JPH1139963A - 酸化物超電導線材、撚線およびそれらの製造方法ならびに酸化物超電導導体 - Google Patents

酸化物超電導線材、撚線およびそれらの製造方法ならびに酸化物超電導導体

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JPH1139963A
JPH1139963A JP9191266A JP19126697A JPH1139963A JP H1139963 A JPH1139963 A JP H1139963A JP 9191266 A JP9191266 A JP 9191266A JP 19126697 A JP19126697 A JP 19126697A JP H1139963 A JPH1139963 A JP H1139963A
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修司 母倉
Norihiro Saga
宣弘 嵯峨
Jun Fujigami
純 藤上
Kazuya Daimatsu
一也 大松
Hideo Ishii
英雄 石井
Yoshihiro Iwata
良浩 岩田
Shoichi Honjo
昇一 本庄
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    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E40/00Technologies for an efficient electrical power generation, transmission or distribution
    • Y02E40/60Superconducting electric elements or equipment; Power systems integrating superconducting elements or equipment

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 円形または略回転対称の多角形である断面を
有しかつ高い臨界電流密度を有する酸化物超電導線材を
提供するとともに、それを用いた撚線およびケーブル用
導体を提供する。 【解決手段】 酸化物超電導線10において、酸化物超
電導体フィラメント12を覆う安定化マトリックス14
の中心部14aはその周囲14bよりも硬い材料からな
る。中心部14aを銀合金、周囲14bを銀とする。フ
ィラメント12のアスペクト比は4〜40である。フィ
ラメント12の厚みは2μm〜50μmである。フィラ
メント12は線材10の中心に対して略回転対称に配置
される。フィラメント12は所定の方向に積層されてい
ることが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、酸化物超電導体を
用いた線材、撚線および導体、ならびにその線材および
撚線の製造方法に関し、特に、高い臨界電流密度を有す
る断面が略円形または略回転対称である多角形の線材、
およびそれを用いた交流損失の少ない撚線および導体の
構造、ならびにそれらの線材および撚線を製造するため
の方法に関する。
【0002】
【従来の技術】銀シースビスマス系酸化物超電導線材に
ついて、104 A/cm2 を越える臨界電流密度を有す
る長尺線が開発されてきた。そのような線材は、液体窒
素によって冷却する超電導電力機器への応用が期待され
ている。しかし、現段階では、テープ形状の線材のみ
が、実用に値する臨界電流密度、長さ、量産技術等の条
件を満足するようになってきている。高い臨界電流密度
を得るためには、圧延工程によって超電導フィラメント
のアスペクト比を大きくし、板状の結晶を成長させるこ
とが有利に働いている。
【0003】従来、圧延工程を経ないで製造された断面
が円形の銀シース酸化物超電導線材は、テープ状線材に
比べて臨界電流密度が顕著に小さかった。従来の丸線材
では、超電導相の密度がそれほど高くなく、結晶の配向
がそれほど進んでいない。特開平4−262308号公
報は、金属層と酸化物超電導体層とを同心円状に交互に
積層した丸線を開示する。同公報に開示される技術で
は、多重環構造で交互に積層された酸化物超電導体と金
属との界面同士の距離を100μm以下にすることで、
酸化物超電導体にc軸配向性を付与し、臨界電流密度を
向上させようとしている。しかし、多重環構造を有する
線材の臨界電流密度は、テープ状線材で得られるそれよ
りも一桁小さく、実用上満足のいくものではない。丸線
において臨界電流密度を向上させようとした別の例が、
Cryogenics(1992)Vol.32,No.11,9
40−948に開示される。同文献が示す丸線におい
て、断面が矩形の単芯ロッド55本が、銀チューブ内に
おいて同心円状に3層で配置される。得られた線材につ
いて臨界電流密度の測定は行なわれていない。しかし、
後述するように、同文献に示された線材はそれほど高い
臨界電流密度を有しないと推定できる。
【0004】超電導線材の交流用途では、変動磁界によ
って生じる交流損失が問題になる。さらに、超電導線材
を集合したケーブル導体においては、線材間のインピー
ダンスの不均一によって偏流等の問題が生じる。線材を
多数集合した導体において、このような偏流は、素線自
体に発生する交流損失の総和よりも導体に発生する交流
損失の方が大きくなる原因となる。これまで、テープ状
の酸化物超電導線材を円筒形状のパイプ上に多層で螺旋
状に巻き付けた大容量の導体が試作されてきているが、
その構造に起因して発生する交流損失は大きく、実用に
必要なレベルまで交流損失を減らすことが望まれてい
る。従来より金属系超電導体の分野では、交流損失を低
減するためたとえば次のような対策がなされている。極
細フィラメント線を開発する。フィラメントの周囲に高
抵抗バリア層を設ける。マトリックスの比抵抗を高くす
る。フィラメントまたは線材に撚りを施す。線材または
フィラメントの転位により各フィラメントまたは各線材
のインピーダンスを均一にする。酸化物超電導体の分野
においても、これらの対策は有効であると考えられる。
しかしながら、現実には、酸化物超電導体の材質、線材
に必要な材料および構造等に起因して、これらの対策を
十分にとることができない。特に、テープ状線材を用い
て撚線を製造することは実質的に不可能である。撚線を
作製するためには、断面が円形またはそれに近い形状の
線材が必要である。したがって、テープ状線材と同程度
のレベルの臨界電流密度を有する丸線の開発が望まれて
いる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、断面
が円形またはそれに近い形状を有し、かつテープ状線材
に匹敵する高い臨界電流密度を有する酸化物超電導線材
を提供することである。
【0006】本発明のさらなる目的は、そのような線材
を用いて、交流損失が小さく、高い電流密度を有する撚
線、およびケーブル等のための導体を提供することであ
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明により、パウダー
・イン・チューブ法を用いて製造される酸化物超電導線
材が提供される。
【0008】本発明による線材は、酸化物超電導体から
なりリボン形状で線材の長手方向に延びる複数のフィラ
メントと、複数のフィラメントを覆う安定化マトリック
スとを備える。そこにおいて、フィラメントのアスペク
ト比は4〜40の範囲であり、フィラメントの厚みは2
μm〜50μmの範囲である。線材の長手方向に略垂直
な断面の形状は、略円形または略回転対称である六角形
以上の多角形である。安定化マトリックスの中心部は、
その周囲よりも硬い材料からなる。
【0009】線材において、安定化マトリックスの中心
部は略円筒形状とすることができ、その周囲にフィラメ
ントを略回転対称に配置することができる。また、安定
化マトリックスの中心部は銀合金とすることができ、そ
の周囲の安定化マトリックスは銀とすることができる。
【0010】本発明によるもう1つの線材は、フィラメ
ントについて特定の配置を有する。線材の中心部に、略
円筒形の安定化マトリックスが配置され、かつその周り
に略回転対称に複数のフィラメントが配置される。複数
のフィラメントは、安定化マトリックスを介して第1の
方向に層状に重ねられるものと、安定化マトリックスを
介して第1の方向と略垂直な第2の方向に層状に重ねら
れるものとからなる。この線材も、酸化物超電導体から
なりリボン形状で線材の長手方向に延びる複数のフィラ
メントと、複数のフィラメントを覆う安定化マトリック
スとを備える。フィラメントのアスペクト比は4〜40
の範囲内であり、フィラメントの厚みは2μm〜50μ
mの範囲内であり、線材の長手方向に略垂直な断面の形
状は略円形である。
【0011】線材の中心部に配置された安定化マトリッ
クスは、その周囲の安定化マトリックスよりも硬い材料
からなることが好ましい。線材の中心部に配置される安
定化マトリックスは銀合金とすることができ、その周囲
の安定化マトリックスは銀とすることができる。
【0012】本発明に従って、さらに特定のフィラメン
トの配置を有する線材が提供される。線材において、複
数のフィラメントは、線材の中心部において安定化マト
リックスを介して第1の方向に層状に重ねられるもの
と、その両側において第1の方向と略垂直な第2の方向
に安定化マトリックスを介して層状に重ねられるものと
からなる。複数のフィラメントは、線材の中心に対して
略回転対称に配置される。この線材も、酸化物超電導体
からなりリボン形状で線材の長手方向に延びる複数のフ
ィラメントと、複数のフィラメントを覆う安定化マトリ
ックスとを備え、そこにおいてフィラメントのアスペク
ト比は4〜40の範囲内であり、フィラメントの厚みは
2μm〜50μmの範囲内であり、かつ線材の長手方向
に略垂直な断面の形状は略円形である。
【0013】本発明による線材において、酸化物超電導
体は、(Bi,Pb)2 Sr2 Ca 2 Cu3 10-x、B
2 Sr2 Ca2 Cu3 10-x(0≦X≦1)等のビス
マス系2223相超電導体、(Bi,Pb)2 Sr2
1 Cu2 8-Z 、Bi2 Sr2 Ca1 Cu2
8-Z (0≦Z≦1)等のビスマス系2212相酸化物超
電導体を含むビスマス系酸化物超電導体であることが好
ましい。
【0014】本発明によって、上述した少なくともいず
れかの酸化物超電導線材を複数本撚り合わせてなる撚線
が提供される。本発明者らは、パウダー・イン・チュー
ブ法を用いて製造された酸化物超電導線材が次の条件
(a)〜(c)を満たせば、線材を撚り合わせるだけ
で、交流損失が顕著に低い撚線を提供できることを見い
出した。本発明による撚線は、平角成形等の成形工程を
経なくとも転位の効果により結合損失が顕著に低い。し
かし、本発明は、成形されていない撚線に限定されるも
のではなく、交流損失の低減および電流密度の向上のた
めに成形された撚線、たとえば平角成形撚線等を含む。
【0015】(a) フィラメントのアスペクト比が4
〜40の範囲である。 (b) フィラメントの厚みが2μm〜50μmの範囲
である。
【0016】(c) 線材の長手方向に略垂直な断面の
形状が略円形または略回転対称である六角形以上の多角
形である。
【0017】本発明による撚線において、酸化物超電導
線材は、安定化マトリックスよりも比抵抗の高い金属か
らなる層または無機絶縁材料からなる層によって覆われ
ていることが好ましい。これらの層により、素線間の電
磁気的結合を低減またはなくすことができ、より交流損
失の低い撚線を提供することができる。また撚線におい
て、素線自体がツイストされていることは交流損失の低
減のためにより好ましい。
【0018】本発明によって、上述した撚線を複数本、
1層または2層以上で長尺の芯材上に集合してなる導体
を提供することができる。
【0019】本発明により、酸化物超電導体からなる複
数のフィラメントが安定化材で覆われた酸化物超電導線
材の製造方法が提供される。製造方法は、酸化物超電導
体の原料粉末を安定化材からなるチューブに充填する工
程と、粉末が充填されたチューブに塑性加工を施してテ
ープ状線材を得る工程と、テープ状線材を複数本、第1
の安定化材からなる棒状体と共に第2の安定化材からな
るチューブに充填する工程と、テープ状線材および棒状
体が充填されたチューブに塑性加工を施して、断面が略
円形または略回転対称である六角形以上の多角形である
線材を得る工程と、得られた線材に熱処理を施して酸化
物超電導体の焼結体を生成させる工程とを備える。テー
プ状線材において、粉末からなる部分は4〜40のアス
ペクト比を有するリボン形状である。第1の安定化材は
第2の安定化材よりも硬い。第1の安定化材からなる棒
状体は、第2の安定化材からなるチューブの略中心に配
置され、かつテープ状線材は棒状体の周りに配置され
る。熱処理の後、酸化物超電導体からなるフィラメント
の厚みが2μm〜50μmの範囲内である線材を得る。
【0020】この製造方法において、第1の安定化材か
らなる棒状体は略円筒形とすることができ、その周囲に
テープ状線材を略回転対称に配置することができる。第
1の安定化材は銀合金とすることができ、第2の安定化
材は銀とすることができる。
【0021】本発明により、もう1つの製造方法が提供
される。この製造方法は、酸化物超電導体の原料粉末を
安定化材からなるチューブに充填する工程と、粉末が充
填されたチューブに塑性加工を施してテープ状線材を得
る工程と、テープ状線材を複数本、安定化材からなる円
筒形状の棒状体と共に安定化材からなるチューブに充填
する工程と、テープ状線材および棒状体が充填されたチ
ューブに塑性加工を施して断面が略円筒形の線材を得る
工程と、得られた線材に熱処理を施して酸化物超電導体
の焼結体を生成させる工程とを備える。テープ状線材に
おいて粉末からなる部分は4〜40のアスペクト比を有
するリボン形状である。棒状体は、チューブの略中心に
配置され、かつテープ状線材は棒状体の周りに略回転対
称に配置される。略回転対称に配置された複数のテープ
状線材は、第1の方向に層状に重ねられたものと、第1
の方向と略垂直な第2の方向に層状に重ねられたものと
からなる。熱処理工程の後、酸化物超電導体からなるフ
ィラメントの厚みが2μm〜50μmの線材を得る。
【0022】この方法において、棒状体はそれを充填す
るためのチューブより硬い材料からなることが好まし
い。棒状体は銀合金からなることができ、それを充填す
るためのチューブは銀からなることができる。
【0023】本発明による他の製造方法は、酸化物超電
導体の原料粉末を安定化材からなるチューブに充填する
工程と、粉末が充填されたチューブに塑性加工を施して
テープ状線材を得る工程と、テープ状線材を複数本、安
定化材からなるチューブに充填する工程と、テープ状線
材が充填されたチューブに塑性加工を施して断面が略円
形の線材を得る工程と、得られた線材に熱処理を施して
酸化物超電導体の焼結体を生成させる工程とを備える。
テープ状線材において、粉末からなる部分は4〜40の
アスペクト比を有するリボン形状である。チューブに充
填された複数のテープ状線材は、チューブ内の中心部に
おいて第1の方向に層状に重ねられたものと、その両側
において第1の方向と略垂直な第2の方向に層状に重ね
られたものとからなる。複数のテープ状線材は、チュー
ブの中心に対して略回転対称に配置される。熱処理工程
の後、酸化物超電導体からなるフィラメントの厚みが2
μm〜50μmの線材を得る。
【0024】上述した製造方法において、テープ状線材
をチューブに充填する工程は、安定化材、たとえば安定
化材からなる棒状体、線材等をさらにチューブに充填し
て80%以上の充填密度を得る工程を備えることが好ま
しい。充填密度を上げることにより、得られる線材の臨
界電流密度を向上させることができる。また、熱処理工
程の後、線材の断面が5%〜50%の割合で減る伸線加
工を行なってもよい。伸線加工の後、酸化物超電導体を
焼結するための熱処理をさらに行なうことが好ましい。
【0025】製造方法において、ビスマス系2223相
酸化物超電導体、ビスマス系2212相酸化物超電導体
等のビスマス系酸化物超電導体の原料粉末を好ましく充
填することができる。
【0026】本発明による撚線の製造方法は、上述した
製造方法のいずれかで得られた線材を複数本撚り合わせ
る工程と、得られた撚線を、酸化物超電導体の焼結体を
生成できる温度において熱処理する工程とを備える。
【0027】本発明によるもう1つの撚線の製造方法
は、上述した製造方法のいずれかで得られた線材の表面
を、安定化材よりも比抵抗の高い金属からなる層または
無機絶縁材料からなる層で被覆する工程と、被覆された
線材を複数本撚り合わせる工程と、得られた撚線を、酸
化物超電導体の焼結体を生成できる温度において熱処理
する工程とを備える。
【0028】本発明による他の撚線の製造方法は、上述
した製造方法のいずれかで得られた線材の表面に金属め
っき層を形成する工程と、金属めっきされた線材を複数
本撚り合わせる工程と、得られた撚線を、大気などの酸
化性雰囲気下で、酸化物超電導体の焼結体を生成できる
温度において熱処理する工程とを備える。熱処理におい
て、金属めっき層が酸化されることにより、撚り合わさ
れた線材間が金属酸化物によって電気的に絶縁される。
【0029】上述した撚線の製造方法において、撚り合
わせ工程の前に、線材をツイストしてもよい。ツイスト
された線材を撚り合わせることにより、より好ましい転
位の効果を得ることができる。
【0030】
【発明の実施の形態】本発明による線材は、安定化マト
リックス中に複数の酸化物超電導体フィラメントが埋込
まれた構造を有する多芯線である。各フィラメントは、
リボン形状であり、線材の長手方向に延びている。フィ
ラメントは、矩形またはそれに近い断面を有する。フィ
ラメントのアスペクト比は、フィラメントの厚みに対す
る幅の比である。アスペクト比は、4〜40の範囲であ
り、好ましくは4〜20の範囲、より好ましくは5〜2
0の範囲である。アスペクト比が4より小さい場合、結
晶粒のc軸を十分に配向させ、高い電流密度を示す超電
導相を得ることが困難である。上述した文献 Cryogenic
s (1992)Vol.32, No.11, 940-948に記載される線材に
おいて、断面が矩形の超電導フィラメントのアスペクト
比は、せいぜい3程度である。このような低いアスペク
ト比を有するフィラメントは、結晶粒のc軸が十分に配
向されておらず、高い臨界電流密度を示さないと推定さ
れる。フィラメントのアスペクト比が40より大きい場
合、フィラメントの作製は容易でなく、超電導相の長手
方向における結合が切れやすくなる。
【0031】本発明による線材において、フィラメント
の厚みは2〜50μmの範囲、好ましくは2〜40μm
の範囲、より好ましくは5〜40μmの範囲である。フ
ィラメントが2μmより薄い場合、超電導層の長手方向
における結合が切れやすくなる。フィラメントが50μ
mより厚い場合、フィラメントが安定化マトリックスと
接触する界面の割合が小さく、c軸が特定方向に配向し
た超電導相を十分に得ることが困難になる。4〜40の
アスペクト比および2〜50μmの厚みを有するフィラ
メントにおいて、超電導相を構成する結晶粒のc軸は、
線材の長手方向とほぼ垂直に配向することができる。ま
た、この範囲で、十分な密度を有し、高い臨界電流密度
を有するフィラメントを得ることができる。
【0032】本発明による線材の断面は、円または略回
転対称であるn角形(nは6以上の整数)である。その
ような断面は、磁場が印加される方向によって、臨界電
流密度等の超電導特性があまり変化しない形状である。
線材において、複数のフィラメントは、安定化マトリッ
クス中でランダムに配置されるか、または線材の中心に
対して略回転対称に配置されていることが好ましい。線
材の断面は、円または六角形以上の正多角形とすること
がより好ましい。上述した構造のフィラメントを有する
本発明の線材は、液体窒素温度において、外部磁場が0
Tの状態で2,000A/cm2 以上、好ましくは8,
000A/cm2 以上、より好ましくは10,000A
/cm2 以上の臨界電流密度を有することができる。
【0033】本発明による線材の一具体例を図1に示
す。図1(a)に示す酸化物超電導線材10において、
多数のフィラメント12は、それぞれ安定化マトリック
ス14に覆われる。フィラメント12は、点線で示すよ
うにリボン形状を有している。安定化マトリックスに
は、銀または銀合金が用いられる。銀合金として、たと
えば、Ag−Au合金、Ag−Mn合金、Ag−Al合
金、Ag−Sb合金、Ag−Ti合金等を用いることが
できる。特に、銀合金として、Mnを1.5重量%以
下、好ましくは0.1〜1重量%、より好ましくは0.
4〜0.6重量%の割合で含有するAg−Mn合金を用
いることができる。図1(b)に示すように、円形の断
面を有する線材10において、フィラメント12よりも
内側にある中心部14aは、そのまわりのフィラメント
を覆っている安定化マトリックス14bよりも硬い材料
からなる。硬さは、変形または破壊に対する抵抗力の大
きさの程度をいう。周囲の安定化マトリックス14bが
銀からなる場合、中心部の安定化マトリックス14a
は、銀より硬い銀合金からなることができる。また、中
心およびそのまわりとも銀合金が用いられる場合、中心
部により硬い材料が用いられる。図1に示すように、中
心部の安定化マトリックス14aは略円筒形であること
が好ましいが、他の形状でもよい。たとえば、中心に、
正六角形等の正多角形の断面を有する安定化マトリック
スを設けてもよい。中心部により硬い安定化マトリック
スを配置された線材は、より高い臨界電流密度を有する
ことができる。これは、パウダー・イン・チューブ法に
よって線材を製造する際に、中心部により硬い材料を配
置すれば、伸線加工等の塑性加工においてそのまわりに
配置される酸化物超電導体の原料粉末がより効果的に圧
密化され、後の焼結工程において結晶粒におけるc軸の
配向が促進されるからである。後の実施例でも示すよう
に、中心部により硬い安定化マトリックスを配置された
線材は、全体的に同じ硬さの安定化マトリックスを有す
る線材よりも顕著に高い臨界電流密度を有することがで
きる。
【0034】図2は、断面が略回転対称の多角形である
線材の具体例を示している。酸化物超電導線20の断面
は、略回転対称の八角形である。酸化物超電導体からな
る多数のフィラメント22は、それぞれ安定化マトリッ
クス24によって覆われる。図2(b)に特に示すよう
に、安定化マトリックスの中心部24aは、その周囲の
部分24bよりも硬い材料からなる。より硬い部分24
aのまわりにフィラメント22が配置される。フィラメ
ント22は、線材20の長手方向に延びるリボン形状で
ある。図1および図2に示す線材において、多数のフィ
ラメントは線材の中心に対して略回転対称に配置される
ことが望ましい。
【0035】図3および図4は、複数のフィラメントが
それぞれ特定の態様で配置された線材の具体例を示して
いる。図3に示す酸化物超電導線材30において、安定
化マトリックス34に覆われるフィラメント32aは、
図に示すXの方向に安定化マトリックス34を介して積
層される。またフィラメント32bは、Xで示す方向と
ほぼ垂直な方向であるYの方向に安定化マトリックス3
4を介して積層される。フィラメント32aおよび32
bは、安定化マトリックスの中心部34aのまわりに略
回転対称に配置される。XおよびYでそれぞれ示される
方向は、線材の長手方向に垂直である。線材30は、ほ
ぼ円である断面を有する。フィラメント32aは、安定
化マトリックスの中心部34aに対して対称的に配置さ
れ、フィラメント32bも同様に中心部34aに対して
対称的に配置される。安定化マトリックスの中心部34
aはその周囲34bと同じ材質であってもよいし、異な
る材質であってもよい。上述したように、中心部34a
をその周囲34bよりも硬くすることは、臨界電流密度
の向上に寄与し得る。図4に示す酸化物超電導線材40
において、多数のフィラメント42aは、図に示すY′
の方向に安定化マトリックス44を介して積層されてい
る。一方多数のフィラメント42bは、安定化マトリッ
クスを介してX′の方向に積層される。Y′の方向と
X′の方向は互いに垂直である。X′およびY′の方向
は、線材40の長手方向に対して垂直である。フィラメ
ント42aおよび42bは、線材40の中心に対して略
回転対称に配置される。線材40の断面も、円形であ
る。図3および図4に示すように多数のフィラメントが
積層された構造を有する線材は、積層された方向に結晶
粒のc軸が配向した、十分な密度を有する超電導相をも
たらすことができる。焼結された超電導体においてこの
ように好ましい結晶組織を有する線材は、高い臨界電流
密度を示すことができる。
【0036】本発明による線材は、いわゆるパウダー・
イン・チューブ法を用いて製造される。この方法は、酸
化物超電導体の原料粉末を安定化材からなるチューブに
詰め、それに塑性加工および焼結のための熱処理を施し
て線材を得る方法である。原料粉末の調製では、超電導
体を構成する元素の酸化物または炭酸塩の粉末が所定の
比で混合され、得られた混合物に焼結および粉砕の工程
が施される。粉末を充填するチューブは、たとえば銀ま
たは銀合金からなる。塑性加工には、伸線加工、プレス
加工、圧延加工等を用いることができる。
【0037】原料粉末が充填されたチューブに塑性加工
を施してテープ状線材が得られる。テープ状線材を得る
ため伸線加工および圧延加工を用いることができる。得
られたテープ状線材において、原料粉末からなる部分
は、4〜40、好ましくは4〜20のアスペクト比を有
するリボン形状である。テープ状線材は単芯、多芯のい
ずれでもよい。原料粉末部分のアスペクト比を所定の範
囲に収めることが、優れた超電導特性を有する線材を得
る上で重要である。得られたテープ状線材は、通常、切
断され、複数本の線材を得ることができる。得られた複
数本のテープ状線材は、次いで安定化材からなるチュー
ブに充填される。
【0038】テープ状線材の充填工程において、チュー
ブのほぼ中心により硬い安定化材からなる棒状体を配置
し、そのまわりにテープ状線材を配置することができ
る。より硬い安定化材として、Ag−Au合金、Ag−
Mn合金、Ag−Al合金、Ag−Sb合金、Ag−T
i合金等を用いることができる。特に、Mnを1.5重
量%以下、たとえば0.1〜1重量%、特に0.4〜
0.6重量%含有するAg−Mn合金は、より好ましい
材料である。一方、チューブは、銀からなることが好ま
しい。テープ状線材は、チューブ内において中心に設け
られた硬い材料のまわりに回転対称に配置されることが
好ましい。
【0039】もう1つの態様において、チューブ内の中
心部に安定化材からなる円筒形状の棒状体を配置し、そ
のまわりに複数のテープ状線材を積層したユニットを複
数個回転対称に配置することができる。テープ状線材を
重ねてチューブに充填することによって、充填密度を上
げることができる。回転対称に配置された複数のテープ
状線材は、第1の方向に層状に重ねられたものと、第1
の方向に垂直な方向に層状に重ねられたものとからなる
ことができる。また別の態様において、チューブ内の中
心部にできるだけ多くのテープ状線材を重ねて充填し、
その両側のあいたスペースにさらに複数のテープ状線材
を重ねたユニットを配置することができる。この場合
も、複数のテープ状線材は、チューブの中心に対して回
転対称に配置することができる。チューブ内の中心部に
おいてテープが重ねられる方向と、その両側のスペース
においてテープがそれぞれ重ねられる方向とは、互いに
垂直とすることができる。この場合も、テープを重ねて
チューブ内に充填することで、より高い充填密度を得る
ことができる。
【0040】上述したそれぞれの充填工程において、さ
らに充填密度を上げるため、テープ状線材および中心に
設けられる安定化材の他に、チューブ内のスペースを埋
めるために棒状、線状などの安定化材を用いることがで
きる。追加の安定化材は、スペースを埋めるのに適した
形状または断面のサイズを有する。スペースが小さい場
合、より小さな安定化材を用いる。このように追加の安
定化材を用いることによって、容易に80%以上の充填
密度を得ることができる。充填密度が80%以上のチュ
ーブを伸線加工等の塑性加工に供すれば、フィラメント
部分の圧密化が効果的に行なわれ、高い臨界電流密度を
有する線材を得ることができる。追加の安定化材は、た
とえば銀または銀合金からなる。
【0041】断面が円形または略回転対称の多角形であ
る線材を得るため、テープ状線材が充填されたチューブ
に伸線加工等の塑性加工が施される。伸線加工には、ダ
イスを介して引抜きを行なう通常の方法、駆動式ロール
ダイスを用いる方法等がある。駆動式ロールダイスは、
線材を縮径加工のため通す溝が形成された2個のローラ
を向き合わせたダイスである。伸線加工は、2つのロー
ラの間に線材を通して行なう。ロールダイスを用いる伸
線では、普通の孔ダイスを用いる伸線と比べて、ダイス
摩耗が少ない、1回の減面率が大きくとれる、伸線限界
が伸びる、などの利点がある。
【0042】テープ状線材が充填されたチューブに塑性
加工を施した後、酸化物超電導体の焼結体を生成させる
ため、熱処理が行なわれる。通常、熱処理は、800〜
900℃の温度で、10〜300時間、より好ましくは
830〜850℃の温度で、30〜100時間行なうこ
とができる。熱処理の後、たとえば薄いフレーク状の結
晶粒同士が強く結合した酸化物超電導体の焼結組織を得
ることができる。本発明によれば、リボン形状の酸化物
超電導体フィラメントにおいて、結晶粒のc軸は、リボ
ンの厚み方向に配向させることができる。
【0043】熱処理の後、得られた線材に5〜50%の
減面率で伸線加工を施してもよい。伸線加工の後、さら
に焼結体を得るための熱処理を施すことができる。伸線
加工と熱処理を繰返して行なうことにより、線材におい
て超電導相を再配列させ、c軸の配向性を高め、かつ超
電導相の密度を向上させることができる。なお、伸線加
工において減面率が5%未満であると、十分な効果が得
られず、50%以上であると超電導相の長手方向の結合
が切れやすくなる。伸線加工は、ダイスを介して引抜き
を行なう通常の方法、または駆動式ロールダイスを用い
た方法によって行なうことができる。
【0044】本発明による線材を素線として、撚線を構
成することができる。本発明者らは、線材を単に撚り合
わせることのみによっても、十分に交流損失の低い撚線
が提供できることを見出した。撚り合わせによって、素
線同士がほぼ完全に転位された構造を得ることができ、
その結果撚線における各素線のインピーダンスを等しく
することができる。成形工程を行なわずに、単に素線を
撚り合わせた撚線においても、十分な転位が可能であ
り、交流損失が顕著に低い撚線を提供できる。さらに、
転位の状態を向上させ、電流密度を上げるため平角成形
などの成形を撚線に施してもよい。本発明により、一次
または二次以上の撚線を提供できる。
【0045】撚線工程は、線材の製造プロセスにおいて
行なわれる焼結のための熱処理工程の後行なってもよ
い。この場合、焼結によって十分高い臨界電流密度を有
する素線が撚り合わされる。一方、熱処理工程の前の未
焼結の線材を撚り合わせてもよい。すなわち、塑性加工
の後に得られる未焼結の線材を複数本撚り合わせてもよ
い。いずれの場合においても、撚線工程の後、酸化物超
電導体の焼結体を生成できる温度、たとえば800℃以
上の温度、好ましくは830〜850℃の温度において
熱処理を行なうことが望ましい。二次以上の高次撚線を
得る場合も、少なくとも最後の撚線工程の後、焼結体を
生成できる熱処理を行なうことが望ましい。また、撚線
について成形を行なう場合、成形工程の後、超電導体の
焼結体を生成できる熱処理を行なうことが望ましい。熱
処理において、撚線または成形時の曲げなどの変形によ
る粒界の劣化を回復し、また、反応が不十分な場合は反
応を完全に進め、酸化物超電導体の結晶粒が強固に結合
した焼結組織を得ることができる。撚線を構成する素線
の本数として、6本、6本×6本撚り等が好ましいが、
これらに何ら限定されるものではない。素線におけるフ
ィラメントのアスペクト比および厚みは上述した範囲が
望ましい。
【0046】図5および図6に、撚線の具体例を示す。
図5において、一次撚線50は、芯となる線材52のま
わりに素線54を6本撚り合わせた構造を有する。撚り
合わせのピッチは、曲げ歪みによる超電導体への影響が
それほど顕著にならない適当な範囲、たとえば40mm
〜80mmとすることができる。図6に示す二次撚線6
0は、図5に示す一次撚線50が3本撚り合わされた構
造を有する。二次撚線またはそれ以上の撚線のためのピ
ッチも、超電導体への曲げ歪みによる影響がそれほど深
刻にならない範囲、たとえば50mm〜100mmとす
ることができる。撚り方向は、たとえば一次、二次とも
に右撚りとすることができる。
【0047】ツイストされた素線を複数本撚り合わせて
もよい。図7に、ツイストされた素線の一具体例を示
す。ツイストピッチは、超電導体組織が深刻に破壊され
ない範囲、たとえば線径の5〜20倍とすることができ
る。ツイストは、線材を調製するプロセスにおいて、焼
結のための熱処理の前に行なってもよいし、熱処理の後
に行なってもよい。いずれの場合においても、ツイスト
された複数の線材を撚り合わせた後、酸化物超電導体の
焼結体を生成できる温度において熱処理を行なうことが
望ましい。
【0048】撚り合わされた素線間の電磁気的結合を低
減またはなくすため、素線を高抵抗金属または無機絶縁
材料によって覆うことができる。高抵抗金属は、安定化
材として用いられる銀よりも高い比抵抗を示す金属をさ
す。より具体的には、液体窒素温度(約77K)におい
て0.7×10-8Ω・m以上、室温において3×10 -8
Ω・m以上の抵抗率を示す金属が高抵抗金属として好ま
しく用いられる。高抵抗金属として、ニッケル、クロ
ム、Ag−Mn合金、Ag−Au合金等を挙げることが
できる。無機絶縁材料として、酸化アルミニウム、酸化
マグネシウム、酸化銅等の金属酸化物、SiO2 等を用
いることができる。高抵抗金属および無機絶縁材料と
も、酸化物超電導体を生成できる温度において実質的に
変化を受けないものが好ましい。高抵抗金属層は、線材
の製造工程において安定化材チューブに高抵抗金属パイ
プをかぶせる方法、安定化材チューブに高抵抗金属シー
トを巻きつける方法、線材に高抵抗金属をめっきする方
法などによって形成することができる。高抵抗金属のパ
イプまたはシートは、たとえば、Ag−Au合金、Ag
−Mn合金などが好ましく用いられる。めっき金属とし
て、Ni、Cr等が好ましく用いられる。めっきには、
電気めっき等を用いることができる。無機絶縁材料層
は、絶縁性のセラミックス粉末を線材の表面に付着させ
て焼付ける方法、線材の表面に金属層を形成した後それ
を酸化する方法などによって形成できる。たとえば、A
lO3 等の絶縁性の金属酸化物の粉末を分散させた液を
塗布し焼付けることができる。また、めっき、蒸着等に
より線材の表面をMg、Cu等の金属で被覆した後、そ
の金属層を酸化させてMgO層、CuO層等の絶縁性酸
化物層を形成してもよい。金属層を酸化する方法では、
撚線工程や成形工程の後に酸化を行なうことによって、
硬い絶縁層が形成されるまでの間良好な加工性を維持す
ることができる。高抵抗金属層によって素線間で生じる
結合損失を低減することができ、無機絶縁層によって素
線間の結合をなくすことができる。これらの層は、撚り
合わせによる転位の効果を十分に引き出すことができ
る。
【0049】複数の撚線を、芯材上に1層または2層以
上集合して、ケーブル等のための導体が得られる。芯材
は、通常、可撓性を有するものが好ましい。芯材は、通
常フォーマと呼ばれる。フォーマは、導体のために必要
な長さを有し、導体の中心に設けられる。フォーマは、
略円筒形または螺旋形状とすることができ、その全長に
わたってほぼ一定の直径を有する。フォーマは、たとえ
ば、ステンレス鋼、銅、アルミニウムおよびFRP(繊
維強化プラスチック)からなる群から選択される少なく
とも1つの材料から構成できる。フォーマ上に複数の撚
線を集合する場合、フォーマの長手方向に沿ってほぼ真
っ直ぐに延ばされた撚線をフォーマのまわりにほぼ平行
に並べてもよいし、複数の撚線をフォーマ上に並べて螺
旋状に巻きつけてもよい。撚線は、1層または2層以上
でフォーマ上に集合することができる。1層導体では、
転位の効果により、すべての素線の位置を電磁気的にほ
ぼ等価にすることができる。1層導体内の電流分布はほ
ぼ均一であり、偏流が抑制され、交流損失は低減され
る。撚線を芯材上に螺旋状に巻くとき、1対の層におい
て、一方の層と他方の層において螺旋方向を逆にするこ
とが、導体の長手方向における磁場成分を相殺するため
に有効である。すなわち、2層導体では、1層目と2層
目とで螺旋方向を逆にすれば、導体長手方向の磁場成分
をキャンセルできる。2層以上の導体の場合、層間のイ
ンピーダンスの違いによる偏流、およびそれに伴う交流
損失の増大を防ぐか、または最小限に抑えることが望ま
しい。図8は、1層導体および2層導体の具体例を示し
ている。図8(a)に示す1層導体80において、円筒
状の芯材82上に多数の撚線84が螺旋状に巻き付けら
れている。図8(b)に示す2層導体80′では、円筒
状の芯材82上に、多数の撚線84が2層で螺旋状に巻
き付けられている。
【0050】
【実施例】
[テープ状線の調製]Bi2 3 、PbO、SrC
3 、CaCO3 、CuOの粉末をBi:Pb:Sr:
Ca:Cu=1.81:0.30:1.92:2.0
1:3.03の比になるように混合し、熱処理および粉
砕を繰返して行ない、ビスマス系酸化物超電導体の前駆
体である原料粉末を得た。得られた粉末を、外径12m
mφ、内径9mmφの銀パイプに充填した。粉末が充填
された銀パイプを1.63mmφまで伸線した。次い
で、得られた線材を圧延して、幅4mm、厚さ0.3m
mのテープ状線材を得た。
【0051】例1 得られたテープ状線材を、図9に示すような配置で安定
化材からなるパイプに充填した。図9を参照して、安定
化材からなる円筒形状のパイプ90内には、その中心部
に安定化材からなる円筒形状の棒状体92が配置され
る。棒状体92のまわりには、テープ状線材94が、重
ねて配置される。テープ状線材94は、棒状体92また
はパイプ90の直径方向に重ねて配置される。棒状体9
2を挟んで対向するテープ状線材94aと94c、94
bと94dは互いにほぼ平行であり、隣り合うテープ状
線材94aと94b、94bと94c、94cと94
d、94dと94aは互いにほぼ垂直である。テープ状
線材94は、棒状体92のまわりにおいてほぼ回転対称
に配置され、その回転角度は約90°である。パイプ9
0内において、棒状体92およびテープ状線材94によ
って埋めることのできない隙間には、さらに安定化材か
らなりかつ径の小さな棒状体96が充填される。充填用
のパイプとして外径12mmφ、内径9mmφの銀パイ
プを用いた。銀パイプの中に、直径4mmφの銀製の芯
棒を入れ、そのまわりにテープ状線材を配置した。テー
プ状線材は、4箇所でそれぞれ7本重ねられた。合計2
8本のテープ状線材が充填された。4つの隙間には、直
径1.45mmφの銀線がそれぞれ充填された。銀棒、
テープ状線材および銀線が充填された銀パイプを直径
1.02mmφまで伸線した。伸線加工により断面が円
である線材を得た。得られた線材を845℃で50時間
焼結し、次いで冷却工程を挟んで840℃で90時間焼
結した。得られた丸線から長さ10cmの試料を切取
り、直流4端子法によって液体窒素温度(約77K)に
おける外部磁場0T下での臨界電流密度を測定した。測
定された臨界電流密度は11,000A/cm2 であっ
た。
【0052】例2 図9に示す配置でテープ状線材を充填した。外径12m
mφ、内径9mmφの銀パイプに、直径4mmφのAg
−Mn合金からなる芯棒を充填し、そのまわりにテープ
状線材を配置した。銀合金におけるMnの含有量は0.
5重量%であった。4箇所にそれぞれ7本テープ状線材
を重ねて配置し、合計28本のテープ状線材を充填し
た。4つの隙間には、直径1.45mmφの銀線を詰め
た。銀合金棒、テープ状線材および銀線を充填した銀パ
イプを直径1.02mmφまで伸線した。得られた丸線
を845℃で50時間焼結した。次いで冷却工程の後、
840℃で90時間さらに焼結した。得られた線材から
長さ10cmの試料を切出し、直流4端子法によって液
体窒素温度(約77K)における外部磁場0T下での臨
界電流密度を測定した。その値は13,000A/cm
2 であった。
【0053】例1および例2においてそれぞれ得られた
線材の断面を図10に示す。丸線の中心部には、円筒形
に近い形状の安定化マトリックスが配置され、そのまわ
りに安定化マトリックスで覆われたフィラメントがほぼ
回転対称に配置されている。中心の安定化マトリックス
を挟んで対向する14のフィラメントは、矢印Xの方向
に安定化マトリックスを介して積層され、一方他の14
のフィラメントは、Xにほぼ垂直なYの方向に安定化マ
トリックスを介して積層されている。フィラメントのア
スペクト比は20程度である。またフィラメントの厚み
は、10μm程度である。例1で作製された線材では、
中心部およびそのまわりの安定化マトリックスはともに
銀からなる。例2において調製された線材では、中心部
にAg−Mn0.5重量%合金マトリックスが配置さ
れ、そのまわりに銀マトリックスが配置される。上述し
た臨界電流密度の値を比較して明らかなように、中心に
より硬い銀合金を配置すると、線材の臨界電流密度を向
上させることができた。
【0054】例3 図11に示すような配置において安定化材からなるパイ
プにテープ状線材を充填した。図11を参照して、円筒
形状の安定化材からなるパイプ90内には、テープ状線
材94ができるだけ多く重ねて配置される。パイプ90
の中心部には、可能な限り多くのテープ状線材94aが
重ねて充填される。その両側にも、可能な限り多くのテ
ープ状線材94bが重ねて配置される。テープ状線材9
4aの重ね方向と、テープ状線材94bの重ねる方向と
はほぼ垂直である。テープ状線材によって埋めることの
できない隙間には、安定化材からなる棒状体または線材
96が充填される。図では、4箇所に棒状体または線材
96が充填されている。充填用のパイプとして、外径1
2mmφ、内径9mmφの銀パイプを用いた。銀パイプ
内の中心部にテープ状線材を22本重ねて充填し、その
両側に5本ずつテープ状線材を重ねて充填した。合計3
2本のテープ状線材を充填した。4箇所の隙間には、直
径1.45mmφの銀線を充填した。銀線を充填するこ
とにより%の充填率が得られた。充填された銀パイプを
直径1.02mmφまで伸線した。得られた丸線を、ま
ず845℃で50時間焼結し、次いで冷却工程の後、8
40℃で90時間焼結した。得られた線材の断面を図1
2に示す。丸線の中心部には、フィラメントが安定化マ
トリックスを介して積層され、その両側にもフィラメン
トが安定化マトリックスを介して積層される。中心部の
積層方向と、その両側の積層方向とはほぼ垂直である。
得られた丸線から長さ10cmの試料を切出し、直流4
端子法によって液体窒素温度(約77K)における外部
磁場0T下での臨界電流密度を測定した。その値は9,
000A/cm2 であった。
【0055】比較例1 Bi2 3 、PbO、SrCO3 、CaCO3 およびC
uOの粉末をBi:Pb:Sr:Ca:Cu=1.8
1:0.30:1.92:2.01:3.03の比にな
るように混合し、熱処理および粉砕を繰返してビスマス
系酸化物超電導体の前駆体粉末を調製した。得られた粉
末を外径25mmφ、内径22mmφの銀パイプに充填
し、粉末を充填した銀パイプを1.45mmφまで伸線
した。得られた線材を61本束ねて、外径15mmφ、
内径13mmφの銀パイプに嵌合し、1.63mmφま
で伸線した。得られた線材を845℃で50時間焼結
し、次いで冷却工程の後840℃で90時間焼結した。
得られた直径約1.63mmφの丸線から長さ10cm
の試料を切取り、それについて直流4端子法によって液
体窒素温度(約77K)における外部磁場0T下での臨
界電流密度を測定した。測定値は500A/cm2 であ
った。
【0056】比較例2 比較例1に示すプロセスにおいて、直径1.63mmφ
まで伸線を行なった後、得られた線材を圧延し、幅3.
6mm、厚さ0.32mmのテープ状線材を得た。得ら
れたテープ状線材を845℃で50時間焼結した。焼結
されたテープ状線材をさらに圧延し、幅3.9mm、厚
さ0.29mmのテープ状線材を得た。得られた線材を
845℃で90時間焼結した。焼結後の線材から長さ1
0cmの試料を切出し、それについて直流4端子法によ
り液体窒素温度(約77K)において外部磁場0Tの条
件下で臨界電流密度を測定した。測定値は16,000
A/cm2 であった。
【0057】以上の結果から、本発明による例1、例2
および例3の線材は、比較例1の線材よりも顕著に大き
な臨界電流密度を示し、それらの値は比較例2のテープ
状線材の値に匹敵するものであることがわかった。
【0058】[超電導フィラメントのアスペクト比およ
び厚みの検討]Bi2 3 、PbO、SrCO3 、Ca
CO3 、CuOの粉末をBi:Pb:Sr:Ca:Cu
=1.81:0.30:1.92:2.01:3.03
の比になるように混合し、熱処理および粉砕を繰返して
ビスマス系酸化物超電導体の原料粉末を得た。得られた
粉末を外径12mmφ、内径9mmφの銀パイプに充填
し、直径1.63mmφまで伸線した。得られた線材に
種々の圧下率で圧延加工を施し、それぞれ3、5、2
0、40、60および100のアスペクト比を有するテ
ープ状線材を準備した。得られたテープ状線材を例1と
同様の配置で銀パイプに充填し、直径1.02mmφま
で伸線して丸線を得た。得られた線材を例1と同様に焼
結し、長さ10cmのサンプルについて例1と同様に臨
界電流密度を測定した。それぞれのアスペクト比を有す
るテープ状線材について得られた丸線の臨界電流密度を
表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】表に示すように、パイプに充填するテープ
状線のアスペクト比を大きくしていくと、得られる丸線
の臨界電流密度は増加する。しかし、そのアスペクト比
が大きくなり過ぎると臨界電流密度は顕著に低下する。
これは、超電導相の長手方向の結合が切れてくるためで
あると考えられる。充填すべきテープ状線のアスペクト
比は、粉末部分のアスペクト比、および超電導フィラメ
ントのアスペクト比にそのまま対応する。実験の結果、
超電導フィラメントのアスペクト比を4〜40、好まし
くは5〜40にすることにより、臨界電流密度を顕著に
高められることがわかった。
【0061】各アスペクト比のテープ状線材を用いて作
製された各線材の超電導フィラメントの厚みと臨界電流
密度との関係を表2に示す。アスペクト比を大きくして
いくに従って超電導フィラメントは薄くなっていく。
【0062】
【表2】
【0063】表に示すように、所定の範囲内でフィラメ
ントを薄くしていくと臨界電流密度は向上する。これ
は、超電導相と安定化マトリックスとの界面で結晶粒に
おけるc軸の配向が促進されるからである。しかし、フ
ィラメントの厚みが1μm以下になると、臨界電流密度
は顕著に小さくなる。これは、超電導相の長手方向の結
合が切れてくるためであると考えられる。実験の結果、
高い臨界電流密度を得るためには、2〜50μmの厚み
のフィラメントが望ましいことがわかった。
【0064】例4 例1のプロセスに従って銀の芯棒、テープ状線材および
銀線を銀パイプに充填し、直径1.02mmφまで伸線
した。得られた丸線に845℃で50時間熱処理を施し
た後、さまざまな線径にまで伸線加工を施し、次いで8
40℃で90時間熱処理を行なった。伸線加工時の減面
率と熱処理後に得られる線材の臨界電流密度との関係を
表3に示す。
【0065】
【表3】
【0066】表に示すように、2つの焼結工程の間に、
線材の断面を小さくする伸線加工を行なえば、焼結後に
得られる線材の臨界電流密度を向上させることができ
る。ただし、50%以上の減面率で伸線を行なうと臨界
電流密度は顕著に低下する。2つの焼結工程の間に行な
われる伸線加工は、5〜50%の減面率で行なうことが
望ましく、10〜20%の減面率で行なうことがより好
ましい。2つの焼結工程の間にこれらの範囲の減面率で
伸線加工を行なえば、線材の臨界電流密度を向上させる
ことができる。
【0067】[充填率の検討]例3のプロセスに従い、
図11に示すような配置でテープ状線材を銀パイプに充
填した。充填にあたって、テープ線(幅4mm×厚さ
0.33mm)を34枚、銀棒(1.63mmφ)を4
本充填することにより84%の充填密度を得た。また、
同じサイズのテープ線を34枚、銀棒(1.45mm
φ)を4本充填することにより80%の充填密度、同じ
サイズのテープ線を34枚充填することにより70%の
充填密度、同じサイズのテープ線を24枚充填すること
により50%の充填密度をそれぞれ得た。それぞれの充
填密度でテープ状線材が充填された銀パイプを例3と同
様の工程によって伸線し、焼結した。得られた各線材か
ら長さ10cmの試料を取り、例3と同様に臨界電流密
度を測定した。充填密度と測定値との関係を表4に示
す。表から、80%以上の充填密度が高い臨界電流密度
を得るために好ましいことがわかる。
【0068】
【表4】
【0069】例5 例1のプロセスに従い銀パイプに銀の芯棒、テープ状線
材および銀線を充填し、直径1.02mmφまで伸線し
た。得られた線材を845℃で50時間熱処理した。図
13に示すように、熱処理された線材130を6本、直
径1.02mmφの銀線132のまわりに撚り合わせ
た。撚りピッチは、40mmであった。得られた撚線を
840℃で90時間熱処理した。熱処理後の撚線の臨界
電流は、液体窒素温度において70Aであった。通電4
端子法により交流損失を測定した結果、60Hzにおい
て20Arms通電時に交流損失の測定値は0.05m
W/mであった。
【0070】比較例3 比較例1のプロセスにおいて、61本の線材を銀パイプ
に嵌合し、直径1.02mmφまで伸線した。得られた
線材を厚さ0.25mmまで圧延した後、得られたテー
プ状線材を845℃で90時間熱処理した。テープ状線
材を6枚積層したものの液体窒素温度における臨界電流
は80Aであった。積層体の交流損失を例5と同様に測
定した結果、測定値は0.5mW/mであった。例5と
比較例3との比較により、撚線によって交流損失が1/
10に軽減したことがわかる。
【0071】例6 例1のプロセスに従って充填された銀パイプに直径1.
02mmφまで伸線加工を施した。得られた線材に84
5℃で50時間熱処理を施した。次に、線材の表面に電
気めっきによりCrめっきを施した。Crめっきされた
線材を6本、図13に示すような配置で直径1.02m
mφの銀線のまわりに撚り合わせた。撚りピッチは50
mmであった。得られた撚線を840℃で90時間熱処
理した。熱処理後の撚線の液体窒素温度における臨界電
流は70Aであった。通電4端子法によって測定した撚
線の交流損失は、20A通電時で0.01mW/mであ
った。この値は、例5の値の1/5である。
【0072】例7 Crめっきの代わりに電気めっきによりNiめっきを素
線に施した以外は、例6と同様にして撚線を作製した。
通電4端子法で測定した撚線の交流損失は、20A通電
時で0.01mW/mであった。この値は例5の値の1
/5である。
【0073】例8 例1のプロセスにおいて充填された銀パイプを直径1.
02mmφまで伸線加工した後、845℃、50時間の
熱処理を行なった。次いで、得られた線材に硫酸銅めっ
きにより厚さ10μmのCuめっきを施した。次に、例
5と同様に撚線を作製した。大気下における840℃9
0時間の熱処理により、素線表面のCuはCuOに変換
された。酸化膜により素線間がほぼ完全に絶縁されてい
た。得られた撚線の液体窒素温度における臨界電流は7
0Aであった。素線の表面に薄い銅酸化膜が形成される
一方、銅は超電導特性にほとんど影響を及ぼさなかっ
た。撚線の交流損失は、20A通電時で0.01mW/
mであった。素線間の結合損失は顕著に低減できた。
【0074】例9 例1のプロセスにおいて充填された銀パイプを直径1.
02mmφまで伸線加工した後、845℃、50時間の
熱処理を行なった。得られた線材に、平均粒径0.5μ
mのアルミナ粉末を有機溶媒(キシレン)に分散させた
液を塗布した。乾燥によりアルミナ粉末を線材に付着さ
せた後、例5と同様のプロセスによって撚線を作製し
た。840℃90時間の熱処理後に、素線の表面にはア
ルミナ粒子が均一に焼付けられていた。アルミナ層によ
り素線間はほぼ完全に絶縁することができた。得られた
撚線の液体窒素温度における臨界電流は70Aであっ
た。撚線の交流損失は、20A通電時で0.02mW/
mであった。素線間の結合損失は顕著に低減できたこと
がわかった。
【0075】例10 例1のプロセスにおいて銀パイプの代わりにAg−Mn
合金(Mn含有量0.3重量%)パイプを用いて、丸線
を得た。得られた丸線を845℃で50時間熱処理し
た。熱処理された線材を6本撚り合わせ、平角成形し
た。撚りピッチは、45mmであった。得られた平角成
形撚線を840℃で90時間熱処理した。比抵抗の高い
合金シースを用いることにより、素線間の結合損失を低
減できることが認められた。
【0076】例11 例1のプロセスにおいて銀パイプの代わりにAg−Au
合金(Au含有量10重量%)パイプを用いて、丸線を
調製した。得られた丸線を845℃で50時間熱処理し
た。熱処理された線材を6本撚り合わせ、平角成形し
た。得られた平角成形撚線を840℃で90時間熱処理
した。比抵抗の高い合金シースを用いることにより、素
線間の結合損失を低減できることがわかった。
【0077】例12 例9で得られた撚線を3本撚り合わせ二次撚線を作製し
た。撚り合わせた後、840℃、50時間の熱処理を行
なった。得られた撚線の液体窒素温度における臨界電流
は200Aであった。撚線の交流損失は20A通電時で
0.02mW/mであった。アルミナ絶縁層により素線
間の結合損失が顕著に低減されていることが確認され
た。
【0078】例13 例1のプロセスにおいて充填された銀パイプに伸線加工
を施し直径1.02mmφの丸線を得た。得られた丸線
をピッチ25mmでツイストした。直径1.02mmφ
の銀線の周囲にツイストされた丸線を6本撚り合わせた
後、840℃で90時間の熱処理を行なった。得られた
撚線の液体窒素温度における臨界電流は60Aであっ
た。通電4端子法により測定された撚線の交流損失は、
20A通電時で0.1mW/mであった。この値は、6
1のフィラメントを有し、幅4mm、厚さ0.3mmの
サイズで、液体窒素温度において50Aの臨界電流を有
する従来のテープ状酸化物超電導線において測定される
交流損失の1/40であった。
【0079】例14 例12において作製された二次撚線を、15本、銅パイ
プ上に真っ直ぐに並べてケーブル用導体を作製した。得
られた導体の構造を図14に示す。円筒形の銅パイプ1
40上に、二次撚線142が15本1層で互いに平行に
配置される。この場合、銅パイプ140上で二次撚線1
42は真っ直ぐ延ばされている。二次撚線142は、一
次撚線144が3本撚り合わされたものである。一次撚
線144は、銀線146のまわりに超電導素線148が
6本撚り合わされたものである。得られたケーブル用導
体の液体窒素温度における臨界電流は1500Aであっ
た。比較のため、同じサイズの銅パイプ上に、液体窒素
温度における臨界電流が25Aの61芯テープ状酸化物
超電導線を適当な本数、4層で集合し、液体窒素温度に
おける臨界電流が1500Aのケーブル用導体を作製し
た。交流損失を測定した結果、撚線によって構成される
導体の損失の方が、テープ状線材によって構成される導
体よりも2桁小さかった。なお、例14では、撚線を真
っ直ぐに延ばしてパイプ上に集合したが、撚線をパイプ
上に螺旋状に巻きつけても同様の結果が得られた。
【0080】
【発明の効果】本発明によれば、断面が円または略回転
対称である多角形の酸化物超電導線材において臨界電流
密度を顕著に向上させることができる。特に、マトリッ
クスの中心により硬い材料を用いることにより臨界電流
密度をさらに向上させることができる。また、フィラメ
ントを積層し、略回転対称に配置することによって、臨
界電流密度の高い線材を提供できる。これらの線材を用
いることにより、交流損失が低くかつ電流密度の高い撚
線およびケーブル用導体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明により中心に硬い材料が用いられた線材
の構造を示す(a)概略斜視図および(b)概略断面図
である。
【図2】本発明により中心に硬い材料が設けられたもう
1つの線材を示す(a)概略斜視図および(b)概略断
面図である。
【図3】本発明により安定化マトリックスのまわりに略
回転対称にフィラメントが積層された構造を有する線材
の概略斜視図である。
【図4】本発明により中心にできるだけ多くのフィラメ
ントが積層された構造を有する線材の概略斜視図であ
る。
【図5】本発明による撚線の一具体例を示す概略斜視図
である。
【図6】本発明による撚線のもう1つの具体例を示す概
略断面図である。
【図7】素線がツイストされた状態を示す斜視図であ
る。
【図8】本発明によるケーブル導体の具体例を示す概略
斜視図である。
【図9】例1および例2においてテープ状線材が安定化
材のパイプに充填される様子を示す概略断面図である。
【図10】例1および例2において得られる線材の構造
を示す概略断面図である。
【図11】例3においてテープ状線材が安定化材パイプ
に充填される様子を示す概略断面図である。
【図12】例3において得られる線材の構造を示す概略
断面図である。
【図13】例5において線材が撚り合わされる様子を示
す概略断面図である。
【図14】例15において得られるケーブル用導体の構
造を示す概略断面図である。
【符号の説明】
10、20、30、40 酸化物超電導線材 12、22、32a、32b、42a、42b フィラ
メント 14、24、34、44 安定化マトリックス
フロントページの続き (72)発明者 藤上 純 大阪市此花区島屋一丁目1番3号 住友電 気工業株式会社大阪製作所内 (72)発明者 大松 一也 大阪市此花区島屋一丁目1番3号 住友電 気工業株式会社大阪製作所内 (72)発明者 石井 英雄 神奈川県横浜市鶴見区江ヶ崎町4番1号 東京電力株式会社電力技術研究所内 (72)発明者 岩田 良浩 神奈川県横浜市鶴見区江ヶ崎町4番1号 東京電力株式会社電力技術研究所内 (72)発明者 本庄 昇一 神奈川県横浜市鶴見区江ヶ崎町4番1号 東京電力株式会社電力技術研究所内

Claims (26)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 パウダー・イン・チューブ法を用いて製
    造された酸化物超電導線材であって、 酸化物超電導体からなり、リボン形状で前記線材の長手
    方向に延びる、複数のフィラメントと、 前記複数のフィラメントを覆う安定化マトリックスとを
    備え、 前記フィラメントのアスペクト比が4〜40の範囲内に
    あり、 前記フィラメントの厚みが2μm〜50μmの範囲内に
    あり、 前記線材の長手方向に略垂直な断面の形状が略円形また
    は略回転対称である六角形以上の多角形であり、かつ前
    記安定化マトリックスの中心部は、その周囲よりも硬い
    材料からなることを特徴とする、酸化物超電導線材。
  2. 【請求項2】 前記安定化マトリックスの中心部は略円
    筒形状であり、その周囲に前記フィラメントが略回転対
    称に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載
    の酸化物超電導線材。
  3. 【請求項3】 前記安定化マトリックスの中心部は銀合
    金からなり、その周囲の安定化マトリックスは銀からな
    ることを特徴とする、請求項1または2に記載の酸化物
    超電導線材。
  4. 【請求項4】 パウダー・イン・チューブ法を用いて製
    造された酸化物超電導線材であって、 酸化物超電導体からなり、リボン形状で前記線材の長手
    方向に延びる、複数のフィラメントと、 前記複数のフィラメントを覆う安定化マトリックスとを
    備え、 前記フィラメントのアスペクト比が4〜40の範囲内に
    あり、 前記フィラメントの厚みが2μm〜50μmの範囲内に
    あり、 前記線材の長手方向に略垂直な断面の形状が略円形であ
    り、 前記線材の中心部に略円筒形の安定化マトリックスが配
    置され、かつその周囲に略回転対称に前記複数のフィラ
    メントが配置され、かつ前記複数のフィラメントは、前
    記安定化マトリックスを介して第1の方向に層状に重ね
    られるものと、前記安定化マトリックスを介して前記第
    1の方向と略垂直な第2の方向に層状に重ねられるもの
    とからなることを特徴とする、酸化物超電導線材。
  5. 【請求項5】 前記線材の中心部に配置された安定化マ
    トリックスは、その周囲の安定化マトリックスよりも硬
    い材料からなることを特徴とする、請求項4に記載の酸
    化物超電導線材。
  6. 【請求項6】 前記線材の中心部に配置された安定化マ
    トリックスは銀合金であり、その周囲の安定化マトリッ
    クスは銀であることを特徴とする、請求項4または5に
    記載の酸化物超電導線材。
  7. 【請求項7】 パウダー・イン・チューブ法を用いて製
    造された酸化物超電導線材であって、 酸化物超電導体からなり、リボン形状で前記線材の長手
    方向に延びる、複数のフィラメントと、 前記複数のフィラメントを覆う安定化マトリックスとを
    備え、 前記フィラメントのアスペクト比が4〜40の範囲内に
    あり、 前記フィラメントの厚みが2μm〜50μmの範囲内に
    あり、 前記線材の長手方向に略垂直な断面の形状が略円形であ
    り、 前記複数のフィラメントは、前記線材の中心部において
    前記安定化マトリックスを介して第1の方向に層状に重
    ねられるものと、その両側において前記第1の方向と略
    垂直な第2の方向に前記安定化マトリックスを介して層
    状に重ねられるものとからなり、かつ前記複数のフィラ
    メントは、前記線材の中心に対して略回転対称に配置さ
    れていることを特徴とする、酸化物超電導線材。
  8. 【請求項8】 前記酸化物超電導体がビスマス系酸化物
    超電導体であることを特徴とする、請求項1〜7のいず
    れか1項に記載の酸化物超電導線材。
  9. 【請求項9】 請求項1〜8のいずれか1項に記載の酸
    化物超電導線材を複数本撚り合わせてなることを特徴と
    する、撚線。
  10. 【請求項10】 前記酸化物超電導線材が、前記安定化
    マトリックスよりも比抵抗の高い金属からなる層または
    無機絶縁材料からなる層によって覆われていることを特
    徴とする、請求項9に記載の撚線。
  11. 【請求項11】 前記酸化物超電導線材がツイストされ
    ていることを特徴とする、請求項9または10に記載の
    撚線。
  12. 【請求項12】 請求項9〜11のいずれか1項に記載
    の撚線を複数本、1層または2層以上で長尺の芯材上に
    集合してなることを特徴とする、導体。
  13. 【請求項13】 酸化物超電導体からなる複数のフィラ
    メントが安定化材で覆われた酸化物超電導線材の製造方
    法であって、 酸化物超電導体の原料粉末を安定化材からなるチューブ
    に充填する工程と、 前記粉末が充填されたチューブに塑性加工を施してテー
    プ状線材を得る工程と、 前記テープ状線材を複数本、第1の安定化材からなる棒
    状体と共に、第2の安定化材からなるチューブに充填す
    る工程と、 前記テープ状線材および前記棒状体が充填されたチュー
    ブに塑性加工を施して、断面が略円形または略回転対称
    である六角形以上の多角形である線材を得る工程と、 得られた線材に熱処理を施して、酸化物超電導体の焼結
    体を生成させる工程とを備え、 前記テープ状線材において、前記粉末からなる部分が4
    〜40のアスペクト比を有するリボン形状であり、 前記第1の安定化材は前記第2の安定化材よりも硬く、 前記第1の安定化材からなる棒状体は、前記第2の安定
    化材からなるチューブの略中心に配置され、かつ前記テ
    ープ状線材は前記棒状体の周りに配置され、かつ前記熱
    処理の後、酸化物超電導体からなるフィラメントの厚み
    が2μm〜50μmの範囲である線材を得ることを特徴
    とする、酸化物超電導線材の製造方法。
  14. 【請求項14】 前記第1の安定化材からなる棒状体が
    略円筒形状であり、かつその周囲に前記テープ状線材が
    略回転対称に配置されることを特徴とする、請求項13
    に記載の製造方法。
  15. 【請求項15】 前記第1の安定化材が銀合金であり、
    前記第2の安定化材が銀であることを特徴とする、請求
    項13または14に記載の製造方法。
  16. 【請求項16】 酸化物超電導体からなる複数のフィラ
    メントが安定化材で覆われた酸化物超電導線材の製造方
    法であって、 酸化物超電導体の原料粉末を安定化材からなるチューブ
    に充填する工程と、 前記粉末が充填されたチューブに塑性加工を施してテー
    プ状線材を得る工程と、 前記テープ状線材を複数本、安定化材からなる円筒形状
    の棒状体と共に、安定化材からなるチューブに充填する
    工程と、 前記テープ状線材および前記棒状体が充填されたチュー
    ブに塑性加工を施して、断面が略円形の線材を得る工程
    と、 得られた線材に熱処理を施して、酸化物超電導体の焼結
    体を生成させる工程とを備え、 前記テープ状線材において、前記粉末からなる部分が4
    〜40のアスペクト比を有するリボン形状であり、 前記棒状体は、前記チューブの略中心に配置され、かつ
    前記テープ状線材は、前記棒状体の周りに略回転対称に
    配置され、 略回転対称に配置された複数の前記テープ状線材は、第
    1の方向に層状に重ねられたものと、前記第1の方向と
    略垂直な第2の方向に層状に重ねられたものとからな
    り、かつ前記熱処理の後、酸化物超電導体からなるフィ
    ラメントの厚みが2μm〜50μmの範囲である線材を
    得ることを特徴とする、酸化物超電導線材の製造方法。
  17. 【請求項17】 前記棒状体は、それを充填するための
    チューブより硬い材料からなることを特徴とする、請求
    項16に記載の製造方法。
  18. 【請求項18】 前記棒状体は銀合金からなり、それを
    充填するためのチューブは銀からなることを特徴とす
    る、請求項16または17に記載の製造方法。
  19. 【請求項19】 酸化物超電導体からなる複数のフィラ
    メントが安定化材で覆われた酸化物超電導線材の製造方
    法であって、 酸化物超電導体の原料粉末を安定化材からなるチューブ
    に充填する工程と、 前記粉末が充填されたチューブに塑性加工を施してテー
    プ状線材を得る工程と、 前記テープ状線材を複数本、安定化材からなるチューブ
    に充填する工程と、 前記テープ状線材が充填されたチューブに塑性加工を施
    して、断面が略円形の線材を得る工程と、 得られた線材に熱処理を施して、酸化物超電導体の焼結
    体を生成させる工程とを備え、 前記テープ状線材において、前記粉末からなる部分が4
    〜40のアスペクト比を有するリボン形状であり、 前記チューブに充填された複数のテープ状線材は、前記
    チューブ内の中心部において第1の方向に層状に重ねら
    れたものと、その両側において前記第1の方向と略垂直
    な第2の方向に層状に重ねられたものとからなり、 前記複数のテープ状線材は、前記チューブの中心に対し
    て略回転対称に配置され、かつ前記熱処理の後、酸化物
    超電導体からなるフィラメントの厚みが2μm〜50μ
    mの範囲である線材を得ることを特徴とする、酸化物超
    電導線材の製造方法。
  20. 【請求項20】 前記テープ状線材をチューブに充填す
    る工程が、安定化材をさらに前記チューブに充填して、
    80%以上の充填密度を得る工程を備えることを特徴と
    する、請求項13〜19のいずれか1項に記載の製造方
    法。
  21. 【請求項21】 前記熱処理工程の後、線材の断面が5
    %〜50%の割合で減る伸線加工を行なう工程と、次い
    で酸化物超電導体の焼結のための熱処理を行なう工程と
    をさらに備えることを特徴とする、請求項13〜20の
    いずれか1項に記載の製造方法。
  22. 【請求項22】 前記酸化物超電導体がビスマス系酸化
    物超電導体であることを特徴とする、請求項13〜21
    のいずれか1項に記載の製造方法。
  23. 【請求項23】 請求項13〜22のいずれか1項に記
    載の製造方法において得られた線材を複数本撚り合わせ
    る工程と、得られた撚線を、酸化物超電導体の焼結体を
    生成できる温度において熱処理する工程とを備えること
    を特徴とする、撚線の製造方法。
  24. 【請求項24】 請求項13〜22のいずれか1項に記
    載の製造方法において得られた線材の表面を、前記安定
    化材よりも比抵抗の高い金属からなる層または無機絶縁
    材料からなる層で被覆する工程と、 被覆された線材を複数本撚り合わせる工程と、 得られた撚線を、酸化物超電導体の焼結体を生成できる
    温度において熱処理する工程とを備えることを特徴とす
    る、撚線の製造方法。
  25. 【請求項25】 請求項13〜22のいずれか1項に記
    載の製造方法において得られた線材の表面に、金属めっ
    き層を形成する工程と、 金属めっきされた線材を複数本撚り合わせる工程と、 得られた撚線を、酸化性雰囲気下で酸化物超電導体の焼
    結体を生成できる温度において熱処理する工程とを備
    え、 前記熱処理において、前記金属めっき層が酸化されるこ
    とにより、撚り合わされた線材間が金属酸化物によって
    電気的に絶縁されることを特徴とする、撚線の製造方
    法。
  26. 【請求項26】 撚り合わせ工程の前に、線材をツイス
    トする工程をさらに備えることを特徴とする、請求項1
    3〜25のいずれか1項に記載の製造方法。
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