JP4113031B2 - NbTi超電導多層板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、MRI(磁気共鳴医療用画像診断装置)、超電導リニアモーターカー等の強力な磁場を必要とする機器で使用される超電導機器等に対して外部から印加される磁場を遮蔽したり、超電導機器が発生する磁場の漏洩範囲を抑制する磁気シールド材として使用されるNbTi超電導多層板に関する。
【0002】
【従来の技術】
MRIや超電導リニアモーターカー等において磁気シールド材として使用されるNbTi超電導多層板の超電導特性において、最も重要な指標は臨界電流密度(以下、Jcという)である。Jcはこれ以下の電流密度であれば超電導状態が維持される最大の電流密度である。超電導材をある大きさの磁場中に置くと、その超電導材には磁場を打ち消す向きに遮蔽電流が受動的に流れ、外部の磁場の超電導材への侵入を防止し、磁場をシールドすることができる。このとき超電導体中には外部の磁場に対して垂直であり、Jcに相当した大きさの電流が流れる。即ちJcが高ければ、より大きな磁場のシールドが可能である。
【0003】
このJcは、NbTi超電導多層板の場合、NbTi層中にTiの常電導析出物を析出させることによって高めることができる。このTi析出物は、超電導体中に量子化されて侵入した磁束量子を捕捉するピン止め点として働く。磁束量子のピン止め力がローレンツ力に打ち勝っている間、超電導体中に超電導電流が流れるが、磁場や電流の増加によりローレンツ力が増大しピン止め力よりも大きくなると、磁束量子のピン止めが外れ一斉に動き出し、その結果発熱が生じ超電導状態が破れる。磁束量子の直径に相当する大きさはおよそ10nmであり、この磁束量子は1T(テスラ)の磁場中で49nm、5Tの磁場中で22nmの間隔をもって三角格子状に侵入する。したがって大きなピン止め力を得るためには、大きさ10〜数十nmの大きさのTi析出物を20〜50nm間隔で分布させることが望ましい。
【0004】
このようなTi析出物は、特許文献1及び特許文献2に開示されているように、熱間圧延後300〜450℃の温度で1回あたりの保持時間が1〜168時間である熱処理と、1回当たりの加工率が30〜98%の冷間圧延を6回以下交互に繰り返した後、300〜450℃の温度で1〜1000時間の最終熱処理を施すことにより析出させることができるが、複雑かつ長期の工程を要するものであった。また、圧延方向に垂直に電流を流す場合に得られるJcに比べ、圧延方向に平行に電流を流す場合に得られるJcは30%以上小さいという問題があった。
【0005】
これは、冷間圧延の途中で300〜450℃の熱処理が繰り返されることにより、高導電性金属層は軟化するがNbTi層は軟化しないため、高導電性金属層とNbTi層の硬度差が大きくなり、各層が均一に圧延されず圧延方向断面の層形状が悪化することによるものである。
【0006】
NbTi多層板は、主に円筒に深絞り加工され、磁気シールド体として使用される。このとき印加される磁場は円筒の軸と平行な場合が多い。図1に示すように、NbTi多層板1を円筒3に深絞り加工する場合、磁気シールド体には、図1の圧延方向を示す縞模様2のような加工の流れが生じている。そのため、磁気シールド体である円筒の軸に平行な磁場が外部から印加されると、円筒の部位によって、磁場が圧延方向に平行な部分もあれば、圧延方向に対して任意の角度になる部分もある。このときJcに圧延方向による異方性があり、例えば圧延方向でのJcの絶対値が最も低い場合、圧延方向にのみJcと同等のシールド電流が流れることになり、高いシールド性能が得られない。
【0007】
また、製造時間を短縮するために、NbTi合金フィラメント中のTi含有量を50〜60mass%としたNbTi合金超電導線材の製造方法が特許文献3に開示されている。しかし、特許文献3は超電導線材を対象とした製造方法であり、圧延方向にのみ電流を流すものである。即ち、超電導多層板とした際の、圧延方向に平行な方向と垂直な方向のJcの異方性を軽減することについては記載されていない。また超電導線材は、99.99%以上の強い減面加工を施す場合以外は熱処理が2回必要であること、及び最終の熱処理の後に70%以下又は50%以下の減面加工が必須であるなど、工程数は依然多い。
【0008】
【特許文献1】
特開平9−310161号公報
【特許文献2】
特開平9−283812号公報
【特許文献3】
特開平9−63371号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、圧延方向に平行な方向と垂直な方向のJcの異方性を軽減した実用レベルのJcを有するNbTi超電導多層板を、短時間の熱処理時間、工程数により得ること、及び熱処理時間の延長により極めて高いJcを有するNbTi超電導多層板と製造方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、NbTi超電導多層板のNbTi層のTi含有量や熱処理温度及び時間がTi析出物の量や大きさに及ぼす影響について鋭意研究を重ねた。その結果、NbTiの組成の最適化により、製造工程の短縮が可能であり、圧延方向に平行な方向と垂直な方向のJcの異方性が軽減されていること、また長時間の最終熱処理を施すことにより、Jcが著しく向上することを見出した。
【0011】
本発明はかかる知見に基づいて完成させたものであり、その要旨とするところは以下のとおりである。
(1) Nb層又はTa層を介してNbTi層と高導電性金属層が交互に2層以上積層した構造を有するNbTi超電導多層板において、前記NbTi層のTi含有量が50〜65mass%であり、かつ圧延方向に平行な厚さ方向の断面にTiからなる厚さ20nm以下の常電導相が面積率で5.5%以上存在し、圧延方向の断面における前記NbTi層の厚さの変動係数が30%以下であることを特徴とするNbTi超電導多層板。
(2) Ti含有量が50〜65mass%のNbTi板と高導電性金属板をNb又はTa板を介して交互に積層し、高導電性金属板からなる箱に挿入して1.33×10-5〜1.33×10-1N/m2 に減圧されたチャンバー内で密閉し、温度750〜950℃に加熱して加工率50〜98%の熱間圧延を施した後、加工率95〜99.5%で冷間圧延し、300〜380℃の温度で保持時間が100〜1200時間の熱処理を施すことを特徴とする前記(1)記載のNbTi超電導多層板の製造方法。
【0012】
【発明の実施の形態】
超電導の上部臨界磁場(以下、Bc2という)は超電導を維持できる最大の磁場であり、これを超えると超電導状態が破れる。Bc2はNbTiの組成で決まる物理的定数であるが、一方、JcはNbTi中に量子化磁束をピン止めするTi析出物のサイズや量によって決まる。
【0013】
磁気シールド材は磁場の発生源からある程度の距離があるため、超電導線材に比べれば強磁場下に置かれる場合は少なく、NbTiのBc2が最大値の11.5Tになるように、Ti含有量を45〜47mass%とする必要性はなく、実際に磁場中に置かれる場合でも高々5〜6T程度である。したがって、Bc2が11.5Tに比べ低めであってもJcの大きさが十分であれば、磁気シールド材として十分に機能する。このような実用的なレベルのJcは、NbTi超電導多層板に平行に5Tの磁場を印加した場合、Jcが1000A/mm2 以上となるものである。
【0014】
NbTi超電導多層板を深絞り加工により超電導磁気シールド円筒として利用する際には、外部の磁場は円筒の軸方向に印加されることが多く、この場合、外部の磁場はNbTi超電導多層板の厚さ方向の断面に垂直に印加される。
図2に示すように、NbTi多層板4に平行に磁場が侵入した際に、有効に量子化磁束6をピン止めできるようにするためには、NbTi層4の厚さ方向の断面において厚さ8が20nm以下のTi析出物5を面積率で5.5%以上析出させることが有効であることがわかった。特に圧延方向7のJcを高め、Jcの圧延方向異方性を低減するためには、圧延方向に平行な厚さ方向の断面において、厚さ20nm以下のTi析出物を面積率で5.5%以上析出させることが有効であることがわかった。
【0015】
更に本発明者は、NbTi層のTi析出物の生成に及ぼすTi含有量の影響について検討を行った。その結果、Ti含有量を50〜65mass%とすることにより、熱処理を簡略化しても、NbTi層の圧延方向に平行な厚さ方向の断面において、厚さ20nm以下のTi析出物を面積率で5.5%以上析出させることが可能であることがわかった。また、このようなNbTi超電導多層板で磁気シールド円筒を作製したところ、外部からの5Tの印加磁場を円筒内ではおよそ4.5Tに低減することができた。
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
NbTi中のTi含有量を50%以上にすると、120時間以上熱処理を行えば、NbTi層の厚さ方向の断面において、厚さ20nm以下のTi析出物を面積率で5.5%以上析出させることができる。一方、Ti含有量が65%を超えるとBc2が8Tを下回り、同時にJcも低下する。したがって、NbTi層におけるTi含有量を50〜65%の範囲とした。製品におけるNbTi層中のTi量は、NbTi多層板を10%程度の硝酸溶液に最外層の銅が溶けるまで浸漬し、NbTi層を露出させ、オージェ電子分光又は二次イオン質量分析法によって測定することができる。なお、NbTi層の残部はNb及び不可避的不純物からなり、不可避的不純物として、1000ppm以下のTa,O、200ppm以下のMo,Fe,Zr,Si,C等を含む。
【0017】
本発明のNbTi層は、常電導相としてTi析出物を有する。Ti析出物の形状は、直方体、楕円体、球形の何れでも構わないが、直方体形状であることが多い。Ti析出物の厚さは、NbTi層の厚さ方向の断面をSEMやTEM等で観察した際に見られるTi析出物の断面の厚さを指す。Ti析出物の形状がスラブ状の場合は高さ、楕円体の場合は短径、球形の場合は直径である。
【0018】
本発明において、NbTi層の圧延方向に平行な厚さ方向の断面において、厚さ20nm以下のTi析出物の析出量を規定することが必要である。これは、20nmを超えるTi析出物は量子化磁束を有効にピン止めすることが困難であり、このようなTi析出物の比率が増えてもJcはあまり向上しないからである。即ち、NbTi層の厚さ方向の断面において、厚さ20nmを超えるTi析出物は、析出量の測定において母相と同等として取り扱う。圧延方向に平行な厚さ方向の断面におけるTi析出物の厚さと析出量を規定したのは、NbTi多層板に平行に磁場が印加された際、圧延方向のJcが、圧延方向に平行な厚さ方向の断面におけるTi析出物の厚さによって決まるためである。
【0019】
なお、NbTi多層板の厚さ方向に磁場が印加される場合には、NbTi層の圧延方向に平行な厚さ方向の断面において、Ti析出物の幅が20nm以下であることが好ましい。また、NbTi多層板を円筒に深絞り加工して用いる場合には、圧延方向に垂直に磁場が印加されることがあり、NbTi層の圧延方向に平行な厚さ方向の断面におけるTi析出物の厚さ及び幅も20nm以下であることが好ましい。
【0020】
厚さ20nm以下のTi析出物の量は多いほど量子化磁束をピン止めする力が強くなりJcは向上するが、超電導部分の断面積が減少し結果的に超電導層部分を流れる電流が減少してしまう。5Tの印加磁場において1000A/mm2 以上のJcを得るためには、NbTi層の圧延方向に平行な厚さ方向の断面において、厚さ20nm以下の微細なサイズのTi析出物が面積率で5.5%以上析出していることが必要であり、面積率で15〜30%析出していることが好ましい。ここでTi析出物の比率は、体積分率の正確な測定が困難であるため、NbTi層の厚さ方向の断面における面積率とした。
【0021】
NbTi層の圧延方向に平行な厚さ方向の断面におけるTi析出物の面積率は以下のように測定する。NbTi多層板から圧延方向に平行な厚さ方向の断面における幅が約1.5mmの試料を、長さを約5mmとしてを切出し、厚さを約1mmに調整し、外径3mm、内径1.9mmの銅のパイプに挿入し、樹脂で固め、約0.5mmの厚さにスライスし、これを厚さ約100μmまで研磨した後、中央部分をさらに研磨して凹状にくぼませ厚さ約10μmとし、さらに中央部に穴があくまでアルゴンイオンシンニングを行い穴の周りを観察する。
【0022】
このようにして作製した試料を透過型電子顕微鏡(以下、TEMという)で観察し、NbTi層部分を10万倍の倍率で撮影し、1μm×1.5μmの領域の写真からTi析出物の面積を測定する。Ti析出物は、NbTi部分に比べ白く見えるため判別が可能であるが、TiかNbTiかの判別がつきにくい場合は、エネルギー分散型X線検出法(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy、以下、EDXという)により分析して判別する。
【0023】
Ti析出物の面積率は、1μm×1.5μmの領域からTi析出物のある部分とNbTi部分の2つに分けて、例えば前者を黒、後者を白に塗り分けし、画像解析装置によって厚さが20nm以下のTi析出物の面積を合計し、測定した全面積で除し、百分率を算出する。試料数はNbTi多層板の任意の3箇所から採取し、それぞれ3箇所以上の視野を観察することが好ましい。なお、本発明において、Ti析出物の厚さの検出限界は5nm以上である。
【0024】
次に、Nb層又はTa層を介してNbTi合金層と高導電性金属層が交互に2層以上積層した構造とするのは、超電導安定性を高めるためであり、超電導状態を破れ難くするためである。NbTiと高導電性金属層の複合体となっていれば、超電導が部分的に破れても電流が一時的に高導電性金属層を流れ、その間に超電導状態を復帰することができる。Nb層又はTa層を介してNbTi合金層と高導電性金属層を積層するのは、製造工程における加熱時にNbTi中のTiが拡散して高導電性金属層と金属間化合物を作り加工性に影響を及ぼすのを防ぐためである。
【0025】
Nb層は純度99%以上、0.5%以下のTaと100ppm以下のFe,Ni,Ti,H,N,C,Oを不純物として含んでも構わない。Nb層の替わりにTa層を使用することができる。Ta層は純度99%以上、0.5%以下のNbと100ppm以下のFe,Ni,Ti,H,N,C,Oを不純物として含んでも構わない。Nb層、Ta層の厚さは、熱処理を施す段階で0.1〜5μmであることが好ましい。
【0026】
高導電性金属としては、銅や銅合金が適している。純銅では、JISH3510やJISH3100、銅合金ではCu−10%NiやCu−30%Niが適している。厚さは、0.1〜5μmであることが好ましい。
【0027】
NbTiと高導電性金属層の層数としては、あまり少なすぎるとNbTiの断面積を確保するためNbTi層の厚さが厚くなりすぎて超電導安定性が損なわれるし、多くしすぎると均一な加工が困難になるため、NbTi層は25〜40層であることが好ましい。超電導安定性が確保できるNbTi層の厚さは、多層板の最終板厚において1〜15μmが好ましい。また、NbTi層が直接液体ヘリウムなどの冷媒に接触する場合に比べ、最外層が高導電性金属層である場合の方がNbTi層を冷却する効率が高いため好ましい。
【0028】
さらにJcの圧延方向での異方性を軽減するためには、NbTi超電導多層板の圧延方向に平行な厚さ方向の断面において、NbTi層の層形状が均一であることが必要である。層形状の均一性を示す指標を、NbTi層の厚さの変動係数とした。このNbTi層の厚さの変動係数が30%以下であれば、層形状は均一であり、圧延方向に垂直なJcに対する圧延方向に平行なJcの低下を30%未満に低減することができる。NbTi層の厚さの変動係数は小さいほど好ましいが、ゼロとなることは有り得ず、層形状がかなり均一な場合でも実際には5%を下回らない。このような均一な層形状を有することにより、圧延方向に垂直に電流を流す場合に得られるJcと圧延方向に平行に電流を流す場合に得られるJcの差は減少し、その比は100/70よりも小さくすることができる。
【0029】
なお、NbTi層の厚さの変動係数は、圧延方向に平行な厚さ方向の断面の組織写真において板厚方向に板面に垂直な直線を引き、直線と各NbTi層が交わる点の間の距離を測定することにより求める。測定結果より、平均値及び標準偏差を求め変動係数(=標準偏差/平均値×100)を求める。NbTi層の厚さを測定する箇所は製品における任意の場所から2点以上とることが好ましい。
【0030】
次に製造方法について説明する。
本発明において、NbTiのTi含有量を増やすことにより、NbTi層の厚さ方向の断面において、厚さ20nm以下の微細なTi析出物を、適正な熱処理温度ならば短時間で析出させることができる。
まず、本発明のTi含有量が50〜65mass%のNbTiは、Ti含有量にあわせてスポンジチタンの分量を調整したTiとNbを消耗電極式アーク溶解法や電子ビーム溶解法により溶解する。これを高導電性金属板からなる箱に挿入して減圧したチャンバー内で密閉し、熱間鍛造、熱間圧延、冷間圧延し、厚さ0.1〜3mmのNbTi板とする。
【0031】
高導電性金属板からなる箱は、例えばJISH3100の純銅で作製することが好ましい。箱のサイズは、厚さ5〜20mm、内のりの幅30mm〜1m、内のりの長さ30mm〜1mとすることが好ましい。この箱の中に、Ti含有量が50〜65mass%の板厚0.1〜3mmのNbTi板と板厚0.1〜3mmの純銅板を板厚0.01〜0.5mmのNb又はTa板を介して交互に入れ、該箱全体が入る真空チャンバーの中で、純銅板の蓋により該箱をエレクトロンビーム溶接により封止する。箱の中を十分に減圧するため、蓋を載せる部分に細い溝を掘っておくと良い。
箱の中を十分に減圧するためには、チャンバー内の真空度は、1.33×10-5〜1.33×10-1N/m2 であることが必要である。
【0032】
熱間圧延における加熱温度は、750℃未満ではNbTi合金の熱間変形抵抗が高く、圧延時に層形状が著しく乱れ、Jcが低下する。950℃を超えるとNbTiの粒径が粗大化し高導電金属層に比べ著しく軟化するため、同じく圧延時に層形状が乱れ、Jcが低下する。したがって、熱間圧延の加熱温度は750〜950℃の範囲とする必要があり、NbTi層も高導電性金属層も同程度に軟化する800〜900℃が好ましい。
【0033】
熱間圧延時の加工率を50〜98%としたのは、50%未満ではNbTi層とNb層及びCu層とNb層の接合が不十分となるためであり、98%超では冷間加工の加工代が小さくなりすぎて後工程で十分なTiを析出させることができないためである。熱間圧延の加工率は60〜70%程度が好ましい。
【0034】
熱間圧延後、冷間圧延を行うのは、冷間圧延において材料中に歪を多く導入することにより最終熱処理で量子化磁束のピン止めに適した大きさのTiをより多く析出させるためである。
冷間圧延の加工率を95〜99.5%としたのは、95%未満ではNbTi層中に十分な歪を蓄積させることができず、最終熱処理で量子化磁束のピン止めに適したサイズのTi析出物を十分析出させることができないためであり、99.5%超では加工率が高すぎてNbTi層が加工硬化し高導電性金属層との硬度差が顕著となって層形状を乱し、Jcを低下させるためである。冷間圧延の加工率としては97〜98%が好ましい。
【0035】
最終熱処理は、NbTi超電導多層板中のNbTi層中にTi析出物を析出させる工程である。熱処理温度を300〜380℃としたのは、300℃未満では500時間を超える長時間の熱処理を施しても十分な量のTi析出物の析出が起こらないためであり、380℃超ではTi析出物が粗大化するためである。厚さ20nm以下のTi析出物を比較的短時間に析出させる熱処理温度としては340〜360℃が好ましい。
【0036】
熱処理時間を100時間以上としたのは、100時間未満では厚さ20nm以下のTi析出物の量が5.5%未満になるためである。熱処理時間を100時間以上とすれば、5Tで1000A/mm2 以上のJcが得られる。一方、1000時間を超えて熱処理を行ってもJcの上昇は得られず、1200時間を超えるとTi析出物の大型化が始まりJcは逆に低下し始める。したがって、熱処理時間の上限を1200時間とした。好ましい上限は1000時間である。なお、熱処理にかかるコストとJcの向上のバランスを考慮すると、熱処理時間としては500〜750時間が最適である。
【0037】
【実施例】
以下実施例に基づきさらに詳しく説明する。
電子ビーム溶解法によって、表1に示す組成の重量50kgのNbTiインゴットを製造し、インゴットを950℃に加熱して鍛造し、厚さ80mmのスラブとした。その後、スラブを950℃に加熱して厚さ20mmまで圧延した。次に冷間圧延を施し厚さ1mmとした。表1に示す枚数のNbTi板と厚さ1mmの純度99.99%のCu板を、厚さ0.05mmの純度99.5%のNb又は純度99.5%のTa板を介してCuで作製した厚さ10mmの箱に積層充填し、真空度が1.33×10-3N/m2 のチャンバー内で溶接密封した。この箱を用いて、表1に示す製造工程で厚さ1mm又は1.2mmのNbTi超電導多層板を製造した。
【0038】
これらのNbTi層の圧延方向に平行な厚さ方向の断面におけるTi析出物の面積率を、以下のようにして求めた。各NbTi多層板の任意の3箇所から採取した試料の、それぞれ3箇所の1μm×1.5μmの領域をTEMにより観察し、厚さ20nm以下のTi析出物の面積率を画像解析によって算出し、単純平均する。Ti析出物は、NbTi部分に比べ白く見えるため判別が可能である。TiかNbTiかの判別がつきにくい場合は、EDXにより分析して判別した。
【0039】
また、各試料の2箇所から圧延方向の断面組織写真を撮影し、各断面組織写真の任意の3箇所においてNbTi層の厚さを測定した。NbTi層の厚さは圧延方向断面写真の板厚方向に板面に垂直な直線を引き、直線と各NbTi層が交わる点の距離を測定することにより求めた。測定したNbTi層の厚さから変動係数を求めた。表1に示した変動係数は、測定した6箇所の中で最も大きかった値である。No.1〜15はNb層を用いて最終板厚を1mmとしたものであり、No.16〜20はTa層を用いて最終板厚を1.2mmとしたものである。
【0040】
NbTi超電導多層板から、平行部幅0.5mm、平行部長さ20mmの試験片を切出し、圧延方向と垂直な方向のJc(C)と圧延方向に平行な方向のJc(L)を測定した。Jcは、長さ50mm、電極部の幅5mm、長さ10mm、平行部の幅0.5mm、長さ20mmの板状の試験片の平行部に端子間距離を10mmとして検出端子を取り付け、以下のようにして測定した。液体ヘリウム中に浸漬した試験片に5Tの磁場を印加して、検出端子間の電圧が1μVに上昇したときの電流値を臨界電流とし、その値をNbTiの断面積で割った値をJcとする。比較材としてNb−46〜47mass%TiのNbTi板を使用した同様の多層板を作製し、5TにおけるJcを測定した。
【0041】
その結果を表2に示す。Nb−53mass%TiのNbTi板を使用した本発明No.1及びNo.5では、熱処理時間がそれぞれ120時間、及び144時間と短時間であるにも関わらず、厚さ20nm以下のTi析出物の面積率が、それぞれ6.2%及び10.1%で十分な量のTi析出物が析出し、5TにおけるJcは、圧延方向に垂直、平行にかかわらず1000A/mm2 を超えた。
【0042】
これに対し、Nb−47mass%TiのNbTi板を使用し、同じ温度、時間で熱処理をした比較例No.3、No.7では、厚さ20nm以下のTi析出物の面積率が、それぞれ3.3%及び3.8%と、Ti析出物の量が不十分であり、5TにおけるJcは実用レベルの1000A/mm2 に達しなかった。
【0043】
Nb−53mass%TiのNbTi板を使用した本発明No.2及びNo.6では、熱処理時間をそれぞれ672時間及び720時間と長時間行うと、5TにおけるJcは圧延方向に垂直、平行何れの場合も実用レベルの1000A/mm2 を大きく上回ったのに対し、Nb−47mass%TiのNbTi板を使用し、同じ温度、時間で熱処理をした比較例No.4、No.8では、圧延方向に垂直なJcは実用レベルに達したが、圧延方向に平行なJcは1000A/mm2 に達しなかった。
本発明No.2及びNo.6では、長時間の熱処理により、比較例No.4及び8に比べ多くのTi析出物が析出したためJcが高くなった。
【0044】
Nb−57mass%TiのNbTi板を使用した本発明No.9〜13、及びNb−62mass%TiのNbTi板を使用した本発明No.16〜18についても、120〜144時間の短時間の熱処理でも実用レベルのJcが得られ、528〜800時間の長時間の熱処理を行うと、実用レベルをはるかに超えるJcが得られた。
一方、Nb−46mass%TiのNbTi板を使用した比較例No.14,15及びNo.19,20では、120〜144時間の短時間の熱処理では実用レベルのJcは得られず、696〜800時間の長時間の熱処理を行っても、圧延方向に垂直なJcのみが実用レベルのJcを若干上回る程度であった。
【0045】
No.21〜No.25は、製造方法が本発明の範囲外の比較例である。
熱間圧延の加熱温度を700℃と低くしたNo.21では、冷間圧延途中で多層部に剥離が発生し、試料の作製まで至らなかった。熱間圧延の加熱温度を1000℃と高くしたNo.22は、熱間圧延時に層形状の乱れが発生し、最終的に層形状の不均一性により実用レベルのJcが得られなかった。
【0046】
冷間圧延の加工率を90%と低くしたNo.23は、720時間の長時間にわたる熱処理を行った後でも、20nm以下のTi析出物の比率が少なく、結果として実用レベルのJcが得られなかった。熱処理の温度を280℃と低くしたNo.24も、20nm以下のTi析出物の比率が少なく、実用レベルのJcが得られなかった。熱処理温度を500℃と高くしたNo.25は、Ti析出物が大型化し20nm以下のTi析出物の量が少なく実用レベルのJcが得られなかった。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【発明の効果】
以上のように本発明のNbTi超電導多層板では、圧延方向に垂直な方向、平行な方向の何れの場合についても実用レベルのJcが短時間の熱処理時間、かつ従来のNbTi超電導線材の製造工程よりも少ない工程数で得られ、さらに熱処理時間を長時間とすることにより、実用レベルをはるかに超えるJcが得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】NbTi超電導多層板の表面に、圧延方向に縞状に線を引いた後、深絞り加工によって作製した円筒の模式図である。
【図2】直方体形状のTi析出物に量子化磁束がトラップされる様子を圧延方向に平行な厚さ方向の断面から見た模式図である。
【符号の説明】
1:NbTi超電導多層板
2:圧延方向を示す縞模様
3:深絞り加工し、底部と耳部を切断したNbTi超電導多層円筒
4:NbTi層
5:Ti析出物
6:量子化磁束
7:圧延方向
8:Ti析出物の厚さ
9:Ti析出物の幅
Claims (2)
- Nb層又はTa層を介してNbTi層と高導電性金属層が交互に2層以上積層した構造を有するNbTi超電導多層板において、前記NbTi層のTi含有量が50〜65mass%であり、かつ圧延方向に平行な厚さ方向の断面にTiからなる厚さ20nm以下の常電導相が面積率で5.5%以上存在し、圧延方向の断面における前記NbTi層の厚さの変動係数が30%以下であることを特徴とするNbTi超電導多層板。
- Ti含有量が50〜65mass%のNbTi板と高導電性金属板をNb又はTa板を介して交互に積層し、高導電性金属板からなる箱に挿入して1.33×10-5〜1.33×10-1N/m2 に減圧されたチャンバー内で密閉し、温度750〜950℃に加熱して加工率50〜98%の熱間圧延を施した後、加工率95〜99.5%で冷間圧延し、300〜380℃の温度で保持時間が100〜1200時間の熱処理を施すことを特徴とする請求項1記載のNbTi超電導多層板の製造方法。
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