JP3799485B2 - ジルコニア粉およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学ガラス添加剤用ジルコニア粉およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ジルコニウムは耐熱性、耐食性に優れ、酸素、窒素などとの親和力が大きく融点が高いなどの特性を持っているためジルコン(ZrSiO2 )サンドの形で直接鉄鋼、鋳物、耐火れんがに使用されてきたが、材料革新により近年、原子力用、セラミックスなどの分野でも使用されるようになった。
【0003】
乾式法で製造されるジルコニア(ZrO2 )は耐火物として鉄鋼連続鋳造用ノズルやガラス工業溶融炉に使われ、また研磨材として使用され、湿式法で製造されたジルコニアからは種々のジルコニウム化合物が作られており、電子、光材料の分野では圧電素子、超電導材料に、セラミックス部門では種々のセラミックセンサーから部分安定化ジルコニアを用いたエンジン部品などに、その他高温用陶磁器顔料に、一方、光学ガラス添加剤に用いられるようになった。
【0004】
ジルコニアの製法としては加水分解法、中和法、アルコキシド法、塩基性硫酸塩を経由した中和法などが報告されているが、これらはいずれも分散性に優れた微小粒径の粉末の製造に適した方法である。
【0005】
塩基性硫酸ジルコニウムを経由した中和法によるジルコニアの作製方法を開示した文献としては、Nielsen、Govroによる米国内務省鉱山局研究報告5214“ZIRCONIUM PURIFICATION、 USING A BASIC SULFATE PRECIPITATION”、特公平2−8967号公報などがあげられる。
【0006】
米国内務省鉱山局研究報告5214には、ジルコニウムの濃度を加熱前に0.26Mとし、加熱後に温水を添加し0.13Mとし塩基性硫酸ジルコニウムの沈殿を生成させることが開示されている。また最適pHは1.5、硫酸イオン/ジルコニウムの最適比(モル/モル)が0.5、沈殿生成の最適温度は90℃である。生成した塩基性硫酸ジルコニウムはアンモニア水で処理しジルコニウムの水酸化物を得、それを700℃で焼成し、ジルコニアを得る。得られた不純物の濃度はFe0.01〜0.05%、Ni0.0005〜0.002%、Cu0.001%である。
【0007】
特公平2−8967号公報では、実施例には、ジルコニウムの濃度を0.1〜0.8M、pH1.0〜1.6、硫酸イオン/ジルコニウムの比が0.45〜0.55、塩基性硫酸ジルコニウムの沈殿生成は80℃1時間で行うことが開示されている。生成した塩基性硫酸ジルコニウムはアンモニア水で処理しジルコニウムの水酸化物を得、それを700℃で5〜10時間焼成し、ジルコニアを得る。得られたジルコニアの平均粒径は0.1〜1.7μm、嵩密度0.39〜1.43g/cm3 である。
【0008】
米国内務省鉱山局研究報告5214では、生成したジルコニアの平均粒径については特に記載がないが、特公平2−8967号公報と同様の製造方法であり、微粉末のジルコニアが生成するものと考えられる。
【0009】
塩基性硫酸ジルコニウムの製造方法を開示した文献としては特開平4−92819号公報などがあげられる。特開平4−92819号公報には、ジルコニウムの濃度を加熱前に0.5M以上とし、加熱後に温水を添加し0.4M以下とし塩基性硫酸ジルコニウムの沈殿を生成させることが開示されている。また最適pHは示されていないが遊離の塩酸濃度はジルコニウム1モル当り0.2〜2.2モルであり、硫酸イオン/ジルコニウムの最適の比(モル/モル)は0.4〜0.6である。沈殿生成の温度は6時間以内で沈殿が生成しないうちに70℃に昇温し、70〜80℃で沈殿開始後5〜10分で温水を供給し始め、70〜85℃で5〜10分かけて水を供給し終わり、沈殿生成に必要な時間は20分程度と短時間である。生成した塩基性硫酸ジルコニウムの不純物はFeがFe2 O3 として0.005重量%である。
【0010】
特開平4−92819号公報では、得られた塩基性硫酸ジルコニウムの平均粒径について特に開示はないが、米国内務省鉱山局研究報告5214や特公平2−8967号公報と同様の製造方法であるから、微粉末の塩基性硫酸ジルコニウムが生成するものと考えられる。
【0011】
塩基性硫酸ジルコニウムを経由してジルコニア、安定化ジルコニアを製造する方法としては、特公平2−8968号公報、特公平2−38527号公報に開示された方法があげられる。
特公平2−8968号公報に開示された方法は、ジルコニウム含有液をpH9.5〜13と高いpHの反応液中に添加するもので、得られるジルコニア、安定化ジルコニアの平均粒径は0.37〜1.70μmと微粉末である。
特公平2−38527号公報に開示された方法は平均粒径0.32〜1.80μmと微粉末の安定化ジルコニアを製造する方法である。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上述の如く、先行技術においても粒径を制御する技術が述べられてはいるが粒径の範囲が0.1〜2μmのように微小粒径についての制御であり、10〜20μmのような大きな粒径の制御には言及されていない。
【0013】
また、ジルコニアの純度は原料に用いられる硝酸塩もしくは塩化物の純度により大きく影響されるため、高純度のジルコニアを製造するためには使用する原料も純度の良いものを用いなければならないのであるが、純度は原料に依存するため従来のジルコニア中の不純物は0.005重量%程度であった。したがって光学ガラス用のジルコニア粉として用いるには次のような欠点があった。
(1)光学ガラスに用いられるジルコニアは、ガラス製品の組成に応じて、最初の原料に添加配合されるので、粒径の小さなものでは原料添加の際、粉塵となって飛散するものがあり、取扱い上および製品組成管理上不都合が生じる。
(2)光学ガラスは不純物を最小限に抑えなければならず、特に着色元素のFe、Co、Cu、Cr、Ni等の有色不純物は特性に悪影響を及ぼすので従来のジルコニア中の不純物量の標準値であった0.005重量%を可能な限り減少させる必要がある。
(3)微粉末は空気中で吸湿等により凝集して流動性が劣化し、一方、粒径が大き過ぎるとガラス溶解時に溶け残りやすく問題となるので、光学ガラス用に適した粒径範囲を持つ粉末とすることが必要である。
【0014】
よって、本発明の目的は、従来のような微小粒径のものではなく、光学ガラス添加剤用ジルコニアとして好適な一定の大きさの粒径を持ち、かつ有色不純物を最小限に抑えたジルコニア粉およびその製造方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意研究の結果、ジルコニウム塩の水溶液中に硫酸イオンを共存させたのち加熱することで粒子径の大きい塩基性硫酸ジルコニウムを生成させ、その粒子を十分洗浄すれば、着色元素のFe、Co、Cu、Cr、Ni等の有色不純物の含有量の合計を0.001重量%以下に抑え、平均粒径が比較的大きく10〜20μmであって、光学ガラスの調合の際、粉末の飛散を防止しながらガラス溶解時に溶け残りが発生することのないジルコニア粉が得られることを見い出し本発明に到達した。
【0016】
すなわち本発明は第1に、有色不純物含有量の合計が0.001重量%以下であり、かつ、嵩密度が1.5〜2.5g/cm3で、安息角が50〜60度であることを特徴とするジルコニア粉;第2に、平均粒径が10〜20μmであることを特徴とする前記第1記載のジルコニア粉;第3に、前記有色不純物が、Fe、Cr、Ni、CuおよびCoの少なくとも1種であることを特徴とする前記第1または2のいずれかに記載のジルコニア粉;第4に、硫酸イオンを含むジルコニウム塩水溶液から第1沈殿物を沈殿させ、得られた沈殿をアルカリ性物質と反応させて第2沈殿物とし、この第2沈殿物を分離、乾燥、焼成してジルコニア粉を製造する方法において、ジルコニウム塩水溶液中の硫酸イオンとジルコニウムのモル比SO4 2-/Zrが0.45〜0.6、ジルコニウム塩水溶液のpHが0.1〜1となるようにジルコニウム塩水溶液を調整した後、前記ジルコニウム塩水溶液を60〜80℃に加温し、少なくとも2時間保持し、得られた沈殿を酸性液中で洗浄して第1沈殿物とすることを特徴とするジルコニア粉の製造方法;第5に、硫酸イオンを含むジルコニウム塩水溶液から第1沈殿物を沈殿させ、得られた沈殿をアルカリ性物質と反応させて第2沈殿物とし、この第2沈殿物を分離、乾燥、焼成してジルコニア粉を製造する方法において、ジルコニウム塩水溶液中の硫酸イオンとジルコニウムのモル比SO4 2-/Zrが0.45〜0.6、ジルコニウム塩水溶液のpHが0.1〜1となるようにジルコニウム塩水溶液を調整した後、前記ジルコニウム塩水溶液を60〜80℃に加温し、少なくとも2時間保持し、次いで濾過して得られた沈殿を酸性液中で洗浄して第1沈殿物とすることを特徴とするジルコニア粉の製造方法;第6に、前記ジルコニウム塩水溶液のジルコニウム濃度をZrO2換算濃度で30〜150g/lとなるように調整した液を用いることを特徴とする前記第4または5のいずれかに記載のジルコニア粉の製造方法;第7に、前記第2沈殿物を1000〜1300℃の温度で焼成することを特徴とする前記第4〜6のいずれかに記載のジルコニア粉の製造方法を提供するものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の製造方法における出発原料はジルコニウム塩で、水溶液として用いる。具体的にはオキシ塩化ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム等で好ましくはオキシ塩化ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウムである。
【0018】
ジルコニウム塩はそれに含まれる有色不純物の少ないものが良く、ZrO2 換算値でその含有量の合計が0.01重量%以下のものが好ましい。通常の原料は有色不純物を多く含んでいるので精製せずに粒子を生成した場合、不純物がジルコニア粉の中にとりこまれてしまう。有色不純物の含有量の合計が0.01重量%を越えるものでも使えなくはないが、次の酸洗工程での除去だけでは十分でない場合は、全体としての効率は下がるが最初の水溶液等の段階で別の精製方法を組み合わせて用いるとよい。また、有色不純物の含有量の合計が0.003重量%未満のものは、あったとしても価格が高く工業的には入手困難である。本発明に従って、アンモニアによる中和により水酸化ジルコニウム経由でジルコニア粉を作製する場合は通常は含有量の合計が0.003〜0.01重量%程度までしか除去できない有色不純物を効率よく0.001重量%以下にすることが可能である。
【0019】
本発明の方法では沈殿生成後、酸性液中で粒子を洗浄することによりイオンとなっている有色不純物を取り除くようにした。この時、不純物以外のジルコニウム含有物を酸に不溶性の粒子として沈殿させる必要があり、また反応生成物の粒子径を大きくしなければ粒子内に持ち込まれる不純物が多くなり精製効率が落ちることになる。一方ガラス添加剤としても粒子径が大きい方が望ましい。
【0020】
以上のことから酸に不溶の塩基性硫酸ジルコニウムと思われる第1沈殿物を一旦生成させるが、この場合ジルコニアとしての粒径は第1沈殿物の粒子径に比例するので、反応溶液中の酸濃度、およびジルコニウムに対する硫酸イオン濃度(SO4 2-/Zr)を調整し、ジルコニア粉の平均粒径が10μm以上となるようにする。
【0021】
酸濃度の調整は無機酸、あるいはアルカリをそれぞれ単独もしくはその塩の形態で添加して行う。具体的には無機酸として塩酸、硝酸、硫酸などが使用でき、一方アルカリとしては水酸化ナトリウム等の水酸化アルカリ、アンモニア水や、これらの塩としての例えば塩化アンモニウムなどが使用できる。さらに、硝酸ナトリウム、硫酸ナトリウム等を含む広範囲のものを用いることができる。フリーの酸濃度は0.5〜3.0Nとなるようにし、pHは0.1〜1となるようにする。pHが0.1未満では塩基性硫酸ジルコニウムの溶解度が高くなり収率が低下するため好ましくない。一方pHが1を越えると微粉が生成しやすくなり、微粉が増えるため好ましくない。
【0022】
酸濃度の調整を行うと同時に硫酸イオン/ジルコニウムのモル比が0.45〜0.6となるジルコニウム塩水溶液とする。このモル比が0.45未満では、反応生成物がゲル状になり好ましくない。一方このモル比が0.6を越えると、収率が80%未満となりコスト的に好ましくない。
【0023】
ジルコニウム塩の濃度は通常ZrO2 換算濃度で30〜150g/l、より望ましくは50〜100g/lとなるように調整する。150g/lを越えると反応後の粘性が大きく取り扱いが困難であり、30g/l未満では生産性が低下しコスト的に不利である。
【0024】
液調整後、加温し50〜90℃、より好ましくは70〜80℃で2〜3時間攪拌し粒子の成長を促すか、もしくは撹拌しながら60〜70℃で1時間保持後さらに80℃で1時間撹拌保持し粒子の成長を促す。つまり60〜80℃で少なくとも2時間保持するのが好ましい。液温が50℃未満では反応が遅くなり生産性の点で不利であり、一方、90℃を越えると材料の変形等の装置上またガスの発生のため設備環境上好ましくない。また保持時間が2時間未満では粒子が十分成長しきらず微粉のままで好ましくなく、一方3時間を越えても粒成長もほぼ変わらないため生産性を考慮すると最長3時間程度が好ましい。
【0025】
この粒子を酸性の水溶液で水洗後アルカリで処理し、ジルコニアの水酸化物を主体とすると思われる第2沈殿物とし、再水洗、乾燥、焼成してジルコニア粉とする。水洗は濾過、デカンテーション等いずれでも良く、洗浄水も純水であれば良く、好ましくはpH3程度(0.01N程度)の酸性水を使用する。これは沈殿に付着している有色不純物を含んだ水分を効果的に除去するためである。ただしアルカリ処理後の再水洗には純水を使用する。アルカリ処理に用いるアルカリ剤としてはナトリウム、カリウム等の水酸化物または炭酸塩の他アンモニア水があげられる。これらの中で特にアンモニア水が好ましく濃度は適当に稀釈して使用する。
【0026】
乾燥については特に条件限定はないが、大気乾燥では凝集することがあり、また粉砕を必要とする場合があるので、真空乾燥機を使用するのが望ましい。
【0027】
焼成は1000〜1300℃の温度で行えば十分であるが、時間は1回で焼成する量により適宜調節する必要がある。1回で焼成する量が多いときは5時間まで延長すれば1回で焼成量が少ないときと同じものが得られる。また焼成温度が1000℃より低ければ表面積が大きいので水分を吸湿して凝集しやすく、一方、1300℃より高ければ粒成長して粉末が固まってくるので望ましくない。
【0028】
本発明の方法で得られるジルコニアの収率は、80%以上である。
以上の条件の中で、ジルコニウム塩水溶液に対して
SO4 2- /Zr(モル比) 0.45〜0.6
pH 0.1〜1
加温 60〜80℃、2〜3時間保持
の条件を同時に満足することで、本発明の
嵩密度 1.5〜2.5g/cm3
平均粒径 10〜20μm
安息角 50〜60度
有色不純物(Fe,Cr,Ni,Cu,Co)含有量の合計
≦0.001重量%
のジルコニア粉を得られる。ジルコニア塩の濃度は上記の理由で30〜150g/l、より望ましくは50〜100g/lであるが、特にこの範囲に限るものではない。
【0029】
本発明に係るジルコニア粉の不純物や粉体特性は次の通りである。
【0030】
得られるジルコニア粉の嵩密度は1.5g/cm3 以上であり十分好ましい値である。嵩密度が1.5g/cm3 未満ではジルコニア粉が飛散しやすくまた凝集して溶け残りが生じ気泡となるためガラス用の添加剤としては好ましくない。また嵩密度が2.5g/cm3 を越えるものは、本発明の方法では作製が困難である。
【0031】
得られるジルコニア粉の平均粒径は10μm以上であり十分好ましい粒径である。平均粒径が10μm未満では飛散しやすくまた凝集して溶け残りが生じ気泡となるためガラス用の添加剤として好ましくないばかりでなく上述のごとく有色不純物の精製効率が落ちるため好ましくない。また平均粒径が20μmを越えるものは、本発明の方法では作製が困難である。
【0032】
得られるジルコニア粉の安息角は60度以下であり十分好ましい値である。安息角が60度を越えると流動性が悪く、計量性が悪くなるため好ましくない。また安息角が50度未満のものは、本発明の方法では作製が困難である。
【0033】
得られるジルコニア粉中のFe、Cr、Ni、Cu、Co等の有色不純物の合計含有量は0.001重量%以下であり十分好ましい値である。0.001重量%を越えるとガラスの特性に悪影響を与えるため好ましくない。
【0034】
このようにして作製したジルコニア粉を熔融しガラスを作製しジルコニアの溶け残りの有無を調べたところ、粒径が大きいと流動性がよく粒子が凝集しにくくなった結果、ガラスにしたときの溶け残りがなくなりガラス切断面の観察で気泡は認められず、ZrO2 の固まりもなく非常に均一性の高いガラスが得られると同時に、有色不純物による着色の影響のない、光学的に透明なガラスが得られた。
【0035】
【実施例1】
ビーカーを用い純水とZrO2 換算で160gのオキシ塩化ジルコニウムとでオキシ塩化ジルコニウムの水溶液を調製した後、純水、98%濃硫酸78g、35%濃塩酸0.086l、水酸化ナトリウム60gを加え、最終的に液量を2lになるように純水で調整し、pH0.2、遊離HCl/Zrモル比0.8とした。不純物含有量については、Fe、Cr、Ni、Cu、CoについてICPで測定し、この5元素の合計を有色不純物含有量とした。使用したオキシ塩化ジルコニウム中の有色不純物の含有量はZrO2 中濃度として0.0035重量%であった。
【0036】
この溶液を加温し70℃で3時間保持し、粒子を沈殿、粒成長させた。この生成した粒子を濾過後、0.01N HClで洗浄、濾過し、純水で懸濁化させたところへ2N水酸化ナトリウム水溶液を0.6l加えジルコニウムの水酸化物を主体とする沈殿生成物を得た。
【0037】
その後、この沈殿を脱水、純水で洗浄、さらに真空乾燥した後1000℃で2時間焼成しジルコニア粉を得た。収率は約80%となった。
得られたジルコニア粉の不純物濃度、物理特性を測定した。
平均粒径は、レーザー回折・散乱法で測定し、50%累積粒径(D50)を平均粒径とした。測定には島津製作所製SALD−1000を使用し、試料を0.2%ヘキサメタリン酸ソーダ水溶液中に超音波分散(30秒間)させて測定した。測定の結果、ジルコニア粉の平均粒径(D50)は20.0μmであった。
不純物含有量については、Fe、Cr、Ni、Cu、Coについて、ICPで測定し、この5元素の合計を有色不純物含有量とした。ジルコニア粉の有色不純物含量は0.001重量%未満となった。
嵩密度は、JIS規格K5101の嵩密度測定器で測定したところ、測定結果は2.45g/cm3 であった。
安息角は、直径36.6mmの円板に50mm離れたところから粉末を20g落下させる注入法で測定したところ、測定結果は57度であった。
【0038】
このようにして作製したジルコニア粉を溶融しガラスを作製しジルコニアの溶け残りの有無を調べた。即ち白金皿にB2 O3 40%、La2 O3 35%、ZrO2 10%、Y2 O3 10%、ZnO 5%となるように秤量し、溶融炉に入れガラス化した。溶融後、白金皿を取りだし溶融ガラスを型枠に流し込み冷却炉にて徐冷した後、できあがったガラス板中のZrO2 の溶け残りを調べた。ガラスには白濁は見られず、ガラスを切断した切断面を観察したところ気泡もZrO2 の固まり等の溶け残りも確認されず非常に均一性の高いガラスが得られた。
以上の結果をまとめたものを表1に示す。
【0039】
【実施例2】
35%濃塩酸の添加量を0.138lとし、pHを0.1とした以外は実施例1と同様に行いジルコニア粉を得た。
得られたジルコニア粉について実施例1と同様の測定を行ったところ、平均粒径は10.3μm、有色不純物は0.001重量%未満、嵩密度は1.70g/cm3 、安息角は59度であった。
また、実施例1と同様にガラスを作製し溶け残りを調べたところガラスには白濁は見られず、ガラスを切断し切断面を観察したところ気泡もZrO2 の固まり等の溶け残りも確認されず非常に均一性の高いガラスが得られた。
以上の結果をまとめたものを表1に示す。
【0040】
【実施例3】
2N水酸化ナトリウム水溶液を15%アンモニア水にかえ添加量を0.8lとした以外は実施例2と同様に行いジルコニア粉を得た。
得られたジルコニア粉について実施例1と同様の測定を行ったところ、平均粒径は10.8μm、有色不純物は0.001重量%未満、嵩密度は1.81g/cm3 、安息角は58度であった。
また、実施例1と同様にガラスを作製し溶け残りを調べたところガラスには白濁は見られず、ガラスを切断し切断面を観察したところ気泡もZrO2 の固まり等の溶け残りも確認されず非常に均一性の高いガラスが得られた。
以上の結果を同様に表1にまとめる。
【0041】
【実施例4】
液調製後60℃で1時間撹拌保持し、その後80℃で1時間撹拌保持し粒子を成長させた以外は実施例1と同様に行いジルコニア粉を得た。
得られたジルコニア粉について実施例1と同様の測定を行ったところ、平均粒径は12.2μm、有色不純物は0.001重量%未満、嵩密度は1.87g/cm3 、安息角は55度であった。
また、実施例1と同様にガラスを作製し溶け残りを調べたところガラスには白濁は見られず、ガラスを切断し切断面を観察したところ気泡もZrO2 の固まり等の溶け残りも確認されず非常に均一性の高いガラスが得られた。
以上の結果を同様に表1にまとめる。
【0042】
【比較例】
ビーカーを用い純水とZrO2 換算で100gの実施例1で使用したものと同じオキシ塩化ジルコニウムとでオキシ塩化ジルコニウムの水溶液を調製した後、純水、硫酸ナトリウム95g、塩化アンモニウム41gを加え、最終的に液量を2lになるように純水で調整し、pH1.5とした。
この溶液を加温し70℃で3時間保存し、粒子を沈殿、粒成長させた。この生成した粒子を濾過後、0.01N HClで洗浄、濾過し、純水で懸濁化させたところへ2N水酸化ナトリウム水溶液を0.6l加え中和しジルコニウムの水酸化物を主体とする沈殿生成物を得た。
【0043】
その後、この沈殿を脱水、純水で洗浄、さらに真空乾燥した後、1000℃で2時間焼成してジルコニア粉を得た。
得られたジルコニア粉について実施例1と同様の測定を行ったところ、平均粒径は4.5μm、有色不純物は0.001重量%、嵩密度は1.1g/cm3 、安息角は61度であった。
また、実施例1と同様にガラスを作製し溶け残りを調べたところガラスには白濁が見られ、ガラスを切断し切断面を観察したところ気泡やZrO2 の固まり等の溶け残りが確認された。
以上の結果を同様に表1にまとめる。
【0044】
【表1】
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の方法によれば、出発原料であるジルコニウム塩水溶液の酸濃度と、水溶液中に共存させた硫酸イオンのジルコニウムに対するモル比を調整することによって得られる塩基性硫酸ジルコニウムと思われる沈殿粒子を十分に洗浄後、アルカリで処理し、乾燥、焼成するので、光学ガラス用に添加剤として、平均粒径が大きく、10〜20μmであって、かつ有色不純物が最低限(0.001重量%以下)に抑えられていて、光学ガラスを調合する際の粉末の飛散を防止しながらガラス溶解時の溶け残りが生じることなく溶解性が改善されたジルコニア粉が得られる。これらは不純物が少ないため、高屈折率を必要とするレンズの原料として適しており、またガラス基板等のように強度を必要とするガラスの添加剤として用いることもできる。
Claims (7)
- 有色不純物含有量の合計が0.001重量%以下であり、かつ、嵩密度が1.5〜2.5g/cm3で、安息角が50〜60度であることを特徴とするジルコニア粉。
- 平均粒径が10〜20μmであることを特徴とする請求項1記載のジルコニア粉。
- 前記有色不純物が、Fe、Cr、Ni、CuおよびCoの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のジルコニア粉。
- 硫酸イオンを含むジルコニウム塩水溶液から第1沈殿物を沈殿させ、得られた沈殿をアルカリ性物質と反応させて第2沈殿物とし、この第2沈殿物を分離、乾燥、焼成してジルコニア粉を製造する方法において、ジルコニウム塩水溶液中の硫酸イオンとジルコニウムのモル比SO4 2-/Zrが0.45〜0.6、ジルコニウム塩水溶液のpHが0.1〜1となるようにジルコニウム塩水溶液を調整した後、前記ジルコニウム塩水溶液を60〜80℃に加温し、少なくとも2時間保持し、得られた沈殿を酸性液中で洗浄して第1沈殿物とすることを特徴とするジルコニア粉の製造方法。
- 硫酸イオンを含むジルコニウム塩水溶液から第1沈殿物を沈殿させ、得られた沈殿をアルカリ性物質と反応させて第2沈殿物とし、この第2沈殿物を分離、乾燥、焼成してジルコニア粉を製造する方法において、ジルコニウム塩水溶液中の硫酸イオンとジルコニウムのモル比SO4 2-/Zrが0.45〜0.6、ジルコニウム塩水溶液のpHが0.1〜1となるようにジルコニウム塩水溶液を調整した後、前記ジルコニウム塩水溶液を60〜80℃に加温し、少なくとも2時間保持し、次いで濾過して得られた沈殿を酸性液中で洗浄して第1沈殿物とすることを特徴とするジルコニア粉の製造方法。
- 前記ジルコニウム塩水溶液のジルコニウム濃度をZrO2換算濃度で30〜150g/lとなるように調整した液を用いることを特徴とする請求項4または5のいずれかに記載のジルコニア粉の製造方法。
- 前記第2沈殿物を1000〜1300℃の温度で焼成することを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載のジルコニア粉の製造方法。
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JP20380497A JP3799485B2 (ja) | 1997-07-14 | 1997-07-14 | ジルコニア粉およびその製造方法 |
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