JPH11350324A - 熱可塑性繊維からなる不織布及びそれを用いた感熱孔版印刷用原紙 - Google Patents

熱可塑性繊維からなる不織布及びそれを用いた感熱孔版印刷用原紙

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JPH11350324A
JPH11350324A JP10158961A JP15896198A JPH11350324A JP H11350324 A JPH11350324 A JP H11350324A JP 10158961 A JP10158961 A JP 10158961A JP 15896198 A JP15896198 A JP 15896198A JP H11350324 A JPH11350324 A JP H11350324A
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nonwoven fabric
heat
thermoplastic
fiber
fibers
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JP10158961A
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Tetsuya Asano
哲也 浅野
Kenji Kida
健次 喜田
Motoyuki Suzuki
基之 鈴木
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Toray Industries Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】延伸性の良い、熱可塑性繊維からなる不織布を
提供すること。 【解決手段】未延伸状態の熱可塑性繊維からなり、シー
ト形成後の長手方向と幅方向の熱収縮率がともに、熱可
塑性繊維のガラス転移温度(Tg)+25℃、10分に
おいて25%以下であることを特徴とする不織布。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱可塑性繊維から
なる不織布に関する。
【0002】詳しくは、延伸性に優れ、斑なく均一性等
の特徴を有する熱可塑性繊維からなる不織布であり、例
えば、特に、熱可塑性フィルムと貼り合わせ共延伸する
のに適するものであり、そのような複合構成とされて、
感熱孔版印刷用原紙として好適に用いられる不織布に関
するものである。
【0003】
【従来の技術】未延伸で実質的に無配向に近い繊維から
なる不織布を製造する方法に、メルトブロー法がある
(特開昭55−90663号公報、特開昭55−142
757公報等)。この方法は、溶融したポリエステルを
口金から吐出するに際して、口金周辺部から高温の加熱
ガスを高圧で吹き付け吐出した溶融ポリマーを加熱ガス
によって溶融状態で極細化せしめる方法である。細化し
た前記ポリマーは、次いで随伴気流で冷却し、しかるべ
き位置に配置したコンベア上に吹き付け捕集し、ウエブ
を形成して不織布を得る。すなわち、メルトブロー法で
は口金から吐出した溶融ポリマーが溶融状態で張力を受
けるので分子配向が進みずらく、無配向に近い繊維から
なる不織布が得られる。
【0004】しかし、上記で得られる不織布は、ショッ
トと呼ばれるポリマー塊が発生し、繊維径が不均一で、
高倍率まで延伸すると繊維群中の細い繊維が切断すると
いう問題があり均一な延伸ができなかった。
【0005】また、上記のような問題を解決すべく、延
伸性に優れたショットの極めて少ない不織布が提案され
ている(特開平8−60514公報)。この不織布は、
繊維単糸の複屈折が十分小さく実質的に無配向であるに
もかかわらず、延伸性において十分に満足するものでは
なかった。特に、感熱孔版印刷用原紙の支持体とした場
合、熱可塑性フィルムによっては、貼り合わせ共延伸し
た際に良好な延伸ができずフィルム面の平面性が悪化
し、製版時にサーマルヘッドとの接触不足が生じ、白抜
け(印刷物の黒べた部に発生する白い印刷欠点)が発生
し、良好な画像性を得ることができなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、未延伸状態
の熱可塑性繊維からなる不織布の熱収縮を規定すること
で前記のような問題点を解決し、斑なく均一で、延伸性
に優れた不織布を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上述した目的を達成する
本発明は、未延伸状態の熱可塑性繊維からなり、シート
形成後の長手方向と幅方向の熱収縮率がともに、熱可塑
性繊維のガラス転移温度(Tg)+25℃、10分にお
いて25%以下であることを特徴とする不織布である。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、さらに詳しく本発明につい
て説明をする。
【0009】本発明における不織布は、未延伸状態の熱
可塑性繊維からなるものである。ここでいう未延伸状態
の繊維とは、複屈折(Δn)が0.02以下の実質的に
無配向であるものをいう。従来、実質的に無配向の繊維
からなる不織布にもかかわらず、延伸性に大きな違いが
あり、延伸良好なものとそうでないものとがあった。そ
こで、その原因について検討したところ、延伸性と不織
布熱収縮とに相関を見出した。それは、不織布の熱収縮
が小さい程延伸性が良く、未延伸状態の熱可塑性繊維か
らなり、シート形成後の長手方向と幅方向の熱収縮率が
ともに、熱可塑性繊維のガラス転移温度(Tg)+25
℃、10分において25%以下とすることで優れた延伸
性を確保できることがわかった。
【0010】実質的に無配向の繊維からなる不織布であ
りながら熱収縮し、不織布の収縮度合いに差が生じる原
因は、おそらく繊維の絡まり合いが大きく影響している
ためと思われる。
【0011】本発明の不織布は、未延伸状態の熱可塑性
繊維からなり、シート形成後の長手方向と幅方向の熱収
縮率がともに、熱可塑性繊維のガラス転移温度(Tg)
+25℃、10分において25%以下とすることが必要
である。不織布の長手方向と幅方向の熱収縮率がとも
に、ガラス転移温度(Tg)+25℃、10分において
25%以下であると、均一に高倍率まで延伸ができ、特
に感熱孔版印刷用原紙の支持体として用いる場合、熱可
塑性フィルムと貼り合わせて共延伸する際に平面性の良
いフィルム面を得ることができるようになる。さらに、
不織布の長手方向と幅方向の熱収縮率がともに、ガラス
転移温度(Tg)+25℃、10分において15%以下
であると、より延伸性に優れ、平面性の良い高感度感熱
孔版印刷用原紙を得ることができる。
【0012】本発明における不織布は、曳糸性のある熱
可塑性樹脂から構成されるものである。具体的には、例
えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタ
レートなどのポリエステルや、ポリエチレン、ポリプロ
ピレンなどのポリオレフィンや、ポリフェニレンサルフ
ァルド、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミドが
挙げられる。また、繰り返し単位の25%を上限として
第3成分を添加あるいは共重合したものであってもよ
い。
【0013】添加可能な第3成分としては、特に限定さ
れないが、例えば酸化チタンに代表される無機粒子、ド
デシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどに代表される
制電剤等を用いることができる。共重合可能な成分とし
てはイソフタル酸等が使用できる。
【0014】本発明においては、中でもポリエステルを
用いてなる不織布が紡糸性、強伸度特性等の観点から最
も好ましい。本発明におけるポリエステル繊維からなる
不織布に用いられるポリエステルは、芳香族ジカルボン
酸、脂肪族ジカルボン酸または脂環族ジカルボン酸とジ
オールを主たる構成成分とするものである。好ましく
は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタ
レート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレー
ト、エチレンテレフタレートとエチレンイソフタレート
との共重合体等である。特に好ましくは、経済性と物性
のバランスの点からポリエチレンテレフタレートであ
る。
【0015】本発明において、熱可塑性繊維の平均繊維
径は、引張強力および耐疲労性の観点から1μm以上で
あることが好ましく、不織布の均一性の観点から40μ
m以下であることが好ましい。
【0016】本発明において、熱可塑性繊維の複屈折
(Δn)は、延伸性、熱収縮性の観点から低いものが好
ましく0.01以下である。より好ましくは0.008
以下である。
【0017】本発明における熱可塑性繊維からなる不織
布の繊維目付量は、強度、延伸性の観点から40〜30
0g/m2 であることが好ましく、より好ましくは50
〜250g/m2 である。
【0018】本発明における熱可塑性繊維からなる不織
布を構成する繊維は、実質的に全て同一繊維径のもので
あってもよいし、実質的に異なる繊維径の繊維が存在す
るものであってもよい。また、熱可塑性繊維からなる不
織布は、単層構造のものに限られず、平均繊維径の異な
る繊維からなる不織布などを段階的に積層した多層構造
としてもよい。
【0019】本発明の熱可塑性繊維からなる不織布は、
延伸性に優れ、後の延伸加工性が良い。そのために、本
発明の不織布は、平面状のシートから立体的な構造体、
例えば帽子、マスク、各種トレイなどを成型する成型加
工、あるいは延伸加工に好適に使用できる。延伸加工
は、成型加工に比べ不織布の延展性能の良否が顕著に現
れる。
【0020】本発明の熱可塑性繊維からなる不織布は、
均一で延伸性に優れることから、熱可塑性フィルムと積
層した後に延伸して得られる感熱孔版印刷用原紙の支持
体に適している。
【0021】本発明の熱可塑性繊維からなる不織布を延
伸し支持体として用いた感熱孔版印刷用原紙は、支持体
である不織布が前記した延伸性に優れた熱可塑性繊維か
らなるものであるため、フィルム表面が平坦である。そ
のため高感度で、高精細な画像性を得ることができる。
【0022】本発明の熱可塑性繊維からなる不織布をフ
ィルムと貼り合わせ共延伸して得られる感熱孔版印刷用
原紙の支持体として用いる場合、原紙の支持体としての
熱可塑性繊維の平均繊維径は、好ましくは1〜20μm
であり、より好ましくは3〜15μmである。平均繊維
径が1〜20μmであると十分な強度と耐熱性が得られ
インクの透過性が良好であり、印刷性が良く好ましい。
また、繊維目付量は好ましくは2〜20g/m2 であ
り、より好ましくは5〜20g/m2 である。目付量が
2〜20g/m2 であるとインクの透過性が良好で画像
性、印刷性が良い。また、目付量が5〜20g/m2
は、さらに十分な強度が得られる。
【0023】本発明において、上述の「貼り合わせ共延
伸する」とは、不織布をフィルム等と積層すること等に
より重ねた後に、両者を共に延伸に供することをいう。
該重ねるに際しては、接着剤の使用をするか否かは適宜
に用途に応じて定めるとよく、特に限定はされない。一
方で、接着剤を特に使用しなくても、単に重ねられて共
延伸されることによって両者が一体化挙動をとる条件を
設定することもできるので、接着剤の使用を避けた方が
好ましい用途には、該条件設定をすることが良い。特
に、該共延伸された複合体を、感熱孔版印刷用原紙とし
て用いるときには、接着剤の使用をしない方が好ましい
と言える。
【0024】また、本発明の熱可塑性繊維からなる不織
布を延伸し感熱孔版印刷用原紙の支持体として用いた感
熱孔版印刷用原紙における熱可塑性フィルムとしては、
薄膜化が可能な樹脂よりなるもの、例えば、ポリエチレ
ンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートに代表さ
れるポリエステル、ナイロン6、ナイロン66に代表さ
れるポリアミドなどを、特に限定されず用いることがで
きる。中でも、薄膜化しやすいポリエチレンテレフタレ
ートを主成分とするフィルムが好ましく用いられる。フ
ィルムの厚さは、感熱孔版印刷用原紙に適した厚みで用
いればよいが、製版性や印刷性から好ましくは0.1〜
5μm、より好ましくは0.1〜3μm、特に好ましく
は0.1〜2μmである。
【0025】本発明の熱可塑性繊維からなる不織布の製
造法を、以下に説明する。
【0026】本発明において熱可塑性樹脂は、具体的に
は、例えばポリエステルや、ポリオレフィンや、ポリア
ミドを用いることができる。中でもポリエステルを用い
てなる不織布が、紡糸性、強伸度特性等の観点から最も
好ましく、熱可塑性樹脂の製造法をポリエステルの場合
を例に挙げて説明する。例えば、酸成分をジオール成分
と直接エステル化反応させた後、この反応の生成物を減
圧下で加熱して余剰のジオール成分を除去しつつ重縮合
させることによって製造する方法や、酸成分としてジア
ルキルエステルを用い、これとジオール成分とでエステ
ル交換反応させた後、上記と同様に重縮合させることに
よって製造する方法等がある。この際、必要に応じて、
反応触媒としてアルカリ金属、アルカリ土類金属、マン
ガン、コバルト、亜鉛、アンチモン、ゲルマニウム、チ
タン化合物を用いることもできる。
【0027】本発明においてポリエステルには、必要に
応じて、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収
剤、帯電防止剤、顔料、脂肪酸エステル、ワックス等の
有機滑剤あるいはポリシロキサン等の消泡剤等を配合す
ることができる。さらには易滑性を付与するために、例
えば、クレー、マイカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、
カオリン、タルク、湿式あるいは乾式シリカなどの無機
粒子や、アクリル酸系ポリマ類、ポリスチレン等を構成
成分とする有機粒子等を配合することもできる。また、
ポリエステル重合反応時に添加する触媒等が失活して形
成される、いわゆる内部粒子による方法も用いることが
できる。
【0028】本発明における熱可塑性繊維からなる不織
布は、上記熱可塑性樹脂を用いて、メルトブロー法など
の直接溶融紡糸法によって製造することができる。
【0029】メルトブロー法において、熱可塑性繊維か
らなる不織布は溶融したポリマーを口金に列状に配列し
た複数個のオリフィスから吐出するに際して、前記オリ
フィスの列の両側に設けられたスリットから熱風を吹き
付け該熱風によって吐出したポリマーを細繊度化せし
め、次いで、しかるべき位置に配置したネットコンベア
上に吹き付けて捕集しウエブを形成して製造される。該
熱可塑性繊維はネットコンベアに設けた吸引装置によっ
て熱風と一緒に吸引されるので、繊維が完全に固化する
前に捕集される。つまり、繊維は互いに融着した状態で
捕集される。口金とネットコンベア間の捕集距離を適宜
調整することによって、繊維の融着度合いを調整するこ
とができる。また、ポリマー吐出量、熱風温度、熱風流
量、コンベア移動速度等を適宜調整することにより、繊
維目付量や単糸繊度を任意に設定することができる。メ
ルトブロー紡糸された繊維は、熱風の圧力で細繊度化さ
れるが延伸はされず、いわゆる無配向に近い状態で固化
される。繊維の太さは、均一ではなく太い繊維と細い繊
維がほどよく分散した状態である。また、口金から吐出
されたポリマーは、溶融状態から室温雰囲気下に急冷さ
れるため非晶質に近い状態で固化する。得られた不織布
は、実質的に無配向の未延伸状態の繊維からなる不織布
である。用いられるポリマの固有粘度は好ましくは0.
30以上のもの、より好ましくは0.40以上である。
【0030】例えば、本発明の熱可塑性繊維の結晶化度
は、感熱孔版印刷用原紙の支持体として用いる場合、フ
ィルムとの接着を十分にするため好ましくは20%以
下、より好ましくは15%以下、特に好ましくは10%
以下である。
【0031】本発明の熱可塑性繊維からなる不織布を延
伸するに際しては、延伸方法に特に限定はされなく、一
軸延伸あるいは二軸延伸のいずれでもよい。特に感熱孔
版印刷用原紙の支持体としては、不織布を形成する繊維
の均一分散性の点で二軸延伸が好ましい。二軸延伸は逐
次二軸延伸法または同時二軸延伸法のいずれの方法であ
ってもよい。逐次二軸延伸法の場合、縦方向、横方向の
順に延伸するのが一般的であるが、逆に延伸してもよ
い。延伸温度は熱可塑性繊維のガラス転移温度(Tg)
と昇温結晶化温度(Tcc)との間であるのが好まし
い。
【0032】延伸倍率は特に限定されるものではなく、
用いる熱可塑性フィルム用ポリマーの種類や原紙に要求
される穿孔感度等によって適宜決定されるが、縦横それ
ぞれ2〜5倍程度が適当である。また、二軸延伸後、縦
または横あるいは縦横に再延伸してもかまわない。さら
に、本発明の不織布に二軸延伸後熱処理を施すことも好
ましい。
【0033】従来のメルトブロー法では、溶融したポリ
マーは口金から吐出するに際して高温、高圧の熱風によ
って極細に細化せしめられた。細化した繊維は、繊維径
が細すぎ、また繊維径が不均一なものとなり高倍率の延
伸では、繊維群中の細い繊維が切断したり、繊維が素抜
ける態様で不織布が破断するといった問題が生じた。特
に繊維径が7μm以下だと極端に延伸性が悪くなった。
しかし、本発明の不織布を製造する方法として、例えば
溶融ポリマーにあった最適口金温度で、熱風流量、熱風
速度、熱風温度、捕集温度を適宜調整、操作することで
極細に細化した繊維からなる不織布でも良好な延伸性を
確保することができた。
【0034】本発明の未延伸状態の熱可塑性繊維からな
り、シート形成後の長手方向と幅方向の熱収縮率がとも
に熱可塑性繊維のガラス転移温度(Tg)+25℃、1
0分において25%以下とするには、特に限定されるも
のではないが、不織布紡糸過程において口金温度、熱風
流量、熱風速度、熱風温度、捕集温度を適宜調整、操作
することで可能である。
【0035】例えば、オリフィス列の幅1cm当たりの
熱風流量は、繊維単糸の配向や流量変動から0.005
〜0.15Nm3 /分とすることが好ましく、より好ま
しくは0.02〜0.10Nm3 /分である。熱風速度
は、繊維単糸の配向や繊維径から3000〜8000m
/分とすることが好ましく、より好ましくは3000〜
7000m/分である。捕集温度については、繊維間の
融着強度や延伸性から90〜120℃が好ましく、より
好ましくは100〜120℃である。
【0036】また、不織布を熱処理する手法を用いるこ
とができる。例えば、無張力状態の不織布をオーブン中
に入れ熱処理する方法や、あるいはトンネルオーブンを
用いて熱処理する方法がある。この場合には、熱処理温
度は、50〜150℃が好ましく、熱処理時間は0.5
秒〜10分が好ましい。
【0037】
【特性の測定方法】(1)熱収縮率:熱可塑性繊維から
なる不織布を14cm(長手方向)×2cm(幅方向)
にカットし無張力状態でガラス転移温度(Tg)+25
℃に保ったオーブン中、10分間熱処理し、その前後の
熱可塑性繊維からなる不織布の長手方向の長さを測定し
て次式にて熱収縮率を算出した。
【0038】熱収縮率(%)=100×{(熱処理前の
長手方向のサンプル長)−(熱処理後の長手方向のサン
プル長)}/熱処理前の長手方向のサンプル長 同様に幅方向の熱収縮率も算出した。
【0039】(2)平均繊維径:平均繊維径は、熱可塑
性繊維からなる不織布の任意の10箇所を電子顕微鏡で
倍率2000倍で10枚の写真撮影を行い、1枚の写真
につき任意の15本の繊維の直径を測定しこれを10枚
の写真について行い、合計150本の繊維径を測定して
その平均値を表したものである。
【0040】(3)複屈折(Δn):レーザーラマン分
光法により、装置 Ramanor T−64000(J
obin Yvon/愛宕物産)を用いて、複屈折(Δ
n)を次式にて求めた。
【0041】複屈折(Δn)=275×(Iyy−Ixx)
/(Iyy+2Ixx) Ixx:不織布単糸長手方向に垂直方向のラマンバンド強
度 Iyy:不織布単糸長手方向のラマンバンド強度 (4)繊維目付量:熱可塑性繊維からなる不織布を20
×20cmに切り取りその重量を測定して1平方メート
ル当たりの重量に換算した値である。
【0042】(5)ガラス転移温度(Tg)、昇温結晶
化温度(Tcc):セイコー電子工業(株)製の示差走
査熱量計RDC220型を用い、熱可塑性繊維からなる
不織布を試料として5mg採取し、室温より昇温速度2
0℃/分で昇温する。その際に、ガラス状態からゴム状
態への転移に基づく比熱の変化によりDSC曲線が屈曲
し、ベースラインが平行移動する形で感知される。かか
る屈曲点以下の温度でのベースラインの接線と、屈曲し
た部分で傾きが最大となる点の接線との交点を屈曲の開
始点とし、この温度をガラス転移温度(Tg)とした。
また、結晶化に基づく発熱曲線のピーク値を昇温結晶化
温度(Tcc)とした。 不織布が2種以上のポリマー
ブレンド組成物からなることの理由によって、Tg、T
ccが2つ以上観察される場合は、最も比熱変化が大き
く上記したベースラインの平行移動が大きい屈曲の開始
点や最も発熱量の多いピークをその組成物のTg、Tc
cとした。
【0043】(6)結晶化度:臭化ナトリウム水溶液か
らなる密度勾配管に試料を投入し10時間経過後の値を
読んで密度を求めた。結晶化度0%の密度を1.335
g/cm3 、結晶化度100%の密度を1.455g/
cm3 として試料の結晶化度を下記式より算出した。
【0044】結晶化度(%)=100×(試料の密度−
1.335)/(1.445−1.335) (7)固有粘度:試料を105℃で20分間乾燥した
後、0.8±0.005gを秤量し、o−クロロフェノ
ール中で160℃で15分間撹拌し溶解した。冷却後、
ヤマトラボティックAVM−10S型自動粘度測定器に
より25℃で測定した。
【0045】(8)延伸性評価試料を9cm×9cmに
切り取り、東洋精機製作所(株)製二軸延伸装置を用い
て、ポリマー種による最適延伸温度(例えば、ポリエチ
レンテレフタレートの場合 延伸温度90℃)、延伸速
度2000%/分で同時二軸延伸を行い、破断に至るま
での到達延伸倍率で次のように評価した。到達延伸倍率
が大きいほど延伸性に優れることを示す。
【0046】到達延伸倍率が、3.0×3.0までのも
のを×、4.0×4.0までのものを○、4.0×4.
0を超えたものを◎とした。
【0047】(9)全べた印刷性評価:感熱孔版印刷用
原紙を理想科学工業(株)製RISOGRAPH“GR
375”に供給して、サーマルヘッド式製版方式によ
り、製版エネルギー48μJ/dotにて全ベた製版印
刷した。この印刷物を目視判定により、全べた印刷性を
次のように評価した。
【0048】A4サイズで全べた製版印刷した。これを
目視判定により黒べた部で白抜けがないものを◎、黒べ
た部で白抜けが1〜10個あるものを○、11個以上あ
るものを×とした。
【0049】印刷性(画像性)と延伸性については、不
織布の延伸性が悪いとフィルムと貼り合わせて共延伸し
た際に良好な延伸ができず、フィルム面の平面性が悪化
し製版時にサーマルヘッドとの接触不足によって白抜け
(印刷物の黒べた部に発生する白い印刷欠点)が発生
し、良好な画像性を得ることができないといった関係に
ある。
【0050】
【実施例】以下、本発明を実施例により説明するが、本
発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】実施例1 孔径0.30mm、孔数130個、オリフィスが一列の
矩形紡糸口金を用いて、口金温度280℃、吐出量40
g/分、熱風流量0.045Nm3 /分、熱風温度29
5℃で、ポリエチレンテレフタレート原料(固有粘度=
0.494)をメルトブロー法にて紡出し、コンベア上
に繊維を捕集温度101℃で捕集して繊維目付量140
g/m2 のポリエステル繊維からなる不織布を作製し
た。得られた不織布の平均繊維径は、10.50μmで
あった。不織布の熱収縮率と延伸性の評価結果を表1に
示した。
【0052】次いで、エチレンテレフタレートとエチレ
ンイソフタレートとの共重合体でエチレンイソフタレー
ト共重合量が14モル%である原料を、ホッパーに供給
した後スクリュー径40mmの押出機を用いて、Tダイ
口金温度270℃で押出し、直径600mmの冷却ドラ
ム(60℃)上にキャストして未延伸ポリエステルフィ
ルムを作製した。
【0053】該未延伸ポリエステルフィルム上に、前記
のポリエステル繊維からなる不織布を重ね、加熱ロール
に供給してロール温度75℃で熱圧着した。こうして得
られた積層シートのポリエステルフィルム面を85℃で
予熱し、次いでポリエステル繊維からなる不織布面を9
5℃で予熱した後に95℃に加熱されたシリコーンゴム
製の延伸ロール(加圧ロール圧力1.0N/cm)で、
長さ方向に3.5倍延伸した。さらにテンター式延伸機
に送り込み、95℃で幅方向に3.75倍延伸した。さ
らにテンター内部で140℃で5秒間熱処理して、厚さ
69μmの感熱孔版印刷用原紙を作製した。該感熱孔版
印刷用原紙のポリエステルフィルム面にテンター入口部
で、ワックス系離型剤をグラビアコーターを用いて延伸
乾燥後の重さで0.1g/m2 塗布した。得られた感熱
孔版印刷用原紙のポリエステル繊維からなる不織布の平
均繊維径は5.52μmであり、繊維目付量は10.7
g/m2 であった。全べた印刷性評価の結果を表1に示
した。
【0054】実施例2 熱風流量0.055Nm3 /分以外は、実施例1と同様
に不織布を作製した。得られた不織布の平均繊維径は、
8.00μmであった。不織布の熱収縮率と延伸性評価
結果を表1に示した。
【0055】次いで、実施例1と同様に前記不織布を用
いて厚さ75μmの感熱孔版印刷用原紙を作製した。得
られた感熱孔版印刷用原紙のポリエステル繊維からなる
不織布の平均繊維径は4.2μmで、繊維目付量は1
0.7g/m2 であった。全べた印刷性評価の結果を表
1に示した。
【0056】実施例3 熱風流量0.063Nm3 /分、捕集温度105℃以外
は、実施例1と同様に不織布を作製した。得られた不織
布の平均繊維径は、6.80μmであった。次に、得ら
れたポリエステル繊維からなる不織布を100℃雰囲気
下のオーブン中に入れ30秒間、熱処理を行った。不織
布の熱収縮率と延伸性評価結果を表1に示した。
【0057】次いで、実施例1と同様に前記の熱処理を
施したポリエステル繊維からなる不織布を用いて、厚さ
83μmの感熱孔版印刷用原紙を作製した。得られた感
熱孔版印刷用原紙のポリエステル繊維からなる不織布の
平均繊維径は3.57μmであり、繊維目付量は10.
7g/m2 であった。全べた印刷性評価の結果を表1に
示した。
【0058】実施例4 口金温度270℃、熱風流量0.055Nm3 /分、捕
集温度97℃以外は、実施例1と同様に不織布を作製し
た。得られた不織布の平均繊維径は、8.25μmであ
った。不織布の熱収縮率と延伸性評価結果を表1に示し
た。
【0059】次いで、実施例1と同様に前記不織布を用
いて、厚さ79μmの感熱孔版印刷用原紙を作製した。
得られた感熱孔版印刷用原紙のポリエステル繊維からな
る不織布の平均繊維径は4.33μmで、繊維目付量は
10.7g/m2 であった。全べた印刷性評価の結果を
表1に示した。
【0060】実施例5 口金温度295℃、熱風流量0.12Nm3 /分、熱風
温度305℃、捕集温度120℃以外は、実施例1と同
様に不織布を作製した。得られた不織布の平均繊維径
は、5.40μmであった。不織布の熱収縮率と延伸性
評価結果を表1に示した。
【0061】次いで、実施例1と同様に前記不織布を用
いて、厚さ88μmの感熱孔版印刷用原紙を作製した。
得られた感熱孔版印刷用原紙のポリエステル繊維からな
る不織布の平均繊維径は2.84μmで、繊維目付量は
10.7g/m2 であった。全べた印刷性評価の結果を
表1に示した。
【0062】比較例1 口金温度285℃、熱風流量0.12Nm3 /分、熱風
温度300℃以外は、実施例1と同様に不織布を作製し
た。得られた不織布の平均繊維径は、5.30μmであ
った。不織布の熱収縮率と延伸性評価結果を表1に示し
た。
【0063】次いで、実施例1と同様に前記不織布を用
いて、厚さ85μmの感熱孔版印刷用原紙を作製した。
得られた感熱孔版印刷用原紙のポリエステル繊維からな
る不織布の平均繊維径は2.78μmで、繊維目付量は
10.7g/m2 であった。全べた印刷性評価の結果を
表1に示した。
【0064】比較例2 熱風流量0.2Nm3 /分、熱風温度300℃以外は、
実施例1と同様に不織布を作製した。得られた不織布の
平均繊維径は、4.10μmであった。この不織布は、
比較例1の不織布に比べて到達延伸倍率が小さく更に延
伸性が悪かった。不織布の熱収縮率と延伸性評価結果を
表1に示した。
【0065】次いで、実施例1と同様に前記不織布を用
いて、厚さ91μmの感熱孔版印刷用原紙を作製した。
得られた感熱孔版印刷用原紙のポリエステル繊維からな
る不織布の平均繊維径は2.15μmで、繊維目付量は
10.7g/m2 であった。全べた印刷性の評価結果を
表1に示した。
【0066】
【表1】
【0067】
【発明の効果】本発明によれば、延伸性に優れ、斑なく
均一性等の特徴を有する熱可塑性繊維からなる不織布が
提供され、特に感熱孔版印刷用原紙に適した支持体を提
供することができる。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】未延伸状態の熱可塑性繊維からなり、シー
    ト形成後の長手方向と幅方向の熱収縮率がともに、熱可
    塑性繊維のガラス転移温度(Tg)+25℃、10分に
    おいて25%以下であることを特徴とする不織布。
  2. 【請求項2】上記熱収縮率が、熱可塑性繊維のガラス転
    移温度(Tg)+25℃、10分において15%以下で
    あることを特徴とする請求項1記載の不織布。
  3. 【請求項3】熱可塑性繊維がポリエステル繊維からなる
    ことを特徴とする請求項1または2記載の不織布。
  4. 【請求項4】熱可塑性繊維がポリエチレンテレフタレー
    トからなることを特徴とする請求項1または2記載の不
    織布。
  5. 【請求項5】熱可塑性繊維の平均繊維径が、1〜40μ
    mであることを特徴とする請求項1、2、3または4記
    載の不織布。
  6. 【請求項6】熱可塑性繊維の複屈折(Δn)が0.01
    以下であることを特徴とする請求項1、2、3、4また
    は5記載の不織布。
  7. 【請求項7】成型加工用基布として用いられることを特
    徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載の不織
    布。
  8. 【請求項8】未延伸状態の熱可塑性繊維からなり、シー
    ト形成後の長手方向と幅方向の熱収縮率がともに、熱可
    塑性繊維のガラス転移温度(Tg)+25℃、10分に
    おいて25%以下である不織布と熱可塑性フィルムとが
    積層された後に延伸されてなる感熱孔版印刷用原紙。
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