JP3657367B2 - ビスマス系酸化物多芯超電導線およびその製造方法 - Google Patents

ビスマス系酸化物多芯超電導線およびその製造方法 Download PDF

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    • Y02E40/60Superconducting electric elements or equipment; Power systems integrating superconducting elements or equipment

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、超電導ケーブル、超電導発電機、超電導変圧器、超電導マグネット、超電導限流器等を構成するために用いられるビスマス系酸化物多芯超電導線およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ビスマス系酸化物超電導体については、いわゆるパウダー・イン・チューブ法によって線材が精力的に開発されてきた。この製造プロセスでは、超電導体を構成する元素の酸化物および炭酸塩を混合し、焼結した後、粉砕して得られた粉末を銀または銀合金のパイプ中に充填する。粉末が充填されたパイプに伸線加工を施して線材を得る。多芯線を製造する場合、得られた線材を複数本銀または銀合金パイプに詰め、これに伸線加工および圧延加工を施す。圧延加工の後得られたテープ状線材に焼結のための熱処理を施す。このような塑性加工と焼結の組合せにより、高い臨界電流密度(Jc)を有するテープ状の多芯線が得られるようになってきた。
【0003】
上記プロセスによって得られたビスマス系酸化物多芯超電導テープ線の大きな問題点は、輸送電流の変動が自己磁界の変動をもたらし、単芯線と同じ程度に大きな輸送電流損失を発生させることである。NbTi超電導線の場合、それが主として変動横磁界下で使われることが多かったので、変動横磁界下での結合損失を小さくするために、線材において超電導体はツイストされている。しかしながら、硬くかつ脆い酸化物超電導体自体に直接ツイスト加工を施すことは実質的に不可能である。特開平7−105753号公報は、酸化物超電導体にツイスト構造を付与するための新たな技術を開示する。同公報は、図10に示すようなプロセスによって酸化物超電導体にツイスト構造を付与する。まず図10(a)に示すように、ビスマス系酸化物超電導体の原料粉末が充填された銀パイプに伸線加工を施して得られた線材104を複数本銀パイプ105中に充填する。線材が充填された銀パイプに伸線加工を施して図10(b)に示すような多芯線を得る。得られた多芯線に図10(c)に示すように捩り加工を施す。この工程においてフィラメントは捩られた構造を有するようになる。次いで、捩られた線材に圧延加工を施した後、熱処理を施せば図11に示すようなテープ状線材が得られる。テープ状線材において酸化物超電導体からなる複数のフィラメント101は、安定化マトリックス102中において螺旋状に捩られている。テープ状線材の断面において、各フィラメント101は、テープの主要面にほぼ平行に配置されている。
【0004】
上述した従来のプロセスにおいて、ツイスト工程の後に得られる丸線では、酸化物超電導体の結晶の配向性はそれほど高くなく、臨界電流密度はそれほど高くない。また、ツイスト加工される丸線に発生する捩れストレスは、線の中心付近と表面に近い部分とで異なるため、線材に分布するフィラメントの形状が不均一になりやすい。その結果、図12に示すように、得られたテープ状線材においてフィラメント同士のブリッジングが起きやすい。このようなブリッジングは、履歴損失を小さくするための多芯化の効果を低下させるようになる。ツイストのピッチをより小さくしようとすると、これらの問題はより顕著になるであろう。さらに、外部磁界効果が期待できない場合、単純に線材をツイストしただけでは輸送電流損失を下げることができないという問題点も存在している。
【0005】
一方、上述したテープ状線材を多数本束ねて大電流を輸送するためのケーブル用導体を構成することができる。この導体において、複数のテープ状超電導線が円筒形の芯材上に螺旋状に巻き付けられる。テープ状超電導線の超電導特性を劣化させることなく芯材に巻き付ける必要があるため、螺旋状に巻かれるテープ状線材の曲げ歪み率および螺旋のピッチは所定の範囲とされる。その範囲を超えて螺旋のピッチを小さくしようとすれば、テープ状超電導線におけるフィラメントは破壊され、超電導特性は劣化する。この場合、芯材に巻き付けられるテープ状超電導線自体において超電導フィラメントがツイストされ、その結果電流がフィラメントに均一に流れていれば、線材自体の輸送電流損失を低く抑えることができ、したがってケーブル用導体において芯材に巻き付ける線材のピッチをそれほど短くしなくても済む。また、複数の線材を集合して導体を構成することにより新たな損失が発生して加わることはあっても、元の線材の輸送電流損失を下げることはできない。よって、導体において総合的に低損失を実現するためには、線材そのものの輸送電流損失を小さくしておくことが望ましい。したがって、ケーブル用導体のためにも、ツイストされ、転位の効果をもつフィラメントを有しかつJcの高い線材が望まれる。
【0006】
線材の輸送電流損失は、外部磁界効果が期待できる場合を除いて、ツイストの大小に関係なく発生することが知られている。このような輸送電流損失を低減するためには、輸送電流の分布が局在から一様になるようフィラメントを転位させる必要がある。外部磁界効果が期待できない場合、この転位の効果は、単純なツイストでは得られない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、輸送電流損失が低く、かつ臨界電流密度が高いビスマス系酸化物多芯超電導線を提供することである。
【0008】
本発明のさらなる目的は、フィラメントが螺旋状の形状を有する酸化物超電導線について、フィラメントを構成する結晶の配向性を高め、それにより臨界電流密度を向上させることのできる製造プロセスを提供することである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、螺旋状に巻かれた酸化物超電導フィラメントについて、ツイストピッチを小さくしてもフィラメント間のブリッジングがほとんどない多芯超電導線を提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、螺旋状に巻かれた酸化物超電導フィラメントについて、層数、ピッチ、巻き方向等を所望の条件に設定することができ、それによってフィラメント相互が転位されたと同等な効果を有し、その結果輸送電流損失が著しく低減できる線材を提供することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、フィラメント間の電気的な抵抗を高くすることができ、その結果、結合損失が小さい酸化物多芯超電導線を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の1つの局面に従って、ビスマス系酸化物超電導体からなる複数のフィラメントを備える多芯超電導線が提供される。本発明の多芯超電導線は、フィラメントの存在しない中心部と、中心部の周囲に中心部と接して設けられた、連続する安定化マトリックス層と、連続する安定化マトリックス層中に埋込まれた、ビスマス系酸化物超電導体からなる複数のフィラメントとを備える。多芯超電導線において、中心部は、空洞であるかまたは安定化マトリックス層と一体不可分に設けられた部分である。複数のフィラメントは、リボン形状であり、かつ中心部のまわりに互いにほぼ並行して螺旋状に配置されている。さらに複数のフィラメントは、多芯超電導線の長手方向に垂直な断面において、中心部を取り巻くよう環状に配置されている。
【0013】
本発明のもう1つの局面に従う多芯超電導線は、フィラメントの存在しない中心部と、中心部の周囲に中心部に接して設けられた、連続する第1の安定化マトリックス層と、第1の安定化マトリックス層中に埋込まれた、ビスマス系酸化物超電導体からなる複数の第1フィラメントと、第1の安定化マトリックス層の周囲に設けられた、連続する第2の安定化マトリックス層と、第2の安定化マトリックス層中に埋込まれた、ビスマス系酸化物超電導体からなる複数の第2フィラメントとを備える。この線材において、中心部は、空洞であるかまたは第1の安定化マトリックス層と一体不可分に設けられた部分である。第2の安定化マトリックス層は、第1の安定化マトリックス層から不可分に設けられる。複数の第1および第2フィラメントは、リボン形状であり、かつ中心部のまわりに螺旋状に配置されている。複数の第1フィラメントは第1の安定化マトリックス層中において互いにほぼ並行して配置される。複数の第2フィラメントは、第2安定化マトリックス層中において互いにほぼ並行して配置される。第1フィラメントにおける螺旋のピッチおよび/または巻き方向は、第2フィラメントにおける螺旋のピッチおよび/または巻き方向と異なっている。このように本発明において、フィラメントの螺旋のピッチおよび/または巻き方向を、中心部のまわりに設けられる層ごとに変えていくことができる。本発明のこの局面は、螺旋のピッチおよび/または巻き方向の異なるフィラメントが少なくとも2層で存在することを意図するもので、その層数は2層に何ら限定されるものではない。必要に応じて2以上の任意の層数を用いることができる。
【0014】
中心部のまわりに設けられた第1の安定化マトリックス層と第2の安定化マトリックス層との間には、安定化マトリックスよりも電気抵抗の高い層または電気絶縁層を設けることができる。この層により、線材に発生する結合損失を低減することができる。
【0015】
本発明に従う多芯超電導線は丸線またはテープ状線の形態とすることが好ましい。丸線の場合、複数のフィラメントは、多芯超電導線の長手方向に垂直な断面において、中心部を取り巻くよう円環状に配置される。テープ状線においても、複数のフィラメントは超電導線の長手方向に垂直な断面において環状に配置される。
【0016】
本発明のさらなる局面に従ってビスマス系酸化物超電導体からなる複数のフィラメントを備える多芯超電導線の製造方法が提供される。この製造方法では、まず、ビスマス系酸化物超電導体またはその原料からなる複数のリボン形状のフィラメントと、フィラメントを覆う安定化マトリックスとを備えるテープ状線材を与える。次いで、1本または複数本のテープ状線材を長尺材料上に螺旋状に巻き付け、かつテープ状線材の螺旋形状を固定する。螺旋状に固定されたテープ状線材に、塑性加工を施す。塑性加工では、螺旋の直径を小さくするかまたは螺旋をその長手方向とほぼ垂直な方向に押し潰すよう加工を行なって丸線またはテープ状線材を得る。得られた丸線またはテープ状線にビスマス系酸化物超電導体の焼結のため熱処理を施す。
【0017】
1本または複数本のテープ状線材を長尺材料上に螺旋状に巻き付ける工程において、テープ状線材を長尺材料上に螺旋状に巻き付けて第1の層を形成した後、第1の層上に1本または複数本のテープ状線材を螺旋状に巻き付けて第2の層を形成することができる。第1の層におけるテープ状線材の螺旋のピッチおよび/または巻き方向は、第2の層におけるテープ状線材の螺旋のピッチおよび/または巻き方向と異なっていてもよい。このように長尺材料上にテープ状線材を層状に巻き付けていく場合、各層における螺旋のピッチおよび/または巻き方向を任意にコントロールすることができる。
【0018】
長尺材料上にテープ状線材を層状に設けていく場合、層と層の間に安定化マトリックスよりも電気抵抗の高い材料からなる層または電気絶縁層を設けることができる。すなわち、第1の層上に、高抵抗層または電気絶縁層を形成した後、その上に第2の層を形成することができる。
【0019】
本発明のプロセスに従って、塑性加工により丸線またはテープ状線を得ることができる。塑性加工は、ロールを用いた加工であることが好ましい。ロール加工により、フィラメントにおける結晶の配向性を向上させることができる。
【0020】
本発明の製造方法において、長尺材料に巻き付けるためのテープ状線材は、ほぼ真っ直ぐに延びるフィラメントを有していることが好ましい。すなわちそのような線材において、フィラメントは捩じられておらず、かつテープ状線材の長手方向にほぼ平行に配置されている。このようなフィラメントを有するテープ状線材は、フィラメントにおいて優れた結晶配向性をもたらし、高い臨界電流密度をもたらすことができる。一方、本発明において、捩じられたフィラメントを有するテープ状線材を使用してもよい。そのような場合でも、螺旋状に固定された線材に塑性加工および熱処理を施すことによって、輸送電流損失が低く、臨界電流密度が高い多芯超電導線を得ることができる。
【0021】
また本発明の製造方法において、焼結のための熱処理を施す工程の前に、塑性加工により得られた丸線にツイスト加工を施してもよい。ツイスト加工された線材は、そのまま熱処理工程に供してもよいし、さらに塑性加工に供してもよい。ツイスト加工された線材に塑性加工を施すことにより、丸線またはテープ状線を得ることができる。本発明において、長尺の線材を得るためには、長尺材料にテープ状線材を巻き付けて得られる中間産物のサイズや寸法を大きくしておく必要がある。中間産物に塑性加工を施して最終的な寸法を有する線材を得たとき、当初の巻付けピッチは塑性加工の加工率に応じて長くなる。これを補正するために、塑性加工の後に得られた丸線にツイスト加工を施し、長くなった螺旋のピッチを短くすることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、図を参照しながら本発明についてより詳細に説明する。本発明の多芯超電導線は、たとえば図1に示すようなプロセスに従って製造することができる。
【0023】
まず、通常のパウダー・イン・チューブ法に従ってテープ状線材を製造することができる。原料粉末の調製では、超電導体を構成する元素の酸化物または炭酸塩の粉末が所定の配合比で混合される。ビスマス系酸化物超電導体を生成させる場合、2212相または2223相の超電導相が得られるよう、原料粉末を配合することが望ましい。混合物を焼結した後、焼結物を粉砕する。このような焼結および粉砕の工程を複数回行なうことが望ましい。また、粉末を焼結温度よりも低い温度で加熱して、脱ガスを行なうことが望ましい。得られた原料粉末を、安定化材からなるパイプに充填する。安定化材には、たとえば銀または銀合金が好ましく用いられる。粉末が充填されたパイプに伸線加工等の塑性加工が施される。得られた線材を複数のセグメントに切断し、それらの所定の本数を安定化材からなるパイプに充填することができる。線材が充填されたパイプに伸線加工等の塑性加工を施せば、図1(a)に示すような線材が得られる。線材10において、安定化マトリックス12中にはビスマス系酸化物超電導体のための原料粉末からなる部分11が分散されている。得られた線材を圧延加工すれば、図1(b)に示すようなテープ状線が得られる。テープ状線20において、安定化マトリックス22中には、ビスマス系酸化物超電導体の原料粉末からなる部分21が分散されている。部分21は、線材20の長手方向に延びるリボン形状である。また各部分21は、線材20の長手方向にほぼ平行に配置されている。得られたテープ状線材に熱処理を施した後、次の工程に供してもよいし、熱処理を施さずに次の工程に供してもよい。
【0024】
図1(c)に示すように、テープ状線材20を円筒状の芯材23に巻き付ける。図1(c)に示す場合、巻き付けられた線材の互いに隣り合う部分が接触するように巻き付けることができる。一方、図2(a)に示すように、隣り合う部分の間に隙間ができるようテープ状線材を芯材に巻き付けてもよいし、図2(b)に示すように隣り合う部分が互いに重なるよう芯材にテープ状線材を巻き付けてもよい。また、巻き付けるべきテープ状線材は1本であってもよいし、複数本であってもよい。テープ状線材を巻き付けるための芯材は、図1に示すような中実の棒であってもよいし、図3に示すようなチューブまたはパイプであってもよいし、あるいは中空の螺旋状テープであってもよい。芯材は、たとえばAg、Ag−M合金(MはMn、Ni、AuおよびSbからなる群から選択される少なくともいずれか)等の金属から構成することができる。芯材は、銀または銀合金等の安定化材で構成することもできるし、安定化材以外の金属で構成することもできる。また芯材として、金属からなる中実の棒または中空のパイプもしくは螺旋状テープ上に安定化マトリックスよりも高い電気抵抗を有する層または電気絶縁層を形成したものを用いてもよい。この中空部は最終的に維持されてもよいし、加工工程で意図的につぶしてもよい。
【0025】
芯材に巻き付けるテープ状線のサイズは、特に限定されるものではないが、たとえば幅が1.0mm〜10mm、好ましくは2mm〜6mm、厚みが0.05mm〜1mm、好ましくは0.1mm〜0.4mmである。このようなサイズを有するテープ状線において、フィラメントの数は、たとえば1000本以下の範囲、好ましくは数本〜数百本の範囲とすることができる。またフィラメントの厚みは、たとえば100μm以下、好ましくは10μm〜50μmの範囲とすることができる。テープ状線材において安定化マトリックスを構成する銀合金には、たとえばAg−Mn、Ag−Sb、Ag−Au、Ag−Ni合金等を用いることができる。合金成分は、酸化物超電導体と反応しない材料から選択される。テープ状線材を巻き付けるための芯材も銀合金であることがより好ましい。テープ状線材は、たとえばテープ幅の10倍以下、好ましくはテープ幅の数倍程度の範囲のピッチで芯材に巻き付けることができる。本発明では、より小さいピッチでテープ状線を螺旋状に巻き付けたとしても、後の塑性加工および焼結処理によってフィラメントにおける結晶の配向性を向上させることができる。本発明の場合、螺旋のピッチは、たとえば用いられるテープ状線材の幅と同程度まで小さくすることができる。また、図2(b)に示すように重ね巻きを行なうことで、用いられるテープ状線材の幅以下の短い螺旋ピッチを実現することも可能である。従来技術のように丸線自体を捩るよりも、本発明に従ってテープ状線材を螺旋状に芯材に巻き付ければ、複数のフィラメントはきれいに並び、その形状も揃うようになる。このため、最終的に得られる線材の超電導特性は向上する。また、本発明では、各フィラメントにかかるストレスがほぼ均等であるため、フィラメント同士がつながるいわゆるブリッジングの現象は従来よりも低減される。
【0026】
巻かれたテープ状線材の螺旋形状は、たとえば熱処理によって固定することができる。熱処理により、螺旋の隣り合う部分同士を拡散接合させることができる。また、芯材に融点の低い金属を用いれば、熱処理により芯材とテープ状線材とを接合させることもできる。このような熱処理の温度として、たとえば300〜600℃の範囲の温度を用いることができる。さらに、螺旋状に巻かれたテープ状線に金属パイプ等を被せることによって螺旋形状を固定することもできる。この場合、一体化のための熱処理を行なわなくともよい。
【0027】
螺旋形状が固定されたテープ状線材には、螺旋の直径を小さくするかまたは螺旋をその長手方向にほぼ垂直な方向に押し潰すよう、塑性加工が施される。このような塑性加工は、テープ状線材を芯材に巻き付けたまま行なってもよいし、螺旋が固定されたテープ状線材から芯材を引き抜いた後行なってもよい。芯材を引き抜きたい場合、熱処理によってテープ状線材と接合しない材料を芯材に用いることが好ましい。塑性加工には、引抜き加工、コンバインドロール加工および溝ロール加工等のロール加工、圧延加工、スエジング加工等を用いることができる。引抜き加工、コンバインドロール加工、溝ロール加工等により、図1(d)に示すような丸線を得ることができる。一方、圧延加工により、図1(e)に示すようなテープ状線を得ることができる。特に丸線を得たい場合、コンバインドロール加工、溝ロール加工等のロールを用いた加工がより好ましい。この場合、螺旋状に配置されたテープ状線材において予め配向していたビスマス系酸化物超電導体の結晶を、破壊することなく、縮径加工を行なうことができる。ロールにより、線材に圧縮力を与えれば、フィラメントにおいて結晶の高い配向性を得ることができる。
【0028】
塑性加工の後、ビスマス系酸化物超電導体の焼結のため、得られた丸線またはテープ状線に熱処理が施される。熱処理は、たとえば800〜900℃の範囲、好ましくは830〜860℃の範囲において行なうことができる。熱処理時間は、たとえば1000時間以内、好ましくは50〜200時間の範囲とすることができる。熱処理により、高い結晶配向性を有するビスマス系酸化物超電導体の焼結体が得られる。塑性加工および熱処理は、必要に応じて複数回繰返してもよい。また、伸線加工、ロール加工等により丸線を得た後、圧延加工を行なってテープ状線材を形成してもよい。図1(d)および(e)に示すように、得られた丸線30およびテープ状線40において、ビスマス系酸化物超電導体からなる複数のフィラメント31および41は、安定化マトリックス32および42中に埋込まれている。いずれの場合も、フィラメントはリボン形状であり、線材の長手方向に沿って螺旋状に巻かれている。
【0029】
本発明に従う製造プロセスのもう1つの具体例を図4に示す。まず、上述と同様の工程により原料粉末を安定化マトリックスからなるパイプに充填した後、伸線加工を行ない、得られた線材を複数本安定化マトリックスからなるパイプに充填して伸線加工を行なえば、図4(a)に示すような線材を得ることができる。線材110において、原料粉末からなる複数の部分111は安定化マトリックス112中に所定のパターンで配置されている。線材110に圧延加工を施せば、図4(b)に示すようなテープ状線が得られる。テープ状線120において安定化マトリックス122中に埋込まれた原料粉末からなる部分121はリボン形状であり、線材120の長手方向に沿って延びている。
【0030】
図4(c)に示すように、得られた線材120は、芯材123上に巻き付けられる。そして、図4(d)に示すように、さらにその上にテープ状線材120′を巻き付ける。このようにして、芯材123上に2層以上テープ状線材を巻き付けていく。層の数は任意であり、さらに1層の中で巻き付けられるテープ状線材は1本であっても複数本であってもよい。テープ状線材を多層巻きする場合、諸元の異なるテープ状線材を用いたり、巻きピッチおよび/または巻き方向を層ごとに変えることができる。臨界電流および損失の観点から、各層の材質、フィラメントの数、ならびに各層の巻きピッチおよび巻き方向の最適条件を求めることができる。このように、テープ状線を重ね巻きすることで、臨界電流や損失等の点からより好ましい線材を設計することが可能になる。たとえば、図5に示すように、芯材53上にテープ状線を4層で巻き付けることができる。この場合、図5(a)に示すように、第1層61における巻き方向と第2層62における巻き方向とを逆にすることができる。また、第3層63の巻き方向を第1層61の巻き方向と同じにし、第4層64の巻き方向を第2層62の巻き方向と同じにすることができる。したがって、第3層63の巻き方向は第4層64の巻き方向と逆である。さらに、第3層63および第4層64における巻きピッチは、第1層61および第2層62における巻きピッチよりも小さくすることができる。一方、図5(b)に示すように、巻き方向は図5(a)と同様にして、巻きピッチを図5(a)の場合と逆の態様とすることもできる。この場合、第1層61′および第2層62′における巻きピッチの方が、第3層63′および第4層64′における巻きピッチよりも短い。図に示すような配置により、フィラメントの転位を積極的に行なうことができる。また、巻きピッチを変えることで、各フィラメントが等価的に転位されている状態を得ることができ、さらに交流損失の低減を図ることができる。なお、芯材に層状にテープ状線材を巻きつける場合、フィラメント数が比較的少なく、かつ薄いテープ状線材を用いることが好ましい。
【0031】
上述したようにテープ線を層状に巻き付けると、最終的に得られる線材の結合損失が増大する可能性がある。さらに、線材の巻き方向を逆にすることによりこの損失は増大する。そこで、層の間に高抵抗層または電気絶縁層を設けることが好ましい。たとえば、芯材上に巻かれたテープ線上に高抵抗層または絶縁層を形成した後、その上にテープ状線材を巻き付けることができる。これらの層は、高抵抗金属等の高抵抗材料からなるテープまたは絶縁テープ等を巻き付けることにより形成することができる。また、高抵抗材料または絶縁材料をテープ状線材にコーティングしてもよい。高抵抗の材料として、Ag−Au、Ag−Mn等の銀合金、Ta、Nb、V等の高融点金属等を用いることができる。絶縁材料としては、アルミナ、シリカ、マイラ等を用いることができる。高抵抗層または絶縁層を形成する材料は、焼結のための熱処理において耐えるものが望ましい。このような層を設けることにより層間に発生する結合損失を低減し、臨界電流密度の低下を抑制することができる。さらに、芯材に導電率の高い金属を用いる場合、芯材とテープ状線の間にも高抵抗層または絶縁層を設けることが好ましい。
【0032】
螺旋状に巻き付けられたテープ状線は熱処理または金属パイプ等を被せることにより固定することができる。螺旋形状が固定されたテープ状線には、螺旋の直径を小さくするかまたは螺旋をその長手方向にほぼ垂直な方向に押し潰すよう、塑性加工が施される。塑性加工には、伸線加工、ロール加工、圧延加工等がある。上述したように、ロールを用いる加工は、結晶の高い配向性を維持する上で好ましい。塑性加工により、丸線またはテープ状線を得ることができる。得られた線材に、ビスマス系酸化物超電導体の焼結のための熱処理を施せば、多芯超電導線を得ることができる。熱処理の温度範囲は、上述したとおりである。図4(d)に示す工程の後さらにテープ状線材を巻き付け4つの層を形成した線材について塑性加工および熱処理を施して得られた多芯超電導線を図4(e)および(f)に示す。図4(e)に示す線材130は、伸線加工、ロール加工等の後得られた丸線である。線材130において、安定化マトリックス132中に多数のビスマス系酸化物超電導フィラメント131が配置されている。図4(f)に示すテープ状線材140は、たとえば圧延加工の後に得られたものである。線材140においても、安定化マトリックス142中に多数のフィラメント141が分配されている。
【0033】
図6および図7は、上述したプロセスにより製造される多芯超電導線の具体例を示している。図6に示す丸線60において、中心部63のまわりには安定化マトリックスからなる層62が一体不可分に設けられている。安定化マトリックス62中には、ビスマス系酸化物超電導体からなるフィラメント61が埋込まれている。各フィラメント61は、リボン形状であり、かつ中心部63のまわりに互いにほぼ並行して螺旋状に配置されている。丸線60の長手方向に垂直な断面において、多数のフィラメント61は、円環状に配置される。中心部63は、安定化金属から構成されてもよいし、その他の金属材料から構成されてもよい。このように、中心部のまわりにリボン形状のフィラメントを螺旋状に配置した構造では、フィラメントが平行してきれいに並び、フィラメント同士のブリッジングは抑制される。このような螺旋状に配置されたフィラメントを有する線材について、もしすべてのフィラメントの配置が、ピッチや方向などを変えずに一様にツイストされている条件と等価な場合、すなわちNbTiなどの金属系多芯超電導線のようにすべてのフィラメントのツイストピッチや方向が等しい場合においては、変動横磁界の印加によって電流分布が一様化されるという「外部磁界効果」が期待できる。このような構造の線材において輸送電流損失は小さくなる。一方、フィラメントの配置を変えて等価的に転位されているようにすれば、外部磁界効果がなくとも自己磁界による輸送電流損失は小さくなる。本発明では、螺旋のピッチおよび/または巻き方向の異なるフィラメントを配置することができ、それによって外部磁界効果がなくとも輸送電流損失を小さくすることができる。また、すべてのフィラメントは、結晶の配向性に優れたリボン形状を有している。このような形状のフィラメントは、長手方向にわたってほぼ均一な超電導相を有し、超電導相のc軸は、リボンの厚み方向にほぼ平行に配向することができる。さらに、フィラメントにおける結晶粒は、リボンの長手方向に延びるフレーク状であり、結晶粒同士は強く結合している。フレーク状の結晶粒は、リボンの厚み方向に積層される。配向性に優れた結晶構造を有するフィラメントは、線材に高い臨界電流密度をもたらす。
【0034】
図7は、上述したプロセスによって得られるテープ状線材の一具体例を示している。テープ状多芯超電導線70において、中心部73のまわりには、安定化マトリックス層72が一体不可分に設けられる。中心部73は、安定化金属から構成してもよいし、その他の金属から構成することもできる。安定化マトリックス層72中に、リボン形状のフィラメント71が埋込まれている。フィラメント71は、中心部73のまわりに互いにほぼ並行して螺旋状に配置される。多芯超電導線70の長手方向に垂直な断面において、複数のフィラメント71は中心部73を取り巻くよう環状に配置される。この構造においても、フィラメント71は並行してきれいに並び、フィラメント同士のブリッジングは抑制される。リボン形状のフィラメント71は、上述したような優れた結晶配向性を有し、高い臨界電流密度をもたらす。
【0035】
図6および7に示す線材では、中心部が詰まっていたが、図8に示すように、中心部が空洞である、パイプ状またはチューブ状の超電導線材を提供することもできる。このような線材は、より優れた可撓性を有する。図8(a)に示す丸線80では、空洞の中心部83のまわりに、安定化マトリックス層82が設けられる。安定化マトリックス82中に、リボン形状のフィラメント81が複数配置される。フィラメント81は、中心部83のまわりに螺旋状に配置される。図8(b)に示すテープ状線80′においても、空洞の中心部83′のまわりに安定化マトリックス層82′が設けられる。安定化マトリックス層82′中には、リボン形状のフィラメント81′が複数埋込まれている。フィラメント81′は、中心部83′を取り囲むように螺旋状に配置される。
【0036】
また、安定化マトリックス層は、高抵抗層または電気絶縁層によって分割することができる。図9は、高抵抗層または絶縁層を有する線材の一具体例を示す。図9(a)に示すように、芯材93のまわりには、高抵抗材料または絶縁材料からなる層95が形成され、そのまわりに第1安定化マトリックス層92aが設けられている。第1安定化マトリックス層92aは、高抵抗材料または絶縁材料からなる層96によって覆われている。その上にさらに第2安定化マトリックス層92bが設けられている。第1および第2安定化マトリックス層92aおよび92b中には、それぞれ、ビスマス系酸化物超電導体からなるフィラメント91aおよび91bが埋込まれている。それぞれの層におけるフィラメントの数、螺旋ピッチ、螺旋の巻き方向等は、任意に設定される。本発明に従って、それぞれの層におけるフィラメントの数、螺旋のピッチおよび螺旋の巻き方向の少なくともいずれかが異なっている線材を提供することができる。図9(b)に示すテープ状線材でも、中心部93′のまわりに高抵抗材料または絶縁材料からなる層95′が設けられる。2つの安定化マトリックス層92′aと92′bとの間にも、高抵抗材料または絶縁材料からなる層96′が設けられている。それぞれの安定化マトリックス層中には、フィラメント91′aおよび91′bが中心部93′を取り囲むように配置される。高抵抗材料または絶縁材料は、層間の結合損失を抑制することができる。
本発明において、塑性加工により得られた丸線に、従来の金属系超電導線を製造する場合と同様なツイスト加工を施すことができる。ツイスト加工を施された線材は、丸線またはテープ状線に仕上げることができる。最終的にテープ状線材を得る場合、圧延加工を行なう直前にツイスト加工を行なうことが好ましい。最終的に丸線を得る場合、ツイスト加工された線材を熱処理するかまたはツイスト加工された線材に非常に低い加工率で塑性加工を施すことにより、ツイスト加工によるピッチの調整を効果的なものとすることができる。ツイスト加工により、塑性加工のために長くなった各フィラメントの螺旋ピッチを等価的に短くすることができる。層毎に螺旋の方向を変えた場合でも、このツイスト加工は有効である。長尺材料にテープ状線材を巻付ける工程において得られる各フィラメントの配置関係は塑性加工後も保持される。そしてこの配置関係を保持したままツイスト加工により螺旋のピッチを調整することができる。
【0037】
本発明において、ビスマス系酸化物超電導体には、たとえばBi2 Ca2 Sr1 Cu2 8-X 、(Bi,Pb)2 Ca2 Sr1 Cu2 8-X (0≦X<1)等の2212相を有するビスマス系酸化物超電導体、Bi2 Ca2 Sr2 Cu3 10-Z、(Bi,Pb)2 Ca2 Sr2 Cu3 10-Z(0≦Z<1)等の2223相を有するビスマス系酸化物超電導体などがある。2212相または2223相の超電導相を有するフィラメントは、塑性加工後に得られた線材を熱処理することによってより高い収率で生成させることができる。また、塑性加工後の熱処理における粒界相互の接合強化、粒の回復、粒の配向性の維持により、高い臨界電流密度を得ることができる。
【0038】
超電導線材の主な用途には、線材に比較的大きな横変動磁界が自己磁界と同時に印加される用途と、主に自己磁界が線材に印加される用途とがある。前者の用途では、大きな変動横磁界によりフィラメントにおける輸送電流が一様になる効果、いわゆる「外部磁界効果」のために、輸送電流損失は一般に低く抑えられる。したがってこの用途では、安定化マトリックス中のフィラメントの巻き方向が同じであり、比較的短いピッチで螺旋状に配置されたフィラメントを有する本発明の多芯超電導線を用いれば、NbTi多芯線などの金属系超電導多芯線と同様の効果が期待できる。一方、後者の用途の場合、フィラメントの巻き方向および/またはピッチを変えた線材を用いることが好ましい。後者の用途では、フィラメントを転位させて輸送電流損失を低減する線材が望ましい。このような線材も上述したように本発明によって提供できる。
【0039】
【実施例】
実施例1
Bi2 3 、PbO、SrCO3 、CaCO3 、CuOを用いてBi:Pb:Sr:Ca:Cu=1.8:0.3:1.9:2.0:3.0の組成比になるようにこれらを配合した。配合した粉末に、800℃から900℃の間での熱処理および粉砕を複数回施した。得られた粉末をボールミルで粉砕し、サブミクロンの粉末を得た。この段階で、帯磁率測定により2212相の体積分率を調査した結果、約90%であった。粉末を外径10mm、内径8mmの銀パイプに充填し、引抜き加工を施して、1.2mmφの単芯線を得た。得られた線材を7本外径6mm、内径4mmの銀パイプに充填し、引抜き加工を施して0.8mmφの線材を得た。得られた丸線を圧延加工して幅4mm、厚さ0.2mmのテープ線材を得た。
【0040】
得られたテープ線材を直径2mmφの銀棒上にピッチ9mmで1層巻き付けた。300℃で3時間の熱処理を行なって銀棒と線材とを一体化した後、半分に切断した。一方の線材には、穴型圧延ロールによる縮径加工およびその後の850℃における熱処理を2回施し、直径1mmφの丸線を得た。850℃の熱処理により、ビスマス系酸化物超電導体について2223相を生成させた。得られた丸線を試料A−1とする。一方、もう1つの線材には、圧延加工およびその後の850℃における熱処理を2回行ない、幅4mm、厚み0.2mmのテープ状線を得た。熱処理により、2223相が生成された。得られたテープ状線を試料A−2とする。
【0041】
また、直径2mmφの銀棒上に、テープ線材を4層で巻き付けたサンプルを調製した。得られたサンプルにおいて、1層目と2層目の巻き方向は互いに逆であり、3層目と4層目の巻き方向は互いに逆であった。1層目と3層目の巻き方向、2層目と4層目の巻き方向は同一の方向であった。全層のピッチを15mmとし、300℃で3時間の熱処理を行なって銀棒と4本のテープ線材を一体化した。得られた線材を半分に切断し、一方に穴型圧延ロールによる縮径加工および850℃の熱処理を2回施し直径1mmφの丸線を得た。得られた丸線を試料B−1とする。また残りの線材に圧延加工および850℃の熱処理を2回施してテープ状線材を得た。得られたテープ状線材を試料B−2とする。さらに、1層目と2層目の巻きピッチを12mmとし、3層目と4層目の巻きピッチをその2倍としてテープ線材を銀棒に巻き付けた試料を作製した。300℃で3時間の一体化のための処理を行なった後、半分に切断した。得られた一方の線材に穴型圧延ロールによる縮径加工および850℃の熱処理を2回施し丸線を得た。得られた丸線を試料B−3とする。もう一方の線材には圧延加工および850℃の熱処理を2回施し、テープ状線材を得た。得られたテープ状線材を試料B−4とする。
【0042】
比較例として、引抜き加工後に得られた1.2mmφの単芯線を7本外径6mm、内径4mmの銀パイプに充填し、さらに引抜き加工を行なって1mmφの7芯丸線を得た。得られた丸線に850℃の熱処理を2回施し超電導線を得た。得られた超電導線を比較例1とする。また、銀棒に巻き付けるための幅4mm、厚さ0.2mmのテープ状線材を上記プロセスから採取し、これに850℃の熱処理を2回施した。得られたテープ状7芯線を比較例2とする。
【0043】
表1および表2に線材の特性を比較して示す。表1は丸線を比較し、表2はテープ状線材を比較している。表1に示すように、本発明に従う3つの丸線は、いずれも比較例1に比べて2223超電導相の体積分率が向上している。本発明による丸線の臨界電流密度は、比較例1よりも1桁以上高い値である。通電電流(Iop)を臨界電流(Ic)のレベルまで上げ、77Kにおいて測定した自己磁界損失は、本発明の丸線において低かった。また、77Kにおいて、50Hz、±0.5Tの交流磁界を印加し、磁化法により横磁界損失を測定した結果、本発明の丸線において損失の低減が認められた。したがって、フィラメントレベルの転位の効果、およびフィラメントのツイストの効果が認められた。また表2に示すように、本発明に従う3つのテープ状線の臨界電流密度は、比較例2と同様に高い値であった。したがって、本発明によれば、酸化物超電導体のフィラメントを螺旋状にしても臨界電流密度を高い値に維持することができる。通電電流(Iop)を臨界電流(Ic)のレベルにして77Kで測定された自己磁界損失は低い値であった。したがって、丸線材と同様にフィラメントレベルの転位効果およびツイストの効果が認められた。
【0044】
【表1】
Figure 0003657367
【0045】
【表2】
Figure 0003657367
【0046】
実施例2
実施例1と同様に引抜き加工により1.2mmφの単芯線を準備した。得られた単芯線を7本、外径6mm、内径4mmの銀−10at.%金パイプに充填し、引抜き加工を行なって0.8mmφの7芯線を得た。Ag−10at.%Au合金は、純銀に比べ77Kにおいて1桁大きい比抵抗値を有する。このように抵抗値の高い材料を線材の外周に用いることで通電損失のさらなる低減を図った。実施例1と同様にして丸線に圧延加工を施し、幅4mm、厚さ0.2mmのテープ線材を得た。得られたテープ線材について、実施例1と同様のプロセスにより、試料A−2、試料B−2および試料B−4とそれぞれ同様の構造を有する3種類のテープ状線材を得た。得られた線材を、試料A′−2、試料B′−2、試料B′−4とする。また、比較例2′として、0.8mmφの丸線を圧延加工して得られる幅4mm、厚さ0.2mmのテープ線材を850℃で2回熱処理し、超電導線材を得た。表3において得られた線材の特性を比較する。本発明に従う3つのテープ状線材は、比較例2′の線材と同様に高い臨界電流密度を有しかつ自己磁界損失がより低いものとなっている。表2と表3とを比較することにより、銀合金を用いることによる自己磁界損失のさらなる低減が認められる。
【0047】
【表3】
Figure 0003657367
【0048】
実施例3
実施例1で製作したA−1、B−1およびB−3の3種の丸線と比較例1の丸線を、熱処理する前に、それぞれツイスト加工した。1mmφの線材にはピッチ9mmで、2mmφの線材にはピッチ16mmでツイスト加工を施した。次いで、断面積を10%減らす引抜き加工を行ない、それぞれ0.97mmφと1.94mmφの線材を得た。得られた線材に850℃で50時間の熱処理を2回施し、超電導線を得た。比較例1、試料A−1、B−1およびB−3の線材をそれぞれツイストした後得られた線材を、それぞれ比較例1′、試料A′−1、B′−1およびB′−3とする。各線材の性能を表4に示す。表に示されるように、臨界電流密度を維持したまま、自己磁界損失をほぼ半分に低減することができ、ツイストの効果が認められた。液体窒素(77K)中で、50Hz、±0.5Tの交流磁界を印加し、磁化法により横磁界損失を測定した結果、表1と表4を比較して明らかなように大幅な横磁界損失の低減が認められた。
【0049】
【表4】
Figure 0003657367
【0050】
【発明の効果】
以上述べてきたように、本発明によれば、高い臨界電流密度を有しかつ輸送電流損失の低い酸化物超電導多芯線を得ることができる。本発明によれば、ブリッジングを抑制して酸化物超電導体に螺旋形状を付与することができる。本発明は、超電導フィラメントにより短いピッチの螺旋形状を付与することができる。螺旋状のフィラメントにおいて、ビスマス系酸化物超電導体は高い結晶配向性を維持している。本発明による線材は、損失が少なくかつ高い臨界電流密度を有する線材として、ケーブル用導体、超電導変圧器、超電導発電機、超電導マグネット、超電導限流器等に効果的に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う線材の製造プロセスの一例を示す斜視図である。
【図2】本発明に従って芯材上にテープ状線を巻くための態様を示す平面図である。
【図3】本発明のプロセスに用いられる芯材の一具体例を示す斜視図である。
【図4】本発明に従うもう1つのプロセスを示す斜視図である。
【図5】本発明のプロセスにおいて、芯材上にテープ状線を層状に巻き付ける態様を示す斜視図である。
【図6】本発明に従う多芯超電導線の一具体例を示す斜視図である。
【図7】本発明に従う多芯超電導線のもう1つの具体例を示す斜視図である。
【図8】本発明に従う他の線材を示す断面図である。
【図9】本発明に従う線材において、安定化マトリックス層の間に高抵抗層または絶縁層が設けられた線材を示す断面図である。
【図10】従来の多芯超電導線の製造方法を示す斜視図である。
【図11】従来の多芯超電導線の構造を示す斜視図である。
【図12】従来の多芯超電導線において、フィラメント間にブリッジングが発生する様子を示す斜視図である。
【符号の説明】
10、110 丸線
20、120 テープ状線
23、123 芯材
31、41、131、141 フィラメント
32、42、132、142 安定化マトリックス層
60 丸線
70 テープ状線
61、71 フィラメント
62、72 安定化マトリックス層
63、73 中心部

Claims (12)

  1. ビスマス系酸化物超電導体からなる複数のフィラメントを備える多芯超電導線であって、前記フィラメントの存在しない中心部と、前記中心部の周囲に前記中心部と接して設けられた、連続する安定化マトリックス層と、前記連続する安定化マトリックス層中に埋込まれた、前記ビスマス系酸化物超電導体からなる複数のフィラメントとを備え、前記中心部は、空洞であるかまたは前記安定化マトリックス層と一体不可分に設けられた部分であり、前記複数のフィラメントは、リボン形状であり、かつ前記中心部のまわりに互いにほぼ並行して螺旋状に配置されており、かつ前記複数のフィラメントは、前記多芯超電導線の長手方向に垂直な断面において、前記中心部を取り巻くよう環状に配置されており、
    前記中心部は、金属と、前記金属を覆う、前記安定化マトリックスより電気抵抗の高い層または電気絶縁層とからなることを特徴とする、ビスマス系酸化物多芯超電導線。
  2. ビスマス系酸化物超電導体からなる複数のフィラメントを備える多芯超電導線であって、前記フィラメントの存在しない中心部と、前記中心部の周囲に前記中心部に接して設けられた、連続する第1の安定化マトリックス層と、前記第1の安定化マトリックス層中に埋込まれた、前記ビスマス系酸化物超電導体からなる複数の第1フィラメントと、前記第1の安定化マトリックス層の周囲に設けられた、連続する第2の安定化マトリックス層と、前記第2の安定化マトリックス層中に埋込まれた、前記ビスマス系酸化物超電導体からなる複数の第2フィラメントとを備え、前記中心部は、空洞であるかまたは前記第1の安定化マトリックス層と一体不可分に設けられた部分であり、前記第2の安定化マトリックス層は、前記第1の安定化マトリックス層から不可分に設けられており、前記複数の第1および第2フィラメントは、リボン形状であり、かつ前記中心部のまわりに螺旋状に配置されており、前記複数の第1フィラメントは、前記第1の安定化マトリックス層中において互いにほぼ並行して配置されており、前記複数の第2フィラメントは、前記第2の安定化マトリックス層中において互いにほぼ並行して配置されており、かつ前記第1フィラメントにおける螺旋のピッチおよび/または巻き方向は、前記第2フィラメントにおける螺旋のピッチおよび/または巻き方向と異なっており、
    前記第1の安定化マトリックス層と前記第2の安定化マトリックス層との間に、前記第1および第2の安定化マトリックスより電気抵抗の高い層または電気絶縁層をさらに備えることを特徴とする、ビスマス系酸化物多芯超電導線。
  3. 前記中心部は、金属と、前記金属を覆う、前記安定化マトリックスより電気抵抗の高い層または電気絶縁層とからなることを特徴とする、請求項2に記載のビスマス系酸化物多芯超電導線。
  4. ビスマス系酸化物超電導体からなる複数のフィラメントを備える多芯超電導線の製造方法であって、ビスマス系酸化物超電導体またはその原料からなる複数のリボン形状のフィラメントと、前記フィラメントを覆う安定化マトリックスとを備える、テープ状線材を与える工程と、1本または複数本の前記テープ状線材を長尺材料上に螺旋状に巻き付け、かつ前記テープ状線材の螺旋形状を固定する工程と、前記螺旋状に固定されたテープ状線材に、前記螺旋の直径を小さくするかまたは前記螺旋をその長手方向にほぼ垂直な方向に押し潰すよう、塑性加工を施し、丸線またはテープ状線を得る工程と、得られた丸線またはテープ状線に、ビスマス系酸化物超電導体の焼結のための熱処理を施す工程とを備える、ビスマス系酸化物多芯超電導線の製造方法。
  5. 前記テープ状線材を長尺材料上に螺旋状に巻き付ける工程は、1本または複数本の前記テープ状線材を前記長尺材料上に螺旋状に巻き付けて第1の層を形成する工程と、前記第1の層上に1本または複数本の前記テープ状線材を螺旋状に巻き付けて第2の層を形成する工程とを備え、前記第1の層における前記テープ状線材の螺旋のピッチおよび/または巻き方向は、前記第2の層における前記テープ状線材の螺旋のピッチおよび/または巻き方向と異なることを特徴とする、請求項記載の製造方法。
  6. 前記第1の層上に前記安定化マトリックスよりも電気抵抗の高い材料からなる層または電気絶縁層を形成する工程をさらに備え、その上に前記第2の層が形成されることを特徴とする、請求項記載の製造方法。
  7. 前記長尺材料として、金属と、前記金属を覆う、前記安定化マトリックスより電気抵抗の高い層または電気絶縁層とからなる材料を用いることを特徴とする、請求項4〜6のいずれか1項記載の製造方法。
  8. 前記塑性加工が、ロールを用いた加工であることを特徴とする、請求項4〜7のいずれか1項記載の製造方法。
  9. 前記長尺材料に巻き付けるためのテープ状線材において、前記フィラメントは、捩じられておらず、前記テープ状線材の長手方向にほぼ平行に配置されていることを特徴とする、請求項4〜8のいずれか1項記載の製造方法。
  10. 前記長尺材料に巻き付けるためのテープ状線材において、前記フィラメントは捩じられていることを特徴とする、請求項4〜8のいずれか1項記載の製造方法。
  11. 前記焼結のための熱処理を施す工程の前に、前記塑性加工により得られた丸線にツイスト加工を施す工程をさらに備えることを特徴とする、請求項4〜10のいずれか1項記載の製造方法。
  12. 前記焼結のための熱処理を施す工程の前に、前記塑性加工により得られた丸線にツイスト加工を施す工程と、ツイスト加工された線材にさらに塑性加工を施して丸線またはテープ状線を得る工程とをさらに備えることを特徴とする、請求項4〜11のいずれか1項記載の製造方法。
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