JPH11293365A - 巻線用極細導体およびその製造方法 - Google Patents

巻線用極細導体およびその製造方法

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JPH11293365A
JPH11293365A JP9651298A JP9651298A JPH11293365A JP H11293365 A JPH11293365 A JP H11293365A JP 9651298 A JP9651298 A JP 9651298A JP 9651298 A JP9651298 A JP 9651298A JP H11293365 A JPH11293365 A JP H11293365A
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diameter
conductor
ingot
ultrafine
less
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JP9651298A
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English (en)
Inventor
Akira Yamazaki
明 山崎
Hidemichi Fujiwara
英道 藤原
Masayuki Ando
雅之 安藤
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Furukawa Electric Co Ltd
Original Assignee
Furukawa Electric Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 導電性、引張強度、伸線性、巻線性に優れる
巻線用極細導体を提供する。 【解決手段】 Agを1〜4. 5重量%(以下、%と略
記する)含み、残部がCuと不可避不純物からなる極細
導体であり、前記極細導体内に含まれる異物の径がdμ
m以下の巻線用極細導体。但し、d=0.63D+0.
13(式中、Dは極細導体の径μm) 【効果】 銀を適量含む銅合金からなり、また導体に含
まれる異物の径を所定値以下(極細導体との断面積比で
40%以下)に規定するので伸線性および巻線性に優れ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、時計用のステッピ
ングモーター、オーディオ・ビデオの磁気ヘッドまたは
ボイスコイル、携帯電話やポケベル用の振動モーター、
各種超小型リレー、パソコンやテレビのバックライトト
ランスまたはフライバックトランス、自動車に搭載する
電子機器のコイルなどに使用され、導電性、機械的性
質、伸線性、巻線性などに優れる巻線用極細導体および
その製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】巻線用極細導体はエナメル被覆後マグネ
ットコイルなどに整形される。その材料にはタフピッチ
銅(TPC)や無酸素銅(OFC)などが用いられてい
るが、これら材料は、低強度のため伸線加工や巻線加工
で断線し易い。断線が生じると、連続伸線機を停止し、
断線部分を除去し、線材をダイスに通し、ダイスを伸線
機にセットするという手間を要し生産性が害される。ま
た断線が生じると単位長さ不足による不良品が増加す
る。また伸線加工は、昼夜を通して行われ、完全無人体
制の夜間に断線すると伸線機は翌朝まで停止して生産性
は大幅に低下する。そのため24時間連続伸線可能な伸
線性に優れる高品質の導体が要求されている。近年、電
子機器の小型化・軽量化に伴って20μm以下の極細導
体が要求されるようになったが、因みに、20μm径の
導体を400m/分の速度で24時間連続伸線するとき
の伸線量は1610gであり、安全係数を10%にとる
と1800g/Brの伸線性が必要になる。さらに、径が2
0μm程度の極細導体は数10グラムの張力で破断する
ため、自動巻線機では後方張力の微妙な変動によって断
線する。手動巻線機では操作に熟練を要しまた生産性に
劣るという問題がある。
【0003】このようなことから、巻線用極細導体とし
て、強度と導電性に優れるCu−Ag系合金導体がクロ
ーズアップされ、これまでに下記〜の提案がなされ
た。しかし、いずれも高価なAgを多量に含むか、高温
焼鈍を複数回必要とするためコストおよび生産性の点で
問題がある。即ち、Agを5〜15%含む銅合金の線
材表面から銅を選択的に酸洗除去して表層のAg濃度を
高め、富化Agにより表層の傷の補修と異物の被覆を行
い、さらに延性に富むAgの潤滑作用で断線を防止した
巻線用極細導体(特開平7-96321 号公報)。Agを1
5〜30%含む銅合金を連続鋳造法で小径の棒状鋳塊と
し、熱間鍛造と面削の工程を省略した高磁界発生用マグ
ネット用導体(特開平6-93398 号公報、特開平6-93399
号公報、特開平6-103809号公報)。Agを15〜30
%含む銅合金鋳塊を加工率95%以上で加工し、その後
再結晶温度以上の温度で焼鈍し冷間加工して伸びと導電
性を回復させた径が0. 1mm以上の導体(特開平6-93
398 号公報)。Agを15〜30%含む銅合金鋳塊を
再結晶温度以上の温度での焼鈍を入れて冷間加工して導
電率を回復させた0. 9mm径程度の導体(特開平6-93
399 号公報)。Agを15〜30%含む銅合金鋳塊を
95%以上の加工率で加工し、その後再結晶温度以上の
温度で焼鈍して冷間加工した0. 1mm径の導体(特開
平6-103809号公報)。Agを2〜2. 8%含む銅合金
の金型鋳塊を溶体化処理し、その後伸線加工と時効処理
を複数回繰返して強度を向上させてケーブルの補強鉄編
組を省略した0. 65mm径の海底ケーブル用導体(特
開昭48-44798号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明者等
は、Agを含む銅合金の巻線への適用について鋭意研究
を行い、伸線性と巻線性に適したAgの添加量を明らか
にし、さらに伸線性と巻線性に優れる鋳造組織、異物サ
イズの許容限度などについて研究を進めて本発明を完成
させるに至った。本発明は、導電性、引張強度、伸線
性、巻線性などに優れる巻線用極細導体およびその製造
方法の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、
Agを1〜4. 5重量%(以下、%と略記する)含み、
残部がCuと不可避不純物からなる極細導体であり、前
記極細導体内に含まれる異物の径がdμm以下であるこ
とを特徴とする巻線用極細導体である。但し、d=0.
63D+0.13(式中、Dは極細導体の径μm)
【0006】請求項2記載の発明は、Agを1〜4. 5
%含み、残部がCuと不可避不純物からなる銅合金鋳塊
に冷間加工を施す極細導体の製造方法であって、前記鋳
塊は、鋳造組織のデンドライトアームスペースが15μ
m以下、Ag晶出物が15μm以下の径で均一に分散し
たものであり、前記冷間加工を99. 997%以上の加
工率で施すことを特徴とする請求項1記載の巻線用極細
導体の製造方法である。
【0007】請求項3記載の発明は、Agを1〜4. 5
%含み、残部がCuと不可避不純物からなる銅合金鋳塊
に冷間加工を施す極細導体の製造方法であって、前記鋳
塊は、鋳造組織のデンドライトアームスペースが15μ
m以下、Ag晶出物が15μm以下の径で均一に分散し
たものであり、前記冷間加工の途中に再結晶温度未満の
温度で焼鈍を施すことを特徴とする請求項1記載の巻線
用極細導体の製造方法である。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明は、Agを1〜4. 5%含
み、残部がCuと不可避不純物からなる極細導体内に含
まれる異物の径をdμm以下に規定して伸線性および巻
線性を向上させた極細導体である。但し、d=0.63
D+0.13(式中、Dは極細導体の径μm) 本発明において、合金元素のAgは短繊維状に分散し
て、導電性を余り低下させることなく、極細導体の強度
を高め、以て伸線性と巻線性を改善する。Agの含有量
を1〜4. 5%に規定する理由は、1%未満では前記伸
線性と巻線性が十分に改善されず、4. 5%を超えると
導電性が低下するうえ、材料コストが高くなるためであ
る。Agの含有量は1. 5〜4%が特に望ましい。
【0009】前記異物径の規定は次の実験に基づいてな
された。即ち、SCR式連続鋳造機により製造されたC
u−2%Ag合金の荒引線(8mm径)を素材として、
これを100〜20μm径の導体に伸線加工し、その際
断線した導体の破面に残存する異物の大きさを走査電子
顕微鏡(SEM)により測定した。そして、異物の径
は、100μm径の導体で63μm以上、20μm径の
導体で13μm以上であり、径Dの導体における異物の
許容径dは、図1に示すようにd=0.63D+0.13の (1)
式で表されることを明らかにし、この (1)式を基に、例
えば、20μm径の極細導体を無断線で伸線するには、
異物径は12μm以下にすれば良いことを見いだした。
別の実験により、大型鋳塊の押出材を素材とする場合も
同じ結果が得られた。また断線と異物径の関係などはタ
フピッチ銅(TPC)や無酸素銅(OFC)においても
同様であることが確認された。前記 (1)式の関係を極細
導体の断面積Tと異物の断面積tとの比t/Tと、伸線
性(断線に到るまでの伸線量)との関係で表すと図2に
示すようになり、極細導体に占める異物の断面積比(以
下、異物占積率と称す)は、断線時の極細導体径Dに関
係なく約40%であり、異物占積率が40%を超えると
断線が生じ易くなることが判る。
【0010】前記異物をX線マイクロアナライザー(E
PMA)により同定したところ、主にAl2 3 、Sn
2 、CuOなどの酸化物粒子、炭化物(SiC)粒
子、などの非金属介在物であった。前記異物は、主に、
銅合金溶湯の溶解から鋳造に至るまでの経路となる溶解
炉、保持炉、タンディッシュ、これらを繋ぐ樋などを構
成するアルミナ系またはシリカ系耐火材から混入する。
本発明において、異物とは、断線に影響する前記非金属
介在物を指す。なお、Fe、Cr、Niなどの金属介在
物が加工治具などから混入する場合があるが、これらは
径が数μm程度の小さいものが殆どで断線の原因にはな
り難いものである。本発明において、異物の形状は、偏
平状、楕円状、球状が殆どであり、これら異物の径は、
偏平状異物の場合は最大幅と最大長さの平均値、楕円状
異物の場合は短径と長径の平均値、球状の場合は最大径
とする。
【0011】大型設備で鋳造した鋳塊(素材)を加工し
た導体は100μm径あたりから異物断線が多発する
が、小型の横型連続鋳造設備を用い通常のメンテナンス
を行って鋳造した鋳塊(素材)は、30μm径まで無断
線で加工できる。しかし径が20μm前後の極細導体を
無断線で伸線するには、異物は12μm径以下、望まし
くは10μm径以下にする必要があり、そのためには、
通常のメンテナンスだけでなく、例えば、溶湯を長時間
鎮静して重い異物は炉底に沈降させ、軽い異物は湯面に
浮上させ、中間部分の異物の少ない溶湯を鋳造するなど
の特殊な溶湯処理が必要になる。このようにすれば17
μm径程度まで伸線加工が可能になる。請求項2、3記
載の発明は、熱間加工或いは高温焼鈍を行わないので、
酸化スケールが異物として混入する機会が少ない。
【0012】請求項2記載の発明は、鋳造組織のデンド
ライトアームスペース(DAS)が15μm以下、Ag
晶出物が15μm以下の径で均一に分散した鋳塊を用
い、加工率99.997%以上で冷間加工する巻線用極
細導体の製造方法である。前記鋳塊を、DASが15μ
m以下、Ag晶出物が15μm以下の径で均一に分散す
る鋳造組織に規定する理由は、鋳塊の冷間加工性が向上
し、また導体表面の凹凸欠陥が減少して絶縁被覆性が向
上するためである。冷間加工の加工率を99.997%
以上に規定する理由は、鋳塊中に分散するAg晶出物が
短繊維状に微細に分散されるなど鋳造組織が十分に破壊
されて極細導体のしなやかさが増しコイリング性が向上
するためである。
【0013】DASは溶湯凝固時の冷却速度に依存し、
冷却速度の大きい小型鋳塊ほど小さくなる。即ち、図3
に示すようにDASは縦型連続鋳造鋳塊 (200mm
φ) 、SCR鋳塊 (100×50mm) 、小型横型連続
鋳造機鋳塊A (10mmφ) の順に小さくなる。鋳塊の
大きさが同じ場合は、DASは鋳型の温度勾配に依存す
る。即ち、小型横型連続鋳造機の鋳塊の場合、鋳型の温
度勾配を50℃/cmに設定した鋳塊AのDASは18
μm以上と大きく、鋳型の温度勾配を100℃/cmに
設定した鋳塊BのDASは15μm以下に小さくなって
いる。つまり、DASが15μm以下、Ag晶出物が1
5μm以下の径で均一に分散した鋳造組織の鋳塊は、小
型の鋳型を用い鋳型の温度勾配を大きくして鋳造するこ
とにより得ることができる。
【0014】請求項3記載の発明は、請求項2記載の発
明における冷間加工の途中に再結晶温度未満の温度で焼
鈍を入れてトータルの加工率を向上させた巻線用極細導
体の製造方法である。以下に前記焼鈍による効果を図4
を参照して具体的に説明する。図4において、曲線a
は、Agを3%含む15mm径の銅合金棒状鋳塊の加工
硬化特性である。曲線aは、加工歪みεが12で最大強
度を示し、その後加工軟化するとともに延性が低下して
伸線加工ができなくなる。εが13(線径22μm、加工
率99.99978%)で加工限界となる。
【0015】曲線bは、曲線aの材料をεが8.71の
イ点で比較的低温で焼鈍したときの加工硬化特性であ
る。曲線bの最大強度は曲線aの最大強度と同程度で、
そのときのε(ε1 )は15(線径5μm、加工率99.9
99988%)に増加している。前記焼鈍は、内部を700℃
の不活性ガス雰囲気とした長さ2mの走間焼鈍炉内を2
00m/分の速度で通過させて行った。焼鈍後の引張強
度は985N/mm2 であり、この強度は曲線aのε
(ε2 )が6に相当する強度であり、歪み除去率は31
%=〔(ε1 −ε2 )/ε1 ×100〕である。前記強
度985N/mm2 を、図5の静的焼鈍軟化特性に当て
はめると、前記走間焼鈍は300℃×1時間の静的焼鈍
に相当し、再結晶温度未満である。なお、前記図5は、
曲線aの材料の加工歪みεが8.71のイ点(線径 193
μm、加工率99.98%、引張強度1070N/mm2)の静的焼鈍軟
化特性である。このように、冷間加工の途中に再結晶温
度未満の温度で焼鈍を入れることにより、高強度を維持
してトータル加工率を高めることができる。従って、よ
り極細の導体が得られ、または素材(鋳塊)径を大きく
できて生産性が向上する。焼鈍を入れる導体サイズ
(径)は、焼鈍後の目標径までの伸線加工で導体強度が
加工限界前の最高強度になるように選定するのが望まし
い。前記焼鈍は再結晶温度未満の低温で行うのでエネル
ギー的に有利である。前記焼鈍は複数回繰り返し行って
も良い。またインラインで行う方が、アウトラインで行
うより生産性に優れる。バッチ焼鈍でも同様の効果が得
られる。
【0016】曲線cは、曲線aの材料をε(ε1 )が
8.71のイ点で比較的高温(再結晶温度以上の温度)
で焼鈍したときの加工硬化特性である。曲線cの材料は
εが16.5(線径4μm、加工率99.999993%) で断線
しており、その破断強度は曲線a、bの材料よりかなり
低い。この曲線cの材料は強度が低いため自動巻線機で
断線し易くコイリング性が悪い。この曲線cの材料は、
種々の伸線機を用いて何回か伸線加工したが、いずれも
4μm前後で断線した。つまり4μmが伸線加工限界で
ある。伸線加工限界の導体は素材が何であれ使用を避け
るべきである。曲線cの材料の焼鈍は、内部を1000
℃の不活性ガス雰囲気とした長さ2mの走間焼鈍炉内を
150m/分の速度で通過させて行った。焼鈍後の引張
強度は420N/mm2 であり、この強度は曲線aのε
(ε2 )が0.1に相当する強度で、歪み除去率は99
%=〔(ε1 −ε2 )/ε1 ×100〕である。前記引
張強度420N/mm2 を図5に当てはめると、前記走
間焼鈍は500℃×1時間の静的焼鈍に相当する。ミク
ロ組織観察で再結晶が終了していることが確認された。
【0017】
【実施例】以下に本発明を実施例により詳細に説明す
る。 (実施例1)電気銅に本発明規定内でAgを種々の量配
合し、これを黒鉛るつぼで溶製し、金型にて10mm径
の鋳塊に鋳造し、この鋳塊を20μm径の極細導体に伸
線加工(加工率99.9996%)した。得られた各極細導体に
ついて、引張強度(TS)、導電率(EC)、伸線性、
巻線性、および伸線性と巻線性の関係を調べた。比較の
ため本発明規定外組成のCu−Ag合金および無酸素銅
についても同様にして極細導体を製造し同じ調査を行っ
た。結果を図6(イ)〜(ホ)に示す。図6(イ)に引
張強度とAg含有量との関係を示した。Agを1〜4.
5%含有する本発明例品は940〜1150N/mm2
の高強度であることが判る。Agが1%未満で引張強度
は急激に低下する。図6(ロ)に導電率とAg含有量と
の関係を示した。Agを1〜4.5%含む本発明例品は
88.5〜81.5%IACSの高い導電率を有するこ
とが判る。Agが4.5%を超えると導電率は規格値
(81.5%)未満に低下する。図6(ハ)に25μm
から20μmに伸線するときの伸線性(1断線あたりの
伸線量)とAg含有量との関係を示した。Agを1〜
4.5%含む本発明例品は1800〜2500g/Brの高
い伸線性を有することが判る。Agが1%未満では20
μm径の極細導体の24時間連続伸線に必要な1800
g/Brの伸線性が保証されない。Agが1〜3%での伸線
性の向上は合金化による効果であり、4. 5%を超えて
の伸線性の急激な低下は共晶組織の出現によるものであ
る。図6(ニ)に巻線性とAg含有量との関係を示し
た。巻線性はエナメル被覆した20μm径の極細導体を
手動巻線機または自動巻線機でコイリングして磁気ヘッ
ドを100個作製したときの断線回数で表した。Agを
1〜4.5%含む本発明例の断線回数は、自動巻線機で
4回以下、手動巻線機で1回以下でいずれも少ない。巻
線性から見た特に望ましいAg含有量は1. 5〜4%で
ある。図6(ホ)に伸線性(1断線あたりの伸線量)と
巻線性(100コイル作製中の断線回数) との関係を示し
た。伸線性に優れる導体は巻線性にも優れている。図6
(イ)〜(ホ)から、Cu−1〜4. 5%Ag合金から
なる本発明の極細導体は、80%IACS以上の高導電
性で、950〜1150N/mm2 の高強度を有し、しか
も伸線性と巻線性に優れることが判る。
【0018】(実施例2)下記4種の素材(Cu−2%
Ag合金)を伸線加工して25μm径の極細導体とし、
これを20μm径まで400m/分(67g/hr)の速度
で連続伸線して、断線に到るまでのトータル伸線時間を
調べた。また破面に残存した異物または酸溶解法にて採
取した異物の径をSEM観察により測定した。両者の関
係を図7に示す。トータル伸線時間は、各3ボビンづつ
連続伸線し、1回目の断線が起きるまでの連続伸線時間
をボビンごとに測定し、その合計をトータル伸線時間と
した。例えば、第1ボビンが5時間後に断線し、第2ボ
ビンが3時間後に断線し、第3ボビンが4時間後に断線
した場合のトータル伸線時間は12時間とした。1ボビ
ン(最大巻量2500g)の伸線時間は37時間なので最大
のトータル伸線時間は111時間である。また前記酸溶
解法は極細導体を1ボビンあたり5か所から各100g
づつサンプリングし、これを酸に溶かし濾過して採取す
る方法である。素材は次の4種である。SCR方式で
製造した8mmφの荒引線、縦型連鋳・押出方式で製造
した10mmφの押出材、通常メンテナンスの小型横型
連続鋳造装置を用いて鋳造した10mmφの鋳塊、特殊
な溶湯処理で異物を十分除去した溶湯を小型横型連続鋳
造装置を用いて鋳造した10mmφの鋳塊(本発明例)。
図7より、トータル伸線時間は、異物が小さいほど長く
なり、異物径が10μm以下の材が最も長く、異物径
が10μmを超える〜材は伸線性が大幅に短くなっ
ている。前記実施例ではCu−2%Ag合金について説
明したが、本発明はCu−1〜4. 5%Ag合金に適用
して同様の効果が得られる。
【0019】前記のボビン(20μm径、最大巻量2500
g)に巻取った極細導体(Cu−2%Ag合金)を自動
巻線機によりコイリングしたが、断線は全く起きなかっ
た。
【0020】前記のボビン(20μm径、最大巻量2500
g)に巻取った極細導体をさらに17μm径に連続伸線
し、巻取ったボビンから前述と同じように酸溶解法によ
り異物を採取し、異物径をSEM観察により測定した。
異物径はいずれも10μm以下であった。
【0021】(実施例3)Agを2%または4%含む銅
合金を溶製し、異物を沈降または浮上させ、中間部分の
溶湯を小型横型連続鋳造装置により10mm径の鋳塊に
連続鋳造し、これを50〜15μmの極細導体に伸線加
工した。前記連続鋳造での鋳型の温度勾配は100℃/
cmにした。前記鋳塊の鋳造組織は微細で、DASおよ
びAg晶出物は15μm以下であり、Ag晶出物は均一
に分散していた。比較のため、鋳型の温度勾配を50℃
/cm以下にして連続鋳造した鋳塊についても同様に5
0〜15μmの極細導体に伸線加工した。この鋳塊は鋳
造組織が比較的粗く、DAS、Ag晶出物とも18μm
以上で、Ag晶出物は不均一に分散していた。得られた
各々の極細導体について、伸線性(g/Br)、引張強度
(TS)、導電率(EC)を調べた。結果を表1に示
す。なお、伸線性は190→50μm、50→32μ
m、32→25μm、25→20μm、20→15μm
にそれぞれ連続伸線したときの値である。
【0022】
【表1】 (注)伸線性g/Br、TS(引張強度)N/mm2 、EC(導電率)%IACS。
【0023】表1より明らかなように、鋳造組織が微細
な鋳塊から得られた極細導体x、yは、前記鋳造組織が
比較的粗い鋳塊から得られた極細導体zより伸線加工性
が優れた。なお、zの伸線加工性が25μm以下で悪い
主な原因は鋳造条件が不適当なことと、線材の外部品質
が悪かったためである。以上Agを2%または4%含む
銅合金について説明したが、Cu−1〜4.5%Ag合
金においても同様の効果が得られる。
【0024】(実施例4)実施例3で製造した20μm
径のCu−2%Ag合金導体x、zにエナメルを被覆し
てその絶縁特性を高圧均一性試験により評価した。高圧
均一性試験は、走行するエナメル線と電極輪間に電圧を
印加し、スパークの発生によりエナメル線の絶縁不良を
検知する試験である。試験条件はエナメル線の走行速度
5m/分、印加電圧500Vとした。試験本数は長さ3
0mのエナメル線を30本とした。絶縁特性は1本当た
りの平均スパーク発生数で表した。結果を表2に示す。
【0025】
【表2】 (注)※DASとAg晶出物は15μm以下、Ag晶出物は均一分散。 DASとAg晶出物は18μm以上、Ag晶出物は不均一分散。
【0026】極細導体xは3μmのエナメル皮膜厚さで
十分な絶縁効果が得られた。これは用いた鋳塊が微細な
鋳造組織のため導体表面の凹凸欠陥が減少したためであ
る。極細導体zは用いた鋳塊が比較的粗い鋳造組織のた
め十分な絶縁効果を得るのに6μm以上のエナメル皮膜
厚さが必要であった。
【0027】前記極細導体x、zのエナメル被覆線を自
動巻線機にてフロッピーディスク用磁気ヘッドに各々1
00個づつコイリングし、そのときの断線回数を調べ
た。結果を表3に示す。
【0028】
【表3】 (注)※DASとAg晶出物は15μm以下、Ag晶出物は均一分散。 DASとAg晶出物は18μm以上、Ag晶出物は不均一分散。
【0029】表3より明らかなように、極細導体xは無
断線であったが、極細導体zは一部に断線が発生した。
これはDASとAg晶出物が大きくまたAg晶出物の分
散が不均一で極細導体のしなやかさが不足したためであ
る。
【0030】(実施例5)図4に示したAgを3%含む
15mm径の銅合金棒状鋳塊の加工硬化曲線bと加工硬
化曲線c(比較例)の極細導体(37〜8.3μm)の
引張強度(TS)を調べた。また各々の極細導体に3μ
m厚さにエナメルを被覆し、このエナメル被覆線を自動
巻線機でコイリングしたときの断線回数を調べた。結果
を表4に示す。
【0031】
【表4】
【0032】表4より明らかなように、本発明例の極細
導体(曲線b)は、比較例の極細導体(曲線c)より引
張強度が、いずれの導体径においても高かった。比較例
の極細導体は引張強度が低いため自動巻線機でのコイリ
ング時に断線が生じた。以上Agを3%含む銅合金につ
いて説明したが、それ以外のCu−1〜4. 5%Ag合
金に適用しても同様の効果が得られる。
【0033】
【発明の効果】以上に述べたように、本発明の巻線用極
細導体は、銀を適量含む高強度の銅合金からなり、しか
もそこに含まれる異物の径を規定するので伸線性および
巻線性に優れる。本発明の巻線用極細導体は、鋳造組織
のDASとAgの晶出物径などを規定した鋳塊を99.
997%以上の加工率で冷間加工することにより容易に
製造できる。前記冷間加工の途中に再結晶温度未満の温
度で焼鈍を入れることによりトータル加工率を大きくす
ることができ、導体の極細化または素材の大型化が図れ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】伸線性に関する異物径と導体径の関係を示す図
である。
【図2】伸線性と異物占積率との関係を示す図である。
【図3】DASと鋳塊径の関係を示す図である。
【図4】引張強度と加工歪みの関係(加工硬化特性)を
示す図である。
【図5】引張強度と焼鈍温度の関係(焼鈍軟化特性)を
示す図である。
【図6】本発明の巻線用極細導体におけるAg含有量と
引張強度 (イ)、導電率 (ロ)、伸線性 (ハ)、巻線性 (ニ)と
の関係、および伸線性と巻線性の関係 (ホ)を示すそれぞ
れ説明図である。
【図7】20μm径の極細導体における伸線性と異物径
との関係を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C22F 1/00 625 C22F 1/00 625 661 661A 682 682 685 685Z 686 686Z 694 694A

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Agを1〜4. 5重量%(以下、%と略
    記する)含み、残部がCuと不可避不純物からなる極細
    導体であり、前記極細導体内に含まれる異物の径がdμ
    m以下であることを特徴とする巻線用極細導体。但し、
    d=0.63D+0.13(式中、Dは極細導体の径μ
    m)
  2. 【請求項2】 Agを1〜4. 5%含み、残部がCuと
    不可避不純物からなる銅合金鋳塊に冷間加工を施す極細
    導体の製造方法であって、前記鋳塊は、鋳造組織のデン
    ドライトアームスペースが15μm以下、Ag晶出物が
    15μm以下の径で均一に分散したものであり、前記冷
    間加工を99. 997%以上の加工率で施すことを特徴
    とする請求項1記載の巻線用極細導体の製造方法。
  3. 【請求項3】 Agを1〜4. 5%含み、残部がCuと
    不可避不純物からなる銅合金鋳塊に冷間加工を施す極細
    導体の製造方法であって、前記鋳塊は、鋳造組織のデン
    ドライトアームスペースが15μm以下、Ag晶出物が
    15μm以下の径で均一に分散したものであり、前記冷
    間加工の途中に再結晶温度未満の温度で焼鈍を施すこと
    を特徴とする請求項1記載の巻線用極細導体の製造方
    法。
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