JPH11292741A - ケラチン物質処理剤 - Google Patents

ケラチン物質処理剤

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JPH11292741A
JPH11292741A JP9307198A JP9307198A JPH11292741A JP H11292741 A JPH11292741 A JP H11292741A JP 9307198 A JP9307198 A JP 9307198A JP 9307198 A JP9307198 A JP 9307198A JP H11292741 A JPH11292741 A JP H11292741A
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JP
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cysteine
hair
cystine
hydrolyzed
peptide
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JP9307198A
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Inventor
Masato Yoshioka
正人 吉岡
Sueko Omi
須恵子 大海
Hiroshi Shintani
博 新谷
Yoshie Matsukawa
愛絵 松川
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Seiwa Kasei Co Ltd
Original Assignee
Seiwa Kasei Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 毛髪などのケラチン物質の損傷を防止し、損
傷したケラチン物質を修復し、ケラチン物質の風合い、
コンディショニングなどを改善することができるケラチ
ン物質処理剤を提供する。 【解決手段】 水または水を主成分とする基剤中に、動
物、植物または微生物などの天然物由来の蛋白質を加水
分解して得られた加水分解ペプチドまたはその誘導体に
システインを導入したシステイン含量が全アミノ酸中5
〜18モル%のシステイン導入ペプチドを含有させてケ
ラチン物質処理剤を構成する。上記システイン導入ペプ
チドのケラチン物質処理剤中での含有量としては0.1
〜20重量%が好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ケラチン物質処理
剤に関し、さらに詳しくは、加水分解ペプチドまたはそ
の誘導体にシステインを導入することによってシステイ
ンに基づく特性を高めたシステイン導入ペプチドを含有
し、ケラチン物質の損傷を防止し、損傷したケラチン物
質を修復する作用を有するケラチン物質処理剤に関す
る。
【0002】
【従来の技術】ケラチン物質の一種である毛髪をパーマ
ネントウェーブ処理する場合には、還元剤を毛髪に適用
するが、その際、毛髪がしばしば損傷を受けることはよ
く知られている。すなわち、パーマネントウェーブ処理
では、還元剤を毛髪に作用させて毛髪中に存在するシス
チンのジスルフィド結合(S−S結合)を開裂させ、メ
ルカプト基(−SH基)を生成させる。続いて、臭素酸
ナトリウムまたは過酸化水素などの酸化剤により酸化し
て、ジスルフィド結合を再生させる。
【0003】その際、還元作用をより効果的に行って、
ウェーブの持続性を向上させるために、アルカリ剤、例
えばアンモニアまたはモノエタノールアミンなどを併用
して、還元剤を高いpH領域で作用させることが行わ
れ、そのために、毛髪はその成分の一部が溶離して著し
く損傷し、特に毛髪中のシスチンの一部は、続いて作用
させる酸化剤でシステイン酸などに化学変化を起こし、
再びシスチンに戻ることができなくなる。
【0004】そのため、前記のような毛髪処理工程で、
毛髪を保護することが研究されており、そのような毛髪
の保護方法として、蛋白質加水分解物(加水分解ペプチ
ド)やその誘導体を毛髪保護剤として化粧品に配合する
ことが一般的に行われているが(例えば、特開昭57−
165310号公報、特開昭59−88410号公報な
ど)、その成果は充分とはいえなかった。
【0005】すなわち、蛋白質加水分解物は、そのタン
パク起源により、例えば、加水分解コラーゲンは被膜を
形成しやすく毛髪の強度を高める作用が大きく、加水分
解シルクは毛髪上に緻密な被膜を形成して毛髪に優れた
艶を付与することができ、植物蛋白由来の加水分解小麦
タンパクや加水分解大豆タンパクは保湿性が強く毛髪に
潤い感を付与する作用が高い、といった特徴を有する
が、これらの蛋白質源は処理の対象であるケラチン物質
とは別種の蛋白質であり、特に、ケラチン物質中に多く
含まれるシスチンを含有しないかあるいは含有量が非常
に少ないため毛髪への収着力が弱く、損傷毛に対して被
膜形成により物理的な毛髪の強度回復は図れるものの、
化学的な修復は行えないという問題があった。
【0006】また、蛋白質加水分解物の中で、加水分解
ケラチンはシスチンを含有しているため、加水分解コラ
ーゲンや加水分解シルクなどに比べて毛髪への収着性が
高く、毛髪の保護作用や損傷修復作用は優れているもの
の、被膜形成能力や毛髪への艶や潤いなどの付与作用と
いう点では加水分解コラーゲン、加水分解シルク、加水
分解大豆タンパクなどに比べてやや劣り、また、シスチ
ンは含有しているものの、システインを含有していない
ため、還元性に乏しく、酸化還元反応を利用した毛髪へ
の収着による損傷毛の修復作用は必ずしも満足できるも
のとはいえなかった。
【0007】そのため、本発明者らは、特開平3−77
810号公報において、ケラチン加水分解物を電解還元
することにより、シスチンをシステインに還元した電解
還元ケラチンを配合したケラチン物質処理剤を提案し、
このケラチン物質処理剤は毛髪の保護、損傷修復作用が
優れ、しかも、毛髪のセット性を有することを開示し
た。
【0008】しかしながら、ケラチンと同程度あるいは
それ以上のシスチンを含有する蛋白質は見当たらず、上
記のようにシスチンを還元してシステインとすることに
よりシステインを持ち得るようにしたペプチドとして利
用できる蛋白質はケラチン以外にはないのが現状であ
り、各種蛋白質加水分解物またはその誘導体の有する特
性が発揮でき、ケラチン物質への収着性が高められた蛋
白質加水分解物またはその誘導体の開発が望まれてい
た。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記のよう
な従来のケラチン物質処理剤の問題点を解消し、ケラチ
ン物質の損傷を防止し、損傷したケラチン物質を修復
し、ケラチン物質に良好な艶、潤い、なめらかさ(滑ら
かさ)、櫛通り性などを付与できるケラチン物質処理剤
を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記事情
に鑑み鋭意研究を重ねた結果、水または水を主成分とす
る基剤中に、動物、植物または微生物などの天然物由来
の蛋白質を加水分解して得られた加水分解ペプチドまた
はその誘導体にシステインを導入したシステインを全ア
ミノ酸中5〜18モル%含むシステイン導入ペプチドを
ケラチン物質処理剤中に含有させるときは、還元剤を使
用する毛髪などのケラチン物質の処理において、毛髪を
保護して毛髪が損傷を受けるのを防止し、また、損傷し
た毛髪を修復するなど、ケラチン物質の損傷防止や損傷
したケラチン物質の修復を行うことができ、さらにケラ
チン物質のコンディショニングや風合いの改善などを行
うことができることを見出し、本発明を完成するにいた
った。
【0011】すなわち、シスチンやシステインを含まな
いかあるいはそれらの含有量の少ない加水分解ペプチド
(蛋白質加水分解物)またはその誘導体にシステインを
導入したシステイン導入ペプチドを含有するケラチン物
質処理剤を、ケラチン物質、例えば毛髪に適用すると、
システイン導入ペプチドが毛髪に収着して毛髪を保護
し、毛髪の損傷を防止し、損傷した毛髪を修復し、か
つ、毛髪に、それぞれの加水分解ペプチドまたはその誘
導体がその出発原料の蛋白質に基づいて有する、艶、潤
い、なめらかさ、良好な櫛通り性などの付与作用を発揮
することができるのである。
【0012】例えば、本発明のシステイン導入ペプチド
を含有するケラチン物質処理剤を、パーマネントウェー
ブ処理時の毛髪に適用すると、パーマネントウェーブ用
第1剤中のチオグリコール酸などの還元剤による還元に
よってジスルフィド結合が開裂してメルカプト基を生成
した毛髪のケラチンと、ケラチン物質処理剤中のシステ
イン導入ペプチドとが酸化剤によって酸化し、ジスルフ
ィド結合を再生して架橋するので、アルカリ剤の使用や
還元剤の還元作用による毛髪中の成分の溶離によって損
傷した毛髪を修復することができる。さらに、ケラチン
物質処理剤中のシステイン導入ペプチドをパーマネント
ウェーブ用第2剤中の酸化剤が酸化し、ジスルフィド結
合を再生して毛髪の損傷を修復すると共にパーマネント
ウェーブ用第1剤中の還元剤により還元されてメルカプ
ト基を生成した毛髪のケラチンが、第2剤中の酸化剤に
よって過剰酸化を受けるのを防止し、システイン酸など
の生成を抑制して毛髪の損傷を防止する。
【0013】また、システイン導入ペプチドは、還元に
よってメルカプト基を有するようになった毛髪のケラチ
ン間に介在した状態でジスルフィド結合を再生して架橋
することにより、例えば、枝毛の防止または枝毛の修復
をする作用も有している。
【0014】さらに、システイン導入ペプチドは、その
メルカプト基が空気中の酸素または酸化剤による酸化を
受け、ジスルフィド結合を再生して架橋し高分子化して
いくので、本発明のケラチン物質処理剤を毛髪などのケ
ラチン物質に適用したときに、システイン導入ペプチド
の分子量が大きい場合、ケラチン物質上に水不溶性の被
膜を形成するので、例えば、毛髪をカールした状態で水
に不溶性の被膜を形成することによってそのカールした
状態を長時間保持するなど、毛髪の風合い、感触などを
改善することができる。
【0015】もとより、通常のケラチン加水分解物と同
様にシステイン導入ペプチドの分子中にもアミノ基およ
びカルボキシル基を有するので、それらがそれぞれ処理
対象物であるケラチン物質中のアミノ基およびカルボキ
シル基と結合してケラチン物質に強固に結合し、ケラチ
ン物質が毛髪である場合には、毛髪に艶、柔軟性、潤い
を付与するなど、毛髪に対するコンディショニング作用
を有している。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明のケラチン物質処理剤が、
その処理対象とするケラチン物質としては、例えば、人
間の毛髪、犬、猫などのペット用動物の動物毛、羊毛、
カシミヤ毛、アンゴラ毛、モヘア毛などの動物毛、羊
毛、カシミヤ毛、アンゴラ毛、モヘア毛などからなる繊
維材料や繊維製品、例えば、繊維、フィラメント、糸、
織物、編み物、不織布などが挙げられ、さらには毛皮製
品なども処理対象となるケラチン物質中に含まれる。
【0017】例えば、ケラチン物質が毛髪である場合に
は、本発明のケラチン物質処理剤は、パーマネントウェ
ーブ処理時の毛髪の損傷防止や損傷した毛髪の修復に使
用するほか、毛髪のセット、染毛、脱色、洗浄、ブラッ
シング、櫛通しおよびヘアドライヤーなどによる熱乾燥
時などの毛髪の損傷防止、損傷した毛髪の修復、コンデ
ィショニングならびに風合いの改善などに使用すること
ができる。
【0018】また、ケラチン物質が犬や猫などのペット
用動物の動物毛である場合には、本発明のケラチン物質
処理剤は、人間の毛髪の場合とほぼ同様の目的で使用す
ることができる。
【0019】そして、ケラチン物質が羊毛、カシミヤ
毛、アンゴラ毛、モヘア毛などの動物毛に由来するもの
では、本発明のケラチン物質処理剤は、その風合いや感
触の改善、さらには染色時や洗浄処理時の損傷防止など
の目的で使用することができる。
【0020】本発明において、ケラチン物質処理剤に用
いるシステイン導入ペプチドは、例えば、動物、植物ま
たは微生物などの天然物由来の蛋白質を加水分解して得
られた加水分解ペプチドまたはその誘導体にN,N’−
ジカルボキシ無水シスチンをアルカリの存在下で反応さ
せ、その後、酸を用いて脱炭酸して得られたシスチン導
入ペプチドを還元することによって得られる。この方法
による場合は、脱炭酸することに基づき、N,N’−ジ
カルボキシ無水シスチンと加水分解ペプチドまたはその
誘導体との反応液中に保護基が残らないので、その後の
精製が容易である。
【0021】また、本発明において、ケラチン物質処理
剤に用いるシステイン導入ペプチドは、動物、植物また
は微生物などの天然物由来の蛋白質を加水分解して得ら
れた加水分解ペプチドまたはその誘導体にN−カルボキ
シ無水システインをアルカリの存在下で反応させ、その
後、酸を用いて脱炭酸することによっても得ることがで
きる。ただし、この方法による場合は、N−カルボキシ
無水システインの合成に先立ち、システインの有するメ
ルカプト基を保護する必要があり、また、加水分解ペプ
チドまたはその誘導体とS−保護−N−カルボキシ無水
システインとの反応後に保護基を外す必要があるなど、
上記シスチン導入ペプチドの還元を経る方法に比べてわ
ずらわしさがある。
【0022】本発明で用いる加水分解ペプチドまたはそ
の誘導体のタンパク(蛋白)源としては、天然物由来の
蛋白質、例えば、コラーゲン(その変成物であるゼラチ
ンも含む)、ケラチン、絹フィブロイン(シルク)、セ
リシン、カゼイン、コンキオリン、エラスチン、鶏など
の卵の卵黄タンパク、卵白タンパクなどの動物由来のも
のや、大豆、小麦、ビール粕、トウモロコシ、米(米
糠)、イモ類のタンパクなどの植物由来のもの、さらに
は、サッカロミセス属、カンディダ属、エンドミコプシ
ス属の酵母菌や、いわゆるビール酵母、清酒酵母といわ
れる酵母菌より分離した酵母タンパク、キノコ類(担子
菌)やクロレラより分離したタンパクなどの微生物由来
のものなどが挙げられる。
【0023】本発明で用いる加水分解ペプチドは、上記
蛋白質を酸、アルカリ、酵素またはそれらの併用により
加水分解することによって得られ、その際、使用する
酸、アルカリ、酵素の量や、反応温度、反応時間などを
適宜選択することにより、得られる加水分解ペプチドの
アミノ酸重合度を種々に変え得るが、ケラチン物質への
収着性や造膜性を考慮すると、数平均分子量が100〜
20000のものが好ましく、特に150〜10000
のものが好ましく、200〜5000のものがさらに好
ましい。
【0024】すなわち、加水分解ペプチドの数平均分子
量が上記範囲より大きくなるとケラチン物質への収着性
や浸透性が低下するおそれがあり、また、数平均分子量
が上記範囲より小さくなるとケラチン物質への収着性や
浸透性は優れているものの造膜作用が低下し、ケラチン
物質の保護作用が減少するおそれがある。
【0025】蛋白質の酸加水分解に際しては、例えば、
塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、臭化水素酸などの無機酸
や、酢酸、蟻酸などの有機酸が用いられ、蛋白質のアル
カリ加水分解に際しては、例えば、水酸化ナトリウム、
水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化バリウム、炭
酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウムなどの無機
アルカリが用いられる。そして、蛋白質の酵素加水分解
に際しては、ペプシン、プロクターゼA、プロクターゼ
Bなどの酸性蛋白質分解酵素、パパイン、ブロメライ
ン、サーモライシン、トリプシン、プロナーゼ、キモト
リプシンなどの中性ないしアルカリ性蛋白質分解酵素が
使用される。また、スブチリシン、スタフィロコッカス
プロテアーゼなどの菌産製の中性ないしアルカリ性蛋白
質分解酵素も使用できる。
【0026】また、加水分解ペプチドの誘導体として
は、上記加水分解ペプチドのカルボキシル基におけるア
ルコールとのエステル、例えば、メチルエステル、エチ
ルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステ
ル、ラウリルエステル、セチルエステル、2−エチルヘ
キシルエステル、2−ヘキシルデシルエステル、ステア
リルエステルなどの炭素数1〜20の炭化水素アルコー
ルとのエステルなどが挙げられる。
【0027】システイン導入ペプチドを得るには、前記
のように、システインをS−保護−N−カルボキシ無水
システインとしてペプチドに付加させてシステイン導入
ペプチドを得る方法と、シスチンをN,N’−ジカルボ
キシ無水シスチンとしてペプチドに付加させ、シスチン
導入ペプチドにし、その後、ジスルフィド結合を還元に
より切断してシステイン導入ペプチドにする方法とがあ
るが、後者のシスチン導入ペプチドの還元を経る方法の
方が、保護基の導入や脱炭酸後の保護基の除去などのわ
ずらわしさがなく、有用性が高いので、主として、後者
のシスチン導入ペプチドの還元を経る方法について説明
する。
【0028】後者の方法のごとく、シスチン導入ペプチ
ドを得るには、まず、シスチンをN,N’−ジカルボキ
シ無水シスチンに変換するが、このN,N’−ジカルボ
キシ無水シスチンを得る方法としては、公知の方法を採
用することができる。
【0029】例えば、まず、シスチンのアルカリ水溶液
にクロル炭酸ベンジル、クロル炭酸メチル、クロル炭酸
アリルなどのクロル炭酸エステルをアルカリ条件下で滴
下し、下記の反応式〔I〕に示すようにシスチンのアミ
ノ基を保護する。
【0030】
【化1】
【0031】(式中、Rはベンジル基、アルキル基また
はアリル基)
【0032】ついで、反応液を塩酸、硫酸などの鉱酸で
酸性にした後、酢酸エチルなどの有機溶媒で反応生成物
を抽出し、食塩水および水で有機層を洗浄した後、有機
溶媒を減圧濃縮して除去することにより、アミノ基が保
護されたシスチンが得られる。
【0033】つぎに、上記で得られたアミノ基が保護さ
れたシスチンを酢酸エチルなどの溶解可能な有機溶媒に
溶解し、下記の反応式〔II〕に示すように、窒素ガス雰
囲気下で、塩化チオニル(塩化チオニルに変えて、三塩
化リン、五塩化リンなどでもよい)などを反応させてカ
ルボキシル基をカルボニルクロライドにし、ついで減圧
下80℃以上で加熱縮合させると、N,N’−ジカルボ
キシ無水シスチンが得られる。
【0034】
【化2】
【0035】また、シスチンにホスゲン、ホスゲンダイ
マー、ホスゲントリマーなどを直接反応させて、N,
N’−ジカルボキシ無水シスチンを合成することもでき
る。
【0036】加水分解ペプチドまたはその誘導体と上記
のようにして得られたN,N’−ジカルボキシ無水シス
チンとの反応は、下記の反応式〔III 〕に示すように進
行する。
【0037】
【化3】
【0038】(式中、R’は種々のアミノ酸側鎖を示
し、nはアミノ酸の重合度を示す)
【0039】まず、加水分解ペプチドまたはその誘導体
の水溶液を水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ剤で
pHを10.0〜10.5程度に調整し、その中に酢酸
エチルなどの溶媒に溶解したN,N’−ジカルボキシ無
水シスチンを氷冷下で滴下して反応させるが、同時に水
酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ剤も滴下してpH
を10.0〜10.5に保つ。
【0040】N,N’−ジカルボキシ無水シスチンの滴
下終了後、氷冷下で2〜5時間攪拌を続けて反応を完結
させる。つぎに反応液にn−ヘキサンなどの水と相溶し
ない溶媒を添加して洗浄し、未反応のN,N’−ジカル
ボキシ無水シスチンを有機層に移して除去した後、水層
を硫酸、塩酸などでpH3〜4に調整して脱炭酸するこ
とによって、シスチン導入ペプチドが得られる。このシ
スチン導入ペプチドでは、式〔III 〕に示すように加水
分解ペプチドまたはその誘導体のアミノ基とシスチンの
カルボキシル基とがアミド結合することにより、加水分
解ペプチドまたはその誘導体にシスチンが導入されてい
る。
【0041】上記のようにして得られたシスチン導入ペ
プチドからシステイン導入ペプチドを得るには、反応式
〔IV〕に示すように、シスチン導入ペプチドを還元して
ジスフィド結合を還元切断してメルカプト基にすること
による。
【0042】
【化4】
【0043】還元は一般的には還元剤を用いて行われる
が、電解装置を用いた電解還元を利用することもでき
る。
【0044】還元剤としては、例えば、2−メルカプト
エタノール、チオグリコール酸、チオグリセロール、水
素化ホウ素ナトリウム、システインなどが挙げられる。
また、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムなどを
用いて還元することもできるが、その際には、シスチン
はシステインとS−スルホシステインとになるので、得
られるシステイン導入ペプチドは前記の還元剤の使用や
電解還元処理による場合の半分になる。
【0045】シスチン導入ペプチドの還元は、シスチン
導入ペプチドを水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなど
のアルカリ剤の添加によりpH7〜11のアルカリ域に
調整した還元剤の水溶液に入れ(あるいはシスチン導入
ペプチド水溶液をpH7〜11に調整し、その中に還元
剤を入れてもよい)、好ましくは窒素などの不活性ガス
雰囲気下で、0〜60℃の温度で1〜36時間攪拌する
ことによって、シスチン導入ペプチド中のジスルフィド
結合を還元切断してメルカプト基を生成させることによ
りシステイン導入ペプチドが得られる。
【0046】電解還元により還元を行う場合は、例え
ば、湯浅アイオニクス(株)製のMARK−IL2室流
動型電解装置などの電解還元装置が用いられる。
【0047】電解還元においては、還元は陰極で生じ、
酸化は陽極で生じる。したがって、本発明における還元
操作では、陰極槽にシスチン導入ペプチドを導入し、陽
極槽には電解質(例えば濃度3%程度の硫酸)を導入
し、両者の間をイオン交換膜などで隔離して電解還元が
行われる。
【0048】このようにして得られたシステイン導入ペ
プチドでは、式〔IV〕に示すように加水分解ペプチドま
たはその誘導体のアミノ基とシステインのカルボキシル
基とのアミド結合により、加水分解ペプチドまたはその
誘導体にシステインが導入されている。
【0049】システイン導入ペプチドは、加水分解ペプ
チドまたはその誘導体にN−カルボキシ無水システイン
を反応させることによっても得ることができるが、その
際には、N−カルボキシ無水システインを調製する前
に、システインのメルカプト基(−SH基)をベンジル
エステルなどで保護しておく必要があり、ペプチドとの
反応後にこの保護基を外し、その後に反応液より外した
保護基を溶媒抽出などによって除去する必要があり、精
製が煩雑になるため、前記のシスチン導入ペプチドの還
元を経てシステイン導入ペプチドを得る方法の方が有用
性が高く、優れている。
【0050】得られたシステイン導入ペプチド溶液は使
用目的にあったpHに調整し、そのままあるいは粉末化
してケラチン物質処理剤への配合剤として使用に供さ
れ、また、必要に応じて、イオン交換樹脂、透析膜、電
気透析、ゲル濾過、限外濾過などによって精製した後、
液体のままあるいは粉末化して使用に供される。
【0051】本発明のケラチン物質処理剤においては、
システイン導入ペプチドがケラチン物質中のシスチンを
還元し、続いて起こる酸化によってジスルフィド結合を
形成することによりシステイン導入ペプチドとケラチン
物質とが結合するということに特徴があるので、本発明
で用いるシステイン導入ペプチドは、全アミノ酸中のシ
ステイン量が5〜18モル%のものが好ましい。これ
は、システイン量が全アミノ酸中の5モル%未満では、
システイン量、つまりメルカプト基が少なすぎて、シス
テイン導入ペプチドとしての特有の作用を発揮すること
ができないからであり、また、システイン量が18モル
%を超えると、水溶性が著しく低下して取り扱いが困難
になるからである。
【0052】また、システイン導入ペプチドをケラチン
物質処理剤に含有させるにあたっては、蛋白源の異なる
システイン導入ペプチドを2種以上用いてもよい。そし
て、システイン導入ペプチドのケラチン物質処理剤中で
の含有量(ケラチン物質処理剤中への配合量)として
は、0.1〜20重量%、特に1〜15重量%が好まし
い。
【0053】すなわち、システイン導入ペプチドのケラ
チン物質処理剤中での含有量が上記範囲より少ない場合
には、ケラチン物質を保護して損傷を防止したり、ケラ
チン物質に艶、潤い、なめらかさなどを付与するという
ペプチド部分に基づく特性を充分に発揮させることがで
きなくなるおそれがあり、また、システイン導入ペプチ
ドのケラチン物質処理剤中での含有量が上記範囲より多
くなっても、含有量の増加に見合う効果の増加が認めら
れない上に、システイン導入ペプチドの毛髪への過剰吸
着によって毛髪がベトツクようになるおそれがある。
【0054】本発明のケラチン物質処理剤は、上記シス
テイン導入ペプチドを水または水を主成分とする基剤に
溶解し、必要に応じて、各種界面活性剤、乳化剤、防腐
剤、香料、着色剤などを適宜添加して使用に供される
が、保存中にシステイン導入ペプチドが酸化されるのを
防止するため還元剤を少量添加しておくのが好ましい。
【0055】添加する還元剤としては、例えば、2−メ
ルカプトエタノール、チオグリコール酸、亜硫酸ナトリ
ウム、亜硫酸水素ナトリウムなどが挙げられ、添加量は
配合されるシステイン導入ペプチド濃度により異なる
が、0.01〜0.3モル/l程度が好ましい。そし
て、上記水を主成分とする基剤とは、水にエタノール
(エチルアルコール)、エチレングリコール、プロピレ
ングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリ
ンなどのアルコール類または多価アルコール類をシステ
イン導入ペプチドの溶解を阻害しない範囲で加えたもの
をいい、通常、アルコール類または多価アルコール類の
量は基剤中50重量%以下であることが好ましい。
【0056】本発明のケラチン物質処理剤は、システイ
ン導入ペプチドを必須成分とし、好ましくは還元剤を添
加して調製されるが、本発明の効果を損なわない限りに
おいて他の成分を含有していてもよい。
【0057】そのような成分としては、例えば、ラウリ
ル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリ
ル硫酸トリエタノールアミンなどのアルキル硫酸塩、ポ
リオキシエチレン(2EO)ラウリルエーテル硫酸トリ
エタノールアミン(なお、EOはエチレンオキサイド
で、EOの前の数値はエチレンオキサイドの付加モル数
を示す)、ポリオキシエチレン(3EO)アルキル(炭
素数11〜15のいずれかまたは2種以上の混合物)エ
ーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキ
ルエーテル硫酸塩、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリ
ウム、ラウリルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミ
ンなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエ
チレン(3EO)トリデシルエーテル酢酸ナトリウムな
どのポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ヤシ
油脂肪酸サルコシンナトリウム、ラウロイルメチル−β
−アラニンナトリウム、ラウロイル−L−グルタミン酸
ナトリウム、ヤシ油脂肪酸−L−グルタミン酸ナトリウ
ム、ラウロイルメチルタウリンナトリウムなどのN−ア
シルアミノ酸塩、エーテル硫酸アルカンスルホン酸ナト
リウム、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム、
オレイン酸アミドスルホコハク酸二ナトリウム、スルホ
コハク酸ラウリル二ナトリウム、ポリオキシエチレンア
ルキル(炭素数12〜15)エーテルリン酸(8〜10
EO)、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナト
リウム、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル二
ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン
酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、2−アルキ
ル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミ
ダゾリニウムベタイン、ウンデシル−N−ヒドロキシエ
チル−N−カルボキシメチルイミダゾリニウムベタイ
ン、ステアリルジヒドロキシエチルベタイン、ステアリ
ルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプ
ロピルベタイン、ヤシ油アルキル−N−カルボキシエチ
ル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナ
トリウム、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−アルギニンエ
チル・DL−ピロリドンカルボン酸塩などの両性界面活
性剤、ポリオキシエチレンアルキル(炭素数12〜1
4)エーテル(7EO)、ポリオキシエチレンオクチル
フェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテ
ル、ポリオキシエチレンオレイン酸グリセリル、ポリオ
キシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレン
セチルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトール・ラ
ノリン(40EO)、ポリオキシエチレンノニルフェニ
ルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン
セチルエーテル、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオ
キシエチレンラノリンアルコールなどのノニオン性界面
活性剤、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化
セチルトリメチルアンモニウム、塩化ポリオキシプロピ
レンメチルジエチルアンモニウム、塩化ミリスチルジメ
チルベンジルアンモニウム、塩化セトステアリルトリメ
チルアンモニウム、臭化ベヘニルトリメチルアンモニウ
ム、ヨウ化セチルトリメチルアンモニウム、塩化オレイ
ルベンジルジメチルアンモニウム、塩化オレイルビス
〔ポリオキシエチレン(15EO)〕メチルアンモニウ
ム、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、塩化ミンク油
脂肪酸アミドプロピルジメチルヒドロキシエチルアンモ
ニウム、アルキルピリジニウム塩、塩化−γ−グルコン
アミドプロピルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム
などのカチオン性界面活性剤、カチオン化セルロース、
カチオン化ヒドロキシエチルセルロース、ポリ(塩化ジ
アリルジメチルアンモニウム)、ポリビニルピロリド
ン、ポリエチレンイミンなどのカチオン性ポリマー、両
性ポリマー、アニオン性ポリマーなどの合成ポリマー、
イソステアリン酸ジエタノールアミド、ウンデシレン酸
モノエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミ
ド、牛脂脂肪酸モノエタノールアミド、ステアリン酸ジ
エタノールアミド、ステアリン酸ジエチルアミノエチル
アミド、ヤシ油脂肪酸エタノールアミド、ラウリン酸イ
ソプロパノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミ
ド、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキ
シビニルポリマー、カラギーナン、キサンタンガムなど
の増粘剤、ワックス、パラフィン、脂肪酸エステル、グ
リセライド、レシチン、スクワラン、アボガドオイルな
どの動植物油などの油脂類、動植物抽出物、ポリサッカ
ライドまたはその誘導体、鎖状または環状メチルポリシ
ロキサン、メチルフェニルポリシロサン、ジメチルポリ
シロキサンポリエチレングリコール共重合体、ジメチル
ポリシロキサンポリプロピレン共重合体、アミノ変性シ
リコーンオイル、第4級アンモニウム変性シリコーンオ
イルなどのシリコーンオイル、プロピレングリコール、
1,3−ブチレングリコール、エチレングリコール、グ
リセリン、ポリエチレングリコールなどの湿潤剤、エタ
ノール、メタノール、プロピルアルコール、イソプロピ
ルアルコールなどの低級アルコール類、L−アスパラギ
ン酸、L−アスパラギン酸ナトリウム、DL−アラニ
ン、L−アルギニン、グリシン、L−グルタミン酸、L
−スレオニンなどのアミノ酸などが挙げられる。
【0058】また、本発明のケラチン物質処理剤には、
必須成分のシステイン量がアミノ酸中5〜18モル%の
システイン導入ペプチド以外の加水分解ペプチド(蛋白
質加水分解物)やその誘導体などを含有させてもよい。
【0059】そのような加水分解ペプチドとしては、例
えば、コラーゲン、ケラチン、シルク、セリシン、カゼ
イン、エラスチン、コンキオリン、大豆タンパク、小麦
タンパク、微生物由来タンパク、卵白、卵黄などの卵蛋
白、糖、リン酸、脂肪などを含んだ複合蛋白質を酸、ア
ルカリ、酵素またはそれらの併用により加水分解するこ
とによって得られたものが挙げられる。また、加水分解
ペプチドの誘導体としては、上記加水分解ペプチドのN
−アシル化誘導体またはその塩、第4級アンモニウム誘
導体、シリル化誘導体、ペプチドエステルなどが挙げら
れる。
【0060】さらに、本発明のケラチン物質処理剤に
は、上記成分以外にも、香料、防腐剤、着色料、有機
酸、無機酸、尿素などの蛋白質変性剤、エデト酸二ナト
リウムなどのキレート剤などを含有させることもでき
る。
【0061】
【発明の効果】本発明のケラチン物質処理剤は、ケラチ
ン物質を保護し、損傷したケラチン物質を修復させるこ
とができる。特に、毛髪に対して、本発明のケラチン物
質処理剤は、パーマネントウェーブ処理や染毛処理とい
った化学的処理による毛髪の損傷を防止し、損傷した毛
髪を修復し、しかも毛髪に艶、潤い、なめらかさ、良好
な櫛通り性などを付与する作用を有している。
【0062】また、ケラチン繊維に対して、本発明のケ
ラチン物質処理剤は、ケラチン物質を損傷から保護する
とともに、ケラチン物質に良好な艶、保湿感、なめらか
さ、ボリューム感、弾力性などを付与し、また、染色時
の均染効果などを向上させる作用を有している。
【0063】
【実施例】つぎに、実施例をあげて本発明をより具体的
に説明する。ただし、本発明はそれらの実施例のみに限
定されるものではない。なお、以下の実施例などにおい
て、溶液や分散液などの濃度を示す%は特にその単位を
付記しないかぎり重量%である。また、実施例に先立
ち、実施例で使用するシステイン導入ペプチドの製造例
および該システイン導入ペプチドの製造にあたって使用
するN,N’−ジカルボキシ無水シスチンの製造例を参
考例として記す。また、実施例などで実施する毛髪の引
張り強度試験および毛髪中のシステイン酸含量の測定方
法についても実施例に先立って説明する。
【0064】参考例1(N,N’−ジカルボキシ無水シ
スチンの製造例1) シスチン18gを150mlの1N水酸化ナトリウム水
溶液に溶解し、氷冷下で攪拌しながらクロル炭酸ベンジ
ル38.3gを30分かけて滴下した。その間、水酸化
ナトリウム水溶液を添加して反応液のpHが9〜10に
なるように保った。クロル炭酸ベンジルの滴下終了後、
室温で2時間攪拌を続け、反応を完結させた。
【0065】反応終了後、希塩酸で反応液のpHを1に
し、酢酸エチル300mlを加えて反応生成物を抽出し
た。有機層は2%食塩水150mlで2回洗浄し、さら
に75mlの水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウム30
gを加えて有機層を乾燥した。濾過により無水硫酸ナト
リウムを除去した後、濾液を減圧濃縮乾固し、残留物を
クロロホルムにより再結晶して30gのN,N’−ジベ
ンジルオキシカルボニルシスチンを得た。
【0066】つぎに、このN,N’−ジベンジルオキシ
カルボニルシスチンを267mlのベンゼン−ジオキサ
ン混合液(体積比=250:17)に溶解し、窒素ガス
雰囲気下で攪拌し、その中に17.2mlの塩化チオニ
ルを1時間かけて滴下した。滴下終了後、反応液の温度
を55℃まで上昇させ、3時間攪拌を続けて反応を完結
させた。
【0067】反応終了後、減圧下で反応液の温度を80
〜85℃に保ち、2時間かけて加熱縮合させた後、反応
液を20mlのn−ヘキサンで5回洗浄し、水層を減圧
濃縮して19.3gのN,N’−ジカルボキシ無水シス
チンを得た。
【0068】参考例2(N,N’−ジカルボキシ無水シ
スチンの製造例2) シスチン12gを100mlの1N水酸化ナトリウム水
溶液に溶解し、氷冷下で攪拌しながらクロル炭酸メチル
14.1gを30分かけて滴下した。その間、水酸化ナ
トリウム水溶液を添加して反応液のpHが9〜10にな
るように保った。クロル炭酸メチルの滴下終了後、室温
で2時間攪拌を続け、反応を完結させた。
【0069】反応終了後、希塩酸で反応液のpHを1に
し、酢酸エチル200mlを加えて反応生成物を抽出し
た。有機層は2%食塩水100mlで2回洗浄し、さら
に100mlの水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウム2
0gを加えて有機層を乾燥した。濾過により無水硫酸ナ
トリウムを除去した後、濾液を減圧濃縮乾固し、残留物
をn−ヘキサンで洗浄し、減圧乾燥して10gのN,
N’−ジメトキシカルボニルシスチンを得た。
【0070】つぎに、このN,N’−ジメトキシカルボ
ニルシスチンを30mlの酢酸エチルに溶解し、窒素ガ
ス雰囲気下で攪拌し、その中に8.07mlの塩化チオ
ニルを1時間かけて滴下した。滴下終了後、反応液の温
度を55℃まで上昇させ、4時間攪拌を続けて反応を完
結させた。
【0071】反応終了後、減圧下で反応液の温度を80
〜85℃に保ち、2時間かけて加熱縮合させた後、反応
液を20mlのn−ヘキサンで5回洗浄し、水層を減圧
濃縮して7.9gのN,N’−ジカルボキシ無水シスチ
ンを得た。
【0072】製造例1(システイン導入加水分解コラー
ゲンの製造例) 数平均分子量450の加水分解コラーゲンの30%水溶
液100g(アミノ態窒素の測定によって得られた化学
量論的モル数として66.7ミリモル)を水酸化ナトリ
ウム水溶液でpHを10.2に調整し、この溶液に、氷
冷下、上記参考例1で製造したN,N’−ジカルボキシ
無水シスチン5.8g(20ミリモル、加水分解コラー
ゲンに対して0.6当量)を80mlの酢酸エチルに溶
解した溶液を添加し攪拌して混合し、3時間攪拌を続け
て反応させた。その間、水酸化ナトリウム水溶液を添加
して水溶液のpHが10.0〜10.5になるように保
った。
【0073】反応終了後、反応物を300mlのn−ヘ
キサンで3回洗浄して未反応物を除去した後、水層に濃
硫酸を添加してpHを4に調整して減圧下で脱炭酸し、
シスチン導入加水分解コラーゲンの水溶液を得た。
【0074】ついで、このシスチン導入加水分解コラー
ゲンの水溶液を水酸化ナトリウム水溶液でpHを9に調
整し、31.2gの2−メルカプトエタノール(0.4
モル)を加えて50℃で20時間攪拌を続けて還元し
た。還元終了後、この溶液を希塩酸を用いてpH6.5
にし、濃度を調整して、システイン導入加水分解コラー
ゲンの30%水溶液を149g得た。
【0075】上記のようにして得られたシステイン導入
加水分解コラーゲンの一部をモノヨード酢酸を用いてシ
ステイン残基のSH基をアルキル化した後、6N塩酸で
20時間完全加水分解し、アミノ酸オートアナラーザー
でアミノ酸分析をしたところ、システインはS−カルボ
キシメチルシステインとして9.4モル%、シスチンは
ハーフシスチンとして4.4モル%が検出された。ま
た、上記のようにして得られたシステイン導入加水分解
コラーゲンの一部を、塩酸による加水分解を行わずにア
ミノ酸分析をしたところ、システインやシスチンは検出
されず、上記で検出されたシステインやシスチンはすべ
て加水分解コラーゲンに結合していることが明らかにさ
れた。
【0076】原料の加水分解コラーゲンにはシスチンや
システインは含まれていないため、このシスチンやシス
テインはすべて上記のシスチン導入法やシステイン導入
法により加水分解コラーゲンに導入されたものであるこ
とが明らかであり、導入されたシスチンのうち約68%
がシステインに還元され、システイン導入加水分解コラ
ーゲンとなっていた。
【0077】製造例2(システイン導入加水分解小麦タ
ンパクの製造例) 数平均分子量450の加水分解コラーゲンに代えて数平
均分子量700の加水分解小麦タンパクの25%水溶液
100g(アミノ態窒素の測定によって得られた化学量
論的モル数として35.7ミリモル)と前記参考例1で
製造したN,N’−ジカルボキシ無水シスチン4.2g
(14.3ミリモル、加水分解小麦タンパクに対して
0.8当量)を80mlの酢酸エチルに溶解した溶液を
用いたほかは、製造例1と同様にして、シスチン導入加
水分解小麦タンパクの水溶液を得た。
【0078】ついで、このシスチン導入加水分解小麦タ
ンパクの水溶液を水酸化ナトリウム水溶液でpHを9に
調整し、26gのチオグリコール酸(0.28モル)を
加えて50℃で12時間攪拌を続けて還元した。還元終
了後、この溶液を希塩酸を用いてpH6.5にし、濃度
を調整して、システイン導入加水分解小麦タンパクの2
5%水溶液を120g得た。
【0079】上記のようにして得られたシステイン導入
加水分解小麦タンパクの一部をモノヨード酢酸を用いて
システイン残基のSH基をアルキル化した後、6N塩酸
で20時間完全加水分解し、アミノ酸オートアナラーザ
ーでアミノ酸分析をしたところ、システインはS−カル
ボキシメチルシステインとして8.5モル%、シスチン
はハーフシスチンとして2.6モル%が検出された。ま
た、上記のようにして得られたシステイン導入加水分解
小麦タンパクの一部を、塩酸による加水分解を行わずに
アミノ酸分析をしたところ、システインやシスチンは検
出されず、上記で検出されたシステインやシスチンはす
べて加水分解小麦タンパクに結合していることが明らか
にされた。
【0080】原料の加水分解小麦タンパクにはシステイ
ンは含まれず、シスチンはハーフシスチンとして0.4
モル%含まれていたので、検出された8.5モル%のシ
ステインは上記のシステイン導入法で加水分解小麦タン
パクに導入されたものであり、2.6モル%のハーフシ
スチンのうち2.2モル%は上記のシスチン導入法で加
水分解小麦タンパクに導入されたものであることが明ら
かであり、導入されたシスチンおよび原料中に含まれて
いたシスチンのうち約76%がシステインに還元され、
システイン導入加水分解小麦タンパクになっていた。
【0081】製造例3(システイン導入加水分解シルク
の製造例) 数平均分子量450の加水分解コラーゲンに代えて数平
均分子量350の加水分解シルクの30%水溶液100
g(アミノ態窒素の測定によって得られた化学量論的モ
ル数として85.7ミリモル)と前記参考例1で製造し
たN,N’−ジカルボキシ無水シスチン6.2g(2
1.4ミリモル、加水分解シルクに対して0.5当量)
を100mlの酢酸エチルに溶解した溶液を用いたほか
は、製造例1と同様にして、シスチン導入加水分解シル
クの水溶液を得た。
【0082】ついで、このシスチン導入加水分解シルク
の水溶液に2−メルカプトエタノール33g(0.43
モル)を加え、水酸化ナトリウム水溶液でpHを10に
調整して50℃で12時間攪拌を続けて還元した。還元
終了後、この溶液を希塩酸を用いてpH6.5にし、濃
度を調整して、システイン導入加水分解シルクの30%
水溶液を119g得た。
【0083】上記のようにして得られたシステイン導入
加水分解シルクの一部をモノヨード酢酸を用いてシステ
イン残基のSH基をアルキル化した後、6N塩酸で20
時間完全加水分解し、アミノ酸オートアナラーザーでア
ミノ酸分析をしたところ、システインはS−カルボキシ
メチルシステインとして6.8モル%、シスチンはハー
フシスチンとして2.9モル%が検出された。また、上
記のようにして得られたシステイン導入加水分解シルク
の一部を、塩酸による加水分解を行わずにアミノ酸分析
をしたところ、システインやシスチンは検出されず、上
記で検出されたシステインやシスチンはすべて加水分解
シルクに結合していることが明らかにされた。
【0084】原料の加水分解シルクにはシステインやシ
スチンは含まれていないため、このシステインやシスチ
ンはすべて上記のシステイン導入法やシスチン導入法に
より加水分解シルクに導入されたものであることが明ら
かであり、導入されたシスチンのうち約70%がシステ
インに還元され、システイン導入加水分解シルクになっ
ていた。
【0085】製造例4(システイン導入加水分解大豆タ
ンパクの製造例) 数平均分子量700の加水分解大豆タンパクの25%水
溶液100g(アミノ態窒素の測定によって得られた化
学量論的モル数として35.7ミリモル)を水酸化ナト
リウム水溶液でpHを10.2に調整し、この溶液に氷
冷下、前記参考例2で製造したN,N’−ジカルボキシ
無水シスチン2.6g(8.9ミリモル、加水分解大豆
タンパクに対して0.5当量)を80mlの酢酸エチル
に溶解した溶液を添加し攪拌して混合し、3時間攪拌を
続けて反応させた。その間、水酸化ナトリウム水溶液を
添加して水溶液のpHが10.0〜10.5になるよう
に保った。
【0086】反応終了後、反応物を200mlのn−ヘ
キサンで3回洗浄して未反応物を除去した後、水層に濃
硫酸を添加してpHを4に調整して減圧下で脱炭酸し、
濃度を調整して、シスチン導入加水分解大豆タンパクの
水溶液を得た。
【0087】ついで、このシスチン導入加水分解大豆タ
ンパクの水溶液を水酸化ナトリウム水溶液でpHを8に
調整し、14gの2−メルカプトエタノール(0.18
モル)を加えて50℃で12時間攪拌を続けて還元し
た。還元終了後、この溶液を希塩酸を用いてpH6.5
にし、濃度を調整して、システイン導入加水分解大豆タ
ンパクの25%水溶液を98g得た。
【0088】上記のようにして得られたシステイン導入
加水分解大豆タンパクの一部をモノヨード酢酸を加えて
加熱攪拌してシステイン残基のSH基をアルキル化し、
ついで6N塩酸で20時間完全加水分解した後、アミノ
酸オートアナラーザーでアミノ酸分析をしたところ、シ
ステインはS−カルボキシメチルシステインとして7.
4モル%、シスチンはハーフシスチンとして0.7モル
%が検出された。また、上記のようにして得られたシス
テイン導入加水分解大豆タンパクの一部を、塩酸による
加水分解を行わずにアミノ酸分析をしたところ、システ
インやシスチンは検出されず、上記で検出されたシステ
インやシスチンはすべて加水分解大豆タンパクに結合し
ていることが明らかにされた。
【0089】原料の加水分解大豆タンパクには0.8モ
ル%のハーフシスチンが含まれていたので、検出された
システインおよびシスチンの合計量8.1モル%のうち
7.3モル%は上記のシステイン導入法およびシスチン
導入法により加水分解大豆タンパクに導入されたもので
あり、導入されたシスチンおよび原料中に含まれていた
シスチンのうち約78%がシステインに還元され、シス
テイン導入加水分解大豆タンパクになっていた。
【0090】製造例5(システイン導入加水分解酵母タ
ンパクの製造例) 加水分解大豆タンパクに代えて数平均分子量650の加
水分解酵母タンパクの25%水溶液100g(アミノ態
窒素の測定によって得られた化学量論的モル数として3
7ミリモル)と、前記参考例2で製造したN,N’−ジ
カルボキシ無水シスチン3.7g(13ミリモル、加水
分解酵母タンパクに対して0.7当量)を80mlの酢
酸エチルに溶解した溶液を用いたほかは、製造例4と同
様にして、シスチン導入加水分解酵母タンパクの水溶液
を得た。
【0091】ついで、このシスチン導入加水分解酵母タ
ンパクの水溶液に2−メルカプトエタノール20g
(0.26モル)を加え、水酸化ナトリウム水溶液でp
Hを10に調整して50℃で8時間攪拌を続けて還元し
た。還元終了後、この溶液を希塩酸を用いてpH6.5
にし、濃度を調整して、システイン導入加水分解酵母タ
ンパクの25%水溶液を108g得た。
【0092】上記のようにして得られたシステイン導入
加水分解酵母タンパクの一部をモノヨード酢酸を用いて
システイン残基のSH基をアルキル化した後、6N塩酸
で20時間完全加水分解し、アミノ酸オートアナラーザ
ーでアミノ酸分析をしたところ、システインはS−カル
ボキシメチルシステインとして8.8モル%、シスチン
はハーフシスチンとして1.9モル%が検出された。ま
た、上記のようにして得られたシステイン導入加水分解
酵母タンパクの一部を、塩酸による加水分解を行わずに
アミノ酸分析をしたところ、システインやシスチンは検
出されず、上記で検出されたシステインやシスチンはす
べて加水分解酵母タンパクに結合していることが明らか
にされた。
【0093】原料の加水分解酵母タンパクには0.2モ
ル%のハーフシスチンが含まれていたので、検出された
シスチンおよびシステインの合計量10.7モル%のう
ち10.5モル%は上記のシスチン導入法およびシステ
イン導入法により加水分解酵母タンパクに導入されたも
のであることが明らかであり、導入されたシスチンおよ
び原料中に含まれていたシスチンのうち約83%がシス
テインに還元され、システイン導入加水分解酵母タンパ
クになっていた。
【0094】〔毛髪の引張り強度試験〕毛髪の引張り強
度を測定する部位(実施例中では18cmの毛髪の中央
部位)の長径および短径をマイクロメータで測定し、断
面積を計算する。つぎに、その点を中心に前後0.5m
mずつの間隔をあけ、粘着テープ〔スコッチフィラメン
トテープ、住友スリーエム(株)製〕を毛髪に固定す
る。このテープを固定した部分を引張り試験機〔不動工
業(株)製レオメータ〕のクランプに固定し、毛髪の切
断時の強度を測定し、先に求めておいた断面積より、断
面積当たりの引張り強度(kgf/mm2 )を算出す
る。一試料につき30本の毛髪の引張り強度を測定し、
試料ごとに平均値を求め、結果をその平均値で示す。
【0095】〔毛髪中のシステイン酸量〕毛髪0.01
gに6N塩酸2gを加え、105℃で20時間完全加水
分解し、アミノ酸自動分析機により、システイン酸量
(μmol/g)を求める。なお、毛髪中のシステイン
酸量は、毛髪の損傷の度合いを示しており、その値が小
さいほど、毛髪の損傷が少ないことを示す。
【0096】実施例1および比較例1〜2 表1に示す組成で毛髪保護剤として使用することを意図
したケラチン物質処理剤を調製し、それぞれのケラチン
物質処理剤で処理した毛髪を別途調製したパーマネント
ウェーブ用剤を用いて毛髪にパーマネントウェーブ処理
を施し、処理後の毛髪の艶、潤い、櫛通り性を官能評価
し、さらに、毛髪の引張り強度および毛髪中のシステイ
ン酸量を調べた。
【0097】実施例1では、システイン導入ペプチドと
して、製造例1で製造したシステイン導入加水分解コラ
ーゲンを用い、比較例1ではシステイン導入加水分解コ
ラーゲンに代えて数平均分子量450の加水分解コラー
ゲンを用い、比較例2ではシステイン導入加水分解コラ
ーゲンや加水分解コラーゲンはまったく用いなかった。
【0098】また、実施例や比較例ではケラチン物質処
理剤を調製していく関係で、各成分の量は調製後のケラ
チン物質処理剤中での含有量ではなく、配合量という表
現で説明していくが、表中の各成分の配合量は、重量部
基準によるものであり、配合量が固形分量でないものに
ついては成分名の後に括弧書きで固形分濃度を示してい
る。これらは、以後の実施例などにおいても同様であ
る。
【0099】
【表1】
【0100】ケラチン物質処理剤による処理にあたって
は、各実施例、比較例ごとに重さ1gで長さ18cmの
毛束を用意し、上記実施例1および比較例1〜2のケラ
チン物質処理剤20gにそれぞれ10分間浸漬し、すす
ぎ洗いをした後、下記表2の組成のパーマネントウェー
ブ用第1剤20g中に15分間浸漬した。すすぎ洗いの
後、パーマネントウェーブ用第2剤20gに15分間浸
漬し、すすぎ洗いした後、ヘアドライヤーで乾燥した。
【0101】
【表2】
【0102】乾燥後の毛髪の艶、潤いおよび櫛通り性を
10人のパネラー(女性7人、男性3人)に下記の評価
基準で5段階評価させた。
【0103】評価基準 5 :非常によい 4 :よい 3 :ややよい 2 :悪い 1 :非常に悪い
【0104】つぎに、官能評価後の各毛束を引張り強度
試験に供し、40本の毛髪について、その端から9cm
の部分の断面積を測定し、断面積の大きい方および小さ
い方から各5本ずつの毛髪を試験対象より除外し、残り
30本の毛髪の引張り強度を測定した。さらに、パーマ
ネントウェーブ処理後の毛髪の一部を塩酸で加水分解し
てシステイン酸量を測定した。それらの結果(平均値)
を表3に示す。
【0105】
【表3】
【0106】表3に示すように、システイン導入加水分
解コラーゲンを含有する実施例1のケラチン物質処理剤
で処理した後にパーマネントウェーブ処理した毛髪は、
処理後の毛髪の艶、潤い、櫛通り性のいずれも比較例1
〜2のケラチン物質処理剤で処理した後にパーマネント
ウェーブ処理した毛髪に比べて評価値が高く、かつ毛髪
の引張り強度が大きく、毛髪中のシステイン酸量が少な
く、システイン導入加水分解コラーゲンが毛髪によく収
着し、パーマネントウェーブ処理時の毛髪の損傷を防止
し、毛髪の引張り強度を増加させることが明らかであっ
た。
【0107】これに対して、加水分解コラーゲンを含有
する比較例1のケラチン物質処理剤で処理した後にパー
マネントウェーブ処理した毛髪も、システイン導入加水
分解コラーゲンや加水分解コラーゲンを含有していない
比較例2のケラチン物質処理剤で処理した後にパーマネ
ントウェーブ処理した毛髪より官能評価値は高く、毛髪
の引張り強度が大きく、毛髪中のシステイン酸量が少な
く、加水分解コラーゲンが多少毛髪に収着していること
を表しているが、実施例1に比べるとその効果は低かっ
た。これは、実施例1で使用したシステイン導入加水分
解コラーゲンが、そのシステインの作用によって毛髪に
より多く収着したためと考えられる。
【0108】実施例2および比較例3〜4 表4に示す組成で毛髪保護剤として使用することを意図
したケラチン物質処理剤を調製し、それぞれのケラチン
物質処理剤で処理した毛髪を別途調製した酸化型染毛剤
で染毛し、染毛処理後の毛髪の艶、潤い、櫛通り性を官
能評価し、さらに、毛髪の引張り強度および毛髪中のシ
ステイン酸量を調べた。
【0109】実施例2では、システイン導入ペプチドと
して、前記製造例2で製造したシステイン導入加水分解
小麦タンパクを用い、比較例3ではシステイン導入加水
分解小麦タンパクに代えて数平均分子量700の加水分
解小麦タンパクを用い、比較例4ではシステイン導入加
水分解小麦タンパクや加水分解小麦タンパクはまったく
用いなかった。
【0110】
【表4】
【0111】ケラチン物質処理剤による処理にあたって
は、各実施例、比較例ごとに重さ1gで長さ18cmの
毛束を用意し、上記各組成のケラチン物質処理剤50g
にそれぞれ15分間浸漬し、すすぎ洗いをした後、下記
表5の組成の酸化型染毛剤で染毛した。
【0112】
【表5】
【0113】染毛処理は、第1剤と第2剤を同量ずつ混
合し、その混合物2gずつをそれぞれのケラチン物質処
理剤で処理した毛束に塗布した後、20分間放置し、お
湯ですすぎ、ついで2%ポリオキシエチレンノニルフェ
ニルエーテル水溶液で洗浄することによって行った。染
毛処理後、ドライヤーで毛束を乾燥し、染毛後の毛髪の
均染性、毛髪の潤い、艶および櫛通り性について実施例
1と同様の評価基準で評価させた。さらに、官能評価後
の各毛束を引張り強度試験に供し、40本の毛髪につい
て、その端から9cmの部分の断面積を測定し、断面積
の大きい方および小さい方から各5本ずつの毛髪を試験
対象より除外し、残り30本の毛髪の引張り強度を測定
した。また、パーマネントウェーブ処理後の毛髪の一部
を塩酸で加水分解してシステイン酸量を測定した。それ
らの結果(平均値)を表6に示す
【0114】
【表6】
【0115】表6に示すように、システイン導入加水分
解小麦タンパクを含有する実施例2のケラチン物質処理
剤で処理した後に染毛処理した毛髪は、均染性が比較例
3や比較例4のケラチン物質処理剤で処理した後に染毛
処理した毛髪に比べて良かった。この染毛処理による均
染性は、毛髪の損傷度合いを反映するので、実施例2の
ケラチン物質処理剤で処理した毛髪は染毛処理による損
傷が最も少なかったことを示している。
【0116】また、染毛処理後の毛髪の艶、潤い、櫛通
り性のいずれもについても実施例2のケラチン物質処理
剤で処理した後に染毛処理した毛髪は、比較例3〜4の
ケラチン物質処理剤で処理した後に染毛処理した毛髪に
比べて評価値が高く、かつ毛髪の引張り強度が大きく、
毛髪中のシステイン酸量が少なく、システイン導入加水
分解小麦タンパクが毛髪によく収着し、染毛処理時の毛
髪の損傷を防止し、毛髪の引張り強度を増加させること
が明らかにされていた。
【0117】実施例3〜4および比較例5 表7に示す組成で毛髪保護剤として使用することを意図
したケラチン物質処理剤を調製し、それぞれのケラチン
物質処理剤と別途調製した脱色剤と混合した溶液で毛髪
を脱色処理し、処理後の毛髪の艶、潤い、なめらかさお
よび櫛通り性を官能評価し、さらに、毛髪の引張り強度
および毛髪中のシステイン酸量を調べた。
【0118】実施例3では、システイン導入ペプチドと
して、製造例3で製造したシステイン導入加水分解シル
クを用い、実施例4では、システイン導入ペプチドとし
て、製造例4で製造したシステイン導入加水分解大豆タ
ンパクを用いている。ただし、比較例5ではシステイン
導入ペプチドや加水分解ペプチドなどはまったく用いな
かった。
【0119】
【表7】
【0120】これらの実施例3〜4および比較例5で
は、実施例3〜4および比較例5のそれぞれのケラチン
物質処理剤20gと下記表8に組成を示す脱色剤80g
との混合液に重さ1gで長さ18cmの毛束を30分浸
漬した後、すすぎ洗いをし、ドライヤーで乾燥させ、実
施例1と同様の評価基準で10人のパネラーに評価させ
た。また、毛髪の引張り強度および毛髪中のシステイン
酸量を調べた。それらの結果(平均値)を表9に示す。
【0121】
【表8】
【0122】
【表9】
【0123】表9に示す結果から明らかなように、シス
テイン導入ペプチドを含有する実施例3〜4のケラチン
物質処理剤を脱色剤に添加した脱色液で処理した毛髪
は、比較例5のケラチン物質処理剤を脱色剤に添加した
脱色液で処理した毛髪に比べて、毛髪の艶、潤い、なめ
らかさ、櫛通り性のいずれも評価値が高く、かつ毛髪の
引張り強度が大きく、毛髪中のシステイン酸量が少な
く、システイン導入ペプチドが毛髪によく収着し、脱色
処理時の毛髪の損傷を防止し、毛髪の引張り強度を増加
させることが明らかにされていた。
【0124】また、システイン導入ペプチドを含有する
実施例3〜4のケラチン物質処理剤の間では、システイ
ン導入加水分解シルクを配合した実施例3のケラチン物
質処理剤で処理した毛髪の方が、艶、櫛通り性に関して
実施例4のケラチン物質処理剤で処理した毛髪より優
れ、緻密な被膜を形成する加水分解シルクの性質がよく
現れ、潤い感では植物蛋白加水分解物のシステイン導入
加水分解大豆タンパクを用いた実施例4の方が優れてお
り、それぞれの原料加水分解ペプチドの性質がよく発揮
されていて、導入したシステインの作用でそれぞれの加
水分解ペプチドがよく毛髪に収着することが明らかにさ
れていた。
【0125】実施例5および比較例6〜7 表10に示す組成のケラチン物質処理剤を調製し、それ
ぞれのケラチン物質処理剤で市販の純毛マフラーを洗浄
後に処理し、毛糸の艶、ボリューム感および手触り感を
比較した。
【0126】実施例5では、システイン導入ペプチドと
して、製造例5で製造したシステイン導入加水分解酵母
タンパクを用い、比較例6ではシステイン導入加水分解
酵母タンパクに代えて数平均分子量650の加水分解酵
母タンパクを用い、比較例7ではシステイン導入加水分
解酵母タンパクや加水分解酵母タンパクなどはまったく
用いなかった。
【0127】
【表10】
【0128】これらの実施例5および比較例6〜7で
は、市販の純毛マフラーを2週間使用後に、市販の毛糸
洗い洗剤で洗浄し、ぬるま湯で水洗いした後、3等分
し、それぞれ実施例5および比較例6〜7のケラチン物
質処理剤の10倍希釈液に15分間浸漬し、ぬるま湯で
水洗して乾燥した。乾燥後のマフラー片の艶、ボリュー
ム感および手触り感を実施例1と同様の評価基準で10
人のパネラーに評価させた。その結果(平均値)を表1
1に示す。
【0129】
【表11】
【0130】表11に示すように、システイン導入加水
分解酵母タンパクを含有する実施例5のケラチン物質処
理剤で処理したマフラー片は、比較例6〜7のケラチン
物質処理剤で処理したマフラー片に比べて、艶、ボリュ
ーム感、手触り感のいずれも評価値が高く、システイン
導入加水分解酵母タンパクが毛糸によく収着して被膜を
形成し、毛糸に艶を与え、嵩高くし、手触り感を向上さ
せることが明らかにされていた。
【0131】実施例6 製造例1で製造した得たシステイン導入加水分解コラー
ゲンを水に6.7%(固形分濃度2%)溶解してケラチ
ン物質処理剤を調製した。このケラチン物質処理剤10
0mlに、酸性染料スミノールミリングレッドRS〔商
品名、住友化学工業(株)製、〕を2mg加えて溶解
し、酢酸を加えてpH4に調整した。このケラチン物質
処理剤に染料を溶解した染色液に、純毛毛糸1gを加え
て加温し、沸騰後、15分間加熱して染色を行った。
【0132】また、比較のため、上記ケラチン物質処理
剤に代えて水を用い、この水100mlに上記酸性染料
スミノールミリングレッドRSを2mg加え、酢酸でp
H4に調整した染色液に、純毛毛糸1gを加えて同様の
染色処理を行った。
【0133】システイン導入加水分解コラーゲンを含有
する実施例6のケラチン物質処理剤を含有する染色液を
用いて染色を行った毛糸は、ケラチン物質処理剤を含有
しない染色液で染色を行った毛糸に比べて、むら染めが
なく、美しく染まり、また、手触りはふんわりと柔らか
く、ボリューム感があった。
【0134】これは、システイン導入加水分解コラーゲ
ンが毛糸に収着して被膜を形成して毛糸表面の損傷度を
均一化することにより、染色が徐々に、かつ、むらなく
進行し(緩染作用および均染効果)、さらに、染色過程
でケラチン物質処理剤が毛糸の損傷を防止したことによ
るものと考えられる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 松川 愛絵 大阪府東大阪市布市町1丁目2番14号 株 式会社成和化成内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水または水を主成分とする基剤中に、動
    物、植物または微生物などの天然物由来の蛋白質を加水
    分解して得られた加水分解ペプチドまたはその誘導体に
    システインを導入したシステイン量が全アミノ酸中5〜
    18モル%のシステイン導入ペプチドを含有することを
    特徴とするケラチン物質処理剤。
  2. 【請求項2】 システイン導入ペプチドの含有量が0.
    1〜20重量%である請求項1記載のケラチン物質処理
    剤。
JP9307198A 1998-04-06 1998-04-06 ケラチン物質処理剤 Pending JPH11292741A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013014557A (ja) * 2011-07-06 2013-01-24 Milbon Co Ltd 毛髪処理剤

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013014557A (ja) * 2011-07-06 2013-01-24 Milbon Co Ltd 毛髪処理剤

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