JPH1135322A - ジルコニア粉およびその製造方法 - Google Patents

ジルコニア粉およびその製造方法

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JPH1135322A
JPH1135322A JP20380497A JP20380497A JPH1135322A JP H1135322 A JPH1135322 A JP H1135322A JP 20380497 A JP20380497 A JP 20380497A JP 20380497 A JP20380497 A JP 20380497A JP H1135322 A JPH1135322 A JP H1135322A
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zirconia powder
zirconium
zirconia
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powder
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将 西佐古
Nobuyoshi Tsukaguchi
信芳 塚口
Mitsuteru Toishi
光輝 戸石
Yoshinori Kudo
佳則 工藤
Yoshinori Yamanaka
義則 山中
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来のような微小粒径のものではなく、光学
ガラス添加剤用ジルコニア粉として好適な一定の大きさ
の粒径を持ち、かつ有色不純物を最小限に抑えたジルコ
ニア粉およびその製造方法の提供。 【解決手段】 出発原料であるジルコニウム塩水溶液の
pHを0.1〜1に、水溶液中に共存させた硫酸イオン
とジルコニウムのモル比SO4 2-/Zrが0.45〜
0.6となるように調整することによって得られる塩基
性硫酸ジルコニウムと思われる沈殿粒子を十分に洗浄
後、アルカリで処理し、乾燥、焼成して得られる光学ガ
ラス用添加剤としてのジルコニア粉は平均粒径が大きく
10〜20μmであって、かつFe、Cr、Ni、Cu
およびCo等の有色不純物の含有量の合計が0.001
重量%以下に抑えられており、光学ガラスを調合する際
の粉末の飛散を防止しながらガラス溶解時の溶け残りが
生じることなく溶解性が改善されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光学ガラス添加剤
用ジルコニア粉およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ジルコニウムは耐熱性、耐食性に優れ、
酸素、窒素などとの親和力が大きく融点が高いなどの特
性を持っているためジルコン(ZrSiO2 )サンドの
形で直接鉄鋼、鋳物、耐火れんがに使用されてきたが、
材料革新により近年、原子力用、セラミックスなどの分
野でも使用されるようになった。
【0003】乾式法で製造されるジルコニア(ZrO
2 )は耐火物として鉄鋼連続鋳造用ノズルやガラス工業
溶融炉に使われ、また研磨材として使用され、湿式法で
製造されたジルコニアからは種々のジルコニウム化合物
が作られており、電子、光材料の分野では圧電素子、超
電導材料に、セラミックス部門では種々のセラミックセ
ンサーから部分安定化ジルコニアを用いたエンジン部品
などに、その他高温用陶磁器顔料に、一方、光学ガラス
添加剤に用いられるようになった。
【0004】ジルコニアの製法としては加水分解法、中
和法、アルコキシド法、塩基性硫酸塩を経由した中和法
などが報告されているが、これらはいずれも分散性に優
れた微小粒径の粉末の製造に適した方法である。
【0005】塩基性硫酸ジルコニウムを経由した中和法
によるジルコニアの作製方法を開示した文献としては、
Nielsen、Govroによる米国内務省鉱山局研
究報告5214“ZIRCONIUM PURIFIC
ATION、 USINGA BASIC SULFA
TE PRECIPITATION”、特公平2−89
67号公報などがあげられる。
【0006】米国内務省鉱山局研究報告5214には、
ジルコニウムの濃度を加熱前に0.26Mとし、加熱後
に温水を添加し0.13Mとし塩基性硫酸ジルコニウム
の沈殿を生成させることが開示されている。また最適p
Hは1.5、硫酸イオン/ジルコニウムの最適比(モル
/モル)が0.5、沈殿生成の最適温度は90℃であ
る。生成した塩基性硫酸ジルコニウムはアンモニア水で
処理しジルコニウムの水酸化物を得、それを700℃で
焼成し、ジルコニアを得る。得られた不純物の濃度はF
e0.01〜0.05%、Ni0.0005〜0.00
2%、Cu0.001%である。
【0007】特公平2−8967号公報では、実施例に
は、ジルコニウムの濃度を0.1〜0.8M、pH1.
0〜1.6、硫酸イオン/ジルコニウムの比が0.45
〜0.55、塩基性硫酸ジルコニウムの沈殿生成は80
℃1時間で行うことが開示されている。生成した塩基性
硫酸ジルコニウムはアンモニア水で処理しジルコニウム
の水酸化物を得、それを700℃で5〜10時間焼成
し、ジルコニアを得る。得られたジルコニアの平均粒径
は0.1〜1.7μm、嵩密度0.39〜1.43g/
cm3 である。
【0008】米国内務省鉱山局研究報告5214では、
生成したジルコニアの平均粒径については特に記載がな
いが、特公平2−8967号公報と同様の製造方法であ
り、微粉末のジルコニアが生成するものと考えられる。
【0009】塩基性硫酸ジルコニウムの製造方法を開示
した文献としては特開平4−92819号公報などがあ
げられる。特開平4−92819号公報には、ジルコニ
ウムの濃度を加熱前に0.5M以上とし、加熱後に温水
を添加し0.4M以下とし塩基性硫酸ジルコニウムの沈
殿を生成させることが開示されている。また最適pHは
示されていないが遊離の塩酸濃度はジルコニウム1モル
当り0.2〜2.2モルであり、硫酸イオン/ジルコニ
ウムの最適の比(モル/モル)は0.4〜0.6であ
る。沈殿生成の温度は6時間以内で沈殿が生成しないう
ちに70℃に昇温し、70〜80℃で沈殿開始後5〜1
0分で温水を供給し始め、70〜85℃で5〜10分か
けて水を供給し終わり、沈殿生成に必要な時間は20分
程度と短時間である。生成した塩基性硫酸ジルコニウム
の不純物はFeがFe23 として0.005重量%で
ある。
【0010】特開平4−92819号公報では、得られ
た塩基性硫酸ジルコニウムの平均粒径について特に開示
はないが、米国内務省鉱山局研究報告5214や特公平
2−8967号公報と同様の製造方法であるから、微粉
末の塩基性硫酸ジルコニウムが生成するものと考えられ
る。
【0011】塩基性硫酸ジルコニウムを経由してジルコ
ニア、安定化ジルコニアを製造する方法としては、特公
平2−8968号公報、特公平2−38527号公報に
開示された方法があげられる。特公平2−8968号公
報に開示された方法は、ジルコニウム含有液をpH9.
5〜13と高いpHの反応液中に添加するもので、得ら
れるジルコニア、安定化ジルコニアの平均粒径は0.3
7〜1.70μmと微粉末である。特公平2−3852
7号公報に開示された方法は平均粒径0.32〜1.8
0μmと微粉末の安定化ジルコニアを製造する方法であ
る。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】上述の如く、先行技術
においても粒径を制御する技術が述べられてはいるが粒
径の範囲が0.1〜2μmのように微小粒径についての
制御であり、10〜20μmのような大きな粒径の制御
には言及されていない。
【0013】また、ジルコニアの純度は原料に用いられ
る硝酸塩もしくは塩化物の純度により大きく影響される
ため、高純度のジルコニアを製造するためには使用する
原料も純度の良いものを用いなければならないのである
が、純度は原料に依存するため従来のジルコニア中の不
純物は0.005重量%程度であった。したがって光学
ガラス用のジルコニア粉として用いるには次のような欠
点があった。 (1)光学ガラスに用いられるジルコニアは、ガラス製
品の組成に応じて、最初の原料に添加配合されるので、
粒径の小さなものでは原料添加の際、粉塵となって飛散
するものがあり、取扱い上および製品組成管理上不都合
が生じる。 (2)光学ガラスは不純物を最小限に抑えなければなら
ず、特に着色元素のFe、Co、Cu、Cr、Ni等の
有色不純物は特性に悪影響を及ぼすので従来のジルコニ
ア中の不純物量の標準値であった0.005重量%を可
能な限り減少させる必要がある。 (3)微粉末は空気中で吸湿等により凝集して流動性が
劣化し、一方、粒径が大き過ぎるとガラス溶解時に溶け
残りやすく問題となるので、光学ガラス用に適した粒径
範囲を持つ粉末とすることが必要である。
【0014】よって、本発明の目的は、従来のような微
小粒径のものではなく、光学ガラス添加剤用ジルコニア
として好適な一定の大きさの粒径を持ち、かつ有色不純
物を最小限に抑えたジルコニア粉およびその製造方法を
提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記目的を
達成すべく鋭意研究の結果、ジルコニウム塩の水溶液中
に硫酸イオンを共存させたのち加熱することで粒子径の
大きい塩基性硫酸ジルコニウムを生成させ、その粒子を
十分洗浄すれば、着色元素のFe、Co、Cu、Cr、
Ni等の有色不純物の含有量の合計を0.001重量%
以下に抑え、平均粒径が比較的大きく10〜20μmで
あって、光学ガラスの調合の際、粉末の飛散を防止しな
がらガラス溶解時に溶け残りが発生することのないジル
コニア粉が得られることを見い出し本発明に到達した。
【0016】すなわち本発明は第1に、嵩密度が1.5
〜2.5g/cm3 であることを特徴とするジルコニア
粉;第2に、平均粒径が10〜20μmであることを特
徴とする前記第1に記載のジルコニア粉;第3に、安息
角が50〜60度であることを特徴とする前記第1また
は2のいずれかに記載のジルコニア粉;第4に、有色不
純物含有量の合計が0.001重量%以下であることを
特徴とする前記第1〜3のいずれかに記載のジルコニア
粉;第5に、前記有色不純物が、Fe、Cr、Ni、C
uおよびCoの少なくとも1種であることを特徴とする
前記第4に記載のジルコニア粉;第6に、硫酸イオンを
含むジルコニウム塩水溶液から第1沈殿物を沈殿させ、
得られた沈殿をアルカリ性物質と反応させて第2沈殿物
とし、この第2沈殿物を分離、乾燥、焼成してジルコニ
ア粉を製造する方法において、ジルコニウム塩水溶液中
の硫酸イオンとジルコニウムのモル比SO4 2-/Zrが
0.45〜0.6、ジルコニウム塩水溶液のpHが0.
1〜1となるようにジルコニウム塩水溶液を調整した
後、前記ジルコニウム塩水溶液を60〜80℃に加温
し、少なくとも2時間保持し、第1沈殿物を沈殿させる
ことを特徴とするジルコニア粉の製造方法;第7に、前
記ジルコニウム塩水溶液のジルコニウム濃度をZrO2
換算濃度で30〜150g/lとなるように調整した液
を用いることを特徴とする前記第6に記載のジルコニア
粉の製造方法;第8に、前記第2沈殿物を1000〜1
300℃の温度で焼成することを特徴とする前記第6ま
たは7のいずれかに記載のジルコニア粉の製造方法を提
供するものである。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明の製造方法における出発原
料はジルコニウム塩で、水溶液として用いる。具体的に
はオキシ塩化ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、
硫酸ジルコニウム等で好ましくはオキシ塩化ジルコニウ
ム、オキシ硝酸ジルコニウムである。
【0018】ジルコニウム塩はそれに含まれる有色不純
物の少ないものが良く、ZrO2 換算値でその含有量の
合計が0.01重量%以下のものが好ましい。通常の原
料は有色不純物を多く含んでいるので精製せずに粒子を
生成した場合、不純物がジルコニア粉の中にとりこまれ
てしまう。有色不純物の含有量の合計が0.01重量%
を越えるものでも使えなくはないが、次の酸洗工程での
除去だけでは十分でない場合は、全体としての効率は下
がるが最初の水溶液等の段階で別の精製方法を組み合わ
せて用いるとよい。また、有色不純物の含有量の合計が
0.003重量%未満のものは、あったとしても価格が
高く工業的には入手困難である。本発明に従って、アン
モニアによる中和により水酸化ジルコニウム経由でジル
コニア粉を作製する場合は通常は含有量の合計が0.0
03〜0.01重量%程度までしか除去できない有色不
純物を効率よく0.001重量%以下にすることが可能
である。
【0019】本発明の方法では沈殿生成後、酸性液中で
粒子を洗浄することによりイオンとなっている有色不純
物を取り除くようにした。この時、不純物以外のジルコ
ニウム含有物を酸に不溶性の粒子として沈殿させる必要
があり、また反応生成物の粒子径を大きくしなければ粒
子内に持ち込まれる不純物が多くなり精製効率が落ちる
ことになる。一方ガラス添加剤としても粒子径が大きい
方が望ましい。
【0020】以上のことから酸に不溶の塩基性硫酸ジル
コニウムと思われる第1沈殿物を一旦生成させるが、こ
の場合ジルコニアとしての粒径は第1沈殿物の粒子径に
比例するので、反応溶液中の酸濃度、およびジルコニウ
ムに対する硫酸イオン濃度(SO4 2-/Zr)を調整
し、ジルコニア粉の平均粒径が10μm以上となるよう
にする。
【0021】酸濃度の調整は無機酸、あるいはアルカリ
をそれぞれ単独もしくはその塩の形態で添加して行う。
具体的には無機酸として塩酸、硝酸、硫酸などが使用で
き、一方アルカリとしては水酸化ナトリウム等の水酸化
アルカリ、アンモニア水や、これらの塩としての例えば
塩化アンモニウムなどが使用できる。さらに、硝酸ナト
リウム、硫酸ナトリウム等を含む広範囲のものを用いる
ことができる。フリーの酸濃度は0.5〜3.0Nとな
るようにし、pHは0.1〜1となるようにする。pH
が0.1未満では塩基性硫酸ジルコニウムの溶解度が高
くなり収率が低下するため好ましくない。一方pHが1
を越えると微粉が生成しやすくなり、微粉が増えるため
好ましくない。
【0022】酸濃度の調整を行うと同時に硫酸イオン/
ジルコニウムのモル比が0.45〜0.6となるジルコ
ニウム塩水溶液とする。このモル比が0.45未満で
は、反応生成物がゲル状になり好ましくない。一方この
モル比が0.6を越えると、収率が80%未満となりコ
スト的に好ましくない。
【0023】ジルコニウム塩の濃度は通常ZrO2 換算
濃度で30〜150g/l、より望ましくは50〜10
0g/lとなるように調整する。150g/lを越える
と反応後の粘性が大きく取り扱いが困難であり、30g
/l未満では生産性が低下しコスト的に不利である。
【0024】液調整後、加温し50〜90℃、より好ま
しくは70〜80℃で2〜3時間攪拌し粒子の成長を促
すか、もしくは撹拌しながら60〜70℃で1時間保持
後さらに80℃で1時間撹拌保持し粒子の成長を促す。
つまり60〜80℃で少なくとも2時間保持するのが好
ましい。液温が50℃未満では反応が遅くなり生産性の
点で不利であり、一方、90℃を越えると材料の変形等
の装置上またガスの発生のため設備環境上好ましくな
い。また保持時間が2時間未満では粒子が十分成長しき
らず微粉のままで好ましくなく、一方3時間を越えても
粒成長もほぼ変わらないため生産性を考慮すると最長3
時間程度が好ましい。
【0025】この粒子を酸性の水溶液で水洗後アルカリ
で処理し、ジルコニアの水酸化物を主体とすると思われ
る第2沈殿物とし、再水洗、乾燥、焼成してジルコニア
粉とする。水洗は濾過、デカンテーション等いずれでも
良く、洗浄水も純水であれば良く、好ましくはpH3程
度(0.01N程度)の酸性水を使用する。これは沈殿
に付着している有色不純物を含んだ水分を効果的に除去
するためである。ただしアルカリ処理後の再水洗には純
水を使用する。アルカリ処理に用いるアルカリ剤として
はナトリウム、カリウム等の水酸化物または炭酸塩の他
アンモニア水があげられる。これらの中で特にアンモニ
ア水が好ましく濃度は適当に稀釈して使用する。
【0026】乾燥については特に条件限定はないが、大
気乾燥では凝集することがあり、また粉砕を必要とする
場合があるので、真空乾燥機を使用するのが望ましい。
【0027】焼成は1000〜1300℃の温度で行え
ば十分であるが、時間は1回で焼成する量により適宜調
節する必要がある。1回で焼成する量が多いときは5時
間まで延長すれば1回で焼成量が少ないときと同じもの
が得られる。また焼成温度が1000℃より低ければ表
面積が大きいので水分を吸湿して凝集しやすく、一方、
1300℃より高ければ粒成長して粉末が固まってくる
ので望ましくない。
【0028】本発明の方法で得られるジルコニアの収率
は、80%以上である。以上の条件の中で、ジルコニウ
ム塩水溶液に対して SO4 2- /Zr(モル比) 0.45〜0.6 pH 0.1〜1 加温 60〜80℃、2〜3時間保持 の条件を同時に満足することで、本発明の 嵩密度 1.5〜2.5g/cm3 平均粒径 10〜20μm 安息角 50〜60度 有色不純物(Fe,Cr,Ni,Cu,Co)含有量の合計 ≦0.001重量% のジルコニア粉を得られる。ジルコニア塩の濃度は上記
の理由で30〜150g/l、より望ましくは50〜1
00g/lであるが、特にこの範囲に限るものではな
い。
【0029】本発明に係るジルコニア粉の不純物や粉体
特性は次の通りである。
【0030】得られるジルコニア粉の嵩密度は1.5g
/cm3 以上であり十分好ましい値である。嵩密度が
1.5g/cm3 未満ではジルコニア粉が飛散しやすく
また凝集して溶け残りが生じ気泡となるためガラス用の
添加剤としては好ましくない。また嵩密度が2.5g/
cm3 を越えるものは、本発明の方法では作製が困難で
ある。
【0031】得られるジルコニア粉の平均粒径は10μ
m以上であり十分好ましい粒径である。平均粒径が10
μm未満では飛散しやすくまた凝集して溶け残りが生じ
気泡となるためガラス用の添加剤として好ましくないば
かりでなく上述のごとく有色不純物の精製効率が落ちる
ため好ましくない。また平均粒径が20μmを越えるも
のは、本発明の方法では作製が困難である。
【0032】得られるジルコニア粉の安息角は60度以
下であり十分好ましい値である。安息角が60度を越え
ると流動性が悪く、計量性が悪くなるため好ましくな
い。また安息角が50度未満のものは、本発明の方法で
は作製が困難である。
【0033】得られるジルコニア粉中のFe、Cr、N
i、Cu、Co等の有色不純物の合計含有量は0.00
1重量%以下であり十分好ましい値である。0.001
重量%を越えるとガラスの特性に悪影響を与えるため好
ましくない。
【0034】このようにして作製したジルコニア粉を熔
融しガラスを作製しジルコニアの溶け残りの有無を調べ
たところ、粒径が大きいと流動性がよく粒子が凝集しに
くくなった結果、ガラスにしたときの溶け残りがなくな
りガラス切断面の観察で気泡は認められず、ZrO2
固まりもなく非常に均一性の高いガラスが得られると同
時に、有色不純物による着色の影響のない、光学的に透
明なガラスが得られた。
【0035】
【実施例1】ビーカーを用い純水とZrO2 換算で16
0gのオキシ塩化ジルコニウムとでオキシ塩化ジルコニ
ウムの水溶液を調製した後、純水、98%濃硫酸78
g、35%濃塩酸0.086l、水酸化ナトリウム60
gを加え、最終的に液量を2lになるように純水で調整
し、pH0.2、遊離HCl/Zrモル比0.8とし
た。不純物含有量については、Fe、Cr、Ni、C
u、CoについてICPで測定し、この5元素の合計を
有色不純物含有量とした。使用したオキシ塩化ジルコニ
ウム中の有色不純物の含有量はZrO2 中濃度として
0.0035重量%であった。
【0036】この溶液を加温し70℃で3時間保持し、
粒子を沈殿、粒成長させた。この生成した粒子を濾過
後、0.01N HClで洗浄、濾過し、純水で懸濁化
させたところへ2N水酸化ナトリウム水溶液を0.6l
加えジルコニウムの水酸化物を主体とする沈殿生成物を
得た。
【0037】その後、この沈殿を脱水、純水で洗浄、さ
らに真空乾燥した後1000℃で2時間焼成しジルコニ
ア粉を得た。収率は約80%となった。得られたジルコ
ニア粉の不純物濃度、物理特性を測定した。平均粒径
は、レーザー回折・散乱法で測定し、50%累積粒径
(D50)を平均粒径とした。測定には島津製作所製SA
LD−1000を使用し、試料を0.2%ヘキサメタリ
ン酸ソーダ水溶液中に超音波分散(30秒間)させて測
定した。測定の結果、ジルコニア粉の平均粒径(D50)
は20.0μmであった。不純物含有量については、F
e、Cr、Ni、Cu、Coについて、ICPで測定
し、この5元素の合計を有色不純物含有量とした。ジル
コニア粉の有色不純物含量は0.001重量%未満とな
った。嵩密度は、JIS規格K5101の嵩密度測定器
で測定したところ、測定結果は2.45g/cm3 であ
った。安息角は、直径36.6mmの円板に50mm離
れたところから粉末を20g落下させる注入法で測定し
たところ、測定結果は57度であった。
【0038】このようにして作製したジルコニア粉を溶
融しガラスを作製しジルコニアの溶け残りの有無を調べ
た。即ち白金皿にB2 3 40%、La2 3 35%、
ZrO2 10%、Y2 3 10%、ZnO 5%となる
ように秤量し、溶融炉に入れガラス化した。溶融後、白
金皿を取りだし溶融ガラスを型枠に流し込み冷却炉にて
徐冷した後、できあがったガラス板中のZrO2 の溶け
残りを調べた。ガラスには白濁は見られず、ガラスを切
断した切断面を観察したところ気泡もZrO2の固まり
等の溶け残りも確認されず非常に均一性の高いガラスが
得られた。以上の結果をまとめたものを表1に示す。
【0039】
【実施例2】35%濃塩酸の添加量を0.138lと
し、pHを0.1とした以外は実施例1と同様に行いジ
ルコニア粉を得た。得られたジルコニア粉について実施
例1と同様の測定を行ったところ、平均粒径は10.3
μm、有色不純物は0.001重量%未満、嵩密度は
1.70g/cm3 、安息角は59度であった。また、
実施例1と同様にガラスを作製し溶け残りを調べたとこ
ろガラスには白濁は見られず、ガラスを切断し切断面を
観察したところ気泡もZrO2 の固まり等の溶け残りも
確認されず非常に均一性の高いガラスが得られた。以上
の結果をまとめたものを表1に示す。
【0040】
【実施例3】2N水酸化ナトリウム水溶液を15%アン
モニア水にかえ添加量を0.8lとした以外は実施例2
と同様に行いジルコニア粉を得た。得られたジルコニア
粉について実施例1と同様の測定を行ったところ、平均
粒径は10.8μm、有色不純物は0.001重量%未
満、嵩密度は1.81g/cm3 、安息角は58度であ
った。また、実施例1と同様にガラスを作製し溶け残り
を調べたところガラスには白濁は見られず、ガラスを切
断し切断面を観察したところ気泡もZrO2 の固まり等
の溶け残りも確認されず非常に均一性の高いガラスが得
られた。以上の結果を同様に表1にまとめる。
【0041】
【実施例4】液調製後60℃で1時間撹拌保持し、その
後80℃で1時間撹拌保持し粒子を成長させた以外は実
施例1と同様に行いジルコニア粉を得た。得られたジル
コニア粉について実施例1と同様の測定を行ったとこ
ろ、平均粒径は12.2μm、有色不純物は0.001
重量%未満、嵩密度は1.87g/cm3 、安息角は5
5度であった。また、実施例1と同様にガラスを作製し
溶け残りを調べたところガラスには白濁は見られず、ガ
ラスを切断し切断面を観察したところ気泡もZrO2
固まり等の溶け残りも確認されず非常に均一性の高いガ
ラスが得られた。以上の結果を同様に表1にまとめる。
【0042】
【比較例】ビーカーを用い純水とZrO2 換算で100
gの実施例1で使用したものと同じオキシ塩化ジルコニ
ウムとでオキシ塩化ジルコニウムの水溶液を調製した
後、純水、硫酸ナトリウム95g、塩化アンモニウム4
1gを加え、最終的に液量を2lになるように純水で調
整し、pH1.5とした。この溶液を加温し70℃で3
時間保存し、粒子を沈殿、粒成長させた。この生成した
粒子を濾過後、0.01N HClで洗浄、濾過し、純
水で懸濁化させたところへ2N水酸化ナトリウム水溶液
を0.6l加え中和しジルコニウムの水酸化物を主体と
する沈殿生成物を得た。
【0043】その後、この沈殿を脱水、純水で洗浄、さ
らに真空乾燥した後、1000℃で2時間焼成してジル
コニア粉を得た。得られたジルコニア粉について実施例
1と同様の測定を行ったところ、平均粒径は4.5μ
m、有色不純物は0.001重量%、嵩密度は1.1g
/cm3 、安息角は61度であった。また、実施例1と
同様にガラスを作製し溶け残りを調べたところガラスに
は白濁が見られ、ガラスを切断し切断面を観察したとこ
ろ気泡やZrO2 の固まり等の溶け残りが確認された。
以上の結果を同様に表1にまとめる。
【0044】
【表1】
【0045】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の方法によ
れば、出発原料であるジルコニウム塩水溶液の酸濃度
と、水溶液中に共存させた硫酸イオンのジルコニウムに
対するモル比を調整することによって得られる塩基性硫
酸ジルコニウムと思われる沈殿粒子を十分に洗浄後、ア
ルカリで処理し、乾燥、焼成するので、光学ガラス用に
添加剤として、平均粒径が大きく、10〜20μmであ
って、かつ有色不純物が最低限(0.001重量%以
下)に抑えられていて、光学ガラスを調合する際の粉末
の飛散を防止しながらガラス溶解時の溶け残りが生じる
ことなく溶解性が改善されたジルコニア粉が得られる。
これらは不純物が少ないため、高屈折率を必要とするレ
ンズの原料として適しており、またガラス基板等のよう
に強度を必要とするガラスの添加剤として用いることも
できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 戸石 光輝 東京都千代田区丸の内1丁目8番2号 同 和鉱業株式会社内 (72)発明者 工藤 佳則 東京都千代田区丸の内1丁目8番2号 同 和ハイテック株式会社内 (72)発明者 山中 義則 東京都千代田区丸の内1丁目8番2号 同 和鉱業株式会社内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 嵩密度が1.5〜2.5g/cm3 であ
    ることを特徴とするジルコニア粉。
  2. 【請求項2】 平均粒径が10〜20μmであることを
    特徴とする請求項1記載のジルコニア粉。
  3. 【請求項3】 安息角が50〜60度であることを特徴
    とする請求項1または2のいずれかに記載のジルコニア
    粉。
  4. 【請求項4】 有色不純物含有量の合計が0.001重
    量%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれ
    かに記載のジルコニア粉。
  5. 【請求項5】 前記有色不純物が、Fe、Cr、Ni、
    CuおよびCoの少なくとも1種であることを特徴とす
    る請求項4記載のジルコニア粉。
  6. 【請求項6】 硫酸イオンを含むジルコニウム塩水溶液
    から第1沈殿物を沈殿させ、得られた沈殿をアルカリ性
    物質と反応させて第2沈殿物とし、この第2沈殿物を分
    離、乾燥、焼成してジルコニア粉を製造する方法におい
    て、ジルコニウム塩水溶液中の硫酸イオンとジルコニウ
    ムのモル比SO4 2-/Zrが0.45〜0.6、ジルコ
    ニウム塩水溶液のpHが0.1〜1となるようにジルコ
    ニウム塩水溶液を調整した後、前記ジルコニウム塩水溶
    液を60〜80℃に加温し、少なくとも2時間保持し、
    第1沈殿物を沈殿させることを特徴とするジルコニア粉
    の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記ジルコニウム塩水溶液のジルコニウ
    ム濃度をZrO2 換算濃度で30〜150g/lとなる
    ように調整した液を用いることを特徴とする請求項6記
    載のジルコニア粉の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記第2沈殿物を1000〜1300℃
    の温度で焼成することを特徴とする請求項6または7の
    いずれかに記載のジルコニア粉の製造方法。
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