JP2013216979A - 伸線材用鋳造材の製造方法、伸線材の製造方法、撚り線の製造方法、および同軸ケーブルの製造方法 - Google Patents

伸線材用鋳造材の製造方法、伸線材の製造方法、撚り線の製造方法、および同軸ケーブルの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】断線が生じ難い伸線材用鋳造材を得る伸線材用鋳造材の製造方法を提供する。
【解決手段】Agを0.5質量%以上15.0質量%以下含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる伸線材用鋳造材の製造方法であって、次の工程を備える。Cu材およびAg材を用意する準備工程。高純度カーボン製の坩堝でCu材および前記Ag材の溶湯を得ると共に、CuとAgとの混合物の融点以上に溶湯を30分以上保持し、溶湯の表面に不純物を分離させる分離工程。高純度カーボン製の鋳型を使用して、溶湯から伸線材用鋳造材を得る鋳造工程。伸線材用鋳造材の一部を酸で溶解した後、孔径0.2μmのフィルターで濾過したとき、フィルターに回収される残渣物に含まれるAl量およびSi量がそれぞれ、溶解させた伸線材用鋳造材に対して1質量ppm以下であることを確認する検査工程。
【選択図】なし

Description

本発明は、Cu−Ag合金からなる伸線材用鋳造材の製造方法、伸線材の製造方法、撚り線の製造方法、および同軸ケーブルの製造方法に関するものである。
近年の小型化・軽量化の要請に応えた電子機器の発達に伴い、電子機器に利用される導線の細径化が望まれている。このような極細の導線の材料として、導電性と引張強さに優れるCu−Ag合金が提案されている。
上記のような極細の導線は、一般的に、伸線材用鋳造材を伸線することで得ているが、伸線材用鋳造材に異物が混在していると伸線の際に断線を生じる虞がある。異物としては、代表的にはAlなどの酸化物やSiCなどの炭化物が挙げられ、主として銅合金の溶解から鋳造に至るまでの経路にある坩堝や鋳型、あるいはこれらを繋ぐ桶などを構成するアルミナ系耐熱材やシリカ系耐熱材に由来する。このような異物の混入による断線は、伸線材用鋳造材から伸線材を得る際の生産性を大幅に低下させる要因となるため、低減させることが望まれており、このような要請に応える技術として、例えば、特許文献1や2の技術が提案されている。
特許文献1では、製造しようとする伸線材(導体)の線径に対して約6割程度の大きさの異物が伸線材用鋳造材(荒引線)に存在すると伸線の際に断線が生じ易いとしている(同文献の段落0009参照)。また、同文献の実施例2(段落0018および図7を参照)には、伸線加工して得られた25μmの極細導体をさらに伸線して20μmの径としたときに、約12〜16μmの径を有する異物が存在すると断線が生じ易いことが記載されている。これらの知見をもとに、特許文献1では、製造しようとする伸線材用伸線材において含有されることを許容する異物の径を規定している。
また、特許文献2は、伸線材用鋳造材中の異物の混入による断線を低減する方法として、伸線材用鋳造材の原料に純度の高い銅と銀を使用することを提案している。具体的には、純度99.9999%以上(不可避的不純物の含有量が1質量ppm以下)の、いわゆるシックスナインクラスのCuを伸線材用鋳造材の原料として使用している。
特開平11−293365号公報 特開2007−77505号公報
しかし、上記特許文献の技術では、伸線時の断線を効果的に抑制できるとは言い難い。
まず、特許文献1の技術では、伸線の際に断線を生じさせる異物を径で規定しているが、伸線する際の断線を抑制するために異物の径を規定することは効果的であるとは言い難い。一般に、伸線材用鋳造材に含有される異物について調べるときは、同一ロットの伸線材用鋳造材からサンプルを取得して調べることになる。しかし、そもそも、伸線材用鋳造材の製造の際に異物を低減するようにしているため、伸線材用鋳造材において断線を生じさせるような径を有する異物の存在量自体が少ない。そのため、断線が頻繁に生じるほど伸線材用鋳造材に異物が含まれているにもかかわらず、サンプル中に、規定するような径の異物が含まれないことがある。
また、特許文献2の技術は、高純度の原料を使用することで伸線材用鋳造材における異物の低減を図ったものであるが、伸線材用鋳造材の製造の際に坩堝や鋳型に起因する異物の混入を避けることはできないため、異物の低減には限界がある。そのため、材料の純度を規定することは、断線の低減には一定の効果を発揮するものの、断線を抑制するための規定として十分とは言えない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、断線が生じ難い伸線材用鋳造材を得る伸線材用鋳造材の製造方法を提供することにある。また、本発明の別の目的は、上記伸線材用鋳造材を用いて伸線材を得る伸線材の製造方法、その伸線材を用いて撚り線を得る撚り線の製造方法、およびその撚り線を用いて同軸ケーブルを得る同軸ケーブルの製造方法を提供することにある。
本発明者らは、高純度の原料を利用することによる伸線材用鋳造材に含まれる異物の低減に限界があるとの認識のもと、発想の転換を行い、伸線材用鋳造材に含まれる異物の量がどの程度であれば伸線材用鋳造材として許容できるのかという観点から検討した。そして、本発明者らが種々検討した結果、伸線材用鋳造材の一部をサンプルとして取得し、含有される異物の濃度を測定することで、断線に関与する異物の存在量を推定することができることを見いだした。具体的には、伸線材用鋳造材において、一定以上の径を有する異物の量が所定値以下であれば、断線に関与する異物が非常に少ない伸線材用鋳造材になることを見いだした。このような伸線材用鋳造材であれば、伸線加工したときに断線し難いため、非常に生産性良く伸線材を製造できるとの知見を得た。この知見に基づいて本発明の伸線材用鋳造材の製造方法を規定する。
本発明の伸線材用鋳造材の製造方法は、Agを0.5質量%以上15.0質量%以下含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる伸線材用鋳造材を作製する伸線材用鋳造材の製造方法であって、以下に示す準備工程と、分離工程と、鋳造工程と、検査工程と、を備える。
[準備工程]…Cu材およびAg材を用意する。
[分離工程]…Cu材およびAg材を高純度カーボン製の坩堝で溶解させて溶湯を得ると共に、CuとAgとの混合物の融点以上に溶湯を30分以上保持し、溶湯の表面に不純物を分離させる。
[鋳造工程]…高純度カーボン製の鋳型を使用して、溶湯から伸線材用鋳造材を得る。
[検査工程]…伸線材用鋳造材の一部を酸で溶解した後、孔径0.2μmのフィルターで濾過したとき、フィルターに回収される残渣物に含まれるAl量およびSi量がそれぞれ、溶解させた伸線材用鋳造材に対して1質量ppm以下であることを確認する。
本発明の線材用鋳造材の製造方法によれば、伸線時に断線し難い伸線材用鋳造材を作製することができる。
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施形態の内容を列挙して説明する。
<1>実施形態の伸線材用鋳造材の製造方法は、Agを0.5質量%以上15.0質量%以下含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる伸線材用鋳造材を作製する伸線材用鋳造材の製造方法であって、以下に示す準備工程と、分離工程と、鋳造工程と、検査工程と、を備える。
[準備工程]…Cu材およびAg材を用意する。
[分離工程]…Cu材およびAg材を高純度カーボン製の坩堝で溶解させて溶湯を得ると共に、CuとAgとの混合物の融点以上に溶湯を30分以上保持し、溶湯の表面に不純物を分離させる。
[鋳造工程]…高純度カーボン製の鋳型を使用して、溶湯から伸線材用鋳造材を得る。
[検査工程]…伸線材用鋳造材の一部を酸で溶解した後、孔径0.2μmのフィルターで濾過したとき、フィルターに回収される残渣物に含まれるAl量およびSi量がそれぞれ、溶解させた伸線材用鋳造材に対して1質量ppm以下であることを確認する。
実施形態の伸線材用鋳造材の製造方法によれば、伸線時に断線し難い伸線材用鋳造材を作製することができる。実施形態の伸線材用鋳造材が伸線時に断線し難いのは、準備工程・分離工程・鋳造工程において伸線材用鋳造材への異物の混入を極力抑制し、かつ検査工程において伸線材用鋳造材に含まれる異物の濃度が所定値以下であることを確認しているからである。特に、検査工程において伸線材用鋳造材の伸線性の良否を判断しておくことは、伸線材の生産性の向上に極めて大きな貢献をする。検査工程で伸線材用鋳造材の伸線性を確認しておけば、断線が生じ易い伸線材用鋳造材を伸線材の製造工程から排除できる、即ち伸線性に優れる伸線材用鋳造材のみを使用して伸線材を作製することができるからである。
<2>実施形態の伸線材用鋳造材の製造方法として、準備工程においてCu材の表面を酸洗する形態を挙げることができる。
Cu材の表面に付着した異物を酸洗により除去しておくことで、伸線材用鋳造材に異物が含まれる可能性を低減することができる。その結果、断線し難い伸線材用鋳造材を作製することができる。
<3>実施形態の伸線材用鋳造材の製造方法として、準備工程で用意するCu材の純度、およびAg材の純度が、99.99%以上である形態を挙げることができる。
伸線材用鋳造材の原料であるCu材およびAg材の純度をフォーナインクラス以上とすることで、伸線材用鋳造材に異物が含まれる可能性を低減することができる。その結果、断線し難い伸線材用鋳造材を作製することができる。
<4>実施形態の伸線材用鋳造材の製造方法として、分離工程で使用する坩堝に含まれる不純物量、および鋳造工程で使用する鋳型に含まれる不純物量が、20質量ppm以下である形態を挙げることができる。
不純物量が20質量ppm以下の高純度カーボン製の坩堝と鋳型を使用することで、伸線材用鋳造材に異物が含まれる可能性を低減することができる。その結果、断線し難い伸線材用鋳造材を作製することができる。これら坩堝と鋳型に含まれる不純物量は、5質量ppm以下であることが好ましい。
<5>実施形態の伸線材の製造方法は、上記伸線材用鋳造材の製造方法で得られた伸線材用鋳造材を伸線して伸線材を得る伸線材の製造方法である。
上記伸線材の製造方法によれば、導体などに利用される伸線材を生産性良く製造することができる。それは、断線し難い伸線材用鋳造材を伸線しているからである。また、伸線材用鋳造材中の異物の低減により伸線時に断線が生じ難いとの理由から、伸線材の線径を0.05μm以下とすることができる。さらには、伸線材の線径を0.01μm以上、0.03μm以下とすることもできる。
<6>実施形態の撚り線の製造方法は、上記伸線材の製造方法で得られた伸線材を複数撚り合わせて撚り線を得る撚り線の製造方法である。
上記撚り線の製造方法によれば、導体などに利用される撚り線を生産性良く製造することができる。それは、撚り線の製造にあたり、生産性良く製造された伸線材を用いているからである。また、断線し難い伸線材用鋳造材から得られた伸線材が撚り線状の形態にするときに断線し難いことも、撚り線の生産性の向上に寄与する。
<7>実施形態の同軸ケーブルの製造方法は、上記撚り線の製造方法で得られた撚り線を中心導体として同軸ケーブルを得る同軸ケーブルの製造方法である。
上記同軸ケーブルの製造方法によれば、同軸ケーブルを生産性良く製造することができる。それは、同軸ケーブルの製造にあたり、生産性良く製造された撚り線を中心導体として利用しているからである。また、断線し難い伸線材用鋳造材から得られた撚り線が同軸ケーブルを生産する際に断線し難いことも、同軸ケーブルの生産性の向上に寄与する。
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る伸線材用鋳造材の製造方法、および伸線材の製造方法について説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内の全ての変更が含まれることを意図する。
<伸線材用鋳造材の製造方法の全体構成>
伸線材用鋳造材の製造方法は、準備工程と、分離工程と、鋳造工程と、検査工程と、を備える。以下、各工程を詳細に説明する。
≪準備工程≫
準備工程では、Cu材およびAg材を用意する。その準備工程では、伸線材用鋳造材中にできるだけ異物が混入しないようにするため、伸線材用鋳造材の原料であるCu材およびAg材をフォーナインクラス(純度99.99%以上)以上とすることが好ましい。
≪分離工程≫
分離工程では、まずCu材およびAg材を高純度カーボン製の坩堝で溶解させ、溶湯を得る。具体的には、坩堝で溶解させたCu材中に、Ag材を投入することで溶湯を得ることができる。溶湯におけるAgの含有量を0.5質量%以上、15.0質量%以下とする。ここで、溶湯を得る際に溶湯に異物が混入することを抑制するために、溶湯を作製する坩堝に含まれる不純物量は、20質量ppm以下とすることが好ましく、5質量ppm以下とすることがより好ましい。
また、分離工程では、CuとAgとの混合物の融点以上に溶湯を30分以上保持して、溶湯の表面に不純物を分離させる。溶湯の保持時間は、溶湯の表面に不純物を分離させるための重要な要素である。この保持時間が短いと、不純物の分離が不十分になり、伸線材用鋳造材に含まれる異物が多くなる傾向にある。特に、保持時間が0〜20分の場合、断線に関与する異物が伸線材用鋳造材に高確率で含有され、伸線時に断線が生じ易い伸線材用鋳造材になる。
≪鋳造工程≫
鋳造工程では、分離工程を経た溶湯を鋳造して伸線材用鋳造材を得る。その鋳造にあたって、伸線材用鋳造材に異物が混入されないように、高純度カーボン製の鋳型を使用する。その鋳型の不純物量は、20質量ppm以下とすることが好ましく、5質量ppm以下とすることがより好ましい。
≪検査工程≫
検査工程では、まず伸線材用鋳造材の一部をサンプルとして取得する。サンプル量は、おおよそ100g以上、200g以下であれば十分である。
次いでサンプルを酸で溶解させる。使用する酸としては、銀の沈殿物を生成しない硝酸などを利用することができる。
サンプルを溶解させた酸溶液を、孔径0.2μmのフィルターで濾過する。その際、フィルターに回収される残渣物に含まれるAl量およびSi量がそれぞれ、溶解させた伸線材用鋳造材に対して1質量ppm以下であることを確認する。
ここで、本発明者らは、検討の結果、伸線材用鋳造材に含まれる一定以上の径を有する異物の存在量から、断線に関与する径を有する異物の存在量を推定することができるという知見を得ている。また、本発明者らは、伸線材用鋳造材におけるAl量およびSi量は、伸線材用鋳造材を伸線したときに断線が生じ易いか否かの指標となるものであるとの知見も得ている。
検査工程の確認の結果、溶解させた伸線材用鋳造材に対するAl量およびSi量がそれぞれ、1質量ppm以下であれば、伸線材用鋳造材全体に含まれる異物の含有量が非常に少なく、伸線材用鋳造材の伸線性が十分であると判断する。一方、伸線材用鋳造材に対するAl量またはSi量が1質量ppm超であれば、伸線材用鋳造材の伸線性が十分でないと判断する。その場合、伸線材用鋳造材を伸線に供することなく、伸線材用鋳造材の製造方法によりもう一度伸線材用鋳造材を作り直せば良い。
本実施形態の伸線材用鋳造材の製造方法で得られた伸線材用鋳造材であれば、伸線材用鋳造材中の異物の含有量が非常に少ないので、伸線時の断線を抑制しつつ伸線材を作製することができる。また、本実施形態の伸線材用鋳造材の製造方法では、断線が生じ易い伸線材用鋳造材を伸線前に除外することができるので、伸線材の生産性を大幅に向上させることができる。
≪伸線材の製造方法≫
実施形態の伸線材の製造方法は、上記伸線材用鋳造材の製造方法で得られた伸線材用鋳造材を伸線することで、伸線材を得る。
伸線材用鋳造材の伸線時に断線が生じ難いことから、伸線材用鋳造材を伸線することで得られる伸線材は、その線径を0.05mm以下とすることができる。さらに、伸線材の線径を0.01以上、0.03mm以下とすることもできる。このような線径の伸線材であれば、例えば、伸線材をコイルとして利用する場合、コイルの体積あたりの巻き数を多くすることができる。
上述した線径を有する伸線材を得るためには、伸線材用鋳造材の伸線条件を操作すれば良い。伸線材用鋳造材の径と、最終的な伸線材の径にもよるが、伸線材用鋳造材を複数パスの伸線加工(特に、冷間伸線加工)により伸線材とすることが好ましい。特に、一番初めに行う伸線加工は、減面率70%以上であることが好ましい。70%以上の伸線加工を行うことで、以降の伸線加工を所定の加工度で行うことが容易になる。
また、複数回の伸線加工の間に中間熱処理を施しても良い。中間熱処理を行うことで、この中間熱処理前に伸線材に導入された加工歪みを除去して、後工程の伸線加工を容易にすることができる。また、中間熱処理によってAgを析出させて、後工程の伸線加工によってAg析出物を繊維状とすることで、伸線材の強度を向上させることができる。中間熱処理の条件は、350℃以上500℃以下(好ましくは、400℃以上450℃以下)で0.5時間以上10時間以下とすると良い。
上記伸線材の製造方法で得られる伸線材の引張強さは、800MPa以上1600MPaであることが好ましい。このような引張強さを有する伸線材であれば、伸線材の形態を線状の形態からさらに別の形態にする場合に断線などが生じ難い。例えば、伸線材を巻回してコイル状の形態にしたり、あるいは、複数の伸線材を撚り合わせて撚り線状の形態にしたりするときに伸線材が破断し難い。
さらに、上記伸線材の製造方法で得られた伸線材の導電率は、55%IACS以上であることが好ましい。より好ましくは、60%IACS以上、さらに好ましくは65%IACS以上である。このような導電率の伸線材であれば、種々の電気機器の導体として好適に利用可能である。
その他、上記伸線材はその表面にめっきを有することが好ましい。めっきとしては、Au、Au合金、Ag、Ag合金、Sn、Sn合金、NiおよびNi合金が挙げられる。表面にめっきを有することにより、伸線材の耐食性が向上するし、伸線材を他の部材(他の伸線材を含む)に接続する際の接続性が向上する。めっきは、伸線が終了した時点で行っても良いし、複数パスの伸線を行うのであれば、パス間で行っても良い。
本実施形態の伸線材の製造方法で得られた伸線材は、その取り扱いの際や更なる加工の際に断線し難い。例えば、伸線材をさらに伸線するときや、伸線材を複数撚り合わせて撚り線とするときにも断線等の不具合が生じ難い。また、伸線材を同軸ケーブルの中心導体としたり、複数の伸線材を撚り合わせた撚り線を同軸ケーブルの中心導体としたりしても、同軸ケーブルの使用時に断線などの不具合が生じ難い。なお、伸線材、撚り線、および同軸ケーブルに断線が生じ難いのは、伸線材の原料である伸線材用鋳造材が断線し難いからである。
<試験例>
本試験例では、Cu−Ag合金からなる複数の伸線材用鋳造材を製造し、伸線材用鋳造材における異物混入量の評価を行った。そして、この伸線材用鋳造材を使用して実際に極細の線状体を作製した。
≪伸線材用鋳造材の製造≫
(試料1)
まず、純度99.99%以上の電気銅(Cu材)を酸洗して、その表面に付着した異物を除去した後、この酸洗した電気銅を高純度カーボン製の坩堝に投入し、連続鋳造装置内で真空溶解させた。電気銅(Cu材)が完全に溶解した後、装置のチャンバー内をアルゴンガスに置換して、純度99.99%以上の銀粒(Ag材)を高純度カーボン製の坩堝に投入し、CuとAgが溶解した溶湯を作製した。このとき、溶湯におけるAgの含有量は、0.6質量%となるように調整した。
溶湯を得るにあたって、Agの添加後、CuとAgとの混合物の融点以上に30分以上保持して坩堝内の溶湯表面に不純物(異物を含む)を分離させた。この保持時間が後述する試料3や4のように30分未満の場合、溶湯からの異物を含む不純物を十分に分離させることができない。
最後に、高純度カーボン製の鋳型を用いて線径φ8.0mmの荒引線(伸線材用鋳造材)を20kg製造した。この伸線材用鋳造材を試料1とする。
(試料2)
試料2として、試料1とはAgの含有量が異なる伸線材用鋳造材を作製した。伸線材用鋳造材におけるAg含有量の調節は、坩堝内への銀粒の投入量を調節することで行った。この銀粒の投入量以外は、試料1と同様である。
(試料3)
試料3として、溶湯の作製時に異物の分離操作を行わなかった伸線材用鋳造材を作製した。具体的には、坩堝内への銀粒の投入後、CuとAgとの混合物の融点以上の温度で一定時間保持することを行わず、銀粒が溶解したのを確認した後、伸線材用鋳造材の作製を行った。この操作以外は、試料1と同様である。
(試料4)
試料4として、CuとAgとの混合物の融点以上の温度で20分間保持し、溶湯中に浮かせた不純物を分離する操作を行った伸線材用鋳造材を作製した。この保持時間以外は、試料1と同様である。
≪伸線材用鋳造材の評価≫
上述のようにして作製した伸線材用鋳造材(試料1〜4)をそれぞれ200gだけ取り分け、6.4mol以上の硝酸を含む水溶液に溶解させ、この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過した。フィルターに回収された残渣物は、白金坩堝内にて乾燥し、フィルターを灰化した後、融剤を加えて溶融し、ガラス状物質とした。このガラス状物質を、塩酸を含む水溶液に溶解させた。伸線材用鋳造材の溶解からガラス状物質の溶解までの作業は、クリーンブース内で実施した。そして、ガラス状物質が溶解した溶液を誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析にかけてSi量とAl量を定量した。各試料のSi含有量(質量ppm)とAl含有量(質量ppm)を後段の表1に示す。
≪伸線性の評価≫
線径φ8mmの伸線材用鋳造材(Cu−Ag鋳造材)である試料1〜4を、伸線ダイスを用いて線径φ0.025mmまで伸線したときに断線が生じるかを調べることで伸線材用鋳造材の伸線性を評価した。
伸線は、American Wire Gage規格のダイスを使用することで行った。また、伸線の途中段階である、線径がφ2.6mm、減面率が89%になった時に、中間熱処理(400℃で8時間)を行った。
伸線材用鋳造材の伸線性は、20kgの伸線材用鋳造材を全て伸線し終わるまでの間に発生した断線回数を測定し、20kgをその断線回数で割った値(kg/回)を求めることにより評価した。この結果も次段の表1に示す。なお、表中の伸線性は、試料1、3および4については線径φ0.025mmまで伸線したときの伸線性、試料2について線径φ0.040mmまで伸線したときの伸線性を示している。
Figure 2013216979
表1の結果から、伸線材用鋳造材の製造にあたり、溶湯をCuとAgとの混合物の融点以上に30分以上保持した試料1および2は、異物の含有量が、1質量ppm以下であった。一方、溶湯の温度保持を行わなかった試料3と、溶湯の温度保持時間が試料1および2よりも短い試料4は、SiとAlの少なくとも一方が、1質量ppmを超えていた。
また、これら試料1〜4の伸線性を比較すると、試料1および2の伸線性は、異物量が多い試料3および4よりも格段に優れていた。特に、試料2は、20kgの伸線材用鋳造材を全く断線することなく伸線することができた。
≪伸線材の性能評価≫
次いで、伸線性に優れる試料1および2を伸線して得られた伸線材について導電率と引張強さを測定したところ、試料1の伸線材は、導電率が85%IACS、引張強さが900MPa、試料2の伸線材は、導電率が70%IACS、引張強さが1200MPaであった。
このような導電性と引張強さを有する伸線材であれば、電気機器に使用される配線などの導体として十分な特性を備えていると言える。特に、伸線材の引張強さが高いことから、伸線材を撚り合わせて撚り線を製造する際に切れ難い。そのため、この伸線材は、例えば、撚り線を中心導体とする同軸ケーブルなどの製造に好適に利用可能である。
本発明の伸線材用鋳造材の製造方法で得られた伸線材用鋳造材は、細径で、高強度、高導電率が望まれる伸線材を作製することに利用できる。また、本発明の伸線材用鋳造材から製造した伸線材は、例えば、複数本撚り合わせた撚り線状の導体や、この撚り線を中心導体とする同軸ケーブルなどに好適に利用可能である。

Claims (7)

  1. Agを0.5質量%以上15.0質量%以下含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる伸線材用鋳造材を作製する伸線材用鋳造材の製造方法であって、
    Cu材およびAg材を用意する準備工程と、
    前記Cu材および前記Ag材を高純度カーボン製の坩堝で溶解させて溶湯を得ると共に、CuとAgとの混合物の融点以上に前記溶湯を30分以上保持し、前記溶湯の表面に不純物を分離させる分離工程と、
    高純度カーボン製の鋳型を使用して、前記溶湯から伸線材用鋳造材を得る鋳造工程と、
    前記伸線材用鋳造材の一部を酸で溶解した後、孔径0.2μmのフィルターで濾過したとき、フィルターに回収される残渣物に含まれるAl量およびSi量がそれぞれ、溶解させた伸線材用鋳造材に対して1質量ppm以下であることを確認する検査工程と、
    を備える伸線材用鋳造材の製造方法。
  2. 前記準備工程において、前記Cu材の表面を酸洗する請求項1に記載の伸線材用鋳造材の製造方法。
  3. 前記Cu材の純度、および前記Ag材の純度が、99.99%以上である請求項1または請求項2に記載の伸線材用鋳造材の製造方法。
  4. 前記坩堝に含まれる不純物量、および前記鋳型に含まれる不純物量が、20質量ppm以下である請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の伸線材用鋳造材の製造方法。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の伸線材用鋳造材の製造方法で得られた伸線材用鋳造材を伸線して伸線材を得る伸線材の製造方法。
  6. 請求項5に記載の伸線材の製造方法で得られた伸線材を複数撚り合わせて撚り線を得る撚り線の製造方法。
  7. 請求項6に記載の撚り線の製造方法で得られた撚り線を中心導体として同軸ケーブルを得る同軸ケーブルの製造方法。
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