JP3775244B2 - 耐屈曲ケーブル用導体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐屈曲ケーブル用導体及びその製造方法に係り、特に、ロボットケーブルやプローブケーブル等の耐屈曲ケーブルに用いられる導体及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子機器用の耐屈曲ケーブル、例えばロボットケーブルやプローブケーブル等に用いられる導体の材料としては、高強度で高導電性の銅合金が一般的に使用されている。
【0003】
現在、量産レベルで製造されている銅合金線としては、連続鋳造・圧延が可能で、経済性に優れたCu−Sn合金線が挙げられ、電子機器用の耐屈曲ケーブルの導体材料として多用されている。また、その他の銅合金線も、製品コストおよび銅合金線の各種特性に応じて、様々な分野に適用されている。
【0004】
近年の電子機器の小型化・軽量化に伴って、これらに使用される電線の導体にも細径化が強く求められており、φ0.03mm以下の導体が要求されるようになってきており、また、今後においても、細径化のニーズは、更に高まると考えられる。
【0005】
前述したCu−Sn合金線は、ベース金属であるタフピッチ銅にSnを添加してなる銅合金で構成されている。タフピッチ銅は、酸素を約0.03mass%の濃度で含有しているため、Cu−Sn合金線の母材中に、スズ酸化物(直径3μm程度)が分散する形で存在する。このCu−Sn合金線を、φ0.03mm以下、例えばφ0.016mmのサイズの超極細線に伸線しようとする場合、スズ酸化物が原因で断線が多発するという不具合が生じてしまう。
【0006】
この不具合に対処する方法として、銅合金の母材として無酸素銅を用い、無酸素銅にSnを添加することでスズ酸化物の生成を極力抑制する方法が採用されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、Cu−Sn合金線を製造するための連続鋳造設備(例えばSCR連続鋳造圧延設備)は、大規模な設備であるため、大気中において連続鋳造・圧延を行っており、スズ酸化物の生成を完全に抑制することは困難である。また、連続鋳造工程や圧延工程において、設備構成部材(例えば、炉壁・鋳型壁に使用する耐火材など)がCu−Sn合金線に異物として混入するおそれがある。これらの原因により、Cu−Sn合金線を超極細線に伸線する際の極細伸線性が低下する。
【0008】
一方、Cu−Sn合金線の製造中に、線材内に鋳造欠陥(ブローホール)が生じるおそれがある。内部にブローホールを有する線材に圧延加工を施して圧延線材を形成すると、ブローホールが圧延線材表面の傷となるおそれがある。ここで、線材の表面に近い部分に形成されたブローホールは、圧延される際に破れ、表面欠陥となってしまう。また、線材の中央部近傍に形成されたブローホールは、圧延によって全てのブローホールが完全に潰されてしまい、欠陥が消滅する場合もあるが、ブローホールが完全に潰されない場合には、後工程である高温での熱処理時や、エナメルなどの絶縁体を被覆する際の高温雰囲気での塗装又は押出し時に、欠陥内部に残留するガスが体積膨張して破裂することで表面欠陥が生じるおそれがある。伸線工程における中間熱処理時に、このようなブローホールによる表面欠陥が生じた場合、後工程の極細伸線工程において断線原因となるため、線材内にブローホールが生じないようにCu−Sn合金線を鋳造する必要がある。
【0009】
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、引張強さ、伸び、及び導電率が良好で、かつ、極細伸線性が良好な耐屈曲ケーブル用導体及びその製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく本発明は、銅合金の線材で構成され、耐屈曲性が要求されるケーブル用導体において、純度99.99mass%以上の無酸素銅に、純度99.99mass%以上のIn及び純度99.9mass%以上のPを添加して得られる、Inを0.05〜0.70mass%、Pを0.0001〜0.003mass%の濃度範囲で含有し残部銅及び不可避不純物からなる銅合金を線材に形成したものである。
【0011】
以上の構成によれば、銅合金を構成する母材の純度、添加物の純度、及び銅合金中における添加物の濃度を規定することで、所望の引張強さ、伸び、及び導電率を有する導体を得ることができる。
【0012】
一方、本発明に係る耐屈曲ケーブル用導体の製造方法は、高純度の黒鉛るつぼを用い、純度99.99mass%以上の無酸素銅を0.1Pa以下の低圧雰囲気下で溶解した後、雰囲気を不活性ガスで置換し、その後、無酸素銅溶湯に純度99.99mass%以上のIn及び純度99.9mass%以上のPを添加し、In及びPの濃度がそれぞれ0.05〜0.70mass%、0.0001〜0.003mass%の銅合金溶湯を形成し、その銅合金溶湯を用いて銅合金線材を形成し、その銅合金線材に冷間伸線加工を施すものである。
【0013】
以上の方法によれば、銅合金中に合金元素の酸化物及び微小な介在物の混入のおそれがない高品質の導体を得ることができ、その結果、所望の引張強さ、伸び、及び導電率を有し、かつ、極細伸線性も良好な導体となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適一実施の形態を説明する。
【0015】
本発明者らは、Inの添加による導電率の減少量(純銅の電気比抵抗への寄与)が、Snの添加による導電率の減少量と比較して約1/3であることから、母材である銅にInとSnをそれぞれ同量づつ添加した場合、略同じ強度でありながら、Cu−In合金線の方が、従来最も使用されているCu−Sn合金線よりも導電率が良好となるということ(特公昭62−10288号公報など参照)、及びInと共にPを含有させることで、銅合金を鋳造形成した場合における鋳造材中の鋳造欠陥(ブローホール)の発生を抑制することができるということに着目した。
【0016】
本実施の形態に係る耐屈曲ケーブル用導体は、純度99.99mass%(以下、wt%ともいう。)以上の無酸素銅に、純度99.99mass%以上のInを0.05〜0.70mass%、純度99.9mass%以上のPを0.0001〜0.003mass%の濃度範囲で含有させてなる銅合金を、外径が0.01〜0.05mmの線材に形成してなるものであり、引張強さが784MPa(80kgf/mm2)以上、好ましくは800MPa以上、伸びが0.5%以上、好ましくは2.0%以上、導電率が75%IACS以上という機械的特性を有している。
【0017】
線材の外径は、導体の細径化という観点から0.05mm以下が好ましく、また、所望の引張強さを確保するという観点から0.01mm以上が好ましい。
【0018】
線材中に形成される微小介在物の大きさは、3μm(0.003mm)未満に制御することが好ましい。
【0019】
線材の外周に、Sn−Pbはんだ、Ag、Sn、Ni、又は鉛フリーはんだのメッキ被膜を形成することが好ましい。これによって、導体の耐食性やはんだ付性が良好となる。
【0020】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0021】
本実施の形態においては、母材の銅として、純度99.99wt%以上の無酸素銅を用いている。これによって、原料段階での介在物(極細伸線時における断線の原因)の混入を防止することができるようになり、また、銅合金の溶解製造および鋳造中、合金元素の酸化物(介在物)の生成源を低減することができる。また、無酸素銅に添加するIn,Pとして純度99.99wt%以上のIn及び純度99.9wt%のPを用いることで、銅合金の溶解・鋳造中、原料段階での介在物の混入を防止し、合金元素の酸化物(介在物)の生成源を低減することができる。
【0022】
Inの濃度を0.05〜0.70mass%と制御することで、所望の引張強さ、伸び、及び導電率を得ることができる。濃度が0.05mass%未満では、所望の引張強さ及び伸びが得ることが困難となり、また、濃度が0.70mass%を超えると、導電率の低下が著しくなる。ここで、より好ましいInの濃度は、0.15〜0.40mass%である。
【0023】
Pの濃度を、0.0001〜0.003mass%と制御することで、鋳造材中の鋳造欠陥(ブローホール)の発生を抑制することができる。濃度が0.0001mass%未満では、鋳造材中のブローホールの低減効果を期待することができず、また、濃度が0.003mass%を超えると、Pの固溶による導電率の低下が著しくなる。
【0024】
線材中に含まれる微小介在物の大きさを3μm(0.003mm)未満に制御することで、φ0.01mmレベルの極細伸線加工が可能となる。一般に、線径の1/3のサイズの異物が線材中に存在すると、その異物により伸線加工中に断線が生じると言われていることから、本実施の形態においては、前述したように各原料(金属元素)の純度及び濃度を制御することで、線材中の微小介在物の大きさを3μm未満に制御し、φ0.0lmmレベルの極細伸線加工を可能にしている。
【0025】
以上より、本実施の形態に係る導体においては、784MPa以上(80kgf/mm2)、好ましくは800MPa以上の引張強さを得ることができる。これによって、十分な破断荷重が得られ、かつ、十分な屈曲寿命を得ることができる。また、本実施の形態に係る導体においては、0.5%以上、好ましくは2.0%以上の伸びを得ることができる。これによって、耐屈曲ケーブルの導体として使用した場合に、導体に曲げ歪が負荷されても破断することがなく、十分な屈曲寿命が得られる。さらに、本実施の形態に係る導体においては、75%IACS以上の導電率を得ることができる。これによって、通電の際のジュール熱により伝送ロスが増大するおそれはなく、信号線として要求される特性を十分に満足することができる。
【0026】
また、本実施の形態においては、耐屈曲ケーブル用導体について説明を行ったが、本発明に係る導体を複数本撚り合わせて(同心撚り又は集合撚り等)撚線としてもよいことは言うまでもない。また、本発明に係る導体及びその導体を用いた撚線を内部導体とし、その内部導体の外周にシース等を設けることで、各種のケーブルとしてもよいことは言うまでもない。
【0027】
次に、本発明に係る耐屈曲ケーブル用導体の製造方法について説明する。
【0028】
真空溶解可能な小型の連続鋳造機の真空チャンバー内に、高純度の黒鉛るつぼを配置すると共に、真空チャンバー内の雰囲気を0.1Pa以下の低圧雰囲気(ほぼ真空雰囲気)に調整する。
【0029】
次に、低圧雰囲気下の黒鉛るつぼ内で、純度99.99wt%以上の無酸素銅を溶解し、そのままの状態で一定時間保持する。その後、真空チャンバー内に不活性ガス(例えば、アルゴンガスや窒素ガス)を注入し、真空チャンバー内の雰囲気を不活性ガス雰囲気に置換する。
【0030】
次に、不活性ガス雰囲気下の黒鉛るつぼ内の無酸素銅溶湯に、純度99.99wt%以上のIn及び純度99.9wt%以上のPを添加して溶解を行い、In及びPの濃度がそれぞれ0.05〜0.70mass%、0.0001〜0.003mass%の銅合金溶湯を形成する。
【0031】
次に、この銅合金溶湯を用いて荒引き線(銅合金線材)を形成し、この荒引き線に冷間伸線加工を施して、外径が0.01〜0.05mm、引張強さが784MPa(80kgf/mm2)以上、伸びが0.5%以上、導電率が75%IACS以上の導体を作製する。この時、荒引き線に第1冷間伸線加工を施して所望の径に伸線した後、この伸線材に、必要に応じて少なくとも1回の焼鈍処理及び冷間伸線加工を施し、導体を形成するようにしてもよい。
【0032】
溶解に用いる黒鉛るつぼの純度としては、黒鉛濃度が99.99wt%以上、より好ましくは99.999wt%以上であることが好ましい。
【0033】
本実施の形態に係る製造方法においては、無酸素銅及び銅合金を溶解製造する際に、高純度の黒鉛るつぼを用いることで、溶解時にるつぼから無酸素銅溶湯又は銅合金溶湯中に異物が混入するのを防止することができる。
【0034】
また、無酸素銅を溶解製造する際に、0.1Pa以下の低圧雰囲気下で溶解を行うことで、無酸素銅中に含まれている(内在している)気泡を、無酸素銅溶湯中から排出・排除することができる。その結果、鋳造材中におけるブローホールの発生を更に低減することができる。
【0035】
さらに、銅合金を溶解製造する際に、不活性ガス雰囲気下で溶解を行うことで、銅合金中に合金元素の酸化物(介在物)が生成するのを抑制することができる。
【0036】
また、例えばφ8mmの荒引き線をφ0.03mmの超極細線に伸線する際、1回の伸線加工で所望の径を得ようとすると、減面率(99.9986%)が非常に大きくなってしまい、加工限界に達して断線が生じるおそれがある。そこで、本実施の形態に係る製造方法においては、荒引き線に伸線加工を施して導体を形成する際、伸線加工を複数回に分けて行うことで、1回当たりの伸線加工の減面率を小さくすることができ、伸線加工中に断線が生じるのを防ぐことができる。
【0037】
【実施例】
<試験1>
真空溶解可能な小型の連続鋳造機の真空チャンバー内に、黒鉛純度が99.999wt%の黒鉛るつぼを配置すると共に、真空チャンバー内の雰囲気を0.001Paのほぼ真空雰囲気に調整する。
【0038】
次に、真空雰囲気下の黒鉛るつぼ内で、純度99.9999wt%の無酸素銅を溶解して無酸素銅溶湯を製造し、そのままの状態で5分間保持する。その後、真空チャンバー内に高純度アルゴンガスを注入し、真空チャンバー内の雰囲気をArガス雰囲気に置換する。
【0039】
Arガス雰囲気下の黒鉛るつぼ内の無酸素銅溶湯に、純度99.99wt%のIn及び純度99.9wt%のPを添加して溶解を行い、In、P、及び酸素の濃度がそれぞれ異なる8種類の銅合金溶湯を形成し、それらの銅合金溶湯を用いてφ8mmの荒引き線を作製する(試験片1〜3(実施例)および試験片4〜8(比較例))。
【0040】
<試験2>
SCR連続鋳造圧延装置の溶解炉内で、酸素濃度が約0.03mass%のタフピッチ銅を溶解してタフピッチ銅溶湯を製造する。その後、タフピッチ銅溶湯に、純度99.99wt%のIn及び純度99.9wt%のPを添加して溶解を行い、In、P、及び酸素の濃度がそれぞれ異なる2種類の銅合金溶湯を形成し、それらの銅合金溶湯を用いてφ8mmの荒引き線を作製する(試験片9,10(比較例))。
【0041】
<試験3>
SCR連続鋳造圧延装置の溶解炉内で、酸素濃度が約0.001mass%のタフピッチ銅を溶解してタフピッチ銅溶湯を製造する。その後、タフピッチ銅溶湯に、純度99.99wt%のIn及び純度99.9wt%のPを添加して溶解を行い、In、P、及び酸素の濃度がそれぞれ異なる2種類の銅合金溶湯を形成し、それらの銅合金溶湯を用いてφ8mmの荒引き線を作製する(試験片11,12(比較例))。
【0042】
試験片1〜12の成分濃度及び製造に用いた鋳造設備を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
次に、各試験片1〜12の縦断面の組織観察を光学顕微鏡を用いて行い、組織中における合金元素の酸化物(介在物)及び鋳造欠陥(ブローホール)の有無を観察した。また、各試験片1〜12に第1冷間伸線加工を施してφ0.9mmに伸線した後、その伸線材に再結晶のための焼鈍処理を施し、その焼鈍処理後の伸線材に第2冷間伸線加工を施してφ0.016mmの超極細線材を作製する。この時、100km以上の長さに亘って断線を生じることなく伸線可能であるかどうかで、極細伸線性の評価を行った。これらの観察結果及び評価結果を表2に示す。
【0045】
また、各試験片1〜12の、引張強さ(MPa(kgf/mm2))、伸び(%)、及び導電率(%IACS)の測定を行った。これらの測定結果を表3に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
表2,表3に示すように、小型連続鋳造機を用いて作製した試験片1〜8は、無酸素銅を真空溶解した後、Arガス雰囲気下で銅合金の溶解製造を行っているため、合金組織中に合金元素の酸化物は観察されなかった。これに対して、SCR連続鋳造圧延装置を用いて作製した試験片9〜12は、無酸素銅と比較して酸素濃度の高いタフピッチ銅を大気中で溶解した後、同じく大気中で銅合金の溶解製造を行っているため、合金組織中に合金元素の酸化物が観察された。具体的には、試験片9,10においては、粒径が約4μmのIn−Cu−O系化合物の粒子が多数と、粒径が約8μmのSiC粒子が観察された。また、試験片11,12においては、粒径が約8μmのSiC粒子が観察された。
【0049】
また、試験片1〜4,8,9,11は、P濃度が規定範囲(0.0001〜0.003mass%)内であるため、合金組織中にブローホールは観察されなかった。これに対して、試験片5〜7,10,12は、P濃度が規定範囲外であるため、合金組織中にブローホールが観察された。
【0050】
これらの結果、試験片1〜4,8は、合金組織中に、合金元素の酸化物及びブローホールのどちらも観察されなかったことから、極細伸線性が良好であった。これに対して、試験片5〜7,9〜12は、合金組織中に、合金元素の酸化物又はブローホールのいずれか一方が観察されたことから、極細伸線性が良好でなく、断線回数に多少の差はあるものの伸線中に断線が生じた。ここで、試験片5〜7においては、断線部の破断面に合金元素の酸化物は観察されなかったことから、断線はブローホールによるものとわかる。また、試験片9〜12の内、特に試験片9,11においては、断線部の破断面にブローホールは観察されなかったことから、断線は合金元素の酸化物によるものとわかる。
【0051】
次に、試験片1〜3,5〜7,9〜12は、In濃度が規定範囲(0.05〜0.70mass%)内であるため、所望の引張強さ、伸び、及び導電率が得られた。これに対して、試験片4,8は、In濃度が規定範囲外であるため、所望の引張強さ又は導電率が得られなかった。具体的には、試験片4においては、In濃度が0.03mass%と規定範囲よりも低いため、引張強さが665MPa(67.8kgf/mm2)と低かった。また、試験片8においては、In濃度が0.90mass%と規定範囲よりも高いため、導電率が71.0%IACSと低かった。
【0052】
以上より、銅合金のIn濃度、P濃度、及び酸素濃度が規定範囲内であり、かつ、小型連続鋳造機を用いて作製した試験片1〜3のみが、鋳造欠陥がなく、かつ、合金元素の酸化物及びるつぼ材(炉材)等の介在物が鋳造材に混入することがなく、高品質の鋳造材を得ることができ、その結果、784MPa(80kgf/mm2)以上の引張強さ、0.5%以上の伸び、及び75%IACS以上の導電率が得られ、かつ、極細伸線性も良好となる。
【0053】
以上、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、他にも種々のものが想定されることは言うまでもない。
【0054】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、次のような優れた効果を発揮する。
(1) 銅合金を構成する母材の純度、添加物の純度、及び銅合金中における添加物の濃度を規定することで、所望の引張強さ、伸び、及び導電率を有する導体を得ることができる。
(2) (1)の導体を、真空雰囲気下及び不活性ガス雰囲気下で溶解製造することで、銅合金中に合金元素の酸化物及び微小な介在物の混入のおそれがない高品質の導体を得ることができ、極細伸線性が良好な導体となる。
Claims (8)
- 銅合金の線材で構成され、耐屈曲性が要求されるケーブル用導体において、
純度99.99mass%以上の無酸素銅に、純度99.99mass%以上のIn及び純度99.9mass%以上のPを添加して得られる、Inを0.05〜0.70mass%、Pを0.0001〜0.003mass%の濃度範囲で含有し残部銅及び不可避不純物からなる銅合金を線材に形成したことを特徴とする耐屈曲ケーブル用導体。 - 上記線材中に含まれる微小介在物の大きさを3μm未満に形成した請求項1記載の耐屈曲ケーブル用導体。
- 線材の外径が0.01〜0.05mm、引張強さが784MPa以上、伸びが0.5%以上、導電率が75%IACS以上である請求項1又は2記載の耐屈曲ケーブル用導体。
- 線材の外周に、Sn−Pbはんだ、Ag、Sn、Ni、又は鉛フリーはんだのメッキ被膜を形成した請求項1から3いずれかに記載の耐屈曲ケーブル用導体。
- 請求項1から4いずれかに記載の耐屈曲ケーブル用導体を、複数本撚り合わせて形成したことを特徴とする撚線。
- 請求項1から5いずれかに記載の耐屈曲ケーブル用導体又は撚線の外周に絶縁層を設けたことを特徴とするケーブル。
- 高純度の黒鉛るつぼを用い、純度99.99mass%以上の無酸素銅を0.1Pa以下の低圧雰囲気下で溶解した後、雰囲気を不活性ガスで置換し、その後、無酸素銅溶湯に純度99.99mass%以上のIn及び純度99.9mass%以上のPを添加し、In及びPの濃度がそれぞれ0.05〜0.70mass%、0.0001〜0.003mass%の銅合金溶湯を形成し、その銅合金溶湯を用いて銅合金線材を形成し、その銅合金線材に冷間伸線加工を施すことを特徴とする耐屈曲ケーブル用導体の製造方法。
- 上記銅合金線材に冷間伸線加工を施した後、少なくとも 1 回の焼鈍処理および冷間伸線加工を繰り返す請求項7記載の耐屈曲ケーブル用導体の製造方法。
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