JP2007196264A - 荒引線の製造方法及びその装置 - Google Patents

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慎司 片山
Haruo Tominaga
晴夫 冨永
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Abstract

【課題】荒引線Wを所定の細線径まで伸線加工を行って細線を最終的に製造する際に、異物断線が生じ難くすること。
【解決手段】坩堝内筒9に供給された金属又は合金からなる原料を溶解することにより、溶解状態の原料を溶湯Hとして、内筒底9aの複数の微細孔11,12を通過させて、外筒底8aと内筒底9aとの間に区画された貯留室10に貯留する貯留工程と、上下方向へ延びたパイプ状の鋳型ノズル14を冷却しつつ、貯留室10に貯留された溶湯Hを前記鋳型ノズル内に流入させることにより、鋳型ノズル14内の溶湯Hを冷却固化して、溶湯Hから荒引線Wを鋳造する鋳造工程と、鋳造された荒引線Wを鋳型ノズル14から引き出す引き出し工程と、を具備した。
【選択図】図1

Description

本発明は、銅等の金属又は銅合金等の合金からなる荒引線を製造する製造方法及びその装置に関する。
絶縁導線の導体、送配電線、通信線等に使用される例えば銅又は銅合金の細線は、所定の線径の荒引線を製造して、この荒引線を所定の細線径まで伸線加工することによって製造される。そして、前記荒引線の代表的な製造方法としては、SCR方式、DIP方式、及び横型連続鋳造方式によるものがある。
ここで、前記SCR方式による製造方法は、米サウスワイヤ社により開発された方法であって、溶解炉で熔解した熔解状態の電気銅(原料)を溶湯として、保持炉を経由して、鋳造輪とスチールベルトとからなる鋳型内に流入させることにより、前記鋳型内の前記溶湯を冷却固化して、前記溶湯から鋳造バーを鋳造し、続いて、前記鋳造バーを圧延機によって連続的に圧延することにより、前記所定の線径の荒引線を製造する方法である(例えば、特許文献1参照)。
前記DIP方式による製造方法は、米ゼネラルエレクトロリック社により開発された方法であって、線状の母材を坩堝に貯留した溶湯に浸漬させることにより、前記母材の外周部に前記溶湯を付着させて、前記母材の外径を拡大し、続いて、前記母材を圧延機によって連続的に圧延することにより、所定の線径の荒引線を製造する方法である(例えば、特許文献2及び特許文献3参照)。
横型連続鋳造方式による製造方法は、溶解炉又は保持炉の側壁に水平に取付けた鋳型内で溶湯を冷却固化して、鋳塊を前記鋳型から水平方向へ連続的に引き出し、続いて、前記鋳塊を圧延ローラによって連続的に圧延することにより、所定の線径の荒引線を製造する方法である(例えば、特許文献4参照)。
特開2003−266157号公報(図2) 特開平4−13469号公報(図2) 特開平5−192752(図2) 特開平10ー137801号公報(図2)
ところで、前述の前記荒引線の製造方法に用いられる前記溶解炉、前記坩堝等は、SiO、AlO等の耐火物を構成材料としており、前記荒引線の製造の途中において前記溶湯に耐火物が混入することを回避できない。そのため、耐火物等の異物を含まないように前記荒引線を製造することは困難である。一方、前記荒引線の中に大きな異物、具体的には、前記所定の細線径の40パーセント以上の大きさの異物が含まれると、前記荒引線を前記所定の細線径まで伸線加工を行って前記細線を最終的に製造する際に、異物断線が発生し易くなるという問題がある。
また、前述の前記荒引線の製造方法においては、前記鋳造バー、前記母材、又は前記鋳塊を連続的に圧延することによって、前記荒引線を最終的に製造しているため、前記原料が例えば高濃度の添加元素を加えた合金等のように高強度の合金からなる場合には、前記鋳造バー等を連続的に圧延することが極めて困難であって、換言すれば、前記原料から前記荒引線を製造することが極めて困難であるという問題がある。
そこで、本発明は、前述の問題点を解決するために、大きな異物が所定の貯留室内の溶湯に混入することを回避でき、かつ荒引線の一連の製造工程の中から圧延する圧延工程を省略できる、新規な構成の荒引線の製造方法及びその装置を提供することを目的とする。
本発明の第1の特徴は、下側に外筒底を有した坩堝外筒と、該坩堝外筒の内側に配設されかつ下側に内筒底を有した坩堝内筒とを備えてなる二重構造坩堝を用い、前記坩堝内筒に供給された金属又は合金からなる原料を溶解することにより、溶解状態の前記原料を溶湯として、前記内筒底に貫通して形成された複数の微細孔を通過させて、前記外筒底と前記内筒底との間に区画された貯留室に貯留する貯留工程と、前記坩堝外筒の前記外筒底に前記貯留室に連通するように設けられかつ上下方向へ延びたパイプ状の鋳型ノズルを冷却しつつ、前記貯留工程において前記貯留室に貯留された前記溶湯を前記鋳型ノズル内に流入させることにより、前記鋳型ノズル内の前記溶湯を冷却固化して、前記溶湯から荒引線を鋳造する鋳造工程と、前記鋳造工程において鋳造された前記荒引線を前記鋳型ノズルから引き出す引き出し工程と、を具備したことである。
本発明の第1の特徴によると、前記溶湯を複数の前記微細孔を通過させて、前記貯留室に貯留するため、前記坩堝内筒の前記内筒底にフィルタとしての機能を発揮させて、前記微細孔の孔径よりも大きな異物が前記貯留室内の前記溶湯に混入することを回避できる。
また、前記鋳型ノズルを冷却しつつ、前記貯留室に貯留された前記溶湯を前記鋳型ノズル内に流入させることにより、前記鋳型ノズル内の前記溶湯を冷却固化して、前記溶湯から前記荒引線を鋳造するため、前記荒引線の一連の製造工程の中から、前記溶湯を冷却固化した固形物を連続的に圧延する圧延工程を省略できる。
本発明の第2の特徴は、下側に外筒底を有した坩堝外筒と、該坩堝外筒の内側に配設されかつ下側に内筒底を有した坩堝内筒とを備えてあって、前記外筒底と前記内筒底との間に金属又は合金からなる溶解状態の原料を溶湯として貯留する貯留室が区画され、前記内筒底に複数の微細孔が貫通して形成された二重構造坩堝と、前記二重構造坩堝を加熱する坩堝加熱手段と、前記坩堝外筒の前記外筒底に前記貯留室に連通するように設けられ、上下方向へ延びたパイプ状の鋳型ノズルと、前記鋳型ノズルを冷却するノズル冷却手段と、前記鋳型ノズルから鋳造された荒引線を引き出す引き出し手段と、を具備したことである。
本発明の第2の特徴によると、前記坩堝加熱手段によって前記二重構造坩堝を加熱して、前記坩堝内筒に供給された前記原料を溶解することにより、溶解状態の前記原料を前記溶湯として、複数の前記微細孔を通過させて、前記貯留室に貯留する。そして、前記ノズル冷却手段によって前記鋳型ノズルを冷却しつつ、前記貯留室に貯留された前記溶湯を前記鋳型ノズル内に流入させることにより、前記鋳型ノズル内の前記溶湯を冷却固化して、前記溶湯から前記荒引線を鋳造する。更に、前記引き出し手段によって前記荒引線を前記鋳型ノズルから引き出する。これにより、金属又は合金からなる前記荒引線を製造することができる。
ここで、前記溶湯を複数の前記微細孔を通過させて、前記貯留室に貯留するため、前記坩堝内筒の前記内筒底をフィルタとしての機能を発揮させて、前記微細孔の孔径よりも大きな異物が前記貯留室内の前記溶湯に混入することを回避できる。
また、前記鋳型ノズルを冷却しつつ、前記貯留室に貯留された前記溶湯を前記鋳型ノズル内に流入させることにより、前記鋳型ノズル内の前記溶湯を冷却固化して、前記溶湯から前記荒引線を鋳造するため、前記荒引線の一連の製造工程の中から、前記溶湯を冷却固化した固形物を連続的に圧延する圧延工程を省略できる。
本発明によれば、前記坩堝内筒の前記内筒底をフィルタとしての機能を発揮させて、前記微細孔の孔径よりも大きな異物が前記貯留室内の前記溶湯に混入することを回避できるため、前記荒引線の中に大きな異物が含まれることがなくなって、前記荒引線を所定の細線径まで伸線加工を行って細線を最終的に製造する際に、異物断線が生じ難くなる。
また、前記荒引線の一連の製造工程の中から前記圧延工程を省略できるため、前記原料が高強度の合金からなる場合でも、前記原料から前記荒引線を容易に製造することできる。
以下、本発明の実施形態に係る荒引線の製造装置、本発明の実施形態に係る荒引線の製造方法等について図1から図5を参照して順次説明する。
ここで、図1は、本発明の実施形態に係る荒引線の製造装置の概略的な図、図2は、本発明の実施形態に係る二重構造坩堝及び鋳型ノズルを示す斜視図、図3は、図2におけるIII-III線に沿った図、図4は、本発明の実施形態に係る坩堝内筒の内筒底に形成された微細孔の拡大斜視図、図5は、本発明の実施形態に係る荒引線の製造方法におけるロッドセット工程を説明する図である。
図1に示すように、本発明の実施形態に係る荒引線の製造装置1は、銅又は銅合金からなる所定の線径(本発明の実施形態にあっては、8mm)の荒引線Wを製造する装置であって、石英からなるチャンバー2を装置本体して備えている。
チャンバー2の上部には、銅からなる銅線材Mを供給する開閉可能な第1供給口3、及び合金元素からなる銀線材,錫線材等の合金元素線材M’を供給する開閉可能な第2供給口4がそれぞれ形成されている。また、チャンバー2の上部には、チャンバー2内の圧力を調節するロータリーポンプ5、及びチャンバー2内にアルゴンガス等の不活性ガスを導入するガス導入系6がそれぞれ接続されている。
チャンバー2の内側には、二重構造坩堝7が配設されており、この二重構造坩堝7の具体的な構成は、次のようになる。
即ち、図2から図4に示すように、チャンバー2の内側には、坩堝外筒8が配設されており、この坩堝外筒8は、下側に、外筒底8aを有している。なお、本発明の実施形態にあっては、坩堝外筒8の全長は240mm、坩堝外筒8の外径は100mm、坩堝外筒8の内径は84mm、外筒底8aの厚さは15mmである。
坩堝外筒8の内側には、坩堝内筒9が配設されており、この坩堝内筒9は、下側に、内筒底9aを有している。なお、本発明の実施形態にあっては、坩堝内筒9の全長は215mm、坩堝内筒9の外径は82mm、坩堝内筒9の内径は66mm、内筒底9aの厚さは8mmである。
坩堝外筒8の外筒底8aと坩堝内筒9の内筒底9aとの間には、溶解状態の原料を溶湯Hとして貯留する貯留室10が区画されている。なお、原料とは、銅線材M、又は銅線材Mと合金元素線材M’との混合材料のことをいう。また、本発明の実施形態にあっては、貯留室10の高さは10mmである。
坩堝内筒9の内筒底9aの中心部には、第1微細孔11が貫通して形成されており、坩堝内筒9の内筒底9aにおける第1微細孔11の周辺には、複数(本発明の実施形態にあっては、8個)の第2微細孔12が等間隔に貫通して形成されている。また、第1微細孔11及び第2微細孔12の中心線11c,12cは、それぞれ鉛直になっており、第1微細孔11及び第2微細孔12の断面形状は、それぞれ下方向に向かって拡がるようにテーパ状になっている。更に、第1微細孔11及び第2微細孔12の下側部分の孔径dが上側部分の孔径rの2倍以上になっている。
そして、坩堝内筒9の内筒底9aの厚みをtとした場合に、0.5mm≦r≦tの関係が成立するようになっている。ここで、第1微細孔11及び第2微細孔12の上側部分の孔径rを0.5mm以上としたのは、第1微細孔11及び第2微細孔12の上側部分の孔径rが0.5mmに満たないと、前記原料の溶解の初期段階において異物が第1微細孔11又は第2微細孔12に詰まるおそれがあるからである。また、第1微細孔11及び第2微細孔12の上側部分の孔径rを坩堝内筒9の内筒底9aの厚みt以下としたのは、第1微細孔11及び第2微細孔12の上側部分の孔径rが坩堝内筒9の内筒底9aの厚みtを越えると、浮上し難い大きな異物が貯留室10内の溶湯Hに混入するおそれがあるからである。
図1及び図2に示すように、チャンバー2の外周部には、二重構造坩堝7を外側から加熱する誘導加熱コイル13が囲むように設けられている。なお、誘導加熱コイル13の代わりに、二重構造坩堝7を加熱する別の加熱手段を用いても差し支えない。
坩堝外筒8の外筒底8aの中心部には、上下方向へ延びたパイプ状の鋳型ノズル14が貯留室10に連通するように設けられており、この鋳型ノズル14は、カーボンからなるものである。また、鋳型ノズル14は、内側に、前記所定の線径(本発明の実施形態にあっては、8mm)と同じノズル径(鋳型ノズル14の内径)のノズル孔14hを有してあって、坩堝外筒8の外筒底8aに対して交換可能である。なお、本発明の実施形態にあっては、鋳型ノズル14の全長は130mm、鋳型ノズルの外径は22mmである。
鋳型ノズル14の外周部には、鋳型ノズル14を冷却する水冷ジャケット15が接触するように設けられている。なお、水冷ジャケット15の代わりに、鋳型ノズル14を冷却する別の冷却手段を用いても差し支えない。
鋳型ノズル14の下方には、鋳型ノズル14から鋳造された荒引線Wを下方向へ引き出すピンチロール機構16が設けられており、このピンチロール機構16は、荒引線Wを挟むように支持するレフトピンチロール17とライトピンチロール18を備えている。そして、レフトピンチロール17及びライトピンチロール18は、ピンチロール用モータ(図示省略)の駆動によって同期して回転するものである。なお、ピンチロール機構16の代わりに、鋳型ノズル14から鋳造された荒引線Wを下方向へ引き出す別の引き出し手段を用いても差し支えない。
次に、本発明の実施形態に係る荒引線の製造方法について説明する。
本発明の実施形態に係る荒引線の製造方法は、銅又は銅合金からなる所定の線径(本発明の実施形態にあっては、8mm)の荒引線Wを製造する方法であって、次のようなロッドセット工程、貯留工程、静置工程、鋳造工程、引き出し工程を具備している。
(ロッドセット工程)
前記原料と同じ材質からなるスターティングロッド19の先端面を研磨する。そして、スターティングロッド19を鋳型ノズル14(鋳型ノズル14のノズル孔14h)に下方向から挿入することにより、スターティングロッド19の先端面と鋳型ノズル14の上端面が同じ高さになるように、スターティングロッド19を鋳型ノズル14にセットする。また、レフトピンチロール17とライトピンチロール18にスターティングロッド19を挟むように支持させる。
(貯留工程)
前記ロッドセット工程が終了した後に、ロータリーポンプ5の駆動によってチャンバー2内の圧力を0.2Torr以下に調節する。このとき、第1供給口3及び第2供給口4はそれぞれ閉じている。そして、誘導加熱コイル13によって二重構造坩堝7を加熱して、坩堝内筒9に予め供給された前記原料を溶解することにより、溶解状態の前記原料を溶湯Hとして、第1微細孔11及び複数の第2微細孔12を通過させて、貯留室10に貯留する。
予め供給された前記原料が全て溶解した後に、ロータリーポンプ5の駆動を停止して、ガス導入系6によってチャンバー2内にアルゴンガス等の不活性ガスを導入して、チャンバー2内を不活性雰囲気に置換する。そして、第1供給口3及び第2供給口4それぞれ開く。
(静置工程)
前記貯留工程が終了した後に、誘導加熱コイル13によって二重構造坩堝7内の溶湯Hの温度を保持しつつ、二重構造坩堝7内の溶湯Hを所定の時間だけ静置する。ここで、前記所定の時間とは、本発明の実施形態にあっては、1時間である。
(鋳造工程)
前記静置工程が終了した後に、前記貯留工程において貯留室10に貯留された溶湯Hがスターティングロッド19の先端部に凝固接合した状態の下で、前記ピンチロール用モータの駆動によってレフトピンチロール17及びライトピンチロール18を同期して回転さて、スターティングロッド19を鋳型ノズル14から下方向へ引き抜く。また、水冷ジャケット15によって鋳型ノズル14を冷却しつつ、前記貯留工程において貯留室10に貯留された溶湯Hを鋳型ノズル14内に流入させることにより、鋳型ノズル14内の溶湯Hを冷却固化して、溶湯Hから前記所定の線径の荒引線Wを鋳造する。
(引き出し工程)
前記静置工程が終了した後であってスターティングロッド19を鋳型ノズル14から下方向へ引き抜いた後に、レフトピンチロール17とライトピンチロール18によって荒引線Wを挟むように支持した状態の下で、前記ピンチロール用モータの駆動によってレフトピンチロール17及びライトピンチロール18を同期して回転さて、前記鋳造工程において鋳造された荒引線Wを鋳型ノズル14から下方向へ引き出す。
ここで、前記ピンチロール用モータを間欠駆動させることにより、前記鋳造工程において鋳造された荒引線Wの引き出しと停止を交互に繰り返すことができる。なお、本発明の実施形態にあって、荒引線Wの引き出し速度は10mm/秒、一回の引き抜き時間は0.5秒、一回の停止時間は2.5秒、荒引線Wの平均引き出し速度(換言すれば、平均鋳造速度)は100/分である。
以上により、銅又は銅合金からなる前記所定の線径の荒引線Wを製造することができる。
続いて、本発明の実施形態の作用及び効果について説明する。
前記貯留工程において、溶解状態の前記原料を溶湯Hとして、第1微細孔11及び複数の第2微細孔12を通過させて、貯留室10に貯留するため、坩堝内筒9の内筒底9aをフィルタとしての機能を発揮させて、第1微細孔11及び第2微細孔12の上側部分の孔径rよりも大きな異物が貯留室10内の溶湯Hに混入することを回避できる。
更に、第1微細孔11及び第2微細孔12の中心線11c,12cはそれぞれ鉛直になっているため、異物が第1微細孔11及び第2微細孔12の上側部分の孔径rよりも小さくても、第1微細孔11又は第2微細孔12内において異物に浮力が働いて、異物が貯留室10内の溶湯Hに混入することを抑制できる。特に、第1微細孔11及び第2微細孔12の断面形状はそれぞれ下方向に向かって拡がるようにテーパ状になっており、第1微細孔11及び第2微細孔12の下側部分の孔径dが上側部分の孔径rの2倍以上になっているため、前記貯留工程が終了した後に、二重構造坩堝7内の溶湯Hを所定の時間だけ静置することにより、貯留室10内の溶湯Hに混入した異物を浮上させて、貯留室10内から坩堝内筒9内へ戻すことができ、第1微細孔11及び第2微細孔12の上側部分の孔径rよりも小さな異物が貯留室10内の溶湯Hに混入することを十分に抑制できる。
また、前記鋳造工程において、鋳型ノズル14を冷却しつつ、貯留室10に貯留された溶湯Hを鋳型ノズル14内に流入させることにより、鋳型ノズル14内の溶湯Hを冷却固化して、溶湯Hから荒引線Wを鋳造するため、荒引線Wの一連の製造工程の中から、溶湯Hを冷却固化した固形物を連続的に圧延する圧延工程を省略できる。
以上の如き、本発明の実施形態によれば、第1微細孔11及び第2微細孔12の上側部分の孔径rよりも大きな異物が貯留室10内の溶湯Hに混入することを回避でき、かつ第1微細孔11及び第2微細孔12の上側部分の孔径rよりも小さな異物が貯留室10内の溶湯Hに混入することを十分に抑制できるため、荒引線Wを前記所定の細線径まで伸線加工を行って細線(極細線を含む)を最終的に製造する際に、異物断線が生じ難くなる。
また、荒引線Wの一連の製造工程の中から前記圧延工程を省略できるため、前記原料が高強度の合金からなる場合でも、前記原料から荒引線Wを容易に製造することできる。
更に、鋳型ノズル14は坩堝外筒8の外筒底8aに対して交換可能であるため、線径の異なる種々の荒引線Wを製造することができる。
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限るものではなく、例えば、前記原料を変更することによって、銅以外の金属(例えばアルミ)又は銅合金以外の合金(例えばアルミ合金)からなる荒引線Wを製造することも可能である。
また、本発明に包含される権利範囲は、本発明の実施の形態に限定されないものである。
[実施例]
(実施例1)
銅線材Mを原料とし、本発明の実施形態に係る荒引線の製造装置1を使用して、本発明の実施形態に係る荒引線の製造方法を実施することにより、銅からなる所定の線径8mmの荒引線Wを製造した。続いて、荒引線Wを第1伸線工程用の伸線機によって径2.6mmまで、第2伸線工程用の伸線機によって径1.2mmまで、第3伸線工程用の伸線機(コードサイズ伸線機)によって径0.18mmまで、最終伸線工程用の伸線機(極細伸線機)によって0.04mmまで伸線加工を順次行うことにより、極細径0.04mmの極細線を製造する。そして、異物破断が発生するまでの最終伸線工程における極細線の製出量を調べ、その結果を下記の表1に示す。
(実施例2)
銅線材Mと銀線材M’との混合材料を原料とし、本発明の実施形態に係る荒引線の製造装置1を使用して、本発明の実施形態に係る荒引線の製造方法を実施することにより、1%銀入りの銅合金からなる所定の線径8mmの荒引線Wを製造した。続いて、実施例1と同様に、荒引線Wを0.04mmまで伸線加工を順次行うことにより、極細径0.04mmの極細線を製造する。そして、異物破断が発生するまでの最終伸線工程における極細線の製出量を調べ、その結果を下記の表1に示す。
(実施例3)
銅線材Mと錫線材M’との混合材料を原料とし、本発明の実施形態に係る荒引線の製造装置1を使用して、本発明の実施形態に係る荒引線の製造方法を実施することにより、0.7%錫入りの銅合金からなる所定の線径8mmの荒引線Wを製造した。続いて、実施例1と同様に、荒引線Wを0.04mmまで伸線加工を順次行うことにより、極細径0.04mmの極細線を製造する。そして、異物破断が発生するまでの最終伸線工程における極細線の製出量を調べ、その結果を下記の表1に示す。
(比較例1)
銅線材Mを原料とし、比較例に係る荒引線の製造装置を使用して、比較例に係る荒引線の製造方法を実施することにより、銅からなる所定の線径8mmの荒引線Wを製造した。続いて、実施例1と同様に、荒引線Wを0.04mmまで伸線加工を順次行うことにより、極細径0.04mmの極細線を製造する。そして、異物破断が発生するまでの最終伸線工程における極細線の製出量を調べ、その結果を下記の表1に示す。
ここで、比較例に係る荒引線の製造装置の構成は、二重構造坩堝7の代わりに図6に示すような通常坩堝20を用いている点において、本発明の実施形態に係る荒引線の製造装置1の構成と異なっている。また、比較例に係る荒引線の製造装置の構成は、その他の点において、本発明の実施形態に係る荒引線の製造装置1の構成と略同じである。
また、比較例に係る荒引線の製造方法の構成は、前記貯留工程の代わりに別の貯留工程を具備しかつ前記静置工程を省略している点において、本発明の実施形態に係る荒引線の製造方法の構成と異なっている。また、比較例に係る荒引線の製造方法の構成は、その他の点において、本発明の実施形態に係る荒引線の製造方法の構成と略同じである。なお、前記別の貯留工程とは、誘導加熱コイル13によって通常坩堝20を加熱して、通常坩堝20に予め供給された前記原料を溶解することにより、溶解状態の前記原料を溶湯Hとして、通常坩堝20内に貯留する工程のことである。
(比較例2)
銅線材Mと銀線材M’との混合材料を原料とし、比較例に係る荒引線の製造装置を使用して、比較例に係る荒引線の製造方法を実施することにより、1%銀入りの銅合金からなる所定の線径8mmの荒引線Wを製造した。続いて、実施例1と同様に、荒引線Wを0.04mmまで伸線加工を順次行うことにより、極細径0.04mmの極細線を製造する。そして、異物破断が発生するまでの最終伸線工程における極細線の製出量を調べ、その結果を下記の表1に示す。
(比較例3)
銅線材Mと錫線材M’との混合材料を原料とし、比較例に係る荒引線の製造装置を使用して、比較例に係る荒引線の製造方法を実施することにより、0.7%錫入りの銅合金からなる所定の線径8mmの荒引線Wを製造した。続いて、実施例1と同様に、荒引線Wを0.04mmまで伸線加工を順次行うことにより、極細径0.04mmの極細線を製造する。そして、異物破断が発生するまでの最終伸線工程における極細線の製出量を調べ、その結果を下記の表1に示す。
(まとめ)
即ち、下表1に示すように、実施例1から実施例3によれば、比較例1から比較例3に比べて、異物破断が生じ難くなって、最終伸線工程における極細線の製出量を飛躍的に増やすことができた。
Figure 2007196264
本発明の実施形態に係る荒引線の製造装置の概略的な図である。 本発明の実施形態に係る二重構造坩堝及び鋳型ノズルを示す斜視図である。 図2におけるIII-III線に沿った図である。 本発明の実施形態に係る坩堝内筒の内筒底に形成された微細孔の拡大斜視図である。 本発明の実施形態に係る荒引線の製造方法におけるロッドセット工程を説明する図である 比較例に係る通常坩堝及び鋳型ノズルを示す斜視図である。
符号の説明
W 荒引線
H 溶湯
1 荒引線の製造装置
2 チャンバー
7 二重構造坩堝
8 坩堝外筒
8a 外筒底
9 坩堝内筒
9a 内筒底
10 貯留室
11 第1微細孔
12 第2微細孔
13 誘導加熱コイル
14 鋳型ノズル
14h ノズル孔
15 水冷ジャケット
16 ピンチロール機構
19 スターティングロッド

Claims (10)

  1. 下側に外筒底を有した坩堝外筒と、該坩堝外筒の内側に配設されかつ下側に内筒底を有した坩堝内筒とを備えてなる二重構造坩堝を用い、前記坩堝内筒に供給された金属又は合金からなる原料を溶解することにより、溶解状態の前記原料を溶湯として、前記内筒底に貫通して形成された複数の微細孔を通過させて、前記外筒底と前記内筒底との間に区画された貯留室に貯留する貯留工程と、
    前記坩堝外筒の前記外筒底に前記貯留室に連通するように設けられかつ上下方向へ延びたパイプ状の鋳型ノズルを冷却しつつ、前記貯留工程において前記貯留室に貯留された前記溶湯を前記鋳型ノズル内に流入させることにより、前記鋳型ノズル内の前記溶湯を冷却固化して、前記溶湯から荒引線を鋳造する鋳造工程と、
    前記鋳造工程において鋳造された前記荒引線を前記鋳型ノズルから引き出す引き出し工程と、
    を具備したことを特徴とする荒引線の製造方法。
  2. 前記貯留工程を開始する前に、前記原料と同じ材質からなるスターティングロッドを前記鋳型ノズルに下方向から挿入することにより、前記スターティングロッドを前記鋳型ノズルにセットするロッドセット工程と、を具備し、
    前記鋳造工程は、前記スターティングロッドを前記鋳型ノズルから引き抜くと共に、前記鋳型ノズルを冷却しつつ、前記貯留工程において前記貯留室に貯留された前記溶湯を前記鋳型ノズル内に流入させることにより、前記鋳型ノズル内の前記溶湯を冷却固化して、前記溶湯から前記荒引線を鋳造することを特徴とする請求項1に記載の荒引線の製造方法。
  3. 前記貯留工程が終了した後であって前記鋳造工程を開始する前に、前記二重構造坩堝内の前記溶湯を所定の時間だけ静置する静置工程と、を具備したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の荒引線の製造方法。
  4. 前記金属は、銅若しくはアルミであって、前記合金は、銅合金若しくはアルミ合金であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の荒引線の製造方法。
  5. 下側に外筒底を有した坩堝外筒と、該坩堝外筒の内側に配設されかつ下側に内筒底を有した坩堝内筒とを備えてあって、前記外筒底と前記内筒底との間に金属又は合金からなる溶解状態の原料を溶湯として貯留する貯留室が区画され、前記内筒底に複数の微細孔が貫通して形成された二重構造坩堝と、
    前記二重構造坩堝を加熱する坩堝加熱手段と、
    前記坩堝外筒の前記外筒底に前記貯留室に連通するように設けられ、上下方向へ延びたパイプ状の鋳型ノズルと、
    前記鋳型ノズルを冷却するノズル冷却手段と、
    前記鋳型ノズルから鋳造された荒引線を引き出す引き出し手段と、を具備したことを特徴とする荒引線の製造装置。
  6. 前記微細孔の中心線が鉛直になっていることを特徴とする請求項5に記載の荒引線の製造装置。
  7. 前記微細孔の断面形状が下方向に向かって拡がるようにテーパ状になっていることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の荒引線の製造装置。
  8. 前記微細孔の下側部分の孔径が上側部分の孔径の2倍以上になっていることを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれか一項に記載の荒引線の製造装置。
  9. 前記微細孔の上側部分の孔径をrとし、前記内筒底の厚みをtとした場合に、
    0.5mm≦r≦tの関係が成立するようになっていることを特徴とする請求項5乃至請求項8のいずれか一項に記載の荒引線の製造装置。
  10. 前記鋳型ノズルが前記坩堝外筒の前記外筒底に対して交換可能になっていることを特徴とする請求項5乃至請求項9のいずれか一項に記載の荒引線の製造装置。
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