JPH1144023A - コンクリート打ち込み型枠とこれを用いたコンクリート 板の成形方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 現場での型枠工、配筋工を不要にし、簡単な
作業で、かつ良品質のコンクリート板を形成する。型枠
を軽量化し、工場から現場への型枠の搬送を容易にす
る。 【構成】 薄鋼板２の片面に縦横主筋３〜６を突出状態
で固設する。縦横主筋３〜６を挟んで上記薄鋼板２と反
対側面に所定の被りＤ₂ を有して有孔板９を固着する。
薄鋼板２と有孔板９間にコンクリート流入用の空間１２
を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明はコンクリート打ち込
み型枠とこれを用いたコンクリート板の成形方法に関す
るもので、より詳しくは、建物の壁板或いは土木工事に
おける擁壁をコンクリートで構築するために使用するコ
ンクリート打ち込み型枠とこれを用いたコンクリート板
の成形方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、現場でコンクリート壁を構築する
方法として、一般に、現場において構成すべき壁の表裏
に合板からなる型枠を組み立て、その型枠間にコンクリ
ートを流し込む方法（第１の従来の技術とする）や、擁
壁において、片面合板型枠とコンクリート薄板を配し、
これらの間にコンクリートを打設する方法（第２の従来
の技術とする）や、更に、両面にメッシュ又はラスから
なる型枠を配設して、これらの間にコンクリートを打設
する方法（第３の従来の技術とする）がある。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】上記第１の従来の技術
による施工方法においては、現場で型枠締め付け金物等
により型枠を組み立て、かつ配筋することから現場での
作業に時間がかかり施工期間が長くなる上に、型枠工や
配筋工等の専門職を必要とする。更に、最近では熱帯雨
林保護の観点からも木製型枠の使用は好ましくない。

【０００４】また、上記第２の従来の技術の施工方法に
おいても、現場において主筋等の配筋作業を要する上に
コンクリート薄板との配筋接合等の作業を必要とし、上
記と同様に現場での作業に時間がかかる上に専門職も必
要とする。

【０００５】更に、上記第１及び第２の施工方法におい
ては、現場打ちコンクリートの打設時において、その現
場打ちコンクリートの打設状況、例えば巣等の欠陥部分
の発生の有無状況が型枠外部から見ることができず、巣
等の欠落部分が発生しやすく、品質確保上の問題があ
る。

【０００６】また、上記第３の従来の技術による施工方
法においては、上記欠陥分を型枠外から見ることができ
るが、その型枠を工場でほとんど組み立てて現場へ搬送
すると、メッシュやラスの型枠が剛性不足からすぐに変
形するため、精度が悪く、やはり現場においてその両面
の型枠を組み立てる必要があり、上記と同様に組み立て
時間を要し、専門職を要する。

【０００７】そこで上記の問題を解消するために本出願
人は先に、図６に示すように、コンクリート薄板１００
の片面に縦横主筋等の配筋１０１を突出状態で固設し、
該配筋１０１を挟んで上記コンクリート薄板１００と反
対側面に所定の被りを有して有孔板１０２を固着して、
コンクリート薄板１００と有孔板１０２間にコンクリー
ト流入用の空間１０３を形成したコンクリート打ち込み
型を提供した（特願平８−２０１８２０号）。

【０００８】しかし、該先の出願においては、片面がコ
ンクリート薄板１００で形成されているため、そのコン
クリート薄板１００の重量からその型枠全体が重くな
り、その現場での取り扱いに重機を必要とし、重機を使
用できない箇所での設置が困難である上に重機を使用す
る分コスト高になる。更に、そのコンクリート打ち込み
型枠を工場生産する場合には、そのコンクリート薄板１
００を成型するベッド、型枠、コンクリート打設用の設
備を必要とし、更にはそのコンクリートの養生時間を必
要とするなどの問題がある。

【０００９】そこで本発明は上記の各問題を解決するコ
ンクリート打ち込み型枠とこれを用いたコンクリート板
の成形方法を提供することを目的とするものである。

【００１０】

【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めに、請求項１記載の発明は、薄鋼板の片面に縦横主筋
等の配筋を突出状態で固設し、該配筋を挟んで上記薄鋼
板と反対側面に所定の被りを有して有孔板を備えて、薄
鋼板と有孔板間にコンクリート流入用の空間を形成して
なることを特徴とするコンクリート打ち込み型枠であ
る。

【００１１】請求項２記載の発明は、上記有孔板を、金
属製メッシュ板、金属製ラスとしたコンクリート打ち込
み型枠である。請求項３記載の発明は、薄鋼板の片面に
縦横主筋等の配筋を突出状態で固設し、該配筋を挟んで
上記薄鋼板と反対側面に所定の被りを有して有孔板を固
着して、薄鋼板と有孔板間にコンクリート流入用の空間
を形成してなるコンクリート打ち込み型枠を工場生産
し、これを複数個、現場においてその隣接する薄鋼板相
互及び有孔板相互を連結して連設し、その薄鋼板と有孔
板との空間内に生コンクリートを流入してコンクリート
板を成形することを特徴とするコンクリート板の成形方
法である。

【００１２】請求項４記載の発明は、薄鋼板の片面に縦
横主筋等の配筋を突出状態で固設してなる半製品を工場
生産し、これを現場に搬送して現場において、上記配筋
を挟んで薄鋼板と反対側面に所定の被りを有して有孔板
を固着して、薄鋼板と有孔板間にコンクリート流入用の
空間を形成し、このように形成されたコンクリート打込
み型枠を複数個、その隣接する薄鋼板相互及び有孔板相
互を連結して連設し、その薄鋼板と有孔板との空間内に
生コンクリートを流入してコンクリート板を成形するこ
とを特徴とするコンクリート板の成形方法である。

【００１３】

【発明の実施の形態】図１乃至図５に示す実施例に基づ
いて本発明の実施の形態について説明する。図１乃至図
３は第１実施例を示す。本実施例のコンクリート打ち込
み型枠１を構成する薄鋼板２は、トラック、トレーラ等
によって工場から現場へ搬送することができる所定の縦
幅及び横幅に形成されている。該薄鋼板２は亜鉛メッキ
鋼板等の防錆処理を施した鋼板等で形成され、部分的に
補強リブ２ａが折曲形成されている。更に、該薄鋼板２
の横方向の一端には一方の係止片２ｂが折曲形成され、
他端には上記係止片２ｂと噛み合う形状に折曲された他
方の係止片２ｃが形成されている。

【００１４】上記薄鋼板２の内面側には、縦横主筋が固
設されている。該縦横主筋の構成は、上側縦主筋３と、
下側縦主筋４と、上側縦主筋３に直交して配置した上側
横主筋５と、下側縦主筋４に直交して配置した下側横主
筋６とからなる。更に、上記上側縦主筋３と下側縦主筋
４間はトラス筋７で連結され、更に、各上側縦主筋３間
は折曲した吊筋８で連結され、その吊筋８の底部８ａを
上記薄鋼板２の内面に溶接固着して各上側縦主筋３及び
下側縦主筋４を吊り保持している。上記各筋の接合部は
溶接或いは締結筋で連結されており、結果的に、薄鋼板
２と配筋とは一体化している。

【００１５】上記の構成によって、上側縦主筋３と上側
横主筋５は、薄鋼板２から所定の間隔Ｄ₁ を有して配置
保持され、また、下側縦主筋４と下側横主筋６も薄鋼板
２から所定の距離（被り）をもって配置されている。

【００１６】上記上側横主筋５の外側には所定の被りＤ
₂ をもって有孔板９が、上記薄鋼板２と平行に配置さ
れ、所定の位置において、主筋、例えば上側横主筋５に
固設したボルト及びナット等の保持部材１０によって保
持されている。この保持部材１０は薄鋼板２に立設して
もよい。該有孔板９は、生コンクリートが流出しない孔
を有する孔明き合板、金属製メッシュ板、金属製ラス板
等で形成されている。尚、該有孔板９の横方向の一端９
ｂは薄鋼板２の横方向の端面と同一位置まで形成され、
有孔板９の横方向の他端９ａは図１に示すように薄鋼板
２の横方向の端面より若干長く形成され、重ね代部を形
成している。

【００１７】また、上記の構成により、薄鋼板２と有孔
板９間に空間１２が形成され、この空間１２の上下及び
左右は開口している。次に上記のコンクリート打ち込み
型枠（以下単に型枠ともいう）を使用して現場でコンク
リート板を打設する施工方法について説明する。

【００１８】先ず、工場において、上記各鉄筋を上記の
ように組み立てて連結するとともに吊筋８の底部８ａを
薄鋼板２に溶接して、各主筋を吊り保持状態で薄鋼板２
に付設する。また、有孔板９を保持部材１０で被りＤ₂
を有して固着する。上記のように形成した型枠１を工場
からトラックやトレーラで現場に搬送する。

【００１９】そして、現場へ搬送した後、現場の施工位
置において、先ず１枚の型枠１を、その薄鋼板２が垂直
になるようにして起立配置する。このとき、その型枠１
は前記従来のコンクリート薄板に代えて薄鋼板にし、そ
の分軽量化しているので、重機を使用することなく２人
の作業者で運搬、立て起こし作業が行える。例えば、そ
の型枠１の大きさを、幅６００ｍｍ、高さ３０００ｍｍ
とするとその型枠１の重量は約５０〜６０ｋｇとなり、
２人の作業者で運搬、立て起こし作業が可能になる。

【００２０】次で、図２及び図３に示すように、上記の
型枠１と同一構造の他の型枠１Ａを上記型枠１の一方の
側端に、他の型枠１Ａにおける薄鋼板２の他方の係止片
２ｃを型枠１における薄鋼板２の一方の係止片２ｂに嵌
合して起立配置する。

【００２１】また、この両型枠１，１Ａの上側横主筋
５，５間を接続筋１１で結束筋等により連結する。更
に、一方の型枠１における有孔板９の重ね代９ａを他方
の型枠１Ａにおける有孔板９の一端９ｂの外面に重合し
てこれらを保持部材１０で連結する。以後、更に他の型
枠を順次所定枚同様にして連設する。

【００２２】連接した型枠の側端は、他の壁型枠或いは
柱型枠に連通するか、他のコンクリート壁或いはコンク
リート柱等で閉塞する。次で、上記所定枚連設した型枠
の空間、すなわち、薄鋼板２と有孔板９との空間１２内
に生コンクリートを注入する。

【００２３】この生コンクリートの注入時においては、
有孔板９の孔を通じてコンクリートの注入状況を目視し
て監視できる。そして、注入されたコンクリートの硬化
により、その注入されたコンクリートと、薄鋼板２と、
各鉄筋と、有孔板９とが一体化したコンクリート板が成
形される。

【００２４】また、上記の説明では、有孔板９も工場で
組み付けるようにしたが、この有孔板９を工場で組み付
けることなく、現場にて組み付けてもよく、このように
すれば、剛性の低い有孔板９を搬送中に損傷させること
がないし、運搬効率も向上する。

【００２５】尚、上記のコンクリート打ち込み型枠によ
って形成するコンクリート板としては、建物のコンクリ
ート壁や土木の擁壁などである。図４は本発明の第２実
施例を示す。

【００２６】本第２実施例は、上記第１実施例における
配筋構造を異なる構造にした例である。すなわち、上側
縦主筋３と、下側縦主筋４とを２本の斜筋（ラチス筋）
１４で溶接連結して、一般にオムニアトラスと呼ばれる
トラス筋を構成し、これに上側横主筋５と下側横主筋６
を配筋して溶接或いは結束筋で固着し、更に、上記斜筋
１４を薄鋼板２に溶接固着したものである。その他の構
造は上記第１実施例と同様であり、同一部分には同一符
号を付してその説明を省略する。

【００２７】本第２実施例においても上記第１実施例と
同様の作用、効果を発揮できる。なお、鉄筋の配筋構造
は上記の実施例の構造に限定するものではなく、他の配
筋構造でもよい。

【００２８】また、上記薄鋼板２は、上記実施例のよう
なリブを形成したものの外に、図５に示すような折板構
造の薄鋼板２Ａを使用してもよい。

【００２９】

【発明の効果】以上のようであるから、本発明のコンク
リート打ち込み型枠を、現場において配置することによ
り、その薄鋼板と有孔板が型枠となり、その薄鋼板と有
孔板間にコンクリートを流入することにより建物の壁や
土木の擁壁などの鉄筋コンクリート板を形成できる。し
たがって、このコンクリート打ち込み型枠を工場で形成
することにより、従来のような現場での型枠締め付け金
物等による型枠の組み立てや配筋作業が不要になり、組
立工や配筋工等の専門職が不要で、一般職による簡単な
作業でよく、更に現場の環境保全に有効で、かつ工期の
短縮化が図り得る。更に、配筋を含むコンクリート打ち
込み型枠が工場で製造できるため、打設されたコンクリ
ート板の良品質が確保できる。

【００３０】更に、現場でのコンクリート打設時におけ
るコンクリートの流入の状況が有孔板の孔を通して目で
監視できるので、その作業が容易である上に、巣等の欠
陥部の発生を防止し良品質のコンクリート板を形成でき
る。

【００３１】また、工場において全体をコンクリートで
製品化するＰＣ板に比べて本発明のコンクリート打ち込
み型枠は軽量化できるので、現場への搬入、現場での取
り扱いが容易である。

【００３２】更に、木材を使用しないので、熱帯雨林保
護の観点からも有効である。特に本発明においては、前
記従来のコンクリート薄板に代えて薄鋼板を用いたの
で、その分、そのコンクリート打ち込み型枠全体を軽量
化でき、現場での搬送、立て起こし等の作業が重機を必
要とせずに人手で行うことができる。そのため、重機を
使用できない箇所での設置が可能になり、その適用範囲
が広くなる上に重機を使用しない分だけコスト低減を図
り得る。

【００３３】更に工場においてコンクリート薄板の成形
が不要であるため、コンクリート薄板の成形ベッド、型
枠、コンクリート打設用の設備が不要になり、かつコン
クリートの養生期間も不要になる。そのため、工場での
コンクリート打ち込み型枠の製造が容易になる。

【００３４】更に、請求項４記載の発明のように、有孔
板を現場で組み付けることにより、現場への搬送時に剛
性の低い有孔板の損傷を防止でき、かつ運搬効率も向上
する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１実施例を示す型枠の平断面図。

【図２】図１の型枠の連接状態を示す接合部の平断面
図。

【図３】図２の状態における斜視図。

【図４】本発明の第２実施例を示す型枠の平断面図。

【図５】本発明における薄鋼板の他の例を示す平面図。

【図６】本出願人が先に出願した型枠の平断面図。

【符号の説明】

１…型枠 ２…薄鋼板 ３，４…縦主筋 ５，６…横主筋 ９…有孔板 １２…空間 Ｄ₂ …被り

フロントページの続き (72)発明者 浅井 規和 愛知県豊田市亀首町上向イ田65番地 豊田 総建株式会社内 (72)発明者 山内 清徳 愛知県豊田市亀首町上向イ田65番地 豊田 総建株式会社内

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 薄鋼板の片面に縦横主筋等の配筋を突出
   状態で固設し、該配筋を挟んで上記薄鋼板と反対側面に
   所定の被りを有して有孔板を備えて、薄鋼板と有孔板間
   にコンクリート流入用の空間を形成してなることを特徴
   とするコンクリート打ち込み型枠。
2. 【請求項２】 有孔板が金属製メッシュ板又は金属製ラ
   ス板である請求項１記載のコンクリート打ち込み型枠。
3. 【請求項３】 薄鋼板の片面に縦横主筋等の配筋を突出
   状態で固設し、該配筋を挟んで上記薄鋼板と反対側面に
   所定の被りを有して有孔板を固着して、薄鋼板と有孔板
   間にコンクリート流入用の空間を形成してなるコンクリ
   ート打ち込み型枠を工場生産し、これを複数個、現場に
   おいてその隣接する薄鋼板相互及び有孔板相互を連結し
   て連設し、その薄鋼板と有孔板との空間内に生コンクリ
   ートを流入してコンクリート板を成形することを特徴と
   するコンクリート板の成形方法。
4. 【請求項４】 薄鋼板の片面に縦横主筋等の配筋を突出
   状態で固設してなる半製品を工場生産し、これを現場に
   搬送して現場において、上記配筋を挟んで薄鋼板と反対
   側面に所定の被りを有して有孔板を固着して、薄鋼板と
   有孔板間にコンクリート流入用の空間を形成し、このよ
   うに形成されたコンクリート打込み型枠を複数個、その
   隣接する薄鋼板相互及び有孔板相互を連結して連設し、
   その薄鋼板と有孔板との空間内に生コンクリートを流入
   してコンクリート板を成形することを特徴とするコンク
   リート板の成形方法。