JPH1077572A - 耐熱水性ポリビニルアルコール系繊維及びその製造方法 - Google Patents
耐熱水性ポリビニルアルコール系繊維及びその製造方法Info
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- JPH1077572A JPH1077572A JP23563496A JP23563496A JPH1077572A JP H1077572 A JPH1077572 A JP H1077572A JP 23563496 A JP23563496 A JP 23563496A JP 23563496 A JP23563496 A JP 23563496A JP H1077572 A JPH1077572 A JP H1077572A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】ポリビニルアルコール系繊維において、強度低
下を抑えながら耐熱水性に有効な分子間架橋を繊維内部
まで十分生じさせる方法を提供する。 【解決手段】示差熱分析より求めた結晶融解熱(ΔH)
が120ジュール/g以下の配向結晶化の低いポリビニ
ルアルコール系繊維をジアルデヒド化合物と酸を用い
て、高温処理してポリビニルアルコールの水酸基を架橋
させる。
下を抑えながら耐熱水性に有効な分子間架橋を繊維内部
まで十分生じさせる方法を提供する。 【解決手段】示差熱分析より求めた結晶融解熱(ΔH)
が120ジュール/g以下の配向結晶化の低いポリビニ
ルアルコール系繊維をジアルデヒド化合物と酸を用い
て、高温処理してポリビニルアルコールの水酸基を架橋
させる。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐熱水性が要求される
衣料分野や不織布、紙さらに一般産業資材などに有用な
ポリビニルアルコール(以下PVAと略記する)系合成
繊維及びその製造法に関するものであり、特に衣料分野
での染色加工に耐え得るPVA系繊維に関するものであ
る。
衣料分野や不織布、紙さらに一般産業資材などに有用な
ポリビニルアルコール(以下PVAと略記する)系合成
繊維及びその製造法に関するものであり、特に衣料分野
での染色加工に耐え得るPVA系繊維に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】従来PVA系繊維は強度、弾性率、耐候
性、耐薬品性、接着性などの点でポリアミド、ポリエス
テル、ポリアクリロニトリル系繊維に比べて優れてお
り、産業資材分野を中心に独自の用途を開拓してきた。
しかしながらPVA系繊維は耐熱水性に乏しく衣料素材
や不織布、紙などには用途が制限される欠点を有してい
た。PVA系繊維の耐熱水性を改良しようとする試みは
古くからなされて来た。たとえば、特公昭30−736
0号公報や特公昭36−14565号公報にはホルマリ
ンを用い、PVAの水酸基とホルマリンを架橋反応(ホ
ルマール化)して疎水化することにより、染色や洗濯に
耐え得るPVA系繊維が記載されている。しかし、これ
らの繊維は強度が低すぎたり、無緊張下の状態では11
5℃の熱水に耐えられず繊維の収縮や膠着を生じる問題
があった。
性、耐薬品性、接着性などの点でポリアミド、ポリエス
テル、ポリアクリロニトリル系繊維に比べて優れてお
り、産業資材分野を中心に独自の用途を開拓してきた。
しかしながらPVA系繊維は耐熱水性に乏しく衣料素材
や不織布、紙などには用途が制限される欠点を有してい
た。PVA系繊維の耐熱水性を改良しようとする試みは
古くからなされて来た。たとえば、特公昭30−736
0号公報や特公昭36−14565号公報にはホルマリ
ンを用い、PVAの水酸基とホルマリンを架橋反応(ホ
ルマール化)して疎水化することにより、染色や洗濯に
耐え得るPVA系繊維が記載されている。しかし、これ
らの繊維は強度が低すぎたり、無緊張下の状態では11
5℃の熱水に耐えられず繊維の収縮や膠着を生じる問題
があった。
【0003】一方、特開平2−133605号公報や特
開平1−207435号公報には、PVA系重合体にア
クリル酸系重合体をブレンドするか又はPVA系繊維を
有機系過酸化物、イソシアネート化合物、ウレタン系化
合物、エポキシ系化合物などの架橋剤で架橋せしめ耐熱
水性を高める方法が記述されている。しかしアクリル酸
系重合体はPVAの水酸基とエステル結合を形成するた
め、用途によっては加水分解してその効果を失うこと、
及び他の架橋剤は主として繊維表面の架橋であるため染
色などの高温熱水では繊維の中心部から膨潤、溶解が起
こることなどの問題点を抱えている。
開平1−207435号公報には、PVA系重合体にア
クリル酸系重合体をブレンドするか又はPVA系繊維を
有機系過酸化物、イソシアネート化合物、ウレタン系化
合物、エポキシ系化合物などの架橋剤で架橋せしめ耐熱
水性を高める方法が記述されている。しかしアクリル酸
系重合体はPVAの水酸基とエステル結合を形成するた
め、用途によっては加水分解してその効果を失うこと、
及び他の架橋剤は主として繊維表面の架橋であるため染
色などの高温熱水では繊維の中心部から膨潤、溶解が起
こることなどの問題点を抱えている。
【0004】他に酸を用いて脱水架橋により耐湿熱性を
向上させる方法が特開平2−84587号公報や特開平
4−100912号公報などで公知であるが、本発明者
らがこれらの公知の方法を追試したところ繊維内部まで
架橋させようとするとPVA繊維の分解が激しく起こ
り、繊維強度の著しい低下を招き、染色加工工程に耐え
る繊維を得ることは困難であった。
向上させる方法が特開平2−84587号公報や特開平
4−100912号公報などで公知であるが、本発明者
らがこれらの公知の方法を追試したところ繊維内部まで
架橋させようとするとPVA繊維の分解が激しく起こ
り、繊維強度の著しい低下を招き、染色加工工程に耐え
る繊維を得ることは困難であった。
【0005】一方、PVA繊維を炭素数5以下の脂肪族
ジアルデヒド化合物又はそれのアセタール化合物による
架橋する技術に関しては特公昭32−5819号公報、
特公昭43−11271号公報などに明記されている。
しかし炭素数5以下の脂肪族ジアルデヒド化合物は反応
触媒の酸と混合すると60〜70℃で重合して、別の化
合物になり、本発明の如く80℃以上での架橋処理が出
来ないため、繊維の内部架橋が得がたく、耐熱水性に劣
るものであった。
ジアルデヒド化合物又はそれのアセタール化合物による
架橋する技術に関しては特公昭32−5819号公報、
特公昭43−11271号公報などに明記されている。
しかし炭素数5以下の脂肪族ジアルデヒド化合物は反応
触媒の酸と混合すると60〜70℃で重合して、別の化
合物になり、本発明の如く80℃以上での架橋処理が出
来ないため、繊維の内部架橋が得がたく、耐熱水性に劣
るものであった。
【0006】また特開平5−163609号公報には、
炭素数5以下の脂肪族ジアルデヒド又はそのアセタール
化合物を紡糸原糸に付与し、高倍率に乾熱延伸したあと
酸処理により繊維内部に架橋を生じさせることが記載さ
れている。しかしながら該ジアルデヒド化合物は、紡糸
原糸の乾燥工程や延伸工程で繊維表層部へ移行し易く、
従来の技術と比べるとはるかに改善されているものの、
それでもなお内部架橋が十分ではないことにより本発明
に言う熱水安定温度が115℃以上を満足するものは簡
単には得られない。
炭素数5以下の脂肪族ジアルデヒド又はそのアセタール
化合物を紡糸原糸に付与し、高倍率に乾熱延伸したあと
酸処理により繊維内部に架橋を生じさせることが記載さ
れている。しかしながら該ジアルデヒド化合物は、紡糸
原糸の乾燥工程や延伸工程で繊維表層部へ移行し易く、
従来の技術と比べるとはるかに改善されているものの、
それでもなお内部架橋が十分ではないことにより本発明
に言う熱水安定温度が115℃以上を満足するものは簡
単には得られない。
【0007】さらに本発明者らは、先に炭素数8以上の
脂肪族ジアルデヒド又はそのアセタール化合物による架
橋に関する技術を出願し、同出願明細書中に、耐オート
クレーブ性の点で有効であることを記載したが、これで
も無緊張下では115℃以上の熱水で収縮や膠着が起こ
り易く問題であった。
脂肪族ジアルデヒド又はそのアセタール化合物による架
橋に関する技術を出願し、同出願明細書中に、耐オート
クレーブ性の点で有効であることを記載したが、これで
も無緊張下では115℃以上の熱水で収縮や膠着が起こ
り易く問題であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】以上の背景を踏まえ
て、本発明者らは、強度低下を抑えながら如何に耐熱水
性に有効な分子間架橋を繊維内部まで十分生じさせる
か、さらに架橋点を増加できるか、鋭意検討を重ねた結
果、比較的配向結晶化の低い示差熱分析より求めたΔH
が120J/g以下のPVA系繊維をジアルデヒド化合
物類と酸を用い、高温処理することが有効であることが
判り、本発明に至ったものである。
て、本発明者らは、強度低下を抑えながら如何に耐熱水
性に有効な分子間架橋を繊維内部まで十分生じさせる
か、さらに架橋点を増加できるか、鋭意検討を重ねた結
果、比較的配向結晶化の低い示差熱分析より求めたΔH
が120J/g以下のPVA系繊維をジアルデヒド化合
物類と酸を用い、高温処理することが有効であることが
判り、本発明に至ったものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は少なくともジア
ルデヒド化合物類で繊維の内部まで分子間架橋されたP
VA系繊維であり、結晶化度を意味する示差熱分析の結
晶融解熱(ΔH)が95ジュール/g以下と低く、かつ
無緊張下での熱水安定温度が115℃以上であるPVA
系繊維であり、そしてその製造方法として、紡糸により
得られるPVA系紡糸原糸を示差熱分析より求めた結晶
融解熱(ΔH)が120ジュール/g以下になるように
延伸し、次いでジアルデヒド化合物と酸が存在する系で
85℃以上で処理し、PVA系繊維を架橋させることを
特徴とする耐熱水性PVA系繊維の製造方法である。
ルデヒド化合物類で繊維の内部まで分子間架橋されたP
VA系繊維であり、結晶化度を意味する示差熱分析の結
晶融解熱(ΔH)が95ジュール/g以下と低く、かつ
無緊張下での熱水安定温度が115℃以上であるPVA
系繊維であり、そしてその製造方法として、紡糸により
得られるPVA系紡糸原糸を示差熱分析より求めた結晶
融解熱(ΔH)が120ジュール/g以下になるように
延伸し、次いでジアルデヒド化合物と酸が存在する系で
85℃以上で処理し、PVA系繊維を架橋させることを
特徴とする耐熱水性PVA系繊維の製造方法である。
【0010】以下本発明をさらに詳細に説明する。本発
明に言うPVA系ポリマーとは、粘度平均重合度が15
00以上のものであり、ケン化度が98.5モル%以
上、好ましくは99.0モル%以上で分岐度の低い直鎖
状のものである。PVA系ポリマーの平均重合度が高い
ほど、分子鎖同士が連結する点が多く、高強度、高耐熱
水性の繊維が得られ易く、好ましくは平均重合度300
0以上である。また繊維の染色性改良を目的としてスル
ホン酸基や酸アミド基を有する化合物を共重合や添加混
合したものであっても何ら問題はない。しかし耐熱水性
の点で、共重合されていないPVAの完全ケン化物、す
なわちケン化度99.0モル%以上のPVAがもっとも
好ましい。
明に言うPVA系ポリマーとは、粘度平均重合度が15
00以上のものであり、ケン化度が98.5モル%以
上、好ましくは99.0モル%以上で分岐度の低い直鎖
状のものである。PVA系ポリマーの平均重合度が高い
ほど、分子鎖同士が連結する点が多く、高強度、高耐熱
水性の繊維が得られ易く、好ましくは平均重合度300
0以上である。また繊維の染色性改良を目的としてスル
ホン酸基や酸アミド基を有する化合物を共重合や添加混
合したものであっても何ら問題はない。しかし耐熱水性
の点で、共重合されていないPVAの完全ケン化物、す
なわちケン化度99.0モル%以上のPVAがもっとも
好ましい。
【0011】PVA系ポリマーの溶剤としては、例えば
グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコー
ル、トリエチレングリコール、ブタンジオールなどの多
価アルコール類やジメチルスルホキシド、ジメチルホル
ムアミド、ジエチレントリアミン、水、ロダン塩及びこ
れら2種以上の混合溶剤などが挙げられる。最も好まし
くはジメチルスルホキシドである。またPVA系ポリマ
ーを溶剤で溶解する際に、ホウ酸、界面活性剤、分解抑
制剤、染料、顔料を添加しても支障ないが、紡糸性や延
伸性を阻害させるものは好ましくない。
グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコー
ル、トリエチレングリコール、ブタンジオールなどの多
価アルコール類やジメチルスルホキシド、ジメチルホル
ムアミド、ジエチレントリアミン、水、ロダン塩及びこ
れら2種以上の混合溶剤などが挙げられる。最も好まし
くはジメチルスルホキシドである。またPVA系ポリマ
ーを溶剤で溶解する際に、ホウ酸、界面活性剤、分解抑
制剤、染料、顔料を添加しても支障ないが、紡糸性や延
伸性を阻害させるものは好ましくない。
【0012】PVA系ポリマーを溶剤に溶解して得られ
た紡糸原液は、常法により湿式、乾式、乾湿式のいずれ
かの方法でノズルより吐出され固化する。湿式紡糸方法
及び乾湿式紡糸方法では、凝固浴にて固化させ繊維化さ
せるが、その際の凝固剤としては、メタノール、エタノ
ールなどのアルコール類やアセトン、メチルエチルケト
ン、メチルブチルケトンなどのケトン類、さらには、ア
ルカリ水溶液、アルカリ金属塩水溶液などのいずれか又
はこれら2種以上の混合液でも良い。なお凝固の際に溶
剤抽出をゆっくりさせて均一ゲル構造を生成させ、網目
構造で高強度、高耐熱水性を得るために、該凝固剤に紡
糸原液の該溶剤を混合させるのが好ましい。さらに、凝
固温度を20℃以下にして急冷させるのも均一ゲル構造
を得るのに都合が良い。
た紡糸原液は、常法により湿式、乾式、乾湿式のいずれ
かの方法でノズルより吐出され固化する。湿式紡糸方法
及び乾湿式紡糸方法では、凝固浴にて固化させ繊維化さ
せるが、その際の凝固剤としては、メタノール、エタノ
ールなどのアルコール類やアセトン、メチルエチルケト
ン、メチルブチルケトンなどのケトン類、さらには、ア
ルカリ水溶液、アルカリ金属塩水溶液などのいずれか又
はこれら2種以上の混合液でも良い。なお凝固の際に溶
剤抽出をゆっくりさせて均一ゲル構造を生成させ、網目
構造で高強度、高耐熱水性を得るために、該凝固剤に紡
糸原液の該溶剤を混合させるのが好ましい。さらに、凝
固温度を20℃以下にして急冷させるのも均一ゲル構造
を得るのに都合が良い。
【0013】また繊維間の膠着を少なくし、その後の乾
熱延伸を容易にする為に溶剤を含んだ状態で2倍以上の
湿延伸をするのが望ましい。次いで繊維からの溶剤抽出
を行うが、抽出剤としてはメタノール、エタノール、プ
ロパノールなどの第1級アルコール類やアセトン、メチ
ルエチルケトン、ブチルエチルケトンなどのケトン類や
ジメチルエーテル、メチルエチルエーテルなどのエーテ
ル類などが使用できる。続いて必要に応じて油剤などを
付与して該抽出剤を乾燥させるか、乾式の場合は、抽出
剤を使用せずに、紡糸時及び紡糸後で該溶剤を蒸発させ
て乾燥させる。
熱延伸を容易にする為に溶剤を含んだ状態で2倍以上の
湿延伸をするのが望ましい。次いで繊維からの溶剤抽出
を行うが、抽出剤としてはメタノール、エタノール、プ
ロパノールなどの第1級アルコール類やアセトン、メチ
ルエチルケトン、ブチルエチルケトンなどのケトン類や
ジメチルエーテル、メチルエチルエーテルなどのエーテ
ル類などが使用できる。続いて必要に応じて油剤などを
付与して該抽出剤を乾燥させるか、乾式の場合は、抽出
剤を使用せずに、紡糸時及び紡糸後で該溶剤を蒸発させ
て乾燥させる。
【0014】次いで乾熱延伸するが、本発明では延伸糸
の結晶融解熱(ΔH)が120ジュール/g以下、好ま
しくは110ジュール/g以下になるように比較的配向
結晶化を抑えた条件で延伸することが必要である。ΔH
が120ジュール/gを超えると結晶化が十分に進み、
その後の架橋処理で繊維内部まで架橋点を増大させるこ
とが難しく、ひいては本発明に言う無緊張下で115℃
以上の熱水に耐えることができない。ΔHが120ジュ
ール/g以下となる延伸条件としては、従来一般に行わ
れているPVA系繊維の延伸温度より低く、あるいは総
延伸倍率を従来一般に採用されている破断延伸倍率に対
する割合よりも低くなるようにし、また比較的短時間で
延伸を完了させることが好ましい。しかしながら、延伸
温度があまり低すぎるとPVA分子鎖の引伸ばし(配
向)が不十分で低強度となる。また総延伸倍率が高い
と、PVA分子鎖の配向が十分なされ高強度が得られる
が、配向増大に伴って結晶化も増大し、前述の如く内部
架橋を多くするのが困難になる。なお80ジュール/g
未満の場合には、あまりにも結晶化が行われていないこ
とによる新たな問題点が生じることとなる。
の結晶融解熱(ΔH)が120ジュール/g以下、好ま
しくは110ジュール/g以下になるように比較的配向
結晶化を抑えた条件で延伸することが必要である。ΔH
が120ジュール/gを超えると結晶化が十分に進み、
その後の架橋処理で繊維内部まで架橋点を増大させるこ
とが難しく、ひいては本発明に言う無緊張下で115℃
以上の熱水に耐えることができない。ΔHが120ジュ
ール/g以下となる延伸条件としては、従来一般に行わ
れているPVA系繊維の延伸温度より低く、あるいは総
延伸倍率を従来一般に採用されている破断延伸倍率に対
する割合よりも低くなるようにし、また比較的短時間で
延伸を完了させることが好ましい。しかしながら、延伸
温度があまり低すぎるとPVA分子鎖の引伸ばし(配
向)が不十分で低強度となる。また総延伸倍率が高い
と、PVA分子鎖の配向が十分なされ高強度が得られる
が、配向増大に伴って結晶化も増大し、前述の如く内部
架橋を多くするのが困難になる。なお80ジュール/g
未満の場合には、あまりにも結晶化が行われていないこ
とによる新たな問題点が生じることとなる。
【0015】なお、本発明で言う総延伸倍率とは、湿延
伸倍率と乾熱延伸倍率の積で表される値である。従来、
一般にPVA系繊維は高強度が要求される分野に用いら
れることが多いことから、PVA系繊維を製造する際の
常套手段として、繊維を極力高い倍率でかつ延伸倍率を
高めるために極力高い温度で延伸する方法、すなわち結
晶化が十分に起こる方法が用いられている。本発明は、
延伸倍率を従来技術と比べて低くし又延伸温度を比較的
低く設定した結果、延伸後の架橋反応が十分に行えるこ
とを見いだしたものである。
伸倍率と乾熱延伸倍率の積で表される値である。従来、
一般にPVA系繊維は高強度が要求される分野に用いら
れることが多いことから、PVA系繊維を製造する際の
常套手段として、繊維を極力高い倍率でかつ延伸倍率を
高めるために極力高い温度で延伸する方法、すなわち結
晶化が十分に起こる方法が用いられている。本発明は、
延伸倍率を従来技術と比べて低くし又延伸温度を比較的
低く設定した結果、延伸後の架橋反応が十分に行えるこ
とを見いだしたものである。
【0016】以上のように本発明の特徴の1つは、架橋
処理する時点の繊維として、ある程度の強度を維持しか
つΔHが120ジュール/g以下の比較的配向結晶化を
抑えたPVA系繊維を用いることにある。第2の特徴
は、該繊維を架橋処理する際に、架橋剤として、ジアル
デヒド化合物を用いることにある。特に炭素数7以上の
脂肪族ジアルデヒドはPVA分子鎖間の水酸基と反応し
て、耐熱水性を高めるのに特に有効な分子間架橋を形成
し易く、また強度低下も少ないという利点を有する。
処理する時点の繊維として、ある程度の強度を維持しか
つΔHが120ジュール/g以下の比較的配向結晶化を
抑えたPVA系繊維を用いることにある。第2の特徴
は、該繊維を架橋処理する際に、架橋剤として、ジアル
デヒド化合物を用いることにある。特に炭素数7以上の
脂肪族ジアルデヒドはPVA分子鎖間の水酸基と反応し
て、耐熱水性を高めるのに特に有効な分子間架橋を形成
し易く、また強度低下も少ないという利点を有する。
【0017】本発明に言うジアルデヒド化合物の代表例
としては、例えばグリオキザール、スクシンアルデヒ
ド、マロンアルデヒド、グルタルアルデヒド、ヘプタン
ジアール、オクタンジアール、ノナンジアール、デカン
ジアール、ドデカンジアール、2,4−ジメチルヘプタ
ンジアール、4−メチルヘキサンジアールなどの脂肪族
ジアルデヒドやテレフタルアルデヒド、フェニルマロン
ジアルデヒドなどの芳香族ジアルデヒド、さらにはそれ
らとメタノール、エタノール、プロパノール、エチレン
グリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類
が反応したアセタール化合物が挙げられる。これらジア
ルデヒド化合物の中で、前記したように、炭素数7以上
の脂肪族ジアルデヒド或いはそのアセタール化物が好ま
しく、なかでも炭素数9のノナンジアールのアセタール
化物が繊維の強度低下を抑え、耐熱水性に有効な分子間
架橋を生成させる点において特に優れている。
としては、例えばグリオキザール、スクシンアルデヒ
ド、マロンアルデヒド、グルタルアルデヒド、ヘプタン
ジアール、オクタンジアール、ノナンジアール、デカン
ジアール、ドデカンジアール、2,4−ジメチルヘプタ
ンジアール、4−メチルヘキサンジアールなどの脂肪族
ジアルデヒドやテレフタルアルデヒド、フェニルマロン
ジアルデヒドなどの芳香族ジアルデヒド、さらにはそれ
らとメタノール、エタノール、プロパノール、エチレン
グリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類
が反応したアセタール化合物が挙げられる。これらジア
ルデヒド化合物の中で、前記したように、炭素数7以上
の脂肪族ジアルデヒド或いはそのアセタール化物が好ま
しく、なかでも炭素数9のノナンジアールのアセタール
化物が繊維の強度低下を抑え、耐熱水性に有効な分子間
架橋を生成させる点において特に優れている。
【0018】なお、該ジアルデヒド化合物を2種以上混
合したり、ホルマリンと混合することも可能であるが、
好ましくは炭素数7以上の脂肪族ジアルデヒドを70重
量%以上含む場合である。一方、該化合物をPVAの水
酸基と反応させるためには酸が必要であり、例えば硫
酸、リン酸、硝酸、クロム酸などの無機酸やカルボン
酸、スルホン酸などの有機酸が使用される。好ましくは
硫酸である。架橋させるために用いる処理液としては、
該化合物と酸を水に分散または溶解して得られる液を用
いるが、必要に応じて、分散状態を安定させるために分
散剤を使用してもよい。処理液中での該ジアルデヒド化
合物の濃度は0.01〜0.5モル/l、酸の濃度は
0.01〜0.2モル/lが架橋度と強度のバランスの
点で好ましい。
合したり、ホルマリンと混合することも可能であるが、
好ましくは炭素数7以上の脂肪族ジアルデヒドを70重
量%以上含む場合である。一方、該化合物をPVAの水
酸基と反応させるためには酸が必要であり、例えば硫
酸、リン酸、硝酸、クロム酸などの無機酸やカルボン
酸、スルホン酸などの有機酸が使用される。好ましくは
硫酸である。架橋させるために用いる処理液としては、
該化合物と酸を水に分散または溶解して得られる液を用
いるが、必要に応じて、分散状態を安定させるために分
散剤を使用してもよい。処理液中での該ジアルデヒド化
合物の濃度は0.01〜0.5モル/l、酸の濃度は
0.01〜0.2モル/lが架橋度と強度のバランスの
点で好ましい。
【0019】本発明の第3の特徴は、架橋処理の温度を
PVA系繊維の収縮や溶解が生じないように架橋の進行
に伴って処理温度を徐々に高めて行き、最終的には85
℃以上、好ましくは90〜110℃で、繊維内部まで架
橋させる点にある。処理温度が85℃未満では、内部架
橋が少なく本発明に言う耐熱水性を得ることは難しい。
処理温度と時間は重合度、配向結晶化度、架橋剤と酸の
濃度により異なるが、例えば60℃×30分→80℃×
30分→100℃×30分と言うように多段階的に温度
を高める方法が好ましい。つまり最初の浴を最終浴より
20〜60℃低い温度とし、最終浴を上記90〜110
℃とした多段の浴を用い、各浴で10〜60分間処理し
て繊維を多段浴を通過させる方法が好ましい。なお内部
架橋と架橋量を知る目安として、架橋繊維を6mmにカ
ットし、150℃×2hr人工セメント液で処理したあ
との繊維の溶出量を調べる。
PVA系繊維の収縮や溶解が生じないように架橋の進行
に伴って処理温度を徐々に高めて行き、最終的には85
℃以上、好ましくは90〜110℃で、繊維内部まで架
橋させる点にある。処理温度が85℃未満では、内部架
橋が少なく本発明に言う耐熱水性を得ることは難しい。
処理温度と時間は重合度、配向結晶化度、架橋剤と酸の
濃度により異なるが、例えば60℃×30分→80℃×
30分→100℃×30分と言うように多段階的に温度
を高める方法が好ましい。つまり最初の浴を最終浴より
20〜60℃低い温度とし、最終浴を上記90〜110
℃とした多段の浴を用い、各浴で10〜60分間処理し
て繊維を多段浴を通過させる方法が好ましい。なお内部
架橋と架橋量を知る目安として、架橋繊維を6mmにカ
ットし、150℃×2hr人工セメント液で処理したあ
との繊維の溶出量を調べる。
【0020】以上により得られた架橋PVA系繊維は、
示差熱分析より求められるΔHが95ジュール/g以下
であり、無緊張下での熱水安定温度が115℃以上、好
ましくは120℃以上である。ΔHが95ジュール/g
を越える場合には内部まで架橋が行われていない場合が
ある。好ましくは90ジュール/g以下で50ジュール
/g以上である。また熱水安定温度が115℃未満の場
合には、耐熱水性が要求される用途分野に用いることが
できないこととなる。これらの条件を満足することによ
り従来使用できなかった衣料分野、特にポリエステル繊
維と混合して、120℃での高圧染色を可能にし、商品
や耐湿熱性を要求される不織布、紙さらには一般産業資
材などに効果を発揮する。
示差熱分析より求められるΔHが95ジュール/g以下
であり、無緊張下での熱水安定温度が115℃以上、好
ましくは120℃以上である。ΔHが95ジュール/g
を越える場合には内部まで架橋が行われていない場合が
ある。好ましくは90ジュール/g以下で50ジュール
/g以上である。また熱水安定温度が115℃未満の場
合には、耐熱水性が要求される用途分野に用いることが
できないこととなる。これらの条件を満足することによ
り従来使用できなかった衣料分野、特にポリエステル繊
維と混合して、120℃での高圧染色を可能にし、商品
や耐湿熱性を要求される不織布、紙さらには一般産業資
材などに効果を発揮する。
【0021】
【実施例】以下実施例により本発明を具体的に説明する
が、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではな
い。なお本発明における各種の物性値は以下の方法で測
定されたものである。 1)PVAの粘度平均重合度(PA) PVAポリマーを1〜10g/lの濃度になるように熱
水で溶解して得られた溶液の比粘度ηspをJIS K
−6726に基づき、30℃で測定し、下記式より極
限粘度〔η〕を求め、さらに次式より粘度平均重合度
PAを算出する。 〔η〕=lim(C→0)ηsp/c …… PA=(〔η〕×104/8.29)1.613 ……
が、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではな
い。なお本発明における各種の物性値は以下の方法で測
定されたものである。 1)PVAの粘度平均重合度(PA) PVAポリマーを1〜10g/lの濃度になるように熱
水で溶解して得られた溶液の比粘度ηspをJIS K
−6726に基づき、30℃で測定し、下記式より極
限粘度〔η〕を求め、さらに次式より粘度平均重合度
PAを算出する。 〔η〕=lim(C→0)ηsp/c …… PA=(〔η〕×104/8.29)1.613 ……
【0022】2)単繊維の引張強伸度 JIS L=1015に準じ予め調湿された単繊維を試
長10cmになるように台紙に貼り、22℃×65%R
Hに12時間以上放置する。次いでインストロン112
2で2kg用チャックを用い、初荷重0.05g/d、
引張速度50%/minにて破断強伸度を求め、n≧1
0の平均値を採用する。デニールは0.05g/d荷重
下で30cm長にカットし、重量法によりn≧10の平
均値で示す。なおデニール測定後の単繊維を用いて強伸
度を測定し、1本ずつデニールと対応させる。
長10cmになるように台紙に貼り、22℃×65%R
Hに12時間以上放置する。次いでインストロン112
2で2kg用チャックを用い、初荷重0.05g/d、
引張速度50%/minにて破断強伸度を求め、n≧1
0の平均値を採用する。デニールは0.05g/d荷重
下で30cm長にカットし、重量法によりn≧10の平
均値で示す。なおデニール測定後の単繊維を用いて強伸
度を測定し、1本ずつデニールと対応させる。
【0023】3)示差熱分析による結晶融解熱(ΔH) 試料約10mgを精秤して開放型容器に入れパーキンエ
ルマー社製DSC−2C型を用い、窒素ガス雰囲気下で
昇温速度10℃/分で室温から280℃まで測定を行
い、結晶化融解吸熱ピークの面積よりΔH(ジュール/
試料1g)を求めた。 4)人工セメント液での溶出量(CS) 試料約1gを6mmにカットし、人工セメント液((K
OH3.5g/l+NaOH0.9g/l+Ca(O
H)20.4g/l、pH≒13)に加圧容器内で15
0℃×2hr浸漬したあと、水洗、乾燥して、試料重量
の低下率より溶出量CS(%)を求めた。これを繊維内
部まで架橋が進んでいるか否かの目安にした。
ルマー社製DSC−2C型を用い、窒素ガス雰囲気下で
昇温速度10℃/分で室温から280℃まで測定を行
い、結晶化融解吸熱ピークの面積よりΔH(ジュール/
試料1g)を求めた。 4)人工セメント液での溶出量(CS) 試料約1gを6mmにカットし、人工セメント液((K
OH3.5g/l+NaOH0.9g/l+Ca(O
H)20.4g/l、pH≒13)に加圧容器内で15
0℃×2hr浸漬したあと、水洗、乾燥して、試料重量
の低下率より溶出量CS(%)を求めた。これを繊維内
部まで架橋が進んでいるか否かの目安にした。
【0024】5)熱水安定温度 無緊張下で架橋繊維約1gと水約200ccを、ミニカ
ラー染色機(テクサム技研製)に入れ昇温30分で11
0℃〜130℃まで5℃間隔で各40分間処理したあ
と、繊維状態を肉眼判定し、収縮や膠着のない最高温度
を熱水安定温度とした。また同時に115℃×40分処
理による判定(○収縮、膠着なし、△収縮、膠着少しあ
り、×収縮、膠着大)で耐熱水性を評価した。
ラー染色機(テクサム技研製)に入れ昇温30分で11
0℃〜130℃まで5℃間隔で各40分間処理したあ
と、繊維状態を肉眼判定し、収縮や膠着のない最高温度
を熱水安定温度とした。また同時に115℃×40分処
理による判定(○収縮、膠着なし、△収縮、膠着少しあ
り、×収縮、膠着大)で耐熱水性を評価した。
【0025】実施例1,2及び比較例1,2 粘度平均重合度が1700(実施例1)と3300(実
施例2)でケン化度がいずれも99.5モル%のPVA
をそれぞれ濃度18重量%と12重量%になるようにジ
メチルスルホキシド(DMSO)に110℃で溶解し、
得られた各溶液を60ホールのノズルより吐出させ、メ
タノール/DMSO=7/3重量比、8℃の凝固浴で湿
式紡糸した。さらに40℃メタノール浴で3.5倍湿延
伸したあと、メタノールで該溶剤をほとんど全部除去
し、120℃にて乾燥した。
施例2)でケン化度がいずれも99.5モル%のPVA
をそれぞれ濃度18重量%と12重量%になるようにジ
メチルスルホキシド(DMSO)に110℃で溶解し、
得られた各溶液を60ホールのノズルより吐出させ、メ
タノール/DMSO=7/3重量比、8℃の凝固浴で湿
式紡糸した。さらに40℃メタノール浴で3.5倍湿延
伸したあと、メタノールで該溶剤をほとんど全部除去
し、120℃にて乾燥した。
【0026】得られた紡糸原糸を実施例1では170
℃、200℃の2セクションからなる輻射炉で総延伸倍
率8倍に、実施例2では170℃、220℃で10倍に
なるように延伸し、約200d/60fのマルチフィラ
メントを得た。次いで該延伸糸に80T/mの撚りをか
け、綛状にして、次の条件で架橋処理を行った。上記方
法で得られた各延伸糸約10gと、1,1,9,9−テ
トラメトキシノナン(TMN,MW=248)0.04
モル/lと、硫酸0.03モル/l、ドデシルベンゼン
スルホン酸ソーダ1g/lとを含有する水分散液を浴比
1:50になるようにミニカラー染色機に入れ、60℃
×30分→80℃×30分→100℃×30分→110
℃×30分と段階的に昇温して架橋処理を施した。その
後、水洗市、そして60℃で乾燥して得られた繊維の物
性を測定した。その結果を表1に示した。比較例1とし
て、実施例1で延伸を170℃、230℃で総延伸倍率
16倍にして配向結晶化を十分起こさせた繊維を用い
た。比較例2は、実施例2で架橋処理の温度を60℃×
30分→80℃×60分にして、85℃以上の高温処理
をしない場合であり、これら比較例で得た繊維物性も表
1に併記した。
℃、200℃の2セクションからなる輻射炉で総延伸倍
率8倍に、実施例2では170℃、220℃で10倍に
なるように延伸し、約200d/60fのマルチフィラ
メントを得た。次いで該延伸糸に80T/mの撚りをか
け、綛状にして、次の条件で架橋処理を行った。上記方
法で得られた各延伸糸約10gと、1,1,9,9−テ
トラメトキシノナン(TMN,MW=248)0.04
モル/lと、硫酸0.03モル/l、ドデシルベンゼン
スルホン酸ソーダ1g/lとを含有する水分散液を浴比
1:50になるようにミニカラー染色機に入れ、60℃
×30分→80℃×30分→100℃×30分→110
℃×30分と段階的に昇温して架橋処理を施した。その
後、水洗市、そして60℃で乾燥して得られた繊維の物
性を測定した。その結果を表1に示した。比較例1とし
て、実施例1で延伸を170℃、230℃で総延伸倍率
16倍にして配向結晶化を十分起こさせた繊維を用い
た。比較例2は、実施例2で架橋処理の温度を60℃×
30分→80℃×60分にして、85℃以上の高温処理
をしない場合であり、これら比較例で得た繊維物性も表
1に併記した。
【0027】
【表1】
【0028】実施例1では、延伸温度と延伸倍率を下げ
てΔHを101ジュール/gと配向結晶化を抑えてか
ら、高温架橋したため、ΔHが79ジュール/gと低
く、単繊維強度も6.5g/dと低くなったが、人工セ
メント液での溶出量(CS)は7.9%と今までになく
低く、繊維内部まで分子間架橋が生成していることを示
唆した。無緊張下での熱水安定温度は120℃で衣料用
繊維として、特にポリエステル繊維との混紡品や混繊糸
や交撚糸、交編織物等に使用できることが判った。実施
例2は、実施例1より高重合度PVAを用いており、延
伸温度、倍率をやや高くしたため、ΔHは84ジュール
/gと高目であるが、人工セメント液での溶出量(C
S)は6%と低く、熱水安定温度は125℃と従来にみ
られない耐熱水性のPVA繊維であった。
てΔHを101ジュール/gと配向結晶化を抑えてか
ら、高温架橋したため、ΔHが79ジュール/gと低
く、単繊維強度も6.5g/dと低くなったが、人工セ
メント液での溶出量(CS)は7.9%と今までになく
低く、繊維内部まで分子間架橋が生成していることを示
唆した。無緊張下での熱水安定温度は120℃で衣料用
繊維として、特にポリエステル繊維との混紡品や混繊糸
や交撚糸、交編織物等に使用できることが判った。実施
例2は、実施例1より高重合度PVAを用いており、延
伸温度、倍率をやや高くしたため、ΔHは84ジュール
/gと高目であるが、人工セメント液での溶出量(C
S)は6%と低く、熱水安定温度は125℃と従来にみ
られない耐熱水性のPVA繊維であった。
【0029】比較例1は、実施例1で高温高倍率に延伸
したPVA繊維を用いた場合であるが、ΔHと強度は高
いが、内部架橋が少ないためか人工セメント液での溶出
量(CS)が35.9%と多く、熱水安定温度も110
℃と低く、115℃では、収縮と膠着を生じた。比較例
2は、実施例2で架橋処理を80℃と低温にした場合で
あるが、繊維内部までの架橋が進まないため、人工セメ
ント液での溶出量(CS)が28.8%と多く、115
℃の熱水には耐えられなかった。
したPVA繊維を用いた場合であるが、ΔHと強度は高
いが、内部架橋が少ないためか人工セメント液での溶出
量(CS)が35.9%と多く、熱水安定温度も110
℃と低く、115℃では、収縮と膠着を生じた。比較例
2は、実施例2で架橋処理を80℃と低温にした場合で
あるが、繊維内部までの架橋が進まないため、人工セメ
ント液での溶出量(CS)が28.8%と多く、115
℃の熱水には耐えられなかった。
【0030】実施例3及び比較例3 粘度平均重合度が4000でケン化度が99.2モル%
のPVAを濃度12重量%になるように170℃でエチ
レングリコール(EG)に溶解した。得られた溶液を8
0ホールのノズルより吐出させ、乾湿式紡糸法によりメ
タノール/EG=7/3重量比、0℃の凝固浴で急冷ゲ
ル化させた。さらに40℃メタノール浴で4倍湿延伸し
たあと、メタノールで該溶剤をほとんど全部除去し、1
30℃にて乾燥した。得られた紡糸原糸を170℃、2
20℃の2セクションからなる熱風炉で総延伸倍率が1
2倍になるように延伸し、ΔHが110ジュール/gの
約200d/80fのマルチフィラメントを得た。次い
で該延伸糸を穴開きボビンに巻いて、液循環方式のオー
バーマイヤー染色機にセットした。処理液はビスエチレ
ンジオキシノナン(BEN,MW=244)0.06モ
ル/l+硫酸0.04モル/l+ドデシルベンゼンスル
ホン酸ソーダ1g/lの水分散液で浴比1:30にて、
70℃×30分→100℃×30分の架橋処理を施し
た。架橋糸の単繊維強度は11.5g/d、ΔHは90
J/gを示し、CSが10.5%と低く、繊維内部まで
架橋されている事を暗示した。熱水安定温度は120℃
を示し、衣料繊維としては高強力な付加価値のあるもの
であった。
のPVAを濃度12重量%になるように170℃でエチ
レングリコール(EG)に溶解した。得られた溶液を8
0ホールのノズルより吐出させ、乾湿式紡糸法によりメ
タノール/EG=7/3重量比、0℃の凝固浴で急冷ゲ
ル化させた。さらに40℃メタノール浴で4倍湿延伸し
たあと、メタノールで該溶剤をほとんど全部除去し、1
30℃にて乾燥した。得られた紡糸原糸を170℃、2
20℃の2セクションからなる熱風炉で総延伸倍率が1
2倍になるように延伸し、ΔHが110ジュール/gの
約200d/80fのマルチフィラメントを得た。次い
で該延伸糸を穴開きボビンに巻いて、液循環方式のオー
バーマイヤー染色機にセットした。処理液はビスエチレ
ンジオキシノナン(BEN,MW=244)0.06モ
ル/l+硫酸0.04モル/l+ドデシルベンゼンスル
ホン酸ソーダ1g/lの水分散液で浴比1:30にて、
70℃×30分→100℃×30分の架橋処理を施し
た。架橋糸の単繊維強度は11.5g/d、ΔHは90
J/gを示し、CSが10.5%と低く、繊維内部まで
架橋されている事を暗示した。熱水安定温度は120℃
を示し、衣料繊維としては高強力な付加価値のあるもの
であった。
【0031】比較例3として実施例3で紡糸時最後のメ
タノール抽出浴にBENを5重量%添加して繊維に含有
させて乾燥したあと170℃、240℃で16.5倍延
伸し(延伸繊維のΔHは135ジュール/g)、オーバ
ーマイヤー染色機を用い硫酸0.1モル/lの水溶液で
80℃×60分の架橋処理を施した。得られた紡糸原糸
のBEN含有量はNMRのピーク面積比より5.6重量
%であった。架橋糸の強度は14g/d、ΔHは102
J/gと高く、セメント補強材としては170℃のオー
トクレーブ養生に耐えるもであった。しかし、CSが1
6.9%とやや高く、115℃×40分の熱水処理では
収縮と膠着が生じた。なお、セメント補強材としてPV
A系繊維が用いられる場合は50℃×1日養生してセメ
ントを固めるため、繊維が固定され緊張下の状態にあ
る。PVA繊維は緊張下では高温湿熱に耐えるが、染色
の如く無緊張下では耐湿熱性は激減する。
タノール抽出浴にBENを5重量%添加して繊維に含有
させて乾燥したあと170℃、240℃で16.5倍延
伸し(延伸繊維のΔHは135ジュール/g)、オーバ
ーマイヤー染色機を用い硫酸0.1モル/lの水溶液で
80℃×60分の架橋処理を施した。得られた紡糸原糸
のBEN含有量はNMRのピーク面積比より5.6重量
%であった。架橋糸の強度は14g/d、ΔHは102
J/gと高く、セメント補強材としては170℃のオー
トクレーブ養生に耐えるもであった。しかし、CSが1
6.9%とやや高く、115℃×40分の熱水処理では
収縮と膠着が生じた。なお、セメント補強材としてPV
A系繊維が用いられる場合は50℃×1日養生してセメ
ントを固めるため、繊維が固定され緊張下の状態にあ
る。PVA繊維は緊張下では高温湿熱に耐えるが、染色
の如く無緊張下では耐湿熱性は激減する。
【0032】実施例4 粘度平均重合度が7000でケン化度が99.5モル%
のPVAを濃度18重量%になるように水の中に入れ、
95℃で混練造粒したあと2軸混練機を用いて100ホ
ールのノズルより吐出させ、水を蒸発させながら乾式で
紡糸した。得られた紡糸原糸を160−200−235
℃の3セクションからなる熱風炉の160℃側から通し
て6倍延伸して、ΔHが98ジュール/gの約500d
/100fのマルチフィラメントを得た。次いで、該延
伸糸をグルタルアルデヒド(GA,MW=100)0.
2モル/l+硫酸0.05モル/lの水溶液が入った2
つの槽で65℃×15分→95℃×15分連続的に架橋
処理をしたあと水洗、乾燥して巻き取った。得られた架
橋繊維の強度は10.2g/d、ΔHは73J/gを示
し、CSは11.4%と内部架橋が伺えた。熱水安定温
度は120℃で耐湿熱性が要求される衣料や一般産業資
材用に十分使用できるものであった。
のPVAを濃度18重量%になるように水の中に入れ、
95℃で混練造粒したあと2軸混練機を用いて100ホ
ールのノズルより吐出させ、水を蒸発させながら乾式で
紡糸した。得られた紡糸原糸を160−200−235
℃の3セクションからなる熱風炉の160℃側から通し
て6倍延伸して、ΔHが98ジュール/gの約500d
/100fのマルチフィラメントを得た。次いで、該延
伸糸をグルタルアルデヒド(GA,MW=100)0.
2モル/l+硫酸0.05モル/lの水溶液が入った2
つの槽で65℃×15分→95℃×15分連続的に架橋
処理をしたあと水洗、乾燥して巻き取った。得られた架
橋繊維の強度は10.2g/d、ΔHは73J/gを示
し、CSは11.4%と内部架橋が伺えた。熱水安定温
度は120℃で耐湿熱性が要求される衣料や一般産業資
材用に十分使用できるものであった。
【0033】
【発明の効果】本発明はDSCより求めるΔHが小さい
(結晶化の少ない)PVA系繊維を用い、ジアルデヒド
化合物と酸の混合液中で85℃以上で架橋処理すること
により、従来にない、無緊張下で耐熱水性を有するPV
A系繊維を得るものである。本発明の繊維は特に染色が
必要な衣料用繊維や耐湿熱性と耐久性が要求される不織
布や紙、さらにはロープ、テント、土木シートなどの一
般産業資材などにも幅広く利用できる。
(結晶化の少ない)PVA系繊維を用い、ジアルデヒド
化合物と酸の混合液中で85℃以上で架橋処理すること
により、従来にない、無緊張下で耐熱水性を有するPV
A系繊維を得るものである。本発明の繊維は特に染色が
必要な衣料用繊維や耐湿熱性と耐久性が要求される不織
布や紙、さらにはロープ、テント、土木シートなどの一
般産業資材などにも幅広く利用できる。
Claims (2)
- 【請求項1】 示差熱分析より求めた結晶融解熱が95
ジュール/g以下であり、かつ無緊張下での熱水安定温
度が115℃以上であるポリビニルアルコール系繊維。 - 【請求項2】 紡糸により得られるポリビニルアルコー
ル系紡糸原糸を示差熱分析より求めた結晶融解熱が12
0ジュール/g以下になるように延伸し、次いでジアル
デヒド化合物と酸が存在する系で85℃以上で処理し、
ポリビニルアルコール系繊維を架橋させることを特徴と
するポリビニルアルコール系繊維の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP23563496A JPH1077572A (ja) | 1996-09-05 | 1996-09-05 | 耐熱水性ポリビニルアルコール系繊維及びその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP23563496A JPH1077572A (ja) | 1996-09-05 | 1996-09-05 | 耐熱水性ポリビニルアルコール系繊維及びその製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH1077572A true JPH1077572A (ja) | 1998-03-24 |
Family
ID=16988934
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP23563496A Pending JPH1077572A (ja) | 1996-09-05 | 1996-09-05 | 耐熱水性ポリビニルアルコール系繊維及びその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH1077572A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP1544330A1 (en) * | 2003-11-27 | 2005-06-22 | Hyosung Corporation | Crosslinked polyvinyl alcohol fiber and method for producing the same |
-
1996
- 1996-09-05 JP JP23563496A patent/JPH1077572A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP1544330A1 (en) * | 2003-11-27 | 2005-06-22 | Hyosung Corporation | Crosslinked polyvinyl alcohol fiber and method for producing the same |
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Effective date: 20040928 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20050208 |