JPH11282022A - エレクトロクロミック素子の製造方法 - Google Patents

エレクトロクロミック素子の製造方法

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Publication number
JPH11282022A
JPH11282022A JP10103408A JP10340898A JPH11282022A JP H11282022 A JPH11282022 A JP H11282022A JP 10103408 A JP10103408 A JP 10103408A JP 10340898 A JP10340898 A JP 10340898A JP H11282022 A JPH11282022 A JP H11282022A
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JP
Japan
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electrolyte
precursor
cell
injection
vacuum
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Application number
JP10103408A
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English (en)
Inventor
Tomohiro Totani
智博 戸谷
Yukio Kobayashi
幸雄 小林
Yoshinori Nishikitani
禎範 錦谷
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Eneos Corp
Original Assignee
Nippon Mitsubishi Oil Corp
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Publication date
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Publication of JPH11282022A publication Critical patent/JPH11282022A/ja
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】電解質又はその前駆体の影響を受けることなく
真空容器内を排気でき、電解質又はその前駆体の静水圧
の影響を受けにくいエレクトロクロミック素子の製造方
法を提供する。 【解決手段】真空容器1内に、電解質又はその前駆体5
が入れられる貯留容器4を設けると共に、注入管8が連
結される注入治具9を注入口7に封着したエレクトロク
ロミック素子用セル6を水平面に対して平行または傾斜
させて設置し、注入管8の先端開口部を貯留容器4内に
配置してから真空容器1内を排気し、排気後、真空容器
1外から電解質又は前駆体5を貯留容器4内に入れて注
入管8の開口部を電解質又は前駆体5に没入させ、その
後、真空容器1内の圧力を上げて、セル6内に電解質又
はその前駆体5を注入する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はエレクトロクロミッ
ク素子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】電解液を用いてエレクトロクロミック素
子を製造する方法としては、あらかじめエレクトロクロ
ミック素子用セルを形成しておき、そのセル内に例えば
真空注入法により電解液を注入する方法が知られてい
る。この真空注入方法は、図3(a)に示すように、ま
ず、真空容器15内に、注入口16が下部にくるように
セル17を垂直に立設すると共に、そのセル17の下方
の容器15内下部に電解液18を貯留する。そして、真
空容器15内を排気してセル17内および電解液18の
脱気を行った後に、図3(b)に示すように、電解液1
8にセル注入口16を浸漬する。その後、真空容器15
内を常圧に戻すことにより電解液18をセル17内に注
入するものである。また、この真空注入方法は液晶ディ
スプレイのセルへの液晶注入方法としても一般的に用い
られている方法である。また、他のエレクトロクロミッ
ク素子用セルへの電解液注入方法としては、特開平7−
199235号公報に開示されているものがある。この
方法は、注入口が上向きになるようにセルを真空容器内
に設置し、容器内を脱気後、セル内に残留する空隙をな
くすために、セルを電解液に完全に浸漬させて、セル内
に電解液を注入するものである。また、特開平2−28
9830号公報にも電解液注入方法が開示されている。
この方法は、前記と同様に注入口が上向きになるように
セルを真空容器内に設置し、容器内を脱気した後、真空
容器外部に設置した滴下ロートより電解液をセル上部に
取り付けた液溜に滴下して貯留させた後、真空容器を常
圧に戻すことにより注入を行うものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記のように従来の真
空注入法によるエレクトロクロミック素子の製造方法に
おいては、真空容器内にセルとともに電解液が設置され
る場合には、電解液はセル内に電解液を充填する上に必
要な高真空度化に長時間さらされるので、電解液中の溶
媒が蒸発し組成変化を起こしてエレクトロクロミック素
子の特性を損ねる虞があること、蒸発した溶媒が排気系
へ混入することにより排気系の負荷も大きくなることな
どの問題がある。また、これらの真空注入方法では、真
空容器内に溶媒が共存するために、真空度は溶媒の沸点
以上の真空度にはならないため、使用溶媒によって真空
度が制限され、電解液注入後にその真空度に応じた空隙
がセル内に発生するという問題もあった。また前記第1
の方法では、セルの間隙が広くなると電解液の静水圧の
ために完全にはセル内に電解液が注入できない問題があ
る。第2の方法では、セルが大型化した場合には大量の
電解液が必要になるのに加えて、注入口が上向きのため
電解液注入後にセルを電解液より取り出すと、セル内の
電解液の静水圧のためにセル間隙が大きくなりセル内に
空隙を生じ、場合によってはセル周辺部のシール剤が破
壊することもありうる。また、セルを電解液に完全に浸
漬させるので、セル周辺に付着した電解液を拭き取り洗
浄する必要がある。さらに、大量の電解液が長時間高真
空下にさらされるため電解液中の溶媒が蒸発し電解液の
組成変化および排気系への溶媒の混入も懸念される。第
3の方法では、セルが大型化した場合には前記と同様に
注入口が上向きのため電解液注入後に、セル内の電解液
の静水圧のためにセル間隙が大きくなりセル内に空隙を
生じ、場合によってはセル周辺部のシール剤が破壊する
こともありうる。そこで、本発明は、このような実状に
鑑みなされたものであり、その目的は、電解質又はその
前駆体が長時間高真空度下にさらされないと共に、電解
質又はその前駆体の影響を受けることなく真空容器内を
排気でき、かつ、電解質又はその前駆体の静水圧の影響
を受けないエレクトロクロミック素子の製造方法を提供
することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明のエレクトロクロミック素子の製造方法は、
所定の間隔を隔てて1対の導電基板を対向させ、これら
基板間の周縁部をシールしてセルを形成し、そのセル内
に注入口を介して電解質又はその前駆体を注入して電解
質層を形成せしめてエレクトロクロミック素子を製造す
る際に、真空容器内に、前記電解質又はその前駆体が入
れられる貯留容器を設けると共に、注入管が連結される
注入治具を前記注入口に封着したエレクトロクロミック
素子用セルを水平面に対して平行または傾斜させて設置
し、その注入管の先端開口部を貯留容器内に配置してか
ら該真空容器内を排気し、排気後、真空容器外から電解
質又はその前駆体を前記貯留容器内に入れて注入管の開
口部を電解質又はその前駆体に没入させ、その後、真空
容器内の圧力を上げて、セル内に電解質又はその前駆体
を注入するものである。また、本発明のエレクトロクロ
ミック素子の製造方法は、所定の間隔を隔てて1対の導
電基板を対向させ、これら基板間の周縁部をシールして
セルを形成し、そのセル内に注入口を介して電解質又は
その前駆体を注入して電解質層を形成せしめてエレクト
ロクロミック素子を製造する際に、真空容器内に、前記
電解質又はその前駆体が入れられる貯留容器を設けると
共に、注入管が連結される注入治具を前記注入口に封着
した複数のエレクトロクロミック素子用セルをそれぞれ
水平面に対して平行または傾斜させて設置し、それら各
注入管の先端開口部をそれぞれ貯留容器内に配置してか
ら該真空容器内を排気し、排気後、真空容器外から電解
質又はその前駆体を前記貯留容器内に入れて全ての注入
管の開口部を電解質又はその前駆体に没入させ、その
後、真空容器内の圧力を上げて、セル内に電解質又はそ
の前駆体を注入するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】以下、本発明の内容について詳細
に説明する。本発明においては、少なくとも2枚の導電
基板が使用されるが、ここで導電基板とは電極としての
機能を果たす基板を意味する。従って、本発明でいう導
電基板には、少なくとも電解質層に接するいわゆる内側
面に電極の機能を有する基板であればよく、具体的には
基板自体を電極機能を有する材料(導電性材料)により
構成されたもの、導電性を持たない基板の少なくとも一
方の表面上に電極層を備えた積層板等の何れであっても
良い。また、導電基板は、基板自体が常温において平滑
な面を有するものであるが、その面は平面であっても、
曲面であっても差し支えなく、また応力によって変形す
るものであってもよい。さらに、一対の対向導電基板に
おいて少なくとも一方の基板は透明基板であることが好
ましい。すなわち、導電基板の少なくとも一方は透明基
板であり、他方は透明であっても、不透明であっても、
光を反射できる反射性導電基板であってもよい。透明基
板は、通常、透明な基板上に透明電極層を設けた形態に
ある。ここで、透明とは、可視光領域において10〜1
00%の光透過率を有することを意味する。透明基板と
しては、透明であれば特に限定されないが、例えば無色
あるいは有色ガラス、強化ガラス等が用いられる他、無
色あるいは有色の透明性を有する樹脂等でも良い。具体
的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポ
リサルフォン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエ
ーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカー
ボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポ
リスチレン等が挙げられる。不透明基板としては、導電
性基板(鉄、銅、銀、アルミニウム、錫、鉛、金、亜鉛
等の金属の単体、またはこれらの各種合金等の基板)、
導電性を持たない不透明基板(各種プラスチック、樹
脂、ガラス、木材、石材等の基板)などが挙げられる。
もちろん、導電性をもたない不透明基板においては表面
に電極層を設けることはいうまでもない。前記電極層と
しては、本発明の目的を果たすものである限り特に限定
されないが、透明性を満たすものが望ましく、前記一対
の対向導電基板において少なくとも一方を透明基板とし
た側の電極層は透明電極とする必要がある。また電極の
形態は膜状または層状であることが望ましい。前記透明
電極としては、例えば金、銀、クロム、銅、タングステ
ン等の金属薄膜、金属酸化物からなる導電膜などが挙げ
られる。前記金属酸化物としては、例えばITO(In
23−SnO2)、酸化錫、酸化銀、酸化亜鉛、酸化バ
ナジウム等が挙げられる。電極の膜厚は、通常10〜1
000nm、好ましくは50〜300nmが望ましい。
また、表面抵抗(抵抗率)は、本発明の基板の用途によ
り適宜選択できるが、通常、0.5〜500Ω/s
q.、好ましくは1〜50Ω/sq.が望ましい。前記
電極の形成方法としては、特に限定されず、電極を構成
する前記金属および金属酸化物等の種類により適宜公知
の方法が選択できる。通常、真空蒸着法、イオンプレー
ティング法、スパッタリング法あるいはゾルゲル法等で
形成することができる。何れの場合も、基板温度が通常
100〜350℃の範囲内で形成することが望ましい。
また、前記透明電極層には、酸化還元能の付与、導電性
の付与、電気二重層容量の付与の目的で、部分的に不透
明な電極活物質を付与することもできる。この際、その
付与量は電極面全体の透明性が損なわれない範囲で選択
されることは勿論である。不透明な電極活物質として
は、例えば、銅、銀、金、白金、鉄、タングステン、チ
タン、リチウム等の金属、ポリアニリン、ポリチオフェ
ン、ポリピロール、フタロシアニンなどの酸化還元能を
有する有機物、活性炭、グラファイトなどの炭素材、V
25、WO3、MnO2、NiO、Ir23などの金属酸
化物またはこれらの混合物等を用いることができる。ま
た、これらを電極に結着させるために、さらに各種樹脂
を用いても良い。この不透明な電極活物質等を電極に付
与するには、例えば、ITO透明電極上に、活性炭繊
維、グラファイト、アクリル樹脂等からなる組成物をス
トライプ状等の微細パターンに形成したり、金(Au)
薄膜上に、V25、アセチレンブラック、ブチルゴム等
からなる組成物をメッシュ状に形成したりすることがで
きる。なお、導電基板の一部に開口部を設けて、電解質
またはその前駆体の注入口とすることが望ましく、その
位置は、端(周縁部)に近い部分が好ましい。
【0006】本発明におけるエレクトロクロミック素子
用セルは、前述の通り、前記導電基板を電極面を内側と
して所定の間隔をおいて対向させたのち、これら基板間
の周縁部をシールすることを基本的な構造とする。その
間隙(間隔)、即ちセル間隙は、通常30〜1000μ
m、好ましくは200〜500μmが望ましい。本発明
においてエレクトロクロミック層の配設場所は特に限定
されることはなく、例えば、エレクトロクロミック層と
して形成するのであれば、前記導電基板の電極層上の少
なくとも一方もしくは両方にエレクトロクロミック性物
質を含む層を予め設けたのち、1対の基板を対向させて
シールしてもよく、また、電解質とエレクトロクロミッ
ク性物質を兼ねるエレクトロクロミック性電解質層を用
いる場合には、単に導電基板同士を対向させシールする
方法などが挙げられる。前記エレクトロクロミック性物
質とは、電気化学的な酸化、あるいは還元反応等によっ
て着色、消色、色変化などを示す物質を意味し、本発明
の目的を達するものである限り特に限定されないが、具
体的には、Mo23、Ir23、NiO、V25、WO
3、ビオロゲン、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ
ピロール、金属フタロシアニン、フェロセンなどが好適
なものとして挙げられる。前記エレクトロクロミック性
物質を含有する層としては、前記エレクトロクロミック
性物質のみからなる層(膜)でもよく、またエレクトロ
クロミック性物質とマトリックス成分に分散させてえら
れる層(膜)でもよいが、エレクトロクロミック性物質
のみからなる層(膜)がより好ましい。前記エレクトロ
クロミック性物質層の厚さは、通常、10nm〜1μ
m、好ましくは50〜800nmが望ましい前記エレク
トロクロミック性物質を含有する層の形成方法として
は、特に限定されず、蒸着法、イオンプレーティング
法、スパッタリング法、電解重合法、ディップコート
法、スピンコート法等の種々の周知の方法を用いること
ができる。
【0007】シールの方法としては、特に限定されない
が、各種シール材により種々の周知の方法を用いること
ができる。シール材としては、特に限定されないが、素
子内部を密封し外部とを隔絶して、素子の性能に影響を
与える成分、例えば、水分や酸素、一酸化炭素、などの
活性ガスなどの透過を阻止することが可能な材料であれ
ば特に制限されることはなく、例えば、樹脂、ゴムなど
の高分子材料、例えばポリエチレンテレフタレートなど
のポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエー
テルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェ
ニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、
ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、トリ酢酸セ
ルロース、ポリメチルペンテン、ポリシロキサン、ポリ
エチレン、ポリプロピレン、ポリ酢酸セルロース、フェ
ノール樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、ポリ酢酸ビニ
ル、ポリビニルアセタール、ポリビニールアルコール、
アクリルおよびメタクリル酸エステル、シアノアクリル
酸エステル、ポリアミド、天然ゴムや合成ゴム、例え
ば、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジ
エンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロ
ロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトリ
ルゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム、アクリルゴム、エ
ピクロルヒドリンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、
水素化ニトリルゴムなどの材料を挙げることができる。
また、シール材として硬化性樹脂などを用いることもで
きる。硬化性樹脂は特に限定されることはないし、その
硬化方法についても熱硬化型、光硬化型、電子線硬化型
などの種々の硬化型のものが利用可能である。硬化性樹
脂としては、具体的には、フェノール樹脂、尿素樹脂、
エポキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセター
ル、ポリビニールアルコール、アクリルおよびメタクリ
ル酸エステル、シアノアクリル酸エステル、ポリアミド
等が挙げられ、これらは単体で用いても、また、2種あ
るいはそれ以上を混合して用いてもよい。また、これら
を変成したり、フィラーを加えるなどして、種々の改良
を加えたものであっても良い。これらの中でも特にエポ
キシ樹脂、アクリル変成したエポキシ樹脂(この場合
は、含有するエポキシ残基1モルに対してアクリル残基
が0.01〜0.3モルのもの、さらに好ましくはエポ
キシ残基1モルに対してアクリル残基が0.05〜0.
2モル含むようにアクリル変成したエポキシ樹脂)等が
望ましい。前記樹脂やゴム中には、基板間の幅を調節す
るなどの目的でスペーサー材料を含んでも良い。この目
的のために利用するスペーサー材料は、少なくとも非導
電性の材料であって、その形状はシート状、球状、繊維
状、棒状、など特に限定されない。
【0008】次に、これらの樹脂やゴムをもちいて基板
をシールする方法についていくつか述べるが、シールの
方法としては特に限定されず、各種の周知の方法が適用
可能であることは言うまでもない。例えば、 (1)あらかじめ、シール形状に加工、成形した材料を
作製した後、基板間に挟み込む方法; (2)前記硬化性樹脂のペーストを基板表面に公知の印
刷方法を用いて所望の形状に形成する方法; (3)基板表面に随時塗布していく方法; (4)前記樹脂やゴムをノズルから吐出させならが掃引
し、基板上に任意のパターンを形成する方法; 等によりシール材を塗布してシールすることができ、特
に(4)による方法が好ましい。基板への塗布は1対の
基板のうち、片方のみでも、また両方に行っても良い。
硬化性樹脂を塗布した場合には、基板を貼りあわせ硬化
するが、硬化方法は用いる硬化性樹脂により異なること
は言うまでもない。熱硬化の場合では、室温で硬化可能
なものも用いることができるが、通常加熱が必要な場合
は、室温−150℃の間で、好ましくは室温−100℃
の間で硬化できればよい。また、硬化に要する時間は、
エレクトロクロミック特性を損なわない範囲であれば特
に限定されないが、好ましくは24時間以内、さらに好
ましくは1時間以内である。光硬化の場合では、開始剤
の吸収波長に適合したランプであれば、低圧、高圧、超
高圧の各水銀ランプ、キセノンランプ、白熱ランプ、レ
ーザー光などが利用できる。硬化の際には素子全面を均
一露光することで、全面同時硬化しても良いし、ランプ
や光源を移動させたり、光ファイバーなどの導光性材料
を利用することによって集光したスポット光を走査して
逐次硬化しても良い。また、2回以上繰り返すことによ
って硬化させても良い。前記方法により作製される基板
シールは、1カ所以上の注入口あるいは排気口を設ける
こともできる。注入口は、例えば、意図的にシール剤を
塗布しないなどによって容易に作ることができるが、そ
の形状は単に基板シールにより仕切られた二つの空間を
導通していればどのようなものでも良いし、例えば、中
空材料などを使って、導通させることもできる。
【0009】次に電解質について説明する。本発明に用
いられる電解質は、エレクトロクロミック性物質を着
色、消色、色変化等をさせることができるものである限
り特に限定されないが、通常室温で1×10-7S/cm
以上のイオン伝導度を示す物質であるものが好ましい。
電解質としては、特に限定されることはなく、液系電解
質、ゲル化液系電解質あるいは固体系電解質等が挙げら
れる。本発明においては、特に固体系電解質が望まし
い。前記液系電解質としては、溶媒に塩類、酸類、アル
カリ類等の支持電解質を溶解したもの等を用いることが
できる。前記溶媒としては、支持電解質を溶解できるも
のであれば特に限定されないが、特に極性を有するもの
が好ましい。具体的には水や、メタノール、エタノー
ル、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、
ジメチルスルホキシド、ジメトキシエタン、アセトニト
リル、γ−ブチロラクトン、スルホラン、1、3ージオ
キサン、N、N−ジメチルホルムアミド、1、2−ジメ
トキシエタン、テトラヒドロフランなどの有機極性溶媒
等が挙げられ、好ましくは、プロピレンカーボネート、
エチレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、ジメト
キシエタン、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、ス
ルホラン、1、3ージオキサン、N、N−ジメチルホル
ムアミド、1、2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフ
ランなどの有機極性溶媒等が望ましい。これらは、使用
に際して単独もしくは混合物として使用できる。支持電
解質としての塩類は、特に限定されず、各種のアルカリ
金属塩、アルカリ土類金属塩などの無機イオン塩や4級
アンモニウム塩や環状4級アンモニウム塩などがあげら
れ、具体的にはLiClO4、LiSCN、LiBF4
LiAsF6、LiCF3SO3、LiPF6、LiI、N
aI、NaSCN、NaClO4、NaBF4、NaAs
6、KSCN、KCl等のLi、Na、Kのアルカリ
金属塩等や、(CH34NBF4、(C254NB
4、(n−C494NBF4、(C254NBr、
(C254NClO4、(n−C494NClO4等の
4級アンモニウム塩および環状4級アンモニウム塩等、
もしくはこれらの混合物が好適なものとして挙げられ
る。支持電解質としての酸類は、特に限定されず、無機
酸、有機酸などが挙げられ、具体的には硫酸、塩酸稠、
リン酸類、スルホン酸類、カルボン酸類などが挙げられ
る。支持電解質としてのアルカリ類は、特に限定され
ず、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウ
ムなどが挙げられる。
【0010】前記ゲル化液系電解質としては、前記液系
電解質に、さらにポリマーを含有させたり、ゲル化剤を
含有させたりして粘稠若しくはゲル状としたもの等を用
いることができる。前記ポリマーとしては、特に限定さ
れず、例えばポリアクリロニトリル、カルボキシメチル
セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンオキサイ
ド、ポリウレタン、ポリウレタン、ポリアクリレート、
ポリメタクリレート、ポリアミド、ポリアクリルアミ
ド、セルロース、ポリエステル、ポリプロピレンオキサ
イド、ナフィオンなどが挙げられる。前記ゲル化剤とし
ては、特に限定されず、オキシエチレンメタクリレー
ト、オキシエチレンアクリレート、ウレタンアクリレー
ト、アクリルアミド、寒天、などが挙げられる。なお、
ゲル化液系電解質は、ポリマーの前駆体モノマーやゲル
化剤の前駆体を液系電解質を混合したのち、前記の通り
特定の方法によりセル内に注入した後、ゲル化すること
により対向する導電基板の間に挟持させることができ
る。
【0011】前記固体系電解質としては、室温で固体で
あり、かつイオン導電性を有するものであれば特に限定
されず、ポリエチレンオキサイド、オキシエチレンメタ
クリレートのポリマー、ナフィオン、ポリスチレンスル
ホン酸、Li3N、Na-β-Al23、Sn(HPO4
2・H2Oなどが挙げることができ、特にオキシアルキレ
ンメタクリレート系化合物、オキシアルキレンアクリレ
ート系化合物またはウレタンアクリレート系化合物を前
駆体の主成分とし、当該前駆体を重合することによって
得られる高分子化合物等を用いた高分子固体電解質が好
ましい。前記高分子固体電解質の第1の例としては、下
記一般式(1)で示されるウレタンアクリレート、前記
有機極性溶媒、および前記支持電解質を含む組性物(以
下、「組成物A」と略す。)を前駆体とし、当該前駆体
を固化することにより得られる高分子固体電解質が挙げ
られる。
【化1】 (式中、R1およびR2は同一または異なる基であって、
下記一般式(2)〜(4)から選ばれる基を示す。R3
およびR4は同一または異なる基であって、炭素数1〜
20、好ましくは2〜12の2価炭化水素残基を示す。
Yはポリエーテル単位、ポリエステル単位、ポリカーボ
ネート単位またはこれらの混合単位を示す。またnは1
〜100、好ましくは1〜50、さらに好ましくは1〜
20の範囲の整数を示す。)
【化2】
【化3】
【化4】 一般式(2)〜(4)において、R5〜R7は同一または
異なる基であって、水素原子または炭素数1〜3のアル
キル基を示す。またR8は炭素数1〜20、好ましくは
炭素数2〜8の2〜4価有機残基を示す。かかる有機残
基としては、具体的には、アルキルトリル基、アルキル
テトラリル基、下記一般式(5)で示されるアルキレン
基等の炭化水素残基が挙げられる。
【化5】 一般式(5)において、R9は炭素数1〜3のアルキル
基または水素を示し、pは0〜6の整数を示す。pが2
以上の場合R9は同一でも異なっても良い。また、前記
炭化水素残基は、水素原子の一部が炭素数1〜6、好ま
しくは1〜3のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリー
ルオキシ基などの含酸素炭化水素基により置換されてい
る基でもよい。前記式(1)中のR8としては具体的に
は、 等を好ましく挙げることができる。一般式(1)のR3
およびR4で示される2価炭化水素残基としては、鎖状
2価炭化水素基、芳香族炭化水素基、含脂環炭化水素基
などが挙げられる。鎖状2価炭化水素基としては、前記
一般式(5)で示されるアルキレン基等を挙げることが
できる。また、前記芳香族炭化水素基および含脂環炭化
水素基としては、下記一般式(6)〜(8)で示される
炭化水素基等が挙げられる。
【化6】
【化7】
【化8】 一般式(6)〜(8)において、R10およびR11は同一
または異なる基であって、フェニレン基、置換フェニレ
ン基(アルキル置換フェニレン基等)、シクロアルキレ
ン基、置換シクロアルキレン基(アルキル置換シクロア
ルキレン基等)を示す。R12〜R15は、同一または異な
る基であって、水素原子または炭素数1〜3のアルキル
基を示す。また、qは1〜5の整数を示す。前記一般式
(1)におけるR3およびR4としては具体的には下記式
(9)〜(15)に示される基等を好ましく挙げること
ができる。
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】 一般式(1)におけるYはポリエーテル単位、ポリエス
テル単位およびポリカーボネ ート単位またはこれらの
混合単位を示す。前記ポリエーテル単位、ポリエステル
単位およびポリカーボネート単位としては、ポリエーテ
ル結合単位としてはそれぞれ一般式(a)〜(d)で示
される単位を挙げることができる。
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】 一般式(a)〜(d)において、R16〜R21は同一また
は異なる基であって、炭素数1〜20、好ましくは2〜
12の2価の炭化水素残基を示す。特にR19は、炭素数
2〜6程度が好ましい。前記R16〜R21としては、直鎖
または分岐のアルキレン基などが好ましく、具体的に
は、R18としてメチレン基、エチレン基、トリメチレン
基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチ
レン基、プロピレン基等が好ましい。また、R16〜R17
およびR19〜R21としてはエチレン基、プロピレン基な
どが好ましい。また、式化7中、mは2〜300、好ま
しくは10〜200の整数を示す。また、rは1〜30
0、好ましくは2〜200の整数、sは1〜200、好
ましくは2〜100の整数、tは1〜200、好ましく
は2〜100の整数、uは1〜300、好ましくは10
〜200の整数を示す。また、一般式(a)〜(d)に
おいて、各単位は同一でも、異なる単位の共重合でも良
い。即ち、複数のR16〜R21が存在する場合、R16
志、R17同志、R18同志、R19同志、R20同志およびR
21同志は同一でも異なっても良い。前記共重号体の例と
してはエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共
重合単位などが特に好適な例として挙げられる。前記一
般式(1)で示されるウレタンアクリレートの分子量
は、2、500〜30、000、好ましくは3、000
〜20、000が望ましい。前記ウレタンアクリレート
1分子中の重合官能基数は、好ましくは2〜6、さらに
好ましくは2〜4が望ましい。前記一般式(1)で示さ
れるウレタンアクリレートは、公知の方法により容易に
製造することができ、その製法は特に限定されるもので
はない。
【0012】また、前記有機極性溶媒としては、極性を
有し支持電解質を溶解できるものであれば限定されない
が、好適なものとしては、具体的には、プロピレンカー
ボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネー
ト、γ−ブチロラクトン、スルホラン、1、3−ジオキ
サン、N、N−ジメチルホルムアミド、1、2−ジメト
キシエタン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、等
の単独または2種以上の混合物が好適なものとして挙げ
られる。有機非水溶媒の添加量はウレタンアクリレート
100重量部に対して通常100〜1200重量部、好
ましくは200〜900重量部の割合である。有機非水
溶媒の添加量が少なすぎると、イオン伝導度も十分では
なく、また有機非水溶媒の添加量が多すぎると機械強度
が低下してしまう場合がある。
【0013】支持電解質としては、本発明の高分子固体
電解質の用途などその目的により適宜選択され、本発明
の目的を損なわない限り、特に限定されないが、前記に
例示したものが好適なものとして挙げられる。添加量と
しては有機非水溶媒に対し0.1〜30wt%好ましく
は1〜20wt%である。
【0014】前記組成物Aは、基本的には前記ウレタン
アクリレート、有機非水溶媒、および支持電解質からな
る基本成分を前駆体とし、これを固化することにより得
られるが、かかる組成物の任意成分として本発明の目的
を損なわないさらに別の成分を必要に応じて加えること
ができ、係る任意成分としては、例えば架橋剤や重合開
始剤(光または熱)などが挙げられる。前記第1の例の
高分子固体電解質は、組成物Aを電解質の前駆体とし
て、前記の通り特定の方法によりセル内に注入した後、
固化することにより対向する導電基板の間に挟持させる
ことができる。ここでいう固化とは、重合性または架橋
性の成分などが、重合(重縮合)や架橋の進行にともな
い硬化し、組成物全体として常温において実質的に流動
しない状態となることをいう。なお、この場合ネットワ
ーク状の基本構造を有する。
【0015】また、前記高分子固体電解質の第2の例と
しては、下記一般式(16)で表される単官能アクリロ
イル変性ポリアルキレンオキシド、多官能アクリロイル
変性ポリアルキレンオキシド、有機極性溶媒、および前
記支持電解質を含む組性物(以下、「組成物B」と略
す。)を前駆体とし、当該前駆体を固化することにより
得られる高分子固体電解質が挙げられる。
【化20】 (式中、R22、R23、R24およびR25は、各々個別に水
素または1〜5の炭素原子を有するアルキル基であり、
nは1以上の整数を示す。) 一般式(16)において、R22、R23、R24およびR25
は、各々個別に水素または1〜5の炭素原子を有するア
ルキル基であり、係るアルキル基としては、メチル基、
エチル基、i−プロピル基、n−プロピル基、n−ブチ
ル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等が挙げられ、互
いに同一でも異なってもよく、特にR22は水素、メチル
基、R23は水素、メチル基、特にR24は水素、メチル
基、R25は水素、メチル基、エチル基が好ましい。ま
た、一般式(16)のnは、1以上の整数、通常1≦n
≦100、好ましくは2≦n≦50さらに好ましくは2
≦n≦30の範囲の整数を示すものである。一般式(1
6)で示される化合物としては、具体的には、オキシア
ルキレンユニットを1〜100、好ましくは2〜50、
さらに好ましくは1〜20の範囲で持つメトキシポリエ
チレングリコールメタクリレート、メトキシポリプロピ
レングリコールメタクリレート、エトキシポリエチレン
グリコールメタクリレート、エトキシポリプロピレング
リコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコ
ールアクリレート、メトキシポリプロピレングリコール
アクリレート、エトキシポリエチレングリコールアクリ
レート、エトキシポリプロピレングリコールアクリレー
ト、またはこれらの混合物等を挙げることができる。ま
た、nが2以上の場合、オキシアルキレンユニットが互
いに異なるいわゆる共重合オキシアルキレンユニットを
持つものでもよく、例えば、オキシエチレンユニットを
1〜50、好ましくは1〜20の範囲で持ち、かつオキ
シプロピレンユニットを1〜50、好ましくは1〜20
の範囲で持つところの、メトキシポリ(エチレン・プロ
ピレン)グリコールメタクリレート、エトキシポリ(エ
チレン・プロピレン)グリコールメタクリレート、メト
キシポリ(エチレン・プロピレン)グリコールアクリレ
ート、エトキシポリ(エチレン・プロピレン)グリコー
ルアクリレート、またはこれらの混合物などが挙げられ
る。
【0016】本発明に使用される多官能アクリロイル変
性ポリアルキレンオキシドとしては、好適なものとし
て、一般式(17)で示される化合物、いわゆる2官能
アクリロイル変性ポリアルキレンオキシド及び一般式
(18)で示される化合物、いわゆる3官能以上の多官
能アクリロイル変性ポリアルキレンオキシド等が挙げら
れる。
【化21】 (式中、R26、R27、R28およびR29は、各々個別に水
素または1〜5の炭素原子を有するアルキル基を示し、
mは1以上の整数を示す。)
【化22】 (式中、R30、R31およびR32は、各々個別に水素また
は1〜5の炭素原子を有するアルキル基を示し、pは1
以上の整数を示し、qは2〜4の整数であり、Lはq価
の連結基を示す。) 前記一般式(17)において、式中のR26、R27、R28
およびR29は、各々個別に水素または1〜5の炭素原子
を有するアルキル基を示し、係るアルキル基としては、
メチル基、エチル基、i−プロピル基、n−プロピル
基、n−ブチル基、t-ブチル基、n−ペンチル基等が挙
げられる。特にR26は水素、メチル基、R27は水素、メ
チル基、特にR28は水素、メチル基、R29は水素、メチ
ル基が好ましい。また、一般式(17)中のmは、1以
上の整数、通常1≦m≦100、好ましくは2≦m≦5
0さらに好ましくは2≦m≦30の範囲の整数を示すも
のである。係る化合物として具体的には、オキシアルキ
レンユニットを1〜100、好ましくは2〜50、さら
に好ましくは1〜20の範囲で持つポリエチレングリコ
ールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメ
タクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレー
ト、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、また
はこれらの混合物等を挙げることができる。また、mが
2以上の場合、オキシアルキレンユニットが互いに異な
るいわゆる共重合オキシアルキレンユニットを持つもの
でもよく、例えば、オキシエチレンユニットを1〜5
0、好ましくは1〜20の範囲で持ち、かつオキシプロ
ピレンユニットを1〜50、好ましくは1〜20の範囲
で持つところの、ポリ(エチレン・プロピレン)グリコ
ールジメタクリレート、ポリ(エチレン・プロピレン)
グリコールジアクリレートまたはこれらの混合物などが
挙げられる。一般式(18)におけるR30、R31および
32は、各々個別に水素または1〜5の炭素原子を有す
るアルキル基を示し、係るアルキル基としては、メチル
基、エチル基、i−プロピル基、n−プロピル基、n−
ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等が挙げられ
る。特にR30、R31およびR32は水素、メチル基が好ま
しい。また、式中のpは、1以上の整数、通常1≦p≦
100、好ましくは2≦p≦50さらに好ましくは2≦
p≦30の範囲の整数を示すものである。qは連結基L
の連結数であり、2≦q≦4の整数を示す。連結基Lと
しては、通常、炭素数1〜30、好ましくは1〜20の
二価、三価または四価の炭化水素基である。二価炭化水
素基としては、アルキレン基、アリーレン基、アリール
アルキレン基、アルキルアリーレン基、またはこれらを
基本骨格として有する炭化水素基などが挙げられ、具体
的には などが挙げられる。また、三価の炭化水素基としては、
アルキルトリル基、アリールトリル基、アリールアルキ
ルトリル基、アルキルアリールトリル基、またはこれら
を基本骨格として有する炭化水素基などが挙げられ、具
体的には などが挙げられる。また、四価の炭化水素基としては、
アルキルテトラリル基、アリールテトラリル基、アリー
ルアルキルテトラリル基、アルキルアリールテトラリル
基、またはこれらを基本骨格として有する炭化水素基な
どが挙げられ、具体的には 等が挙げられる。このような化合物の具体例としては、
オキシアルキレンユニットを1〜100、好ましくは2
〜50、さらに好ましくは1〜20の範囲で持つトリメ
チロールプロパントリ(ポリエチレングリコールアクリ
レート)、トリメチロールプロパントリ(ポリエチレン
グリコールメタクリレート)、トリメチロールプロパン
トリ(ポリプロピレングリコールアクリレート)、トリ
メチロールプロパントリ(ポリプロピレングリコールメ
タクリレート)、テトラメチロールメタンテトラ(ポリ
エチレングリコールアクリレート)、テトラメチロール
メタンテトラ(ポリエチレングリコールメタクリレー
ト)、テトラメチロールメタンテトラ(ポリプロピレン
グリコールアクリレート)、テトラメチロールメタンテ
トラ(ポリプロピレングリコールメタクリレート)、
2、2−ビス[4−(アクリロキシポリエトキシ)フェ
ニル]プロパン、2、2−ビス[4−(メタクリロキシ
ポリエトキシ)フェニル]プロパン、2、2−ビス[4
−(アクリロキシポリイソプロポキシ)フェニル]プロ
パン、2、2−ビス[4−(メタクリロキシポリイソプ
ロポキシ)フェニル]プロパン、またはこれらの混合物
等を挙げることができる。また、pが2以上の場合、オ
キシアルキレンユニットが互いに異なるいわゆる共重合
オキシアルキレンユニットを持つものでもよく、例え
ば、オキシエチレンユニットを1〜50、好ましくは1
〜20の範囲で持ち、かつオキシプロピレンユニットを
1〜50、好ましくは1〜20の範囲で持つところの、
トリメチロールプロパントリ(ポリ(エチレン・プロピ
レン)グリコールアクリレート)、トリメチロールプロ
パントリ(ポリ(エチレン・プロピレン)グリコールメ
タクリレート)、テトラメチロールメタンテトラ(ポリ
(エチレン・プロピレン)グリコールアクリレート)、
テトラメチロールメタンテトラ(ポリ(エチレン・プロ
ピレン)グリコールメタクリレート)、またはこれらの
混合物などが挙げられる。もちろん、前記一般式(1
7)で示される2官能アクリロイル変性ポリアルキレン
オキシドと前記一般式(18)で表される3官能以上の
多官能アクリロイル変性ポリアルキレンオキシドを併用
してもよい。一般式(17)で示される化合物と一般式
(18)で示される化合物を併用する場合、その重量比
は通常0.01/99.9〜99.9/0.01、好ま
しくは1/99〜99/1、さらに好ましくは20/8
0〜80/20の範囲が望ましい。本発明に使用される
一般式(16)で示される化合物と多官能アクリロイル
変性ポリアルキレンオキシドの重量比は通常1/0.0
01〜1/1、好ましくは1/0.05〜1/0.5の
範囲である。
【0017】前記極性有機溶媒の配合割合としては、一
般式(16)で示される化合物および多官能アクリロイ
ル変性ポリアルキレンオキシドの重量和に対して通常5
0〜800wt%、好ましくは100〜500wt%の
範囲が望ましい。また、前記支持電解質の配合割合は、
一般式(16)で示される化合物、多官能アクリロイル
変性ポリアルキレンオキシドおよび極性有機溶媒の重量
和に対して通常1〜30wt%、好ましくは3〜20w
t%の範囲である。
【0018】前記組成物Bは、これらの各成分の他に、
任意成分として、本発明を損なわない限り、さらに別の
成分を必要に応じて加えることができる。任意成分とし
ては、特に限定されないが、光重合のための光重合開始
剤や熱重合するための熱重合開始剤等を挙げることがで
きる。本発明に使用される重合開始剤の使用量は、一般
式(16)で示される化合物および、多官能アクリロイ
ル変性ポリアルキレンオキシドの重量和に対して通常
0.005〜5wt%、好ましくは0.01〜3wt%
の範囲である。前記第2の例の高分子固体電解質は、組
成物Bを適宜公知の方法により所望個所に注入した後、
固化することにより対向する導電基板の間に挟持させる
ことができる。ここでいう固化とは、重合性または架橋
性の成分、例えば単官能または多官能アクリロイル変性
ポリアルキレンオキシドなどが、重合(重縮合)や架橋
の進行にともない硬化し、組成物全体として常温におい
て実質的に流動しない状態となることをいう。なお、こ
の場合、通常単官能または多官能アクリロイル変性ポリ
アルキレンオキシドはともにネットワーク状の基本構造
をとる。もちろん、本発明において用いられる電解質に
おいては、これらに限定されるものではない。また、本
発明において用いる電解質として、電解質中にエレクト
ロクロミック物質を所望の態様にて含有させた、いわゆ
るエレクトロクロミック性電解質を用いても良い。
【0019】次に、電解質又はその前駆体の注入方法に
ついて添付図面に基づいて具体的に説明する。図1は本
発明のエレクトロクロミック素子の製造方法を実施する
ための製造装置の一例を示す概略図である。図1におい
て、1は真空容器を示し、この真空容器1には、容器1
内を排気するための排気バルブ2及び不活性ガスを導入
するリークバルブ3が接続されている。不活性ガスとし
ては、特に限定されないが、例えばアルゴン、ヘリウム
等や本注入方法において事実上不活性ガスである窒素な
どが挙げられる。真空容器1は、その形状、材質などは
特に限定されることはなく、製造するエレクトロクロミ
ック素子の形状、大きさなどにより適宜選択される。真
空容器1の到達真空度は、本発明の目的を損なわない限
り特に限定されないが、通常150Pa以下、好ましく
は15Pa以下であり、下限は低い方が好ましいが、経
済性、生産性を考慮すると1Pa程度である。もちろ
ん、係る到達真空度は、目的とするエレクトロクロミッ
ク素子のサイズにより適宜調製されるところであり、例
えば素子のサイズが大きいほど到達真空度を高めること
が望ましい。
【0020】真空容器1の内部には貯留容器4が設けら
れ、この貯留容器4は電解質又はその前駆体5が注入
(供給)されるものである。貯留容器4の形状、大きさ
は特に限定されることはないが、例えば断面円、三角、
方形、矩形、多角形等の筒形の容器などが使用可能であ
り、セル内に注入する電解質又はその前駆体5の量等に
応じて適宜決められる。すなわち、下記の注入管8が配
設可能であると共に、セルへの液注入後の液中に注入管
8の先端開口部が没入しうるものであればよく、その大
きさ及び形状は任意に決められる。
【0021】また、真空容器1内には前記エレクトロク
ロミック素子用のセル6が配置されている。この配置
は、セル基板面が水平面に対して平行または所定の角度
傾斜した状態になるようにする必要があり、その傾斜角
は、水平面に対して通常45°以下、好ましくは30°
以下、さらに好ましくは20°以下にすることが望まし
い。この際のセル6の設置は、セル6が平行または所定
の角度傾斜するように設置されるならばどのようにして
もよく、例えば、真空容器1内の底部に直接平置きして
もよいし、バット等の載置台に平行または傾斜するよう
に載置するようにしてもよい。セル6に設けられている
注入口7は、電解質又はその前駆体5がセル6内に注入
され得るものならばどのように形成してもよく、その形
状及び大きさは任意に決められる。また、注入口7の数
は特に限定されることはなく、1又は2以上設けるよう
にしてもよく、また、形成する個所は特に限定されるこ
とはない、つまり、セル6の導電基板間の周縁部やセル
基板面(導電基板)に設けるようにしてもよいが、好ま
しくは一方のセル基板面に0.5〜20mmφ好ましく
は2〜6mmφの開口部を形成して注入口7を設けるこ
とが望ましい。例えば、注入口7は周縁部の近傍のセル
基板面に円形状に1つ穿設される。
【0022】このセル6の注入口7には、所定の長さ
(セル6が真空容器1内に配置されたとき先端の開口部
が前記貯留容器4内の底部付近に配置可能な長さ)を有
する注入管8が連結された注入治具9が封着されてい
る。なお、注入口が複数設けられている場合には、各注
入口に注入治具が封着されていることはいうまでもな
い。注入治具9は、注入口7を封じるものであり、注入
口7を封じることができるものならばどのような治具で
もよい。すなわち、注入治具9は、セル内と外部とを注
入管8のみによって連通させるものであり、注入管8以
外からはセル内に液等の流体を注入することができない
ようになっている。また、注入管8の材質、形状、大き
さは、特に限定されないが、電解質又はその前駆体5や
注入口7の大きさに応じて任意に決められる。すなわ
ち、電解質又はその前駆体5によって腐食や組成変形等
をおこさない材質で、断面積があまりに大きくも小さく
もない大きさに形成されている管である。真空容器1内
に配置されたセルには注入治具9が取り付けられ、その
注入管8の先端の開口部が前記貯留容器4内の底部付近
に配置されている。この注入管8の開口部の支持は、開
口部が貯留容器4内の底部付近に配置されるならばどの
ようにしてもよく、例えば、注入管8自体をフレキシブ
ルパイプのようなもので形成してもよいし、また、支持
体により注入管8を支持するようにしてもよい。
【0023】また、真空容器1には注入バルブ10が接
続され、注入バルブ10に接続された導管11の先端が
真空容器1内の貯留容器4の上方に配置され、注入バル
ブ10からの液が貯留容器4内に供給されて容器4内に
溜まるようになっている。注入バルブ8には前記電解質
又はその前駆体5が貯留される外部保存容器12が接続
されている。外部保存容器12は、電解質またはその前
駆体5の静水圧の影響を防止し、また真空容器1内を高
真空に維持するために、脱気手段を有するものが好まし
い。脱気手段としては、特に限定されないが、通常、電
解質又はその前駆体5を入れた外部保存容器12の上部
より電解質又はその前駆体5中に溶存する気体を直接真
空法により脱気する方法、容器12の下部より不活性ガ
スをバブリングし電解質又はその前駆体5中の酸素を除
去した後、容器12上部より真空法により不活性ガスを
脱気する方法等が用いられる。また外部保存容器12中
の電解質又はその前駆体5を液体窒素などで凍結後、容
器12中を脱気した後容器12を排気系と切り離し電解
質又はその前駆体5を溶解する。このとき溶存気体が容
器12中に出てくるが、さらにこの気体を同様の方法で
脱気する、凍結−排気−溶解−凍結−排気の工程を繰り
返して脱気する方法等も用いることができる。
【0024】さて、この製造装置を用いてセル6内に電
解質又はその前駆体5を注入する場合を説明する。ま
ず、真空容器1内にセル6を水平面に対して平行または
所定の角度傾斜した状態、例えば真空容器内の底部に平
置きに設置する。この際、セル6の注入口7の位置は特
に限定されないが、例えば、貯留容器4の近傍に配置す
るようにする。このようにすれば、長さの短い注入管8
でセル6への液の注入を行える。セル6の注入口7には
注入治具9が取り付けられ、その注入管8の先端開口部
を貯留容器4内の底部付近に配設する。この際、注入管
8の先端開口部は、貯留容器4内の底部付近に配設され
ていればその開口向きは特に限定されないが、好ましく
は開口部の開口向きが下向きになっていることが好まし
い。真空容器1内でのセル6及び注入管8の配置が終了
したら、排気バルブ2を介して容器1内を排気する。こ
の場合の真空容器1の到達真空度は、本発明の目的を損
なわない限り特に限定されないが、通常150Pa以
下、好ましくは15Pa以下であり、下限は低い方が好
ましいが、経済性、生産性を考慮すると1Pa程度であ
る。この排気により、真空容器と共に注入管8を介して
セル6内も排気される。
【0025】排気後、注入バルブ10を開け、外部保存
容器12内の電解質又はその前駆体5を真空容器1内の
貯留容器4に注入(供給)する。この電解質又はその前
駆体の注入は、リークバルブ3が閉じられている状態で
おこなわれること以外は特に限定されない。なお、この
とき、排気バルブ2は、閉じても開いていてもよいが、
閉じておくことが望ましい。注入される電解質又はその
前駆体5の量は、適宜選択されるが、注入管8の先端開
口部7が電解質又はその前駆体5中に完全に没入し、か
つ当該セル6内に電解質又はその前駆体5が注入された
後も当該開口部7が電解質又はその前駆体5中に完全に
没入するに足りる量にすることは勿論である。また、電
解質又はその前駆体5を注入する際には、真空容器1内
を高真空に維持するために、通常外部に設置した外部保
存容器12を用いて予め脱気しておき、真空容器1内を
充分に脱気した後電解液注入バルブ8を介して貯留容器
4に供給し、そして電解質又はその前駆体5をセル6に
注入することが望ましい。このように、貯留容器4内に
電解質又はその前駆体5を注入することにより、多量の
電解質又はその前駆体5を注入しなくても、セル6内に
電解質又はその前駆体5を注入することができる。すな
わち、セル全体を電解質又はその前駆体5に浸漬する場
合にはセル全体を浸漬させるだけの液量が必要である
が、本発明では注入管8の開口部が液に没入していれば
よく、従来の真空注入方法に比して大幅に電解質又はそ
の前駆体5の使用量を低減することができる。
【0026】電解質又はその前駆体注入後、真空容器1
内にリークバルブ3より不活性ガスを導入し、真空容器
1内を昇圧して例えば常圧に戻す。この不活性ガスの導
入は、排気バルブ2および注入バルブ10が共に閉じら
れている状態で行われている以外は特に限定されない。
真空容器1内の昇圧は、容器1内とセル6内との間に圧
力差が生じて、セル6内に電解質又はその前駆体5が注
入されるならば、特に限定されないが、容器1内の圧力
調整が容易なことから常圧にすることが好ましい。この
ように、真空容器1内を常圧にすることにより、容器1
内とセル6内との間に圧力差が生じて、貯留容器4内の
電解質又はその前駆体5が注入管8を介してセル6内に
注入され、セル6内の間隙が電解質又はその前駆体5に
より満たされる。この際、セル6は、垂直ではなく水平
面に対して水平または傾斜した状態で設置されているた
め、静水圧の影響を受けることがないので、セル6が大
型化した場合でも電解質又はその前駆体5をセル6内全
体に円滑に注入することが可能となる。なお、電解質又
はその前駆体5として電解質前駆体を用いた場合、その
前駆体を電解質とするための操作、例えば光重合、光架
橋、熱重合、熱架橋などを行う必要があるが、当該操作
は、常圧に戻した直後に行ってもよく、また、セル6の
注入口7から注入治具9を外した後でもよい。もちろ
ん、当該操作は後述する封止操作後におこなってもよ
い。
【0027】電解質又はその前駆体5をセル6内に注入
した後、セル6の注入口7を通常封止材などにより封止
する。封止操作は、特に限定されないが、通常真空容器
1を開放して行われる。この場合、できるだけ不活性ガ
ス雰囲気下か湿度の極めて低い状態で行うことが望まし
い。封止剤としては、特に限定されないが、例えば注入
口部分に注入、充填あるいは塗布することにより素子内
部を密封し外部とを隔絶して、素子の性能に影響を与え
る成分、例えば、水分や酸素、一酸化炭素、などの活性
ガスなどの透過を阻止することが可能な材料であれば特
に制限されることはない。例えば、注入口を隙間無く埋
めることができる無機材料、例えばガラスやセラミッ
ク、あるいは樹脂、ゴムなどの高分子材料、例えばポリ
エチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミ
ド、ポリスルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテ
ルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリ
カーボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレー
ト、ポリスチレン、トリ酢酸セルロース、ポリメチルペ
ンテン、ポリシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレ
ン、ポリ酢酸セルロース、フェノール樹脂、尿素樹脂、
エポキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセター
ル、ポリビニールアルコール、アクリルおよびメタクリ
ル酸エステル、シアノアクリル酸エステル、ポリアミ
ド、天然ゴムや合成ゴム、例えば、イソプレンゴム、ブ
タジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、
エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、クロロス
ルホン化ポリエチレン、ニトリルゴム、ウレタンゴム、
多硫化ゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、
シリコーンゴム、フッ素ゴム、水素化ニトリルゴムなど
の材料があげられる。また、封止材として硬化性樹脂な
どを用い、それらを封止口に注入、充填あるいは塗布な
どして取り付け、硬化せしめて塞いでもよく、この方法
に用いられる樹脂としては特に限定されることはない
し、その硬化方法についても熱硬化型、光硬化型、電子
線硬化型などの種々の硬化型材料が利用可能である。利
用できる硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹
脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビ
ニルアセタール、ポリビニールアルコール、アクリルお
よびメタクリル酸エステル、シアノアクリル酸エステ
ル、ポリアミドなどがあげられ、これらは単体で用いて
も、また、2種あるいはそれ以上を混合して用いてもよ
い。また、これらを変成したり、フィラーを加えるなど
して、種々の改良を加えたものであっても良い。耐溶剤
性の点から特にエポキシ樹脂が優れている。また、アク
リル変成したエポキシ樹脂で光硬化型のものも特に優れ
ている。この場合は、含有するエポキシ残基1モルに対
してアクリル残基が0.01〜0.3モルのもの、さら
に好ましくはエポキシ残基1モルに対してアクリル残基
が0.05〜0.2モル含むようにアクリル変成したエ
ポキシ樹脂である。熱硬化の場合では、室温で硬化可能
なものも用いることができるが、加熱が必要な場合は各
種オーブン、赤外線ヒーター、電熱ヒーター、面状発熱
体などを用いて加熱すれば良く、室温−150℃の間
で、好ましくは室温−100℃の間で硬化できればよ
い。また、硬化に要する時間は、エレクトロクロミック
特性を損なわない範囲であれば特に限定されないが、好
ましくは24時間以内、さらに好ましくは1時間以内で
ある。光硬化の場合では、開始剤の吸収波長に適合した
ランプであれば、低圧、高圧、超高圧の各水銀ランプ、
キセノンランプ、白熱ランプ、レーザー光などが利用で
きる。硬化の際には素子全面を均一露光し、全面同時硬
化しても良いし、ランプや光源を移動させたり、光ファ
イバーなどの導光性材料で導いたり、ミラー等を利用す
ることによって集光したスポット光を走査して逐次硬化
しても良い。上記の封止材は単体で用いるほか、適当に
選択した2種以上を併用してもよい。
【0028】従って、本発明のエレクトロクロミック素
子の製造方法では、上記のような方法でセル6内に電解
質又はその前駆体5を注入するようにすると、電解質又
はその前駆体5を長時間高真空下にさらされることな
く、セル6内に電解質又はその前駆体5を注入すること
ができるため、電解質又はその前駆体5中の溶媒が蒸発
することが抑制される。このため、電解質又はその前駆
体5の溶媒の蒸発による電解質又はその前駆体5の組成
変化を防止して、エレクトロクロミック素子の特性を損
ねることがなくなる。また、蒸発した溶媒の排気系への
混入を防止することができる。また、電解質又はその前
駆体5の脱気を真空容器1外で行うことにより、電解質
又はその前駆体5の影響を受けることなく真空容器1内
を真空引きできるので、真空容器1内の真空度が向上
し、注入後のセル6内に残留する空隙量を低減すること
ができる。さらに、電解質又はその前駆体注入時のセル
6は、セル基板が垂直ではなく水平面に対して平行また
は傾斜させた状態で設置されているため、セル6が大型
化およびセル間隙が広くなっても、電解質又はその前駆
体5の静水圧の影響を受けることがない。このため、セ
ル6内への電解質又はその前駆体5の注入が円滑にでき
る。また、注入口7には注入治具9が取り付けられ、そ
の注入管8を用いているため、電解質又はその前駆体5
の液を効率的に使用でき、実質的な液使用量が少なくて
すむ。これらのことから、結果として長寿命のエレクト
ロクロミック素子を得ることが可能となる。
【0029】また、セル6の注入口7に注入治具9を取
り付け、その注入管8の先端開口部を貯留容器4内に配
置することにより、セル6への電解質又はその前駆体5
の注入を行えるため、真空容器1内でセル6を昇降(移
動)させる必要がないので、容器1内のスペース効率が
向上する。このため、大型のセルにも適用することがで
き、かつ、複数のセル6を同時に処理可能である。例え
ば、複数のセル6を処理する場合には、各セル6の注入
口7にそれぞれ注入治具9を取り付け、これらセル6を
真空容器1内に適宜配置すると共に、各注入管8の開口
部を貯留容器4内の底部付近にそれぞれは位置する。こ
のようにすれば、複数のセル6内に電解質又はその前駆
体5を同時に注入することができる。
【0030】
【実施例】以下に本発明を実施例を挙げて具体的に説明
するが、本発明はこれら実施例に記載されたものに限定
されるものではない。 (実施例1)エレクトロクロミック用対向電極は次のよ
うにして作製した。活性炭粉末(商品名YP17、クラ
レ製)80g、グラファイト((商品名「USSP」、
日本黒鉛商事社製)40g、シリコンレジン(商品名
「RZ7703」、日本ユニカー社製)343gおよび
ブチルセロソルブ25gを混合し活性炭ペーストを作製
した。次いで10Ω/sq.の50cm×50cmの厚
み2mmのITOガラス(ガラス上にIn23:Snタ
ーゲットを用いてスパッタリング成膜した膜厚2500
オングストロームの透明導電性ガラス)上に前記活性炭
ペーストをストライプパターン部材としてスクリーンを
用い、ストライプ幅500μm、高さ100μmのスト
ライプ部材が全面積の20%になるように等間隔に印刷
し、その後180℃で90分熱硬化させ、対向電極を作
製し、これを対向電極基板とした。また、エレクトロク
ロミック用発色電極は次のようにして作製した。10Ω
/sq.の50cm×50cmの厚み2mmのITOガ
ラス(図2に示すようにガラスの辺から約15mmの距
離に4mmφの開口部があるもの)上に、室温において
10〜30オングストローム/sの条件で、膜厚が50
00オングストロームとなるように酸化タングステンを
蒸着し、エレクトロクロミック発色電極を作製し、これ
を発色電極基板とした。これらのように作製した対向電
極基板および発色電極基板を500μmの間隔を隔てて
対向させ、これら基板間の周縁部を全てシール剤を用い
て接着し、セル断面ではなくセル表面に電解液注入口を
備える50×50cmサイズのセルを組み立てた。次に
図1に示すように注入管付き注入治具を注入口に取り付
け、真空容器内に装填した。このとき注入管の先端開口
部を真空容器内にある貯留容器の底部付近に配置すると
ともに、外部に設置した注入バルブ付き電解液の液保存
器と連結している導管もその容器の上方に配置した。次
にγ−ブチロラクトンを溶媒としたLiClO4の電解
質含む電解液を外部保存容器に入れて、電解液を予め脱
気した。以上の装填が完了した後、排気バルブを開けて
容器内を30分間ロータリーポンプにて排気した。容器
内の真空度は6.7Paであった。次いで排気バルブを
閉じた後電解液注入バルブを開けて、真空容器内の貯留
容器にセル内に電解質を注入するために必要な所定量の
1.1倍量の電解液を導入しバルブを閉じた。このとき
セル注入口に連結している注入管の先端開口部は電解液
中に浸され真空容器内とセルは隔離される。電解液を容
器内に導入した後の真空度は0.7torrとなり、電
解液中に含まれる溶媒の室温下での蒸気圧を示した。こ
の状態でリークバルブを解放し窒素を真空容器内に導入
することにより常圧に戻した。真空容器を解放してセル
を取り出し、注入口を封止した。セル内の残留空隙部は
1mmφ程度であった。
【0031】着消色試験 次に、得られた素子について着消色試験を行った。この
素子の光学密度変化は以下の要領で求めた。ビームエキ
スパンダーで直径約20mmに拡大されたHe−Neレ
ーザーの633nmの光をエレクトロクロミック素子の
中央を通過するように照射し、その透過光をSiフォト
ダイオードで計測した。素子に消色電圧を印加し消色し
た時の透過光量Tbleachを求める。その後着色電圧をエ
レクトロクロミック素子に印加すると同時に5S間隔で
透過光量を測定する。着色電圧印加後t秒経過した時の
透過光量をT(t)とする。この時の光学密度変化を以
下の式で定義する。 光学密度変化=log(Tbleach/T(t)) 対数は常用対数である。エレクトロクロミック発色電極
側が負極、対向電極側が正極になるように1.5Vを1
50秒間印加したところ、青色に均一に着色した。着色
時の学密度は、素子の中心部で0.50であった。続い
て、エレクトロクロミック発色電極が正極、対向電極が
負極となるように1Vの電圧を60秒間印加したとこ
ろ、着色は素子全面にわたり速やかに消色した。
【0032】(実施例2)実施例1において電解液にメ
トキシテトラエチレングリコールメタクリレートを20
wt%添加し、光硬化触媒としてダロキュアー1173
を0.02wt%を添加した光重合性電解液を調整し
た。この電解液を用いた以外は実施例1と同様に行っ
た。電解液を注入後注入口を封止し、このセルに高圧水
銀灯を用いて20J照射し電解液を重合させた。得られ
たセル内に残留する空隙部は1mmφ程度であった。こ
のようにして得られた素子について前記実施例1と同様
に着消色試験を行った。その結果、エレクトロクロミッ
ク発色電極側が負極、対向電極側が正極になるように
1.5Vを150秒間印加したところ、青色に均一に着
色した。着色時の光学密度は、素子の中心部で0.48
であった。続いて、エレクトロクロミック発色電極が正
極、対向電極が負極となるように1Vの電圧を60秒間
印加したところ、着色は素子全面にわたり速やかに消色
した。
【0033】(実施例3)実施例1で一対の基板間隔を
200μmにした以外は、前記実施例1と同様の方法で
行った。容器内の真空度は6.7Paで、電解液を容器
内に導入後の真空度は93Paであった。電解液を注入
後にセルの注入口を封止した。得られたセル内に残留す
る空隙部は1mmφ以下であった。このようにして得ら
れた素子について前記実施例1と同様に着消色試験を行
った。その結果、エレクトロクロミック発色電極側が負
極、対向電極側が正極になるように1.5Vを150秒
間印加したところ、青色に均一に着色した。着色時の光
学密度は、素子の中心部で0.50であった。続いて、
エレクトロクロミック発色電極が正極、対向電極が負極
となるように1Vの電圧を60秒間印加したところ、着
色は素子全面にわたり速やかに消色した。
【0034】(実施例4)実施例1において50×50
cmサイズのセルを4枚同時にセットした以外は実施例
1と同様にして行った。ただし各セルには注入管付き注
入口治具を注入口に取り付け、注入管の先端開口部を真
空容器内にある貯留容器に配置した。また使用した電解
液量は4セル分所定量の1.1倍量を使用した。その結
果4セルとも電解液の注入は問題なくでき、セル内に残
留する空隙部は4セルとも1mmφ程度であった。この
ようにして得られた素子について前記実施例1と同様に
着消色試験を行った。その結果、エレクトロクロミック
発色電極側が負極、対向電極側が正極になるように1.
5Vを150秒間印加したところ、青色に均一に着色し
た。着色時の光学密度は、素子の中心部で0.50であ
った。続いて、エレクトロクロミック発色電極が正極、
対向電極が負極となるように1Vの電圧を60秒間印加
したところ、着色は素子全面にわたり速やかに消色し
た。
【0035】(比較例1)実施例1においてセルを真空
容器内に固定するとともに電解液をあらかじめ貯留容器
内に充填しておき、セル注入口に連結している注入管の
先端開口部は電解液に接触しないように固定し、その状
態で30分排気した。真空度は93Paであった。次に
セル注入口に連結している注入管開口部を電解液に浸
し、その後容器内を常圧に戻した。セルを取り出し注入
口を封止した。セル内の空隙部は5mmφ程度であっ
た。
【0036】(比較例2)一般的な真空注入法で採用さ
れている方法で一対の基板間隔が500μmのセル断面
に10mm幅の注入口を有する50×50cmサイズの
セルを真空容器内に垂直に設置し、その下部に電解液容
器を装着した。真空下で脱気後電解液に注入口を浸漬し
注入を行った。しかし電解液の静水圧のためにセル全面
には電解液が注入できなかった。
【0037】(比較例3)実施例1においてセルを垂直
に設置した以外は実施例1と同様にして行った。容器内
の真空度は6.7Paで、電解液を容器内に導入後の真
空度は93Paであった。次いで容器を窒素を用いて常
圧に戻したが、電解液は静水圧のためにセル全面には注
入できなかった。
【0038】(比較例4)実施例1においてセルに電解
液を注入し、次いでそのセルの注入口を封止しない状態
で注入口を上にした以外は、実施例1と同様にして行っ
た。その結果、電解液の静水圧のためにセル間隙が膨ら
み電解液のメニスカスはセルの2/3程度まで下降しセ
ル上部に空隙を生じた。
【0039】
【発明の効果】以上要するに本発明によれば、電解質又
はその前駆体が長時間高真空度下にさらされないので、
電解質又はその前駆体中の溶媒の蒸発によるエレクトロ
クロミック素子の特性を損ねることがないと共に、蒸発
した溶媒の排気系への混入を防止することができる。ま
た、電解質又はその前駆体の影響を受けることなく真空
容器内を排気でき、セル内に残留する空隙量を低減する
ことができる。さらに、電解質又はその前駆体の静水圧
の影響を受けにくいので、セル内への電解質又はその前
駆体の注入が円滑に行えると共に、セル内に空隙が生じ
ることがなくなる。さらにまた、電解質又はその前駆体
の製造時における実質的な使用量を少なくすることがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のエレクトロクロミック素子の製造方法
を実施するための装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明のエレクトロクロミック素子用セルの一
構造例を示す図で、その(a)セルの断面図、(b)は
セルの平面図である。
【図3】従来のエレクトロクロミック素子用セルの電解
液注入方法を示す工程図で、その(a)は減圧工程を、
(b)は注入工程をそれぞれ示す図である。
【符号の説明】
1 真空容器 2 排気バルブ 3 リークバルブ 4 貯留容器 5 電解質又はその前駆体 6 エレクトロクロミック素子用セル 7 注入口 8 注入管 9 注入治具 10 注入バルブ 11 導管 12 外部保存容器

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 所定の間隔を隔てて1対の導電基板を対
    向させ、これら基板間の周縁部をシールしてセルを形成
    し、そのセル内に注入口を介して電解質又はその前駆体
    を注入して電解質層を形成せしめてエレクトロクロミッ
    ク素子を製造する際に、 真空容器内に、前記電解質又はその前駆体が入れられる
    貯留容器を設けると共に、注入管が連結される注入治具
    を前記注入口に封着したエレクトロクロミック素子用セ
    ルを水平面に対して平行または傾斜させて設置し、その
    注入管の先端開口部を貯留容器内に配置してから該真空
    容器内を排気し、排気後、真空容器外から電解質又はそ
    の前駆体を前記貯留容器内に入れて注入管の開口部を電
    解質又はその前駆体に没入させ、その後、真空容器内の
    圧力を上げて、セル内に電解質又はその前駆体を注入す
    ることを特徴とするエレクトロクロミック素子の製造方
    法。
  2. 【請求項2】 所定の間隔を隔てて1対の導電基板を対
    向させ、これら基板間の周縁部をシールしてセルを形成
    し、そのセル内に注入口を介して電解質又はその前駆体
    を注入して電解質層を形成せしめてエレクトロクロミッ
    ク素子を製造する際に、 真空容器内に、前記電解質又はその前駆体が入れられる
    貯留容器を設けると共に、注入管が連結される注入治具
    を前記注入口に封着した複数のエレクトロクロミック素
    子用セルをそれぞれ水平面に対して平行または傾斜させ
    て設置し、それら各注入管の先端開口部をそれぞれ貯留
    容器内に配置してから該真空容器内を排気し、排気後、
    真空容器外から電解質又はその前駆体を前記貯留容器内
    に入れて全ての注入管の開口部を電解質又はその前駆体
    に没入させ、その後、真空容器内の圧力を上げて、セル
    内に電解質又はその前駆体を注入することを特徴とする
    エレクトロクロミック素子の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2007043590A1 (ja) * 2005-10-11 2007-04-19 Matsushita Electric Industrial Co., Ltd. フェーズドアレイアンテナ
CN102540613A (zh) * 2010-12-28 2012-07-04 京东方科技集团股份有限公司 电泳显示器件的制造方法及制造设备

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WO2007043590A1 (ja) * 2005-10-11 2007-04-19 Matsushita Electric Industrial Co., Ltd. フェーズドアレイアンテナ
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