JPH11330574A - NbTi超電導多層板及びその製造方法 - Google Patents

NbTi超電導多層板及びその製造方法

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JPH11330574A
JPH11330574A JP11028710A JP2871099A JPH11330574A JP H11330574 A JPH11330574 A JP H11330574A JP 11028710 A JP11028710 A JP 11028710A JP 2871099 A JP2871099 A JP 2871099A JP H11330574 A JPH11330574 A JP H11330574A
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  • Superconductors And Manufacturing Methods Therefor (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 MRI、超電導リニアモーターカー等用の超
電導多層板の層構造と製造法であり、材料の臨界電流密
度を向上させ、圧延方向異方性を低減する。 【解決手段】 高導電率金属基材中に板状NbTi合金
層がNbまたはTaを介して配置されているNbTi超
電導多層板において、NbTi層中に板状に析出し、か
つ厚さが1nm以上、100nm以下、板厚方向の間隔が1
nm以上、500nm以下、体積分率が3%以上、50%以
下の常電導析出物が存在し、かつ板厚方向の断面のNb
Ti層及び高導電率金属層の厚さの変動係数(%)(=
(標準偏差/平均)×100)がそれぞれ30%以下で
あり、かつ各層の層厚の最も大きいところdmax と最も
小さいところdmin の比(dmin /dmax )が50%以
上であることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、MRI(磁気共鳴
医療画像診断装置)、超電導リニアモーターカー等の超
電導機器において主に磁気シールドとして使用される超
電導多層板の層構造及びその製造方法に関するものであ
り、多層板を構成するNbTi層、高導電率金属層の層
厚のばらつきが小さく、臨界電流密度が高く、しかも圧
延方向異方性の少ない超電導多層板及びその製造方法を
提供するものである。
【0002】
【従来の技術】MRIやリニアモーターカー等で使用さ
れる超電導多層板の超電導特性で最も重要な指標は、臨
界電流密度(以下Jcと記述)である。超電導多層板
は、特開平3−136400号公報で示されたように、
熱間圧延後に300〜450℃の温度で1回当たりの保
持時間が1〜168時間の熱処理と1回当たりの加工率
が30〜98%の冷間圧延を6回以下交互に繰り返した
後、300〜450℃の温度で1〜1000時間の最終
熱処理を施してNbTi中にα−Tiを析出させる方法
により製造される。超電導多層板はこのNbTi中に析
出したα−Tiによる磁束量子のピン止めにより実用レ
ベルのJcが得られる(低温工学第32巻第6号p.2
71〜280)。しかし、特開平3−136400号公
報で示された方法で作製した材料中のα−Tiは、板厚
方向に平たくつぶされたような楕円体の形状をしてお
り、大きさが数百nm大と磁束量子の大きさに比べて大き
いため効率的なピン止め点とはなりえず、Jc値は超電
導多芯線材のそれには劣る。
【0003】これに対し特開平9−310161号公報
に示したように、上記300〜450℃1〜1000時
間の最終熱処理の後に30〜90%の冷間圧延を施すこ
とにより、α−Tiを磁束量子をピン止めするのに適し
た大きさに変え、超電導多芯線材並みのJcまで向上さ
せる方法が考案されている。しかし、300〜450℃
1〜1000時間という熱処理の後に30〜90%の比
較的加工率の大きな加工を行うため、高導電率金属層と
超電導層(Nb,NbTi層)の圧延加工性が異なり、
圧延方向の層構造が特に乱れるという問題を引き起こし
ていた。圧延方向の層構造が乱れるため、時効熱処理後
の圧延による高Jc化において、圧延方向のJcの向上
は幅方向のJcの向上に比べて約半分程度と小さく、J
cの圧延方向異方性が助長されてしまうという問題があ
った。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】α−Tiは最終熱処理
後の圧延で薄く引き延ばされ、磁束量子をピン止めする
のに適したサイズ(厚さ数十nm程度)となっているにも
かかわらず、圧延方向の臨界電流密度が期待するほど向
上しないのは、圧延方向の層構造が乱れているために他
ならない。この層構造の乱れは、最終熱処理後のNbT
i層と高導電性金属層の硬度の差に起因する。実際、最
終熱処理後のNbTi層と高導電性金属層の硬度差はビ
ッカース硬度値でおよそ120ある場合も確認されてい
る。
【0005】本発明は、このような硬度差のある複数の
層を有する多層超電導材料の層構造の乱れを抑制する製
造方法及び層構造の乱れが抑制されたNbTi超電導多
層板を提供し、Jcが高くしかも圧延方向異方性の小さ
い材料を実現するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】第1の発明は、高導電率
金属基材中に板状NbTi合金層がNbを介して配置さ
れているNbTi超電導多層板において、NbTi超電
導多層板中のNbTi層中に、板面に平行に板状に析出
し、かつ厚さが1nm以上、100nm以下、板厚方向の間
隔が1nm以上、500nm以下、NbTi合金層全体に対
する体積分率が3%以上、50%以下の常電導析出物が
存在すること、及び板厚方向の断面のNbTi層及び高
導電率金属層の厚さの変動係数(%)(=(標準偏差/
平均)×100)がそれぞれ30%以下であり、かつ各
層の層厚の最も大きいところdmax と最も小さいところ
dmin の比(dmin /dmax )が50%以上であること
を特徴とするNbTi超電導多層板である。高導電率金
属とは、例えばCuやCu−10〜30重量%Ni−1
重量%Mn合金、Cu−2〜4重量%Ni−0.5〜
0.8重量%Si−0.2〜0.4重量%Zn合金のよ
うな合金を指す。
【0007】NbTi層中に侵入した磁束量子は、Nb
Ti層中に存在する常電導析出物によってピン止めさ
れ、大きな臨界電流密度Jcが得られる。常電導析出物
の厚さを1nm以上としたのは、これより小さいとNbT
iの超電導と常電導界面の領域の大きさよりも小さくな
りすぎて磁束量子のピン止めが充分にできないためであ
り、常電導析出物の厚さを100nm以下としたのは、こ
れより大きいと磁束量子の間隔よりも析出物の間隔が大
きくなり、常電導析出物中に磁束量子が何本も入って充
分なピン止めができないためである。
【0008】常電導析出物同士の間隔を1nm以上とした
のは、これより小さいと磁束量子の間隔にピン止めに寄
与しない常電導析出物が多く存在することになって、N
bTi超電導体の断面積をいたずらに減少することにな
るためであり、常電導析出物同士の間隔を500nm以下
としたのは、これ以上離れるとピン止めされない磁束量
子の数が多くなりすぎるからである。
【0009】常電導析出物のNbTi層中の体積分率を
3%以上としたのは、これよりも小さいと磁束量子を充
分ピン止めできないためであり、50%以下としたの
は、これよりも大きいと超電導の断面積が小さくなって
臨界電流密度Jcが上昇しても意味がなくなるためであ
る。
【0010】板厚方向の断面のNbTi層及び高導電率
金属層の厚さの変動係数(%)は、例えば次のようにし
て求める。まず超電導多層板の任意の場所の断面構造を
数箇所(最低3箇所)写真に撮り、図1のように板厚方
向に3箇所直線を引く。写真の大きさは、各層が充分識
別できる程度の大きさとする(例えば、総板厚1.0mm
のものならば100倍)。直線の真下にある各高導電率
金属層およびNbTi層の層の厚さを測定し、平均値と
標準偏差を計算し、変動係数(=(標準偏差/平均値)
×100)を求める。これを超電導多層板の圧延方向の
断面及び幅方向の断面についてそれぞれ行い変動係数
(%)を算出する。
【0011】変動係数(%)を30%以下としたのは3
0%を超えた場合、層の乱れが大きくなり充分高いJc
値が得られないためである。また、各層の層厚の最も大
きいところ(dmax )と最も小さいところ(dmin )の
比(dmin /dmax )を50%以上としたのは、この比
が50%よりも小さいと層のくびれによるJc値の低下
が生じるためである。
【0012】第2の発明は、第1の発明の製造方法に関
するものであって、少なくとも1層のNbTi合金と高
導電率金属が交互に積層され、かつ前記NbTi合金と
前記高導電率金属の間にNbまたはTaのバリヤー層が
存在するNbTi超電導多層板の製造方法であって、温
度500から1000℃で加工率30〜98%の熱間圧
延を施した後、加工率30〜98%で冷間圧延し、30
0〜450℃で1回当たりの保持時間が1〜168時間
の熱処理と1回当たりの加工率が30〜98%の冷間圧
延を1回以上6回以下交互に繰り返して板状または、箔
状とした後、300〜450℃の温度で保持時間が1〜
1000時間の熱処理を施した後、圧延方向に1.5kg
/mm2 〜15kg/mm2 の張力を掛けながら最終の冷間圧
延(加工率30〜90%)を施すことを特徴とするNb
Ti超電導多層板の製造方法である。
【0013】NbTi合金と高導電率金属を交互に積層
する理由は、超電導安定性を高めるためである。NbT
iは超電導状態においては電気抵抗はゼロであるが、何
らかの理由で部分的に常電導に転移すると、常電導状態
では逆に電気抵抗が高いため発熱し、常電導部分が拡大
して材料全体の超電導状態が一気に破れる現象が起こる
(クエンチ現象)。ところがNbTi材料に高導電性金
属が隣接した複合材料とすると、部分的な常電導転移が
起こっても、超電導材料に流れていた電流は高導電性金
属を経由して流れ、一旦常電導に転移した部分も超電導
状態に復帰することができ、超電導状態が安定に保たれ
るのである。
【0014】NbTi合金と高導電率金属の間にNbま
たはTaのバリヤー層を存在させる理由は、製造工程に
おける熱間圧延工程で銅等の高導電金属とNbTi中の
Tiが金属間化合物を形成させないようにするためであ
る。
【0015】熱間圧延時の加熱温度の下限を500℃と
したのは、500℃未満ではNbTi及びNbまたはT
aが充分軟化せず高導電率金属との密着性が不十分なた
めである。同上限を1000℃としたのは、1000℃
を超えると銅の融点に近く軟化しすぎるためである。熱
間圧延の加工率を30〜98%としたのは、30%未満
では温度が高くても充分な密着性が得られにくく、98
%を超えると以降の冷間加工率が小さくなりすぎるため
である。最初の冷間加工率を30〜98%とした理由
は、30%未満の加工率では充分な転位が導入されず、
最後の熱処理で析出するTi析出物の量が少なくなるた
めであり、上限を98%としたのは、98%を超えると
材料の一部または全体が破壊されて加工不良が生じるた
めである。以降の中間熱処理の温度を300〜450℃
としたのは、300℃未満ではTi析出物の析出速度が
小さすぎて時間がかかりすぎるためであり、450℃を
超えると析出物が粗大化して以降の冷間圧延に支障を来
すためである。熱処理1回当たりの保持時間を1〜16
8時間とするのは、1時間未満では析出量が不十分であ
り、168時間を超えると析出物が粗大化し、以降の冷
間加工に支障を来すためである。
【0016】析出の駆動力となる転位を多数導入し、充
分な量のTiを析出させるためには冷間圧延と熱処理を
交互に繰り返すことにより尚一層の効果が得られる。こ
の繰り返しを6回以下としたのは、6回を超えると各熱
処理間の冷間加工率を充分取れず析出量に対する効果が
飽和するためである。各熱処理間及び最終形状に至るま
での冷間加工率を30〜98%とする理由は、最初の冷
間圧延の場合と同じである。最後の熱処理は、途中の冷
間圧延と熱処理の繰り返しで析出したTiの密度をさら
に増大させるためである。この熱処理の温度範囲を30
0〜450℃としたのは、先に示した熱処理の場合と同
じである。また、保持時間を1〜1000時間としたの
は、1時間未満では析出量の増大の効果が得られず、1
000時間を超えると析出が飽和してしまうからであ
る。
【0017】本発明は、最後の熱処理の後の冷間圧延を
長手方向に1.5kg/mm2 〜15kg/mm2 の張力を掛け
ながら圧延を行うことを特徴としている。最後の熱処理
の後に冷間圧延を施すのは、300〜450℃1〜10
00時間までの熱処理で析出したTiの大きさが磁束量
子をピン止めして良好な超電導特性を得るためにはやや
大きすぎるので圧延により析出したTiを薄く延ばし磁
束量子の大きさと間隔に相応しくするためである。30
〜90%の圧延により、先に析出していた数百nm厚さの
Tiは、数十nmの厚さまで薄くなり磁束量子をピン止め
するのに適したサイズとなる。300〜450℃の温度
で保持時間が1〜1000時間の熱処理を施した後、N
bTi及びNbの層の硬さと高導電率金属層の硬さは、
ビッカース硬度で、それぞれ180〜220、65〜8
5と大きく異なるため、その後の工程で加工率30〜9
0%の冷間圧延を施すと各層の圧延性が異なり、層構造
が大きく乱れる。この冷間圧延の際に張力をかけると高
導電率金属層は弾性変形を受けて硬度が上昇する。張力
はNbTi、NbまたはTa層にとっては低い値である
ため、NbTi、NbまたはTa層の硬度の上昇は小さ
く、高導電率金属層の硬度のみ大きく上昇し、各層の硬
度差が縮小して圧延性が近似してくる。このようにして
張力をかけて圧延を行うと層構造の乱れが抑制される。
張力を1.5kg/mm2 以上としたのは、これよりも小さ
いと高導電率金属の硬度が上昇せずJcの向上幅がほと
んどないためであり、15kg/mm2 以下としたのは、こ
れよりも大きいとNbTi、NbまたはTa層の硬度の
上昇も大きくなり、高導電率金属層との硬度差が縮小せ
ずJcがあまり向上しないためである。
【0018】本発明が解決しようとする課題は、最終熱
処理後の冷間圧延の際に顕著となる層の乱れを抑制し、
健全な層構造を実現して高いJcを得るものである。本
発明者らはこの健全な層構造の実現に当たっては、最終
熱処理後の圧延だけでなく、最終熱処理の直前の冷間圧
延工程で層構造の乱れを抑制しておくことも重要である
ことを見いだし、第3及び第4、第5の発明をするに至
った。
【0019】第3の発明は、少なくとも1層のNbTi
合金と高導電率金属が交互に積層され、かつ前記NbT
i合金と前記高導電率金属の間にNbまたはTaのバリ
ヤー層が存在するNbTi超電導多層板の製造方法であ
って、温度500から1000℃で加工率30〜98%
の熱間圧延を施した後、加工率30〜98%で冷間圧延
し、300〜450℃で1回当たりの保持時間が1〜1
68時間の熱処理と1回当たりの加工率が30〜98%
の冷間圧延を1回以上6回以下交互に繰り返して板状ま
たは箔状とする際、該繰り返しにおける最後の冷間圧延
において、1パス当たりの圧下率が5%以上、30%以
下であるような冷間圧延を施した後、300〜450℃
の温度で保持時間が1〜1000時間の熱処理を施すこ
とを特徴とする請求項1記載のNbTi超電導多層板の
製造方法である。
【0020】最後の冷間圧延において、1パス当たりの
圧下率を高めに規定しているのは、硬度の異なる複数種
の金属層を一気に大きく塑性変形させ加工硬化させるこ
とにより各層の硬度差を際だたせなくし、層形状、ひい
てはJcを高める効果を得るためと、表面に近い層の層
厚と板厚の中心に近い層の層厚の差を小さくするためで
ある。圧下率を5%以上としたのは、5%未満だと層形
状の乱れが大きくJcの向上がほとんどないためであ
り、30%以下としたのは、30%を超えると幅方向の
端部と中心部、長手方向のロール入り側と出側等の箇所
で製品の板厚にばらつきが大きくなるためである。
【0021】第4の発明は、少なくとも1層のNbTi
合金と高導電率金属が交互に積層され、かつ前記NbT
i合金と前記高導電率金属の間にNbまたはTaのバリ
ヤー層が存在するNbTi超電導多層板の製造方法であ
って、温度500から1000℃で加工率30〜98%
の熱間圧延を施した後、加工率30〜98%で冷間圧延
し、300〜450℃で1回当たりの保持時間が1〜1
68時間の熱処理と1回当たりの加工率が30〜98%
の冷間圧延を1回以上6回以下交互に繰り返して板状ま
たは箔状とする際、該繰り返しにおける最後の冷間圧延
において、1パス当たりの圧下率が5%以上、30%以
下であるような冷間圧延を施した後、300〜450℃
の温度で保持時間が1〜1000時間の最終熱処理を施
し、さらに1パス当たりの圧下率が5%以上、30%以
下で最終熱処理後の冷間圧延を施すことを特徴とする請
求項1記載のNbTi超電導多層板の製造方法である。
【0022】最終熱処理後にトータルの加工率30〜9
0%の冷間圧延を施す理由は、第2の発明の説明と同じ
である。最終熱処理前後の冷間圧延において、1パス当
たりの圧下率を5%以上30%以下とした理由は第3の
発明の理由で述べた理由と同じである。最終熱処理後の
冷間圧延による層形状を乱さず高いJcを得るために
は、最終熱処理に入る前の材料の層形状を良好にしてお
くことが重要であるため、最終熱処理前後の冷間圧延の
際に1パス当たりの圧下率を5%以上30%以下と大き
く取っている。
【0023】第5の発明は、少なくとも1層のNbTi
合金と高導電率金属が交互に積層され、かつ前記NbT
i合金と前記高導電率金属の間にNbまたはTaのバリ
ヤー層が存在するNbTi超電導多層板の製造方法であ
って、温度500から1000℃で加工率30〜98%
の熱間圧延を施した後、加工率30〜98%で冷間圧延
し、300〜450℃で1回当たりの保持時間が1〜1
68時間の熱処理と1回当たりの加工率が30〜98%
の冷間圧延を1回以上6回以下交互に繰り返して板状ま
たは箔状とする際、該繰り返しにおける最後の冷間圧延
において、1パス当たりの圧下率が5%以上、30%以
下であるような冷間圧延を施した後、300〜450℃
の温度で保持時間が1〜1000時間の最終熱処理を施
し、さらに1パス当たりの圧下率が5%以上、30%以
下で最終熱処理後の冷間圧延を長手方向に1.5kg/mm
2 〜15kg/mm2 の張力を掛けながら圧延することを特
徴とする請求項1記載のNbTi超電導多層板の製造方
法である。
【0024】最終熱処理後にトータルの加工率30〜9
0%の冷間圧延を施す理由は第2の発明の説明で述べた
理由と同じである。最終熱処理前後の冷間圧延におい
て、1パス当たりの圧下率を5%以上30%以下とした
理由は第4の発明の説明で述べた理由と同じである。
1.5kg/mm2 〜15kg/mm2 の張力を掛けながら圧延
を行う理由は第2の発明に述べた理由と同じである。張
力と1パス当たりの圧下率を同時にコントロールするこ
とにより、層構造が極めて健全でJcが高いNbTi超
電導多層板を製造することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】[実施例1]最外層はCu層でそ
の厚さは約55μm、その中に厚さ約5.5μmのNb
Ti層30層と同じ厚さのCu層が交互に厚さ0.5μ
mのNb層を介して積層されている総厚0.5mmの超電
導多層板の本発明材No.1からNo.7と比較材N
o.8、No.9を作製した。
【0026】No.1(Cuマトリクス材):熱間圧延
(800℃1時間保定後、圧下率60%)→冷間圧延1
(圧下率50%)→熱処理1(400℃3時間保定)→
冷間圧延2(圧下率50%)→熱処理2(400℃3時
間保定)→冷間圧延3(圧下率50%)→熱処理3(4
00℃3時間保定)→冷間圧延4(圧下率50%)→熱
処理5(360℃336時間)→冷間圧延5(圧下率7
5%、張力2kg/mm2) No.2、3、4、5、6、7は上記No.1の製造工
程で冷間圧延5の圧延張力をそれぞれ4、6、8、1
0、12、14kg/mm2 と変化させて作製したものであ
る。一方、比較例のNo.8はNo.1の製造工程で冷
間圧延5のとき張力をかけないで製造したもの、No.
9はNo.1の製造工程で冷間圧延5のとき16kg/mm
2 の張力をかけて製造した材料である。
【0027】それぞれの材料の圧延方向(L方向)及び
幅方向(C方向)断面の写真(200倍)をそれぞれ3
箇所について撮影した。各写真の板厚方向に3本の直線
を引き、直線の真下にある各Cu層およびNbTi層の
層の厚さを測定した後、平均値と標準偏差を計算し、変
動係数を求めた。板厚方向の断面のNbTi層及びCu
層の厚さの変動係数(%)(=(標準偏差/平均)×1
00)と各層の層厚の最も大きいところ(dmax )と最
も小さいところ(dmin )の比(dmin /dmax )の最
低値を本発明材料の表1にそれぞれ示した。また、N
o.1からNo.9までの材料について臨界電流密度J
cを測定した。Jcとは各材料より採取した幅0.5m
m、長さ約50mmの試験片のほぼ中央部に10mmの間隔
で電圧検出端子を取り付け、端子間電圧が1μVとなる
まで流すことのできた電流値IcをNbTiの総断面積
で割った値のことである。5Tの磁場中におけるL方向
とC方向のJcの測定値を同じ表1中に示した。表中に
おける記号の意味は次の通りである。
【0028】TS:冷間圧延5における張力(kg/m
m2 )、NT−V:NbTi層の変動係数(%)、9本
の直線で測定したものの平均、NT−R:NbTi各層
の層厚の最も薄いところと最も厚いところの比(dmin
/dmax )の最低値(%)、CU−V:Cu層の変動係
数(%)、9本の直線で測定したものの平均、CU−
R:Cu各層の層厚の最も薄いところと最も厚いところ
の比(dmin /dmax )の最低値(%)、Jc:5Tの
磁場中におけるJc値、単位は、×104 A/cm2 、L:
圧延方向、C:幅方向。
【0029】[実施例2]最外層はCu層でその厚さは
約100μm、その中に厚さ約10μmのNbTi層3
0層と同じ厚さのCu層が交互に厚さ約1μmのNb層
を介して積層されている総厚1.0mmの超電導多層板の
本発明材No.10からNo.12と比較材No.13
を作製した。
【0030】No.10(Cu−10%Niマトリクス
材):熱間圧延(860℃1時間保定後、圧下率50
%)→冷間圧延1(圧下率60%)→熱処理1(340
℃6時間保定)→冷間圧延2(圧下率60%)→熱処理
2(340℃6時間保定)→冷間圧延3(トータル圧下
率60%、1パス当たり圧下率5%)→最終熱処理(3
40℃500時間保定) No.11、No.12は上記No.10の冷間圧延3
で1パス当たりの圧下率がそれぞれ10%、25%に変
化させて作製したもの。一方、比較例のNo.13はN
o.10の冷間圧延3で1パス当たりの圧下率が2%の
ものである。これらの材料の評価は、実施例1に述べた
のと同様な方法で行った。結果を表2に示す。
【0031】[実施例3]最外層はCu層でその厚さは
約30μm、その中に厚さ約3μmのNbTi層30層
と同じ厚さのCu層が交互に厚さ約0.3μmのNb層
を介して積層されている総厚0.3mmの超電導多層板の
本発明材No.14からNo.16と比較材No.17
を作製した。
【0032】No.14(Cuマトリクス材):熱間圧
延(860℃1時間保定後、圧下率50%)→冷間圧延
1(圧下率60%)→熱処理1(310℃10時間保
定)→冷間圧延2(圧下率60%)→熱処理2(310
℃10時間保定)→冷間圧延3(トータル圧下率60
%、1パス当たり圧下率10%)→最終熱処理(360
℃336時間保定)→冷間圧延4(トータル圧下率70
%、1パス当たり圧下率5%) No.15、No.16は上記No.14の冷間圧延4
で1パス当たりの圧下率がそれぞれ10%、25%に変
化させて作製したもの。一方、比較例のNo.17はN
o.14の冷間圧延4で1パス当たりの圧下率が2%の
ものである。これらの材料の評価は、実施例1に述べた
のと同様な方法で行った。結果を表3に示す。
【0033】[実施例4]最外層はCu層でその厚さは
約20μm、その中に厚さ約2μmのNbTi層30層
と同じ厚さのCu層が交互に厚さ約0.2μmのNb層
を介して積層されている総厚0.2mmの超電導多層板の
本発明材No.18からNo.20と比較材No.21
を作製した。
【0034】No.18(Cu−3Ni−0.6Si−
0.2Znマトリクス材):熱間圧延(830℃1時間
保定後、圧下率60%)→冷間圧延1(圧下率50%)
→熱処理1(370℃5時間保定)→冷間圧延2(圧下
率50%)→熱処理2(370℃5時間保定)→冷間圧
延3(トータル圧下率50%)→熱処理3(370℃5
時間保定)→冷間圧延4(トータル圧下率50%、1パ
ス当たり圧下率10%)→最終熱処理(360℃336
時間保定)→冷間圧延5(トータル圧下率80%、1パ
ス当たり圧下率5%、張力10kg/mm2 ) No.19、No.20は上記No.18の冷間圧延5
で1パス当たりの圧下率と張力がそれぞれ10%と8kg
/mm2 、25%と6kg/mm2 で作製したもの。一方、比
較例のNo.21はNo.18の冷間圧延5で1パス当
たりの圧下率が2%で張力ゼロのものである。これらの
材料の評価は、実施例1に述べたのと同様な方法で行っ
た。結果を表4に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
【表4】
【0039】
【発明の効果】以上説明した本発明によれば、表1に示
すように、最後の圧延で張力をかけることにより、Nb
Ti層及びCu層の厚さの変動係数(%)(=(標準偏
差/平均)×100)が30%以下であり、かつ各層の
層厚の最も大きいところ(dmax )と小さいところ(d
min )の比(dmin /dmax )が50%以上であるよう
なNbTi超電導多層板が製造でき、L方向のJc値
(Jc(L))が特に向上したことによって、C方向の
Jc値(Jc(C))との比(Jc(L)/Jc
(C))が、従来の約0.6から本発明では大きな値の
もので0.8までと約30%向上し、最後の圧延で張力
をかけなかった従来の場合と比較してJc値の圧延方向
異方性が顕著に減少した。
【0040】また、表2に示すように、最終熱処理前の
圧延において1パス当たりの圧下率を大きく取ることに
より、NbTi層及びCu層の厚さの変動係数(%)
(=(標準偏差/平均)×100)が20%程度であ
り、かつ各層の層厚の最も大きいところ(dmax )と小
さいところ(dmin )の比(dmin /dmax )が60%
前後であるようなNbTi超電導多層板が製造でき、L
方向のJc値(Jc(L))は1万〜2.4万A/cm2
上し、C方向のJc値(Jc(C))との比(Jc
(L)/Jc(C))は約10〜14%向上し、最終熱
処理前の圧延の圧下率が小さい従来の場合と比較してJ
c値の圧延方向異方性が減少した。ただし、最終熱処理
後の圧延を行った場合に比べ元々異方性は大きくないた
め、異方性の減少は表1、表3及び表4の場合に比べて
顕著ではない。
【0041】さらに、表3に示すように、最終熱処理前
後の圧延において1パス当たりの圧下率を大きく取るこ
とにより、NbTi層及びCu層の厚さの変動係数
(%)(=(標準偏差/平均)×100)が約26%以
下であり、かつ各層の層厚の最も大きいところ(dmax
)と小さいところ(dmin )の比(dmin /dmax )
が53%以上であるようなNbTi超電導多層板が製造
でき、L方向のJc値(Jc(L))が特に向上したこ
とによって、C方向のJc値(Jc(C))との比(J
c(L)/Jc(C))が、従来の0.64から本発明
では大きな値のもので0.78までと約22%向上し、
最終熱処理前後の圧延で大きい圧下率をかけなかった従
来の場合と比較してJc値の圧延方向異方性が顕著に減
少した。
【0042】また、表4に示すように、最終熱処理前後
の圧延において1パス当たりの圧下率を大きく取ること
と最後の圧延で張力をかけることにより、NbTi層及
びCu層の厚さの変動係数(%)(=(標準偏差/平
均)×100)が約24%以下であり、かつ各層の層厚
の最も大きいところ(dmax )と小さいところ(dmi
n)の比(dmin /dmax )が58%以上であるような
NbTi超電導多層板が製造でき、L方向のJc値(J
c(L))が特に向上したことによって、C方向のJc
値(Jc(C))との比(Jc(L)/Jc(C))
が、従来の0.59から本発明では大きな値のもので
0.8までと約36%向上し、最終熱処理前後の圧延で
大きい圧下率をかけず、かつ張力をかけなかった従来の
場合と比較してJc値の圧延方向異方性が顕著に減少し
た。
【図面の簡単な説明】
【図1】超電導多層板のL方向断面構造の写真を撮り、
板厚方向に3箇所直線を引いた例。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高導電率金属基材中に板状NbTi合金
    層がNbまたはTaを介して配置されているNbTi超
    電導多層板において、NbTi超電導多層板中のNbT
    i層中に、板面に平行に板状に析出し、かつ厚さが1nm
    以上、100nm以下、板厚方向の間隔が1nm以上、50
    0nm以下、NbTi合金層全体に対する体積分率が3%
    以上、50%以下の常電導析出物が存在すること、及び
    板厚方向の断面のNbTi層及び高導電率金属層の厚さ
    の変動係数(%)(=(標準偏差/平均)×100)が
    それぞれ30%以下であり、かつ各層の層厚の最も大き
    いところdmax と最も小さいところdmin の比(dmin
    /dmax )が50%以上であることを特徴とするNbT
    i超電導多層板。
  2. 【請求項2】 少なくとも1層のNbTi合金と高導電
    率金属が交互に積層され、かつ前記NbTi合金と前記
    高導電率金属の間にNbまたはTaのバリヤー層が存在
    するNbTi超電導多層板の製造方法であって、温度5
    00から1000℃で加工率30〜98%の熱間圧延を
    施した後、加工率30〜98%で冷間圧延し、300〜
    450℃で1回当たりの保持時間が1〜168時間の熱
    処理と1回当たりの加工率が30〜98%の冷間圧延を
    1回以上6回以下交互に繰り返して板状または箔状とし
    た後、300〜450℃の温度で保持時間が1〜100
    0時間の熱処理を施した後、圧延方向に1.5kg/mm2
    〜15kg/mm2 の張力を掛けながら加工率30〜90%
    の冷間圧延を施すことを特徴とする請求項1記載のNb
    Ti超電導多層板の製造方法。
  3. 【請求項3】 少なくとも1層のNbTi合金と高導電
    率金属が交互に積層され、かつ前記NbTi合金と前記
    高導電率金属の間にNbまたはTaのバリヤー層が存在
    するNbTi超電導多層板の製造方法であって、温度5
    00から1000℃で加工率30〜98%の熱間圧延を
    施した後、加工率30〜98%で冷間圧延し、300〜
    450℃で1回当たりの保持時間が1〜168時間の熱
    処理と1回当たりの加工率が30〜98%の冷間圧延を
    1回以上6回以下交互に繰り返して板状または箔状とす
    る際、該繰り返しにおける最後の冷間圧延において、1
    パス当たりの圧下率が5%以上、30%以下であるよう
    な冷間圧延を施した後、300〜450℃の温度で保持
    時間が1〜1000時間の熱処理を施すことを特徴とす
    る請求項1記載のNbTi超電導多層板の製造方法。
  4. 【請求項4】 少なくとも1層のNbTi合金と高導電
    率金属が交互に積層され、かつ前記NbTi合金と前記
    高導電率金属の間にNbまたはTaのバリヤー層が存在
    するNbTi超電導多層板の製造方法であって、温度5
    00から1000℃で加工率30〜98%の熱間圧延を
    施した後、加工率30〜98%で冷間圧延し、300〜
    450℃で1回当たりの保持時間が1〜168時間の熱
    処理と1回当たりの加工率が30〜98%の冷間圧延を
    1回以上6回以下交互に繰り返して板状または箔状とす
    る際、該繰り返しにおける最後の冷間圧延において、1
    パス当たりの圧下率が5%以上、30%以下であるよう
    な冷間圧延を施した後、300〜450℃の温度で保持
    時間が1〜1000時間の熱処理を施し、さらに1パス
    当たりの圧下率が5%以上、30%以下でトータルの加
    工率30〜90%の冷間圧延を施すことを特徴とする請
    求項1記載のNbTi超電導多層板の製造方法。
  5. 【請求項5】 少なくとも1層のNbTi合金と高導電
    率金属が交互に積層され、かつ前記NbTi合金と前記
    高導電率金属の間にNbまたはTaのバリヤー層が存在
    するNbTi超電導多層板の製造方法であって、温度5
    00から1000℃で加工率30〜98%の熱間圧延を
    施した後、加工率30〜98%で冷間圧延し、300〜
    450℃で1回当たりの保持時間が1〜168時間の熱
    処理と1回当たりの加工率が30〜98%の冷間圧延を
    1回以上6回以下交互に繰り返して板状または箔状とす
    る際、該繰り返しにおける最後の冷間圧延において、1
    パス当たりの圧下率が5%以上、30%以下であるよう
    な冷間圧延を施した後、300〜450℃の温度で保持
    時間が1〜1000時間の熱処理を施し、さらに1パス
    当たりの圧下率が5%以上、30%以下で圧延方向に
    1.5kg/mm2 〜15kg/mm2 の張力を掛けながら、最
    終の冷間圧延を施すことを特徴とする請求項1記載のN
    bTi超電導多層板の製造方法。
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