JPH11350246A - ポリビニルアルコール系繊維及びその製造方法 - Google Patents

ポリビニルアルコール系繊維及びその製造方法

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JPH11350246A
JPH11350246A JP23937098A JP23937098A JPH11350246A JP H11350246 A JPH11350246 A JP H11350246A JP 23937098 A JP23937098 A JP 23937098A JP 23937098 A JP23937098 A JP 23937098A JP H11350246 A JPH11350246 A JP H11350246A
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polyvinyl alcohol
dry
ethylene
cross
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Akira Yamamoto
亮 山本
Yoichi Yamamoto
洋一 山本
Junichi Hikasa
純一 日笠
Hirofumi Sano
洋文 佐野
Hideki Kamata
英樹 鎌田
Akira Kageyu
昭 勘解由
Toshinori Yoshimochi
駛視 吉持
Masahiro Sato
政弘 佐藤
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Kuraray Co Ltd
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    • C04CEMENTS; CONCRETE; ARTIFICIAL STONE; CERAMICS; REFRACTORIES
    • C04BLIME, MAGNESIA; SLAG; CEMENTS; COMPOSITIONS THEREOF, e.g. MORTARS, CONCRETE OR LIKE BUILDING MATERIALS; ARTIFICIAL STONE; CERAMICS; REFRACTORIES; TREATMENT OF NATURAL STONE
    • C04B16/00Use of organic materials as fillers, e.g. pigments, for mortars, concrete or artificial stone; Treatment of organic materials specially adapted to enhance their filling properties in mortars, concrete or artificial stone
    • C04B16/04Macromolecular compounds
    • C04B16/06Macromolecular compounds fibrous
    • C04B16/0616Macromolecular compounds fibrous from polymers obtained by reactions only involving carbon-to-carbon unsaturated bonds
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 乾燥時及び湿潤時における機械的性能、かつ
湿熱時の寸法安定性に優れたポリビニルアルコール(以
下PVAと略記)系繊維を提供する。 【解決手段】 エチレンービニルアルコール系共重合体
を含む繊維であって、該共重合体におけるエチレン単位
の割合が0.5〜10モル%であり、かつ溶断温度10
0℃以上、乾燥時強度6g/d以上、乾湿強度比65%
以上、沸水収縮率5%以下のポリビニルアルコ−ル系繊
維とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、乾燥時及び湿潤時にお
ける機械的性能、かつ湿熱時の寸法安定性に優れたポリ
ビニルアルコール(以下PVAと略記)系繊維及び該繊
維の製造方法と、該繊維を用いてなる紙及び水硬性硬化
体に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ポリビニルアルコール(PVA)
系繊維は、機械的性能、耐アルカリ性及び耐光性等の諸
性能に優れていることが知られている。しかしながら、
PVA系繊維は乾燥時には優れた性能を奏するものの、
耐熱水性が低く高湿潤状態になると非晶部へ水が侵入し
て膨潤し乾燥時に比して機械的性能が低下するととも
に、高温水により大きく収縮する問題があった。以上の
ことから、繊維を延伸した後に熱処理を行って結晶化を
進行させる方法が採用されているが、湿潤あるいは湿熱
状況下における性能はまだ不十分なケースが多く、ホル
マリンによるアセタール化処理やリン酸等による架橋処
理により対処しているのが現状である。
【0003】しかしながら、架橋処理を行うと耐熱水性
(溶断温度)が向上する反面、PVAの結晶構造が乱さ
れて強度が低下するとともに、沸水収縮率が大きくなり
湿熱下の寸法安定性が低下する問題があった。たとえば
汎用PVA系繊維は繊維強度7.5g/d程度、ヤング
率170g/d程度、乾湿強力比85%程度であるが、
アセタール化処理により架橋処理を行うと乾燥時の繊維
強度は6g/d程度、ヤング率は80g/d程度、乾湿
強力比は70%程度に低下し、さらに沸水収縮率が大き
くなり湿熱時における寸法安定性は一層低下することと
なる。
【0004】従って、たとえばアセタール化処理を施さ
れたPVA系繊維を用いて紙を製造すると、繊維の耐熱
水性が改善されているため抄紙工程中における溶解流出
は抑制できるものの、抄紙工程中に大きく収縮して紙の
形態安定性等が損われやすくなる。またアセタール化処
理により繊維そのものの機械的性能が低下し、さらにホ
ルマリン等がPVA中に存在する水酸基を封鎖するため
親水基が減少し、その結果、PVAの特徴である水素結
合が低下して紙力が低下しやすくなる可能性が生じる。
様々な工程を通過させることにより高結晶高配向の繊維
とすることにより湿熱時の繊維性能を高めることも検討
されているが、紡糸工程が複雑化し多大なコストがかか
ることとなる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、以上
の問題を鑑み、溶断温度100℃以上の耐熱水性を有
し、かつ機械的性能及び湿熱時の寸法安定性に優れた繊
維、さらに形態安定性及び耐湿熱性等に優れた繊維の製
造方法と、紙及び水硬性硬化体を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、(1) エチ
レンービニルアルコール系共重合体を含む繊維であっ
て、該共重合体におけるエチレン単位の割合が0.5〜
10モル%であり、かつ溶断温度100℃以上、乾燥時
強度6g/d以上、乾湿強度比65%以上、沸水収縮率
5%以下のポリビニルアルコ−ル系繊維、(2) ホル
マール架橋構造が形成されたエチレンービニルアルコー
ル共重合体を含む繊維であって、該共重合体におけるエ
チレン単位の割合が0.5〜10モル%であり、かつ溶
断温度100℃以上、乾燥時強度6g/d以上、乾湿強
度比65%以上、沸水収縮率5%以下のポリビニルアル
コール系繊維、(3) ホルマール架橋構造及び炭素数
2以上の架橋剤により導入されたアセタール架橋構造が
形成されたエチレンービニルアルコール共重合体を含む
繊維であって、該共重合体におけるエチレン単位の割合
が0.5〜10モル%であり、かつ溶断温度100℃以
上、乾燥時強度10g/d以上、乾湿強度比65%以
上、沸水収縮率5%以下のポリビニルアルコール系繊
維、(4) 単繊維デニールが4d以下である(1)〜
(3)のいずれかに記載のポリビニルアルコール系繊
維、(5) (1)〜(4)のいずれかに記載の紙料用
ポリビニルアルコール系繊維、(6)(1)〜(4)の
いずれかに記載のポリビニルアルコール系繊維を配合し
てなる紙、(7) (1)のいずれかに記載の水硬性材
料補強用ポリビニルアルコール系繊維、(8) (1)
〜(4)のいずれかに記載のポリビニルアルコール系繊
維を含有する水硬性硬化体、(9) アセタール架橋を
生じる炭素数2以上の架橋剤を2〜10重量%含有し、
エチレン共重合量が0.5〜10モル%のポリビニルア
ルコール系ポリマーからなる紡糸原糸を乾熱延伸した
後、ホルマリンと酸の混合水溶液で架橋処理を行いホル
マール架橋構造及びアセタール架橋構造を導入すること
を特徴とするポリビニルアルコール系繊維の製造法、に
関する。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明は、エチレンービニルアル
コール系共重合体を用いた繊維とし、かつ該共重合体に
おけるエチレン単位の割合を0.5〜10モル%、好ま
しくは2〜9モル%、特に好ましくは4〜7%とするも
のである。共重合体におけるエチレン単位の割合を特定
の範囲とすることにより、PVAのポリマー構造を実質
的に乱すことなく耐熱水性を付与することができ、その
結果、耐熱水性、乾燥時及び湿潤時の機械的性能及び湿
熱時の寸法安定性等の諸性能に優れた繊維が得られる。
エチレン共重合割合が低すぎると本発明の効果が十分得
られず、さらに疎水性が低下するため耐湿熱性が不十分
になる。
【0008】逆にエチレン単位の割合が高すぎるとPV
Aの結晶構造が乱されて湿熱時の寸法安定性等の諸性能
が低下し、またエチレン単位割合がさらに高くなる(た
とえば30モル%以上)と溶融紡糸により繊維を紡糸す
る必要が生じるが、PVAは溶融温度と分解温度が極め
て近似しているため、紡糸時に分解が生じて繊維の機械
的性能が損われる可能性があることから、高い機械的性
能が要求される用途等には好ましくない。
【0009】繊維の溶断温度は100℃以上、好ましく
は105℃以上、特に好ましくは溶解温度110℃以上
とする。溶断温度が低いものは耐熱水性が不十分とな
る。また乾燥時強度は6g/d以上、乾湿強度比は65
%以上である必要がある。かかる値が小さいものは乾燥
時及び湿潤時における機械的強度が不十分であるため所
望の効果が得られない。特に乾燥時強度7g/d以上、
さらに7.5g/d以上とするのが好ましく、乾湿強度
比70%以上、特に78%以上であるのが好ましい。ま
た乾燥時のヤング率は90g/d以上、特に95g/d
以上とするのが好ましい。特に高強度高弾性率が要求さ
れる用途に使用する場合には乾燥時強度10g/d以上
とするのが好ましい。なお本発明にいう乾湿強度比と
は、乾燥時の繊維強度に対する湿潤時の繊維強度の比率
であり、実施例に記載の方法により測定できる。
【0010】また本発明においては、沸水収縮率(Ws
r)5%、より好ましくは3.5%以下、特に好ましく
は2.5%以下とする必要がある。一般に耐熱水性を高
めるための処理(架橋処理等)を行うと、繊維の機械的
性能及び湿熱時の寸法安定性が低下して沸水収縮率は大
きくなるが、本発明においては耐熱水性の向上とともに
湿熱時の寸法安定性が顕著に改善され優れた効果が得ら
れる。
【0011】また本発明において耐熱水性をさらに高め
るためにアセタール化処理等の架橋処理を行うと、理由
は定かではないが、機械的性能はわずかに低下するもの
の湿熱時の寸法安定性はむしろ向上し、耐熱水性のみで
なく湿熱時の寸法安定性に優れた繊維が得られる。寸法
安定性の低い繊維は、たとえば温水による洗濯により形
態、サイズが変化したり、また抄紙用原料として用いた
場合に紙の形態安定性が不十分となる場合がある。また
一般にPVA系繊維は、繊維製造当初の寸法安定性は改
善されたものであっても、WET/DRYを繰返してい
くうちに繊維内部に水が侵入して繊維内部の配向結晶化
がしだいに低下して繊維全体が収縮しやすい問題がある
が、本発明においてはWET/DRYを繰り返しても優
れた寸法安定性が得られる。
【0012】以上のように本発明においては、エチレン
単位をごく微量導入することにより耐熱水性及び湿熱時
の寸法安定性を顕著に改善できるが、それと同時に繊維
の延伸性が向上して一層優れた効果が得られる。一般に
PVAの融点と分解開始点は極めて近似していることか
ら延伸条件が限定される問題があるが、本発明によれば
延伸条件が緩和され、また延伸倍率をさらに高めること
ができるため、紡糸性及び繊維性能の点で好ましい結果
が得られる。
【0013】本発明に用いられるエチレンービニルアル
コール共重合体は、エチレンとビニルエステルとの共重
合体ケン化物であるのが好ましい。使用できるビニルエ
ステルとしては、たとえば酢酸ビニルが代表例として挙
げられるが、勿論他の脂肪酸ビニルエステル(ピバリン
酸ビニルエステル等)を使用してもかわまない。本発明
に用いられるエチレンービニルアルコール共重合体は市
販されているものを用いても構わないが、市販されてい
るエチレンと酢酸ビニルとの共重合体を購入しそれをケ
ン化して製造してもよく、またエチレンと酢酸ビニルか
らラジカル重合等によりエチレン/酢酸ビニル共重合体
を製造しそれをケン化して製造してもよい。該共重合体
はランダム、ブロック、グラフトいずれの共重合体でも
かまわない。
【0014】本発明で用いるエチレンービニルアルコー
ル共重合体に含まれるビニルエステル成分のけん化度は
熱安定性等の点及び延伸時の膠着を防止する点から50
モル%以上、さらに80モル%以上、特に好ましくは9
0モル%以上、またさらに98.5モル%以上、さらに
99.0%以上とするのが好ましい。
【0015】更に本発明の効果が損われない範囲であれ
ば、エステル単位以外の第3成分が共重合されていても
よく、たとえばビニルシラン系化合物(ビニルトリメキ
シシラン、ビニルトリエトキシシラン等)、ビニルピロ
リドン系化合物等を共重合してもかまわない。また末端
及び/側鎖に炭素数が4〜50のアルキル基を有するも
のや、水酸基の一部が酸化されているもの、脂肪族ポリ
エステルがグラフトされているもの、末端にイオン性基
(カルボン酸基又はその塩、アンモニウム基など)を有
する共重合体等も使用できる。繊維性能、紡糸性等の点
からは、エチレンからなる繰り返し単位の割合が上記モ
ル%であり、残余が実質的にビニルアルコール単独、又
はビニルアルコールとその他のビニル系モノマーの繰り
返し単位からなるものがより好ましい。
【0016】本発明で用いられる共重合体の平均分子量
(粘度平均重合度)は、紡糸性、耐熱水性等の点から5
00〜5000、特に800〜4000程度、さらに1
500〜3500とするのが好ましい。PVA系ポリマ
ーの平均重合度が高いほど分子鎖同士が連結する点が多
く、高強度、高耐熱水性が得られ易いことから、強度1
0g/d以上の繊維を所望する場合には平均分子量30
00以上とするのが好ましい。強力、弾性率等の点から
は分岐度の低い直鎖状のものを使用するのが好ましく、
紡糸性等の点からは該共重合体は熱水可溶性であるのが
好ましく、特に95℃の熱水中で完全に溶解するものが
好ましい。
【0017】かかるエチレンービニルアルコール系共重
合体を用いて繊維を製造すればよいが、該共重合体以外
のポリマーを併用して繊維を製造してもよい。たとえば
エチレン成分含量が本発明で規定した範囲を外れている
エチレンービニルアルコール系共重合体やまたエチレン
単位を含まないPVA等を添加して紡糸することができ
る。また他のポリマーを用いて混合紡糸(海島繊維等)
や複合紡糸(芯鞘型繊維)を行ってもかまわない。しか
しながら、本発明の効果を効果的に得る点からは、本発
明で規定の共重合体が40重量%以上、特に50重量%
以上、更に80重量%以上含まれる繊維とするのが好ま
しい。
【0018】本発明の繊維の製造方法は特に限定されな
いが、湿式紡糸法、乾式紡糸法、紡糸ノズルと凝固浴間
に空気や不活性ガス等の気体を満たした空間(エアーギ
ャップ)をもつ乾湿式防紡糸法のいずれかを採用するの
が好ましく、紡糸性、機械的性能等の点からは湿式紡糸
法、乾湿式紡糸法を採用するのが好ましい。以下に繊維
の製造方法を詳細に説明する。
【0019】まず紡糸原液を製造する。紡糸原液のPV
A系ポリマ−の濃度は、その重合度によって異なるが5
〜30重量%、特に10〜20重量%とするのが好まし
い。製造工程性、コストの点からは紡糸原液はPVA系
ポリマ−水溶液とするのが好ましいが、場合によっては
ジメチルスルホキシドやアルコ−ル等を紡糸原液の溶媒
として用いてもかまわない。特に機械的性能に優れたP
VA系繊維が要望される場合には、PVAを有機溶剤に
溶解した溶液を紡糸原液とする方法を採用するのが好ま
しい。有機溶剤としては、例えばグリセリン、エチレン
グリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリ
コール、ブタンジオールなどの多価アルコール類やジメ
チルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジエチレン
トリアミン、水、ロダン塩/水、プロパノール/水及び
これら2種以上の混合溶剤などが挙げられる。
【0020】紡糸原液にはホウ酸、界面活性剤、分解抑
制剤、染料、顔料等を添加しても支障ないが、紡糸性や
延伸性を阻害させるものは好ましくない。なお耐熱老化
性の点では酸化防止剤、例えばフエノール系、ホスフア
イト系、チオエーテル系、ヒンダードアミン系、ベンゾ
トリアゾール系などの有機化合物やMn、Cu、Ti、
Zn、Crなどのハロゲン化合物や硫酸塩などの無機化
合物を少量添加するのが好ましい。また口金の寿命、延
伸工程の安定性を高めるために、またデニ−ル斑を改善
するために紡糸原液に1種又は2種以上の界面活性剤を
添加するのが好ましい。
【0021】かかる紡糸原液を用いて紡糸を行うのが好
ましいが、コスト、工程性等の点からは湿式紡糸法を採
用するのが好ましい。PVA水溶液を紡糸原液とする場
合には脱水凝固能を有する無機塩類水溶液からなる凝固
浴に吐出するのが好ましく、添加する塩としては、硫酸
ナトリウム(芒硝)、硫酸アンモニウム、炭酸ナトリウ
ム等が挙げられ、本発明の効果を損なわない範囲で他の
添加物等が含まれていてもよい。無機塩類の濃度は10
0g/リットル以上から飽和濃度まで選択できるが、な
るべく飽和濃度に近いものが脱水凝固能が高く好まし
い。工程性、コスト等の点から飽和水溶液凝固浴を用い
るのが好ましい。さらに水酸化ナトリウム等のアルカリ
が添加された凝固浴を用いてもかまわない。凝固浴の温
度は20〜70℃、特に30〜50℃とするのが好まし
い。
【0022】かかる凝固浴中で脱水されて糸篠を形成し
た後、好ましくはバスドラフトー60%〜―30%程度
で凝固浴から離浴し、ローラー延伸、湿熱延伸、乾燥、
乾熱延伸などを適宜行うことにより本発明の繊維を製造
するのが好ましい。このとき乾燥は80〜150℃、特
に100〜140℃程度で行うのが好ましく、延伸は2
〜8倍程度のローラー延伸、次いで2〜4倍程度の湿熱
延伸を行うのが好ましく、繊維性能及び工程安定性等の
点から全延伸倍率を6倍以上とするのが好ましい。
【0023】また有機溶剤を溶媒とする紡糸原液を用い
る場合には、凝固剤としてメタノール、エタノールなど
のアルコール類やアセトン、メチレンエチルケトン、メ
チルブチルケトンなどのケトン類、さらにはアルカリ水
溶液、アルカリ金属塩水溶液などのいずれか又はこれら
2種以上の混合液を使用するのが好ましい。なお凝固に
おける溶剤抽出をゆっくりさせて均一ゲル構造を生成さ
せ、網目構造で高強度高耐熱水性を得るため、該凝固剤
に紡糸原液の有機溶剤を10重量%以上混合させるのが
好ましい。
【0024】さらに、凝固浴温度を20℃以下、より好
ましくは15℃以下にして、吐出液を急冷させるのも均
一ゲル構造を得るのに都合が良い。また繊維間の膠着を
少なくし、その後の乾熱延伸を容易にするために溶剤を
含んだ状態で2倍以上の湿延伸をするのが望ましい。次
いで溶剤抽出を行うが、抽出剤としてはメタノール、エ
タノール、プロパノールなどの第1級アルコール類やア
セトン、メチルエチルケトン、ブチルエチルケトンなど
のケトン類やジメチルエーテル、メチルエチルエーテル
などのエーテル類および水などが使用できる。続いて必
要に応じて油剤などを付与して該抽出剤を乾燥させる
が、乾式の場合は抽出剤を使用せず、紡糸時及び紡糸後
で該溶剤を蒸発させて乾燥させるのが好ましい。
【0025】本発明においては、水、有機溶剤等を溶媒
とする紡糸原液を用いて上記の方法で紡糸後、乾熱延伸
を行い、必要に応じて熱処理や熱収縮処理を施して結晶
化度を高めてさらに寸法安定性を改善するのが好まし
い。このとき収縮率は2〜10%程度とするのが好まし
い。
【0026】またさらにアセタ−ル化処理等の後処理を
適宜行うことにより一層顕著な効果が得られる。本発明
においては疎水性のエチレンを特定量共重合したPVA
を用いていることから架橋剤が容易に繊維内部まで浸透
しやすく、特に繊維デニールを4デニール以下にした場
合には繊維内部により浸透しやすくなり、架橋構造を繊
維内部まで形成させることができる。なお本発明におい
ては、特にことわりがない限りアセタール化とはホルマ
ール化を包含し、後述する「炭素数2以上の架橋剤によ
るアセタール化」にはホルマール化は含まれない。具体
的には、PVAの水酸基と反応するホルムアルデヒド等
の架橋剤を含む水溶液中で処理して水酸基を封鎖するこ
とで糸篠の耐熱水性を一層改善できる。一般にアセター
ル化処理等の架橋処理を行うと、繊維の耐熱水性が向上
する反面、湿熱下の寸法安定性等の諸性能が低下する問
題が生じるが、本発明においてはむしろ架橋処理により
耐熱水性とともに湿熱下の寸法安定性が一層高まるため
に、より顕著な効果が得られ好ましい。
【0027】またPVA繊維を高強度高弾性率が要求さ
れる用途に使用する場合には、ホルマール化と炭素数2
以上の架橋剤によるアセタール化の両架橋を導入するの
が好ましく、該架橋を導入することによりPVA系繊維
の耐湿熱性を顕著に高めることができる。PVA系繊維
の耐湿熱性を改良しようとする試みは古くからなされて
来た。たとえば、特公昭30−7360号公報や特公昭
36−14565号公報には、ホルマリンを用い、PV
AのOH基と架橋反応(ホルマール化)して疎水化によ
り染色や洗濯に耐えられるPVA系繊維が得られること
が記載されている。しかしこれらの繊維は強度が低すぎ
たり、耐熱水性が不十分のため、高温では溶解したり、
繊維の収縮や膠着を生じる問題があった。
【0028】一方、特開平2−133605号公報や特
開平1−207435号公報には、アクリル酸系重合体
をブレンドするか又は繊維表面を有機系過酸化物やイソ
シアネート化合物、ウレタン系化合物、エポキシ系化合
物などで架橋せしめ、耐湿熱性を高める方法が記述され
ている。しかしアクリル系重合体はPVAのOH基とエ
ステル結合をするため、加水分解し易くその効果を失う
こと及び他の架橋剤は繊維表面架橋であるため、セメン
ト補強材のようにショートカットした場合は繊維の内部
から膨潤、溶解が起こることなどの問題点を抱えてい
た。
【0029】他に酸を用いて脱水架橋により耐湿熱性を
向上させる方法が特開平2−84587号公報や特開平
4−100912号公報などで公知などであるが、本発
明者らが追試したところ繊維内部まで架橋させようとす
るとPVA繊維の分解が激しく起こり繊維強度の著しい
低下を招き問題であった。
【0030】一方、ジアルデヒド化合物又はそれのアセ
タール化合物による架橋は特開平5−163609号公
報、特開平5−26331号公報、特開平8−2182
71号公報などに開示されており、それによると高倍率
に乾熱延伸したあと酸処理により繊維内部に架橋を生じ
させることができることが記載されている。これらは確
かに架橋が進み易く耐湿熱性は向上するが、十分満足で
きるものではない。例えばセメント製品の場合、その強
度を向上させるために成形後のセメント製品をオートク
レーブ内で170℃以上の高温水蒸気により養生する、
いわゆるオートクレーブ養生が採用されているが、セメ
ント製品の補強材として該繊維が用いると、170℃以
上の高温オートクレーブ養生で該繊維の強度が大きく低
下し、セメント製品に対する補強性が大きく低下する問
題があった。
【0031】以上の背景を踏まえて本発明者らは、高温
の湿熱に長時間耐えて高強度を維持するPVA繊維を得
るか鋭意検討を重ねた結果、特定のエチレン量を共重合
して疎水化したPVA系繊維の内部まで、ホルマリンに
よるホルマール架橋と炭素数2以上の架橋剤によるアセ
タール架橋とを生成させることが有効であることを見出
した。
【0032】このとき、アセタール架橋を生じさせる架
橋剤は乾燥後の延伸直前又は延伸後に架橋剤を付着させ
て架橋構造を導入してもかまわないが、アセタール架橋
を生じる架橋剤を原液から紡糸乾燥直前までのいずれか
の工程で原液または紡糸原糸に含有させ、繊維の内部ま
で架橋が進むようにするのが繊維の耐湿熱性を高める点
で好ましい。
【0033】本発明に言うアセタール化架橋剤とは炭素
数2以上の架橋剤であって、例えばグリオキザール、ス
クシンアルデヒド、マロンアルデヒド、グルタルアルデ
ヒド、ヘプタンジアール、オクシンジアール、ノナンジ
アール、デカンジアール、ドデカンジアール、2,4−
ジメチルヘプタンジアール、4−メチルヘキサンジアー
ルなどの脂肪族系ジアルデヒドや、テトラヒドロフラン
ジアルデヒド、テレフタルジアルデヒド、フエニルマロ
ンジアルデヒドなどの環状化合物のジアルデヒド、また
それらとメタノール、エタノール、プロパノール、エチ
レングリコール、プロピレングリコールなどのアルコー
ル類が反応したアセタール化合物、さらには2,5−ジ
アルコキシテトラヒドロフランや2,6−ジアルコキシ
テトラヒドロピラン等を意味する。
【0034】特にC7以上の脂肪族系ジアルデヒドやC4
以上の環状系のジアルデヒド化合物や上記フラン化合物
やピラン化合物はPVA分子鎖間のOH基と反応して、
耐湿熱性に有効な分子間架橋を形成し易く、また強度低
下も少ない利点を有する。該架橋剤のPVA系繊維に対
する含有量は1〜10重量%、好ましくは3〜7重量%
であり、1重量%未満では、架橋が不十分のため、本発
明に言うような耐湿熱性を得ることは出来ない。一方1
0重量%を超えると架橋は十分進むが強度低下が大き
く、セメント補強用、樹脂補強用、ゴム補強用などの補
強材や産業資材に使用する時に問題を生じ易い。但し、
このあとの高温乾熱延伸で架橋が激しく起こり延伸倍率
が著しく低下するような架橋剤の場合は、高強度が得が
たく好ましくない。
【0035】該架橋剤を含有する紡糸原糸を乾熱延伸す
る場合には、PVA系分子鎖の配向結晶化を十分起こさ
せるために200℃以上、好ましくは220℃以上の温
度で総延伸倍率が14倍以上になるように延伸するのが
好ましい。総延伸倍率が14倍未満では、分子鎖を十分
引伸ばすことが出来ず繊維強度が低くなる。また次の酸
架橋処理でホルマリンと酸が繊維内部まで浸透し易くす
るためには、延伸後の単繊維デニールが4dr以下、好
ましくは3dr以下であるのが好ましい。本発明で言う
総延伸倍率とは湿延伸倍率と乾熱延伸倍率との積で表さ
れる値である。
【0036】次に得られた該架橋剤含有の延伸糸をホル
マリンと酸を含有する水溶液で架橋処理すれば繊維内部
までアセタール架橋とホルマール架橋を同時に生成させ
ることができる。両架橋構造を形成させることにより繊
維の耐湿熱性が顕著に向上する。酸としては、硫酸、塩
酸、リン酸、硝酸、クロム酸などの無機酸やカルボン
酸、スルホン酸などの有機酸などが挙げられるが、特に
硫酸、塩酸が好ましい。反応性の点からホルマリンと酸
の混合比は80:20〜20:80(重量比)とするのが
好ましい。また水溶液でのホルマリン又は酸の濃度はそ
れぞれ1〜10重量%、水溶液の処理温度は60〜90
℃、処理時間は15〜60分が望ましい。これらの条件
は架橋剤の種類と含有量により異なり、出来るだけ高強
度を維持しながら耐湿熱性を有するように条件設定する
のが好ましい。なお、架橋を促進する固体酸(例えば金
属の塩化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩やマレイン酸、
クエン酸、乳酸など)等を添加しても何等支障ない。酸
や未反応架橋剤は出来る限り繊維から除去するのが好ま
しく、そのために攪拌下でホルマリンと酸による処理や
その後の中和、水洗処理を実施するのが好ましい。
【0037】このようにして得られたアセタール架橋お
よびホルマール架橋されたエチレン共重合PVA系繊維
は高強力高弾性率で耐湿熱性に優れたものであり、17
0℃以上の高温オートクレーブに耐え、セメントやコン
クリートなどの水硬性材料用補強材として従来にない性
能を発揮する。特にオートクレーブ処理用水硬性材料の
補強材として優れたものである。耐オートクレーブ性の
点から170℃の人工セメント液でのPVA繊維溶出量
は20重量%以下、特に15重量%以下であるのが好ま
しい。
【0038】繊維の繊度は適宜設定すればよいが、0.
01〜100デニール、特に0.1〜5デニールのもの
は広く使用できる。架橋構造を形成させる場合には架橋
剤の浸透性等が良好であることから4d以下、特に3d
以下とするのが好ましい。本発明の繊維はあらゆる形態
で使用することができ、たとえばカットファイバー、糸
(フィラメントヤーン、紡績糸等)、紐状物、布帛(織
編物、不織布等)などの繊維構造体としてもよく、また
他の繊維と併用してもかまわない。たとえば、本発明以
外のPVA系繊維、ポリエステル系繊維(全芳香族ポリ
エステル繊維を含む)、ポリアミド繊維、セルロース系
繊維、綿、麻等と併用すればよい。
【0039】本発明の繊維は産資用、衣料用、衣料用、
農業用等のあらゆる用途に使用でき、たとえばカーテ
ン、シーツ、その他カバー類、粘着テープ、断熱材、作
業服、一般衣料、ラッピングペーパー、ウエットテイッ
シュ、ワイピングクロス等に広く使用できる。なかでも
抄紙用原料や風雨に長期間さらされるゴルフネット、ロ
ープ、テント、帆布や農業資材の屋外資材に好適であ
り、特に耐熱水性、機械的性能及び湿熱時の寸法安定性
が高く、しかもPVA本来の親水性が実質的に損われて
いないことから紙料用繊維として好適であり、該繊維を
用いた紙は紙力、形態安定性等の諸性能に優れたものと
なる。特に本発明の繊維が主体繊維(バインダー成分を
除いたもの)の5重量%以上、さらに10重量%以上、
特に20重量%以上の紙とするのが好ましい。バインダ
ーは接着性等の点からPVA系バインダー、特にPVA
系繊維状バインダーを併用するのが好ましい。
【0040】また耐湿熱性、耐熱老化性、高強度、高タ
フネスが要求される用途に好適であり、具体的にはセメ
ント、ゴム、プラスチックなどの補強材やロープ、漁
網、テント、土木シートなどの一般産業資材に有効であ
る。なかでも水硬性材料の補強材、特にオートクレーブ
養生処理用水硬性材料の補強材として好適なものであ
る。
【0041】
【実施例】以下、実施例を以て本発明を説明するが、本
発明はこれらの実施例により何等限定されるものではな
い。 [粘度平均重合度(PA)]PVA系ポリマーを1〜1
0g/lの濃度になるように熱水で溶解して得られた溶
液の比粘度ηspをJISK−6726に基づき、30℃
で測定し、下記(1)式より極限粘度[η]を求め、さら
に次式(2)より粘度平均重合度PAを算出した。 [η]=Lim(c→0)ηsp/c・・・・・(1) PA=([η]×104/8.29)1.613・・(2)
【0042】[沸水収縮率(Wsr) %]繊維束デニ
ール(長さA)が1000デニールになるように引き揃
え、該繊維束の一端に1/500gのおもりを付け、目
盛板上に他端を固定する。これを100℃の熱水中に垂
直になるように入れ浸漬させ、30分間放置した後、熱
水中で繊維束の長さ(B)を目盛からよみ、B/A×1
00により算出した。
【0043】[溶断温度(WTb) ℃]繊維束デニー
ル(長さA)が1000デニールになるように引き揃
え、該繊維束の一端に1/500gのおもりを付け、目
盛板上に他端を固定する。これを常温の水の入った加圧
可能なガラス管に垂直になるように入れて浸漬させ、こ
れを1℃/分の速度で昇温し、繊維束が溶断する温度を
測定した。
【0044】[強度 g/d,ヤング率 g/d,乾湿
強力比]105℃の乾燥機で4時間以上乾燥した試料単
繊維の破断強度及びヤング率を測定し、乾燥時の強度及
びヤング率(表1中では単に強度、ヤング率と記載)と
して測定した。別に20℃の蒸留水に20時間以上浸漬
した試料単繊維の破断強度(湿潤時の破断強度)を測定
し、(湿潤時の破断強度)/(乾燥時の破断強度)×1
00により乾湿強力比を算出した。なお破断強度及びヤ
ング率は、予め調整された単繊維を試料長10cmとな
るように台紙に貼り、22℃×65RHで12時間以上
放置し、次いで引張試験機(インストロン1122)に
て、2kg用チャックを用い、初荷重1/20g/d、
引張速度50%/minの条件下でJISL−1015
に準じて測定し、重量法によりn≧10の平均値を採用
した。繊維が短かく、20mmの試長がとれない場合、
その繊維長を試長として測定する。なおデニール測定後
の単繊維を用いて強伸度を測定し、1本づつデニールと
対応させた。
【0045】[アセタール化合物の含有量]未架橋紡糸
原糸を100℃以上の重水素化したジメチルスルホキシ
ドに溶解せしめNMRよりPVAのCH2基ピークに対
する化合物のピーク面積比を算出し含有量を求めた。
【0046】[人工セメント液でのPVA溶出量(NC
S) 重量%]試料約1gを8mmにカットし、加圧容
器内で170℃の人工セメント液(KOH3.5g/l
+NaOH0.9g/l+Ca(OH)20.4g/
l)に1時間浸漬したあと、水洗、ろ過、乾燥して試料
重量の低下率より、PVAの容出量NCS(wt%)を
求めた。これを繊維内部架橋の目安にした
【0047】[耐オートクレーブ性(スレート板の湿潤
曲げ強度:WBS) kg/cm2]架橋したPVA系
繊維をデニールに合わせて4〜8mmの長さに切断しタ
ッピー式で該繊維2重量部、パルプ3重量部、シリカ3
8重量部、セメント57重量部の配合により、湿式抄造
し、10plyの積層板を作製する。次いで50℃で2
4時間で1次養生したのち、170℃で15時間、17
5℃で10時間、180℃で10時間オートクレーブ養
生を行い、厚さ4mmのスレート板を作製する。その
後、該スレート板から25mm×70mm×4mmの試
験片を切り出し、JISK−6911に準じて、3日間
水中に浸漬後、オートクレーブを用いてスパン長50m
m、圧宿速度2mm/分で曲げ強度WBS(kg/cm
2)を測定した。なお、スレート板の比重を1.6前後
にし最終的に比重1.6に補正したWBSを記載した。
【0048】[実施例1]エチレン変性度3モル%、重
合度1650、けん化度99.7モル%のエチレンービ
ニルアルコール系共重合体を水に溶解して紡糸原液(共
重合体濃度16重量%)とし、直径0.08mm,孔数
2000のノズルから常温の飽和芒硝浴に吐出して糸篠
を形成させた。次いで6m/分のローラー速度で離浴さ
せ、ローラー延伸倍率2.5倍のローラー延伸及び芒硝
350g/リットル浴中で延伸倍率1.5倍の湿熱延伸
を行い、乾燥後、全延伸倍率が10倍となるように延伸
温度220℃の条件で乾熱延伸を行い、次いで225℃
の条件で5%の収縮処理を行い巻き取った。結果を表1
に示す。
【0049】[実施例2]エチレン変性度6モル%、重
合度1650、けん化度99.7モル%のエチレンービ
ニルアルコール系共重合体を用いた以外は実施例1と同
様に繊維を製造した。結果を表1に示す。
【0050】[実施例3]実施例1で得られた繊維をホ
ルムアルデヒド30g/リットル、硫酸270g/リッ
トル、芒硝150g/リットルからなる70℃の水溶液
に20分間浸漬後、水洗・乾燥してホルマール化処理を
行った。実施例1に比して寸法安定性が一層改善され
た。得られた繊維の性能を表1に示す。
【0051】[実施例4]エチレン変性度6モル%、重
合度1650、けん化度99.7モル%のエチレンービ
ニルアルコール系共重合体に、該共重合体に対して硼酸
1.5重量%、酢酸0.3重量%添加して共に水に溶解
したものを紡糸原液(共重合体濃度16重量%)とし、
直径0.08mm,孔数1000のノズルから苛性ソー
ダ30g/リットル、芒硝340g/リットルを含む8
0℃の凝固浴中に吐出させて糸篠を形成させた。次いで
6m/分のローラー速度で離浴させ、延伸倍率2.5倍
のローラー延伸を行い、中和後、芒硝濃度350g/リ
ットルの水溶液(90℃)で倍率2倍の湿熱延伸を行
い、その後残存硼酸が0.3重量%/繊維となるように
水洗し、次いで延伸倍率7倍となるように収縮処理を行
い、乾燥後、全延伸倍率が20倍となるように延伸温度
220℃で乾熱延伸を行い、次いで225℃の条件で2
%の収縮処理を行い巻き取った。結果を表1に示す。
【0052】[比較例1]エチレン変性度0モル%、重
合度1650、けん化度99.7モル%のPVAを用い
た以外は実施例1と同様に繊維を製造した。結果を表1
に示す。 [比較例2]比較例1で得られた繊維に実施例3と同様
にアセタール化処理を施した。得られた繊維の性能を表
1に示す。
【0053】[比較例3]エチレン変性度25モル%、
重合度1650、けん化度99.7モル%のエチレンー
ビニルアルコール系共重合体を水に溶解して紡糸原液
(共重合体濃度16重量%)とし、直径0.08mm,
孔数2000のノズルから常温の飽和芒硝浴に吐出して
糸篠を形成させた。次いで6m/分のローラー速度で離
浴させ、ローラー延伸倍率2.5倍のローラー延伸及び
芒硝350g/リットル浴中で延伸倍率1.5倍の湿熱
延伸を行い、乾燥後、全延伸倍率が8倍となるように延
伸温度215℃の条件で乾熱延伸を行い、次いで215
℃の条件で5%の収縮処理を行い巻き取った。結果を表
1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】[実施例5〜8、比較例4〜6]実施例1
〜4及び比較例1〜3において得られたそれぞれのPV
A系繊維を用いて紙を製造した。まず試料繊維を繊維長
約5mmにカットして温度18℃の水に分散させ、次い
でPVAバインダー繊維(株式会社クラレ製「VPB1
05−1×3」単繊維繊度1d、繊維長3mm)を紙料
全重量の15重量%となるように添加し、均一に攪拌混
合して、固形分濃度0.4重量%のスラリーを調整し
た。かかるスラリーを用いてTAPPI式抄紙機に供給
して抄造した後、120℃のシリンダードライヤーを用
いて乾燥し、坪量30g/m2の紙を製造した。実施例
で得られた繊維を用いたものはいずれも抄紙工程におけ
る溶解ロスはなく、また抄紙乾燥時における寸法変化が
小さく、形態安定性及び紙力に優れた紙を効率的に得ら
れた。特に実施例3により得られた繊維は寸法安定性が
高く、紙料用繊維として優れたものであった。一方、比
較例において得られた繊維を用いたものは、繊維の湿熱
時の寸法安定性が低いために抄紙乾燥時に繊維が収縮
し、実施例に比して紙の形態安定性が劣ったものであっ
た。また比較例1、3において得られた繊維の耐熱水性
が低いため、抄紙工程における溶解ロスが大きくなり、
また得られる紙の耐熱水性も低いものとなった。
【0056】[実施例9]粘度平均重合度2400でエ
チレン共重合量が4モル%、ケン化度が99.5モル%
のPVAを濃度13%になるように110℃のジメチル
スルホキシド(DMSO)に溶解し、同時に凍結防止の
ためメタノールをDMSOに対し1重量%添加したあ
と、得られた溶液を1000ホールのノズルより吐出さ
せ、メタノール/DMSO=6/4(重量比)、0℃の
凝固浴に湿式紡糸した。さらに40℃メタノール浴で
3.5倍湿延伸したあと、メタノールで該溶剤をほとん
ど全部抽出除去した。最後のメタノール抽出浴に架橋剤
の2,5−ジメトキシテトラハイドロフラン(DMT)
を5重量%になるように添加し均一溶液にしたあと、繊
維を1分間滞留させて該架橋を繊維内部まで含有せしめ
120℃にて乾燥した。
【0057】次いで170―200−230℃の3セク
ションからなる熱風炉で総延伸倍率が15倍になるよう
に延伸して2000d/1000f(単繊維デニール2
dr)のマルチフイラメントを得た。得られた延伸糸の
DMT含有量は0.7モル%/PVA(2.1wt%/
PVA)であった。その後、ホルマリン5重量%および
硫酸4重量%含有する75℃の水溶液で30分架橋処理
したあと、40℃の水を用いて湯洗し、0.5規定のN
aOH水溶液で中和してから、再度40℃で湯洗後80
℃で乾燥した。
【0058】架橋単繊維強度は12.4g/d、ヤング
率290g/d、WTb180℃以上、Wsr2%、乾
湿強度比90%であり、170℃セメント液中での1時
間後のPVA溶出量(NCS)は17.8%と低く、従来
にないほど高温の湿熱に耐え、かつ高強度であった。ま
た、170℃オートクレーブ後のスレート板曲げ強度W
BSは252kg/cm2と優れた補強性を示し、18
0℃オートクレーブ後でもWBSは230kg/cm2
とアスベスト代替品として、新生瓦や外壁材に十分使え
るものであった。
【0059】[実施例10]粘度平均重合度が3300
でエチレン共重合度が2モル%、ケン化度が99.8モ
ル%のPVAを、濃度11重量%になるように溶解した
あと、得られた溶液を400ホールのノズルより吐出さ
せ、メタノール/DMSO=7/3重量比、7℃の凝固
浴で湿式紡糸した。さらに40℃メタノール浴で3.5
倍延伸したあと、最後のメタノール抽出浴に架橋剤の
1,1:9,9−ビスエチレンジオキシノナン(BE
N)を6重量%添加し、繊維に含有させて、130℃で
乾燥した。その後180℃−210℃−240℃の3セ
クションからなる熱風炉で総延伸倍率が16.5倍にな
るように延伸し1200d/400f(単繊維デニール
3dr)のマルチフイラメントを得た。次いでホルマリ
ン3重量%と硫酸2重量%とMgCl20.5重量%含
有する75℃の水溶液で30分架橋処理を施した。架橋
後の単繊維強度は13.1g/d、ヤング率330g/
d、WTb180℃以上、Wsr1.5%、乾湿強度比
92%であり、NCSは16.1%を示し、高強度で耐
湿熱性に非常に優れていることが判った。また170℃
WBSは258kg/cm2、180℃WBSは239
kg/cm2と高く、付加価値の高い高性能なPVA系
繊維であった。
【0060】[実施例11]粘度平均重合度が1700
でエチレン共重合量が7モル%、ケン化度が99.2モ
ル%のPVAを濃度22重量%になるようにDMSOに
溶解し、1万ホールのノズルより吐出させて、メタノー
ル/DMSO=6/4重量比、10℃凝固浴で湿式紡糸
した。さらに40℃のメタノールで3倍延伸したあと、
最後のメタノール抽出浴にテトラメトキシプロパン(T
MP)を7重量%になるように添加し、繊維に含有させ
て110℃にて乾燥した。得られた紡糸原糸を170〜
230℃の6セクションからなる熱風炉で総延伸倍率1
5.5倍に延伸し、TMP含有量が4.9wt%/PV
Aである15000d/10000f(単繊維デニール
1.5dr)のマルチフイラメントを得た。次いでホル
マリン5重量%と硫酸5重量%を含む70℃の水溶液で
30分架橋処理を施した。得られた繊維の単繊維強度は
10.9g/d、ヤング率250g/d、WTb180
℃以上、Wsr1.8%、乾湿強度比85%であり、N
CSは19.5%、170℃WBSは224kg/cm
2を示し、住宅サイデイング補強材として優れたもので
あった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 佐野 洋文 倉敷市酒津1621番地 株式会社クラレ内 (72)発明者 鎌田 英樹 倉敷市酒津1621番地 株式会社クラレ内 (72)発明者 勘解由 昭 倉敷市酒津1621番地 株式会社クラレ内 (72)発明者 吉持 駛視 倉敷市酒津1621番地 株式会社クラレ内 (72)発明者 佐藤 政弘 倉敷市酒津1621番地 株式会社クラレ内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エチレンービニルアルコール系共重合体
    を含む繊維であって、該共重合体におけるエチレン単位
    の割合が0.5〜10モル%であり、かつ溶断温度10
    0℃以上、乾燥時強度6g/d以上、乾湿強度比65%
    以上、沸水収縮率5%以下のポリビニルアルコ−ル系繊
    維。
  2. 【請求項2】 アセタール架橋構造が形成されたエチレ
    ンービニルアルコール共重合体を含む繊維であって、該
    共重合体におけるエチレン単位の割合が0.5〜10モ
    ル%であり、かつ溶断温度100℃以上、乾燥時強度6
    g/d以上、乾湿強度比65%以上、沸水収縮率5%以
    下のポリビニルアルコール系繊維。
  3. 【請求項3】 ホルマール架橋構造及び炭素数2以上の
    架橋剤により導入されたアセタール架橋構造が形成され
    たエチレンービニルアルコール共重合体を含む繊維であ
    って、該共重合体におけるエチレン単位の割合が0.5
    〜10モル%であり、かつ溶断温度100℃以上、乾燥
    時強度10g/d以上、乾湿強度比70%以上、沸水収
    縮率5%以下のポリビニルアルコール系繊維。
  4. 【請求項4】 単繊維デニールが4d以下である請求項
    1〜3のいずれかに記載のポリビニルアルコール系繊
    維。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれかに記載の紙料用
    ポリビニルアルコール系繊維。
  6. 【請求項6】 請求項1〜4のいずれかに記載のポリビ
    ニルアルコール系繊維を配合してなる紙。
  7. 【請求項7】 請求項1〜4のいずれかに記載の水硬性
    材料補強用ポリビニルアルコール系繊維。
  8. 【請求項8】 請求項1〜4のいずれかに記載のポリビ
    ニルアルコール系繊維を含有する水硬性硬化体。
  9. 【請求項9】 アセタール架橋を生じる炭素数2以上の
    架橋剤を2〜10重量%含有し、エチレン共重合量が
    0.5〜10モル%のポリビニルアルコール系ポリマー
    からなる紡糸原糸を乾熱延伸した後、ホルマリンと酸の
    混合水溶液で架橋処理を行いホルマール架橋構造及びア
    セタール架橋構造を導入することを特徴とするポリビニ
    ルアルコール系繊維の製造法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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US10717673B2 (en) 2015-12-30 2020-07-21 Exxonmobil Research And Engineering Company Polymer fibers for concrete reinforcement

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