JPH11324251A - 繊維複合雨樋及びその製造法 - Google Patents

繊維複合雨樋及びその製造法

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JPH11324251A
JPH11324251A JP12498898A JP12498898A JPH11324251A JP H11324251 A JPH11324251 A JP H11324251A JP 12498898 A JP12498898 A JP 12498898A JP 12498898 A JP12498898 A JP 12498898A JP H11324251 A JPH11324251 A JP H11324251A
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JP
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polyolefin resin
rain gutter
fiber composite
fiber
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JP12498898A
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Hitoshi Hayashi
仁司 林
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Sekisui Chemical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 温度変化による変形、樋の破損、及び剥離・
腐食が生じにくく、焼却処理、リサイクルが容易である
と共に、製造工数が少なく生産コストの良好な繊維複合
雨樋と、その製造法を提供する。 【解決手段】 繊維複合雨樋8は、強化短繊維10を内
包し且つ極性基を有する変性ポリオレフィン樹脂が10
bが、ポリオレフィン樹脂9をマトリクスとしてその中
に島状に分散されて形成されている。この繊維複合雨樋
8は押出し成形により一工程で製造できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、マトリクス樹脂
中に強化短繊維が分散されたポリオレフィン樹脂製の繊
維複合雨樋及びその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、一般に利用されている雨樋として
は、硬質塩化ビニル樹脂を押出し成形して製造されたも
のがある。このような雨樋は押出し成形により一工程で
製造できるので製造工数が少なく、廉価である。
【0003】このような雨樋は、継ぎ手等により接続さ
れて建物に固定されるが、経時変化を受けてこの継ぎ手
等の部分を中心として変形して破損したり、水漏れが生
じる等の欠点がある。これは、塩化ビニル樹脂の線膨張
率が大きいために四季や昼夜の気温の変化による雨樋の
熱伸縮が大きく、この熱伸縮を原因として継ぎ手間が曲
がって変形し、破損するためと考えられている。
【0004】この変形を防止する雨樋1として、図4、
図5に示すように、多数の穿孔2が設けられた金属板3
を芯材として、その表裏に硬質塩化ビニル樹脂の層4を
被覆させて構成されたものが知られている(例えば、特
開昭57−33660号公報)。しかしながら、この雨
樋1は、金属板3と硬質塩化ビニル樹脂の層4との界面
で、温度変化などによる応力集中で剥離や蓄熱による変
形が生じるという欠点がある。また、雨樋1を切断加工
すると、その切断面に雨水が侵入し、この雨水の侵入に
より内部の金属板3が腐食するという問題を有する。
【0005】また、塩化ビニル樹脂は、耐候性はよい
が、難燃性の樹脂であり熱安定性に乏しい。したがっ
て、塩化ビニル樹脂を用いた雨樋は廃棄処理において焼
却処理が困難であるという問題点がある。また、リサイ
クル利用も困難である。
【0006】このような問題点を解決するために、図6
に示すように、雨樋の長手方向に配された連続強化繊維
に酸変性ポリオレフィン樹脂を融着した芯材層5と、そ
の芯材層5の内外両面に被覆されたポリオレフィン樹脂
の被覆層6とからなる繊維複合雨樋7が、例えば、特開
平6−81432号公報に提案されている。
【0007】この繊維複合雨樋7は、連続強化繊維のガ
ラスロービングに酸変性ポリオレフィン樹脂を含浸させ
て予め芯材層5を形成し、この芯材層5を賦形装置によ
り雨樋形状に賦形してこれに中空耳部を設け、クロスヘ
ッドダイから押し出す高密度ポリエチレンにより表面に
被覆層6を形成することによって製造されている。
【0008】この繊維複合雨樋7は、連続強化繊維が長
手方向に配されているので、雨樋7の長手方向の線膨張
率が低減されて、熱伸縮による変形が改善されている。
また、材質がポリオレフィン樹脂であるので、熱安定性
に優れリサイクルが容易である。さらに易燃性であるの
で、焼却処理も容易である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この繊
維複合雨樋7は、芯材層5を製造する工程と雨樋に成形
する工程とが別工程のために、製造時の工数が多く、価
格が高くなるという問題点がある。
【0010】そこで、この発明は、温度変化による変
形、樋の破損、及び剥離・腐食が生じにくく、焼却処
理、リサイクルが容易であると共に、製造工数が少なく
生産コストの良好な繊維複合雨樋と、その製造法を提供
することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するた
め、請求項1の発明は、強化短繊維を内包し且つ極性基
を有する変性ポリオレフィン樹脂がポリオレフィン樹脂
をマトリクスとしてその中に分散され、この変性ポリオ
レフィン樹脂とポリオレフィン樹脂とからなる複合溶融
相が雨樋形状に成形されて形成された繊維複合雨樋を特
徴とする。
【0012】請求項2の発明は、請求項1の発明におい
て、前記ポリオレフィン樹脂と前記変性ポリオレフィン
樹脂とは融着一体化されていることを特徴とする。
【0013】請求項3の発明は、請求項1又は請求項2
の発明において、前記極性基は、カルボキシル基または
エポキシ基であることを特徴とする。
【0014】請求項4の発明は、請求項1〜請求項3の
いずれかの発明において、前記強化短繊維を内包する変
性ポリオレフィン樹脂と前記マトリクスを形成するポリ
オレフィン樹脂とは同一組成の樹脂であることを特徴と
する。
【0015】請求項5の発明は、請求項1の発明におい
て、前記ポリオレフィン樹脂は、ポリエチレン、ポリプ
ロピレンなどのポリオレフィンの単独重合体、またはこ
れらの共重合体から選択される少なくとも1種以上であ
ることを特徴とする。
【0016】請求項6の発明は、請求項1の発明におい
て、前記強化短繊維はガラス繊維、カーボン繊維、アル
ミナ繊維などの無機繊維、アラミド繊維などの有機繊維
から選択される少なくとも1種以上であることを特徴と
する。
【0017】請求項7の発明は、請求項6の発明におい
て、前記強化短繊維の充填量は、前記複合溶融相の総量
の2〜30容量%であることを特徴とする。
【0018】請求項8の発明は、請求項6又は請求項7
の発明において、前記強化短繊維の平均直径は、3〜3
0μmであることを特徴とする。
【0019】請求項9の発明は、強化短繊維が変性ポリ
オレフィン樹脂中に分散された変性強化樹脂をポリオレ
フィン樹脂の溶融相中に投入、混練することにより、前
記溶融相をマトリクスとしてその中に前記変性強化樹脂
が分散された複合溶融相を生成し、該複合溶融相を押出
し成形することによって繊維複合雨樋を形成する繊維複
合雨樋の製造法を特徴とする。
【0020】請求項10の発明は、樹脂を溶融混練する
第1のバレル部を備えた第1の押出し機にポリオレフィ
ン樹脂を供給し、溶融混練して溶融相を生成すると共
に、樹脂を溶融混練する第2のバレル部を備えた第2の
押出し機に強化短繊維と極性基を有する変性ポリオレフ
ィン樹脂とを供給し、溶融混練して前記変性ポリオレフ
ィン樹脂中に前記強化短繊維が分散する変性強化溶融相
を生成し、該変性強化溶融相を前記第1のバレル部の途
中に供給することにより、前記溶融相をマトリクスとし
てその中に前記変性強化溶融相が分散された複合溶融相
を生成し、該複合溶融相を押出し成形することによって
繊維複合雨樋を形成する繊維複合雨樋の製造法を特徴と
する。
【0021】請求項11の発明は、請求項10の発明に
おいて、前記変性ポリオレフィン樹脂を溶融混練してい
る前記第2のバレル部の途中に前記強化短繊維を供給す
ることを特徴とする。
【0022】
【作用】請求項1の発明では、強化短繊維が変性ポリオ
レフィン樹脂を介してポリオレフィン樹脂マトリクス中
に分散されるので、強化短繊維と変性ポリオレフィン樹
脂とが強固に結び付き、かつ、変性ポリオレフィン樹脂
とポリオレフィン樹脂とが強固に結び付くことにより、
繊維複合雨樋の線膨張率が低減される。このため、温度
変化による変形及び樋の破損が生じにくい。
【0023】また、この繊維複合雨樋は、易燃性のポリ
オレフィン系樹脂により形成されるので焼却処理が可能
であり、熱安定性に優れリサイクルが容易である。
【0024】さらに、樹脂を材質として一体的に製造さ
れることから剥離・腐食のおそれがなく、一工程で製造
できるので製造工数が簡略化され、生産コストの低減が
図れる。
【0025】請求項2の発明では、変性ポリオレフィン
樹脂とポリオレフィン樹脂とが強固に固着され、線膨張
率がさらに低減される。これにより、雨樋の温度変化に
よる変形が発生せず、樋の継ぎ目での破損が生じない。
【0026】請求項3の発明では、極性基の好ましい例
が選択される。
【0027】請求項4の発明では、相溶性のよい樹脂の
組合せが選択され、これにより融着一体化が確実に行え
る。
【0028】請求項5の発明では、汎用性の樹脂が選択
される。
【0029】請求項6の発明では、汎用性の強化短繊維
が選択される。
【0030】請求項7の発明では、強化短繊維の好まし
い充填量が選択される。
【0031】請求項8の発明では、強化短繊維の好まし
い繊維径が選択される。
【0032】請求項9の発明では、強化短繊維が変性ポ
リオレフィン樹脂中に分散された変性強化樹脂がポリオ
レフィン樹脂の溶融相中に投入、混練され、この溶融相
をマトリクスとしてその中に変性強化樹脂が島状に分散
された複合溶融相が生成され、この複合溶融相が押出成
形されて繊維複合雨樋が形成される。これにより、上記
各請求項に係る繊維複合雨樋が、例えば芯材層製造工程
と雨樋成形工程とから構成されるような複数の製造工程
を経ることなく一工程で製造される。したがって、製造
工数が簡略化されて生産コストの低減が図れる。
【0033】請求項10の発明では、ポリオレフィン樹
脂の溶融相に、強化短繊維が変性ポリオレフィン樹脂中
に分散された変性強化溶融相が供給され、これが混練さ
れることによりポリオレフィン樹脂の溶融相をマトリク
スとしてその中に変性強化溶融相が島状に分散された複
合溶融相が生成され、この複合溶融相が押出成形されて
繊維複合雨樋が形成される。すなわち、ポリオレフィン
樹脂と変性ポリオレフィン樹脂とが溶融状態で接触して
複合溶融相が生成されるので、この複合溶融相を成形し
てなる繊維複合雨樋においては両樹脂の界面が融着一体
化される。したがって、経時変化を受けにくく、良好な
耐久性を具備する繊維複合雨樋を得ることができる。
【0034】請求項11の発明では、強化短繊維が変性
ポリオレフィン樹脂の溶融後に第2のバレル部に供給さ
れるので、その変性ポリオレフィン樹脂との混練時間が
短縮化される。したがって、混練に伴う強化短繊維の粉
砕・破断が少なく、得られる繊維複合雨樋中の繊維長が
保たれ、ひいては繊維複合雨樋の線膨張率の低減効果を
確保することができる。
【0035】
【発明の実施の形態】以下、本発明の具体的な実施の形
態について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面上
は、理解し易くするため、厚さの割合を大きくしてあ
る。
【0036】図1は、この実施の形態に係る繊維複合雨
樋を示す。この繊維複合雨樋8は、平坦な底壁8aと、
底壁8aの両側部から外方にやや傾斜するように立設さ
れた立ち上がり壁8b,8bとを有する。立ち上がり壁
8b,8bの上端部には、断面略矩形の中空体よりなる
耳縁8c,8cが形成されている。
【0037】底壁8aと立ち上がり壁8bとの詳細構造
は、図2に模式的に示すように、ポリオレフィン樹脂9
をマトリクスとして、その中に強化短繊維10bを内包
し且つ極性基を有する変性ポリオレフィン樹脂10aが
島状に分散されたものとなっている。すなわち、強化短
繊維10bの周囲は、極性基を付与された変性ポリオレ
フィン樹脂10aにより選択的に被覆されている。
【0038】ポリオレフィン樹脂9としては、ポリエチ
レン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンの単独重合
体、またはこれらの共重合体が用途に応じて用いられて
いる。これらの単独重合体、共重合体は混合(ブレン
ド)されていてもよい。
【0039】変性ポリオレフィン樹脂10aとしては、
例えば、カルボキシル基、エポキシ基などの極性基を有
するポリオレフィンが挙げられる。これらの極性基の種
類や極性基濃度は、充填される強化短繊維の種類やその
表面処理状況に応じて適宜選択される。この変性ポリオ
レフィン樹脂10aは、例えば、ポリオレフィンの重合
時に変性モノマーを添加して共重合する方法や、ポリオ
レフィンに変性モノマーを加えて必要により触媒存在
下、加熱下で混合するなどして製造される。
【0040】その変性モノマーとしては、例えば、マレ
イン酸、フマル酸、クロトン酸、アクリル酸、メタクリ
ル酸、イタコン酸、これらの酸無水物などの不飽和カル
ボン酸、及びその無水物が挙げられる。変性ポリオレフ
ィン樹脂10a中の極性基濃度は、特には限定されない
が、一般には0.5〜10モル%程度含まれる。
【0041】ポリオレフィン樹脂9として用いられる樹
脂と変性ポリオレフィン樹脂10aとして用いられる樹
脂との組み合わせは、互いが熱融着する程度の相溶性が
あるものが望ましい。とりわけ同一組成の樹脂を選択す
ると、相溶性がよいので両樹脂が融着して一体化が確実
に行われ、得られる繊維複合雨樋8は経時変化を受けに
くく、良好な耐久性を具備する。したがって、例えばポ
リオレフィン樹脂9としてポリプロピレンを用いた場
合、変性ポリオレフィン樹脂10aとしては変性ポリプ
ロピレンを用いることが好ましい。
【0042】また、ポリオレフィン樹脂9及び変性ポリ
オレフィン樹脂10aには、酸化防止剤、耐衝撃向上
剤、安定剤、顔料、染料などの着色剤、その他のフィラ
ー(充填材)がこの発明の効果を損なわない範囲で適宜
に選択され、添加されていてもよい。ポリオレフィン樹
脂9及び変性ポリオレフィン樹脂10aの各分子量は、
繊維複合雨樋8に要求される性能、成形性などを考慮し
て適宜選択される。
【0043】一方、強化短繊維10bとして用いられる
繊維についても特に限定はなく、通常熱可塑性樹脂の補
強に用いられる強化短繊維が適宜に選択される。それら
は、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、アルミナ繊維
などの無機繊維、アラミド繊維などの有機繊維である。
これらの強化短繊維10bは、その線膨張率がポリオレ
フィン樹脂9のそれよりも小さいので、マトリクスとな
るポリオレフィン樹脂9中に分散されると得られる雨樋
を補強すると共にその線膨張率を低減させる。これらの
強化短繊維10bは混合して用いてもよく、任意の化学
処理が施されていてもよい。
【0044】強化短繊維10bの充填量は、後述する複
合溶融相の総量の2〜30容量%が熱伸縮性を低減させ
る上で好ましい。2容量%未満では雨樋としての熱伸縮
性を低減させる効果が少ない。また30容量%を越えて
充填するとポリオレフィン樹脂9中に分散させることが
困難となる場合がある。
【0045】強化短繊維10bの平均直径は、3〜30
μmであることが熱伸縮性を低減させる上で好ましい。
効果的に熱伸縮性を低減させるには、繊維径は細い方が
よいと考えられるが、3μmよりも細いと溶融混練中等
に強化短繊維が折れて長い繊維長を維持することが困難
となる。一方、30μmを越えると繊維としての補強効
果が充分に発揮されにくい。
【0046】強化短繊維10bの繊維長についても限定
されるものではなく、目的に合わせて適宜に選択すれば
よい。一般に、繊維長が長い方が効果的に熱伸縮性を低
減させるが、長すぎると均一に分散させることが困難と
なる。また短すぎると熱伸縮性の低減効果、補強効果が
小さいので、通常0.03mm〜3mm程度の範囲から
選択される。
【0047】つぎに、この繊維複合雨樋8を製造する方
法と装置について説明する。
【0048】図3は、この発明の繊維複合雨樋8を製造
するための成形装置11の工程図である。この成形装置
11では、第1の押出し機12、押出し金型(ダイ)1
3、冷却サイジング装置14、引き取り装置15、切断
装置16、搬送台17が一列に配列されている。押出し
機12は、ポリオレフィン樹脂9を供給するホッパー1
2aと、内部にスクリューを備え外部がヒーターで覆わ
れることにより樹脂を溶融混練する第1のバレル部12
bとを備え、このバレル部12bの途中にはベント部
(不図示)が設けられている。
【0049】バレル部12bの途中にはT字配列に第2
の押出し機18が接続されている。この押出し機18
は、変性ポリオレフィン樹脂10aで被覆された強化短
繊維10bを押し出すためのもので、変性ポリオレフィ
ン樹脂10aを供給するホッパー18aと、内部にスク
リューを備え外部がヒーターで覆われることにより樹脂
を溶融混練する第2のバレル部18bとを備えている。
このバレル部18bの途中には、繊維供給押し込みフィ
ーダー19が接続されている。
【0050】ポリオレフィン樹脂9が必要な添加剤とと
もにホッパー12aへ供給されると、バレル部12b内
で溶融混練されて溶融相が形成される。一方、ホッパー
18aには変性ポリオレフィン樹脂10aが必要な添加
剤とともに供給され、繊維供給押し込みフィーダー19
には強化短繊維10bが供給される。変性ポリオレフィ
ン樹脂10aはバレル部18b内において溶融混練され
ると共に、バレル部18bの途中から強化短繊維10b
を受け入れてさらに溶融混練される。これにより、強化
短繊維10bが均一に分散された変性強化溶融相が形成
される。この変性強化溶融相は、押出し機12のバレル
部12bのベント部手前に送り込まれる。
【0051】バレル部12bでは、溶融相中に変性強化
溶融相が島状に分布して分散された複合溶融相が形成さ
れる。この複合溶融相は、押出し金型13へ送り込まれ
て金型リップ(不図示)により押し出され、雨樋形状の
成形品が形成される。この成形品は、冷却サイジング装
置14において冷却されつつ引き取り装置15により引
き取られ、所定の寸法に仕上げられる。ついで、切断装
置16により一定長さに切断されて繊維複合雨樋8とな
り、搬送装置17により成形装置11の外部に搬出され
る。
【0052】この実施の形態に係る繊維複合雨樋8で
は、強化短繊維10bが変性ポリオレフィン樹脂10a
を介してポリオレフィン樹脂9中に分散されるので、強
化短繊維10bと変性ポリオレフィン樹脂10aとが強
固に結び付き、かつ、変性ポリオレフィン樹脂10aと
ポリオレフィン樹脂9とが強固に結び付いている。すな
わち、非変性のポリオレフィン樹脂9自体は極性を有し
ないために他の物質との結合力は弱いが、極性基を有す
る変性ポリオレフィン樹脂10aは他の物質との結合力
が強く、また、この変性ポリオレフィン樹脂10aは骨
格がポリオレフィンからなり、ポリオレフィン樹脂9と
は一般に相溶性がよく融着性、結合性が高いので、結果
として、強化短繊維10bとマトリクスのポリオレフィ
ン樹脂9とが強固に結び付いている。このため、繊維複
合雨樋8の線膨張率は大幅に低減され、温度変化による
変形及び樋の破損が生じにくい。
【0053】また、この繊維複合雨樋8は、易燃性のポ
リオレフィン系樹脂9,10aにより形成されるので焼
却処理が可能であり、熱安定性に優れリサイクルが容易
であるという長所を有する。
【0054】さらに、樹脂材により芯材層、被覆層の別
なく一体的に製造されることから、剥離・腐食のおそれ
がなく、図3に示したように一工程で製造できるので製
造工数が簡略化され、生産コストの低減が図れる。
【0055】なお、比較のため、ポリオレフィン樹脂9
と変性ポリオレフィン樹脂10aとをブレンドし、その
ブレンドポリマー中に強化短繊維10bを分散させ、こ
れを押出し成形することによって雨樋を形成した。この
雨樋の断面を観察したところ、マトリクスとしてのポリ
オレフィン樹脂9の中に変性ポリオレフィン樹脂10a
と強化短繊維10bとがランダムに分布して分散されて
おり、繊維複合雨樋8のように強化短繊維10bが変性
ポリオレフィン樹脂10aを介してポリオレフィン樹脂
9中に分散されてはいなかった。
【0056】以下、本発明のより具体的な実施例と、比
較のための比較例とについて述べる。
【0057】〔実施例1〕ポリオレフィン樹脂9として
ポリプロピレン樹脂(三菱化学製ポリプロEA9)、変
性ポリオレフィン樹脂10aとして酸変性ポリプロピレ
ン樹脂(三井石油製アドマーQB550、無水マレイン
酸変性)、強化短繊維10bとしてガラス繊維チョップ
(日東紡製CSPE946:平均繊維直径23μm、平
均繊維長4mm)を用い、図3に示す成形装置11を使
用して繊維複合雨樋8を製作した。
【0058】得られた繊維複合雨樋8の繊維量は体積比
で10%、変性ポリオレフィン樹脂の割合は総樹脂中の
10重量%、成形品の厚みは1.8mmであった。
【0059】〔実施例2〕強化短繊維10bとしてガラ
ス繊維チョップに代えてカーボン繊維チョップ(東邦レ
ーヨン製ベスファイトHTA−C6−SR、平均繊維直
径7μm、平均繊維長6mm)を用いた以外は実施例1
と同様にして繊維複合雨樋8を製作した。
【0060】〔実施例3〕変性ポリオレフィン樹脂10
aとして酸変性プロピレン樹脂に代えてエポキシ変性ポ
リプロピレン樹脂(日本油脂製ブレンマーCP−15)
を用いた以外は実施例1と同様にして繊維複合雨樋8を
製作した。
【0061】〔実施例4〕変性ポリオレフィン樹脂10
aとして酸変性プロピレン樹脂に代えてエポキシ変性ポ
リプロピレン樹脂(日本油脂製ブレンマーCP−15)
を用いた以外は実施例2と同様にして繊維複合雨樋8を
製作した。
【0062】〔実施例5〕ポリオレフィン樹脂9として
ポリエチレン樹脂(三井化学製ハイゼックス5500
S)、変性ポリオレフィン樹脂10aとして酸変性ポリ
エチレン樹脂(日本ポリオレフィン製レクスパールET
182)を用いた以外は実施例1と同様にして繊維複合
雨樋8を製作した。
【0063】〔実施例6〕強化短繊維10bとしてガラ
ス繊維チョップに代えてカーボン繊維チョップ(東邦レ
ーヨン製ベスファイトHTA−C6−SR、平均繊維直
径7μm、平均繊維長6mm)を用いた以外は実施例5
と同様にして繊維複合雨樋8を製作した。
【0064】〔実施例7〕変性ポリオレフィン樹脂10
aとして酸変性ポリエチレン樹脂に代えてエポキシ変性
ポリエチレン樹脂(日本ポリオレフィン製レクスパール
RA3150)を用いた以外は実施例5と同様にして繊
維複合雨樋8を製作した。
【0065】〔実施例8〕変性ポリオレフィン樹脂10
aとして酸変性ポリエチレン樹脂に代えてエポキシ変性
ポリエチレン樹脂(日本ポリオレフィン製レクスパール
RA3150)を用いた以外は実施例6と同様にして繊
維複合雨樋8を製作した。
【0066】〔比較例1〕実施例1と同じ酸変性ポリプ
ロピレン樹脂の10重量部と、実施例1と同じポリプロ
ピレン樹脂の90重量部との混合物Aを用い、ホッパー
12aにはその混合物Aの90重量部を供給し、ホッパ
ー10aにはその混合物Aの10重量部を供給した以外
は実施例1と全く同様にして繊維複合雨樋を製作した。
【0067】得られた繊維複合雨樋の繊維量は体積比で
10%、変性ポリオレフィン樹脂の割合は総樹脂中の1
0重量%、成形品の厚みは1.8mmであった。
【0068】〔比較例2〕実施例2と同じ酸変性ポリプ
ロピレン樹脂の10重量部と、実施例2と同じポリプロ
ピレン樹脂の90重量部との混合物Aを用い、ホッパー
12aにはその混合物Aの90重量部を供給し、ホッパ
ー10aにはその混合物Aの10重量部を供給した以外
は実施例2と全く同様にして繊維複合雨樋を製作した。
【0069】〔比較例3〕実施例3と同じエポキシ変性
ポリプロピレン樹脂の10重量部と、実施例3と同じポ
リプロピレン樹脂の90重量部との混合物Bを用い、ホ
ッパー12aにはその混合物Bの90重量部を供給し、
ホッパー10aにはその混合物Bの10重量部を供給し
た以外は実施例3と全く同様にして繊維複合雨樋を製作
した。
【0070】〔比較例4〕実施例4と同じエポキシ変性
ポリプロピレン樹脂の10重量部と、実施例4と同じポ
リプロピレン樹脂の90重量部との混合物Bを用い、ホ
ッパー12aにはその混合物Bの90重量部を供給し、
ホッパー10aにはその混合物Bの10重量部を供給し
た以外は実施例4と全く同様にして繊維複合雨樋を製作
した。
【0071】〔比較例5〕実施例5と同じ酸変性ポリエ
チレン樹脂の10重量部と、実施例5と同じポリエチレ
ン樹脂の90重量部との混合物Cを用い、ホッパー12
aにはその混合物Cの90重量部を供給し、ホッパー1
0aにはその混合物Cの10重量部を供給した以外は実
施例5と全く同様にして繊維複合雨樋を製作した。
【0072】〔比較例6〕実施例6と同じ酸変性ポリエ
チレン樹脂の10重量部と、実施例2と同じポリエチレ
ン樹脂の90重量部との混合物Cを用い、ホッパー12
aにはその混合物Cの90重量部を供給し、ホッパー1
0aにはその混合物Cの10重量部を供給した以外は実
施例6と全く同様にして繊維複合雨樋を製作した。
【0073】〔比較例7〕実施例7と同じエポキシ変性
ポリエチレン樹脂の10重量部と、実施例7と同じポリ
エチレン樹脂の90重量部との混合物Dを用い、ホッパ
ー12aにはその混合物Dの90重量部を供給し、ホッ
パー10aにはその混合物Dの10重量部を供給した以
外は実施例7と全く同様にして繊維複合雨樋を製作し
た。
【0074】〔比較例8〕実施例8と同じエポキシ変性
ポリエチレン樹脂の10重量部と、実施例8と同じポリ
エチレン樹脂の90重量部との混合物Dを用い、ホッパ
ー12aにはその混合物Dの90重量部を供給し、ホッ
パー10aにはその混合物Dの10重量部を供給した以
外は実施例8と全く同様にして繊維複合雨樋を製作し
た。
【0075】実施例1〜8により得られた繊維複合雨樋
8及び比較例1〜8により得られた繊維複合雨樋から、
それぞれ底壁の一部を切り出し、雨樋の長手方向の線膨
張率をTMAを用いて測定した。結果をまとめて表1に
示す。
【0076】
【表1】 ポリオレフィン樹脂9の線膨張率はガラス繊維などの強
化短繊維で強化されることにより一般に低減されるが、
実施例と比較例との対比で明らかなとおり、変性ポリオ
レフィン樹脂10aを強化短繊維10bの周囲に被覆し
た後にマトリクス樹脂9中に溶融分散させて製造された
繊維複合雨樋8の線膨張率はさらに低減される。
【0077】以上、この発明の実施の形態を詳述してき
たが、具体的な構成はこの実施の形態に限らず、この発
明の要旨を逸脱しない範囲の変更等があってもこの発明
に含まれる。
【0078】例えば、繊維複合雨樋8の形状は上述のも
のにとくに限定されず、その横断面が凹状を呈して雨水
を案内できるものであれば、いかなる形状であってもよ
い。例えば、その横断面が図5に示すような半円弧状で
あってもよく、耳縁8cの有無、形状についても自由で
ある。
【0079】また、繊維複合雨樋8には、必要に応じて
底壁8a、立ち上がり壁8bの外表面に別の樹脂層を製
造工程中または工程後に付与してもかまわない。
【0080】上記実施の形態では、強化短繊維10bを
変性ポリオレフィン樹脂10a中に分散させるのに、予
め変性ポリオレフィン樹脂10aを溶融混練しつつ、強
化短繊維10bをバレル部途中で投入していたが、強化
短繊維10bと変性ポリオレフィン樹脂10aの粉末と
をドライブレンドした後、二軸押出し機などで溶融・混
練してもよい。また予め繊維を分散した状態でペレット
化された変性樹脂をホッパー12aに投入することもで
きる。
【0081】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1の発明で
は、強化短繊維の表面に極性基を付与された変性ポリオ
レフィンが被覆されているので、繊維複合雨樋の熱伸縮
性が低減される。これにより、温度変化による変形が小
さく、樋の破損が生じにくい。
【0082】また、この繊維複合雨樋は、易燃性のポリ
オレフィン系樹脂により形成されるので焼却処理が可能
であり、熱安定性に優れリサイクルが容易である。
【0083】さらに、樹脂を材質として一体的に製造さ
れることから剥離・腐食のおそれがなく、一工程で製造
できるので製造工数が簡略化され、生産コストの低減が
図れる。
【0084】請求項2の発明では、変性ポリオレフィン
樹脂とポリオレフィン樹脂とが強固に固着され、線膨張
率がさらに低減される。これにより、雨樋の温度変化に
よる変形が発生せず、樋の継ぎ目での破損が生じない。
【0085】請求項3の発明では、極性基の好ましい例
が選択される。
【0086】請求項4の発明では、相溶性のよい樹脂の
組合せが選択され、これにより融着一体化されて繊維複
合雨樋の耐久性が向上される。
【0087】請求項5の発明では、ポリオレフィン樹脂
として広い範囲の樹脂を用いることができる。従って、
例えば、強度のある廉価な樹脂を選択して雨樋を製造で
きる。
【0088】請求項6の発明では、強化短繊維として広
い範囲の強化短繊維を用いることができる。従って、例
えば、補強効果のある廉価な強化短繊維を選択して雨樋
を製造できる。
【0089】請求項7の発明では、強化短繊維の好まし
い充填量が選択され、この範囲では補強効果が大きく、
また強化短繊維の分散性がよい。従って温度による変形
も少ない。
【0090】請求項8の発明では、強化短繊維の好まし
い繊維径が選択され、この範囲では、補強効果が大き
い。従って、この範囲では、温度変化による変形も少な
い。
【0091】請求項9の発明では、本発明の繊維複合雨
樋が一工程で製造される。したがって、製造工数が簡略
化され生産コストの低減が図れる。
【0092】請求項10の発明では、界面が融着一体化
されて耐久性の向上された繊維複合雨樋が一工程で製造
できる。
【0093】請求項11の発明では、樹脂と繊維との混
練時間が少ないので、混練中の強化短繊維の破断・粉砕
が少なく、繊維長の長い繊維複合雨樋が製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の繊維複合雨樋8を説明す
る斜視断面図である。
【図2】図1の繊維複合雨樋8の壁部の強化短繊維の分
散状態を説明する模式図である。
【図3】実施の形態の繊維複合雨樋8を製造するための
成形装置11を説明するための工程図である。
【図4】従来の雨樋1を説明する一部切欠斜視図であ
る。
【図5】図4の雨樋1の断面図である。
【図6】従来の繊維複合雨樋7を説明する斜視断面図で
ある。
【符号の説明】
8 繊維複合雨樋 9 ポリオレフィン樹脂 10a 変性ポリオレフィン樹脂 10b 強化短繊維 12 第1の押出し機 13 金型 14 冷却サイジング装置 15 引き取り装置 16 切断装置 18 第2の押出し機

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】強化短繊維を内包し且つ極性基を有する変
    性ポリオレフィン樹脂がポリオレフィン樹脂をマトリク
    スとしてその中に分散され、この変性ポリオレフィン樹
    脂とポリオレフィン樹脂とからなる複合溶融相が雨樋形
    状に成形されて形成されたことを特徴とする繊維複合雨
    樋。
  2. 【請求項2】前記ポリオレフィン樹脂と前記変性ポリオ
    レフィン樹脂とは融着一体化されていることを特徴とす
    る請求項1に記載の繊維複合雨樋。
  3. 【請求項3】前記極性基は、カルボキシル基またはエポ
    キシ基であることを特徴とする請求項1又は請求項2に
    記載の繊維複合雨樋。
  4. 【請求項4】前記強化短繊維を内包する変性ポリオレフ
    ィン樹脂と前記マトリクスを形成するポリオレフィン樹
    脂とは同一組成の樹脂であることを特徴とする請求項1
    〜請求項3のいずれかに記載の繊維複合雨樋。
  5. 【請求項5】前記ポリオレフィン樹脂は、ポリエチレ
    ン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンの単独重合
    体、またはこれらの共重合体から選択される少なくとも
    1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の繊維
    複合雨樋。
  6. 【請求項6】前記強化短繊維はガラス繊維、カーボン繊
    維、アルミナ繊維などの無機繊維、アラミド繊維などの
    有機繊維から選択される少なくとも1種以上であること
    を特徴とする請求項1に記載の繊維複合雨樋。
  7. 【請求項7】前記強化短繊維の充填量は、前記複合溶融
    相の総量の2〜30容量%であることを特徴とする請求
    項6に記載の繊維複合雨樋。
  8. 【請求項8】前記強化短繊維の平均直径は、3〜30μ
    mであることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載
    の繊維複合雨樋。
  9. 【請求項9】強化短繊維が変性ポリオレフィン樹脂中に
    分散された変性強化樹脂をポリオレフィン樹脂の溶融相
    中に投入、混練することにより、前記溶融相をマトリク
    スとしてその中に前記変性強化樹脂が分散された複合溶
    融相を生成し、該複合溶融相を押出し成形することによ
    って繊維複合雨樋を形成することを特徴とする繊維複合
    雨樋の製造法。
  10. 【請求項10】樹脂を溶融混練する第1のバレル部を備
    えた第1の押出し機にポリオレフィン樹脂を供給し、溶
    融混練して溶融相を生成すると共に、樹脂を溶融混練す
    る第2のバレル部を備えた第2の押出し機に強化短繊維
    と極性基を有する変性ポリオレフィン樹脂とを供給し、
    溶融混練して前記変性ポリオレフィン樹脂中に前記強化
    短繊維が分散する変性強化溶融相を生成し、該変性強化
    溶融相を前記第1のバレル部の途中に供給することによ
    り、前記溶融相をマトリクスとしてその中に前記変性強
    化溶融相が分散された複合溶融相を生成し、該複合溶融
    相を押出し成形することによって繊維複合雨樋を形成す
    ることを特徴とする繊維複合雨樋の製造法。
  11. 【請求項11】前記変性ポリオレフィン樹脂を溶融混練
    している前記第2のバレル部の途中に前記強化短繊維を
    供給することを特徴とする請求項10に記載の繊維複合
    雨樋の製造法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2005073291A1 (ja) * 2004-02-02 2005-08-11 Idemitsu Kosan Co., Ltd. ポリオレフィン系炭素繊維強化樹脂組成物及びそれからなる成形品
JP2012086529A (ja) * 2010-10-22 2012-05-10 Kyushu Institute Of Technology 傾斜機能性複合材料及びその製造方法

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