与える動作に対して逆
方向に動作させる逆動作電流を前記駆動装置に出力する
構成とした。
【0036】この請求項14記載の発明によれば、張力
調整器の動作の内、上糸に抵抗力を与えるときの動作だ
けでなく、この抵抗力を解除するときの動作についても
応答性を高めることが出来る。即ち、上糸に対する抵抗
力の付与および抵抗力の開放を応答性良く確実に行うこ
とが出来る。
【0037】請求項15記載の発明は、請求項1〜4の
いずれかに記載のミシンの糸張力調整装置において、前
記張力調整器の作動を解除する解除手段を備えた構成と
した。
【0038】この請求項15記載の発明によれば、糸張
力調整装置を作動させずに従来と同様にミシンを使用す
る場合に、解除手段により張力調整器の作動を解除する
ことで容易に対応することが出来る。
【0039】ここで、解除手段は、例えば、電気的な手
段としても、メカ的な手段としても実現可能である。解
除手段の電気的な手段としては、例えば、制御手段に解
除信号を出力して前記駆動装置の制御を解除させるスイ
ッチなどにより構成可能であるし、メカ的な手段として
は、張力調整器に係止して該張力調整器の動作を抑止す
る係止具などにより可能である。
【0040】請求項16記載の発明は、請求項1〜4の
いずれかに記載のミシンの糸張力調整装置において、前
記張力調整器により上糸に与えられる抵抗力の最も低い
基底値が、無負荷でなく有量の値である構成とした。
【0041】この請求項16記載の発明によれば、常
に、天秤の上下運動に伴う上糸のあばれが抑制され、糸
張力調整装置による上糸への可変的な抵抗力の付加も確
実に行われる。
【0042】ここで、張力調整器により上糸に与えられ
る抵抗力の最も低い基底値を有量の値にする手段は、電
気的な構成としてもメカ的な構成としても実現可能であ
るが、メカ的な構成は、複雑な制御を必要とせす簡単に
且つ低コストで実現可能であり好ましい。上記の電気的
な構成は、例えば、張力調整器を動作させる駆動装置に
バイアス電流を流すことで可能であるし、上記のメカ的
な構成は、例えば、弾性部材などを介して常時上糸を押
圧しておく構成や、上糸の通過に伴い回転するプーリに
常時回転抵抗を付加しておく構成など、種々の形式が有
り得る。
【0043】請求項17記載の発明は、請求項16に記
載のミシンの糸張力調整装置において、前記張力調整器
により上糸に与えられる抵抗の前記基底値を調整可能な
初期張力調整手段を備えた構成とした。
【0044】この請求項17記載の発明によれば、張力
調整器の非動作時における糸の張力の調整を行うことが
出来る。
【0045】請求項18記載の発明は、請求項2〜4の
いずれかに記載のミシンの糸張力調整装置において、複
数の針を有する多本針ミシンに設けられ、前記張力調整
器および駆動装置が少なくとも1個ずつ設けられている
構成とした。
【0046】一般に、多本針ミシンでは、針の数に対応
して糸も複数本使用されるので、複数の糸が交差したり
衝突したり、1本針のものに較べて複雑な運動を行い縫
製に影響を及ぼすことが考えられるが、この請求項18
記載の発明によれば、張力調整器により少なくとも1本
の糸のあばれを防止するので、上記複数本の糸の複数の
運動を整った運動に改善することが出来る。それにより
上糸の運動が安定して、仕上がりの美しい縫製を行うこ
とが出来る。
【0047】ここで、上記張力調整器は、複数の糸の全
てに対して作用を及ぼすようにすると好ましいが、複数
の糸の一部に対して作用を及ぼすようにしても良い。
【0048】請求項19記載の発明は、請求項2〜4の
いずれかに記載のミシンの糸張力調整装置において、複
数の針を有する多本針ミシンに設けられ、前記張力調整
器および駆動装置が前記複数の針に対応して複数設けら
れ、これら複数の張力調整器および駆動装置がそれぞれ
別個に制御可能な構成とした。
【0049】一般に、多本針ミシンでは、複数の針に対
応する複数の糸がそれぞれ異なる縫製条件で縫製される
場合があるが、この請求項19記載の発明によれば、複
数の糸に対して個別のパターンで抵抗力を付与すること
が可能なので、複数の糸のそれぞれに最適な抵抗力を与
えることが出来る。
【0050】ここで、上記張力調整器は、多本針ミシン
に備わる複数の糸の全てに対して作用を及ぼすようにす
ると好ましいが、複数の糸の一部に対して作用を及ぼす
ようにしても、上記複数の糸の一部が複数の糸であれば
本発明に含まれる。
【0051】請求項20記載の発明は、請求項2〜4の
いずれかに記載のミシンの糸張力調整装置において、上
糸を針板の下で自動的に切断する糸切り装置によって上
糸が切断された後の縫い始めの数針において、少なくと
も天秤が上糸を引き上げる糸締め時に、前記上糸に与え
られる抵抗力を該抵抗力が最も低い値に対して大きくな
るように前記駆動装置を駆動させる手段を備えた構成と
した。
【0052】この請求項20記載の発明によれば、糸切
り装置による糸切りの後に縫製を再開する場合に、針か
らの糸のすっぽ抜けを防止することが出来る。即ち、糸
切り装置が針板の下で糸を自動的に切断すると、針先か
ら余った糸が短くなる場合があり、その後、縫製を再開
すると、糸が針先から抜けてしまうといった不具合が生
じることがあるが、この発明によればこの不具合が防止
される。
【0053】請求項21記載の発明は、請求項1〜20
のいずれかに記載のミシンにおいて、前記張力調整器
が、押圧力の変化に対して摩擦力が緩やかに変化する抵
抗部材を介して上糸に抵抗を与える構成とした。
【0054】この請求項21記載の発明によれば、張力
調整器によって上糸に与えられる抵抗力が上記抵抗部材
を介して与えられるので、張力調整器の動作に従って上
糸に付加される抵抗力を緩やかに変化させることが出来
る。従って、張力調整器の少しの動作で急激に大きな抵
抗力が付与されてしまうといった不都合が回避され、糸
張力調整装置により上糸に与えられる抵抗の値を比較的
に細かく設定可能となる。
【0055】ここで、上記の抵抗部材は、例えば、フェ
ルトや不織布などの繊維系の部材などが適用可能であ
り、その他、押圧力の変化に対して摩擦力が緩やかに変
化する抵抗部材であれば種々の部材が使用可能である。
【0056】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態につ
いて、図1〜図17の図面を参照しながら説明する。 [第1の実施の形態]図1は、この実施の形態の糸張力
調整装置10を備えたミシン1の面部の斜視図である。
図2は、糸張力調整装置10を上方から眺めた平面図で
ある。
【0057】この実施の形態の糸張力調整装置10は、
張力調整器としての固定板12および糸押え板13、並
びに、駆動装置としてのボイスコイルモータ11等から
構成され、ミシン1の天秤3から針4に渡る上糸を押圧
して該上糸に可変的な抵抗力を作用させるものである。
【0058】また、この糸張力調整装置10には、上記
ボイスコイルモータ11を制御する制御回路20(図
4)や、糸張力調整装置10の動作内容を設定変更する
操作パネル30(図4)、並びに、上糸の張力を検知す
る上糸張力検知器(張力検知手段)9が備わっている。
この操作パネル30は、糸張力調整装置10の動作する
位相を設定する設定手段、縫製条件を入力する入力手
段、および、糸張力調整装置10の作動を解除する解除
手段として機能するものである。
【0059】なお、縫製条件を入力する入力手段の替わ
りに、糸の太さや布の厚さを例えば挟むなどして自動的
に検出する検出手段を設け、該検出手段からの検出出力
により縫製条件を制御回路20に入力させても良い。
【0060】上記固定板12と糸押え板13とは、両者
の板面間にミシンの上糸を挟んで可変的な押圧力で押圧
することで、上糸に対して可変的な抵抗力を与えるもの
であり、固定板12は、ミシン1の天秤3と針4との間
に固定されている一方、糸押え板13は、該固定板12
と平行な状態で且つ板面に対して垂直な方向に可動的に
設けられている。また、ミシン1の天秤3と針4との間
には、該天秤3から針4に渡る上糸を上記固定板12と
糸押え板13との間に導くガイド5,6が設けられてい
る。
【0061】また、糸張力調整装置10のその他の例を
示す上面図の図3に示すように、上記糸押え板13の板
面に例えばフェルトや不織布等の押圧力に対して摩擦力
がなだらかに変化する抵抗部材Fを設けることが好まし
く、そうすることで、糸押え板13の少しの動作で上糸
に急激に大きな抵抗力が課されてしまうといった不都合
が回避され、糸押え板13の動作に従って上糸に課され
る抵抗力が緩やかに変化することとなって、糸張力調整
装置10により上糸に与えられる抵抗力が比較的に細か
く設定可能となる。
【0062】ボイスコイルモータ11は、上記糸押え板
13を作動させるもので、その本体部11aをミシン1
に固定すると共にその作動子11bを糸押え板13に固
定してなる。このボイスコイルモータ11は、電流値に
ほぼ比例して作動子11bの作動力を変化させる機能
と、約5000回転/分程度のミシンの回転に十分に追
従できる応答性を有するものである。即ち、上記の主軸
の回転中にその作動力を変化させることの可能な高応答
性を有するものである。
【0063】前記の上糸張力検知器9は、図示は省略す
るが、例えば、上糸に掛けられて該上糸の張力により微
動する検知片と、この検知片の移動量を例えば電圧に変
換して検出する圧電素子などから構成され、例えば、天
秤3と図示しない上糸ボビンとの間に設けられ、該箇所
の上糸の張力を検出するようになっている。この上糸張
力検知器9は、糸案内201と糸案内202との間に配
置するのが望ましい。
【0064】図4には、糸張力調整装置10の制御を行
う制御回路20のブロック図を示す。制御回路20は、
CPU(Central Processing Unit )21、ROM(Re
ad Only Memory)22、RAM(Random Access Memor
y)23、i/o(input/output)インターフェース2
4、A−D(analog-digital)コンバータ25、D−A
(digital-analog)コンバータ26等を備えている。
【0065】この制御回路20には、上糸張力検知器
9、ミシン1に備わる各種検知器(糸切りを開始するた
めの糸切スイッチ、ミシン1の主軸の回転数を検知する
回転数検知器、ミシン1の主軸の回転位相を検出する位
相検出器など)、表示部51を備えた操作パネル30、
ボイスコイルモータ11等が接続されている。
【0066】CPU21は、RAM23を作業領域に、
ROM22中に記憶された制御プログラムや制御データ
に従って、制御回路20に接続された各種入力機器から
信号の入力を行うと共に、表示部32の表示データを出
力したり、ボイスコイルモータ11の制御を行うように
なっている。
【0067】次に、この実施の形態の糸張力調整装置1
0の基本的な動作の説明をする。
【0068】上記の糸張力調整装置10は、ミシン1の
主軸の回転周期に同期して動作するように制御される。
【0069】即ち、制御回路20には、ミシン1の主軸
の回転位相を示すミシン位相信号が、ミシン1の稼働中
を通してミシン1の図示しない位相検出器から入力さ
れ、このミシン位相信号に基づきミシンの運動の位相が
認識され、ミシンの運動が所定の位相にきた場合に、制
御回路20からボイスコイルモータ11に所定の動作電
流が出力される。
【0070】ボイスコイルモータ11に動作電流が出力
されると、ボイスコイルモータ11の作動子11bが引
かれる方向に作動して、糸押え板13が固定板12の方
に動かされ、これら糸押え板13と固定板12との間に
上糸を挟んで上糸に抵抗力が及ぼされる。
【0071】また、ミシンの運動が糸を開放すべき所定
の位相にきた場合には、制御回路20からボイスコイル
モータ11に上記動作電流とは逆の逆動作電流が出力さ
れる。ボイスコイルモータ11に逆動作電流が出力され
ると、ボイスコイルモータ11の作動子11bが押され
る方向に作動して、糸押え板13が固定板12から離れ
て上糸が開放される。又は、作動子11bの引張力が瞬
時に下げられて、上糸に及ぼした抵抗力が所定値まで急
激に低減される。
【0072】しかして、ミシン1の主軸の1回転毎に、
ミシン1の主軸の回転位相と同期して糸張力調整装置1
0が作動し、この作動により上糸に所定の抵抗力が及ぼ
される。
【0073】その他、ミシン1の各回転毎に作動するの
ではなく、ミシン1の特定の回転において、所定の位相
で糸張力調整装置10を作動させる制御パターンもあ
る。このような制御パターンには、例えば、ミシン1の
糸切り時の回転において、糸張力調整装置10を上記と
同様に所定の位相で作動させる制御パターンがある。
【0074】即ち、縫製の最終段階などで糸切りを行う
べく、ミシン1の糸切りスイッチがオン操作されると、
この糸切りスイッチから(糸切り装置7を制御する制御
回路等を介しても良い。)糸切り信号が制御回路20に
入力される。制御回路20では、この糸切り信号と上記
ミシン位相信号とに基づき、糸切り時の所定の位相でボ
イスコイルモータ11に動作電流を出力して上糸に抵抗
力を及ぼした後、この動作を終了する所定の位相で逆動
作電流を出力して上糸に掛けた抵抗力を解除する。
【0075】図5には、糸張力調整装置10の動作タイ
ミングを示すチャートを示す。上記の動作電流と逆動作
電流を出力する位相、即ち、糸押え板13を作動させる
タイミングは、予め複数のパターンが制御回路20のR
OM22中にデフォルトとして記憶されている。
【0076】糸押え板13を作動させるタイミングのデ
フォルトとしては、針先にループを形成する「ループ形
成時」、針が被縫製物に刺さる「針ささり時」、天秤が
上糸を引き上げる「糸締め時」、上糸が釜を渡って越え
る「釜越し時」、糸切り装置7(図7)の剣先7aが上
糸をさばく「糸切り時」等が設けられている。これらの
内、「ループ形成時」、「針ささり時」、「糸締め
時」、「釜越し時」のパターンは、ミシン1の1回転毎
に作動させるパターンであり、「糸切り時」のパターン
は、ミシン1の特定の回転(糸切りを行う回転)におい
て糸押え板13を作動させるパターンである。
【0077】これらデフォルトにおいて糸押え板13を
作動させるタイミングは、図5に示すごとくである。図
中、「ループ形成時」、「針ささり時」、「糸締め
時」、「釜越し時」、「糸切り時」は、上記各デフォル
トの名称を示しており、各名称の横にそれぞれのパター
ンにおける糸押え板13の動作タイミングチャートを示
している。チャートの横軸は位相を示しており、タイミ
ングチャート上に並記してあるミシンの運動曲線と同位
相になっている。縦軸は糸張力調整装置10の状態を示
しており、「off」は糸張力調整装置10の初期状態
(糸張力調整装置10が上糸に及ぼす抵抗力が最も低い
値となる状態)を、「on」は糸張力調整装置10の作
動状態を示している。この実施の形態では、糸張力調整
装置10の初期状態は、上糸が開放されている状態とな
っている。
【0078】上記「釜越し時」のパターンでは、釜によ
る上糸の取り出し量が最大となる前後に作動するように
設定されているが、「釜越し時」のその他のパターンと
して、釜の剣先が上糸に掛かるタイミング(チャート中
に点線で示す範囲)から作動するようにしても良い。
【0079】上記「糸切り時」のパターンでは、糸切り
装置7の剣先7aが、針4と釜8との間の上糸をさばく
前後に作動するように設定されているが(糸切り装置7
が上糸を切断する動作を説明するための斜視図である図
7を参照。同図中、(a)が上糸のさばき開始直前、
(b)が上糸のさばき直後を示している。)、「糸切り
時」のその他のパターンとして、釜8の剣先8aが上糸
に掛かるタイミング(チャート中に点線で示す範囲)か
ら作動するようにしても良い。
【0080】なお、上記の同一のデフォルト内において
は、糸張力調整装置10が作動状態に上糸に及ぼす抵抗
力の大きさはほぼ一定であり、即ち、ボイスコイルモー
タ11にはほぼ一定値の電流が出力される。が、異なる
デフォルトにおいては、糸張力調整装置10が作動状態
に上糸に及ぼす抵抗力はそれぞれ異なり、即ち、ボイス
コイルモータ11にもそれぞれ異なる量の電流が出力さ
れる。例えば、「糸締め時」のパターンで上糸に及ぼさ
れる抵抗力は、他のパターンに較べて小さいものになっ
ている。なお、同一のデフォルト内において、糸張力調
整装置10が上糸に異なる大きさの抵抗を及ぼすように
制御することも可能である。
【0081】次に、ユーザーにより行われる糸張力調整
装置10の初期設定について説明する。
【0082】ユーザーにより縫製前に行われる糸張力調
整装置10の初期設定の項目には、糸張力調整装置10
の作動実行/作動解除の選択を行う設定項目、糸張力調
整装置10の動作位相および上糸に掛かる張力を設定す
る張力設定項目、並びに、縫製条件を入力する縫製条件
設定項目などがある。
【0083】上記張力設定項目では、上記の「ループ形
成時」、「針ささり時」、「糸締め時」、「釜越し
時」、「糸切り時」のデフォルトパターンの中から、実
行させるパターンを選択する。この設定項目では複数の
選択が可能になっている。ユーザーが操作パネル30を
用いてこの選択設定を行うと、選択されたパターンを示
す張力設定データが制御回路20に入力されて、制御回
路20により、選択されたパターンで糸張力調整装置1
0の作動制御が行われることになる。
【0084】また、複数のデフォルトパターンを選択し
た場合、それぞれのデフォルトパターンで糸張力調整装
置10がオン作動する期間が重なる範囲においては、よ
り良い縫い目が形成されるように、作動力を適宜変更さ
せて、それぞれのデフォルトパターンで設定されている
作動力とは異なる力で糸張力調整装置10を作動させる
ように設定しても良い。
【0085】なお、張力設定の仕方は、上記のデフォル
トパターンの選択に限られるものではなく、その他のデ
フォルトパターンを用いても良いし、その他、糸張力調
整装置10を作動させる位相およびその作動力を、各位
相毎にマニュアルで入力設定できるようにしても良い。
【0086】縫製条件設定項目では、使用する針の種類
(針番手等)を示す針データ、糸の種類を示す糸種類デ
ータ、糸番手データ、糸メーカーデータ、被縫製物の布
厚データ、布種類データ等の縫製条件データを入力す
る。この縫製条件データを入力すると、該縫製条件デー
タが操作パネル30から制御回路20に出力され、制御
回路20により縫製条件データに基づく演算が行われ
て、糸張力調整装置10の作動パターンの修正が行われ
る。そして、この修正後の作動パターンで糸張力調整装
置10の作動制御が行われることになる。
【0087】上記縫製条件データに基づく修正として
は、例えば、滑りやすい糸(ナイロン糸等)に対しては
作動力を大きくし、滑りにくい糸(綿糸等)に対しては
作動力を小さくする修正、太い糸に対しては作動力を小
さくし細い糸に対しては作動力を大きくする修正、厚い
縫製物に対しては「ループ形成時」と「釜渡り時」の作
動力を小さくし、薄い縫製物に対しては「ループ形成
時」と「釜渡り時」の作動力を大きくする修正、柔らか
い布質の縫製物に対しては「糸締め時」の作動力を大き
くし、硬い布質の縫製物に対しては「糸締め時」の作動
力を小さくする修正などが行われる。
【0088】なお、縫製条件データに基づく修正は、上
記の例に限られるものではなく、例えば様々な縫製条件
および様々な作動力で試験を行い最適な値を得るなどし
て適宜変更可能である。その他、縫製条件データに基づ
いて糸張力調整装置10の動作位相を修正するようにし
ても良い。
【0089】次に、ミシン1の稼働中に行われる糸張力
調整装置10の補正制御について説明する。ミシン稼働
中の糸張力調整装置10の補正制御には、糸張力検出器
9(図4)からの上糸の張力検出に基づき糸張力調整装
置10の作動パターンを補正するフィードバック制御、
ミシン1の回転数に基づき糸張力調整装置の作動パター
ンを補正する回転数補正制御等がある。
【0090】フィードバック制御においては、ミシン1
の稼働中を通して糸張力検出器9から出力される上糸張
力検出信号に基づき、制御回路20において、ミシン1
の回転の各位相で上糸の張力がリアルタイムで認識され
ると共に、この検出された上糸の張力と理想的な上糸の
張力との比較演算が行われる。
【0091】この比較演算の結果、糸締め時の位相、或
は、釜越し時の位相において、検出された上糸張力が理
想的な上糸張力より高い場合には、ボイスコイルモータ
11に出力する電流値を低く(例えば「0」)して、糸
張力調整装置10の作動力を弱くする。また、上記の比
較演算の結果、糸締め時の位相、或は、釜越し時の位相
において、検出された上糸張力が理想的な上糸張力より
低い場合には、ボイスコイルモータ11に出力する電流
値を高くして、糸張力調整装置10の作動力を強くす
る。
【0092】しかして、糸締め時と釜越し時の位相にお
いて、実際の上糸の張力が高い場合には糸張力調整装置
10により上糸に掛けられる張力が下げられ、また、実
際の上糸の張力が低い場合には糸張力調整装置10によ
り上糸に掛けられる張力が強められる。つまり、上記の
フィードバック制御によって、上糸の釜くり越し時の流
れを安定化させる。又は、上糸の釜くり越し張力をほぼ
一定とさせる。
【0093】また、上記の回転数補正制御では、ミシン
1の稼働中を通してミシン1の回転数検知器から出力さ
れるミシン回転数信号に基づいて、制御回路20におい
て、ミシン1の主軸の回転数が認識されると共に、この
ミシン1の回転数に基づくボイスコイルモータ11への
通電量の補正演算が行われる。
【0094】即ち、ミシン1の回転数が小さい場合に
は、ミシン1の回転の全位相において、ボイスコイルモ
ータ11への通電量を小さくして、糸張力調整装置10
の作動力が弱められる。が、ミシン1の回転数が大きい
場合には、ミシン1の回転の全位相において、ボイスコ
イルモータ11への通電量を大きくして、糸張力調整装
置10の作動力が強められる。
【0095】なお、この回転数補正制御において、ミシ
ン1の回転数の変化とボイスコイルモータ11への通電
量の変化との関係は、様々な条件で縫製試験を行うなど
して最適な関係を求めることが出来る。
【0096】図6には、制御回路20により行われる糸
張力調整装置10の制御処理のフローチャートを示す。
【0097】糸張力調整装置10の制御処理が開始され
ると、先ず、ステップS1において縫製条件入力処理が
行われる。即ち、このステップ1で、ユーザーにより操
作パネル30が操作されて縫製条件(針データ、糸種類
データ、糸番手データ、糸メーカーデータ、布厚デー
タ、布種類データなど)の入力が行われる。そして、こ
の入力が確認された後、ステップS2に移行する。
【0098】ステップS2では、制御回路20に接続さ
れているデータベースから、ステップS1で入力された
縫製条件にあった上糸張力の設定データを入力してステ
ップS3に移行する。ステップS3では、ステップS1
で入力された縫製条件をもとに、ミシンのサーボモータ
の最大回転数をミシンの制御回路に指示して、ステップ
S4に移行する。
【0099】ステップS4では、例えば、該当する糸張
力の設定データがデータベースになかった場合に、ユー
ザーの操作パネルを用いた設定データの入力を待って、
この入力処理をしてからステップS5に移行する。ステ
ップS5では、ミシン1の回転数検知器から出力された
ミシン回転数信号に基づくミシンの回転数の検出と、こ
の回転数に基づくボイスコイルモータ11に出力する電
流量の補正演算を行ってステップS6に移行する。つま
り、このステップS5の処理により上述の回転数補正制
御が行われる。
【0100】ステップS6では、ミシン1の位相検出器
から出力されたミシン位相信号に基づくミシン1の回転
の位相の検出と、この位相に基づくボイスコイルモータ
11に出力する電流量の演算を行ってステップS7に移
行する。つまり、このステップS6の処理では、ステッ
プS2又はステップS4の処理により入力された糸張力
設定データに基づいて、該設定データ中の各位相に対応
する電流量を算出する処理が行われる。
【0101】ステップS7では、押え高さ信号に基づく
糸押え板13の高さ(固定板12からの距離)の検出
と、この糸押え板13の高さに基づくボイスコイルモー
タ11に出力する電流量の演算を行ってステップS8に
移行する。
【0102】ステップS8では、上糸張力検出器9から
出力された上糸張力検出信号に基づく上糸張力の検出
と、この上糸張力の検出に基づくボイスコイルモータ1
1に出力する電流量の補正演算を行ってステップS9に
移行する。つまり、このステップS8により上述のフィ
ードバック制御が行われる。
【0103】ステップS9では、糸切信号に基づく糸切
り実行の検出と、この検出に基づくボイスコイルモータ
11に出力する電流量の演算を行ってステップS10に
移行する。つまり、このステップS9により、糸切り時
の回転で糸切り装置7の剣先7aが上糸をさばく位相に
おいて、糸張力調整装置10を作動させる制御が行われ
る。
【0104】ステップS10では、ステップS2〜S9
の処理で演算してきた結果である電流量をボイスコイル
モータ11に出力する処理をしてステップS5に戻る。
つまり、上記のステップS5〜S10の処理を高速で繰
り返し行うことで、ミシン1の回転の各位相毎に該位相
に応じた糸張力調整装置10の作動制御が行われる。
【0105】以上のように、この実施の形態の糸張力調
整装置10によれば、糸押え板13および固定板12
(張力調整器)で、天秤3から針4に渡る上糸を挟んで
上糸の張力を調整するが、ボイスコイルモータ11の動
作によって、上糸に与える抵抗力をミシンの主軸の1回
転中に変化させることが可能なので、ミシンの運転中に
様々なバリエーションで上糸の張力を調整することが出
来る。
【0106】例えば、天秤3が上糸を引き上げる糸締め
時に、糸張力調整装置10が作動して上糸に抵抗を及ぼ
すことで、天秤3による上糸の引き上げ力が小さくなっ
て、縫目に風合いをつけることが出来る。また、針4の
針ささり時に作動させることで、たるんだ上糸に間違っ
て針4がささってしまうといった不具合を防止できる。
また、針先にループを形成するループ形成時に作動させ
ることで、ループの形成を安定化させて縫目の目飛びを
防止できる。また、上糸の釜越え時に作動させること
で、上糸の釜渡りの適正化、即ち、上糸をスムーズに内
釜の周りを流れるようにすることが出来る。その他、ミ
シン1の回転毎ではないが、糸切り装置7が作動する回
転で、糸切り装置7の刃先7aが上糸をさばく時に、糸
張力調整装置10を作動させることで、糸の位置を安定
させて上糸をさばくことが出来るため糸切りが確実に行
われる。
【0107】つまり、上記のように、ミシン主軸の1回
転中の各位相における上糸の張力を、様々な縫製条件、
様々な縫製パターンに合わせて自由に変化させ、仕上が
りの美しい縫製を行うことが出来る。
【0108】更に、上記ボイスコイルモータ11は高応
答性を有する電磁アクチュエータであるので、高速回転
(例えば5000回転)の工業用ミシンにおいても十分
に対応することが出来る。また、前記糸押え板13の押
圧で上糸に与えた抵抗力を低い方に戻す時に、上糸に抵
抗を与える動作に対して逆方向に動作させる逆動作電流
をボイスコイルモータ11に出力するので、前記糸押え
板13の動作の内、上糸に抵抗力を与えるときの動作だ
けでなく、この抵抗力を解除するときの動作についても
応答性を高めることが出来る。即ち、上糸に対する抵抗
力の付与および抵抗力の開放を応答性良く確実に行うこ
とが出来る。
【0109】また、糸張力調整装置10を作動させる位
相は、操作パネル30を用いたユーザーの設定入力によ
り適宜変更できるので、ミシンの利用状況に応じた細か
い調整、様々なユーザーの要求に応じた様々な設定を行
うことが出来て都合が良い。また、上糸張力検出器9に
より上糸の張力を実時間で検知し、その張力検知のフィ
ードバックによって、糸張力調整装置10の作動パター
ンを変化させるので、何らかの要因によって、上糸の張
力が所望のパターンからずれてしまう場合でも、上記の
フィードバック制御により、上糸の張力を適切なものに
することが出来る。
【0110】また、一般に、ミシン1の回転数に応じて
糸張力調整装置10が上糸に与えるべき抵抗力は変化す
るが、この実施の形態の糸張力調整装置10によれば、
回転補正制御によりミシン1の回転数に応じて糸張力調
整装置10の作動力を自動的に変化させるので、回転数
を変化させて縫製を行う場合でも、いちいち回転数に応
じて設定をしなおす必要がなく、全ての回転数におい
て、適切な上糸の張力変化を実現可能である。
【0111】また、操作パネル30の操作によりユーザ
ーが縫製条件を入力することで、縫製条件に応じた糸張
力調整装置10の動作位相および動作強度が自動的に設
定されるので、縫製条件を変えて縫製を行う場合でも、
いちいち縫製条件に応じて糸張力調整装置の設定をしな
おす必要がなく、様々な縫製条件において、自動的に適
切な糸張力調整装置10の作動パターンが得られて都合
が良い。
【0112】また、ユーザーは、操作パネル30を操作
して糸張力調整装置10の作動解除を行うことが出来る
ので、糸張力調整装置10を作動させずに従来と同様に
ミシン1を使用する場合にも容易に対応することが出来
る。
【0113】なお、本発明は、この実施の形態の糸張力
調整装置10に限られるものではなく、例えば、張力調
整器として、固定板12と糸押え板13など上糸を可変
的な押圧力で押圧して可変的な抵抗を与える形式を示し
たが、上糸を周りに沿わせたプーリーに可変的なトルク
を与えることで上糸に可変的な抵抗を与える形式(この
形式では駆動装置としてヒステリシスブレーキなどが用
いられる。)などとしても良いし、その他、可変的な抵
抗を与えられればどのような形式でも良い。また、張力
調整器が上糸に与える抵抗力は、ボイスコイルモータ1
1により連続量で変化可能であるが、任意の2つの抵抗
力(例えばオンとオフ)の何れかに可変なものとしても
良い。
【0114】[第2の実施の形態]図8は、第2の実施
の形態の糸張力調整装置10Aを備えたミシン1Aの面
部の斜視図である。図9は、糸張力調整装置10Aを上
方から眺めた平面図である。この実施の形態の糸張力調
整装置10Aは、第1の実施の形態の糸張力調整装置1
0に、メカ的に初期押し圧を付与する構成を新たに設け
たもので、その他の構成は、第1の実施の形態の糸張力
調整装置10と同様のものである。従って、第1の実施
の形態と同様の構成については、同符号を振って説明を
省略する。
【0115】この実施の形態の糸張力調整装置10A
は、ボイスコイルモータ11、糸押え板12、固定板1
3、初期圧調整板14、ミシン1Aの面部に固定された
支持ネジ15、圧縮バネ16、固定ナット17a,17
b等から構成される。これらの内、ボイスコイルモータ
11、糸押え板13、固定板12は、第1の実施の形態
と同様の構成である。
【0116】初期圧調整板14は、糸押え板13との間
に圧縮バネ16を挟み入れて、糸押え板13に初期圧
(ボイスコイルモータ11がオフ状態で作用する押圧
力)を加えるものである。この初期圧調整板14は、支
持ネジ15に支持されると共に、固定ナット17a,1
7bにより位置調整可能に固定されている。圧縮バネ1
6は、初期圧調整板14に一端側が固定され、他端側で
糸押え板13を押圧するようになっている。
【0117】つまり、この圧縮バネ16を介した初期圧
調整板14からの押圧力によって、張力調整器としての
糸押え板13と固定板12とに挟まれた糸に及ぼされる
抵抗力の最も低い値が、「0」ではなく、有量の値にな
るようになっている。また、初期圧調整板14の固定位
置をずらす構成(支持ネジ15、固定ナット17a,1
7b)が、前記抵抗力の値を調整可能な初期圧調整手段
を構成している。
【0118】この実施の形態の糸張力調整装置10Aに
よれば、ミシン1Aの可動中を通して糸張力調整装置1
0Aが上糸を押圧するので、常に、天秤の上下運動に伴
う上糸のあばれが抑制され、糸張力調整装置10Aによ
る上糸の押圧も確実に行われる。また、その初期の押圧
力も調整可能なので適宜な値に調整できる。
【0119】なお、糸張力調整装置10Aに初期圧を加
える構成は、上記のようなメカ的な構成に限らず、例え
ばボイスコイルモータ11にバイアス電流を流すなど、
電気的な構成としても良い。
【0120】[第3の実施の形態]図10は、第3の実
施の形態の糸張力調整装置10Bを2本針ミシン1Bに
適用した例を示すミシン面部の斜視図である。
【0121】この実施の形態の糸張力調整装置10B
は、第1の実施の形態の糸張力調整装置10と同様の構
成であり、2本針ミシン1Bの天秤3Bから針4Bに渡
る2本の上糸を同様に押圧して抵抗を及ぼすようになっ
ている。天秤3Bと針4Bとの間には、該天秤3Bから
針4Bに渡る上糸を上記糸張力調整装置10Bに導くガ
イド5B,6Bが設けられている。
【0122】一般に、多本針ミシンでは、針の数に対応
して糸も複数本使用されるので、複数の糸が交差したり
衝突したり、1本針のものに較べて複雑な運動を行い縫
製に影響を及ぼすことが考えられるが、糸張力調整装置
10Bにより糸のあばれが防止されるので、上記複数本
の糸の複数な運動を整った運動に改善することが出来
る。それにより上糸の運動が安定して、仕上がりの美し
い縫製を行うことが出来る。また、第1の実施の形態と
同様の作用効果により、仕上がりの美しい縫製を行うこ
とが出来る。
【0123】[第4の実施の形態]図11は、第4の実
施の形態の糸張力調整装置10Cを備えた2本針ミシン
1Cの面部を示す斜視図である。図12は、この糸調子
装置10Cを上方から眺めた平面図である。
【0124】この第4の実施の形態の糸張力調整装置1
0Cは、2本の上糸に対して、それぞれ別個に張力調整
を行うことができる点で第3の実施の形態の糸張力調整
装置10Bと異なり、その他の構成については同様のも
のである。従って、同様の構成については同符号を振っ
て説明を省略する。
【0125】この実施の形態の糸張力調整装置10C
は、2つのボイスコイルモータ11,11、2つの固定
板12A,12B、2つの糸押え板13A,13B等を
備えて構成される。2つのボイスコイルモータ11,1
1は、ガイド5B,6Bを渡る2本の上糸のそれぞれ両
側に固定され、それぞれの作動子11b,11bには糸
押え板13A,13Bが取り付けられている。そして、
それぞれのボイスコイルモータ11,11が作動するこ
とで、それぞれの糸押え板13A,13Bが固定板12
A,12Bに押圧するようになっている。
【0126】固定板12Aには、2本の上糸の内の1本
が一方の固定板12Aと糸押え板13Aとの間に来るよ
うに、2本の上糸をより分岐片12aが設けられてい
る。なお、この分岐片12aは、糸押え板13Aの動作
を妨げないように、糸押え板13Aより高い位置に設け
られている。
【0127】また、この実施の形態の糸張力調整装置1
0Cでは、ボイスコイルモータ11,11の作動パター
ン(作動位相や強度)の設定、縫製条件の入力設定、糸
張力の検知とそのフィードバック制御等が、2本の上糸
のそれぞれに対して別個に設定又は実行できるようにな
っている。
【0128】このような構成の糸張力調整装置10Cに
よれば、2本の針のそれぞれに対応して、別個の設定で
上糸の張力調整ができるので、複数の針に対応する縫製
条件等が異なる場合でも対応可能である。なお、多本針
ミシンとして、3本以上の針を備えたミシンに対しても
同様にボイスコイルモータと糸押え板を増やすことで対
応することが出来る。
【0129】[第5の実施の形態]図13は、この第5
の実施の形態の糸張力調節装置60を備えたミシン50
の面部を示した斜視図、図14は、この糸張力調節装置
60の分解斜視図である。この実施の形態の糸張力調整
装置60は、張力調整器60A、並びに、駆動装置とし
ての糸押えシリンダ72等から構成され、ミシン50の
天秤51から針52a,52bに渡る上糸を押圧して該
上糸に可変的な抵抗力を作用させるものである。
【0130】また、この糸張力調整装置60には、上記
糸押えシリンダ72を制御する制御回路80(図15)
や、糸張力調整装置60の動作内容を設定変更するため
の操作表示パネル93(図15)が備わっている。この
操作表示パネル93は、糸張力調整装置60の動作する
位相を設定する設定手段として機能するものである。
【0131】上記の張力調整器60Aは、固定板61と
糸押え板64a,64bとの間に糸を挟むことで糸に抵
抗を及ぼすもので、固定板61、糸押え板64a,64
b、可動板65、上ガイド62a,62b、下ガイド6
3、連結ピン69a,69b、圧縮バネ70a,70
b、固定ナットa1,a1,a4,a4,a6,a7,
a8、バネ圧調整ナットa2,a2,a3,a3、並び
に、ガイドピン67等から構成される。なお、左右の糸
押え板64a,64bはそれぞれ分離したものである。
【0132】糸押え板64a,64bと可動板65と
は、連結ピン69a,69b、並びに、糸押え板64
a,64bに一体形成されたガイドピン64c,64c
を介して、互いの間隔を伸縮可能に連結されている。即
ち、ガイドピン64c,64cは、可動板65に設けら
れたガイド孔に摺動可能に挿入されている。連結ピン6
9a,69bは、一端側が糸押え板64a,64bに止
着される一方、他端側が可動板65に設けられた摺動孔
に摺動可能に挿入されると共に固定ナットa4,a4に
よって前記摺動孔から抜けないように係止されている。
【0133】圧縮バネ70a,70bは、糸押え板64
a,64bを可動板65から離す方向にバネ圧を付加す
るものである。即ち、これら圧縮バネ70a,70b
は、一端側を可動板65に、他端側をバネ圧調整ナット
a3,a3に当接させることで、連結ピン69a,69
b(延いては糸押え板64a,64b)を可動板65か
ら離す方向にバネ圧を付加するものである。
【0134】バネ圧調整ナットa2,a2,a3,a3
は、その位置をずらすことで上記圧縮バネ70a,70
bを圧縮して押圧力を調整するものである。また、これ
らバネ圧調整ナットa2,a2,a3,a3は、左右の
糸押し板64a,64bに対してそれぞれ独立に機能す
るもので、左右の糸押し板64a,64bと可動板65
との距離をそれぞれ同じにしたまま、上記のバネ圧だけ
調整可能とするものである。
【0135】固定板61は、ミシン50のフレームに止
着されている。そして、上記糸押え板64a,64bを
連結した可動板65が、この固定板61に対して垂直方
向に移動可能に保持されている。ガイドピン67は、上
記の移動可能な状態で可動板65を固定板61に保持さ
せるものである。また、ガイド62a,62bは、2本
の上糸を左右の糸押し板64a,64bの箇所にそれぞ
れ導くものである。
【0136】糸押えシリンダ72は、ミシン50のフレ
ームに固定されていて、エアー制御により作動子73を
所定のストロークで出し入れするエアーシリンダであ
る。この糸押えシリンダ72の作動子73は、固定板6
1の挿入孔を通過して固定ネジa7,a8により可動板
65に止着されている。図14中、72a,72bは継
手、h1,h2はエアーパイプ、72−1は電磁調整弁
72、72−2はエアー供給パイプであり、空気供給源
からエアー供給パイプ72−2を介して送られるエアー
を、糸押えシリンダ駆動回路85の信号に基づき電磁制
御弁72−1を制御して、エアーパイプh1,h2に流
れるエアーを制御している。
【0137】なお、この実施の形態では、ミシンとして
2本針ミシンを例示して説明しているため、張力調整器
60Aには糸押え板64a,64bが2つ設けられてい
るが、1本針ミシンに使用する場合、或いは、複数針ミ
シンに使用する場合でも、1つの糸押え板を用いて同じ
押圧力で押圧する構成としても良い。また、バネ圧調整
ナットa2,a2,a3,a3を用いて、糸張力調整装
置60の作動時の押圧力を調整できる構成としている
が、この構成を省いて所定の押圧力のみで押圧する構成
としても良い。
【0138】図15には、この実施の形態の糸張力調整
装置60およびミシン50の制御回路80の概略を示す
ブロック図を示す。糸張力調整装置60の制御回路80
は、CPU(Central Processing Unit )81、ROM
(Read Only Memory)82、RAM(Random Access Me
mory)83、ミシンモータ95を駆動させるミシンモー
タ駆動回路84、および、糸押えシリンダ72を駆動さ
せる糸押えシリンダ駆動回路85等から構成される。
【0139】この制御回路80には、針52a,52b
の昇降運動の中で針52a,52bが上方にきている状
態を検知する針上検知センサ91や、ミシン50の主軸
の1回転を検知するタコジェネレータ92、並びに、操
作表示パネル93、起動要求スイッチ94等が接続され
ており、これら機器からの検知信号や入力信号が入力さ
れるようになっている。
【0140】上記CPU81は、RAM83を作業領域
にROM82中に書き込まれた制御データや制御プログ
ラムに従って、接続された機器から検知信号や入力信号
を入力すると共にこれら検知信号や入力信号に基づきミ
シンモータ95や糸押えシリンダ72の駆動制御を行う
ようになっている。
【0141】この実施の形態の糸張力調整装置60は、
上記のように構成され、ミシン50の運転と連動して縫
い始めの数針に糸の張力を調整して、糸切り後から縫い
始めの数針にありがちな、針先からの糸のすっぽぬけを
防止するようになっている。次に、このミシン50の縫
い始めの制御について説明する。
【0142】まず、この縫い始めの制御に関係するユー
ザーにより行われる設定入力の項目について説明する。
ユーザーによる操作表示パネル93を用いた設定入力の
項目には、針先からの糸のすっぽぬけを防止するために
糸張力調整装置60を作動させる針数の設定項目、糸張
力調整装置60の作動開始の位相(ミシン50の主軸の
回転角度)の設定項目、並びに、糸張力調整装置60の
作動終了の位相(ミシン50の主軸の回転角度)の設定
項目がある。
【0143】ユーザーは、操作表示パネル93を操作し
て、先ず、上記3つの設定項目について設定入力を行っ
ておく。糸張力調整装置60の作動開始から作動終了ま
での位相は、通常、天秤51が上糸を引き上げるタイミ
ングに設定する。なお、この設定をデフォルトとしてR
OM82や図示しない記憶装置に記憶させておいても良
い。
【0144】この設定入力を行った状態で、ユーザーが
起動要求スイッチ94をオン操作すると、このオン信号
が制御回路80に入力され、該オン信号に基づく制御回
路80の制御によってミシンモータ95が駆動される。
針上検知センサ91とタコジェネレータ92とからの検
知出力は、ミシン50の稼働中を通して行われている。
そして、これら針上検知センサ91の検知出力、およ
び、タコジェネレータ92の検知出力に基づいて、制御
回路81で演算が行われてミシン50の主軸の回転位相
がリアルタイムで認識される。
【0145】ミシンモータ95の駆動開始の後、ミシン
50の回転位相が上記設定した糸張力調整装置60の作
動開始の位相に来ると、制御回路80から糸押えシリン
ダ72(糸押えシリンダ72の制御弁)に作動出力が行
われて、糸シリンダ72の作動子73が引かれる方向に
作動して所定ストローク移動する。
【0146】この作動子73の移動により、可動板65
と糸押し板64a,64bとが固定板61側に移動し
て、固定板61と糸押し板64a,64bとの間で上糸
を押圧する。ここで、糸押し板64a,64bは、圧縮
バネ70a,70bの作用で固定板61側に押されてい
る状態にあり、この圧縮バネ70a,70bの作用力で
上糸が押されることになる。また、作動子73の作動ス
トロークは一定であるので、糸の押し圧は、圧縮バネ7
0a,70bの作用力でのみ決まることになる。つま
り、バネ圧調整ナットa2,a2,a3,a3の位置調
整で定めたバネ圧で上糸か押圧されて抵抗力が及ぼされ
る。
【0147】この糸押えシリンダ72が作動したままミ
シン50の回転が進んで上記設定した作動終了の位相に
来ると、制御回路80から糸押えシリンダ72へ逆向き
の作動信号が出力されて、糸押えシリンダ72の作動子
73が押される方向に駆動して、糸張力調整装置60に
よる糸の押圧が解除される。
【0148】そして、上記のような糸押えシリンダ72
の作動制御が、上記設定した針数分だけ行われて、針先
から糸がすっぽぬけるのを防止するための制御を終了
し、通常の縫製制御に戻る。
【0149】図16には、上記のような縫い始め時にお
ける、起動要求スイッチ94、ミシンモータ95、針上
検知センサ91、糸押えシリンダ72、それぞれの操作
タイミングおよび動作タイミングを示すタイミングチャ
ートを示す。図17には、ミシン50の針52a,52
bおよび天秤51の動作と糸張力調整装置60の動作を
示すチャートである。
【0150】上記に説明したミシン50の縫い始めの操
作および動作のタイミングは、図16に示す通りであ
る。同図中、「モータ駆動」の項横のチャートはミシン
モータ95の駆動のオン/オフを示すもの、「上検知」
の項横のチャートは針上検知センサ91のセンサ出力の
オン/オフを示すもの、「糸押えシリンダ」の項横のチ
ャートは糸押えシリンダ72のオン/オフを示すもので
ある。
【0151】また、ミシン50の縫い始めにおける、ミ
シン50と糸張力調整装置60の動作は図17に示す通
りである。このミシン50と糸張力調整装置60の動作
は、上述の3つの設定項目の内、糸張力調整装置60を
作動させる針数の設定項目を「4針」に、糸張力調整装
置60の作動開始の位相を「天秤51が下死点に来た位
相」に、作動終了の位相を「天秤51が上死点に来た位
相」に設定した場合のものである。
【0152】図18には、制御回路80により行われる
糸張力調整装置60の制御処理のフローチャートを示
す。この制御処理は、ミシン50に備わる糸切り装置に
より針板の下で上糸の切断が行われた後において、再び
縫製を開始する際に行われるものである。
【0153】この制御処理が開始されると、先ず、ステ
ップS21において、ユーザーの操作表示パネル93の
操作により糸押えシリンダの駆動針数を入力させて、該
入力された駆動針数データをRAM83中の所定の記憶
領域に記憶させる処理をしてステップS22に移行す
る。
【0154】ステップS22,S23では、ユーザーの
操作表示パネル93の操作により糸押えシリンダ72を
オン作動させる位相角度を入力させる処理、糸押えシリ
ンダ72をオフ作動させる位相角度を入力させる処理を
順次行ってステップS24に移行する。
【0155】なお、上記のステップS21〜S23の入
力処理は、上糸の切断が行われた後における再び縫製を
開始する際に必ず行う必要はなく、例えば、電源投入時
のみに行ったり、或いは、ユーザーによる設定要求が生
じた場合に行うようにしても良い。
【0156】ステップS24では、ミシン50の起動要
求スイッチ94のオン信号の入力を待つ処理を行って、
該オン信号が入力された場合にステップS25に移行す
る。ステップS25では、ミシンモータ95の駆動を開
始させる処理をしてステップS26に移行する。つま
り、このステップS24,S25の処理により、ユーザ
ーが起動要求スイッチ94をオン操作することでミシン
50が駆動される。
【0157】ステップS26では、RAM83中の駆動
針数データ領域に記憶されている駆動針数データが
「0」か否かの判断を行って、「0」であれば、この制
御処理を終了してミシン50の通常の縫製制御処理に移
行するが、「0」でなければ、ステップS27に移行す
る。
【0158】ステップS27では、ミシン50の回転の
位相角度とステップS22で入力された位相角度との比
較を行い、同じ位相角度になった場合にステップS28
に移行し、該ステップで糸押えシリンダ72をオン作動
させる処理をしてステップS29に移行する。
【0159】ステップS29では、ミシン50の回転の
位相角度とステップS23で入力された位相角度との比
較を行い、同じ位相角度になった場合にステップS30
に移行し、該ステップで糸押えシリンダ72をオフ作動
させる処理をしてステップS31に移行する。
【0160】ステップS31では、RAM83中の駆動
針数データ領域に記憶されている駆動針数データから
「1」減算する処理をしてステップS26に戻る。つま
り、ステップS26とステップS31の処理により、ス
テップS21で入力した針数データだけステップS27
〜ステップS30の処理が繰り返し行われ、即ち、縫い
始めから設定した針数だけ糸張力調整装置60が動作す
るようになっている。
【0161】以上のように、この実施の形態の糸張力調
整装置60によれば、上糸を切断した後に縫製を再開す
る際において、針52a,52bからの糸のすっぽ抜け
を防止することが出来る。即ち、一般に、例えば糸切り
装置が針板の下で糸を自動的に切断すると、針先から余
った糸が短くなる場合があり、その後、縫製を再開する
と、糸が針先から抜けてしまうといった不具合が生じる
ことがあるが、この実施の形態の糸張力調整装置60に
よれば、この不具合が防止される。
【0162】なお、本発明は、この実施の形態の糸張力
調整装置60に限られるものではなく、例えば、糸張力
調整装置60を駆動させる駆動手段はエアーシリンダー
の他、メカ的にも構成可能であるし、その他、糸に抵抗
を与える構造や張力の調整を行う糸の数など、具体的に
示した細部構造等は、発明の主旨を逸脱しない範囲で変
更可能である。
【0163】[第6の実施の形態]この第6の実施の形
態は、第5の実施の形態の糸張力調整装置60におい
て、糸押えシリンダ72の構成のバリエーションを示す
ものである。従って、糸押えシリンダ72の先に接続さ
れる張力調整器60A等の構成は同様のものであり、説
明を省略する。
【0164】図19は、この第6の実施の形態の糸張力
調節装置のメカ的な駆動手段の具体例を示すミシン内部
の構造図である。同図において、101はミシンの主
軸、102はウォーム、103はウォームギヤ、105
は布送りカムであり、これらの構成は、例えば、所定の
パターンを縫製するミシンなどに、ミシンを駆動させる
ために一般的に備わるものである。上記布送りカム10
5は、非縫製物を固定する布台をXY方向に移動させる
ためのカムであり、ミシンの主軸101の回転から、ウ
ォーム102、ウォームギヤ103、連結軸104を介
して、運動を伝達して回転するようになっており、この
布送りカム105の1回転で所定のパターンが縫製され
るようになっている。
【0165】図19に示すミシン内部の構成の内、糸張
力調整装置の駆動手段は、糸押えノッチ108、レバー
110,112、連結軸111、ロッド113、駆動レ
バー114、摺動軸117、軸受けメタル116、およ
び、作動子118等から構成される。
【0166】2つのレバー110,112は連結軸11
1と共に固着されており、連結軸111は図示しない軸
受けに回転可能に支持されている。一方のレバー110
は、コロ110aを介して布送りカム105の側面部か
ら僅かに浮いた状態にあり、他方のレバー112はロッ
ド113を介して駆動レバー114に連結されている。
なお、ロッド113は調整ナット113a,113bに
より長さ調整可能になっている。
【0167】ノッチ108は、上記縫製パターンの縫い
始めの数針に、コロ110aに当接してコロ110aを
押す出す位置に設けられており、このコロ110aの移
動により作動子118が駆動するようになっている。
【0168】駆動レバー114は、支点115を中心に
回動可能に支持されており、ロッド113に接続された
側と反対側の端部は、摺動軸117に接続されている。
この接続は、摺動軸117に設けられた長孔部117a
に連結ピン115aを遊嵌してなるもので、駆動レバー
114の回動運動を摺動軸117の直線運動に変換可能
にするものである。
【0169】また、駆動レバー114は、固定されてい
るバネ掛け120に設けられたバネ121により一方向
に引かれた状態にあり、この作用力によって、レバー1
10のコロ110aが布送りカム105の側面に近づく
方向に作用力が働くことになる。また、駆動レバー11
4を所定の位置で係止するストッパー122も設けられ
ており、このストッパー122に当接することで、レバ
ー110のコロ110aが布送りカム105の側面から
僅かに浮いた状態に保たれるようになっている。
【0170】摺動軸117は、軸受けメタル116に軸
線方向に摺動可能に軸支されており、この摺動軸117
の先端に作動子118が形成されている。軸受けメタル
116はミシンのフレームに固定されている。この作動
子118は、第1の実施の形態の作動子73と同様に、
張力調整器60Aに接続されている。
【0171】上記のような構成の糸張力調節装置の駆動
手段によれば、縫製の開始後、所定の上軸位相におい
て、糸押えノッチ108がコロ110aを押しだして、
この運動がレバー110,112、ロッド113および
駆動レバー114を介して摺動軸117に伝達されて、
作動子118を引き戻す方向に作動させる。
【0172】そして、更にこの状態を所定の位相まで保
持した後、糸押えノッチ108がコロ110aの位置か
らずれて、コロ110aが元の位置に戻される。そし
て、このコロ110aの移動と共に作動子118が元の
位置に戻されて糸の押圧が解除され、通常の縫製処理に
戻る。
【0173】この作動子118の作動により、第1の実
施の形態で説明したようにミシンの糸が押圧されて針先
からの糸のすっぽ抜けを防止する。
【0174】この実施の形態の糸張力調整装置によれ
ば、その駆動に複雑な電気制御を必要とせず、製造コス
トの低下を図ることが出来る。
【0175】
【発明の効果】以上のように、この発明の糸張力調整装
置によれば、ミシンの1回転中に上糸に与える抵抗力を
可変に出来るため、必要なときだけ抵抗力を与え、不必
要なときには抵抗力を小さくすることができ、この作用
により、仕上がりの美しい縫製を行うことが出来る。
【0176】例えば、針先にループを形成するループ形
成時に上糸に抵抗を与えることで適正なループが形成で
きるし、針ささり時に抵抗を与えることで上糸に針が刺
さってしまうことが防止できるし、天秤が上糸を引き上
げる糸締め時に抵抗を与えることで縫い目に風合いを付
けることが出来るし、糸切り時に抵抗を与えることで糸
を安定させて確実に切断することが出来るし、糸切り後
の縫い始めにおいて抵抗を与えることで糸のすっぽぬけ
を防止することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の糸張力調整装置を
備えたミシンの面部を示す斜視図である。
【図2】図1の糸張力調整装置を上方から眺めたもの
で、(a)は糸の押圧を解除した状態の平面図、(b)
は糸を押圧した状態の平面図である。
【図3】押圧力に対して摩擦力がなだらかに変化する抵
抗部材が取り付けられている糸張力調整装置を上方から
眺めたもので、(a)は糸の押圧を解除した状態の平面
図、(b)は糸を押圧した状態の平面図である。
【図4】糸張力調整装置の制御を行う制御回路のブロッ
ク図である。
【図5】糸張力調整装置の動作タイミングを示すタイミ
ングチャートである。
【図6】制御回路により行われる糸張力調整装置の制御
処理のフローチャートである。
【図7】糸切り装置が上糸を切断する動作を説明するた
めの斜視図であり、(a)が上糸のさばき開始直前、
(b)が上糸のさばき直後を示している。
【図8】本発明の第2の実施の形態の糸張力調整装置を
備えたミシンの面部を示す斜視図である
【図9】図8の糸張力調整装置を上方から眺めた平面図
である。
【図10】本発明の第3の実施の形態の糸張力調整装置
を2本針ミシンに適用した例を示すミシン面部の斜視図
である。
【図11】本発明の第4の実施の形態の糸張力調整装置
を備えた2本針ミシンの面部を示す斜視図である。
【図12】図11の糸調子装置を上方から眺めた平面図
である。
【図13】本発明の第5の実施の形態の糸張力調節装置
を備えたミシンの面部を示した斜視図である。
【図14】図13の糸張力調節装置の分解斜視図であ
る。
【図15】第5の実施の形態の糸張力調整装置およびミ
シンを制御する制御回路の概略を示すブロック図であ
る。
【図16】起動要求スイッチ、ミシンモータ、針上検知
センサ、糸押えシリンダ、それぞれの、縫い始め時にお
ける、操作タイミングおよび動作タイミングを示すタイ
ミングチャートである。
【図17】ミシン針および天秤の動作と第5の実施の形
態の糸張力調整装置の動作を示すチャートである。
【図18】制御回路により行われる第5の実施の形態の
糸張力調整装置の制御処理のフローチャートである。
【図19】第6の実施の形態の糸張力調節装置におい
て、メカ的な駆動手段の具体例を示すミシン内部の構造
図である。
【符号の説明】
1 ミシン 3 天秤 4 針 7 糸切断装置 9 上糸張力検出器 10 糸張力調整装置(第1の実施の形態) 11 ボイスコイルモータ 12 固定板 13 糸押し板 F 抵抗部材 20 制御回路(制御手段) 30 操作パネル 10A 糸張力調整装置(第2の実施の形態) 14 初期圧調整板(初期圧調整手段) 15 支持ネジ 16 圧縮バネ 17a,17b 固定ナット 10B 糸張力調整装置(第3の実施の形態) 10C 糸張力調整装置(第4の実施の形態) 50 ミシン(第5の実施の形態) 51 天秤 52a,52b 針 60 糸張力調整装置(第5の実施の形態) 61 固定板 64a,64b 糸押し板 72 糸押えシリンダ 80 制御回路 93 操作表示パネル 94 起動要求スイッチ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 平野 靖明 東京都調布市国領町8丁目2番地の1 ジ ューキ株式会社内 (72)発明者 椎名 隆行 東京都調布市国領町8丁目2番地の1 ジ ューキ株式会社内 (72)発明者 小田 洋 東京都調布市国領町8丁目2番地の1 ジ ューキ株式会社内 (72)発明者 春日 俊明 東京都調布市国領町8丁目2番地の1 ジ ューキ株式会社内

Claims (21)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ミシンの上糸に抵抗を与えて該上糸の張
    力を調整するミシンの糸張力調整装置であって、 天秤と針との間に設置され、該間を渡る上糸に対して可
    変的な抵抗力を付与可能な張力調整器を備えてなること
    を特徴とするミシンの糸張力調整装置。
  2. 【請求項2】 前記張力調整器による抵抗力をミシンの
    主軸の1回転中に変化可能に前記張力調整器を動作させ
    る駆動装置を備えてなることを特徴とする請求項1記載
    のミシンの糸張力調整装置。
  3. 【請求項3】 前記駆動装置は高応答性を有する電磁ア
    クチュエーターであることを特徴とする請求項2記載の
    ミシンの糸張力調整装置。
  4. 【請求項4】 前記上糸に与えられる抵抗力をミシンの
    主軸の回転周期に同期させて変化するように前記駆動装
    置を制御する制御手段と、 この制御手段の制御内容である前記抵抗力の変化する位
    相を設定変更する設定手段とを備えたことを特徴とする
    請求項2又は3記載のミシンの糸張力調整装置。
  5. 【請求項5】 前記上糸に与えられる抵抗力をミシンの
    主軸の回転周期に同期させて変化するように前記駆動装
    置を制御する制御手段と、 上糸の張力を検知する張力検知手段とを備え、 前記制御手段は、前記張力検知手段からの検知出力に基
    づき、前記張力調整器が上糸に与える抵抗力の大きさ、
    或いは、前記抵抗力を変化させる位相の、少なくともい
    ずれか一方を変化させることを特徴とする請求項2〜4
    のいずれかに記載のミシンの糸張力調整装置。
  6. 【請求項6】 前記上糸に与えられる抵抗力をミシンの
    主軸の回転周期に同期させて変化するように前記駆動装
    置を制御する制御手段と、 ミシンの回転数を検知する回転数検知手段とを備え、 前記制御手段は、ミシンの回転数に基づき、前記張力調
    整器が上糸に与える抵抗力の大きさ、或いは、前記抵抗
    力を変化させる位相の、少なくともいずれか一方を変化
    させることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載
    のミシンの糸張力調整装置。
  7. 【請求項7】 前記上糸に与えられる抵抗力をミシンの
    主軸の回転周期に同期させて変化するように前記駆動装
    置を制御する制御手段と、 縫製条件を入力する入力手段、又は、縫製条件を検知す
    る縫製条件検知手段とを備え、 前記制御手段は、縫製条件に基づいて、前記張力調整器
    が上糸に与える抵抗力の大きさ、或いは、前記抵抗力を
    変化させる位相の、少なくともいずれか一方を変化させ
    ることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のミ
    シンの糸張力調整装置。
  8. 【請求項8】 前記上糸に与えられる抵抗力をミシンの
    主軸の回転周期に同期させて変化するように前記駆動装
    置を制御する制御手段を備え、 前記上糸に与えられる抵抗力を該抵抗力が最も低い基底
    値に対して大きくなるように前記駆動装置を動作させる
    位相が、天秤が上糸を引き上げる糸締め時に設定されて
    いることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の
    ミシンの糸張力調整装置。
  9. 【請求項9】 前記上糸に与えられる抵抗力をミシンの
    主軸の回転周期に同期させて変化するように前記駆動装
    置を制御する制御手段を備え、 前記上糸に与えられる抵抗力を該抵抗力が最も低い基底
    値に対して大きくなるように前記駆動装置を動作させる
    位相が、針が被縫製物にささる針ささり時に設定されて
    いることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の
    ミシンの糸張力調整装置。
  10. 【請求項10】 前記上糸に与えられる抵抗力をミシン
    の主軸の回転周期に同期させて変化するように前記駆動
    装置を制御する制御手段を備え、 前記上糸に与えられる抵抗力を該抵抗力が最も低い基底
    値に対して大きくなるように前記駆動装置を動作させる
    位相が、針先にループの形成されるループ形成時に設定
    されていることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに
    記載のミシンの糸張力調整装置。
  11. 【請求項11】 前記上糸に与えられる抵抗力をミシン
    の主軸の回転周期に同期させて変化するように前記駆動
    装置を制御する制御手段を備え、 前記上糸に与えられる抵抗力を該抵抗力が最も低い基底
    値に対して大きくなるように前記駆動装置を動作させる
    位相が、上糸が釜を越える釜越時に設定されていること
    を特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のミシンの
    糸張力調整装置。
  12. 【請求項12】 前記上糸に与えられる抵抗力をミシン
    の主軸の回転周期に同期させて変化するように前記駆動
    装置を制御する制御手段を備え、 前記上糸に与えられる抵抗力を該抵抗力が最も低い基底
    値に対して大きくなるように前記駆動装置を動作させる
    位相が、針先が被縫製物に刺さろうとする針ささり時、
    天秤が上糸を引き上げる糸締め時、針先にループが形成
    されるループ形成時、上糸が釜を越える釜越時の、いず
    れか複数を組み合わせた期間に設定されていることを特
    徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のミシンの糸張
    力調整装置。
  13. 【請求項13】 上糸を針板の下で自動的に切断する糸
    切り装置によって行われる糸切り時に、前記上糸に与え
    られる抵抗力を該抵抗力が最も低い基底値に対して大き
    くなるように前記駆動装置を動作させる制御手段を備え
    たことを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のミ
    シンの糸張力調整装置。
  14. 【請求項14】 前記張力調整器により前記上糸に与え
    た抵抗力を低い方に戻す時に、前記駆動装置の抵抗を与
    える動作に対して逆方向に動作させる逆動作電流を前記
    駆動装置に出力することを特徴とする請求項2〜4のい
    ずれかに記載のミシンの糸張力調整装置。
  15. 【請求項15】 前記張力調整器の作動を解除する解除
    手段を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか
    に記載のミシンの糸張力調整装置。
  16. 【請求項16】 前記張力調整器により上糸に与えられ
    る抵抗力の最も低い基底値は、無負荷でなく有量の値で
    あることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の
    ミシンの糸張力調整装置。
  17. 【請求項17】 前記張力調整器により上糸に与えられ
    る抵抗の前記基底値を調整可能な初期張力調整手段を備
    えたことを特徴とする請求項16記載のミシンの糸張力
    調整装置。
  18. 【請求項18】 複数の針を有する多本針ミシンに設け
    られ、 前記張力調整器および駆動装置が少なくとも1個ずつ設
    けられていることを特徴とする請求項2〜4のいずれか
    に記載のミシンの糸張力調整装置。
  19. 【請求項19】 複数の針を有する多本針ミシンに設け
    られ、 前記張力調整器および駆動装置が前記複数の針に対応し
    て複数設けられ、これら複数の張力調整器および駆動装
    置がそれぞれ別個に制御可能なことを特徴とする請求項
    2〜4のいずれかに記載のミシンの糸張力調整装置。
  20. 【請求項20】 上糸を針板の下で自動的に切断する糸
    切り装置によって上糸が切断された後の縫い始めの数針
    において、少なくとも天秤が上糸を引き上げる糸締め時
    に、前記上糸に与えられる抵抗力を該抵抗力が最も低い
    基底値に対して大きくなるように前記駆動装置を駆動さ
    せる手段を備えたことを特徴とする請求項2〜4のいず
    れかに記載のミシンの糸張力調整装置。
  21. 【請求項21】 前記張力調整器は、押圧力の変化に対
    して摩擦力が緩やかに変化する抵抗部材を介して上糸に
    抵抗を与えることを特徴とする請求項1〜20のいずれ
    かに記載のミシンの糸張力調整装置。
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