JP3043163B2 - ポリビニルアルコール系合成繊維の製造方法 - Google Patents

ポリビニルアルコール系合成繊維の製造方法

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JP3043163B2
JP3043163B2 JP35473691A JP35473691A JP3043163B2 JP 3043163 B2 JP3043163 B2 JP 3043163B2 JP 35473691 A JP35473691 A JP 35473691A JP 35473691 A JP35473691 A JP 35473691A JP 3043163 B2 JP3043163 B2 JP 3043163B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐熱水性が要求される
産業資材、とりわけオートクレーブ養生を行うセメント
製品の補強(以下FRCと略記)用繊維として有用なポ
リビニルアルコール(以下PVAと略記)系合成繊維及
びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、石綿による健康障害が明らかにさ
れ、その使用規制が進んでいる。PVA系合成繊維は汎
用繊維の中で最も高強力、高弾性であり、かつセメント
との接着性及び耐アルカリ性が良好であるためFRC分
野での石綿代替素材として急速にその需要が伸びてい
る。しかしながら、PVA系合成繊維は、元来、耐湿熱
性に乏しく湿熱条件下では溶解してしまうため、オート
クレーブ養生は不可能であり専ら室温養生に用いられて
きた。現在、オートクレーブ養生における石綿代替素材
として炭素繊維が一部用いられているが、セメントマト
リックスとの接着性が悪く補強効果に乏しいことに加
え、石綿やPVA系合成繊維にくらべ非常に高価であ
る。
【0003】一方、PVA系合成繊維の耐湿熱性を改良
しようとする試みがなされている。例えば、特開平2−
133605号には、アクリル酸系重合体をブレンドす
るか、もしくは、繊維表面に有機系過酸化物や、イソシ
アネート系化合物、ブロックドイソシアネート系化合
物、ウレタン系化合物、エポキシ系化合物などで架橋せ
しめる方法が開示されている。しかしアクリル酸系重合
体をブレンドしても、PVAの溶剤抽出過程で、アクリ
ル酸系重合体が溶出してしまいその効力を失う事にな
る。たとえ、溶出残分が架橋したとしても、その架橋
は、エステル結合であるためセメントのアルカリで容易
に加水分解してしまい、到底オートクレーブ養生に耐え
得るものではない。また繊維表面のみを架橋してもオー
トクレーブ養生中に、繊維の中心部から膨潤、溶解が起
こってしまう。
【0004】この表面架橋処理の考え方は、架橋構造が
繊維の内部にまで及ぶと高倍率の延伸を行うことが困難
となり、結果として高強度の繊維とすることができなく
なるので、高倍率の延伸と耐湿熱性の向上との兼ね合い
で架橋構造を繊維表面にとどめるというものである。し
かしこの処理で得られるPVA繊維においては、形成さ
れる架橋構造が主に繊維表面に偏在するものであるた
め、上記のように、該繊維が熱水と接触した場合、その
中央部より膨潤ないし溶解し耐湿熱性は不十分となる。
【0005】特にこの現象は、該繊維をFRCに用いる
時に顕著である。即ち、FRC用繊維は一般にカットフ
ァイバーとしてセメント中へ混入され、そのカット面は
直接セメント成分とアルカリを含む蒸気に晒されること
となり、架橋構造が形成されていない断面中央部より膨
潤ないし溶解が起こることになるのである。従って、繊
維の表面部分のみを架橋させてもFRC用繊維としての
耐湿熱性は向上しないのである。事実、この種の架橋繊
維は140℃のオートクレーブ養生でその補強効果が消
失することを確かめた。
【0006】また、特開平2−249705号には、空
気入りタイヤの補強用コードとして用いるPVA系繊維
に、耐疲労性を向上させる目的でこれに架橋処理を施す
ことが開示されている。そしてその手段として架橋剤を
PVA系繊維のコードに後処理し、繊維の表面に架橋構
造を形成させる場合の他に、架橋剤を紡糸原液もしくは
凝固浴に加えておき、これを繊維の内部にまでも浸透さ
せ架橋させる考えも開示されている。しかし、架橋剤を
紡糸原液もしくは凝固浴に加えておく処理では、前者の
場合は架橋剤が凝固浴中に溶出し、後者の場合、凝固浴
は専ら紡糸原液から脱溶剤し繊維の中央へは拡散しない
ために繊維中央部にまで架橋構造を形成させるに至ら
ず、共に本発明の目的とする耐湿熱性の向上効果はな
い。
【0007】また、特開昭63−120107号には、
15倍以上に延伸したPVA系合成繊維にホルマール化
度が5〜15モル%となるようにホルマール化する方法
が示されている。しかし、この程度のホルマール化度で
は、非晶領域の極一部が疎水化されているにすぎず、オ
ートクレーブ養生に耐えられるものではない。後に詳述
するが、かかる繊維の、本発明で規定するゲル弾性率
は、せいぜい1〜2×10↑-3g/cm・dにすぎず、
本発明で得られる繊維とは明らかに区別されるし、また
この方法はジアルデヒド処理に関する本発明の方法を開
示するものではない。
【0008】オートクレーブ養生を行う目的は、セメン
ト製品の寸法安定化である。本発明者らは、種々条件検
討し、140℃以上で養生すれば、大幅に寸法安定性が
向上することをつきとめている。しかしこれはビーカー
スケールの小さな試験片での結果であって、実際に工業
的に生産されるスケールの製品、特に長尺物においては
この程度の養生条件では、その効果が不十分であること
がわかった。そして、より実用的な養生温度は少なくと
も160℃であることを知った。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】従って本発明は、PV
A系合成繊維の耐湿熱性が、従来の技術では実現不可能
であった160℃のオートクレーブ養生に耐えられる高
度に耐湿熱性が向上したPVA系合成繊維を得るための
製造方法を提供せんとするものである。
【0010】かかる課題に対して、本発明者らは鋭意検
討した結果、架橋の程度を表すゲル弾性率が耐オートク
レーブ性と極めて密接に相関していることを見出だし
た。即ち本発明者らは、ゲル弾性率の異なる種々の繊維
について検討し、オートクレーブ養生をおこなった後の
繊維の損傷が、ゲル弾性率の大きい物程小さく、160
℃のオートクレーブ養生を可能とするには、その数値と
して10.0×10↑-3g/cm・d以上必要であり、
かつ溶出率が40%以下であれば十分な耐湿熱性を有し
ていることを見出だした。
【0011】ここでゲル弾性率とは、その架橋度合い
を、数値化したものであって、その値が大きい程、より
多くの架橋が導入されていることになる。ゲル弾性率の
測定法については後述するが、おおよそ次のようであ
る。塩化亜鉛水溶液は強力なPVAの溶剤であるため、
簡単にPVA系合成繊維を溶かすことができる。ところ
が、PVA分子間が架橋されていると、塩化亜鉛水溶液
でPVAの結晶は溶かされるけれども、架橋のネットワ
ークがあるため繊維全体としては溶解することなく、収
縮しながらゲル状になる。このゲルの、引っ張り応力に
たいする伸長挙動は、フックの法則に従い、上記ゲル弾
性率は、言わば、そのバネ定数に相当するものである。
【0012】また溶出率とは、これも後に詳述するが、
繊維を6mmにカットし160℃の人工セメント液に浸
漬したときの繊維の重量減少率であり、その数値として
は40%以下でなければ160℃以上のオートクレーブ
養生では補強効果が得られない。つまり、繊維中心部に
まで架橋が均一に導入されてはじめて40%以下になる
のである。前述のゲル弾性率は、架橋の度合いを指し示
すものであるが、繊維中に架橋の均一性を必ずしも反映
するものではない。従ってゲル弾性率は160℃のオー
トクレーブ養生に耐えるためのいわば必要条件であるの
に対し、溶出率は十分条件であり、両者を同時に満足す
ることが必要である。
【0013】ところで、従来公知の架橋処理では、上記
のごときゲル弾性率を達成するには、薬剤濃度や延伸、
熱処理温度を極端に高める必要がある。しかしこれは同
時に大幅に繊維の強度を低下させ、FRC用繊維として
必要な10g/dという強度を保持することを困難とす
る。即ち、FRCの特性向上に寄与しないことになるの
である。
【0014】従って本発明の解決すべき課題は、上記の
如きゲル弾性率、溶出率を満足し、かつ繊維強度が10
g/d以上といったPVA系繊維を合理的に製造する方
法に関する。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ゲル弾性
率は、PVA分子間の架橋度合いを示すものであるとの
考えから分子間架橋を生じやすいジアルデヒド又はその
アセタール化物に着目し、検討した結果、本発明に至っ
た。すなわち本発明は、PVA系合成繊維の製造プロセ
スにおいて乾熱延伸までのいずれかの工程で、ジアルデ
ヒド又はそのアセタール化物を、乾熱延伸又は熱処理後
での繊維に対して0.3〜10重量%存在するように付
与しておき、乾燥後、該ジアルデヒドの未架橋状態で高
倍率延伸を行い、その乾熱延伸後の繊維またはひき続い
て熱処理した後の繊維に酸処理を行って繊維中に架橋を
生じさせることを特徴とする方法である。
【0016】従来より、PVAのアセタール化に最もよ
く用いられているホルムアルデヒドは、分子間架橋を生
じにくく、ゲル弾性率を10.0×10↑-3g/cm・
d以上に高めるにはホルムアルデヒドの濃度を極めて高
める必要があり、環境的にも、コスト的にも生産性が乏
しい。これに対してジアルデヒド化合物を用いればホル
ムアルデヒドに比し低濃度にして容易に分子間架橋を導
入しうるのである。
【0017】しかし過去におけるジアルデヒド化合物に
よるPVA系合成繊維の架橋の検討は、特公昭29−6
145号公報や特公昭32−5819号公報などに示さ
れる如く、ジアルデヒド化合物と反応触媒である酸の混
合浴で後処理するものであるため、かかる技術を本発明
の対象とするような高強度を有する繊維を得る目的に応
用することは困難である。即ち、過去に行われていたよ
うな、衣料用の強度の低いPVA系合成繊維には、繊維
構造がルーズで、結晶化度が低いため、容易にジアルデ
ヒド化合物が繊維中心部に浸透するが、本発明で求める
高延伸された10g/d以上の強度を有する繊維に対し
て処理したのでは、繊維の分子が高度に配向結晶化して
いるために、殆ど繊維中心部にジアルデヒドが浸透しに
くい、したがって表面部分にしか架橋が形成されず、ゲ
ル弾性率は満足できたとしても、溶出率が大きく、結局
目的とする繊維は得られないこととなるのである。
【0018】PVA系合成繊維の製造プロセスにおいて
乾熱延伸までのいずれかの工程でジアルデヒド又はその
アセタール化物を付与することにより、これを繊維の中
心部にまで確実に浸透させることが本発明の方法の1つ
の特徴である。PVA分子の配向、結晶化が進むのは、
主に、乾熱延伸の工程であり、それ以前であれば比較的
容易に浸透しうる。更に、乾熱延伸後、または、ひき続
いて熱処理した後で、酸処理することももう1つの特徴
である。つまり、乾熱延伸前でジアルデヒド又はそのア
セタール化物と、反応触媒であるところの酸とを併用し
て繊維に付与したのでは、延伸に先だって、架橋が生成
し、全く延伸が不能となるが、本方法では、前段ではジ
アルデヒド化合物は、反応触媒である酸を加えないで繊
維中へ浸透させるだけの処理であるので、ジアルデヒド
化合物が未架橋状態であることにより、高倍率延伸が可
能となり、したがって高強力繊維の製造が可能となり、
この高強力繊維をつくった後で、該繊維に、後段の酸処
理を行うことによって、繊維全体にわたっての架橋を生
じさせることが可能となるのである。
【0019】したがって本発明の方法は、乾燥延伸前に
ジアルデヒド又はそのアセタール化物を繊維に付与し、
中心部まで確実に浸透させ、架橋剤を含有するがいまだ
架橋の実質的に生成していない状態で、十分に乾熱延伸
し、繊維を構成する分子の配向、結晶化を進め、強度や
弾性率等の機械的性質を高めた上で酸処理して、架橋反
応を起こさしめ、耐湿熱性を向上させるというものであ
る。そしてまた一般に、ジアルデヒド又はそのアセター
ル化物は酸と共存すると直ちに重合、着色し、架橋剤と
して失活することが大きな問題となっているが、架橋剤
とその触媒との両者を分離する本発明の方法において
は、かかる問題はなく、この点についても本発明は高強
力繊維の製造工程を活かした極めて好ましい実施方法と
いえる。
【0020】PVA系合成繊維の紡糸方式としては、必
要強度を確保しうるものならば、特に限定するものでは
なく、公知の湿式紡糸や乾湿式紡糸(含むゲル紡糸)が
採用できる。例えば、(1)PVA水溶液に、硼酸やそ
の塩を加えたものを紡糸原液とし、比較的高温のアルカ
リ性凝固浴へ紡糸する方法や、(2)PVAをジメチル
スルホキシドや、グリセリンなどの有機溶剤に溶解した
ものを紡糸原液とし、メタノール凝固浴へ紡糸する方法
など公知のものを採用し得る。また、(3)紡糸原液に
一種または二種以上の界面活性剤をPVAに対して1〜
20重量%添加することは、架橋性薬剤やアルデヒド類
の浸透が促進され、かつ、延伸性も高まるため好まし
い。
【0021】用いるPVAの重合度は、特に限定するも
のではないが、補強用繊維であるからには無論強度は高
いほど好ましく、また、ゲル弾性率も幾分重合度の影響
をうけるため1500以上、好ましくは2000以上、
更に好ましくは3000以上である。ケン化度は、98
モル%、好ましくは99.5モル%以上であり、高いも
のほど有利である。
【0022】PVAの溶媒として水を用いる前述の
(1)の方法の場合、紡糸後の糸篠に常法に従って延
伸、中和、湿熱延伸、水洗、乾燥、乾熱延伸を行い、さ
らに必要に応じて熱処理を行って強度の優れたPVA系
繊維を得ることができる。またPVAの溶媒として有機
溶媒を用いる前述の(2)の方法の場合、ノズルから吐
出された紡糸原液は、常法に従って凝固浴あるいは冷却
ゲル化浴で凝固あるいはゲル化させ、その後湿延伸、原
液溶媒の抽出、前記抽出工程で用いた第2溶媒の乾燥、
乾熱延伸を行い、さらに必要に応じて熱処理を行って強
度の優れたPVA系繊維を得ることができる。さらにま
た、原液に界面活性剤を添加する(3)の方法の場合、
(1)と同様のプロセスによって強度の優れたPVA系
繊維を得ることができる。以上いずれの製造方法におい
ても、本発明で規定する強度、ゲル弾性率、並びに溶出
率を同時に満足する繊維の製造方法として、紡糸後の糸
篠に乾熱延伸以前のいずれかの工程でジアルデヒド又は
そのアセタール化物を付与し、乾燥後、乾熱延伸あるい
は、該乾熱延伸と熱処理とを行い、しかる後酸処理を行
うものである。
【0023】本発明で用いることのできるジアルデヒド
化合物としては、グリオキザール、マロンジアルデヒ
ド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、ヘキサ
ン1,6ジアールなどの直鎖の化合物、あるいはオルソ
フタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド、テレフタル
アルデヒド、フェニルマロンジアルデヒドなどの芳香族
化合物があり、その1種または2種以上を混合してもよ
い。またこれらの内マロンジアルデヒドのように、酸と
共存しない場合であっても、反応性が高く重合してしま
う化合物については、これをアルコールでアセタール化
し、アセタール化物として用いることができる。その典
型は、マロンジアルデヒドをメタノールでアセタール化
したテトラメトキシプロパンであって、酸が共存しなけ
れば安定であるが、酸によってジアルデヒドに戻りPV
Aと反応しうるものとなる。
【0024】本発明の方法では、ジアルデヒド又はその
アセタール化物を含んだ状態で繊維は乾燥、延伸される
ことになるため、それら化合物はできるだけ高い沸点を
有することが好ましい。グリオキザールの沸点は60℃
程度と低く、乾燥、延伸中に蒸発しやすく、例えば1%
付与しても、延伸後では0.4%程度しか残らず、ロス
になってしまう。かかる場合にもメタノールやエタノー
ルでアセタール化し、分子量を大きくし、沸点を高めて
おけばロスを軽減できる。
【0025】好ましい化合物は、PVAとの反応性が高
いこと、繊維に浸透しやすいこと、即ち、分子があまり
大きくないこと、これとは逆に、沸点の高い大きな分子
であること、などの相反する用件を具備したものでテト
ラメトキシプロパン、スクシンアルデヒド、グルタルア
ルデヒドが好ましい。
【0026】これらの化合物の繊維への付与方法は、均
一に付与しうるならば特に限定はないが、例えば、水溶
液とし、乾燥前の繊維をこれに浸漬し適度に搾液する方
法は好ましい実施態様といえる。
【0027】本発明の目的とする繊維を得るには、乾熱
延伸あるいは熱処理後での繊維に対してジアルデヒド又
はそのアセタール化物が0.3重量%以上存在すること
が必要である。従って、濃度等の付与量を規定する条件
は、後続する乾熱延伸、熱処理の条件との兼ね合いで適
宜調整すればよい。乾熱延伸、熱処理後でのこれらの付
与量が0.3重量%より低くては、目標とするゲル弾性
率及び溶出率を得ることができない。又、逆に、10重
量%を越える場合は、強度低下が大きく好ましくない。
より好ましくは、0.5〜8重量%、更に好ましいく
は、1〜5重量%である。
【0028】その後常法に従って乾燥、乾熱延伸、必要
に応じて熱処理を行えばよいが、強度面からできるだけ
延伸率を大きくすることが必要で、好ましくは15倍、
更に好ましくは17倍以上である。
【0029】ひき続いて酸処理を行う。酸としては、硫
酸、塩酸、硝酸、リン酸等の無機酸、あるいはカルボン
酸、スルホン酸等の有機酸を用いることができるが、硫
酸が最も一般的に用いられる。酸処理条件としては、濃
度0.05規定以上、好ましくは0.1規定以上必要で
ある。温度は60〜100℃、好ましくは70〜95℃
である。又芒硝は繊維の過度の膨潤を押さえるため適宜
加えればよい。
【0030】
【実施例】以下、実施例を以て本発明を説明する。尚、
例中、強度、ゲル弾性率、溶出率、スレートの曲げ強
度、及び繊維中のジアルデヒド又はそのアセタール化物
は以下の方法で測定するものとする。
【0031】(1)強度;マルチフィラメントヤーン8
0T/m撚糸品を試料とし、JISL−1017に準拠
し、インストロン引っ張り試験機にて測定。
【0032】(2)ゲル弾性率;1000〜2000デ
ニールのマルチフィラメントヤーンを20cmの長さに
なるように上端を固定して吊り下げ下端に1グラムの荷
重をかける。これを50℃50重量%の塩化亜鉛水溶液
に浸漬すると、繊維が収縮する。その収縮が完全に止ま
ったときの試料長を測定し、これをAcmとする。次
に、荷重を1グラムから30グラムにかけかえて、同様
に塩化亜鉛水溶液中で試料長を測定し、これをBcmと
する。 ゲル弾性率=29/(B−A)・D g/cm・d で表す。ただし、Dは塩化亜鉛水溶液に浸漬前の、試料
のデニール。
【0033】(3)溶出率;繊維を6mmにカットし、
その約0.5gを秤量(Agとする)し、100ccの
人工セメント液と共に肉厚4.5mmのステンレス製オ
ートクレーブにいれ、160℃のオイルバスに2時間浸
漬する。その後オイルバスから引上げ冷却し、繊維を取
り出し絶乾したのち秤量(Bgとする)する。 溶出率=(A−B)/A×100 (%)で表す。 なお、人工セメント液とは、水酸化カリウム3.5g/
l、水酸化ナトリウム0.9g/l、水酸化カルシウム
0.4g/lの組成として定義される。
【0034】(4)スレートの曲げ強度;PVA系合成
繊維を6mmの長さに切断しハチェックマシンで該繊維
2部、パルプ4部、ポルトランドセメント94部の配合
で湿式抄造し、50℃で12時間一次養生したのち16
0℃で10時間オートクレーブ養生を実施しスレート板
を得、JIS K6911に準拠して、曲げ強度を測定
した。曲げ強度は240kg/cm↑2以上で補強効果
ありと判定する。
【0035】(5)繊維中のジアルデヒド又はそのアセ
タール化物;酸処理前の繊維を1mmの長さに切断し1
05℃で4時間乾燥後秤量(Ag)する。これをソック
スレーでメタノールにより抽出し、抽出分からメタノー
ルを完全に蒸発させて秤量(Bg)する。繊維中のジア
ルデヒド又はそのアセタール化物はB/A×100(重
量%)として表される。
【0036】実施例1〜3、比較例1、2: 重合度3
000の完全ケン化PVAを11%の濃度で水に溶解
し、硼酸をPVAに対して2重量%添加し、更に、ノニ
ルフェノールエーテルエチレンオキサイド40モル付加
物をPVAに対し3重量%添加して、紡糸原液を調製し
た。該紡糸原液を水酸化ナトリウム25g/l、芒硝3
20g/lの65℃の凝固浴へ湿式紡糸し、常法に従っ
てローラー延伸、中和、湿熱延伸、水洗後、それぞれ濃
度の異なるテトラメトキシプロパン水溶液に浸漬し、ひ
き続いて乾燥し、その後235℃で全延伸倍率が25倍
となるよう乾熱延伸した。かくして得られた繊維をそれ
ぞれ85℃1規定の硫酸浴で酸処理した。得られた繊維
の物性等を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】上記の例は、本方法がその全延伸倍率が高
く実施でき高強力繊維が得られると共に、表1に示され
るようにTMPを本方法で規定する範囲内で繊維へ付与
して処理することによって、強度、ゲル弾性率並びに溶
出率で目的とする繊維が得られ、その繊維を用いた16
0℃オートクレーブ養生での場合のスレート板の曲げ強
度も優れていることが示される。
【0039】比較例3: 実施例2においてテトラメト
キシプロパンを付与する際、同時に1規定の硫酸を付与
したところ、乾燥中に架橋が生成し、全く乾熱延伸をす
ることができなかった。
【0040】実施例4: 重合度2400の完全ケン化
PVを14%の濃度でジメチルスルホキシドに溶解し、
メタノール凝固浴中へ乾湿式紡糸した。その後常法に従
って溶剤の抽出、湿延伸、乾燥後、濃度15g/lで4
0℃のグルタルアルデヒド水溶液に浸漬し、乾燥し、そ
の後230℃で全延伸倍率が20倍となるよう乾熱延伸
した。該繊維はグルタルアルデヒドを1.5重量%含有
していた。該繊維を、ひき続いて2規定80℃の硫酸で
処理した。かくして得た繊維は強度14.8g/d、ゲ
ル弾性率14.3×10↑-3g/cm・d、溶出率34
%で、スレートの曲げ強度は310kg/cm↑2と優
れたものであった。
【0041】比較例4: 実施例4においてグルタルア
ルデヒドに浸漬することなく乾燥延伸した繊維に対し、
グルタルアルデヒド/硫酸=15/98g/l(硫酸2
規定)の80℃の浴で処理した。かくして得られた繊維
は、強度13.1g/d、ゲル弾性率16.3×10↑
-3g/cm・dであったが、溶出率に36〜63%と大
きな斑があり、繊維の中心部にグルタルアルデヒドが十
分浸透しない場合があることを示している。また、処理
浴はわずか30分足らずで、グルタルアルデヒド同士が
重合し、激しく着色した。
【0042】
【発明の効果】本発明の方法で得られる繊維は、オート
クレーブ養生を行うFRC用繊維として好適であるばか
りか、その優れた強度、耐水性を生かして、従来耐水性
が不足するために不可能であった蒸気加硫が可能とな
り、ホースをはじめとするゴム資材分野への展開が容易
になるほか、ロープ、FRP、水産資材などの一般産業
資材として有用である。また、本発明の製造方法は、か
かる優れた繊維を得るに極めて効果的である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI D06M 15/39 D06M 15/39 // D06M 101:24 D06M 13/12

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリビニルアルコール系紡糸原液を湿式
    あるいは乾湿式紡糸し延伸して高強力繊維を製造する方
    法において、乾熱延伸を行うまでのいずれかの工程で、
    ジアルデヒド又はアセタール化物を、その量が、乾燥延
    伸後あるいはさらに熱処理後での繊維に対して0.3〜
    10重量%存在するように付与しておき、乾燥後、繊維
    強度が10g/d以上となる高倍率の乾熱延伸を行い、
    あるいはさらに熱処理を行い、その後該延伸あるいは熱
    処理後の繊維に酸処理を行って繊維中に架橋を生じさせ
    ることを特徴とするポリビニルアルコール系合成繊維の
    製造方法。
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