JP3724128B2 - 酸化物超電導線材およびその製造方法ならびにそれを用いた酸化物超電導撚線および導体 - Google Patents

酸化物超電導線材およびその製造方法ならびにそれを用いた酸化物超電導撚線および導体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸化物超電導体を用いた線材、撚線および導体、ならびにその線材の製造方法に関するものであり、特に、電力ケーブル等の交流用電力機器等に適用できる、高い臨界電流密度を有する断面が円形の線材、およびそれを用いた交流損失の少ない撚線および導体の構造、ならびにその線材を製造するための方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
従来、銀シースビスマス系酸化物超電導線材について、104 A/cm2 を超える臨界電流密度を有する長尺線が開発されてきた。このような線材は、液体窒素によって冷却する超電導電力機器への応用が期待されている。しかし、現段階では、テープ形状の線材のみが、実用に値する臨界電流密度、長さ、量産技術等の条件を満足するようになってきている。高い臨界電流密度を得るためには、圧延工程によって超電導フィラメントのアスペクト比を大きくし、板状の結晶を成長させることが有利に働いていると考えられる。
【0003】
一方、圧延工程を経ないで製造された断面が円形の銀シース酸化物超電導線材は、テープ状線材に比べて臨界電流密度が顕著に小さかった。従来の丸線材では、超電導相の密度がそれほど高くなく、結晶の配向がそれほど進んでいない。
【0004】
たとえば、特許公報第2583289号には、安定化金属層と酸化物超電導体層とを同心円状に交互に積層した丸線が開示されている。同公報に開示される技術では、当該積層構造の中心部に棒状またはパイプ状の安定化金属材料を配置することにより、臨界電流密度を向上させようとしている。しかしながら、このような構造を有する線材の臨界電流密度は、実用上満足のいくものではない。
【0005】
また、超電導線材の交流用途では、変動磁界によって生じる交流損失が問題になる。さらに、超電導線材を集合したケーブル導体においては、線材間のインピーダンスの不均一によって偏流等の問題が生じる。線材を多数集合した導体において、このような偏流は、素線自体に発生する交流損失の総和よりも導体に発生する交流損失の方が大きくなる原因となる。
【0006】
これまで、テープ状の酸化物超電導線材を円筒形状のパイプ上に多層で螺旋状に巻付けた大容量の導体が試作されてきているが、その構造に起因して発生する交流損失は大きく、実用に必要なレベルまで交流損失を低減することが望まれている。
【0007】
従来より、たとえば金属系超電導体の分野では、交流損失を低減するため、たとえば次のような対策がなされている。
【0008】
極細フィラメント線を開発する。フィラメントの周囲に高抵抗バリア層を設ける。マトリックスの比抵抗を高くする。フィラメントまたは線材に撚りを施す。線材またはフィラメントの転位により各フィラメントまたは各線材のインピーダンスを均一にする。
【0009】
酸化物超電導体の分野においても、これらの対策は有効であると考えられる。しかしながら、現実には、酸化物超電導体の材質、線材に必要な材料および構造等に起因して、これらの対策を十分にとることができない。特に、テープ状線材を用いて撚線を製造することは、実質的に不可能である。そこで、撚線を作製するためには、断面が円形の線材が必要である。したがって、テープ状線材と同程度のレベルの臨界電流密度を有する丸線の開発が望まれている。
【0010】
一方、特開平6−349358号公報には、金属パイプを用いることなく、線材間の金属被覆同士を接着することにより、最外周部の金属被覆の薄い酸化物超電導線材を製造する方法が開示されている。しかしながら、この方法によっても、テープ状線材と同程度のレベルの臨界電流密度を有する線材を得ることはできなかった。
【0011】
本発明の目的は、断面が円形であり、かつ、テープ状線材に匹敵する高い臨界電流密度を有する酸化物超電導線材およびその製造方法を提供することにある。
【0012】
本発明のさらなる目的は、そのような線材を用いて、交流損失が小さく、高い電流密度を有する撚線、およびケーブル等のための導体を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
この発明による酸化物超電導線材の製造方法は、酸化物超電導体またはその原料の粉末を安定化材からなるチューブに充填するステップと、粉末が充填されたチューブに伸線加工、圧延加工および焼結加工を施して、長尺のテープ状酸化物超電導線材を作製するステップと、長尺のテープ状酸化物超電導線材を、塑性加工後の長尺の断面が円形の芯材に縦添えして変形加工を施すことにより、テープ状酸化物超電導線材の幅広面が芯材の外周を覆うように曲げ変形を加えて、テープ状酸化物超電導線材と芯材とを密着させて、複合線を作製するステップと、複合線に焼結加工を施すステップとを備えている。
【0014】
この発明によれば、まず、圧延加工によりテープ状線材が作製される。このテープ状線材は、緻密性および配向性に優れ、不純物相が少ない軸方向圧縮組織を有しているため、高い臨界電流密度が得られる。
【0015】
この発明によれば、この高い臨界電流密度を有するテープ状線材に対して、線材の幅方向の曲げ加工が加わるのみであるため、変形加工後も、高い臨界電流密度が維持される。さらに、この発明によれば、曲げ変形により発生するクラックは、線材の長さ方向にほぼ平行に入るため、臨界電流密度の低下を防止することができる。
【0016】
この発明において、テープ状酸化物超電導線材を作製するステップは、粉末が充填されたチューブに伸線加工を施して素線を作製するステップと、作製された素線を複数本チューブに嵌合した後、伸線加工を施すことにより、多芯のテープ状酸化物超電導線材を作製するステップとを備えることができる。このような多芯線を用いることにより、変形加工時のクラックの伝播が抑制できるため、より高い臨界電流密度を有する酸化物超電導線材が得られる。
【0017】
また、テープ状酸化物超電導線材を作製するステップは、粉末が充填されたチューブに、伸線加工、第1の圧延加工、焼結加工および第2の圧延加工を順次施すことを特徴とすることができる。
【0018】
このように、圧延加工および焼結加工を繰返すことにより、臨界電流密度の高いテープ状酸化物超電導線材が得られる。このとき、第1の圧延加工として、圧下率70%〜95%の圧延を施し、第2の圧延加工として、圧下率5〜30%の圧延を施すことが好ましい。
【0019】
また、この発明による酸化物超電導線材の製造方法は、酸化物超電導体またはその原料の粉末を安定化材からなるチューブに充填するステップと、粉末が充填されたチューブに伸線加工および圧延加工を施して、長尺のテープ状線材を作製するステップと、長尺のテープ状線材を、長尺の断面が円形の芯材に縦添えして変形加工を施すことにより、テープ状線材の幅広面が芯材の外周を覆うように曲げ変形を加えて、テープ状線材と芯材とを密着させて、複合線を作製するステップと、複合線に焼結加工を施すステップとを備えている。
【0020】
この発明によれば、焼結加工前に、テープ状線材に対して変形加工が施される。たとえば、ビスマス系酸化物超電導体の場合、焼結加工によって2212相から2223相への相変化が起こる。この発明によれば、変形加工後に行なわれる焼結加工のときに生じるこの相変化により、テープ状線材を曲げ変形した際に生じたクラックを治癒する効果が期待できる。
【0021】
また、この発明において、上述のように焼結加工を施した複合線に、さらに減面率50%以下の減面加工を施し、続いて第2の焼結加工を施すこともできる。減面率50%以下の加工であれば、臨界電流密度の低下が防止される。
【0022】
また、この発明において、上述のように焼結加工後に減面加工を施した複合線に、さらに第2の長尺のテープ状酸化物超電導線材を縦添えして変形加工を施すことにより、第2のテープ状酸化物超電導線材の幅広面が複合線の外周を覆うように曲げ変形を加えて、第2のテープ状酸化物超電導線材と複合線とを密着させて、第2の複合線を作製し、得られた第2の複合線に第2の焼結加工を施すこともできる。
【0023】
このようにして、テープ状線材は、芯材の周囲に、2層以上の複数層に巻付けられてもよい。特に、減面加工後に2層目のテープ状線材を巻付けることにより、丸線の線径を大きくすることなく、より中心部まで超電導体を配置することが可能となる。その結果、線材中の超電導体の占積率を向上させることができる。
【0024】
また、この発明において、テープ状線材を作製するステップは、粉末が充填されたチューブに伸線加工を施して素線を作製するステップと、作製された素線を複数本チューブに嵌合した後、伸線加工を施すことにより、多芯のテープ状線材を作製するステップとを備えることができる。このような多芯線を用いることにより、変形加工時のクラックの伝播が抑制できるため、より高い臨界電流密度を有する酸化物超電導線材が得られる。
【0025】
また、この発明において、複合線を作製するステップにおいて施される変形加工は、断面が円形の線引き用ダイスを用い、ダイスに丸線とテープ状酸化物超電導線材とを同時に供給することにより行なわれる。
【0026】
このようなダイスを用いる変形加工において、丸線の断面積とテープ状酸化物超電導線材の断面積との和をSとし、ダイスの孔の断面積をSdとすると、S/Sdで定義される値が0.95〜1であることを特徴とするとよい。S/Sdの値がこの範囲内であれば、芯材の外周にテープ状線材が丁度1層巻付けられ、テープ状線材の端部の突き合わせた部分が、丸線の長手方向とほぼ平行となる。
【0027】
また、この発明において、複合線を作製するステップにおいて施される変形加工は、複数段の成形ロールを用いたロール成形加工により行なわれる。
【0028】
また、この発明において、複合線を作製するステップにおいて施される変形加工は、熱間加工であるとよい。熱間加工を行なうことにより、テープ状線材と芯材との密着性が向上する。熱間加工は、非超電導相の凝集や超電導体の焼結が進行しない温度範囲で行なわれることが好ましく、好ましくは200℃〜700℃の温度で行なわれるとよい。
【0029】
また、この発明において芯材としては、種々の材料が用いられる。
たとえば、銀または銀合金等の金属を用いることができる。銀または銀合金を用いることにより、引張り歪に対する超電導特性の低下が防止される。
【0030】
また、ステンレス鋼を用いた場合には、線材の強度が向上する。また、絶縁材を用いた場合には、渦電力が低減する。
【0031】
一方、臨界電流密度の高い超電導線材を得るためには、芯材として、金属被覆された酸化物超電導線材を用いることが好ましい。このように超電導線材を芯材として用いることにより、線材中の超電導体の占積率を増大させることができる。
【0032】
また、金属被覆された酸化物超電導線材として、パウダー・イン・チューブ法を用いて製造された酸化物超電導線材であって、リボン形状で線材の長手方向に延びる、複数の酸化物超電導フィラメントと、複数の酸化物超電導フィラメントを覆う安定化材からなるマトリックスとを備え、リボン形状の酸化物超電導フィラメントのアスペクト比が4〜40の範囲内にあり、酸化物超電導フィラメントの厚みが5μm〜50μmの範囲内にあり、線材の断面形状が円形であり、かつ、77Kの温度で磁場が印加されていない状態において2000A/cm2 以上の臨界電流密度を示すことを特徴とする線材を用いることが好ましい。
【0033】
このように構成される線材は、テープ線材に匹敵する高い臨界電流密度を有するため、本願発明において、これを芯材として用いることにより、高い臨界電流密度を有する酸化物超電導線材が得られる。
【0034】
また、この発明において、安定化材が銀、銀合金およびそれらの組合せからなる群から選択され、焼結加工の際の熱処理が700℃〜900℃の範囲の温度で行なわれ、かつ、ビスマス系2223相またはビスマス系2212相を主体とするビスマス系酸化物超電導体からなるフィラメントが生成されることが好ましい。
【0035】
一方、本発明に従う酸化物超電導線材を用いた超電導撚線が提供される。この超電導撚線は、本発明に従う酸化物超電導線材が複数本撚合わされていることを特徴としている。
【0036】
また、本発明の超電導撚線において、酸化物超電導線材が捩じられている構造を提供することができる。
【0037】
さらに、本発明の超電導撚線において、酸化物超電導線材の周りに、高抵抗金属層または絶縁層を形成することができる。
【0038】
また、上述した超電導撚線に、酸化物超電導体からなるフィラメントとそれを覆う安定化材とからなるテープ状酸化物超電導線材を巻付けて、さらに撚線を提供することができる。
【0039】
さらに、本発明に従って、上述した超電導撚線を用いた超電導導体が提供される。この超電導導体は、上述の超電導撚線を円筒形状の芯材に1層または2層以上螺旋状に巻付けてなることを特徴としている。
【0040】
また、この発明による酸化物超電導線材は、パウダー・イン・チューブ法を用いて製造された断面が円形の酸化物超電導線材であって、リボン形状で線材の長手方向に延びる複数の酸化物超電導フィラメントと、複数の酸化物超電導フィラメントを覆う、安定化材からなるマトリックスとを備え、線材の断面において、酸化物超電導フィラメントのうち最も外側に位置するフィラメントのさらに外側に位置するマトリックスの厚さが、線材の半径の5%以下であることを特徴としている。
【0041】
この発明による酸化物超電導線材は、フィラメントのうち最も外側に位置するフィラメントのさらに外側に位置するマトリックスの厚さが、線材の半径の5%以下と非常に薄い。そのため、線材中の超電導体の占積率が増大する。
【0042】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に従う酸化物超電導線材の製造方法の第1の例を示す図である。
【0043】
図1を参照して、まず、酸化物超電導体またはその原料の粉末を安定化材としての銀パイプに充填した後、伸線加工を施す。この伸線加工を施した素線を複数本、さらに銀パイプに嵌合した後、伸線加工を施す。続いて、1次圧延加工、1次焼結加工および2次圧延加工を施すことにより、多芯のテープ状酸化物超電導線材を作製する。
【0044】
このようにして得られたテープ状酸化物超電導線材を、後述するように、長尺の断面が円形の芯材に縦添えして変形加工を施すことにより、テープ状酸化物超電導線材の幅広面が芯材の外周を覆うように曲げ変形を加えて、テープ状酸化物超電導線材と芯材とを密着させて複合線を作製する。続けて、この複合線に焼結加工を施すことにより、酸化物超電導線材が得られる。
【0045】
次に、テープ状線材の変形加工について詳しく説明する。
図2および図3は、本発明に従う酸化物超電導線材の製造方法の一例において、ダイスを用いたテープ状線材の変形加工を説明するための図である。
【0046】
図2を参照して、まず、テープ状線材1と芯材2とを、各々の長手方向がほぼ平行になるようにして、ダイス5に同時に供給する。
【0047】
その結果、図3に示すように、テープ状線材1は、その幅広面が芯材2の外周を覆うように曲げ変形が加えられるとともに、その端部同士が突き合わされるように変形加工される。そして、テープ状線材1と芯材2とが密着される。
【0048】
本発明において、テープ状線材の変形加工は、このようにダイスを用いる他に、以下に示すように成形ロールを用いても行なうことができる。
【0049】
図4および図5は、本発明に従う酸化物超電導線材の製造方法の一例において、成形ロールを用いたテープ状線材の変形加工の第1の例を説明するための図である。
【0050】
図4および図5を参照して、この方法によるテープ状線材の変形加工は、図4(A)〜(G)に示す7段の成形ロール6にテープ状線材1を順次通過させることによって行なわれる。
【0051】
図5は、図4に示す7段の成形ロールを用いて変形加工が施される状態を示す横断面図である。なお、図5(A)〜(G)は、図4(A)〜(G)に各々対応する状態を示している。
【0052】
図4および図5を参照して、まず、図4(A)に示す第1段の成形ロールから図4(D)に示す第4段の成形ロール6までの通過によって、図5(A)〜(D)に示すように、テープ状線材1に対して、線材の幅方向に均一な曲げが加えられる。
【0053】
次に、図4(E)および図5(E)を参照して、テープ状線材1が180°まで曲げられた時点で、芯材2が複合される。続いて、図4(E)に示す第5段の成形ロール6から図4(G)に示す第7段の成形ロール6までの通過によって、図5(E)〜(G)に示すように、テープ状線材1に対して、さらに変形加工が加えられる。
【0054】
以上の工程により、テープ状線材1は、その幅広面が芯材2の外周を覆うように曲げ変形が加えられるとともに、その端部同士が突き合わされるように変形加工される。
【0055】
また、図6〜図8は、本発明に従う酸化物超電導線材の製造方法の一例において、成形ロールを用いたテープ状線材の変形加工の第2の例を説明するための図である。
【0056】
図6〜図8を参照して、この方法によるテープ状線材の変形加工は、図6(A)〜(D)に示す4段の成形ロール6と、図示しない4段の成形ロールとの合計8段の成形ロールに、テープ状線材を順次通過させることによって行なわれる。
【0057】
図8は、このような8段の成形ロールを用いて変形加工が施される状態を示す横断面図である。なお、図8(A)〜(D)は、図6(A)〜(D)に各々対応する状態を示している。
【0058】
図6〜図8を参照して、まず、図6(A)に示す第1段の成形ロール6から図6(D)に示す第4段の成形ロール6までの通過によって、図8(A)〜(D)に示すように、テープ状線材1に対して、線材の幅の中心部分から縁の方向へ順に曲げが加えられる。
【0059】
次に、図8(E)を参照して、テープ状線材1が180°まで曲げられた時点で、芯材が複合される。続いて、図7に示すように、上下および左右の4方向のロールから構成される、第5段から第8段の成形ロールまでの通過によって、図8(E)〜(H)に示すように、テープ状線材1に対してさらに変形加工が加えられる。
【0060】
以上の工程により、テープ状線材1は、その幅広面が芯材2の外周を覆うように曲げ変形が加えられるとともに、その端部同士が突き合わされるように変形加工される。
【0061】
図9は、本発明に従う酸化物超電導線材の製造方法により得られた線材の一例を示す断面図である。
【0062】
図9を参照して、この線材においては、テープ状線材1が、断面が円形の芯材2の外周を覆っている。テープ状線材1は、安定化材11中に複数の超電導フィラメント10が埋込まれて構成されている。
【0063】
図10および図11は、本発明に従う酸化物超電導線材の製造方法により得られた線材の他の例を示す断面図である。
【0064】
図10および図11を参照して、伸線の外周をテープ状線材1で覆う場合には、図9に示すように1枚のテープ状線材1を用いて全体を覆うこともできるが、図10または図11に示すように、2枚または4枚等複数のテープ状線材1を用いて芯材2の外周を覆うこともできる。このように、複数のテープ状線材を用いた場合には、変形加工の際に各テープ状線材に加えられる曲げ歪が小さくなるため、臨界電流密度の向上が期待できる。
【0065】
また、図12は、本発明に従う酸化物超電導線材の製造方法により得られた線材のさらに他の例を示す断面図である。
【0066】
図12を参照して、この酸化物超電導線材においては、芯材として、金属被覆された酸化物超電導線材が用いられている。この金属被覆された酸化物超電導線材は、安定化材31中に複数の超電導フィラメント30が埋込まれて構成されている。
【0067】
以下、この芯材として用いられた金属被覆酸化物超電導線材について、さらに詳しく説明する。
【0068】
この芯材として用いられた金属被覆酸化物超電導線材は、安定化材中に、複数の酸化物超電導体フィラメントが埋込まれた構造を有する多芯線である。この構造において、各フィラメントは、リボン形状であり、線材の長さ方向に延びている。フィラメントは、矩形またはそれに近い断面を有する。リボン形状のフィラメントのアスペクト比、すなわちフィラメントの厚みに対する幅の比は、4〜40の範囲、好ましくは4〜20の範囲、より好ましくは5〜20の範囲内にある。アスペクト比が4より小さい場合には、結晶粒のc軸が十分に配向せず、高い臨界電流密度を示す超電導相を得ることが困難である。一方、フィラメントのアスペクト比が40より大きい場合には、フィラメントの作製は容易ではなく、また、超電導相の長手方向の結合は著しく切れやすくなる。
【0069】
この芯材として用いられた金属被覆酸化物超電導線材において、フィラメントの厚みは5μm〜50μmの範囲、好ましくは10μm〜50μmの範囲内である。フィラメントが5μmより薄い場合には、超電導相の長さ方向における結合が著しく切れやすくなる。一方、フィラメントが50μmより厚い場合には、フィラメントが安定化材と接触する界面部分の割合が小さく、c軸が特定の方向に配向した超電導相を十分に得ることが困難となる。4〜40のアスペクト比および5μm〜50μmの厚みを有するフィラメントにおいて、超電導相を構成する結晶粒のc軸は、線材の長手方向とほぼ垂直に配向し、2000A/cm2 以上の臨界電流密度がもたらされる。
【0070】
このように高い臨界電流密度を有する金属被覆酸化物超電導線材を芯材として用いることにより、高い臨界電流密度を有する酸化物超電導線材が得られる。
【0071】
図13は、本発明に従う酸化物超電導線材の製造方法の第2の例を示す図である。
【0072】
図13を参照して、まず、酸化物超電導体またはその原料の粉末を安定化材としての銀パイプに充填した後、伸線加工を施す。この伸線加工を施した素線を複数本、さらに銀パイプに嵌合した後、伸線加工を施す。続いて、1次圧延加工を施すことにより、多芯のテープ状線材を作製する。
【0073】
このようにして得られたテープ状線材を、前述した第1の例と同様に、長尺の断面が円形の芯材に縦添えして変形加工を施すことにより、テープ状線材の幅広面が芯材の外周を覆うように曲げ変形を加えて、テープ状線材と芯材とを密着させて複合線を作製する。続けて、この複合線に1次焼結加工、2次加工および2次焼結加工を施すことにより、酸化物超電導線材が得られる。
【0074】
この例においては、焼結加工前のテープ状線材に対して、変形加工が施される。たとえば、ビスマス系酸化物超電導体の場合、焼結加工によって2212相から2223相への相変化が起こる。この例では、この相変化の際に、テープ状線材の変形加工により生じたクラックが治癒され、臨界電流密度が向上する。
【0075】
この例において、2次加工としては、たとえば、減面率50以下の減面加工を施すことができる。
【0076】
また、このような減面加工により線径が減少した酸化物超電導線材の外周に、さらにテープ状酸化物超電導線材を巻付けることができる。
【0077】
具体的には、テープ状酸化物超電導線材を、前述のように減面加工を施した芯材となる断面が円形の酸化物超電導線材に縦添えして変形加工を施すことにより、テープ状酸化物超電導線材の幅広面が芯材として超電導線材の外周を覆うように曲げ変形を加えて、テープ状線材と芯材とを密着させて複合線を作製する。続けて、この複合線に、2次焼結加工を施すことにより、酸化物超電導線材が得られる。
【0078】
図14は、このようにして得られた酸化物超電導線材の断面図である。
図14を参照して、この酸化物超電導線材においては、2層のテープ状線材1が、断面が円形の芯材2の外周を覆っている。
【0079】
また、図15は、本発明に従う酸化物超電導線材の一例を示す断面図である。
図15を参照して、この酸化物超電導線材においては、テープ状線材1が、断面が円形の芯材2の外周を覆っている。テープ状線材1は、安定化材11中に、複数の超電導フィラメント10が埋込まれて構成されている。
【0080】
ここで、この線材においては、超電導フィラメント10のうち、最も外側に位置するフィラメント10Aのさらに外側に位置する最外層のマトリックスの厚さdは、線材の半径Lの5%以下と非常に薄い。
【0081】
従来のように、テープ状線材を銀パイプ等に嵌合して丸線を作製する場合には、線材の最外層に厚い安定化材層が形成されることが回避できなかった。この発明によれば、線材の最外層に位置する安定化材層を薄くすることができるため、線材中の超電導体の占積率が増大する。
【0082】
また、本発明において用いられる安定化材は、銀、銀合金およびそれらの組合せからなる群から選択することができる。銀合金としては、Ag−Au合金、Ag−Mn合金、Ag−Al合金、Ag−Sb合金、Ag−Ti合金等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。安定化材としてこれらの銀合金を用いることにより、強度が高く、曲げ特性または引張り特性がより高い線材を得ることができる。
【0083】
また、本発明においては、ビスマス系、タリウム系、イットリウム系酸化物超電導体等の酸化物超電導体を用いた線材が提供される。特に、本発明において、超電導体からなるフィラメントは、(Bi,Pb)2 Sr2 Ca2 Cu3 10-X、Bi2 Sr2 Ca2 Cu3 10-X(0≦X≦1)等のビスマス系2223相超電導体、(Bi,Pb)2 Sr2 Ca1 Cu2 8-Z 、Bi2 Sr2 Ca1 Cu2 8-Z (0≦Z≦1)等のビスマス系2212相酸化物超電導体を含むビスマス系酸化物超電導体からなることが好ましい。このようなビスマス系酸化物超電導体の焼結体は、700℃〜900℃の範囲の温度で熱処理を施すことにより生成される。このようにして生成されたビスマス系酸化物超電導体により、臨界温度および臨界電流密度が高く、毒性が低く、かつ、線材化加工が容易な超電導線材が得られる。
【0084】
また、上述した酸化物超電導線材を複数本撚合わせることにより、撚線が得られる。撚合わせる線材(素線)においては、超電導フィラメントのアスペクト比は、10前後であることが望ましい。
【0085】
また、撚線をさらに平角に成形することにより、素線が完全に転位された状態となり、撚線中の各素線のインピーダンスを等しくすることができる。多芯線を単にツイストしただけでは、フィラメントの転位が不十分な場合がある。また、撚線の断面が矩形であることは、コイルやケーブルに使用する際に、撚線を密に巻くことができ、コンパクト化に有利である。
【0086】
このような撚線の製造工程は、本発明に従う製造方法により得られた十分高い臨界電流密度を有する断面が円形の酸化物超電導線材(素線)について、すべての熱処理工程の後に行なうことが可能である。また、撚線の工程の後に、熱処理を行なってもよい。
【0087】
このように、撚られたものを平角成形した場合には、多芯線をツイストした場合と比較して、転位がより完全である。また、ツイスト加工の場合には、フィラメントのブリッジングが発生し、転位の効果が大きく減少してしまうおそれがあるが、このような撚線構造ではその心配がない。
【0088】
本発明に従って作製した撚線を、さらに撚合わせて多芯撚線を作製することもできる。2次以上の撚線において、すべての素線が完全に転位した構造を提供することができ、より大容量の撚線が提供できる。
【0089】
また、撚線において、素線の安定化材の外側に、高抵抗金属被覆層または無機絶縁被覆層を設けることにより、撚合わされた素線間の電磁気的結合を低減または完全に防ぐことができ、転位の効果がより完全となり、素線間の結合損失も低減することができる。ここで、高抵抗金属とは、安定化材として用いられる銀よりも高い比抵抗を示す金属を指す。より具体的には、液体窒素温度(約77K)において、0.7×10-8Ω・m以上、室温において3×10-8Ω・m以上の抵抗率を示す金属を用いることが好ましい。高抵抗金属としては、ニッケル、クロム等を挙げることができる。
【0090】
このような撚線は、本発明による方法に従い製造された酸化物超電導線材(素線)を、複数本撚合わせた後、700℃以上900℃以下の温度で熱処理することにより得られる。
【0091】
具体的には、まず、最終的な焼結を行なっていない酸化物超電導体またはその原料の粉末が金属被覆されてなる素線を、複数本撚合わせて撚線を作製する。撚り本数としては、たとえば、12本、7本等が好ましい。得られた撚線は、たとえば、図16に示すような形状に平角成形された後、700℃以上の熱処理が施される。この熱処理により、撚線時の曲げなどによる粒界の劣化が回復し、また、反応が不十分な場合は反応を完全に進めることができるため、酸化物超電導体の結晶粒が強固に結合した、高い臨界電流密度を有する成形撚線を得ることができる。
【0092】
撚線を得る工程において、安定化材として銀または銀合金の外側に、高い抵抗率を有する金属の層または無機絶縁物の層を設けることができる。このような層の作製方法としては、たとえば、銀パイプの外側にさらに金属パイプを被せる、銀パイプに金属シートを巻付ける、または金属めっきするなどの方法が挙げられる。高抵抗の金属層または無機絶縁層がない場合には、熱処理中にマトリックスの銀が拡散して、素線同士が接合してしまうため、素線間の結合損失が大きくなる場合がある。このような結合損失の低減のために、高抵抗層は有効である。
【0093】
高抵抗層としては、たとえば、Ag−Au合金層、Ag−Mn合金層なども用いることができる。また、めっきにより、高抵抗であるNiやCr等を付加してもよい。無機絶縁層の作製方法としては、たとえば、Al2 3 等の金属酸化物からなる絶縁体の粉末を分散させた液を塗布する等の方法が可能である。さらに、酸化物絶縁層として、たとえば、MgやCuを酸化させたMgO層、CuO層等が挙げられる。このような絶縁体層によって、素線間の結合を減少させることができる。また、このことによって、転位の効果もより完全となる。撚線してから素線を覆うMg、Cu等を酸化させることにより、撚線時の加工性も良好なものとなる。
【0094】
撚線において、素線が多芯線であると、撚線時の曲げ歪に対して臨界電流密度の低下を防ぐことができる。多芯線をツイストしたものを素線として用いると、素線の転位に加えて、素線内のフィラメントの転位の効果が加わる。
【0095】
平角撚り成形を複数回行なうことによって、低損失かつ大容量の導体を得ることができる。このような導体は、コンパクトで、低損失かつ大容量の導体として有効である。
【0096】
また、本発明に従う撚線を、円筒形状の芯材に1層または2層以上螺旋状に巻付けることにより、超電導導体が得られる。芯材は、通常、可撓性を有するものである。芯材は、通常フォーマーと呼ばれるもので、テープ状超電導線材を所定の範囲の曲げ歪率で保持するために用いられる。フォーマーは、超電導ケーブル導体のために必要な長さを有し、超電導ケーブル導体の中心に設けられる。テープ状線材を巻付けるため、フォーマーは、略円筒形または螺旋形状とすることができる。フォーマーは、一般にその全長にわたってほぼ一定の直径を有する。フォーマーは、たとえば、ステンレス、銅、アルミニウム、およびFRP(繊維強化プラスチック)からなる群から選択される少なくとも1つの材料からなることができる。
【0097】
1層導体では、転位によりすべての素線の位置を電磁気的に等価にすることができる。この場合、導体内の電流分布が均一になり、偏流による交流損失の増大を防ぐことができる。また、線材を芯材上に螺旋状に巻く場合、線材を2層として、1層目と2層目の巻く方向を逆にすることが、導体の長手方向の磁場成分を相殺するために有効である。線材を2層以上有する導体の場合には、層間のインピーダンスの違いによって、層間の偏流とそれに伴う交流損失の増大を防ぎ、または最小限に抑えることができる。
【0098】
【実施例】
(実施例1)
まず、芯材に超電導線を使用した例を示す。
【0099】
▲1▼ テープ線材を準備する工程
Bi2 3 、PbO、SrCO3 、CaCO3 、CuOを、Bi:Pb:Ca:Cu=1.81:0.30:1.92:2.01:3.03の比になるように混合し、熱処理と粉砕を繰返して、前駆体粉末を作製した。次に、前記粉末を、外径36mm、厚さ1.5mmの銀パイプに充填し、溝を設けた銀製治具で蓋をし、2×10-5Torrで10時間真空引きした。直径13.2mmに伸線加工した後、対辺の長さが11mmの正六角形に伸線加工し、銀被覆酸化物超電導素線を作製した。
【0100】
このようにして得られた超電導素線61本を、外径138mm、内径115mm、長さ1,000mmの銀容器に充填した。次に、超電導素線が充填された銀容器を、2×10-5Torrで10時間真空引きした後、両端を電子ビーム溶接し、多芯ビレットを作製した。この多芯ビレットを、静水圧押出機を用いて、室温で外径53mmに押し出した。押出材を、大気中800℃で10時間の熱処理を施して、超電導素線の銀被覆と銀ビレットとを拡散接合させた。その後、1回の断面減少率20.7%で、直径0.511mmφまで線引き加工した。途中断線することなく、加工性は良好であった。その後、ロール直径150mmの2段圧延機を用いて、0.511mmφの61多芯超電導線を1回の圧延作業で0.102mm厚に圧延加工した。このテープ線材を、大気中845℃で50時間の一度目の焼結を実施した後に、前述の圧延機を用いて、厚さが0.090mmになるように二度目の圧延加工をし、幅が1.5mm、長さが50kmの超電導テープ線材を準備した。
【0101】
▲2▼ 芯材を準備する工程
前記のテープ線材の作製と同じ方法で、超電導粉末と61多芯ビレットとを作製し、外径53mmに押し出した。その後、0.429mmφにダイス引きし、845℃で50時間の一度目の焼結を実施した。さらに、0.387mmφにダイス引きし、長さ120kmの超電導丸線を準備した。
【0102】
▲3▼ テープ線材と芯材とを密着させる加工工程
上述のようにして得られたテープ線材50kmと丸線50kmとを、ダイス孔直径が0.567mmのダイスに同時に供給した。丸線とテープ線材とは、長手方向がほぼ平行になるようにダイス入口部分のガイドに挿入した。ダイスを通過した部分を引っ張ることにより、テープ線材を芯材上に縦添えすることができ、長さが50km、直径が0.567mmφの断面が円形の複合線材が得られた。外観観察の結果、テープ線材の端部が突き合わされた部分は、線材長手方向とほぼ平行であることが確認できた。
【0103】
▲4▼ 評価
▲3▼で得られた直径0.567mmφの複合線材と、▲1▼で得られた厚さが0.090mmのテープ線材と、▲2▼で得られた直径0.387mmφの多芯超電導丸線とを、大気中840℃で50時間焼結した。
【0104】
3種の酸化物超電導線材について、液体窒素中で直流4端子法により、臨界電流(Ic)を測定した。その後、試料の一部を切出して、超電導部分の断面積を測定した。
【0105】
その結果を、臨界電流密度Jc、銀を含めた試料全断面積当りのJc(オーバオールJc、以下「Je」と表記)とともに表1に示す。ここで、Jcは、超電導部分の断面積をXとするとIc/Xで計算される値であり、Jeは、銀と超電導部分の断面積の総和をYとしたときにIc/Yで計算される値である。
【0106】
【表1】
Figure 0003724128
【0107】
表1より、本発明により作製したテープ変形丸線は、芯材と比べて高い臨界電流密度Jcが得られることがわかる。
【0108】
(実施例2)
次に、芯材に銀線を使用した例を示す。
【0109】
芯材に銀線を使用した以外は、実施例1と同様な方法に従い、テープ変形丸線を作製した。
【0110】
外観観察の結果、テープ線材の端部が突き合わされた部分は、線材長手方向とほぼ平行であることが確認できた。このようにして得られた直径0.567mmφの銀線とテープ線材との複合材と、実施例1の▲1▼で得られた巻付ける前のテープ線材とを、大気中840℃で50時間焼結した。
【0111】
2種の酸化物超電導線材について、液体窒素中で直流4端子法により、臨界電流(Ic)を測定した。その後、試料の一部を切出して、超電導部分の断面積を測定した。
【0112】
その結果を、Jc、Jeとともに表2に示す。ここで、Jcは、超電導部分の断面積をXとするとIc/Xで計算される値であり、Jeは、銀と超電導部分の断面積の総和をYとしたときにIc/Yで計算される値である。
【0113】
【表2】
Figure 0003724128
【0114】
表2より、芯材に銀線を使用したテープ変形丸線の臨界電流密度Jcは、24,000A/cm2 と大幅に改善され、巻付ける前のテープ線材と比較しても遜色のない特性が得られることが確認できた。
【0115】
(実施例3)
次に、銀線上にテープ線材を2本多層に縦添えしたテープ変形丸線の例を示す。
【0116】
実施例1の▲1▼と同様の粉末、ビレットを作製し、押出加工後の線引きする直径のみを変化させることにより、二度目の圧延加工後の形状が、厚さ0.100m、幅1.66mm、長さ50kmであるテープ線材Aと、厚さ0.146mm、幅2.43mm、長さ50kmであるテープ線材Bとを作製した。芯材には、0.429mm直径の銀線を準備した。
【0117】
ダイス孔径が、0.920mmφと0.628mmφの2つのダイスを準備した。まず、孔径が0.628mmφのダイスを用いて、直径0.429mmの銀線と、テープ線材Aとをダイスに通して、直径0.628mmφのテープ変形丸線を作製した。テープ幅方向端部の突き合わせ部分は、変形丸線長手方向にほぼ平行に位置していることが確認できた。その後、前記テープ変形丸線とテープ線材Bとを、ダイス孔径が0.920mmφのダイスにて引抜きし、直径0.920mmφ、長さ50kmのテープ変形丸線を作製した。この丸線を、大気中40℃、50時間で二回目の焼結を行なった。
【0118】
得られた酸化物超電導線材について、液体窒素中で直流4端子法により、臨界電流(Ic)を測定した。その後、試料の一部を切出して、超電導部分の断面積を測定した。
【0119】
その結果を、Jc、Jeとともに表3に示す。また、比較のため、実施例1および実施例2の結果も合わせて示す。ここで、Jcは、超電導部分の断面積をXとするとIc/Xで計算される値であり、Jeは、銀と超電導部分の断面積の総和をYとしたときにIc/Yで計算される値である。
【0120】
【表3】
Figure 0003724128
【0121】
表3より明らかなように、芯材上にテープ線材を2層重ね巻きしても、実施例2のように1層重ねた場合と同じ程度の臨界電流密度Jcが得られ、より中心近くまで超電導体を配置することができるので、Jeのより大きな線材を得ることができた。
【0122】
(実施例4)
上述の実施例1〜3では、いずれも曲げ変形を行なうテープ線材として、一度目の圧延加工と一度目の焼結の後に二度目の圧延加工を施したテープ線材を使用した。次に、実施例4では、一度目の圧延加工を施したテープ線材を変形加工した例について示す。
【0123】
粉末の作製、ビレットの作製および押出加工までは、上述の実施例1〜3と同様の方法で行なった。その後、押出材を直径0.511mmφまで引抜き加工した。ロール直径150mmφの二段圧延機を用いて、厚さ0.102mm、幅1.45mmのテープ線材を作製した。
【0124】
芯材については、直径0.360mmφの銀線を作製し、前記テープ線材とともに孔径0.564mmφのダイスを用いて変形加工を行なった。断線などの異常はなく、良好に加工できた。次に、大気中845℃で50時間の一度目の焼結を行なった後、0.535mmφのダイスで引抜き加工を行なった。
【0125】
作製したテープ変形丸線を、大気中840℃で50時間焼結した。得られた酸化物超電導線材について、液体窒素中で直流4端子法により、臨界電流(Ic)を測定した。その後、試料の一部を切出して、超電導部分の断面積を測定した。
【0126】
その結果を、Jc、Jeとともに表4に示す。ここで、Jcは、超電導部分の断面積をXとするとIc/Xで計算される値であり、Jeは、銀と超電導部分の断面積の総和をYとしたときにIc/Yで計算される値である。
【0127】
【表4】
Figure 0003724128
【0128】
表4より、一度目の圧延を施したテープ線材を変形加工させた丸線の臨界電流密度Jcは、実施例1〜3に示した二度目の圧延を施したテープ線材を変形加工させた丸線の臨界電流密度Jcを上回る特性が得られた。
【0129】
(実施例5)
実施例4で作製した1回目の圧延材を変形加工したのと同様の方法で、変形加工、一度目の焼結、引抜き加工を施し、0.535mmφのテープ変形丸線を作製した。
【0130】
また、実施例1と同様の方法で、二度の圧延加工を施し、テープ幅2.07mm、テープ厚さ0.124mmのテープ線材を準備した。このテープ線材と前記0.535mmφのテープ変形丸線とを、ダイス孔径が0.783mmφのダイスを用いて変形加工し、直径0.783mmφのテープ変形丸線を作製した。
【0131】
作製したテープ変形丸線を、大気中845℃で50時間焼結した。得られた酸化物超電導線材について、液体窒素中で直流4端子法により、臨界電流(Ic)を測定した。その後、試料の一部を切出して、超電導部分の断面積を測定した。
【0132】
その結果を、Jc、Jeとともに表5に示す。ここで、Jcは、超電導部分の断面積をXとするとIc/Xで計算される値であり、Jeは、銀と超電導部分の断面積の総和をYとしたときにIc/Yで計算される値である。
【0133】
【表5】
Figure 0003724128
【0134】
表5より、一度目の圧延を施したテープ線材に変形加工と二度目の熱処理を施した後に、さらに別の圧延加工を施したテープ線材を変形加工し、二度目の焼結を施した線材では、臨界電流密度Jcが高いばかりでなく、Jeの大きな線材が得られることがわかった。
【0135】
(実施例6)
次に、撚線の例を示す。
【0136】
実施例5で作製した0.783mmφのテープ変形丸線を、大気中840℃で50時間焼結した。このテープ変形丸線を12本撚合わせ、断面が5.4mm×1.1mmとなるようにした。この撚線の臨界電流(Ic)は200Aであった。
【0137】
(比較例1)
まず、Br2 3 、PbO、SrCO3 、CaCO3 およびCuOを、Bi:Pb:Sr:Ca:Cu=1.81:0.30:1.92:2.01:3.03の組成比になるように配合し、複数回、熱処理および粉砕を行なって、前駆体粉末を得た。得られた粉末を、外径25mm、内径22mmの銀パイプに充填し、これを1.45mmφまで伸線した。
【0138】
得られた1.45mmφの線材を61本束ね、外径15mm、内径13mmの銀パイプ中に嵌合し、1.02mmφまで伸線加工した。次いで、得られた線材を0.25mmまで圧延し、得られた線材を12枚積層した後、845℃で50時間の熱処理を施した。その後、積層した厚さ方向について2.5mmまで圧延してから840℃で50時間の熱処理を施して、複合線材を得た。得られた複合線中の各線材は、それぞれの主要面同士を重ねて積層されていた。この複合線材の臨界電流(Ic)は320Aであった。
【0139】
(実施例7)
実施例5で作製した0.783mmφのテープ変形丸線を、大気中840℃で50時間焼結した。このテープ変形丸線の表面に、Cr−Ni合金のめっきを施した。めっきされた線材を12本撚合わせ、断面が5.4mm×1.1mmとなるようにした。得られた撚線の断面図を図17に示す。
【0140】
図17を参照して、撚線65において、線材66の表面には、Cr−Ni合金のめっき層67が形成されている。このめっきされた線材68は横に6本並べられ、さらに2層に重ねられている。このようにして、12本の線材68が撚合わされている。この撚線の臨界電流(Ic)は、200Aであった。
【0141】
(撚線およびめっき層の交流損失に対する効果)
実施例6および比較例1で作製した撚線および複合線材について、通電4端子法で交流損失を測定した。60Hz、100Apeak通電時で実施例6の線材に発生する交流損失は、0.6mW/mであったのに対し、比較例1の線材に発生する交流損失は、10mW/mであった。このことから、実施例6で作製した撚線においては、交流損失が減少することがわかった。また、実施例7で作製した撚線についても、同様に交流損失を測定した結果、60Hz、100Apeak通電時で、0.12mW/mであり、さらに交流損失が減少することがわかった。なお、以降、交流損失はすべて通電4端子法で測定している。
【0142】
(実施例8)
実施例5で作製した0.783mmφのテープ変形丸線を、大気中750℃で10時間の熱処理を施した。一部を切出して、樹脂に埋込んだ後に断面を光学顕微鏡により観察したところ、芯材の銀とテープ線材の銀との界面は観察されず、前記熱処理により、拡散接合していることがわかった。このテープ変形丸線に、ピッチ15mmのツイスト加工を施した。次いで、ツイストされた線材を6本撚合わせ、断面が2.3mm×1.5mmとなるように平角成形し、840℃で50時間の焼結を施した。得られた撚線の臨界電流(Ic)は、150Aであった。
【0143】
(比較例2)
比較例1のプロセスにおいて、61本の伸線を外径15mm、内径13mmの銀パイプ中に嵌合したものを、1.45mmφまで伸線加工した。次いで、0.3mmまで圧延し、6枚積層した後、845℃で50時間の焼結を施した。次いで1.5mmに圧延した後、840℃で50時間の焼結を施した。得られた複合線材の臨界電流(Ic)は、250Aであった。
【0144】
(ツイスト加工の交流損失に対する効果)
実施例8および比較例2で作製した撚線および複合線材について交流損失を測定した結果、60Hz、100Apeak通電時での実施例8の撚線の交流損失は0.7mW/m、比較例2の線材の交流損失は8mW/mであった。このことから、線材にツイスト加工を施すことにより、交流損失が著しく低減することがわかった。
【0145】
(実施例9)
実施例5の0.783mmφの線材を作製するプロセスにおいて、840℃で50時間の熱処理を行なう前に、その表面に厚さ10μmのMgめっき、Cuめっきをそれぞれ施した2種類の線材を作製した。その後、実施例8と同様の方法でこれらの線材をそれぞれ6本撚合わせ、平角成形し、840℃で50時間の焼結を施し、2種類の撚線を作製した。素線表面にめっきされたCu、Mgは、それぞれCuO、MgOとなり、素線間はほぼ完全な絶縁状態となっていた。これらの撚線の臨界電流(Ic)は、150Aであった。また、素線表面のMg、Cuめっきは薄いものであったため、素線表面にはCuO、MgOの酸化膜のみが形成され、撚線の超電導特性には、めっきされたMgやCuの影響がないことが確認された。
【0146】
(素線に形成された酸化膜の交流損失に対する効果)
実施例9で作製した2種類の撚線について交流損失を測定した結果、60Hz、100Apeak通電時で、素線にCuO膜を形成したものの交流損失は0.1mW/mであり、MgO膜を形成したものの交流損失は0.09mW/mであった。このことから、酸化膜で素線を覆うことにより、素線間の結合損失である交流損失が、著しく低減されていることが確認された。
【0147】
(実施例10)
実施例5で作製した0.783mmφのテープ変形丸線を、大気中840℃で50時間焼結した。熱処理された線材を4本撚合わせて1次撚線とし、1次撚線をさらに撚合わせて2次撚線とした。
【0148】
図18に、得られた2次撚線の断面図を示す。
図18を参照して、2次撚線70は、線材71を4本撚合わせた1次撚線72を、さらに13本撚合わせてなる。すなわち、この2次撚線70においては、52本の線材71が撚合わされている。
【0149】
得られた2次撚線を、さらに断面が11mm×3.1mmとなるよう平角成形した。得られた2次撚線の臨界電流(Ic)は、750Aであった。
【0150】
(比較例3)
比較例2において、0.3mmまで圧延した線材を12枚積層した後、845℃で50時間の焼結を施した。次いで、3mmに圧延した後、840℃で50時間の焼結を施した。この複合線材の臨界電流(Ic)は、620Aであった。
【0151】
(多次撚線の交流損失に対する効果)
実施例10および比較例3で作製した撚線および複合線材の交流損失を測定した結果、51Hz、200Apeak通電時でそれぞれ、実施例10の撚線では0.25mW/m、比較例3の複合線材では3mW/mであった。このことから、多次撚線では、交流損失が減少していることがわかる。
【0152】
(実施例11)
実施例5で作製した0.783mmφのテープ変形丸線を、大気中840℃で50時間焼結した。このテープ変形丸線を12本撚合わせ、これを芯としてその周りに前記焼結したテープ変形丸線を20本巻付けた。次いで、断面を平角成形し、撚線を作製した。
【0153】
図19に、得られた撚線の断面図を示す。
図19を参照して、撚線75においては、中心に線材76が12本撚合されており、その周りにテープ変形撚線77が20本巻付けられている。この撚線75は平角成形されており、断面は7mm×2.6mmであった。このようにして得られた撚線の臨界電流(Ic)は、540Aであった。
【0154】
(比較例4)
比較例1と同じ線材を18枚積層したものを準備し、これを3.8mmまで圧延してから、840℃で50時間の熱処理を施して、複合線材を得た。得られた複合線材の臨界電流(Ic)は、480Aであった。
【0155】
(平角成形撚線の交流損失に対する効果)
実施例11および比較例4で作製した撚線および複合線材の交流損失を測定した結果、50Hz、100Apeak通電時でそれぞれ、実施例11の撚線では0.3mW/m、比較例4の複合線材では2mW/mであった。このことから、本発明に従って得られた撚線は、交流損失が減少していることがわかる。
【0156】
(実施例12)
次に、導体の例を示す。
【0157】
実施例5で作製した0.783mmφのテープ変形丸線を、大気中840℃で50時間焼結した。このテープ変形丸線を12本撚合わせてなる撚線を、外径28mmの銅パイプ上に15本螺旋状に巻付け、超電導導体を作製した。
【0158】
図20に、得られた超電導導体の断面図を示す。
図20を参照して、導体80においては、線材81を12本撚合わせてなる撚線82が、銅パイプ83上に10本、螺旋状に巻付けられている。このようにして得られた導体の臨界電流(Ic)は、2600Aであった。
【0159】
(比較例5)
まず、Br2 3 、PbO、SrCO3 、CaCO3 およびCuOを、Bi:Pb:Sr:Ca:Cu=1.81:0.30:1.92:2.01:3.03の組成比になるように配合し、複数回、熱処理および粉砕を行なって、前駆体粉末を得た。得られた粉末を、外径25mm、内径22mmの銀パイプに充填し、これを1.45mmφまで伸線した。
【0160】
得られた伸線を、断面が0.46mm×5.2mmとなるよう圧延し、845℃で50時間の焼結を施した後、さらに断面が0.41mm×5.5mmとなるように圧延し、840℃で50時間の焼結を施して線材を得た。得られた線材を、31本、外径28mmの銅パイプ上に、2層に螺旋状に巻付け2層導体を作製した。
【0161】
図21に、得られた2層導体の断面図を示す。
図21を参照して、2層導体90において、線材88が、銅パイプ89上に、内側に15本、外側16本、2層に螺旋状に巻付けられている。得られた導体において、各線材の臨界電流(Ic)は、70Aであった。また、得られた導体の臨界電流(Ic)は、2100Aであった。
【0162】
(撚線1層導体の有効性)
実施例12および比較例5で作製した導体の交流損失を比較したところ、実施例12で作製した導体の方が比較例5で作製した導体よりも、交流損失が2桁小さな値となった。したがって、本願発明に従う撚線1層導体の有効性が確認された。
【0163】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、断面が円形であり、かつ、テープ状線材に匹敵する高い臨界電流密度を有する酸化物超電導線材が得られる。
【0164】
また、本発明によれば、そのような線材を用いて、交流損失が小さく、高い臨界電流密度を有する撚線、およびケーブル等のための導体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う酸化物超電導線材の製造方法の一例を示す図である。
【図2】本発明に従う酸化物超電導線材の製造方法の一例において、ダイスを用いたテープ状線材の変形加工を説明するための図である。
【図3】本発明に従う酸化物超電導線材の製造方法の一例において、ダイスを用いたテープ状線材の変形加工を説明するための図である。
【図4】本発明に従う酸化物超電導線材の製造方法の一例において、成形ロールを用いたテープ状線材の変形加工を説明するための図である。
【図5】本発明に従う酸化物超電導線材の製造方法の一例において、成形ロールを用いたテープ状線材の変形加工を説明するための図である。
【図6】本発明に従う酸化物超電導線材の製造方法の一例において、成形ロールを用いたテープ状線材の変形加工を説明するための図である。
【図7】本発明に従う酸化物超電導線材の製造方法の一例において、成形ロールを用いたテープ状線材の変形加工を説明するための図である。
【図8】本発明に従う酸化物超電導線材の製造方法の一例において、成形ロールを用いたテープ状線材の変形加工を説明するための図である。
【図9】本発明に従う酸化物超電導線材の製造方法により得られた線材の一例を示す断面図である。
【図10】本発明に従う酸化物超電導線材の製造方法により得られた線材の他の例を示す断面図である。
【図11】本発明に従う酸化物超電導線材の製造方法により得られた線材のさらに他の例を示す断面図である。
【図12】本発明に従う酸化物超電導線材の製造方法により得られた線材のさらに他の例を示す断面図である。
【図13】本発明に従う酸化物超電導線材の製造方法の他の例を示す図である。
【図14】本発明に従う酸化物超電導線材の製造方法により得られた線材のさらに他の例を示す断面図である。
【図15】本発明に従う酸化物超電導線材の一例を示す断面図である。
【図16】本発明に従う酸化物超電導撚線の一例を示す図である。
【図17】実施例において、Cr−Ni合金めっきが施された線材を撚合わせてなる撚線を示す断面図である。
【図18】実施例において、1次撚線を13本撚合わせた2次撚線を示す断面図である。
【図19】実施例において、1次撚線の周りに嵌合線を巻付けてなる撚線を示す断面図である。
【図20】実施例において、銅パイプ上に撚線を巻付けてなる導体を示す断面図である。
【図21】比較例において、銅パイプ上にテープ状線材を2層に巻付けてなる導体を示す断面図である。
【符号の説明】
1 テープ状線材
2 芯材
5 ダイス
6 成形ロール
10、30 フィラメント
11、31 安定化材
65、75、82 撚線
67 Cr−Ni合金めっき層
70 2次撚線
72 1次撚線
80 導体
83、89 銅パイプ
90 2層導体
なお、各図中、同一符号は同一または相当部分を示す。

Claims (18)

  1. 酸化物超電導体またはその原料の粉末を安定化材からなるチューブに充填するステップと、前記粉末が充填されたチューブに伸線加工、圧延加工および焼結加工を施して、長尺のテープ状酸化物超電導線材を作製するステップと、前記長尺のテープ状酸化物超電導線材を、長尺の断面が円形の芯材に縦添えして変形加工を施すことにより、前記テープ状酸化物超電導線材の幅広面が前記芯材の外周を覆うように曲げ変形を加えて、前記テープ状酸化物超電導線材と前記芯材とを密着させて、複合線を作製するステップと、前記複合線に焼結加工を施すステップとを備える、酸化物超電導線材の製造方法。
  2. 前記テープ状酸化物超電導線材を作製するステップは、前記粉末が充填されたチューブに、伸線加工、第1の圧延加工、焼結加工および第2の圧延加工を順次施すことを特徴とする、請求項1記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  3. 前記テープ状酸化物超電導線材を作製するステップは、前記粉末が充填されたチューブに伸線加工を施して素線を作製するステップと、前記作製された素線を複数本チューブに嵌合した後、伸線加工を施すことにより、多芯のテープ状酸化物超電導線材を作製するステップとを備える、請求項1または請求項2記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  4. 酸化物超電導体またはその原料の粉末を安定化材からなるチューブに充填するステップと、前記粉末が充填されたチューブに伸線加工および圧延加工を施して、長尺のテープ状線材を作製するステップと、前記長尺のテープ状線材を、長尺の断面が円形の芯材に縦添えして変形加工を施すことにより、前記テープ状線材の幅広面が前記芯材の外周を覆うように曲げ変形を加えて、テープ状線材と前記芯材とを密着させて、複合線を作製するステップと、前記複合線に焼結加工を施すステップとを備える、酸化物超電導線材の製造方法。
  5. 前記焼結加工を施した複合線に、さらに減面率50%以下の減面加工を施すステップと、前記減面加工を施した複合線に第2の焼結加工を施すステップとを備える、請求項4記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  6. 前記焼結加工を施した複合線に、さらに減面率50%以下の減面加工を施すステップと、前記減面加工を施した複合線に、さらに長尺のテープ状酸化物超電導線材を縦添えして変形加工を施すことにより、前記テープ状酸化物超電導線材の幅広面が前記複合線の外周を覆うように曲げ変形を加えて、前記テープ状酸化物超電導線材と前記複合線とを密着させて、第2の複合線を作製するステップと、前記第2の複合線に第2の焼結加工を施すステップとを備える、請求項4記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  7. 前記テープ状線材を作製するステップは、前記粉末が充填されたチューブに伸線加工を施して素線を作製するステップと、前記作製された素線を複数本チューブに嵌合した後、伸線加工を施すことにより、多芯のテープ状線材を作製するステップとを備える、請求項4〜請求項6のいずれかに記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  8. 前記複合線を作製するステップにおいて施される変形加工は、断面が円形の線引き用ダイスを用い、前記ダイスに前記芯材と前記テープ状線材または前記テープ状酸化物超電導線材とを同時に供給することにより行なわれる、請求項1〜請求項7のいずれかに記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  9. 前記複合線を作製するステップにおいて施される変形加工は、複数段の成形ロールを用いたロール成形加工により行なわれる、請求項1〜請求項7のいずれかに記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  10. 前記複合線を作製するステップにおいて施される変形加工は、熱間加工であることを特徴とする、請求項1〜請求項9のいずれかに記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  11. 前記芯材は、金属被覆された酸化物超電導線材であることを特徴とする、請求項1〜請求項10のいずれかに記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  12. 前記金属被覆された酸化物超電導線材は、パウダー・イン・チューブ法を用いて製造された酸化物超電導線材であって、リボン形状で前記線材の長手方向に延びる、複数の酸化物超電導フィラメントと、前記複数の酸化物超電導フィラメントを覆う安定化材からなるマトリックスとを備え、前記リボン形状の酸化物超電導フィラメントのアスペクト比が4〜40の範囲内にあり、前記酸化物超電導フィラメントの厚みが5μm〜50μmの範囲内にあり、前記線材の断面形状が円形であり、かつ、77Kの温度で磁場が印加されていない状態において2000A/cm上の臨界電流密度を示すことを特徴とする、請求項11記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  13. 前記芯材は、銀または銀合金からなることを特徴とする、請求項1〜請求項10のいずれかに記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  14. 前記酸化物超電導体が、ビスマス系2223相または2212相を主体とするビスマス系酸化物超電導体であり、前記安定化材が銀、銀合金およびそれらの組合せからなる群から選択されるいずれかであることを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  15. 請求項1〜請求項14のいずれかに記載の製造方法により製造された酸化物超電導線材が、複数本撚合わされていることを特徴とする、酸化物超電導撚線。
  16. 前記酸化物超電導線材が捩じられていることを特徴とする、請求項15記載の酸化物超電導撚線。
  17. 前記酸化物超電導線材の周りに高抵抗金属層または絶縁層が形成されていることを特徴とする、請求項15記載の酸化物超電導撚線。
  18. 請求項15に記載の酸化物超電導撚線が、円筒形状の芯材に1層または2層以上螺旋状に巻付けられてなる、超電導導体。
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