JP3757141B2 - Nb▲3▼Sn超電導線材の製造方法 - Google Patents

Nb▲3▼Sn超電導線材の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、Nb3Sn超電導線材を製造する方法に関するものであり、特に高分解能核磁気共鳴(NMR)分析装置に用いられる超電導マグネットの素材として有用なNb3Sn超電導線材を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電気抵抗ゼロで大電流を流すことができる超電導線材を用いることで、大電流送電や強磁場発生装置等の利用が広がりつつある。特に高分解能NMR分析装置に用いられる超電導マグネットは、大電流通電による強磁場発生と抵抗ゼロを利用して電源を用いない永久電流モードの運転を行うものであり、超電導現象を利用することで初めて実現可能な応用の典型である。また、NMR分析装置では、マグネットの発生磁場が高ければ高いほど分解能が向上するので、こうした分解能を高めるという観点から近年ますます高磁場化の傾向にある。
【0003】
超電導マグネットの素材として使用されている超電導線材としては、NbTi線材とNb3Sn線材の2種類の金属系超電導線材が一般的に知られている。これらの線材における臨界磁場(超電導性を維持できる最高磁場)は、NbTiで11T、Nb3Snで25Tであるので、中・低磁場用マグネットではNbTi線材で作製され、高磁場用マグネットではその外層をNbTi線材、内層をNb3Sn線材とする組み合わせで作製されるのが一般的である。
【0004】
図1は高磁場用超電導マグネットのコイル構成の一例を示す概略説明図であり、図中1a,1bはNb3Sn線材からなるコイル、2a,2bはNbTi線材からなるコイルの夫々を示す。図示するように、超電導マグネットのコイルは、クエンチ時の保護の為に、複数に分割して作製されている。また線材の使用量を減らすために、図1に示すように、夫々のコイルは配置位置によって大きさの適性化が図られており、内側のコイルになるほど高さが低くなる様に工夫されている。この様な断面構成を有する超電導マグネットを実際に励磁した場合、マグネットにおける各コイルの磁場の大きさに分布が生じて、一般的に超電導コイルの内側ほど磁場が高くなる傾向があることから、外側のコイル(前記2a,2b)には臨界磁場の低いNbTi線材を用い、内側のコイル(前記1a,1b)にはNb3Sn線材が用いられている。
【0005】
上記の様な超電導マグネットでは、図1に示した様に超電導接続が必要となるのであるが、NbTi−NbTi間、NbTi−Nb3Sn間、およびNb3Sn−Nb3Sn間においては、技術的に既に確立されており、実用化されている。また超電導マグネットを永久電流モードで運転するに当たって、必要とされる磁場安定性は、磁場変化が0.01ppm/hr以下である。換言すれば、永久電流モードを達成するには、定格磁場を発生した数百Aの通電状態で且つ少なくとも0.5T程度以上の磁場環境下において、1×10-12Ω以下の接続抵抗を実現する必要がある。そして前記図1に示した様な構成の超電導マグネットにおいて、NMR分析装置で実現されている最高磁場は、現在のところ900MHz程度である。
【0006】
ところが、1GHz(23.5T)の高磁場になると、Nb3Sn線材の限界レベルとなる。従って、超電導マグネットの最内層コイルには、臨界磁場がより高い酸化物超電導線材がその候補材料として有力視されている。しかしながら、酸化物超電導線材を用いたコイルでは、酸化物超電導線材の超電導接続技術が完成しているとは言えないこと、および酸化物超電導線材では通電時に微少抵抗が残ること等もあって、永久電流モードでの運転は容易に実現されないことが予測できる。こうしたことから、超電導接続技術が既に確立されているNb3Sn線材の性能を更に改善して、より高磁場における永久電流運転の実現が望されているのが実状である。
【0007】
これまで用いられてきたNb3Sn線材は、ブロンズ法によって製造されるのが一般的である。このブロンズ法は、Cu−Sn基合金(ブロンズ)マトリックス中に複数のNb製芯材を埋設し、これを安定化の為の銅(安定化銅)に埋設して伸線加工により上記芯材をフィラメントとなし、或はこのフイラメントを複数束ねて線材群となし、上記フイラメントまたは線材群を600〜800℃で熱処理することによりNb製のフィラメントに上記マトリックスのSnを拡散させてNb3Sn層を生成させる方法である。
【0008】
このブロンズ法で製造されたNb3Sn線材で、現在最高性能を実現している線材の熱処理反応後の断面を図2(図面代用顕微鏡写真)に示す。図2に示したNb3Sn線材では、上記線材群の表面にNbからなる拡散バリヤー層および安定化銅を配置し、その断面形状が平角線材となる様に加工したものである。尚、図2中AはCu−Sn基合金(以下、「ブロンズ」と呼ぶことがある)、Bはブロンズ中のSnがNbの中に拡散して形成されたNb3Sn、CはNbを夫々示している。
【0009】
上記の様なNb3Sn線材において、超電導になって電流を流せるのは上記Nb3Snの部分だけであり、その他の部分は超電導にはならないので、より多くの電流を流すことができるためには、Nb3Sn層が厚いほど良いことが分かる。また、Nb3Sn層の厚さを厚くするためには、ブロンズからのSnをNb中に拡散させれば良い。こうしたことからブロンズ法においては、ブロンズ中のSn含有量をできるだけ多くするという方法が採用されるのが一般的である。しかしながら、670〜730℃の熱処理温度領域(後述する)においてブロンズ中に固溶できるSn濃度には限界があり、こうしたことから従来のブロンズ法においては様々な問題があり、900MHz以上の磁場を実現できる線材が得られていないのが実情である。こうした状況を、図面に基づいて説明する。
【0010】
Cu−Sn二元系平衡状態図を、図3に示す(「非鉄金属材料学」;朝倉金属シリーズ、1981年発行、第43頁)。この状態図において、α相は加工性に優れているが、他のβ相やγ相は硬く加工性に乏しいので、伸線加工して線材にできるのは、α相のブロンズだけである。そして図3から明らかなように、α相におけるSnの固溶上限は15.8質量%程度である。従って、この含有量を超える量のSnを含むCu−Sn基合金を溶解して固化すると、いずれかの部分にβ相やγ相等の異相が析出してしまい、このブロンズを用いて押し出し加工や伸線加工を行うと、上記の様な析出物が起点となって割れや断線が生じるという不都合がある。
【0011】
上記の様にブロンズ中に固溶できるSn濃度には限界があるので、ブロンズ中のSnがなくなってしまうと、熱処理時間をそれ以上に如何に長くしても、Nb3Sn層の厚さをそれ以上厚くすることはできなくなる。また、Sn含有量を15.8%以下に抑えてα相だけからなるブロンズを用いたとしても、Sn含有量をできるだけ高くした状況下では、押し出し加工や引き抜き加工の際に割れや断線が頻発するという問題もある。こうした状況を回避するために、中間焼鈍を行うことも考えられるが、そうすると中間焼鈍を頻繁に行う必要が生じることになる。
【0012】
一方、Nb3Sn線材を製造する方法としては、上記ブロンズ法の他に、粉末法も提案されている。例えば、特開平5−28859号や同5−342932号には、Nb基合金パイプに、Cu粉とSn粉からなる圧粉体やCuSn合金粉末を原料粉末として充填した後、伸線加工して前記パイプ中の原料粉末をフィラメント状とし、この複数本を安定化の為の銅(安定化銅)内に埋設して複合体(ビレット)とした後、伸線加工および熱処理することによって、フィラメントパイプ中のSnとパイプであるNbとを反応させ、パイプの内側からNb3Sn層を形成する方法が提案されている。こうした方法では、原料粉末中のSn含有量を高くしてあるので、伸線加工後の熱処理によってNb製パイプの内側に形成されるNb3Sn層の厚さは、ブロンズ法の場合に比べて数倍に大きくすることができるのである。
【0013】
しかしながら、こうした粉末法においても、解決されるべき若干の問題が指摘されている。即ち、粉末法によってNb3Sn超電導線材を製造した場合には、熱処理によってSnがNb製パイプに拡散した後、元々原料粉末が充填されていた領域はボイド等の非超電導層となり、この無駄な領域の存在によって超伝導特性が低下することになる。また、原料粉末中のSn含有量を大きくしてあるので、高温押し出しを行おうとすると、Snが溶融してビレットから噴出してしまい超電導線材の製造自体ができなくなる。更に、上記方法ではその製造原理からして、生成されるNb3Sn層がNb製パイプの内側であるので、超電導線材同士を接続しようとするときには、必然的にNbを介在させた状態で接続することになって、良好な超電導接続が実現できない。
【0014】
上記の様な粉末法を改善して、超電導線材同士を超電導接続可能にするという観点から、前記ブロンズ法と粉末法を複合した方法(以下、「複合法」と呼ぶことがある)も提案されている。例えば、特開平−242742号には、Nb製パイプにブロンズ粉末を充填して、このパイプの複数本をブロンズに埋設して複合体(ビレット)とし、これを伸線した後熱処理することによって、Nb製パイプの両側(内側と外側)にNb3Sn層を形成する方法が提案されている。この方法は、Nb製パイプの両側にNb3Sn層を形成させてNb3Sn層の実質的断面積比を大きくすると共に、Nb製パイプの外側にNb3Sn層を形成することによって超電導接続を可能にしたものである。
【0015】
しかしながら、こうした複合法においても、Nb製パイプ内側表面に形成されるNb3Sn層の厚みが依然として薄いという問題がある。また、前記粉末法の場合と同様に、パイプ内の粉末が充填されていた領域が、反応熱処理後に非超電導相となって超電導特性の向上に寄与しないものとなる。更に、この方法では、Snの拡散をできるだけ多くするという観点から、ブロンズ中のSn含有量をできるだけ大きくする必要があるが、そうすると前述の如く、加工硬化現象が著しくなり、伸線加工において頻繁に中間焼鈍を施す必要が生じる。こうしたことから、この複合法においても、超電導線材の単位面積当たりに流せる電流値(臨界電流密度)は僅かに改善されるものの、その改善の程度は10%程度にとどまり、900MHz以上の磁場中で使用する線材としては不十分であるのが実情である。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこうした状況の下になされたものであって、その目的は、高い外部磁場においてもより高い臨界電流密度が実現できると共に良好な超電導接続を実現し、900MHz以上の超高磁場NMRマグネットの実現を可能にできるNb3Sn超電導線材を製造する為の有用な方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成し得た本発明の製造方法とは、NbまたはNb基合金からなるパイプに、Nb,SnおよびCuを構成元素として含有する混合粉末若しくは合金粉末を充填し、このパイプの複数本をCu−Sn基合金製部材に埋設し、このCu−Sn基合金製部材の表面に拡散バリアー層および安定化銅を配置して複合体とし、この複合体を押し出し加工および/または引き抜き加工した後熱処理する点に要旨を有するものである。
【0018】
また、本発明の上記目的は、NbまたはNb基合金からなるパイプに、Nb,SnおよびCuを構成元素として含有する混合粉末若しくは合金粉末を充填し、このパイプの複数本をCu−Sn基合金製部材に埋設して伸線加工した後、その複数本を束ねて線材群とし、この線材群の表面に拡散バリアー層および安定化銅を配置して複合体とし、この複合体を押し出し加工および/または引き抜き加工した後熱処理することによっても達成され、こうした構成を採用することによって超電導特性を更に向上したNb3Sn超電導線材が得られる。
【0019】
本発明方法においては、(a)前記混合粉末若しくは合金粉末中のNb含有量[Nb]とSn含有量[Sn]の比([Nb]/[Sn]:質量比)が5/6以上であること、(b)前記Cu−Sn基合金製部材中のSn含有量が10〜14質量%であること、(c)上記(b)の要件を満足するときに、前記複合体の加工に際して、静水圧押し出し加工を含んで行うと共に、この静水圧押し出し時の複合体の温度T(℃)と、前記Cu−Sn基合金中のSn含有量Z(%)とが下記(1)式または(2)式の関係を満足する様にして操業すること、等の要件を満足するのが好ましい。
T(℃)≦1050−19.4Z(但し、10≦Z<13のとき)……(1)T(℃)≦2089−99.3Z(但し、13≦Z≦14のとき)……(2)
【0020】
【発明の実施の形態】
前述の如く従来の複合法では、原料粉末からNbまたはNb基合金からなるパイプへのSnの拡散の後残存する粉末コアが非超電導相となるため、全断面積に占める超電導相が占める割合に限界がある。そこで本発明者らが、粉末法とブロンズ法を複合させた方法によってNb3Sn線材を製造するに当たり、超電導相をなすNb3Sn層を更に大きく形成するための要件について様々な角度から検討した。その結果、上記構成を採用すれば上記目的が見事に達成されることを見出し、本発明を完成した。以下、本発明が完成された経緯を説明しつつ、本発明の作用について説明する。
【0021】
上述の如く本発明方法では、Nb,SnおよびCuを構成元素として含有する混合粉末若しくは合金粉末を原料粉末として用い、この原料粉末をNbまたはNb基合金からなるパイプに充填し、このパイプの外側にCu−Sn基合金を配置して熱処理することを基本的な構成とするものであるが、こうした構成を採用することによって、パイプの両側にNb3Sn層を形成して超電導部分の断面積比を高くできると共に、超電導接続も容易に達成されたのである。
【0022】
本発明方法においては、上述の如くNb,SnおよびCuを構成元素として含有する混合粉末若しくは合金粉末を原料粉末として用いるものである。このうちSnは、基本的にNbまたはNb基合金製パイプ中のNbと反応してパイプの内側にNb3Sn層を形成するのに寄与するものであるが、それ以外の残余のSnは原料粉末中のNbと反応してパイプ中心領域にNb3Sn層を形成するのに寄与することになる。これによって、非超電導相である粉末コア部分の残存をできるだけ少なくすることができる。
【0023】
上記の反応機構からして、NbとSnの配合組成は、Snをできるだけリッチ側に選択するのが良く、こうした観点から原料粉末中のSn含有量[Sn]とNb含有量[Nb]の比([Sn]/[Nb]:質量比)を5/6以上とすることが好ましい。但し、上記比が大きくなり過ぎると、パイプ中のNb量が不足して、パイプ中心領域において未反応のSnが残存して超電導特性を低下させることになるので、上記比は11/6以下とすることが好ましい。
【0024】
一方、原料粉末中のCuは、Nb3Sn層生成の際における熱処理温度低減の為に混合されるものである。即ち、従来の粉末法においてCuが含有されていない場合の最適反応温度(熱処理温度)は800℃以上であり、一方ブロンズ法の最適反応温度は670〜730℃程度であり、800℃以上で熱処理すると結晶粒が大きくなり過ぎて超電導特性が劣化してしまうのであるが、原料粉末にCuを含有させることによって、パイプの内側と外側に形成されるNb3Sn層の最適生成反応温度(熱処理温度)を一致させ(即ち、670〜730℃程度)、Nb3Sn超電導線材における高特性が実現できるのである。こうした作用を発揮させるためには、原料粉末中のCu含有量は2質量%以上であることが好ましいが、Cuが多過ぎると、生成するNb3Snに対してCuが不純物として作用して特性が低下するので、その上限は7質量%程度にすることが好ましい。
【0025】
本発明で用いる原料粉末の形態については、特に限定するものではなく、例えば(a)Sn粉末、Nb粉末およびCu粉末の各粉末を混合した混合粉末、(b)Sn、NbおよびCuの各成分を予め合金化した合金化粉末、(c)上記成分のうちの2種類の成分を合金化した粉末と残りの成分の粉末を混合した粉末、等様々な形態を採用することができる。また、いずれの形態を採用するにしても、原料粉末の平均粒径は、熱処理時の反応性を高めるという観点から50μm以下のできるだけ微細なものを用いることが好ましい。
【0026】
本発明方法において超電導線材の前駆体(熱処理前の複合体)となるものは、上記の様な原料粉末を充填したパイプの複数本をCu−Sn基合金(ブロンズ)製部材に埋設し、このCu−Sn基合金製部材の表面に拡散バリアー層および安定化銅を配置したものが基本的な構成として挙げられるが、上記混合粉末を充填したパイプの複数本をCu−Sn基合金製部材に埋設して伸線加工した後、その複数本を束ねて線材群とし、この線材群の表面に拡散バリアー層および安定化銅を配置した複合体を用いることも有用である。
【0027】
上記の様な各複合体を用いることによって、Nb3Sn層はNbまたはNb基合金パイプの内側ばかりでなく、その外側にも形成されることになって、Nb3Sn線材の特性を更に向上させることができる。こうした構成の複合体を用いる場合には、Nb(パイプ)へのSn拡散をできるだけ促進するという観点から、上記Cu−Sn基合金中のSn含有量は固溶限内でできるだけ多い方が良いが、あまり多くなると加工性が悪くなり、頻繁に中間焼鈍を施す必要が生じる。こうした観点から、Cu−Sn基合金中のSn含有量は10〜14質量%程度が好ましい。換言すれば、本発明方法においては、Cu−Sn基合金中のSn含有量を10〜14質量%程度にしても、特性に優れたNb3Sn超電導線材が良好な加工性を維持したまま製造できることになるのである。また、ブロンズを併用した製造方法では、線材の特性をより向上させるという観点から、線材全断面積に占めるブロンズ部分の断面積比をできるだけ小さくするのが良いこことが分かるが、本発明方法では、パイプの内側と外側の両方からNb3Sn層が形成されていくので、上記断面積比を70%以下に容易に達成することができる。
【0028】
いずれの複合体を用いるにしても、本発明方法で用いる複合体は、その表面に拡散バリヤー層および安定化銅が配置される。このうち拡散バリヤー層は、熱処理時にSn等の不純物が安定化銅に拡散して安定化銅の抵抗値が大きくなることがないように配置されるものであり、例えばNbやTaによって構成される。また、安定化銅は、形成されたNb3Sn層を安定化させるために配置されるものであり、純銅によって構成される。
【0029】
上記の各種複合体は、その後押し出し加工や引き抜き加工によって線材化されるが、引き抜き加工だけでは加工前の複合体の長さと径に制約があり、これらが或る程度より大きなると引き抜き加工ができなくなるので、押し出し加工を含んで線材化することが好ましい。また、押し出し加工においても、長手方向のどの断面を見ても均一なフィラメント配置を実現するという観点からして、静水圧押し出し加工を行うことが好ましい。
【0030】
本発明者らが、静水圧押し出し時の温度T(℃)と、Cu−Sn基合金中のSn含有量Z(%)との関係について調査したところ、これらが下記(1)式または(2)式の関係を満足する様にして操業することが適切であることが判明した。即ち、静水圧押し出し加工において、下記(1)式または(2)式の関係を満足する様に加工することによって、押し出し加工中にブロンズ中に異相析出が生じることなく、割れもなく均一に加工されるという効果が発揮されたのである。
T(℃)≦1050−19.4Z (10≦Z<13のとき)……(1)
T(℃)≦2089−99.3Z (13≦Z≦14のとき)……(2)
【0031】
上記(1),(2)式が意味するところは、前記図3に示したCu−Sn二元系平衡状態図によって理解することができる。前記図3に示したように、Cu−Sn系合金においてSnの含有量が大きくなると、液相が低温で出現するようになるが、押し出し時にこの液相出現温度以上になると、ビレットからのSn漏出が起こって健全な加工ができない。実際に、液相出現温度より高い温度で押し出し加工を行うと、最外層Cu表面に水膨れが生じたようになり、凹凸が生じてしまったのである。また、単純に液相が出ない温度で押し出し加工をするだけでも不十分であり、押し出しまたはその後の加工において割れが生じるのである。前述の如く、α相は面心立方で加工が容易であり、Sn含有量が10〜14質量%程度であれば、他の相が出現しない温度で加工を行えば良い。これが、前記(1),(2)式の意味するところである。尚、ダイス伸線の途中でも焼鈍工程を入れることになるのであるが、このときの温度も前記(1),(3)式で示される温度以下にすることが好ましいことは勿論である。
【0032】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に徴して設計変形することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0033】
【実施例】
実施例1
NbとSnを質量比で1:1となるように混合して、2300℃以上に加熱して溶融し、この状態からガスアトマイズ法によって急冷してNbSnの合金粉末を作成した。この粉末を粉砕して微細化し、篩にかけて平均粒径:50μm以下の粉末を収集した。この合金粉末に、粒径50μm以下のCu粉末を、Nb:Sn:Cu=20:20:1となる様に混合して原料粉末とした。
【0034】
得られた原料粉末(後記図4の符号9)を、Tiを0.2質量%含有させた内径:4mm,外径:6mmのNb基合金パイプ(後記図4の符号8)に充填した。このように原料粉末を充填したNb合金製パイプを複数本準備して、図4に示すように、Cu−Sn合金部材(Sn含有量:13質量%)10に6mmφの孔11を複数開け、この孔11に前記パイプ8を挿入して埋設した。そして、この外側にNbシート7(拡散バリアー層)を配置した後、最外部に安定化銅6を配置して複合ビレットとし、このビレットを伸線加工を経て最終線径:1.3mmφの線材とした。このときの伸線加工ではダイスによる加工を行ったが、各伸線での減面率を15%以内として、4パスごとに475℃×1時間の焼鈍を行った。
【0035】
上記の様にして構成した複合体を、720℃で100時間熱処理して超電導線材とした。得られた線材の高磁場(外部磁場)における臨界電流密度(オーバオールの臨界電流密度:Jc)を測定した。その結果を、図5に示す。尚、図5には、従来のブロンズ法(ブロンズ中のSn含有量は15質量%)で報告されている臨界電流密度の最高値も合わせて示した。この結果から明らかなように、4.2K,20Tでの臨界電流密度Jcは従来法で作製した超電導線材と比べて約65%も改善されていることが分かる。
【0036】
上記で得られた超電導線材の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察したところ、本発明方法によって得られた線材では、(a)バイプの内側から反応によって生成したNb3Sn層部分、(b)充填した原料粉末に生成したNb3Sn層部分、および(c)Nb製パイプの外側のブロンズからパイプの内側に向って生成したNb3Sn層部分の3種類があり、これらの層が臨界電流密度の増大に寄与しているものと考えられた。
【0037】
ブロンズ中のSn含有量が15%以上の線材の場合には、加工硬化が著しく2パス毎に中間焼鈍が必要であったが、今回4パス毎に簡略できたのは、外側のブロンズのSn濃度を低減することができた効果である。また、原料粉末中にCuを含有することによって、720℃の熱処理であってもNb製パイプの両側からの生成反応温度を揃えることが可能になっているのである。
【0038】
尚、本発明方法によって作成された良好な特性を発揮するNb3Sn線材に、ブロンズ法線材と同じ超電導接続法を適用して接続部の接続抵抗を測定したところ、0.3×10-13Ωという非常に小さく理想的な超電導接続が実現できていることが判明した。これは、Nb製パイプの外側に形成されたNb3Snについては、ブロンズ法線材によって生成されるNb3Snと全く同じ構成が実現できていることが寄与しているものと考えられる。
【0039】
以上の方法によって、臨界電流密度を高くすることと、超電導接続を実現するという2つの目的が同時に達成されたのである。これらのことからして、本発明方法によって製造された超電導線材においては、パイプ内側・外側の両サイドにNb3Sn層が形成されていることにより、全断面積に占める超電導部分の有効断面積が増加したためであると考えることができた。
【0040】
実施例2
上記実施例1においては、引き抜きだけでの伸線であるので、伸線前の複合ロッドの長さと径には制限があり、或る長さ以上の線材を製造することはできない。本発明者らは、こうした点を克服するために、次の様な実験を行った。
【0041】
まず、実施例1と同様にして、前記図4に示したNbシートの内側に相当するブロンズ複合ロッド(前記参照符号8〜11)を準備した。次に、このロッドを伸線加工して最終的に対辺距離が5mmの六角材10aとした。これを50mmの長さに定尺切断し、これらを束ねて図6に示すように複合化した。即ち、上記六角材10aを束ねた外側にNbシート(拡散バリアー層)7を配置した後、最外部に安定化銅6を配置して複合ビレットとした。そして、この複合ビレットを、温度T(℃)で静水圧押し出しし、その後ダイス伸線を経て最終線径:1.3mmφの線材とした。本発明者らは、このときの静水圧押し出し時の温度T(℃)と、Cu−Sn基合金中のSn含有量Z(%)との関係について調査したところ、これらが前記(1)式または(2)式の関係を満足する様に操業するのが適切であることが分かった。
【0042】
以上の工程を経て、フイラメント数:28000本、線径:1.3mmの多芯線を作製した。そして、この多芯線を720℃で100時間熱処理した試料の高磁場臨界電流密度を前記図5に併記した。この結果から明らかなように、4.2K,20Tでの臨界電流密度Jcは従来法で作製した超電導線材と比べて2倍以上の特性が実現されていることが分かる。
【0043】
上記で得られた超電導線材の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察したところ、本発明方法によって得られた線材では、上記実施例1と同様に、(a)バイプの内側から反応によって生成したNb3Sn層部分、(b)充填した原料粉末に生成したNb3Sn層部分、および(c)Nb製パイプの外側のブロンズからパイプの内側に向って生成したNb3Sn層部分の3種類があり、これらの層が臨界電流密度の増大に寄与しているものと考えられた。
【0044】
尚、本発明方法によって作成された良好な特性を発揮するNb3Sn線材に、ブロンズ法線材と同じ超電導接続法を適用して接続部の接続抵抗を測定したところ、1.5×10-14Ωという非常に小さく理想的な超電導接続が実現できていることが判明した。これは、上記実施例1と同様に、Nb製パイプの外側に形成されたNb3Snについては、ブロンズ法線材によって生成されるNb3Snと全く同じ構成が実現できていることが寄与しているものと考えられる。
【0045】
【発明の効果】
本発明は以上の様に構成されており、高い外部磁場においてもより高い臨界電流密度が実現できると共に良好な超電導接続を実現し、900MHz以上の超高磁場NMRマグネットの実現を可能にする超電導線材が実現できた。この様な線材では、強磁場で永久電流モード動作が要求される高性能超電導マグネットにおいて、従来の金属系超電導マグネットよりも更に優れた超電導マグネットの製作が期待でき、その他の永久電流モードを必要とする超電導マグネット応用においても極めて有利となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】高磁場超電導マグネットのコイル構成の一例を示す概略説明図である。
【図2】ブロンズ法によって製造されたNb3Sn超電導線材の断面を示す図面代用顕微鏡写真である。
【図3】Cu−Sn二元系平衡状態図である。
【図4】実施例1で用いた複合体の構成を示す概略説明図である。
【図5】各実施例1、2で製造されたNb3Sn超電導線材の特性を比較して示したグラフである。
【図6】
実施例2で用いた複合体の構成を示す概略説明図である。
【符号の説明】
1a,1b Nb3Sn線材からなるコイル
2a,2b NbTi線材からなるコイル
6 安定化銅
7 Nbシート(拡散バリヤー層)
8 Nb基合金パイプ
9 原料粉末
10 Cu−Sn合金部材
11 孔

Claims (5)

  1. NbまたはNb基合金からなるパイプに、Nb,SnおよびCuを構成元素として含有する混合粉末若しくは合金粉末を充填し、このパイプの複数本をCu−Sn基合金製部材に埋設し、このCu−Sn基合金製部材の表面に拡散バリアー層および安定化銅を配置して複合体とし、この複合体を押し出し加工および/または引き抜き加工した後熱処理することを特徴とするNb3Sn超電導線材の製造方法。
  2. NbまたはNb基合金からなるパイプに、Nb,SnおよびCuを構成元素として含有する混合粉末若しくは合金粉末を充填し、このパイプの複数本をCu−Sn基合金製部材に埋設して伸線加工した後、その複数本を束ねて線材群とし、この線材群の表面に拡散バリアー層および安定化銅を配置して複合体とし、この複合体を押し出し加工および/または引き抜き加工した後熱処理することを特徴とするNb3Sn超電導線材の製造方法。
  3. 前記混合粉末若しくは合金粉末中のSnの含有量[Sn]とNb含有量[Nb]との比([Sn]/[Nb]:質量比)が5/6以上である請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記Cu−Sn基合金製部材中のSn含有量が10〜14質量%である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 前記複合体の加工に際して、静水圧押し出し加工を含んで行うと共に、この静水圧押し出し時の複合体の温度T(℃)と、前記Cu−Sn基合金中のSn含有量Z(%)とが下記(1)式または(2)式の関係を満足する様にして操業する請求項4に記載の製造方法。
    T(℃)≦1050−19.4Z(但し、10≦Z<13のとき)……(1)
    T(℃)≦2089−99.3Z(但し、13≦Z≦14のとき)……(2)
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