JPH11293560A - ポリビニルアルコール系繊維及びその製造方法 - Google Patents

ポリビニルアルコール系繊維及びその製造方法

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JPH11293560A
JPH11293560A JP9743898A JP9743898A JPH11293560A JP H11293560 A JPH11293560 A JP H11293560A JP 9743898 A JP9743898 A JP 9743898A JP 9743898 A JP9743898 A JP 9743898A JP H11293560 A JPH11293560 A JP H11293560A
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JP
Japan
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fiber
polyvinyl alcohol
pva
sulfuric acid
aqueous solution
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JP9743898A
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English (en)
Inventor
Hideki Kamata
英樹 鎌田
Toshinori Yoshimochi
駛視 吉持
Masahiro Sato
政弘 佐藤
Yoshinori Ando
由典 安藤
Yoshinori Hitomi
祥徳 人見
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Kuraray Co Ltd
Original Assignee
Kuraray Co Ltd
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Publication date
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  • Curing Cements, Concrete, And Artificial Stone (AREA)
  • Treatments For Attaching Organic Compounds To Fibrous Goods (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【課題】繊維製造時に架橋剤が延伸時の熱で酸化される
ことがほとんどなく、さらに架橋剤が繊維表面のみなら
ず繊維内部まで十分に浸透し、しかも浸透した架橋剤が
ほぼ完全に反応した高強力・高耐湿熱性ポリビニルアル
コール系繊維を得る。 【解決手段】ポリビニルアルコール系ポリマーの溶液を
紡糸して得られる紡糸原糸を全延伸倍率14倍以上の延
伸を行い、ポリビニルアルコール系繊維を製造する際
に、2,4−ジメトキシテトラヒドロフランで代表され
る環状のアセタール化合物を架橋剤として含む該紡糸原
糸を乾熱延伸し、その後に酸により温和な架橋処理条件
下で架橋処理する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、繊維表面のみなら
ず繊維内部まで十分に架橋されていることにより極めて
優れた耐熱水性を有するポリビニルアルコール(以下P
VAと略す)系繊維に関する。特に本発明の繊維は、セ
メント製品の強度を高めるために補強材として使用する
際に高温のオートクレーブ中で水蒸気養生を行った場合
に、繊維内部まで十分に架橋されていることにより繊維
端面からのPVAの溶出がほとんど生じることがなく、
かつ十分な強度を有しているPVA系繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】PVA系繊維は、汎用繊維の中で最も高
強力高弾性率を有し、かつ接着性や耐アルカリ性が良好
なため、特に石綿代替のセメント補強材として脚光を浴
びている。しかしながらPVA系繊維は耐熱水性(耐湿
熱性とも称す)に乏しく、一般産業資材や衣料用資材と
して用いられるにしても用途が制限されている。たとえ
ばPVA系繊維をセメントの補強材として例いた場合
に、セメント製品を高温条件下でオートクレーブ養生す
ることが不可能であるという問題点を有している。現在
セメント製品の補強繊維としてPVA系繊維が用いられ
た場合には、やむなく室温又は低温加熱条件でのオート
クレーブ養生に頼っており、セメント製品の寸法安定性
や強度が十分でなく、養生日数が長くなるという問題が
ある。
【0003】PVA系繊維の耐熱水性を高める試みは古
くから行われており、例えば特公昭30−7360号公
報や特公昭36−14565号公報には、ホルマリンを
用いて、PVAの水酸基同士をホルマリンにより架橋反
応(ホルマール化)させることにより疎水化すること、
そしてこの方法により得られる繊維は染色や洗濯に耐え
得る耐熱水性を有していることが記載されている。しか
しながらこれらの方法で得られるPVA系繊維は本発明
で必要とするような、すなわち高温オートクレーブ養生
に耐え得るような高度な耐熱水性を有しておらず、さら
に強度も低い。
【0004】また特開昭63−120107号公報に
は、高強力PVA系繊維をホルマール化することが記載
されているが、ホルマール化度が5〜15モル%と低
く、PVA系繊維の非晶領域のごく一部がホルマール化
により疎水化されているに過きず、耐熱水性は十分では
なく、繰り返し長期間湿熱にさらされる産業資材や高温
オートクレーブ養生されるセメント補強材には到底使用
できるものではない。
【0005】一方、特開平2−133605号公報(対
応ヨーロッパ特許第351046号、対応米国特許第5
283281号)や特開平1−207435号公報に
は、PVA系繊維にアクリル酸系重合体をブレンドして
PVAの水酸基を架橋するか、又は繊維表面に有機系過
酸化物やイソシアネート化合物、ウレタン化合物、エポ
キシ化合物などで付与してPVAの水酸基を架橋させて
耐熱水性を高める方法が記載されている。しかしアクリ
ル酸系重合体による架橋はエステル結合であるため、セ
メントのアルカリで容易に加水分解してその効果を失
い、また他の架橘剤も繊維表面の架橋であるため、オー
トクレーブ養生中や繰り返し湿熱にさらされる時に繊維
の中心部から膨潤、溶解が起こる等の問題点を抱えてい
る。
【0006】他に酸を用いて脱水架橋により耐湿熱性を
向上させる方法が特開平2−84587号公報や特開平
4−100912号公報などで公知であるが、本発明者
等が追試したところ、繊維内部まで架橋させようとする
とPVA系繊維の分解が激しく起こり、繊維強度の着し
い低下を招くことが判明した。
【0007】一方、ジアルデヒド化合物による架橋は特
公昭29−6145号公報や特公昭32−5819号公
報などに明記されているが、ジアルデヒド化合物と反応
触媒である酸の混合浴で後処理するため、繊維分子が高
度に配向結晶化した高強力PVA系繊維ではジアルデヒ
ド化合物が繊維内部まで浸透しずらく繊維内部の架橋が
困難であった。また特開平5−163609号公報や特
開平9−132816公報ではジアルデヒド又はそのア
セタール化物を紡糸原糸に付与し、高倍率に乾熱延伸し
たあと酸処理することにより、確かに繊維表面のみなら
ず繊維内部にも架橋を生じさせることができる。しか
し、上記の場合、ジアルデヒドを用いると乾熱延伸時
に、アルデヒドは一部酸化されてカルボン酸になり、架
橋剤としての役割を果たさない。また、ジアルデヒドの
アセタール化物を用いた場合、熱による酸化は防げるも
のの、ジアルデヒドに比べ反応性が低く、一部は片末端
で反応が止まり、架橋剤が有効に反応せず、耐熱性に必
要な分子間架橋が生じにくいといった問題が生じる。
【0008】以上要するに、従来公知の、繊維内部まで
架橋剤を浸透させるために繊維が結晶配向化していない
乾熱延伸前に架橋剤を繊維に付与するためにジアルデヒ
ドのアセタール化物を用いる方法の場合には、ポリビニ
ルアルコールとの反応性が低下し、その結果完全な架橋
反応が生じず、一方乾熱延伸を行った後の繊維に架橋剤
を付与する場合には、繊維内部まで架橋剤が浸透しずら
く、繊維内部に十分な架橋が形成されないという問題点
を有している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、高い強度を
維持させ、かつ耐熱水性向上に有効な架橋を繊維表面の
みならず繊維内部まで生じさせ、また架橋剤が乾熱延伸
時の熱により酸化されることがほとんどなく、さらに浸
透した架橋剤をほぼ完全に反応させる方法およびそれに
より得られる高強力・高耐熱水性を有するPVA系繊維
に関するものである。本発明者等は、特定の構造を持っ
たジアルデヒドのアセタール化合物を架橋剤として用
い、特定の方法で架橋させることにより、従来技術では
得られなかった、耐熱水性及び高い強度を有するPVA
系繊維が得られることを見いだし、本発明に到達した。
【0010】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、下記
化5および化6で示される構造を持つ脂肪族ジアルデヒ
ドの環状アセタール化物より架橋されているPVA系繊
維であり、好ましくは、繊維の内部架橋指数(CI)と
繊維の引張強度(DT)が次式(1)〜(3)を満足し
ているPVA系繊維である。
【化5】
【化6】 CI≧86.5−2×10-6×(DT)5.8 ・・・(1) CI≧75・・・(2) DT≧5g/d・・・(3)
【0011】また本発明は、PVA系ポリマーの溶液を
紡糸し、湿延伸して得られるPVA系繊維に前記化5ま
たは化6で示される構造を持つ脂肪族ジアルデヒドの環
状アセタール化物を含有させたのち乾熱延伸した後、酸
水溶液浴、好ましくは下記式(4)を満足する硫酸水溶
液浴で処理することを特徴とするPVA系繊維の製造方
法である。 137/C0.05−47≦T≦137/C0.05−25 ・・・(4) 〔但し、Cは硫酸水溶液浴の硫酸濃度(g/l)、Tは
処理温度(℃)を意味する。〕
【0012】以下本発明について詳細に説明する。まず
本発明でいうPVA系ポリマーとは、粘度平均重合度が
1500以上で、ケン化度が98.5モル%以上のも
の、好ましくはケン化度99.0モル%以上のものであ
る。PVA系ポリマーの平均重合度が高いほど結晶間を
連結するタイ分子の数が多く、かつ欠点となる分子末端
数が少なくなるので、高強度、高弾性率、高耐熱水性が
得られやすく好ましく、特に重合度1700以上が好ま
しく、さらにより好ましくは2000以上である。但
し、重合度30000を越えるようなPVA系ポリマー
は一般的に製造が難しく、工業生産ということからは必
ずしも適したものとは言えない。またエチレン、アリル
アルコール、イタコン酸、アクリル酸、無水マレイン酸
とその開環物、アリールスルホン酸、ピバリン酸ビニル
の如き脂肪酸ビニルエステル、ビニルピロリドンや上記
イオン性基の一部又は全量中和物などの変性ユニットに
より変性したPVA系ポリマーも包含される。変性ユニ
ットの量は2モル%以下が好ましく、より好ましくは1
モル%以下である。
【0013】PVA系ポリマーを紡糸するためには、ま
ずPVA系ポリマーを溶剤に溶解し、脱泡して紡糸原液
を得る。この際の溶剤としては、例えばグリセリン、エ
チレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレ
ングリコール、ブタンジオールなどの多価アルコール類
やジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジエ
チレントリアミン、水およびこれら2種以上の混合溶媒
などが拳げられる。特にジメチルスルホキシドや、グリ
セリン、エチレングリコールなどの多価アルコール類が
凝固浴に投入した際に均一なゲル構造を生成し、その結
果高強度の繊維が得られる点で好ましい。またPVA系
ポリマーを溶剤に溶解した紡糸原液には、ホウ酸、界面
活性剤、分解抑制剤、各種安定剤、染料、顔料などが添
加されていてもよい。ただし紡糸性や延伸性を悪化させ
るようなものは好ましくない。
【0014】紡糸原液中のPVA系ポリマー濃度として
は5〜50重量%が好ましく、特に湿式紡糸方法又は乾
湿式紡糸方法を用いる場合には5〜20重量%が、また
乾式紡糸方法を用いる場合には10〜50重量%が好ま
しい。また紡糸原液の温度としては100〜230℃が
一般的である。
【0015】このようにして得られた紡糸原液を湿式、
乾式、乾湿式のいずれかの紡糸方法により紡糸して固化
する。湿式又は乾湿式紡糸方法では、凝固浴にて固化し
繊維化させるが、その際の凝固溶液としては、メタノー
ル、エタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエ
チルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ア
ルカリ水溶液、アルカリ金属塩水溶液など、あるいはこ
れらの混合液が用いられる。なお凝固における溶剤抽出
をゆっくりと行わせて均一ゲル構造を生成させ、より高
い強度と耐熱水性を得るために、該凝固溶液に紡糸原液
を構成する溶剤を10重量%以上混合させるのが好まし
い。特にメタノールで代表されるアルコールと原液溶媒
との重量比が9/1〜6/4の混合溶媒が好ましい。さ
らに凝固溶液を20℃以下にして、吐出された紡糸原液
を急冷させるのも均一な微結晶構造のゲル、すなわち高
強度繊維を得る上で好ましい。さらに凝固浴温度を10
℃以下にすると凝固糸後がさらに均質となるので好まし
い。
【0016】このようにして固化された繊維は、繊維間
の膠着を少なくし、その後の乾熱延伸を容易にするため
に溶剤を含んだ状態で2倍以上の湿延伸を行うのが好ま
しい。なお、凝固溶液がアルカリ水溶液あるいはアルカ
リを含む液の場合には、湿延伸の前に、張力下で中和を
行うのが好ましい。次いで溶剤抽出を行うが、抽出剤と
しては、メタノール、エタノール、プロパノールなどの
第1級アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、
メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトンなどの
ケトン類や、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル
などのエーテル類、および水などが使用される。続い
て、必要に応じて油剤などを付与して該抽出繊維を乾燥
させる。乾式紡糸方法の場合には、抽出剤を使用せずに
紡糸時および紡糸後に該溶剤を蒸発させて乾燥糸条を得
る。
【0017】本発明方法の最も大きな特徴点のひとつ
は、前記化5または化6で示される構造を持つ脂肪族ジ
アルデヒドの環状アセタール化物を架橋剤として用いる
点にある。そしてこのようなアセタール化物を、紡糸か
ら乾燥までの間のいずれかの工程で紡糸原糸に付与し、
紡糸原糸の内部まで該アセタール化物を浸透させる。該
アセタール化物は、繊維を乾熱延伸する際に熱により酸
化されることがなく、延伸後も繊維内部に安定に存在
し、その後の酸処理においてほぼ完全に架橋反応が進行
するため、175〜180℃のオートクレーブ養生に耐
え得る耐熱水性が達成されるに十分な架橋結合をもたら
す。さらにこのようなアセタール化物であっても繊維を
乾燥、延伸した後に付与した場合には、繊維内部までア
セタール化物が浸透しずらく、繊維表面が一方的に架橋
されることとなるため耐熱水性の点で十分満足できるも
のを得ることが難しい。
【0018】以上のことより、本発明では架橋剤とし
て、従来用いられている架橋剤と比べて反応性に富んだ
脂肪族ジアルデヒドの環状アセタール化物を用いる。そ
して好ましくはこのような架橋剤を紡糸から乾燥までの
間のいずれかの工程で紡糸原糸に付与する。その結果、
後述する特定の架橋処理条件とあいまって175〜18
0℃のオートクレーブ養生に耐え得るPVA系繊維が得
られる。
【0019】特に本発明において、該アセタール化物の
好ましい付与方法は、抽出浴のアルコールやケトン類な
どに該アセタール化物を添加溶解し、抽出浴を通過中の
膨潤状態の糸条中に該アセタール化物を浸透させる方法
であり、この方法を用いると繊維内部まで容易に該アセ
タール化物が浸透することとなる。したがって本発明に
おいては、紡糸方法として、抽出浴を用いる湿式紡糸方
法又は乾湿式紡糸方法を用いるのが好ましい。
【0020】本発明で言う脂肪族アルデヒドの環状アセ
タール化物としては、例えば、2,5−ジメトキシテト
ラヒドロフラン、2,5−ジエトキシテトラヒドロフラ
ン、2,5−ジプロポキシテトラヒドロフラン、2,5
−ジブトキシテトラヒドロフラン、2,5−ジペントキ
シテトラヒドロフラン、2,6−ジメトキシテトラヒド
ロピラン、2,6−ジエトキシテトラヒドロピラン、
2,6−ジプロポキシテトラヒドロピラン、2,6−ジ
ブトキシテトラヒドロピラン、2,6−ジペントキシテ
トラヒドロピラン、2,3−ジヒドロ−2−メトキシフ
ラン、2,3−ジヒドロ−2−エトキシフラン、2,3
−ジヒドロ−2−プロポキシフラン、2,3−ジヒドロ
−2−ブトキシフラン、2,3−ジヒドロ−2−ペント
キシフラン、3,4−ジヒドロ−2−メトキシ−2H−
ピラン、3,4−ジヒドロ−2−エトキシ−2H−ピラ
ン、3,4−ジヒドロ−2−プロポキシ−2H−ピラ
ン、3,4−ジヒドロ−2−ブトキシ−2H−ピラン、
3,4−ジヒドロ−2−ペントキシ−2H−ピランなど
である。なお、ジアルデヒドをアルコール類で両末端を
アセタール化したものは、ジアルデヒドに比べて反応性
が低下するため、両末端とも完全に反応することはでき
ず、有効な架橋が形成できない。一方、架橋剤にジアル
デヒドを用いた場合、乾熱延伸時に酸化をうけて一部カ
ルボン酸を生じ、これがPVAを分解させたり、延伸時
に一部が架橋してPVA分子間を固定するため、所望の
延伸倍率が得られず、高強力繊維が得られない。さらに
は、分解による発煙や分解ガス等の発生により作業環境
の汚染という問題を生じることになる。
【0021】このように、脂肪族ジアルデヒドの場合に
は、乾熱延伸条件で熱と酸素により酸化されてカルボン
酸に変わり、延伸時に一部の架橋が起こり、PVA分子
間を固定し、所望の延伸倍率が得られず、高強力繊維が
得られず、さらに乾熱延伸時に分解による発煙や分解ガ
ス等により作業環境の汚染という問題点も生じることと
なるため、アセタール化することで酸化を防止できる
が、ジアルデヒドに比べPVAの水酸基との反応性が低
下するために、両末端とも完全に反応することはできな
い。架橋剤として脂肪族ジアルデヒドの環状アセタール
化物を用いた場合、乾熱延伸時には酸化されることな
く、その後の酸処理により速やかに開環して反応性の高
いジアルデヒドを生じるため、両末端ともPVAとほぼ
完全に反応し、耐熱水性に優れた繊維を得ることができ
る。
【0022】特に好ましい脂肪族ジアルデヒドの環状ア
セタール化物の具体例としては、スクシンアルデヒドの
環状アセタールである2,4−ジメトキシテトラヒドロ
フランが挙げられ、このアセタール化物は繊維の強度低
下を抑え、耐熱水性に有効な分子間架橋を生成させる点
において極めて優れている。さらにこの化合物は熱に極
めて安定である。
【0023】本発明における該アセタール化物の付着量
としては、乾熱延伸糸に対して0.3〜10重量%が好
ましく、より好ましくは0.7〜6重量%である。付着
量が0.3重量%未満では架橋密度が少ないため耐熱水
性が不十分となり、10重量%を越えると分子配向を乱
したり、PVA系ポリマーの分解が促進されて、強度低
下を招きやすい。
【0024】次いで高温養生FRCの補強繊維として使
用する場合は、高強度を維持するために、該アセタール
化物を含有する乾燥処理後の紡糸原糸を210℃以上2
60℃以下、好ましくは220℃以上240℃以下で全
延伸倍率が14倍以上、好ましくは17倍以上の乾熱延
伸を行う。ここで言う全延伸倍率とは、乾燥処理前に行
った湿延伸の延伸倍率と乾燥延伸の延伸倍率の積で表さ
れる値である。全延伸倍率が14倍未満の場合には、本
発明が目的とする高強力繊維が得られない。より好まし
くは湿延伸倍率2〜5倍で乾熱延伸倍率3〜10倍の延
伸である。なお乾熱延伸温度としては、PVA系ポリマ
ーが高重合度であるほど高くするのが好ましいが、26
0℃を越えるとPVA系ポリマーの溶融や分解が起こり
好ましくない。
【0025】このようにして得られた、脂肪族ジアルデ
ヒドの環状アセタール化物を含有した延伸繊維は、通
常、引張強度10g/d以上を有している。引張強度が
10g/d未満の場合には、その後に行う架橋処理によ
り繊維の引張強度が大きく低下するため好ましくない。
より好ましくは12g/d以上の引張強度を有している
場合である。
【0026】具体的な架橋処理としては、酸を含有する
水溶液浴中に前記脂肪族ジアルデヒドの環状アセタール
化物を含有した延伸繊維を5〜120分間浸漬する方法
が用いられ、その方法によりPVA系ポリマーの水酸基
と該アセタール化合物との間で反応が起こり、分子間架
橋が生じることとなる。なお、この際の、浴中の酸とし
て硫酸を用いることが好ましく、さらに浴中の硫酸濃度
(g/1)と処理温度(浴温度)との関係が下記の式
(4)を満足しているのが特に好ましい。 137/C0.05−47≦T≦137/C0.05−25 ・・・(4) 〔但し、Cは硫酸水溶液浴の硫酸濃度(g/l)、Tは
処理温度(℃)を意味する。〕
【0027】処理温度(T)が137/C0.05−47よ
り低い場合には架橋が十分に進まなく、一方137/C
0.05−25より高い場合には強度低下が大きくなる。よ
り好ましくは下記式(5)を満足している場合である。 137/C0.05−43≦T≦137/C0.05−32・・・(5) 上記(4)で規定する硫酸濃度と処理温度の条件下を採
用し、かつ前記したような特殊な架橋剤を用いることに
より、特に繊維の内部まで十分に架橋反応が進行し、1
75℃以上のオートクレーブ養生にも耐え得る驚くべき
耐熱水性が得られるのである。なお、架橋処理の際に
は、硫酸とともにホルマリンを添加し、ホルマール化を
同時に起こさせてもよい。さらには少量の塩化亜鉛や塩
化マグネシウム、界面活性剤などを添加し架橋を促進さ
せてもよい。
【0028】本発明において、上記架橋処理は、繊維を
所定の長さ、例えば繊維がステープルとして利用される
場合には15〜100mm長に、またセメント補強用繊
維等のショートカット繊維として用いられる場合には、
2〜15mm長にカットした後に行うのが繊維の耐熱水
性を高める上で好ましい。架橋した後に繊維をカットす
ると、カットした断面は繊維局面と比べて架橋の程度が
低く、苛酷な温熱条件ではカットした断面からPVAが
溶出するという問題が生じるが、カットした後に架橋処
理を行うと、カットした断面も繊維周面と同様に十分に
架橋が行われているため、苛酷な湿熱条件でもカットし
た断面からPVAが溶出することがない。
【0029】このような方法により得られる好適なPV
A系繊維は、下記式(1)〜(3)を同時に満足してい
る。 CI≧86.5−2×10-6×(DT)5.8 ・・・(1) CI≧75・・・(2) DT≧5g/d・・・(3) 上記式中、CIは内部架橋指数、DTは繊維の引張強度
を表す。
【0030】上記式(1)及び(2)を満足できない場
合には、175℃以上のオートクレーブ養生に耐えるこ
とが難しく、また上記式(3)を満足できない場合に
は、強度が要求されるセメント補強では性能向上には寄
与せず、175℃以上のオートクレーブ養生に用いるセ
メント補強用繊維として利用価値のないものになる。よ
り好ましくは下記式(6)〜(8)を満足する場合であ
る。 CI≧90−2×10-6×(DT)5.8・・・(6) CI≧80・・・(7) DT≧5g/d・・・(8)
【0031】オートクレーブの如くセメント中で繊維が
固定されている場合は、CI≧80でDT≧14g/d
と高強度であるのが好ましい。但しCI>99でDT>
25g/dを満足する繊維は工業的に製造することが難
しい。本発明で得られるPVA系繊維は、高温養生FR
Cや耐水性の必要な一般産業資材に用いられる。
【0032】
【実施例】以下本発明を実施例及び比較例により詳細に
説明する。実施例及び比較例において%や部は特にこと
わりがない場合は重量に基づく値を意味する。なお、本
発明における各種の物性値は以下の方法により測定され
る値である。
【0033】1.PVA系ポリマーの粘度平均重合度
(P) JISK−6726に基づき、30℃におけるPVA系
ポリマーの希薄水液の比粘度(ηsp)を5点測定し、
次式(9)により極限粘度〔η]を求め、さらに下記式
(10)により粘度平均重合度Pを算出した。なお試料
の未架橋延伸繊維を1〜10g/lの濃度になるよう
に、140℃以上の水に加圧溶解するが、完全溶解でき
ないゲル物が少量生成した場合は、そのゲル物を5μm
ガラスフィルターで濾過して、その濾過液の粘度を測定
した。またその時の水溶液濃度は、残差のゲル物重量を
試料重量より引いた補正値を用いて算出した。 [η]=1im(c→0)ηsp/c・・・(9) P=([η]×104/8.29)1.613・・・(10)
【0034】2.脂肪族ジアルデヒドのアセタール化物
の含有量 未架橋延伸糸を140℃以上の重水素化したジメチルス
ルホキシドに溶解せしめ、NMRによりPVA系ポリマ
ーのCH2基ピークに対するアセタール化物のピーク面
積比から算出し含有量を求めた。 3.内部架橋指数(CI) 試料約1g/を8mmにカットして重量W1を精秤し、
人工セメント水溶液(KOHを3.5g/lとNaOH
を0.9g/lとCa(OH)2を0.4g/l溶解し
た水溶液)100ccと共に、耐圧ステンレスポットに
入れて密栓した後、150℃で2時間処理する。次いで
残査を濾紙で濾過し、水洗後、乾燥して残査重量W2を
測定し、次式によりCIを算出する。 CI=W2/W1×100
【0035】4.繊維の引張強度(グラム/デニール:
g/d) JISL−1015に準じ、予め調湿された単繊維を試
長10cmになるように台紙に貼り、25℃×60%R
Hに12時間以上放置し、次いでインストロン1122
で2kg用チャックを用い、初荷重1/20g/d、引
張速度50%/分にて破断強度(すなわち引張強度)を
求め、n≧10の平均値を採用した。デニール(d)
は、1/20g/d、荷重下で30cm長にカットし、
重量法によりn≧10の平均値で示した。なおデニール
測定後の単繊維を用いて引張強度を測定し、1本ずつデ
ニールと対応させた。また、繊維長が短く繊維長10c
mを取ることができない場合には、最大長さを試料長と
して、上記測定条件にしたがって測定した。
【0036】5.耐オートクレーブ性(スレート板の湿
潤曲げ強度WBS) 4〜8mmの長さに切断したPVA系合成繊維を、抄造
法にて該繊維2重量部、パルプ3重量部、シリカ38重
量部、セメント57重量部の配合で湿式抄造し、50℃
で24時間一次養生したのち、160℃×15時間、1
70℃×15時間、175℃×10時間、180℃×1
0時間のいずれかの条件でオートクレーブ養生し、スレ
ート板を作製する。その後25×70×4mmの試験片を
切り出し、JISK−6911に準じて3日間水中に浸
漬したあと濡れた状態で、オートグラフを用いてスパン
長50mm、圧縮速度2mm/分で曲げ強度WBS(kg/c
m2)を測定した。なお、スレートの比重を1.6前後に
し、最終的に比重1.6に補正したWBSを記載した。
【0037】実施例1,2,3及び比較例1,2 粘度平均重合度が2400で、ケン化度が99.9モル
%のPVAを濃度12重量%になるようにジメチルスル
ホキシド(DMSO)に110℃で溶解し、得られた各
溶液を400ホールのノズルより吐出させ、メタノール
/ジメチルスルホキシド=7/3(重量比)からなる、
5℃の凝固浴で湿式紡糸した。さらに40℃のメタノー
ル浴で3.5倍に湿延伸したあと、メタノールで該溶媒
をほとんど全部除去した。最後のメタノール抽出浴に、
それぞれスクシンアルデヒドの環状アセタール化物であ
る2,5−ジメトキシテトラヒドロフランを2.6重量
%(実施例1)、5.3重量%(実施例2)、9.3重
量%(実施例3)、2,6−ジメトキシテトラヒドロピ
ランを4.1重量%(実施例4)、マロンアルデヒドの
両末端アルデヒドをメタノールにてアセタール化した
1,1,3,3−テトラメトキシプロパンを3.3重量
%(比較例1)、1,9一ノナンジアールの両末端アル
デヒドをエチレングリコールにてアセタール化した1,
9一ノナンジアール−ビスエチレンアセタールを4.9
重量%(比較例2)含むように添加して均一溶液とした
あとで、繊維を1.5分間滞留させてメタノール含有繊
維の内部及び表面に各アセタール化合物を含有させ、1
50℃にて乾燥した。得られた繊維原糸を、175℃、
200℃および230℃の3セクションからなる熱風炉
で全延伸倍率15倍の乾熱延伸を行い、約1800デニ
ール/400フィラメントのマルチフィラメントを得
た。次いで各延伸糸を硫酸80g/l、ホルムアルデヒ
ド100g/lの75℃水溶液に120分間浸漬して架
橋反応を起こさせた(C=80g/lでT=75℃の時
137/C0.05=110.0℃)。このようにして得ら
れた繊維をスレート板評価するために各架橋糸を8mm
にカットして使用した。以上の実施例及び比較例で得ら
れた繊維の平均重合度や物性等を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】以上の結果から明白なように、脂肪族アル
デヒドの環状アセタール化物で架橋した繊維は、従来の
技術では到達し得なかった180℃以上のオートクレー
ブにも耐え、高温養生スレートの補強性を製造を可能と
する。
【0040】
【発明の効果】本発明において、架橋剤として使用する
脂肪族ジアルデヒドの環状アセタール化物は、熱延伸時
に熱分解がなく、熱延伸前に該アセタール化物を繊維内
部に浸透させ熱延伸後に比較的温和な架橋処理条件下で
もはぼ完全に架橋を生じさせることより、従来にない高
強力で耐湿熱性に優れたPVA系繊維が得られる。本発
明の繊維は、ローブ、漁網、テント、土木シートなどの
一般産業資材はもちろんのこと、高温オートクレーブ養
生が行われるオートクレーブ養生セメント補強材の分野
に、さらにはポリエステル繊維と混紡して分散染料等で
高温染色が行われる衣料の素材などの分野等に幅広く利
用できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI D06M 101:24 (72)発明者 安藤 由典 岡山県倉敷市酒津2045番地の1 株式会社 クラレ内 (72)発明者 人見 祥徳 岡山県岡山市海岸通1丁目2番1号 株式 会社クラレ内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記化1または化2で示される構造の環状
    のアセタール化物により架橋されているポリビニルアル
    コール系繊維。 【化1】 【化2】
  2. 【請求項2】繊維の内部架橋指数(CI)と繊維の引張
    強度(DT)が次式(1)〜(3)を満足している請求
    項1に記載のポリビニルアルコール系繊維。 CI≧86.5−2×10-6×(DT)5.8 ・・・(1) CI≧75・・・(2) DT≧5g/d・・・(3)
  3. 【請求項3】ポリビニルアルコール系ポリマーの溶液を
    紡糸し、湿延伸して得られるポリビニルアルコール系繊
    維に、下記化3または化4で表される環状のアセタール
    化物を含有させたのち乾熱延伸した後、酸水溶液浴で処
    理することを特徴とするポリビニルアルコール系繊維の
    製造方法。 【化3】 【化4】
  4. 【請求項4】酸水溶液浴が下記式(4)を満足する硫酸水
    溶液浴である請求項3に記載の方法。 137/C0.05−47≦T≦137/C0.05−25 ・・・(4) 〔但し、Cは硫酸水溶液浴の硫酸濃度(g/l)、Tは
    処理温度(℃)を意味する。〕
  5. 【請求項5】乾熱延伸した繊維をカットファイバーと
    し、その後に硫酸含有浴で処理する請求項3に記載のポ
    リビニルアルコール系繊維の製造方法。
  6. 【請求項6】請求項1に記載された繊維により補強され
    たセメント製品。
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