JP3763918B2 - 繊維複合雨樋及びその製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、マトリクス樹脂中に強化短繊維が分散されたポリオレフィン樹脂製の繊維複合雨樋及びその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、一般に利用されている雨樋は、硬質塩化ビニル樹脂を押出し成形により成形されたものである。このような雨樋は押出し成形により一工程で製造できるので製造工数が少なく、廉価である。
【0003】
このような雨樋は、継ぎ手等により接続されたりして建物に固定されるが、経時変化を受けてこの継ぎ手等の部分を中心として変形して破損したり、水漏れが生じるとの欠点がある。これは塩化ビニル樹脂の線膨張率が大きいために、四季や昼夜の気温の変化による熱伸縮が原因とされ、継ぎ手間が曲がって変形し、破損するためと考えられている。
【0004】
この変形を防止する雨樋1として、図4、図5に示すように、多数の穿孔2が施された金属板3を芯材として、その表裏に硬質塩化ビニル樹脂の層4を被覆させて構成されたものが知られている(例えば、特開昭57−33660号公報)。しかしながら、この雨樋1は、金属板3と硬質塩化ビニル樹脂の層4との界面で、温度変化などによる応力集中で剥離や蓄熱による変形が生じるという欠点がある。また、雨樋を切断加工すると、その切断面に雨水が侵入する。この雨水の侵入により内部の金属板3が腐食するという問題を有する。
【0005】
また、塩化ビニル樹脂は、耐候性はよいが、難燃性の樹脂であり熱安定性に乏しい。したがって塩化ビニル樹脂を用いた雨樋は、廃棄処理において焼却処理が困難であるという問題点がある。また、リサイクル利用も困難である。
【0006】
このような問題点を解決するために図6に示すように、雨樋の長手方向に配された連続強化繊維に酸変性ポリオレフィン樹脂を融着した芯材層5と、その芯材層5の内外両面に被覆されたポリオレフィン樹脂の被覆層6とからなる繊維複合雨樋7が、例えば、特開平6−81432号公報に提案されている。
【0007】
この繊維複合雨樋7は、たとえば、連続繊維のガラスロービングに酸変性ポリオレフィン樹脂を含浸させて予め芯材層5を形成させ、この芯材層5を巻き取っている。この巻き取られた芯材層5は、賦形装置により雨樋形状に賦形された後、中空耳部が付与され、クロスヘッドダイから押し出された高密度ポリエチレンにより表面に被覆層6が付与されて繊維複合雨樋7が形成されている。
【0008】
この繊維複合雨樋7は、連続強化繊維が長手方向に配されているので、雨樋7の長手方向の線膨張率が低減されて、熱伸縮による変形が改善されている。また、樹脂がポリオレフィン樹脂であるので、熱安定性に優れリサイクルが容易である。さらに易燃性であるので、焼却処理も容易である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この繊維複合雨樋7は、芯材層5を製造する工程と雨樋に成形する工程とが別工程のために、製造時の工数が多く、価格が高くなるとの問題点がある。
【0010】
そこで、この発明は、温度変化による変形が発生せず、樋の破損が生じにくく、かつ、剥離・腐食の問題が生じない雨樋であり、製造工数が少なく、焼却処理、リサイクルが容易な雨樋とその製造法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、請求項1の発明は、雨樋形状に成形された成形体であって、該成形体は、強化短繊維を内包し極性基を有する変性ポリオレフィン樹脂が、ポリオレフィン樹脂をマトリクスとしてその中に分散されて形成されたことを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記ポリオレフィン樹脂と前記変性ポリオレフィン樹脂とは融着一体化されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2の発明において、前記極性基は、カルボキシル基またはエポキシ基であることを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかの発明において、前記強化短繊維を内包する変性ポリオレフィン樹脂と前記マトリクスを形成するポリオレフィン樹脂とは同一骨格のポリオレフィン樹脂であることを特徴とする。
【0015】
請求項5の発明は、請求項1の発明において、前記ポリオレフィン樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンの単独重合体、またはこれらの共重合体から選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする。
【0016】
請求項6の発明は、請求項1の発明において、前記強化短繊維はガラス繊維、カーボン繊維、アルミナ繊維などの無機繊維、アラミド繊維などの有機繊維から選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする。
【0017】
請求項7の発明は、請求項6の発明において、前記強化短繊維の充填量は、マトリクス樹脂の総量の2〜30容量%であることを特徴とする。
【0018】
請求項8の発明は、請求項6又は請求項7の発明において、前記強化短繊維の平均直径は、3〜30μmであることを特徴とする。
【0019】
請求項9の発明は、強化短繊維が極性基を有する変性ポリオレフィン樹脂中に分散された変性強化樹脂をポリオレフィン樹脂の樹脂溶融相中に投入し、混練して前記ポリオレフィン樹脂の溶融相をマトリクスとしてその中に前記変性強化樹脂が分散された複合溶融相とされ、該複合溶融相は、溶融押出し金型へ送り出され、該金型から雨樋の長さ方向に溶融押出し成形されることを特徴とする。
【0020】
請求項10の発明は、樹脂を溶融混練する第1のバレル部を備えた第1の押出し機ではポリオレフィン樹脂が供給され、溶融混練されて溶融相が形成されると共に、樹脂を溶融混練する第2のバレル部を備えた第2の押出し機では極性基の付与された変性ポリオレフィン樹脂と強化短繊維とが供給され、溶融混練されて変性ポリオレフィン樹脂中に強化短繊維が分散された変性強化溶融相が形成され、該変性強化溶融相は前記第1のバレル部の途中に供給され、前記ポリオレフィン樹脂の溶融相をマトリクスとしてその中に前記変性強化溶融相が分散された複合溶融相とされ、該複合溶融相は、溶融押出し金型へ送り出され、該金型から雨樋の長さ方向に溶融押出し成形されることを特徴とする。
【0021】
請求項11の発明は、請求項10の発明において、前記強化短繊維は、前記第2のバレル途中から供給されることを特徴とする。
【0022】
【作用】
請求項1の発明では、成形体の強化短繊維は変性ポリオレフィン樹脂を介してポリオレフィン樹脂マトリクス中に分散されので、強化短繊維と変性ポリオレフィン樹脂とは強固に接着され、変性ポリオレフィン樹脂とポリオレフィン樹脂とは強固に接着される。
これにより、繊維複合雨樋の線膨張率が低減され、温度変化による変形が小さく、樋の破損が生じにくい。
【0023】
また樹脂はポリオレフィン系であるので、熱安定性に優れリサイクルが容易である。またポリオレフィン系は易燃性であるので、容易に焼却される。
【0024】
また、この繊維複合雨樋は一工程で製造できる。したがって、製造工数が簡略化されコストの低減が図れる。
【0025】
請求項2の発明では、変性ポリオレフィン樹脂とポリオレフィン樹脂とが強固に固着され、線膨張率がさらに低減される。これにより、雨樋の温度変化による変形が発生せず、樋の継ぎ目での破損が生じない。
【0026】
請求項3の発明では、極性基の好ましい例が選択される。
【0027】
請求項4の発明では、相溶性のよい樹脂の組合せが選択され、これにより融着一体化が確実に行える。
【0028】
請求項5の発明では、汎用性の樹脂が選択される。
【0029】
請求項6の発明では、汎用性の強化短繊維が選択される。
【0030】
請求項7の発明では、強化短繊維の好ましい充填量が選択される。
【0031】
請求項8の発明では、強化短繊維の好ましい繊維径が選択される。
【0032】
請求項9の発明では、強化短繊維が極性基を有する変性ポリオレフィン樹脂中に分散された変性強化樹脂がポリオレフィン樹脂の樹脂溶融相中に投入される。この溶融相は混練されてポリオレフィン樹脂の溶融相をマトリクスとしてその中に変性強化樹脂が島状に分散された複合溶融相が形成される。この複合溶融相は溶融押出し金型により押出し成形される。これにより、本発明に従う繊維複合雨樋が一工程で製造される。したがって、製造工数が簡略化されコストの低減が図れる。
【0033】
請求項10の発明では、ポリオレフィン樹脂の溶融相に、強化短繊維が変性ポリオレフィン樹脂の溶融相に分散された変性強化溶融相が供給され、混練されることにより、ポリオレフィン樹脂の溶融相をマトリクスとしてその中に変性強化溶融相が島状に分散された複合溶融相とされて金型へ送り出され、溶融押出し成形される。ポリオレフィン樹脂と変性ポリオレフィン樹脂とは溶融状態で接触されて成形されるので、その界面が融着一体化された繊維複合雨樋が一工程で製造される。したがって、製造工数が簡略化されコストの低減が図れる。
【0034】
請求項11の発明では、供給された強化短繊維は樹脂が溶融後にバレル内で供給されるので、樹脂との混練時間が最も少なく設定される。したがって混練中の強化繊維の粉砕が少なく、得られる繊維複合雨樋中の繊維長が保てる。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面上は、理解し易くするため、厚さの割合を大きくしてある。
【0036】
【実施例】
図1は、この実施の形態1の繊維複合雨樋を説明する図である。図中符号8は繊維複合雨樋であり熱可塑性樹脂を押出し成形により形成されている。
【0037】
平坦な底壁8aの両側から外方にやや傾斜して立ち上がり壁8b,8bが相対向して立設されている。その立ち上がり壁8bの上端には、断面略矩形の中空体よりなる一対の耳縁8c,8cが形成されている。この繊維複合雨樋8の形状はとくに限定されるものではなく、いかなる形状の雨樋でもよい。たとえば、図5に示すような長さ方向と直交する方向の切断面が半円弧状の外形形状であってもよい。また、耳縁8cの有無、形状も自由である。
【0038】
この繊維複合雨樋8を構成する壁の詳細は図2に模式図で示されるように、ポリオレフィン樹脂9をマトリクスとして、その中に強化短繊維10bを内包する変性ポリオレフィン樹脂10aが島状に分散されている。これにより、強化短繊維10bの周囲は、極性基を付与された変性ポリオレフィン樹脂10aにより選択的に被覆されている。
【0039】
比較のために、ポリオレフィン9と変性ポリオレフィン樹脂10aとをブレンドし、そのブレンドポリマー中に強化短繊維10bを分散させ、その分散物を溶融押出し成形した。その壁部を観察したところ、この壁部では、マトリクス樹脂としてのポリオレフィン樹脂9の中に変性ポリオレフィン樹脂10aと強化短繊維10bとがランダムに分布して分散されている。
【0040】
通常のポリオレフィン樹脂(非変性ポリオレフィン樹脂)9は、極性基を持たないために極性がなく、他の物質との接着力は弱いが、極性基を有するポリオレフィン樹脂は他の物質との接着力が高められる。また、この極性基を有するポリオレフィン樹脂は、骨格がポリオレフィンからなるので、非変性のポリオレフィン樹脂とは一般に相溶性がよく、融着性、接着性がよい。
【0041】
したがって、変性ポリオレフィン樹脂10aにより被覆された強化短繊維10bをマトリクス樹脂9中に分散させると、強化短繊維10bは変性ポリオレフィン樹脂10aを介してポリオレフィン樹脂9のマトリクス中に分散されることになる。この状態で、強化短繊維10bは変性ポリオレフィン樹脂10bに強固に接着される。また、この変性ポリオレフィン樹脂10bは、周囲のマトリクス樹脂であるポリオレフィン樹脂に強く接着される。これにより強化短繊維10bはポリオレフィン樹脂9に強固に接着され、マトリクス樹脂9の熱による伸縮は著しく低減される。
【0042】
強化短繊維10bとして用いられる繊維は、特に限定されない。通常熱可塑性樹脂の補強に用いられる強化短繊維が適宜必要に応じて選択される。それらは、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、アルミナ繊維などの無機繊維、アラミド繊維等の有機繊維である。これらの強化短繊維10bは、線膨張率が樹脂9,10aよりも小さいので、この強化短繊維10bを樹脂9中に充填すると補強効果と共に補強体の線膨張率が低減される。また、この強化短繊維10bは、混合して用いてもよい。また、任意の化学処理が施されていてもよい。
【0043】
強化短繊維10bの充填量は、樹脂9,10aの総量の2〜30容量%が熱伸縮性を低減させる上で好ましい。2容量%未満では雨樋としての熱伸縮性を低減させる効果が少ない。また30容量%程度を越えて充填すると熱可塑性樹脂9中に分散させることが困難となる場合がある。
【0044】
強化短繊維10bの径は、3〜30μmであることが熱伸縮性を低減させる上で好ましい。効果的に熱伸縮性を低減させるには、繊維径は細い方がよいと考えられるが、3μmよりも細いと溶融混練中等に強化短繊維が折れて長い繊維長を維持することが困難となる。一方、30μmを越えると繊維としての補強効果が充分に発揮されなくい。
【0045】
この強化短繊維10bの繊維長も限定されるものではなく、目的に合致されて適宜選択すればよい。一般に繊維長が長い方が効果的に熱伸縮性を低減させる効果が高い。繊維長が短すぎると熱伸縮性の低減効果、補強効果が小さく、また長すぎると強化層全体に均一に分散させるのが困難となる。通常0.03mm〜3mm程度の範囲から選択される。
【0046】
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンの単独重合体、またはこれらの共重合体が必要に応じて用いられている。これらのポリオレフィンは混合(ブレンド)されていてもよい。
【0047】
極性基が付与された変性ポリオレフィンとしては、例えば、カルボキシル基、エポキシ基などの極性基を有するポリオレフィンが例示される。これらの極性基の種類や極性基濃度は、充填される強化短繊維の種類やその表面処理状況に応じて適宜選択される。この変性ポリオレフィンは例えば、ポリオレフィンの重合時に変性モノマーを添加して共重合する方法や、ポリオレフィンに変性モノマーを加えて必要により触媒存在下、加熱下で混合するなどして製造される。
【0048】
変性モノマーとしては、例えば、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびこれらの酸無水物などの不飽和カルボン酸及びその無水物が挙げられる。変性ポリオレフィン中の極性基濃度は、とくには限定されないが、一般には0.5〜10モル%程度含まれる。
【0049】
これらのポリオレフィン、変性ポリオレフィン(以下ポリオレフィン系という。)には、通常成形材料として用いられるように、酸化防止剤、耐衝撃向上剤、安定剤、顔料、染料などの着色剤、その他のフィラー(充填材)がこの発明の効果を損なわない範囲で適宜に選択され、添加されて成形用樹脂として利用される。また、これらのポリオレフィン系の分子量は、得られる雨樋の要求性能、成形性などを考慮して適宜選択される。
【0050】
ポリオレフィン樹脂9と、変性ポリオレフィン樹脂10aとの組み合わせは、互いが熱融着する程度の相溶性があるものが望ましい。同一骨格の樹脂を選択すると、相溶性がよいので融着されて一体化が確実に行える。したがって同一骨格の樹脂で製作された雨樋は使用中に経時変化を受け難く、耐久性がよい。例えばポリオレフィン樹脂9としてポリプロピレン樹脂を用いた場合、変性ポリオレフィン樹脂10aとしては変性ポリプロピレン樹脂を用いることがよい。
【0051】
つぎに、この繊維複合雨樋8を製造する方法と装置について説明する。
【0052】
図3は、この発明の繊維複合雨樋8を製造するための成形装置11の工程図である。この成形装置11は、メインの押出し機12、押出し金型(ダイ)13、冷却サイジング装置14、引き取り装置15、切断装置16、搬送台17が一列に配列されている。押出し機12は、ポリオレフィン樹脂9を供給するホッパー12a、内部にスクリュウを備え外部がヒーターで覆われることにより樹脂を溶融混練するバレル部12b、バレルの途中にベント部(不図示)とを備えている。バレル12bの途中にT字配列に押出し機18が接続されている。押出し機18は変性ポリオレフィン樹脂10aで被覆された強化短繊維10bを押し出すためのもので、変性ポリオレフィン樹脂10aを供給するホッパー18a、内部にスクリュウを備え外部がヒーターで覆われることにより樹脂を溶融混練するバレル部18bとを備えている。押出し機18のバレル18b途中には、繊維供給押し込みフィーダー19が接続されている。
【0053】
ポリオレフィン樹脂9が必要な添加剤とともにホッパー12aへ供給される。その樹脂9はバレル12b内で溶融混練され溶融相が形成される。一方、ホッパー18aへは変性ポリオレフィン樹脂10aが必要な添加剤とともに供給され、繊維供給押し込みフィーダー19へは強化短繊維10bが供給される。変性ポリオレフィン樹脂10aはバレル18b内において溶融・混練され溶融されると共に、バレル18bの途中から強化短繊維10bを受け入れてさらに溶融混練される。これにより強化短繊維10bが均一に分散された変性強化溶融相が形成される。この変性強化溶融相は、押出し機12のバレル12bのベント手前に送り込まれる。
【0054】
バレル12bでは、溶融相中に変性強化溶融相が島状に分布して分散された複合溶融相が形成される。この複合溶融相は、金型13へ送り出される。金型13では、この複合溶融相を受けて、金型リップより雨樋形状に成形品を押し出す。この押し出された成形品は冷却サイジング装置14において冷却されつつ引き取り装置15により引き取られて雨樋形状に正確に寸法が規制される。ついで切断装置16により一定長さに切断されて搬送装置17により繊維複合雨樋8が排出される。
【0055】
実施例1
ポリオレフィン樹脂9としてポリプロピレン樹脂(三菱化学製ポリプロEA9)、変性ポリオレフィン樹脂10aとして酸変性ポリプロピレン樹脂(三井石油製アドマーQB550、無水マレイン酸変性)、強化短繊維10bとしてガラス繊維チョップ(日東紡製CSPE946:平均繊維直径23μm、平均繊維長4mm)を用い、図3に示す成形装置11を使用して繊維複合雨樋8を製作した。
【0056】
得られた繊維複合雨樋8の繊維量は体積比で10%、変性ポリオレフィン樹脂の割合は総樹脂中の10重量%、成形品の厚みは1.8mmであった。
【0057】
実施例2
強化短繊維10bとしてガラス繊維チョップに代えてカーボン繊維チョップ(東邦レーヨン製ベスファイトHTA−C6−SR、平均繊維直径7μm、平均繊維長6mm)を用いた以外は実施例1と同様にして繊維複合雨樋8を製作した。
【0058】
実施例3
変性ポリオレフィン樹脂10aとして酸変性プロピレン樹脂に代えてエポキシ変性ポリプロピレン樹脂(日本油脂製ブレンマーCP−15)を用いた以外は実施例1と同様にして繊維複合雨樋8を製作した。
【0059】
実施例4
変性ポリオレフィン樹脂10aとして酸変性プロピレン樹脂に代えてエポキシ変性ポリプロピレン樹脂(日本油脂製ブレンマーCP−15)を用いた以外は実施例2と同様にして繊維複合雨樋8を製作した。
【0060】
比較例1
実施例1と同じ酸変性ポリプロピレン樹脂の10重量部と、実施例1と同じポリプロピレン樹脂の90重量部との混合物Aを用い、ホッパー12aにはその混合物Aの90重量部を供給し、ホッパー10aにはその混合物Aの10重量部を供給した以外は実施例1と全く同様にして繊維複合雨樋8を製作した。
【0061】
得られた繊維複合雨樋8の繊維量は体積比で10%、変性ポリオレフィン樹脂の割合は総樹脂中の10重量%、成形品の厚みは1.8mmであった。
【0062】
比較例2
実施例2と同じ酸変性ポリプロピレン樹脂の10重量部と、実施例2と同じポリプロピレン樹脂の90重量部との混合物Aを用い、ホッパー12aにはその混合物Aの90重量部を供給し、ホッパー10aにはその混合物Aの10重量部を供給した以外は実施例2と全く同様にして繊維複合雨樋8を製作した。
【0063】
比較例3
実施例3と同じエポキシ変性ポリプロピレン樹脂の10重量部と、実施例3と同じポリプロピレン樹脂の90重量部との混合物Bを用い、ホッパー12aにはその混合物Bの90重量部を供給し、ホッパー10aにはその混合物Bの10重量部を供給した以外は実施例3と全く同様にして繊維複合雨樋8を製作した。
【0064】
比較例4
実施例4と同じエポキシ変性ポリプロピレン樹脂の10重量部と、実施例4と同じポリプロピレン樹脂の90重量部との混合物Bを用い、ホッパー12aにはその混合物Bの90重量部を供給し、ホッパー10aにはその混合物Bの10重量部を供給した以外は実施例4と全く同様にして繊維複合雨樋8を製作した。
【0065】
実施例1〜4、比較例1〜4により得られた繊維複合雨樋8から、底部壁8aの一部を切り出し、雨樋8の長手方向の線膨張率をTMAを用いて測定した。結果をまとめて表1に示した。
【0066】
【表1】
ポリオレフィン樹脂の線膨張率はガラス繊維などの強化短繊維で強化されることにより一般に低下されるが、実施例と比較例との対比で明らかなとおり、変性ポリオレフィン樹脂10aを強化短繊維10bの周囲に被覆した後にマトリクス樹脂9中に溶融分散させて製造された繊維複合雨樋8の線膨張率はさらに低減される。
【0067】
以上、この発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施の形態に限らず、この発明の要旨を逸脱しない範囲の変更等があってもこの発明に含まれる。
【0068】
例えば、繊維複合雨樋8は、必要に応じて壁の外表面に別の樹脂層を製造工程中または工程後に付与することができる。
【0069】
また、実施の形態では、強化短繊維を変性オレフィン中に分散させるのに、予め変性ポリオレフィン樹脂を押出し機などで溶融混練しつつ、強化短繊維をバレル途中で投入していたが、強化短繊維と変性オレフィン粉末をドライブレンドした後、二軸押出し機などで溶融・混練してもよい。また予め繊維を分散した状態でペレット化された変性樹脂をホッパー12aに投入することもできる。
【0070】
【発明の効果】
以上説明してきたことから、請求項1の発明によれば、強化短繊維の表面に極性基を付与された変性ポリオレフィンが被覆されているので、繊維複合雨樋の熱伸縮性が低減される。これにより、温度変化による変形が小さく、樋の破損が生じにくい。また樹脂がポリオレフィン系であるので、熱安定性に優れリサイクルが容易である。また、ポリオレフィン系は易燃性であるので、焼却も容易で熱によるリサイクルもできる。
【0071】
またこの繊維複合雨樋は一工程で製造できる。したがって、製造工数が簡略化されコストの低減が図れる。
【0072】
請求項2の発明では、変性ポリオレフィン樹脂とポリオレフィン樹脂とが強固に固着され、線膨張率がさらに低減される。これにより、雨樋の温度変化による変形が発生せず、樋の継ぎ目での破損が生じない。
【0073】
請求項3の発明では、極性基の好ましい例が選択される。
【0074】
請求項4の発明では、相溶性のよい樹脂の組合せが選択され、これにより融着一体化されて繊維複合雨樋の耐久性が向上される。
【0075】
請求項5の発明では、ポリオレフィン樹脂として広い範囲の樹脂を用いることができる。従って、例えば、強度のある廉価な樹脂を選択して雨樋を製造できる。
【0076】
請求項6の発明では、強化短繊維として広い範囲の強化短繊維を用いることができる。従って、例えば、補強効果のある廉価な強化短繊維を選択して雨樋を製造できる。
【0077】
請求項7の発明では、強化短繊維の好ましい充填量が選択され、この範囲では補強効果が大きく、また強化短繊維の分散性がよい。従って温度による変形も少ない。
【0078】
請求項8の発明では、強化短繊維の好ましい繊維径が選択され、この範囲では、補強効果が大きい。従って、この範囲では、温度変化による変形も少ない。
【0079】
請求項9の発明では、本発明の繊維複合雨樋が一工程で製造される。したがって、製造工数が簡略化されコストの低減が図れる。
【0080】
請求項10の発明では、界面が融着一体化されて耐久性の向上された繊維複合雨樋が一工程で製造できる。
【0081】
請求項11の発明では、樹脂と繊維との混練時間が少ないので、混練中の強化繊維の粉砕が少なく、繊維長の長い繊維複合雨樋が製造できる、という実用上有益な効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の繊維複合雨樋8を説明する斜視断面図である。
【図2】図1の繊維複合雨樋8の壁部の強化短繊維の分散状態を説明する模式図である。
【図3】実施の形態の繊維複合雨樋8を製造するための成形装置11を説明するための工程図である。
【図4】従来の雨樋1を説明する一部切欠斜視図である。
【図5】図4の雨樋1の断面図である。
【図6】従来の繊維複合雨樋7を説明する斜視断面図である。
【符号の説明】
8 繊維複合雨樋
9 ポリオレフィン樹脂(マトリクス樹脂)
10a 変性オレフィン樹脂
10b 強化短繊維
12 押出し機(メイン)
13 金型
14 冷却サイジング装置
15 引き取り装置
16 切断装置
18 押出し機(サブ)
Claims (11)
- 雨樋形状に成形された成形体であって、該成形体は、強化短繊維を内包し極性基を有する変性ポリオレフィン樹脂が、ポリオレフィン樹脂をマトリクスとしてその中に分散されて形成されたことを特徴とする繊維複合雨樋。
- 前記ポリオレフィン樹脂と前記変性ポリオレフィン樹脂とは融着一体化されていることを特徴とする請求項1に記載の繊維複合雨樋。
- 前記極性基は、カルボキシル基またはエポキシ基であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の繊維複合雨樋。
- 前記強化短繊維を内包する変性ポリオレフィン樹脂と前記マトリクスを形成するポリオレフィン樹脂とは同一骨格のポリオレフィン樹脂であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の繊維複合雨樋。
- 前記ポリオレフィン樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンの単独重合体、またはこれらの共重合体から選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の繊維複合雨樋。
- 前記強化短繊維はガラス繊維、カーボン繊維、アルミナ繊維などの無機繊維、アラミド繊維などの有機繊維から選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の繊維複合雨樋。
- 前記強化短繊維の充填量は、マトリクス樹脂の総量の2〜30容量%であることを特徴とする請求項6に記載の繊維複合雨樋。
- 前記強化短繊維の平均直径は、3〜30μmであることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の繊維複合雨樋。
- 強化短繊維が極性基を有する変性ポリオレフィン樹脂中に分散された変性強化樹脂をポリオレフィン樹脂の樹脂溶融相中に投入し、混練して前記ポリオレフィン樹脂の溶融相をマトリクスとしてその中に前記変性強化樹脂が分散された複合溶融相とされ、該複合溶融相は、溶融押出し金型へ送り出され、該金型から雨樋の長さ方向に溶融押出し成形されることを特徴とする繊維複合雨樋の製造法。
- 樹脂を溶融混練する第1のバレル部を備えた第1の押出し機ではポリオレフィン樹脂が供給され、溶融混練されて溶融相が形成されると共に、
樹脂を溶融混練する第2のバレル部を備えた第2の押出し機には極性基の付与された変性ポリオレフィン樹脂と強化短繊維とが供給され、溶融混練されて変性ポリオレフィン樹脂中に強化短繊維が分散された変性強化溶融相が形成され、
該変性強化溶融相は前記第1のバレル部の途中に供給され、前記ポリオレフィン樹脂の溶融相をマトリクスとしてその中に前記変性強化溶融相が分散された複合溶融相とされ、
該複合溶融相は、溶融押出し金型へ送り出され、該金型から雨樋の長さ方向に溶融押出し成形されることを特徴とする繊維複合雨樋の製造法。 - 前記強化短繊維は、前記第2のバレル途中から供給されることを特徴とする請求項10に記載の繊維複合雨樋の製造法。
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