JPH11332346A - 芝刈機のモーア吊設装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 モーアの吊設構造工夫により、吊設式の利点
を維持しながら、左右傾斜地における段刈り現象が極力
生じないように改善する。 【解決手段】 左右一対のリンク５２，５２を介してモ
ーア１を昇降可能に機体に吊設してある芝刈機のモーア
吊設装置において、モーア１のハウジング５１に、左右
方向の中間部に設けた前後向き支点Ｐ回りでローリング
可能に天秤アーム５８を枢支し、この天秤アーム５８に
おける支点Ｐの左右両側に振り分けて一対の後部リンク
５２，５２を連結する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、ミッドマウント型
やフロントマウント型等の芝刈機のモーア吊設装置に係
り、詳しくは、左右に傾斜した草地や芝地においても、
段刈り状態になることがなく、一様な刈り高さ状態に仕
上げられるようにする技術に関する。

【０００２】

【従来の技術】芝刈機では、大別してゲージ輪等を介し
てモーアを接地させながら刈り作動させる接地式と、機
体から吊り下げることで、モーアを地面から所定距離上
空に浮かして刈り作動させる吊設式とがある。吊設式の
ものとしては、特開平９‐３２８０１９号公報や、特開
平９‐２７２３５０号公報に示されたミッドマウント型
芝刈機のものがあり、夫々左右一対の前リンクと後リン
クとの計４本のリンクを介して、モーアを平行昇降自在
に機体に吊設し、左右の後部リンクを油圧シリンダ等で
揺動昇降させることでモーアを昇降操作するように構成
していた。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】吊設式のモーアでは、
基本的には走行機体のみでモーアを支持しており、モー
ア重量が全て機体に作用することから、接地式に比べ
て、 (1) 刈り高さ調節が容易である (2) モーアの軽量化や構造の簡単化が図り易い (3) 芝刈機の登坂性能が優れる 等の利点を備えている。

【０００４】しかしながら、その反面、左右方向の傾斜
地では、その傾斜角度や芝地の硬軟等の条件によっては
段刈りが発生することがあった。つまり、従来の芝刈機
では、モーアは対機体平行となるように吊設してあるの
で、重心移動等の影響によって傾斜下側の車輪が傾斜上
側の車輪よりも地面に深く食い込むとか、車輪の凹み具
合が大きい等により、機体が地面の傾斜角度よりもさら
に急角度で傾斜することがあると、モーアもその急角度
に傾斜するので、モーアと地面とには左右方向に相対角
度が付いてしまうのである。

【０００５】すると、傾斜上側では高刈り傾向に、か
つ、傾斜下側では低刈り傾向となり、傾斜下側の刈り高
さよりも、その傾斜下側の隣の刈り跡の傾斜上側の刈り
高さの方が高くなって、あたかも工場の屋根のようなギ
ザギザの刈り跡、すなわち段刈り状態となってしまうの
であった。

【０００６】本発明の目的は、モーアの吊設構造工夫に
より、吊設式の利点を維持しながら、左右傾斜地におけ
る段刈り現象が極力生じないように改善する点にある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】〔構成〕第１発明は、左
右一対のリンクを介してモーアを昇降可能に機体に吊設
してある芝刈機のモーア吊設装置において、モーアのハ
ウジングに、左右方向の中間部に設けた前後向き支点回
りで揺動可能に天秤アームを枢支し、この天秤アームに
おける支点の左右両側に振り分けて一対のリンクを連結
してあることを特徴とする。

【０００８】第２発明は、第１発明において、支点回り
における天秤アームとハウジングとが所定の相対姿勢と
なるように復帰付勢する弾性機構を備えたことを特徴と
する。

【０００９】第３発明は、第１又は第２発明において、
ハンジングの左右両端近くに補助接地体を備えてあるこ
とを特徴とする。

【００１０】第４発明は、第３発明において、補助接地
体のハウジングに対する取付け高さを可変設定可能に構
成してあることを特徴とする。

【００１１】〔作用〕請求項１の構成によれば、左右方
向の中間部に設けた前後向き支点回りで揺動可能に天秤
アームをハウジングに枢支し、この天秤アームにおける
支点の左右両側に振り分けて一対のリンクを連結してあ
るから、リンクによる左右の吊り下げバランスを良好な
状態としながら、モーアを機体に対してローリング自在
に吊設したことになる。故に、左右傾斜地において、傾
斜下側の車輪が大きく地面に食い込む等によって機体の
左右姿勢が地面傾斜よりも急角度に傾斜しても、モーア
を機体に対してローリングさせることにより、従来の対
機体平行状態ではなく、対地平行状態にすることが可能
になる。

【００１２】従って、（イ）モーアにおける傾斜上側と
傾斜下側との刈り高さを揃えることができて、前述した
段刈りが解消され、地面傾斜等の状況如何によらず極力
一様な刈り高さ状態に仕上げることが可能になる。

【００１３】請求項２の構成によれば、前記作用（イ）
の他に次の作用が生じる。支点回りにおける天秤アーム
とハウジングとが所定の相対姿勢となるように復帰付勢
する弾性機構を備えたから、モーアがふらふらと不用意
にローリングしないように姿勢を安定させることがで
き、ローリング可能構造故に刈り高さがモーアの左右で
変化することを回避できる。又、モーアの支点左右での
重量が異なることがあっても、弾性機構で左右の重量バ
ランスを取ることができ、この点からも刈り高さが揃う
ようにすることができる。

【００１４】請求項３の構成によれば、ハウジングの左
右両端近くに備えた補助接地体を備えたので、その補助
接地体と地面との接当により、モーアが必要以上にロー
リングすることが確実に防止されて姿勢の安定化を図る
ことができる。従って、ローリング可能構造故に刈り高
さがモーアの左右で変化することを回避しながら、前記
（イ）の作用が得られるようになる。

【００１５】請求項４の構成によれば、補助接地体のハ
ウジングに対する取付け高さを可変設定可能であるか
ら、刈り高さ調節に伴って補助接地体の高さを調節でき
るとともに、地面の硬軟や傾斜角度等の状況に応じて補
助接地体の高さを調節して、姿勢変化抑制作用を最適な
ものにすることが可能になる。

【００１６】〔効果〕請求項１〜４のいずれに記載の芝
刈機のモーア吊設装置でも、（ロ）天秤アームを介して
ローリング自在にモーアを吊り下げることにより、左右
傾斜地であっても段刈りが防止され、刈り高さが一様に
揃う精度の良い芝刈り作業が行えるようにできた。

【００１７】請求項２に記載のモーア吊設装置では、モ
ーア左右の重量バランスを良好なものとしながらも、不
用意なローリング動が防止できて、平地での芝刈り状態
に悪影響を及ぼさないようにしながら前記（ロ）の効果
が得られた。

【００１８】請求項３に記載のモーア吊設装置では、
（ハ）モーアに補助接地体を設ける簡単な付加構成によ
り、ローリング構造故に平地での刈り高さが不揃いにな
ることを回避しながら、前記（ロ）の効果が得られる利
点がある。

【００１９】請求項４に記載のモーア吊設装置では、刈
り高さの調節や地面状況の変化があっても、それに対応
しながら前記（ハ）の効果が得られる利点がある。

【００２０】

【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態を図
面に基づいて説明する。図１に、前輪２と後輪３との前
後間における機体下腹部に、モーア１が配置されたトラ
クタの一例であるミッドマウント乗用型芝刈機が示され
ている。この芝刈機は、機体前部のエンジン４と機体後
部のミッションＭを、左右一対の機体フレーム５，５間
に配置搭載するとともに、ミッションケース６の前部に
一体的に取付けられたＨＳＴ７とエンジン４とをドライ
ブシャフト８で伝動連結してあるとともに、ミッション
ケース６の上方に配置される運転座席４４や、その前に
配置される操縦ハンドル４５等による運転部Ｂを備えて
いる。

【００２１】ミッションＭの前面には、前輪２駆動用の
前輪駆動軸９と、モーア１駆動用のミッドＰＴＯ軸１０
が、かつ、ミッションＭ後面には図示しない後部作業装
置駆動用のリヤーＰＴＯ軸１１が夫々取り出されてい
る。ミッション上部には、後部作業装置昇降用の油圧シ
リンダ１３が一体形成されるとともに、リフトアーム１
２の軸１２ａを支承している。機体フレーム５は、断面
が縦長の板材で構成されており、その内側においてミッ
ションケース６をボルト止めしてある。

【００２２】図２，図３に示すように、モーア１は、刈
刃ハウジング５１内にブレード（回転刃）５４を３個備
えた３枚ブレードタイプであり、左右の機体フレーム５
の外側において枢支された左右一対の後部リンク５２，
５２と、機体フレーム５の前部に枢支された左右一対の
前部リンク５３，５３とによる四連リンク機構によって
平行昇降自在に連結されている。後部リンク５２の後部
と、機体フレーム５に枢支された昇降アーム５５の前端
部とをリフトロッド５６で連結するとともに、左右の昇
降アーム５５，５５を貫通軸５５ａで一体昇降状態に連
結してある。

【００２３】そして、右側の昇降アーム５５に一体化さ
れたアーム部５５ｂと、右側のリフトアーム１２に取付
けられたアーム部１２ｂとを連結リンク５７で連結して
あり、リフトアーム１２が上昇する方向に油圧シリンダ
１３を伸長駆動すると、連結リンク５７と両昇降アーム
５５とを介して後部リンク５２，５２が持ち上げられ、
それによってモーア１を上昇させることができる。つま
り、後部作業装置昇降用の油圧シリンダ１３によって、
モーア１を駆動昇降させる構造としてある。

【００２４】図３に示すように、刈刃ハウジング５１の
上面後部に、左右方向の中間部に設けた前後向き支点Ｐ
回りで揺動可能に天秤アーム５８を枢支し、この天秤ア
ーム５８における支点Ｐの左右両側に振り分けて後部リ
ンク５２，５２を枢支連結してある。つまり、刈刃ハウ
ジング５１の上面に取付けられた前後一対のブラケット
５１ａ，５１ａに亘るピン５９に天秤アーム５８を枢支
してあり、モーア１を機体に対して所定範囲内でローリ
ング自在に吊設してある。

【００２５】そして、天秤アーム５８の左右両端部夫々
に、この天秤アー５８とモーア１とが相対平行姿勢とな
るように復帰付勢する弾性機構６０を備えてある。弾性
機構６０は、図４に示すように、刈刃ハウジング５１上
面に固着されたＬ字ステー６１と、このＬ字ステー６１
と天秤アーム５８とを下方から上向きに貫通するボルト
６２及びナット６３と、ナット６３とＬ字ステー６１と
の間においてボルト６２に嵌装される巻きバネ６４と、
天秤アーム５８をボルト６２の頭部傍に係止させる止め
ピン６５とで構成されている。

【００２６】つまり、巻きバネ６４がボルト６２を介し
て天秤アーム５８を上昇付勢させる作用が、天秤アーム
５８の左右両端部で生じるので、その両付勢力をバラン
スさせることで天秤アーム５８とモーア１すなわち刈刃
ハウジング５１とを互いに平行の姿勢に復帰付勢するの
である。従って、自由状態ではモーア１は機体と平行で
あるが、所定以上の外力がモーア１に作用すると一方の
巻きバネ６４が伸び、かつ、他方の巻きバネ６４が縮む
ことによってローリングすることができるようになって
いる。

【００２７】尚、左右のナット６３，６３の調節操作に
より、刈刃ハウジング５１とＬ字ステー６１との上下間
内において、天秤アーム５８と刈刃ハウジング５１との
相対姿勢を、平行、右上がり、右下がり等任意に設定す
ることができる。

【００２８】図３，図４に示すように、刈刃ハウジング
５１の左右前後の計４箇所に補助接地体であるローラ６
６を、高さ調節機構Ａを介して刈刃ハウジング５１に対
する高さを変更調節可能に配備してある。ハウジングか
ら前方又は後方に突設されたステー６７先端の縦ボス６
７ａに支持軸６８を嵌合支持し、その支持軸６８の下部
に各ローラ６６を左右向きの軸心Ｘで回転自在に支承し
てある。支持軸６８と縦ボス６７とは、これら両者に跨
がって挿入された横向きピン６９で相対連結固定される
とともに、その横向きピン６９が挿入可能なピン孔６８
ａを、支持軸６８の上下に複数箇所形成してあり、適宜
のピン孔６８ａを選ぶことでローラ６６の刈刃ハウジン
グ５１に対する高さ位置を変更設定できるようにしてあ
る。

【００２９】尚、高さ調節機構Ａを図５に示すように構
成しても良い。すなわち、支持軸６８と縦ボス６７ａと
に跨がる一対のボール７０，７０で、これら両者の相対
高さ位置を係止可能となるように、両端部が開先加工さ
れたピン孔６８ａと縦ボス６７の抜差し孔７１とを形成
するとともに、所定範囲において巻きバネ７２で下降付
勢される操作筒７３を縦ボス６７ａに外嵌して高さ調節
機構Ａを構成する。

【００３０】操作筒７３は、ボール７０を支持軸６８と
縦ボス６７ａとに跨がるように押し込む閉塞面７３ａ
と、ボール７０の支持軸６８からの抜け出しを許容する
開放面７３ｂと、これら両面７３ａ，７３ｂとをつなぐ
テーパ面７３ｃとを備えており、巻きバネ７２で下降付
勢された作用状態では支持軸６８と縦ボス６７ａとを相
対固定している。そして、巻きバネ７２の付勢力に抗し
て操作筒７３をスライド上昇させると、ボール７０，７
０が支持軸６８から抜け出せるので、この調節状態にお
いて支持軸６８を昇降スライドさせてローラ６６の高さ
調節が行えるのであり、それから操作筒７３を放せば巻
きバネ７２によってテーパ面７３ｃがボール７０，７０
を押し込んで作用状態に戻るのである。

【００３１】次に、モーア１による芝刈り状態を説明す
る。図３や図６（イ）に示すように、平地の場合では、
機体は左右方向で対地平行であり、刈刃ハウジング５１
と天秤アーム５８も互いに平行で水平姿勢にあり、所定
の高さで刈り作業できる。このとき、モーア１の重量は
左右の後部リンク５２，５２が受け持ち、ローラ６６に
は荷重が作用しないよう、地面から極僅か浮いた位置と
なるように、刈り高さ設定に応じてその支持高さも設定
するのである。

【００３２】従って、地面が部分的に盛り上がっている
ような場合には、ローラ６６が対地接触して乗り上がる
ので、所定の刈り高さを確保することができる、又、左
右の弾性機構６０，６０の作用により、走行振動等の多
少の外乱があってもモーア１が支点Ｐで不用意にローリ
ングしないので、刈り高さが乱れることはない。

【００３３】又、図６（ロ）に示すように、右上がりに
かなり傾斜した芝地では、重心移動によって傾斜下側の
車輪２，３が地面に食い込み、機体の左右傾斜角θが地
面の傾斜角βよりも大となるが、モーア１については、
傾斜左側の前後のローラ６６が対地接触して踏ん張るの
で、左側の巻きバネ６４が伸び、かつ、右側の巻きバネ
６４が縮んでローリングし、天秤アーム５８が対機体平
行姿勢であっても、刈刃ハウジング５１、即ちモーア１
は殆ど対地平行となる状態が維持されるようになる。

【００３４】従って、地面に左右傾斜があってもモーア
１の左右において刈り高さが異なることが解消され、従
来のような段刈り状態となることなく、ほぼ均一な刈り
高さ状態に仕上げられるようになる。

【図面の簡単な説明】

【図１】ミッドマウント乗用型芝刈機の側面図

【図２】ミッドマウント乗用型芝刈機の要部平面図

【図３】モーアのローリング支持構造を示す背面図

【図４】ローラの支持構造を示す一部切欠きの背面図

【図５】高さ調節機構の別構造を示す断面図

【図６】（イ）は平地での、（ロ）は左右傾斜地での機
体とモーアの左右傾斜姿勢の関係を示す背面図

【符号の説明】

１ モーア ５１ ハウジング ５２ リンク ５８ 天秤アーム ６０ 弾性機構 ６６ 補助接地体 Ｐ 支点

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 川畑 博志 大阪府堺市石津北町64番地 株式会社クボ タ堺製造所内

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 左右一対のリンクを介してモーアを昇降
   可能に機体に吊設してある芝刈機のモーア吊設装置であ
   って、 前記モーアのハウジングに、左右方向の中間部に設けた
   前後向き支点回りで揺動可能に天秤アームを枢支し、こ
   の天秤アームにおける前記支点の左右両側に前記一対の
   リンクを連結してある芝刈機のモーア吊設装置。
2. 【請求項２】 前記支点回りにおける前記天秤アームと
   前記ハウジングとが所定の相対姿勢となるように復帰付
   勢する弾性機構を備えてある請求項１に記載の芝刈機の
   モーア吊設装置。
3. 【請求項３】 前記ハンジングの左右両端近くに補助接
   地体を備えてある請求項１又は２に記載の芝刈機のモー
   ア吊設装置。
4. 【請求項４】 前記補助接地体の前記ハウジングに対す
   る取付け高さを可変設定可能に構成してある請求項３に
   記載の芝刈機のモーア吊設装置。