JP3357215B2 - 耐湿熱性ポリビニルアルコール系繊維およびその製造法 - Google Patents

耐湿熱性ポリビニルアルコール系繊維およびその製造法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐湿熱性と高強度が要
求される漁網、ロープ、テント、土木シートなどの一般
産業資材やセメント、ゴム、プラスチックの補強材など
に有用なポリビニルアルコール(以下、PVAと略記)
系合成繊維及びその製造法に関するものであり、特に本
発明の繊維は、オートクレーブ養生を行うセメント製品
の補強に効果を発揮する。
【0002】
【従来の技術】PVA系合成繊維は汎用繊維の中で最も
高強力高弾性率を有し、かつ接着性や耐アルカリ性が良
好な為、特に石綿代替のセメント補強材として脚光を浴
びている。しかしながらPVA系繊維は耐湿熱性に乏し
く、一般産業資材や衣料素材でも用途が制限され、さら
に高温でのオートクレーブ養生は不可能であった。現在
セメント補強材にPVA系繊維を使用する場合は室温養
生に頼っており、セメント製品の寸法安定性や強度が十
分でなく、かつ養生日数が長いなどの欠点を有してい
た。一方高温オートクレーブ養生に炭素繊維が一部用い
られているが、セメントマトリックスとの接着性が悪
く、補強効果に乏しく、かつ高価であるなどの問題があ
った。PVA系繊維の耐湿熱性を改良しようとする試み
は古くからなされて来た。
【0003】たとえば、特公昭30−7360号公報や
特公昭36−14565号公報には、ホルマリンを用
い、PVAのOH基と架橋反応(ホルマール化)して疎
水化により染色や洗濯に耐えられるPVA系繊維とする
ことが記載されている。しかし、これらの技術で得られ
ている繊維は強度が低く、本発明に言う一般産業資材や
セメント、ゴム、プラスチック等の補強材には向かない
ものであった。また、高強力PVA繊維をホルマール化
することが特開昭63−120107号公報に開示され
ているが、ホルマール化度が5〜15モル%と低く、P
VA系繊維の非晶領域の極く一部が疎水化されている程
度にすぎず、耐湿熱性は十分でなく、くり返し長期間湿
熱にさらされる産業資材や高温オートクレーブ養生のセ
メント補強材には到底満足できるものではなかった。
【0004】一方、特開平2−133605号公報や特
開平1−207435号公報には、アクリル酸系重合体
をブレンドするか、又は繊維表面を有機系過酸化物やイ
ソシアネート化合物、ウレタン系化合物、エポキシ化合
物などで架橋せしめる方法が記述されている。しかし、
アクリル系重合体による架橋はエステル結合である為、
セメントのアルカリで容易に加水分解してその効果を失
うこと、及び他の架橋剤も繊維表面架橋である為オート
クレーブ養生中やくり返し湿熱にさらされている時に繊
維の中心部から膨潤、溶解が起こることなどの問題を抱
えていた。
【0005】他に酸を用いて脱水架橋により耐湿熱性を
向上させる方法が特開平2−84587号公報や特開平
4−100912号公報などで公知であるが、本発明者
らが追試したところ繊維内部まで架橋させようとすると
PVA繊維の分解が激しく起こり、繊維強度の著しい低
下を招いた。一方、ジアルデヒド化合物による架橋は特
公昭29−6145号公報や特公昭32−5819号公
報などに明記されているが、ジアルデヒド化合物と反応
触媒である酸の混合浴で後処理する為、繊維分子が高度
に配向結晶化した高強力繊維ではジアルデヒド化合物が
浸透しずらく内部架橋が困難であった。
【0006】また、特開平5−163609号公報に
は、ジアルデヒド又はそのアセタール化合物を紡糸原糸
に付与し、高倍率に乾熱延伸したあと硫酸や塩酸などの
無機塩や酢酸などの有機酸を含んだ水溶液に長時間浸漬
してアセタール化反応を起こさせる方法が開示されてい
る。しかしながら、この方法では強度低下が大きくて十
分な耐湿熱性が得られず、かつバッチ式の浸漬法の為品
質管理や生産性の点で問題があった。さらに十分な耐湿
熱性を付与するためにジアルデヒドによる架橋を高度に
行うと、強度低下が大きいため、高度の耐湿熱性が要求
される分野へは、この技術は利用できないという問題も
あった。またクロム化合物によりPVA系繊維を架橋し
て、耐熱水性に付与することも公知であるが、一般にク
ロム乾燥による架橋は繊維表面で重点的に起こり、繊維
内部が未架橋であるため、前記した有機過酸化物等によ
る架橋の場合と同様に、繊維の中心部から膨潤・溶解が
起こり、耐湿熱性の点で満足できない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、繊維の強度
低下を極力押さえて、かつ繊維に高度の耐湿熱性を付与
する技術を提供することを目的とするものである。特に
繊維の表面のみならず繊維の内部まで架橋されて耐湿熱
性が高度に付与されているにもかかわらず繊維の引張強
度が架橋処理により大きく低下していないPVA系繊維
を得ることを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、ジアルデヒド
化合物を紡糸原糸の内部まで含有させ、高倍率延伸した
のち酸性クロム化合物を付与して熱処理することにより
該ジアルデヒド化合物によるアセタール化と該クロム化
合物による架橋を同時に生じさせることにより、本発明
の前記目的が達成できることを見いだしたものである。
すなわち本発明は、ジアルデヒド化合物及び酸性クロム
化合物により耐湿熱性が付与されていることを特徴とす
るPVA系繊維であり、そしてその製造方法として、P
VA系ポリマーの溶液を紡糸して得られる紡糸原糸を乾
燥し、総延伸倍率12倍以上となるように乾熱延伸を行
いPVA系繊維を製造するに際し、乾燥までの工程で該
溶液又は該紡糸原糸にジアルデヒド化合物を付与し、乾
熱延伸後の繊維に酸性クロム化合物を付与し、そして熱
処理する方法を用いるものである。
【0009】本発明により、高強度かつ高耐湿熱性の繊
維、たとえば80%強度保持時の熱水温度が160℃以
上、融点が220℃以上で、さらにヤーン強度が11g
/d以上の繊維が得られる。本発明は、架橋剤として、
前記したように、ジアルデヒド化合物と酸性クロム化合
物の両者を併用することにより、強度と耐湿熱性の両者
を満足した発明であり、ジアルデヒド化合物と酸性クロ
ム化合物のいずれか一方だけで架橋処理する場合には、
強度を保つためには耐湿熱性を十分に高めることができ
ないか或いは耐湿熱性を十分に高めた場合には繊維の強
度低下が大きいこととなる。
【0010】以下、本発明の内容をさらに詳細に説明す
る。本発明に言うPVA系ポリマーとは、粘度平均重合
度が1500以上のものであり、ケン化度が98.5モ
ル%以上、好ましくは99.0モル%以上で分岐度の低
い直鎖状のものである。PVA系ポリマーの平均重合度
が高いほど結晶間を連結するタイ分子の数が多く、かつ
欠点となる分子末端数が少ないので高強度、高弾性率、
高耐湿熱性のものが得られやすく、好ましくは重合度3
000以上、さらに好ましくは6000以上である。
【0011】PVA系ポリマーの溶剤としては何んでも
よく、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレング
リコール、トリエチレングリコール、ブタンジオールな
どの多価アルコールやジメチルスルホキシド、ジメチル
ホルムアミド、ジエチレントリアミン、水及びこれら2
種以上の混合溶剤などが挙げられる。ただし、架橋剤で
あるジアルデヒド化合物を溶剤に混合添加する場合に
は、該化合物を凝集させたり、分離させたりする溶剤は
望ましくなく、均一分散又は溶解する溶剤が好ましい。
また、PVA系ポリマーを溶剤で溶解する際にホウ酸、
界面活性剤、分解抑制剤、染料、顔料などを添加しても
支障ないが、紡糸性や延伸性を悪化させるものは好まし
くない。
【0012】このようにして得られた紡糸原液は常法に
より湿式、乾式、乾湿式のいずれかの方法でノズルより
吐出され固化する。湿式紡糸、乾湿式紡糸では、凝固浴
にて固化し繊維化させるが、その凝固剤としては、メタ
ノールやエタノールなどのアルコール類、アセトン、メ
チルエチルケトン等のケトン類、アルカリ水溶液、アル
カリ金属塩水溶液などいずれでも良い。なお凝固におけ
る溶剤抽出をゆっくりさせて均一ゲル構造を生成させ、
より高い強度と耐湿熱性を得る為に、該凝固剤に紡糸原
液の該溶剤を10重量%以上混合させるのが好ましい。
さらに凝固温度を20℃以下にして急冷させるのも均一
な微結晶構造を得るのに都合が良い。また、繊維間の膠
着を少なくし、その後の乾熱延伸を容易にするために溶
剤を含んだ状態で2倍以上の湿延伸をするのが望まし
い。なお、アルカリ凝固の場合は湿熱延伸の前で張力下
の中和を行うのが良い。
【0013】次いで溶剤の抽出を行うが抽出剤としては
メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコー
ル類やアセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、
エーテル、水などが使用できる。続いて、必要に応じ、
油剤などを付与して該抽出剤を乾燥させるが、乾式の場
合は抽出剤を使用せずに紡糸時及び紡糸後で該溶剤を蒸
発させて乾燥させる。
【0014】本発明の特徴の一つは、ジアルデヒド化合
物を紡糸原液から乾燥直前までのいずれかの工程で紡糸
原糸の内部まで含有させることである。乾燥後、乾熱延
伸直前までに付与する場合は、該ジアルデヒド化合物が
繊維内部へ十分に浸透しずらく、表面架橋により耐湿熱
性は満足するものが得がたい。好ましい付与方法は抽出
浴のアルコールやケトン類に該ジアルデヒドを溶解し、
その中に膨潤状態の糸条を通過させて、繊維内部へ含有
させる方法である。もちろん紡糸原液に添加する方法で
もよい。
【0015】本発明に言うジアルデヒド化合物とは、例
えばグリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンア
ルデヒド、グルタルアルデヒド、ヘキサン−1,6−ジ
アール、オクタンジアール、ノナンジアール、デカンジ
アール、2,4−ジメチルヘキサンジアールなどの脂肪
族ジアルデヒド類やオルソフタルアルデヒド、イソフタ
ルアルデヒド、テレフータルアルデヒドなどの芳香族ジ
アルデヒド類等を意味するが、その後の乾熱延伸時に蒸
発飛散しない耐熱性のある炭素数5以上のジアルデヒド
化合物が好ましい。特に好ましくは炭素数8以上の脂肪
族ジアルデヒドであり、その具体例としては、例えばオ
クタンジアール、ノナンジアール、デカンジアール、ド
デカンジアール、2,4−ジメチルヘキサンジアール、
5−メチルヘプタンジアール、4−メチルオクタンジア
ール、2,5−ジメチルオクタンジアール、3,6−ジ
メチルデカンジアールなどである。本発明におけるジア
ルデヒド化合物の好適な付着量は、架橋された最終繊維
に対し、0.2〜10重量%であり、より好ましくは
0.5〜5重量%である。付着量が0.2重量%未満で
は架橋密度が少ないため耐湿熱性が不十分であり、10
重量%を超えると分子配向を乱したりPVAの分解が促
進されて強度低下を招き易い。
【0016】次いで該ジアルデヒド化合物含有の乾燥後
紡糸原糸を200℃以上、好ましくは220℃以上で総
延伸倍率が好ましくは12倍以上、より好ましくは15
倍以上となるように乾熱延伸する。本発明に用いるジア
ルデヒド化合物は酸が存在しない状態では架橋せず、し
たがって高倍率延伸が可能であり、ヤーン強度11g/
d以上のものが得られる。延伸温度は高重合度ほど高く
して高倍率を維持するが、260℃以上では該ジアルデ
ヒドの蒸発やPVAの分解が生じ易く好ましくない。な
お総延伸倍率は、湿延伸倍率と乾熱延伸倍率の積で表さ
れる。
【0017】本発明のもう一つの特徴は、このようにし
て得られたジアルデヒド化合物含有の高強力延伸糸に対
し酸性クロム化合物、例えば塩化クロム、硝酸クロム、
硫酸クロムなどの無機クロム化合物や化1で表されるよ
うな脂肪族カルボン酸のクロム錯塩化合物などの水やア
ルコールの溶液を付着させ、200℃以上で熱処理する
ことによりジアルデヒド化合物とPVAのOH基の分子
間架橋及びクロム酸や錯体化合物とPVAのOH基の架
橋を起こさせる点にある。
【0018】
【化1】
【0019】特に該クロム錯塩化合物は、それ自体PV
AのOH基と反応して撥水性の被膜を作り、かつ強度低
下を抑えるので特に好ましい。また、該クロム化合物の
付着量と熱処理する温度、時間により架橋の度合いと強
度低下が異なるが、好ましい付着量はクロムとして0.
01〜0.5重量%であり、熱処理温度と時間は、20
0〜240℃、10〜60秒が好ましい。なお、硫酸、
硝酸、塩酸、リン酸などの強酸は、繊維の分解を伴って
強度低下が激しく、カルボン酸などの有機酸はジアルデ
ヒド化合物の架橋反応を起こしずらく、耐湿熱性は不十
分でいずれも問題であった。またこれらの酸水溶液で浸
漬法により架橋を進めた場合は融点が220℃未満とな
り、繊維の結晶や非晶が損傷を受けている事が示唆され
た。
【0020】本発明により、ジアルデヒドが繊維の内部
まで分子間架橋し、同時にクロム化合物で繊維表面も架
橋したPVA系繊維が短時間で連続的に得られるように
なった。このように本発明は、繊維の内部が主としてジ
アルデヒド化合物により架橋されており、そして繊維の
表層部が主として酸性クロム化合物により架橋されてい
る繊維が本発明の目的を達成する上で最も好ましいこと
となるが、これ以外の架橋状態、例えば繊維の内部も表
層部も共にジアルデヒド化合物と酸性クロム化合物によ
り架橋されているような繊維であっても、一応上記した
ような本発明の目的は達成されることとなる。本発明の
架橋繊維は、80%強力保持時の熱水温度(WT80)が
160℃以上で融点が220℃以上を示し、かつヤーン
強度が11g/d以上を維持する事が判明し、くり返し
水、スチーム、熱などにさらされる一般産業資材やゴ
ム、プラスチックの補強材はもちろんのこと、160℃
以上のオートクレーブ養生にも耐える従来にない高付加
価値の繊維であった。
【0021】以下、実施例により本発明を具体的に説明
するが、本発明は実施例のみに限定されるものではな
い。実施例中%は特にことわりのない限り重量にもとず
く値である。なお、以下に述べる実施例中における各種
の物性値は以下の方法で測定されたものである。 1)PVAの粘度平均重合度PA JIS K−6726に基づき30℃におけるPVA希
薄水溶液の比粘度ηspを5点測定し、次式(1)より極
限粘度〔η〕を求め、さらに次式(2)より粘度平均重
合度PAを算出した。 〔η〕=lim(C→O)ηsp/C・・・(1) PA=(〔η〕×104/8.29)1.613・・・(2) 2)ジアルデヒド化合物の含有量 架橋したPVA系繊維を無緊張下で140℃以上の熱水
又はDMSOに溶解せしめNMRによりPVAのCH2
基ピークに対する該ジアルデヒドのエーテル結合に相当
するピークの比を算出し、含有量を求めた。
【0022】3)クロム化合物含有量 試料約1gを精秤し、燃焼法で灰化したあと硝酸水溶液
で希釈し、原子吸光法にて検量線よりクロム含有量を求
め、化合物含有量を算出した。 4)ヤーンの引張強伸度 JIS L−1013に準じ、ヤーンに予め80回/m
の撚りをかけ、20℃、65%RHに24時間放置後、
20℃、65%RHの標準状態で、試長20cm、引張
速度10cm/min、初荷重1/20g/dにてイン
ストロンTM−M型エアー式コード用グリップを用いて
切断強力及び伸度を測定した。さらに、該80回撚のヤ
ーンを1/20g/d張力下で90m長のかせ捲きを作
り重量測定によりヤーンデニールを算出し、該切断強力
をデニールで除して強度(g/d)を求めた。η=10
の平均値を採用した。
【0023】5)80%強力保持時の熱水温度(W
80) マルチヤーンをステンレスパイプ(30〜40φ×10
0〜150mmL)に軽い張力下で捲いて固定し、20
kg/cm2以上の耐圧ステンレスポット(容量200
〜500ml)の中に入れる。次いでその中に試料付ス
テンレスパイプが隠れるまで水を注ぎステンレスポット
を密栓する。その後、予め所定の温度に加熱しているオ
イルバスの中にステンレスポットを浸漬させ、昇温時間
30分+処理時間60分(計90分)静置したあと、オ
イルバスより取出し、水冷後ステンレスポットより試料
を出して、乾燥し、試長10m、引速50%/min、
初荷重0.1g/d、η≧5にてヤーンの強力を測定す
る。熱水処理前のヤーン強力に対する保持率を算出し、
80%維持する時の熱水温度WT80を求める。なお処理
温度は5℃間隔で行い、強力保持率と処理温度のカーブ
よりWT80を求めた。
【0024】6)融点 パーキンエルマー社製の示差熱量分析計(型式DSC−
2C)を用い、カット長約1mmの繊維を10mg採取
して、窒素気流中10℃/minの昇温における融点
(吸熱ピーク温度)を測定した。 7)耐オートクレーブ性(ストレート板の湿潤曲げ強度
WBS) PVA系合成繊維を6mmの長さに切断し、ハチエック
マシンで該繊維2部、パルプ3部、シリカ38部、セメ
ント57部の配合で湿式抄造し、50℃で12時間一次
養生したのち150℃×20hr又は160℃×15hr
は170℃×15hr又は180℃×10hrでオートクレ
ーブ養生を実施し、ストレート板を作製したあと、JI
S K−6911に準じて1日水中に浸漬後、濡れてい
る状態で曲げ強度を測定した。
【0025】実施例1,2及び比較例1,2 粘度平均重合度が1700(実施例1)と4000(実
施例2)でケン化度がいずれも99.5モル%のPVA
をそれぞれ濃度14重量%と9重量%になるようにジメ
チルスルホキシド(DMSO)に100℃で溶解し、得
られた各溶液を1000ホールのノズルより吐出させ、
メタノール/DMSO=7/3重量比、5℃の凝固浴で
湿式紡糸した。さらに40℃メタノール浴で3.5倍湿
延伸したあと、メタノールで該溶剤をほとんど全部除去
した。最後のメタノール抽出浴にノナンジアールを5重
量%浴になるように添加し、均一溶液としたあと、繊維
を1.5分間滞留させてメタノール含有繊維の内部およ
び表面にノナンジアールを含有させ、120℃にて乾燥
した。得られた紡糸原糸を実施例1では170℃、20
0℃、232℃の3セクションからなる熱風炉で総延伸
倍率17.0倍に、実施例2では170℃、200℃、
240℃で16.5倍になるように延伸した。次いで化
学式1でR=C17351〜X4=Clのクロム錯塩化合
物(一方社油脂工業製、商品名セブランCR−N)を
0.3%の濃度になるようにメタノール/水=6/4液
に溶解し、ローラータッチ方式で両延伸糸に付着させた
あと、実施例1は210℃×35秒、実施例2は220
℃×35秒にて連続的に熱処理して架橋を施した。
【0026】比較例1として実施例1で該クロム錯塩化
合物の代りに0.1%の硫酸水溶液を用いて架橋を進め
た。また比較例2では、実施例2でノナンジアールを用
いずに延伸を行い、それ以外は同様の架橋処理を実施し
た。得られた繊維の物性等を表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】実施例1は、粘度平均重合度PAが170
0で延伸温度が232℃と比較的低い為ノナンジアール
の蒸発が少なく3.2%の含有量を示した。PA=17
00にもかかわらずヤーン強度12.6g/d、80%
強力保持時の熱水温度WT80が169℃で融点が228
℃と高く、かつオートクレーブ養生ではスレート板湿潤
曲げ強度WBSが目標の250kg/cm2となる温度
が160℃をクリアしており、ノナンジアール+クロム
化合物による架橋効果が十分にみとめられた。実施例2
は、PA=4000で延伸温度を240℃にし、16.
8倍延伸した場合であるが強度は14.9g/dと従来
の内部架橋糸より強度低下は少なく、かつWT80が18
3℃、融点が234℃で170℃オートクレーブでもW
BS=250kg/cm2と補強効果を示し、従来に見
られない高付加価値の繊維であった。また湿熱が関与す
る一般産業資材や衣料素材にも適用できることが判っ
た。比較例1はPA=1700でクロム錯塩化合物の代
りに硫酸を用いた場合であるが、延伸時にPVAの分解
があり、ヤーン強度は9.1g/dに低下した。またW
80=150℃で融点も低く150℃のオートクレーブ
に耐えるのが難しく、明らかにクロム錯塩化合物の場合
より繊維性能が劣っていた。比較例2はPA=4000
でノナンジアールを含有しない延伸糸にクロム錯塩化合
物を付着し、熱処理したものであるが、強度は高いもの
のノナンジアールによる分子間架橋がない為か耐湿熱性
は低いものであった。
【0029】実施例3及び比較例3 粘度平均重合度が8000でケン化度が99.9モル%
のPVAを濃度7重量%になるように180℃でグリセ
リンに溶解した。得られた溶液を200ホールのノズル
より吐出させ、乾湿式紡糸によりエタノール/グリセリ
ン=8/2重量比、−5℃の凝固浴で急冷ゲル化させ
た。さらに40℃メタノール浴で4倍湿延伸したあとエ
タノール該溶剤をほとんど全部除去した。最後のエタノ
ール抽出浴にテレフタールアルデヒドを3重量%/浴に
なるように添加し、均一溶液としたあと繊維を同浴に3
分間滞留させて繊維の内部及び表面に該ジアルデヒドを
含有させ、130℃にて乾燥した。得られた紡糸原糸を
170℃、250℃の2セクションからなる輻射炉で総
延伸倍率18.9倍になるように延伸し、該ジアルデヒ
ド含有量が2.4重量%の延伸糸を得た。次いで塩化ク
ロムのメタノール/水=6/4重量比の溶液をローラー
タッチで付着させ、240℃×30秒、1g/dの張力
下で連続熱処理し、架橋反応を行った。架橋繊維の塩化
クロム含有量はクロムとして0.21重量%であり、ヤ
ーン強度は18.1g/d、WT80は190℃、融点は
235℃であり、180℃オートクレーブでもWBSは
270kg/cm2と非常に優れた性能を示した。ま
た、融点も高く、タイヤベルト部やカーカス部さらには
オイルブレーキホースの補強材にも適したものであっ
た。
【0030】比較例3として、ジアルデヒドの含有して
いない通常の延伸糸をホルマリン100g/l+硫酸5
0g/lの水溶液に80℃×60分浸漬し、ホルマール
化を実施したが、ヤーン強度は15.9g/d、WT80
は161℃、融点は216℃と実施例3より劣ったもの
であった。
【0031】実施例4 粘度平均重合度が4100の完全ケン化PVAを10%
の濃度で水に溶解し、同時にホウ酸をPVAに対し2重
量%添加し、更にグルタルアルデヒド8重量%を添加し
て紡糸原液を調製した。該紡糸原液を水酸化ナトリウム
25g/l、芒硝320g/lの65℃の凝固浴へ湿式
紡糸し、そしてローラ延伸、中和、湿熱延伸、水洗後乾
燥した。次いで235℃で総延伸倍率が25倍となるよ
うに乾熱延伸し、グルタルアルデヒド含量5.8重量%
の延伸糸を得た。その後、実施例1と同じクロム錯塩化
合物をクロムとして0.07重量%付着させ、230℃
で連続架橋を施した。得られた繊維の強度は16.4g
/d、WT80は178℃、融点230℃、170℃オー
トクレーブのWBSは258kg/cm2と耐湿熱性の
ある高強力PVA系繊維であった。
【0032】実施例5 粘度平均重合度2300の完全ケン化PVAを濃度25
%になるように水に溶解し、同時にPVAに対しドデシ
ルベンゼンスルホン酸ソーダ2重量%及びノナンジアー
ル3重量%を添加して紡糸原液とし、200ホールのノ
ズルを用いて乾式紡糸した。水を蒸発乾燥後、240℃
にて14.5倍延伸し、続いて硝酸クロムをクロムとし
て0.14重量%付着し、225℃で架橋処理を施し
た。得られた繊維は強度14.3g/d、WT80=17
3℃、融点228℃高強力で耐湿熱性に優れたPVA系
繊維であった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 黒田 名里子 岡山県倉敷市酒津2045番地の1 株式会 社クラレ内 (56)参考文献 特開 平5−163609(JP,A) 特開 平8−218271(JP,A) 特開 平6−299410(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D01F 6/14

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ジアルデヒド化合物及び酸性クロム化合
    物により耐湿熱性が付与されていることを特徴とするポ
    リビニルアルコール系繊維。
  2. 【請求項2】 ポリビニルアルコール系ポリマーの溶液
    を紡糸して得られる紡糸原糸を乾燥し、総延伸倍率12
    倍以上となるように乾熱延伸を行いポリビニルアルコー
    ル系繊維を製造するに際し、乾燥までの工程で該溶液又
    は該紡糸原糸にジアルデヒド化合物を付与し、乾熱延伸
    後の繊維に酸性クロム化合物を付与し、そして熱処理す
    ることを特徴とする耐湿熱性ポリビニルアルコール系繊
    維の製造法。
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