JPH1126231A - 交換結合膜およびその製造方法並びにそれを用いた磁気抵抗効果素子 - Google Patents

交換結合膜およびその製造方法並びにそれを用いた磁気抵抗効果素子

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JPH1126231A
JPH1126231A JP9177312A JP17731297A JPH1126231A JP H1126231 A JPH1126231 A JP H1126231A JP 9177312 A JP9177312 A JP 9177312A JP 17731297 A JP17731297 A JP 17731297A JP H1126231 A JPH1126231 A JP H1126231A
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film
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magnetic field
exchange
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Keiya Nakabayashi
敬哉 中林
Masaji Doujima
正司 道嶋
Haruhiko Deguchi
治彦 出口
Tomohisa Komoda
智久 薦田
Toru Kira
徹 吉良
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    • B82YSPECIFIC USES OR APPLICATIONS OF NANOSTRUCTURES; MEASUREMENT OR ANALYSIS OF NANOSTRUCTURES; MANUFACTURE OR TREATMENT OF NANOSTRUCTURES
    • B82Y25/00Nanomagnetism, e.g. magnetoimpedance, anisotropic magnetoresistance, giant magnetoresistance or tunneling magnetoresistance
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01FMAGNETS; INDUCTANCES; TRANSFORMERS; SELECTION OF MATERIALS FOR THEIR MAGNETIC PROPERTIES
    • H01F10/00Thin magnetic films, e.g. of one-domain structure
    • H01F10/32Spin-exchange-coupled multilayers, e.g. nanostructured superlattices
    • H01F10/3218Exchange coupling of magnetic films via an antiferromagnetic interface

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 交換結合磁界が大きく、耐食性、熱安定性お
よび熱処理に対する安定性に優れた交換結合膜を提供す
る。 【解決手段】 強磁性層13と、この強磁性層13に隣
接して形成された反強磁性層14とを備えている交換結
合膜において、この強磁性層13が、(111)面配向
した面心立方構造を有する強磁性体からなり、上記反強
磁性層がMnRu合金からなる。強磁性層13における
反強磁性層14との界面が格子の最密面となっているの
で、交換結合にかかる磁気モーメントが多くなり、交換
結合磁界が高くなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気記録用再生ヘ
ッドあるいは磁気センサ等に使用される磁気抵抗効果素
子に用いられる、強磁性層と反強磁性層とを積層した構
造の交換結合膜およびその製造方法並びにそれを用いた
磁気抵抗効果素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】磁気ディスク装置等の磁気記録装置にお
いては、媒体の記録密度の向上に伴い、磁気ヘッドの高
性能化が求められている。即ち、記録ヘッドでは磁気記
録媒体の高保磁力化に伴い、飽和磁束密度の大きな材料
が求められている。
【0003】また、再生ヘッドでは、従来の誘導型ヘッ
ドに代えて磁気抵抗効果を利用したいわゆるMR(magn
etoresistive effect)ヘッドを用いることで、再生出力
の増加が図られている。これは、媒体の小型化に伴い、
再生ヘッドと媒体との相対速度が低下するという問題に
対処するためである。
【0004】このようなMRヘッドに用いられる、磁気
抵抗効果を示す磁気抵抗効果素子の材料としては、従来
より、NiFe合金やNiCo合金からなる磁性体薄膜
が知られている。これらの薄膜の抵抗変化率はNiFe
合金で2〜3%程度、NiCo合金では最大6%程度で
ある。このような薄膜の磁気抵抗効果は、スピン軌道相
互作用によるものであり、測定電流の方向と磁性体の磁
化方向とのなす角度に依存しており、異方性磁気抵抗効
果(AMR:anisotropic magnetoresistive effect)と
呼ばれている。
【0005】これに対して、近年、磁性体薄膜と非磁性
薄膜とを交互に積層した人工格子多層膜において、AM
Rによって得られる抵抗変化率より一桁以上大きな抵抗
変化率が得られることが報告され、注目されている。こ
の人工格子多層膜における磁気抵抗効果は、従来のAM
Rとは発現機構が異なる。この人工格子多層膜では、非
磁性層を介して上下に配置された磁性層の磁化が、反平
行の場合と平行の場合とで伝導電子の散乱が大きく異な
るために抵抗変化が現れるのである。この人工格子多層
膜では、磁性層間の磁化が反平行の場合、伝導電子の散
乱は大きく、抵抗値は高くなる。一方、磁性層間の磁化
が平行のとき、散乱が減少し、抵抗値は小さくなる。
【0006】このような人工格子多層膜の磁気抵抗効果
は、抵抗変化率の値がAMRに比較して非常に大きいた
め、巨大磁気抵抗効果(GMR:giant magnetoresisti
ve effect)と呼ばれている。また、GMRを発現する膜
はGMR膜と呼ばれている。このようなGMR膜のう
ち、現在最大の磁気抵抗変化を示す材料系であるCo/
Cu多層膜では、常温においても60%以上の抵抗変化
率が得られている。
【0007】しかしながら、このCo/Cu多層膜のよ
うな人工格子多層膜では、抵抗変化率は非常に大きいも
のの、無磁界で磁化の反平行状態を実現するために磁性
層間の交換相互作用を用いているので、磁性層間の結合
が非常に強くなっている。従って、この交換相互作用を
断ち切り、磁化の平行状態を実現するためには、数10
0〜数KOeの外部磁界が必要となる。このため、微弱
な磁界に対する感度が小さくなってしまうので、この人
工格子多層膜からなるGMR膜を磁気記録再生ヘッドに
適用するには不充分である。
【0008】そこで、GMR膜の磁界感度を向上させる
ために、人工格子多層膜の他に、スピンバルブ構造の人
工格子膜(以下、スピンバルブ膜とする)からなるGM
R膜が考案され、注目されている。図10は、このスピ
ンバルブ膜の構成の概略を示す説明図である。この図に
示すように、このスピンバルブ膜は、非磁性層32を介
して、強磁性体からなる自由磁化層31と固定磁化層3
3とが配置された構成を有している。また、この図中
で、自由磁化層31と固定磁化層33とに描かれた矢印
は、それぞれの磁化層31・33の磁化方向を表してい
る。
【0009】また、この固定磁化層33には、隣接し
て、反強磁性体からなる反強磁性層34が配置されてい
る。この反強磁性層34により、固定磁化層33に交換
相互作用による交換バイアスが印加され、外部磁界がス
ピンバルブ膜の動作磁界範囲内である場合には、固定磁
化層33の磁化は一方向に固定される。
【0010】また、自由磁化層31は、外部磁界が無い
場合には、その磁化が固定磁化層33の磁化の向きに対
して90°の方向を向くように作成される。そして、こ
の自由磁化層31の磁化方向は、外部磁界に応じて変化
することができる。
【0011】従って、外部磁界を固定磁化層33の磁化
の方向に印加した場合には、これら2つの磁化層31・
33の磁化は平行となる。また、外部磁界を固定磁化層
33の磁化と逆方向に印加した場合には、2つの磁化層
31・33の磁化は反平行となる。これにより、スピン
バルブ膜によって、これら2つの磁化層31・33の磁
化のなす角の余弦に依存した磁気抵抗効果を得ることが
できる。
【0012】スピンバルブ膜においては、2つの磁化層
31・33は反強磁性結合していない。従って、磁化層
31・33を厚くすることが可能であり、NiFe合金
等のソフト性の高い材料をこれら磁化層31・33に用
いることで感度の向上を図ることができるので、スピン
バルブ膜の構造は最も実用的な構造といえる。
【0013】このスピンバルブ膜において、反強磁性層
34と固定磁化層33とを有し、反強磁性体と強磁性体
との交換結合を利用して、固定磁化層33の磁化を一方
向に固定する積層膜を交換結合膜という。
【0014】このような交換結合膜における反強磁性層
について、様々な反強磁性材料を用いた報告がなされて
いる。例えば、「“Exchange-Coupled Ni-Fe/Fe-Mn, Ni
-Fe/Ni-Mn and NiO/Ni-Fe Films for Stabilization of
Magnetoresistive Sensors,”IEEE Trans. Magn., Vo
l. 31. No.6 (1995) 2585-2590,」に開示されているよ
うに、反強磁性層にFeMn合金やNiOを用いる例
が、従来よりよく知られている。
【0015】また、これらFeMn合金やNiO以外に
も、Mnに第2元素を添加することによって、熱安定性
や耐食性に優れた交換結合膜を得るための検討が行われ
ている。例えば、「特開平6−314617号公報」に
は、反強磁性材料として、MnにCu,Ru,Rh,R
e,Ag,Au,Os,Irを25〜76原子%、ある
いはPd,Ptを25〜60原子%または65〜76原
子%添加したものを用いることによって、反強磁性層の
耐食性と熱的安定性を向上させ、これを強磁性層と積層
することによって交換結合膜を形成する例が開示されて
いる。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記のよう
に、図10に示したスピンバルブ膜は、外部磁界に応じ
て磁化方向が回転する自由磁化層31と、非磁性層32
と、固定磁化層33とがこの順に配置されている。そし
て、2つの磁化層31・33の磁化方向の向きのなす角
度の余弦に依存した磁気抵抗効果が生じる。このとき、
自由磁化層31と固定磁化層33との保磁力等の磁気特
性が同様のものであると、外部磁界によって自由磁化層
31と固定磁化層33との磁化が同様に回転してしま
う。このため、これら2つの磁化層31・33の磁化の
向きが常に同方向となり、磁気抵抗効果が得られなくな
る。
【0017】そこで、スピンバルブ膜では、固定磁化層
33に隣接して反強磁性層34を配置することによって
交換結合膜を形成し、反強磁性体と強磁性体との交換結
合を利用して、片側の固定磁化層33の磁化を一方向に
固定している。これにより、外部磁界中で、固定磁化層
33の磁化と反強磁性層34の磁化とが異なる方向を向
くようにすることができ、磁気抵抗効果を得ることがで
きる。従って、交換結合膜における固定磁化層33と反
強磁性層34との間の交換結合磁界が小さいと、外乱磁
界によって容易に固定磁化層33の磁化が回転してしま
い、スピンバルブ膜に適用した場合、信号磁界からの出
力を安定して再生できなくなる。
【0018】反強磁性層にFeMn合金を用いた上記の
交換結合膜では、比較的大きな交換結合磁界を得ること
ができ、この交換結合膜をスピンバルブ膜に適用するこ
とで磁気抵抗効果を得ることができる。しかしながら、
FeMn合金は耐食性に問題がある。さらに、FeMn
合金を用いた交換結合膜では、交換結合磁界が温度の上
昇とともに減少して約150℃で消失してしまう。こ
の、交換結合磁界が消失する温度を、ブロッキング温度
(Tb)という。このFeMn合金を用いた交換結合膜
では、ブロッキング温度が約150℃と低く、さらに、
約100℃の昇温で交換結合磁界が25Oe程度にまで
低下してしまう。このため、この交換結合膜を用いたス
ピンバルブ膜からなる磁気抵抗効果素子には、熱安定性
の点で問題がある。
【0019】また、上記したNiOは酸化物であるた
め、耐食性は非常に良好である。また、このNiOを反
強磁性層に用いた交換結合膜のブロッキング温度は20
0℃であり、FeMn合金を用いた交換結合膜よりも高
い。しかしながら、NiOを反強磁性層に用いた交換結
合膜は、FeMn合金を用いたものに比べ交換結合磁界
が小さいといった問題がある。さらに、ブロッキング温
度は200℃であるが、室温で得られる交換結合磁界が
低いので、約100℃での交換結合磁界はFeMn合金
を用いたものと同程度(約25Oe)である。このよう
に、この交換結合膜を用いたスピンバルブ膜からなる磁
気抵抗効果素子も、熱安定性の点に問題を有する。
【0020】さらに、MnにCu,Ru,Rh,Re,
Ag,Au,Os,Ir,Pd,Pt等を添加した反強
磁性体を用いた交換結合膜は、FeMn合金を用いた交
換結合膜より耐食性は向上するが、第2元素として何れ
を添加しても、最大で約20Oe程度の交換結合磁界し
か得られない。この程度の交換結合磁界では、外乱磁界
によって固定磁化層の磁化が容易に回転してしまう。従
って、これらの反強磁性体を用いた交換結合膜をスピン
バルブ膜に適用しても、信号磁界からの出力を安定して
得ることはできない。
【0021】このように、FeMn合金やNiO、或い
はMnにCu,Ru,Rh,Re,Ag,Au,Os,
Ir,Pd,Pt等を添加したものを反強磁性材料とし
て用いた交換結合膜は何れも、交換結合磁界の大きさ、
耐食性、および熱安定性(Tb)の全条件を同時に満足
するものではなく、磁気抵抗効果素子などの磁気デバイ
スに応用した場合、デバイスの信頼性が低下する。
【0022】また、前記の反強磁性材料を用いて磁気ヘ
ッド等の磁気デバイスを製造する際、通常250℃程度
の熱処理プロセスを経ることになる。従って、交換結合
膜は、このような熱処理を行った後でも交換結合磁界が
低下しないことが重要である。
【0023】本発明は、上記の課題に鑑みなされたもの
で、その目的は、交換結合磁界の大きさ、耐食性、熱安
定性および熱処理に対する安定性の全ての条件を満足す
る交換結合膜の構造、およびその製造方法、並びにそれ
を用いた、安定した出力が得られる信頼性の高い磁気抵
抗効果素子を提供することにある。
【0024】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明の請求項1に記載の交換結合膜は、強磁性
層と、この強磁性層に隣接して形成された反強磁性層と
を備え、これら強磁性層と反強磁性層との交換結合によ
り、この強磁性層に交換結合磁界を与える交換結合膜に
おいて、上記反強磁性層がMnRu合金からなると共
に、上記強磁性層が面心立方構造を有する強磁性体から
なり、かつ、(111)面配向していることを特徴とし
ている。
【0025】また、請求項3に記載の交換結合膜の製造
方法は、強磁性層と、この強磁性層に隣接して形成され
た反強磁性層とを備え、これら強磁性層と反強磁性層と
の交換結合により、この強磁性層に交換結合磁界を与え
る交換結合膜の製造方法において、面心立方構造をとる
強磁性体を(111)面配向させて上記強磁性層として
成膜し、その後、この強磁性層の上に、MnRu合金か
らなる反強磁性層を成膜することを特徴としている。
【0026】請求項1に記載の交換結合膜および請求項
3に記載の交換結合膜の製造方法によって製造された交
換結合膜の構成によれば、強磁性層は面心立方構造であ
り、さらに、(111)面配向している。面心立方構造
における格子点の最密面は(111)面であるため、上
記交換結合膜における強磁性層は、反強磁性層との界面
に最も多くの原子が配されている状態となっている。
【0027】従って、上記の交換結合膜では、反強磁性
層との交換結合に寄与する強磁性層の磁気モーメントが
多くなっているため、大きな交換結合磁界を得ることが
できる。そして、上記の交換結合膜は、MnRu合金か
らなる反強磁性層を有しているので、従来より大きな交
換結合磁界を発生することが可能であり、耐食性、熱安
定性および熱処理に対する安定性の何れにも優れた交換
結合膜となっている。これにより、上記の交換結合膜
は、磁気抵抗効果素子等の磁気デバイスに良好に応用可
能なものとなっている。
【0028】また、上記の交換結合膜においては、反強
磁性層をなすMnRu合金のRu組成の範囲は、4〜3
6原子%であることが好ましい。これにより、50Oe
以上の大きな交換結合磁界を得ることが可能となる。
【0029】このように、上記の交換結合膜では、大き
な交換結合磁界を得るための反強磁性層をなすMnRu
合金におけるRu組成範囲が、非常に広くなっている。
従って、このMnRu合金の組成を厳密に調整する必要
がない。これにより、上記の交換結合膜の製造の歩留り
を向上させることができる。また、反強磁性層の成膜の
ために、厳密な組成調整を行うための高価な合金ターゲ
ットを使用する必要がない。従って、製造にかかるコス
トを低く抑えることが可能となる。
【0030】また、上記の交換結合膜における強磁性層
は、結晶構造が面心立方構造であれば特に限定されない
が、例えば、NiFe合金やCoFe合金を用いること
ができる。
【0031】さらに、上記の製造方法において、下地層
を形成してから、強磁性層を成膜することで、例えばガ
ラス等からなる基板上に成膜する場合にも、面心立方構
造をとる強磁性層の(111)面配向性を高めることが
できる。
【0032】また、本発明の磁気抵抗効果素子は、上記
した本発明の交換結合膜、あるいは本発明の交換結合膜
の製造方法によって製造された交換結合膜を備え、上記
交換結合膜における強磁性層に隣接して金属非磁性層が
形成されると共に、この金属非磁性層に隣接して、磁化
の方向が外部磁界に応じて自由に回転する第2の強磁性
層が形成されており、上記交換結合膜における強磁性層
と上記第2の強磁性層との磁化の向きのなす角度によっ
て、磁気抵抗効果をもつことを特徴としている。
【0033】上記の構成によれば、上記の磁気抵抗効果
素子は、従来のものより大きな交換結合磁界を発生し、
耐食性、熱安定性および熱処理に対する安定性の何れに
も優れ、かつ、製造コストの低い上記の交換結合膜を備
えている。従って、外乱磁界に安定であり、環境による
磁気特性の経時変化や、温度上昇磁気特性の劣化、ある
いは製造時の熱処理プロセスによる磁気特性の劣化等が
少なく、かつ、製造コストの低い優れた磁気抵抗効果素
子となっている。
【0034】
【発明の実施の形態】
〔実施の形態1〕本発明の第1の実施の形態について、
図1ないし図8に基づいて説明すれば、以下の通りであ
る。図1は本実施の形態にかかる交換結合膜(以下、本
交換結合膜とする)の構成を示す断面図である。この図
に示すように、本交換結合膜は、ガラスまたはSi等か
らなる基板11上に、下地層12、強磁性層13、Mn
Ru合金からなる反強磁性層14が順次積層された構成
である。
【0035】強磁性層13は、面心立方構造(fcc構
造;Face-Centered Cubic 構造)をとる強磁性体からな
り、(111)面配向されて成膜されている。fcc構
造の最密面は(111)面であるので、このように(1
11)面配向とすることで、この強磁性層13における
隣接する反強磁性層14との界面は、最も多くの原子が
配列している状態となる。従って、強磁性層13と反強
磁性層14との交換結合に寄与する強磁性層13の磁気
モーメントが多くなるので、本交換結合膜の交換結合磁
界は高くなっている。
【0036】この強磁性層13の材料としては、結晶構
造がfcc構造をとる強磁性体であれば特に限定される
ものではない。例えば、NiFe合金や、CoFe合金
等が用いられる。
【0037】上記の反強磁性層14は、MnRu合金か
らなり、隣接する強磁性層13との間に生じる交換結合
磁界により、強磁性層13の磁化方向を一方向に固定す
るものである。そして、この反強磁性層14をなすMn
Ru合金のRu組成は、磁気抵抗効果素子に適用できる
程度の交換結合磁界を発生するためには、4〜36原子
%であることが必要であり、より好ましくは、11〜2
7原子%である。
【0038】下地層12は、fcc構造をとる強磁性層
13を成膜する際に、この強磁性層13の(111)面
配向性を高めるために配されるものである。この下地層
12としては、強磁性層13の(111)面配向を高め
るものであれば特に限定されないが、Taの単層膜やT
aを含む積層膜を用いることができる。
【0039】また、この下地層12は、必ずしも必要な
ものではなく、下地層12を設ける必要がない場合もあ
る。Si単結晶基板上に成膜された場合にも、Ta層上
に成膜した場合と同様に、このNiFe合金層が(11
1)面配向し易いことが実験的に確認されている。
【0040】このような構成を有する本交換結合膜で
は、50Oe以上の交換結合磁界を得ることが可能であ
ることが確認されている。特に反強磁性層14をなすM
nRu合金のRu組成を11〜27原子%とすること
で、100Oe以上の交換結合磁界を得ることも可能で
あることが確認されている。
【0041】このように、本交換結合膜では、大きな交
換結合磁界を得るための反強磁性層14をなすMnRu
合金におけるRu組成範囲が、非常に広くなっている。
従って、このMnRu合金の組成を厳密に調整する必要
がない。これにより、本交換結合膜の製造の歩留りを向
上させることができる。また、反強磁性層14の成膜の
ために、厳密な組成調整を可能とするための、高価な合
金ターゲットを使用する必要がない。従って、製造にか
かるコストを低く抑えることが可能となる。
【0042】また、本交換結合膜では、ブロッキング温
度においても、従来から報告されているFeMn合金を
反強磁性層として用いた交換結合膜の150℃よりも高
い、250℃程度にまで高められることが確認されてい
る。さらに、本交換結合膜では、100℃まで昇温した
状態での交換結合磁界も、約55Oeと高く維持できる
ことが確認されている。従って、100℃まで昇温した
状態での交換結合磁界が約25Oeまで低下してしまう
FeMn合金やNiOを用いた交換結合膜に比べ、本交
換結合膜は熱安定性の高い交換結合膜となっている。
【0043】また、本交換結合膜は、熱処理に対する安
定性についても良好である。例えば、250℃の熱処理
プロセスを経た場合でも、交換結合磁界や磁界感度等の
磁気特性にほとんど変化のないことが確認されている。
従って、本交換結合膜をGMRヘッド等の磁気デバイス
に応用した際、この磁気デバイスの製造過程等において
250℃程度の熱処理プロセスが行われた場合でも、こ
の磁気デバイスの磁気特性は、ほとんど劣化することが
ない。
【0044】このように、本交換結合膜は、交換結合磁
界の大きさ、耐食性、熱安定性および熱処理に対する安
定性の全ての条件を満足する交換結合膜となっている。
さらに、本交換結合膜は、製造コストも低く抑えること
が可能であり、本交換結合膜を磁気抵抗効果素子等の磁
気デバイスに応用すれば、信頼性が高く、製造コストの
低い磁気デバイスを得ることができる。
【0045】本交換結合膜における実施例を以下に説明
する。 (実施例1)上記実施の形態1にかかる第1の実施例
を、図1ないし図8を用いて以下に示す。本実施例で
は、基板11としてコーニング社製#7059ガラスを
用い、一つの成膜装置を用いて、装置内を2×10-7
orr以下まで排気後、同一真空中で、この基板11上
に、Ta層からなる下地層12、NiFe合金層からな
る強磁性層13、MnRu合金層からなる反強磁性層1
4を続けて成膜し、図1に示すような本交換結合膜のサ
ンプルを形成した。
【0046】このとき、反強磁性層14の成膜時に、材
料となるMnRu合金のRuの組成を0〜42.8原子
%の範囲で変化させて、反強磁性層14のRuの組成の
異なる8つのサンプルを得た。これら8つのサンプルに
おける反強磁性層14をなすMnRu合金層のRuの組
成は、それぞれ0原子%,1.6原子%,4.8原子
%,9.8原子%,17.3原子%,26.4原子%,
33.6原子%,42.8原子%である。
【0047】本実施例における本交換結合膜のサンプル
における各層の成膜条件を以下に示す。Ta層は、DC
マグネトロンスパッタ法にて、Ar圧:5mTorr,
Power:64mW/cm2 の成膜条件で、200Å
の厚さに成膜した。また、NiFe合金層は、RFコン
ベンショナルスパッタ法により、Ar圧:5mTor
r,Power:130mW/cm2 ,基板バイアス:
+50Vの成膜条件で、一方向に70Oeの磁界を印加
しながら100Åの厚さに成膜した。
【0048】MnRu合金層はMnターゲットにRuぺ
レットをのせた複合ターゲットを用い、MnRu合金層
中のRuの組成を0〜42.8原子%の範囲で変化さ
せ、DCマグネトロンスパッタ法により、Ar圧:5m
Torr,Power:64mW/cm2 の成膜条件
で、200Åの厚さに成膜した。
【0049】図2は、このように形成された本交換結合
膜における、反強磁性層14をなすMnRu合金層のR
u組成と、本交換結合膜の交換結合磁界との関係を示す
グラフである。このグラフは、上記の反強磁性層13を
なすMnRu合金層のRu組成の異なる8つのサンプル
について、磁化容易軸方向の磁化曲線を測定し、交換結
合磁界を、磁化曲線の0磁界からのシフト量として求め
たものである。
【0050】この図に示すように、本交換結合膜は、反
強磁性層14をなすMnRu合金層のRu組成が4〜3
6原子%の範囲にある場合に、50Oe以上の交換結合
磁界を発生している。特に、この組成が11〜27原子
%Ruである場合には、100Oe以上の非常に大きな
交換結合磁界を発生する。最大の交換結合磁界を発生し
たのは、この組成が17.3原子%である場合で、その
値は115Oeであった。
【0051】本願発明者らは、出願番号:特願平9−5
9680号における特許出願において、反強磁性層にM
nPt合金を用いた構成の交換結合膜を示している。こ
の交換結合膜は、本交換結合膜の構成において、反強磁
性層14を、MnRu合金層に代えてMnPt合金層と
したものである。図3は、この交換結合膜における反強
磁性層をなすMnPt合金層のPt組成と、発生する交
換結合磁界との関係を示すグラフである。この測定に用
いられたMnPt合金層を用いた構成の交換結合膜は、
反強磁性層を除く各層の材料と、全ての層の成膜方法、
成膜条件および膜厚とは、上記した本交換結合膜のサン
プルと同様である。この図に示すように、この交換結合
膜によっても、Pt組成を4〜19原子%とすることに
よって、50Oe以上の交換結合磁界を得ることがで
き、また、このPt組成を6〜12原子%とすることに
よって、100Oe以上の交換結合磁界を得ることがで
きる。
【0052】本交換結合膜は、上記のMnPt合金層を
用いた交換結合膜によって得られる良好な磁気特性をさ
らに向上させたものである。すなわち、この交換結合膜
においては、50Oe以上の交換結合磁界を得るため
に、MnPt合金層のPt組成を4〜19原子%に調整
し、また、100Oe以上の交換結合磁界を得るため
に、このPt組成を6〜12原子%に調整するものであ
る。これに対し、本交換結合膜では、50Oe以上の交
換結合磁界を得るために、MnRu合金層のRu組成を
4〜36原子%に調整し、また、100Oeの交換結合
磁界を得るために、このRu組成を、11〜27原子%
に調整するものである。
【0053】従って、本交換結合膜では、大きな交換結
合磁界が得られるMnRu合金のRu組成の範囲が非常
に広くなっている。このため、作製条件のわずかな変動
等による組成のずれが生じた場合でも、その特性が大き
く変化することがない。従って、本交換結合膜の製造に
おける歩留りを向上することができる。
【0054】また、MnRu合金等の合金からなる薄膜
を形成する場合、組成を厳密に調整するためには、高価
な合金ターゲットを用いることが一般的である。しかし
ながら、本交換結合膜におけるMnRu合金層のよう
に、大きな交換結合磁界を得るための組成範囲が非常に
広い場合には、材料の組成を厳密に調整する必要がな
い。従って、本交換結合膜では、MnRu合金層の成膜
に複合ターゲットを使用しても、交換結合磁界を大きく
することができるので、製造におけるコストダウンを図
ることが可能となる。
【0055】また、図2に示したように、反強磁性層1
4のRu組成が42.8原子%以上の場合には、本交換
結合膜において交換結合磁界が得られない理由は、以下
のように考えられる。すなわち、交換結合磁界が発生す
るためには、MnRu合金が反強磁性体となる組成であ
り、かつ、そのネール温度が室温以上であることが必要
である。MnRu合金の場合、ネール温度が室温以上で
あるためには、少なくともγMn相と呼ばれる結晶相が
形成されている必要があり、さらに、γMn相であって
も、Ruの組成によりネール温度が室温以下になる可能
性がある。
【0056】MnRu合金のネール温度はRuの組成の
増加により低下する傾向にあることから、Ru組成が4
2.8原子%以上のMnRu合金は、室温においては反
強磁性を保てなくなっていると考えられる。このため、
このMnRu合金を反強磁性層14に用いた交換結合膜
では、交換結合磁界が得られなくなっていると考えられ
る。
【0057】次に、本交換結合膜における最大の交換結
合磁界が得られた、Ru組成17.3原子%のMnRu
合金を用いたサンプルにおける、熱処理に対する安定性
を測定した結果を示す。以下では、このサンプルをサン
プル♯1とする。また、この測定は、後述するサンプル
♯2についても同様に行った。
【0058】このサンプル♯2は、本交換結合膜の構成
において、反強磁性層14を、MnRu合金に代えてM
nPt合金とした構成の交換結合膜のサンプルである。
このサンプル♯2は、ガラス基板上に、200ÅのTa
層からなる下地層、100ÅのNiFe合金層からなる
強磁性層、200ÅのMnPt合金層からなる反強磁性
層を順次積層した構成である。サンプル♯2の下地層、
強磁性層は、サンプル♯1の下地層12、強磁性層13
と同様の成膜方法および成膜条件で成膜されている。ま
た、サンプル♯2の反強磁性層は、サンプル♯1の反強
磁性層14と同様の成膜方法および成膜条件で成膜さ
れ、Pt組成は9原子%である。
【0059】図4は、このサンプル♯1およびサンプル
♯2における、熱処理による交換結合磁界の変化を測定
したグラフである。また、熱処理は、真空中で、一方向
に300Oeの磁界を印加しながら行った。この図に示
すように、サンプル♯2では、成膜直後の交換結合磁界
は130Oeであり、サンプル♯1より大きな値となっ
ている。また、200℃の熱処理後では、交換結合磁界
は60Oe程度の値となる。このサンプル♯2のよう
に、反強磁性層にMnPt合金層を用い、強磁性層を
(111)配向した交換結合膜では、(111)配向し
ない場合に比べて熱処理後の交換結合磁界は大きくな
る。しかし、この交換結合膜における熱処理前の交換結
合磁界に比べると、熱処理後の交換結合磁界は減少して
いる。
【0060】また、サンプル♯1では、250℃の熱処
理を行った後でも、交換結合磁界は熱処理前と比較して
わずかに減少しているだけであり、250℃程度の熱処
理プロセスによってもほとんど特性が劣化することがな
い。従って、本交換結合膜は、MnPt合金を反強磁性
層に用いた交換結合膜に比して、熱処理に対する安定性
を、さらに向上させたものとなっている。
【0061】次に、このサンプル♯1と、後述する比較
サンプル♯1との磁化測定とX線回折(XRD)との結
果を示す。この比較サンプル♯1は、サンプル♯1の構
成において、Taからなる下地層12のない構成であ
り、ガラスからなる基板11の上に、直接、NiFe合
金層からなる強磁性層13およびMnRu合金層からな
る反強磁性層14を積層した構成である。図5は、サン
プル♯1における磁化測定の結果を示すグラフであり、
図6は、上記の比較サンプル♯1の磁化測定の結果を示
すグラフである。これらの磁化測定は、サンプル♯1お
よび比較サンプル♯1の磁化容易軸方向に外部磁界を印
加して行われた。
【0062】図5に示すように、サンプル♯1では、反
強磁性層14をなすMnRu合金層との交換結合によっ
て、強磁性層13をなすNiFe合金層の磁化曲線が大
きくシフトしていることがわかる。図5に示した交換結
合磁界(Hex)の値は、この磁化曲線におけるゼロ磁
界からのシフト量である。図5からわかるように、この
サンプル♯1のHexはll5Oeである。また、図6
に示すように、Ta層のない比較サンプル♯1では、磁
化曲線のシフト量は小さく、Hexは約20Oeであ
る。
【0063】図7は、上記のサンプル♯1と比較サンプ
ル♯1とにおけるX線回折(XRD)の測定結果を示す
チャートである。図7からわかるように、サンプル♯1
のように大きな交換結合磁界を示す交換結合膜では、N
iFe合金の(111)ピークが現れており、強磁性層
13をなすNiFe合金が(111)面配向しているこ
とがわかる。また、このサンプル♯1では、MnRu合
金の強い(111)回折ピークも見られる。
【0064】これに対し、比較サンプル♯1のように交
換結合磁界が小さい交換結合膜ではMnRu合金の弱い
(111)回折ピークが見られるのみで、NiFe合金
の(111)回折ピークが見られず、NiFe合金の
(111)面配向が著しく劣化していることが分かる。
【0065】図5〜図7に示した測定結果から、(11
1)面配向したNiFe合金層と、その上に積層された
MnRu合金層とを有するサンプル♯1では大きな交換
結合磁界が得られ、(111)面配向していないNiF
e合金層とその上に積層したMnRu合金層とを有する
比較サンプル♯1では大きな交換結合磁界は得られない
ことがわかる。このことから、NiFe合金層の配向と
交換結合磁界との間に相関があることがわかる。
【0066】なお、本実施例では、強磁性層13をなす
NiFe合金層を(111)面配向させるために、下地
層12としてTa層を用いた。しかしながら、この下地
層12の材料は、強磁性層13をなすNiFe合金層の
(111)面配向性を向上させるものであればよく、特
にTaに限定されるものではない。また、下地層12を
用いず、基板11としてSi単結晶からなる層を用いる
ことによっても、同様の効果が得られる。
【0067】次に、上記のサンプル♯1における交換結
合磁界の温度依存性を測定した結果を図8に示す。この
図に示すように、サンプル♯1における交換結合磁界
は、250℃で消滅している。従って、このサンプル♯
1のブロッキング温度は250℃であることがわかる。
また、このサンプル♯1における100℃における交換
結合磁界も、約55Oeと大きな値となっていることが
わかる。
【0068】従来から報告されているように、FeMn
合金あるいはNiOを反強磁性層として用いた交換結合
膜の場合、ブロッキング温度が150℃あるいは200
℃であり、100℃での交換結合磁界が25Oeに低下
してしまうことを考えると、本交換結合膜は非常に高い
熱安定性を示すということができる。
【0069】なお、本実施例においては、熱安定性およ
び熱処理プロセスに対する安定性についての測定を、M
nRu合金のRu組成が17.3原子%のサンプル♯1
についてのみ記載しているが、他のRu組成をもつ本交
換結合膜のサンプルについても、同様の安定性を示すこ
とが確認されている。
【0070】〔実施の形態2〕本発明の第2の実施の形
態について、図9に基づいて説明すれば以下の通りであ
る。なお、説明の便宜上、前述の実施の形態1にて示し
た部材と同一の機能を有する部材には、同一の符号を付
記し、その説明を省略する。
【0071】本実施の形態にかかる磁気抵抗効果素子
(以下、本磁気抵抗効果素子とする)は、上記実施の形
態1において図1を用いて示した交換結合膜の構成を採
用した、スピンバルブ膜の磁気抵抗効果素子である。図
9は、本磁気抵抗効果素子の構成を示す断面図である。
この図に示すように、本磁気抵抗効果素子は、基板11
上に、下地層12、第2の強磁性層21、金属非磁性層
22、強磁性層13、反強磁性層14、保護膜23がこ
の順に積層されて構成されている。
【0072】第2の強磁性層は、磁化方向が外部磁界に
応じて回転する磁性層であり、本磁気抵抗効果素子にお
ける自由磁化層となっている。この第2の強磁性層21
は、強磁性材料の薄膜や、強磁性材料の薄膜の積層膜か
らなり、例えばCo、NiFe合金あるいはCoとNi
Fe合金との積層膜を用いることができる。金属非磁性
層22は、非磁性の金属からなり、例えばCuを用いる
ことができる。保護膜23には、非磁性の金属等を用い
ることができ、例えばTaを用いることができる。本磁
気抵抗効果素子では、強磁性層13は、反強磁性層14
との交換結合によってその保磁力が非常に高くなってお
り、本磁気抵抗効果素子における固定磁化層となってい
る。
【0073】上記の構成において、第2の強磁性層21
と、反強磁性層14に隣接した強磁性層13との磁化の
向きのなす角によって、磁気抵抗効果をもつ磁気抵抗効
果素子を得ることができる。そして、本磁気抵抗効果素
子では、強磁性層13と反強磁性層14とが、強い交換
結合磁界を有する交換結合膜となっているので、外乱磁
界に対して安定である。また、この交換結合膜は、耐食
性、熱安定性、熱処理に対する安定性の面でも優れてい
る。従って、本磁気抵抗効果素子は、環境による磁気特
性の経時変化や、温度上昇による磁気特性の劣化、およ
び、製造過程における熱処理プロセスによる磁気特性の
劣化の少ない、優れた磁気抵抗効果素子となっている。
また、本磁気抵抗効果素子では、反強磁性層14をなす
MnRu合金層の組成を厳密に調整しなくてもよいの
で、製造コストを低く抑えることが可能となっている。
以下に、本磁気抵抗効果素子の実施例を示す。
【0074】(実施例2)上記実施の形態2にかかる実
施例を、図9を用いて以下に示す。本実施例では、基板
11としてコーニング社製#7059ガラスを用い、一
つの成膜装置を用いて、装置内を2×10-7Torr以
下まで排気後、同一真空中で、下地層12としてTa層
を、第2の強磁性層21としてNiFe合金層とCo層
とを、金属非磁性層22としてCu層を、強磁性層13
としてCo層とNiFe合金層とを、反強磁性層14と
してMnRu合金層を、保護膜23としてTa層をこの
順に続けて成膜し、図9に示すような、本磁気抵抗効果
素子を形成した。この反強磁性層14のMnRu合金層
におけるRu組成は、実施例1で最大の交換結合磁界が
得られた17.3原子%である。また、金属非磁性層2
2をなすCu層は非磁性であり、第2の強磁性層21お
よび強磁性層13をなすCo層およびNiFe合金層は
強磁性である。
【0075】また、この磁気抵抗効果素子における各層
の膜厚は、下地層12をなすTa層が50Å、第2の強
磁性層21をなすNiFe合金層が80Å、同じく第2
の強磁性層21をなすCo層が10Å、金属非磁性層2
2をなすCu層が22Å、強磁性層13をなすCo層が
10Å、同じく強磁性層13をなすNiFe合金層が5
0Å、反強磁性層14をなすMnRu合金層が200
Å、保護膜23をなすTa層が200Åである。
【0076】また、これらTa層、NiFe合金層、C
o層、MnRu合金層およびCu層を成膜した際の成膜
方法および成膜条件を以下に示す。Ta層およびCu層
は、DCマグネトロンスパッタ法にて、Ar圧:5mT
orr,Power:64mW/cm2 の成膜条件で、
上記した膜厚に成膜した。また、NiFe合金層および
Co層は、RFコンベンショナルスパッタ法により、A
r圧:5mTorr,Power:130mW/c
2 ,基板バイアス+50Vの成膜条件で、一方向に7
0Oeの磁界を印加しながら上記した膜厚に成膜した。
また、MnRu合金層は、MnターゲットにRuぺレッ
トをのせた複合ターゲットを用い、MnRu合金層中の
Ruの組成を17.3原子%として、DCマグネトロン
スパッタ法により、Ar圧:5mTorr,Powe
r:64mW/cm2 の成膜条件で、上記膜厚に成膜し
た。
【0077】このようにして得られた磁気抵抗効果素子
に、外部磁界を印加して、磁気抵抗効果を測定したとこ
ろ、抵抗変化率6%、磁界感度1%/Oeの良好な値を
得た。また、真空中で一方向に磁界を印加しながら25
0℃で熱処理を行った後、磁気抵抗効果を測定したとこ
ろ、この熱処理による抵抗変化率および磁界感度の低下
は見られなかった。
【0078】なお、上記の磁気抵抗効果素子における強
磁性層13は、NiFe合金層とCo層とから構成され
ている。このように、Co層をNiFe合金層に隣接し
て形成し、強磁性層13と金属非磁性層22との界面に
若干のCoを挿入すると、磁気抵抗効果素子における抵
抗変化率が増大する、あるいは、耐熱性が向上するとい
った効果がある。また、上記の強磁性層13では、Co
層がNiFe合金層と比べて非常に薄いため、この強磁
性層13は、磁気特性および結晶配向性に関しては、N
iFe合金層の単層膜とほとんど違いがない。従って、
この強磁性層13とMnRu合金層の反強磁性層14と
からなる交換結合膜では、このMnRu合金層のRu組
成が17.3原子%の場合に最大の交換結合磁界を発生
する。
【0079】
【発明の効果】以上のように、本発明の請求項1に記載
の交換結合膜は、反強磁性層がMnRu合金からなると
共に、強磁性層が面心立方構造を有する強磁性体からな
り、かつ、(111)面配向している構成である。
【0080】これにより、従来より大きな交換結合磁界
を発生することが可能であり、耐食性、熱安定性および
熱処理に対する安定性の何れにも優れた交換結合膜を得
ることが可能となる。従って、このような交換結合膜を
用いて磁気抵抗効果素子等の磁気デバイスを構成するこ
とで、外乱磁界に安定で、環境による経時変化、温度上
昇による磁気特性の劣化、および、熱処理プロセスによ
る磁気特性の劣化の小さい、優れた磁気デバイスを得る
ことができるという効果を奏する。
【0081】また、上記の構成の交換結合膜は、請求項
2に記載のように、上記反強磁性層が、Ru組成4〜3
6原子%のMnRu合金からなる構成とすることで、5
0Oe以上の大きな交換結合磁界を得ることが可能とな
る。
【0082】このように、上記の交換結合膜では、大き
な交換結合磁界を得るための反強磁性層をなすMnRu
合金におけるRu組成範囲が非常に広くなっている。従
って、このMnRu合金の組成を厳密に調整する必要が
ない。これにより、これらの交換結合膜の製造の歩留り
を向上することができ、さらに、厳密な組成調整を行う
ための高価な合金ターゲットを使用する必要がないの
で、製造にかかるコストを低く抑えることが可能となる
という効果を奏する。
【0083】また、請求項3に記載の交換結合膜の製造
方法は、面心立方構造をとる強磁性体を(111)面配
向させて強磁性層として成膜し、その後、この強磁性層
の上に、MnRu合金からなる反強磁性層を成膜する方
法である。
【0084】これにより、従来より大きな交換結合磁界
を発生することが可能であり、耐食性、熱安定性および
熱処理に対する安定性の何れにも優れた交換結合膜を得
ることができるという効果を奏する。
【0085】また、請求項4に記載の交換結合膜の製造
方法は、請求項3の製造方法において、面心立方構造を
とる強磁性体を(111)面配向させて上記強磁性層と
して成膜する前に、この強磁性体の(111)面配向性
を高めるための下地層を形成し、この下地層の上に上記
強磁性層を形成する方法である。
【0086】これにより、請求項3の効果に加えて、例
えばガラス基板等からなる基板上に成膜する場合にも、
面心立方構造をとる強磁性層の(111)面配向性を高
めることができるという効果を奏する。
【0087】また、本発明の磁気抵抗効果素子は、請求
項1または2の何れかに記載の交換結合膜、あるいは、
請求項3または4に記載の交換結合膜の製造方法によっ
て製造された交換結合膜を備え、上記交換結合膜におけ
る強磁性層に隣接して金属非磁性層が形成されると共
に、この金属非磁性層に隣接して、磁化の方向が外部磁
界に応じて自由に回転する第2の強磁性層が形成されて
おり、上記交換結合膜における強磁性層と上記第2の強
磁性層との磁化の向きのなす角度によって、磁気抵抗効
果をもつ構成である。
【0088】これにより、外乱磁界に対して安定であ
り、環境による磁気特性の経時変化や、温度上昇磁気特
性の劣化、あるいは製造時の熱処理プロセスによる磁気
特性の劣化等が少なく、さらに、製造コストの低い優れ
た磁気抵抗効果素子を得ることが可能となるという効果
を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる交換結合膜の構
成を示す断面図である。
【図2】図1に示した交換結合膜における、交換結合磁
界の反強磁性層のRu組成依存性を示すグラフである。
【図3】反強磁性層にMnPt合金を用いた交換結合膜
における、交換結合磁界のPt組成依存性を表すグラフ
である。
【図4】図1に示した交換結合膜の一例であるサンプル
♯1と、反強磁性層にMnPt合金を用いた交換結合膜
の一例であるサンプル♯2との、熱処理による交換結合
磁界の変化を測定したグラフである。
【図5】図1に示した交換結合膜の一例であるサンプル
♯1における磁化測定の結果を示すグラフである。
【図6】Taからなる下地層をもたない交換結合膜の一
例である比較サンプル♯1の磁化測定の結果を示すグラ
フである。
【図7】図1に示した交換結合膜の一例であるサンプル
♯1と、Taからなる下地層をもたない交換結合膜の一
例である比較サンプル♯1とのX線回折の結果を示す図
である。
【図8】図1に示した交換結合膜の一例であるサンプル
♯1における、交換結合磁界の温度依存性を測定した結
果を示すグラフである。
【図9】本発明の実施の形態2にかかる磁気抵抗効果素
子の構成を示す断面図である。
【図10】一般的なスピンバルブ膜における構成の概略
を示す説明図である。
【符号の説明】
11 基板 12 下地層 13 強磁性層 14 反強磁性層 21 第2の強磁性層 22 金属非磁性層 23 保護膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 薦田 智久 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内 (72)発明者 吉良 徹 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】強磁性層と、この強磁性層に隣接して形成
    された反強磁性層とを備え、これら強磁性層と反強磁性
    層との交換結合により、この強磁性層に交換結合磁界を
    与える交換結合膜において、 上記反強磁性層がMnRu合金からなると共に、 上記強磁性層が面心立方構造を有する強磁性体からな
    り、かつ、(111)面配向していることを特徴とする
    交換結合膜。
  2. 【請求項2】上記反強磁性層が、Ru組成4〜36原子
    %のMnRu合金からなることを特徴とする請求項1に
    記載の交換結合膜。
  3. 【請求項3】強磁性層と、この強磁性層に隣接して形成
    された反強磁性層とを備え、これら強磁性層と反強磁性
    層との交換結合により、この強磁性層に交換結合磁界を
    与える交換結合膜の製造方法において、 面心立方構造をとる強磁性体を(111)面配向させて
    上記強磁性層として成膜し、その後、この強磁性層の上
    に、MnRu合金からなる反強磁性層を成膜することを
    特徴とする交換結合膜の製造方法。
  4. 【請求項4】面心立方構造をとる強磁性体を(111)
    面配向させて上記強磁性層として成膜する前に、この強
    磁性体の(111)面配向性を高めるための下地層を形
    成し、この下地層の上に上記強磁性層を形成することを
    特徴とする請求項3に記載の交換結合膜の製造方法。
  5. 【請求項5】請求項1または2の何れかに記載の交換結
    合膜、あるいは、請求項3または4に記載の交換結合膜
    の製造方法によって製造された交換結合膜を備え、 上記交換結合膜における強磁性層に隣接して金属非磁性
    層が形成されると共に、この金属非磁性層に隣接して、
    磁化の方向が外部磁界に応じて自由に回転する第2の強
    磁性層が形成されており、 上記交換結合膜における強磁性層と上記第2の強磁性層
    との磁化の向きのなす角度によって、磁気抵抗効果をも
    つことを特徴とする磁気抵抗効果素子。
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