JP2000068569A - 交換結合膜およびそれを用いた磁気抵抗効果素子 - Google Patents

交換結合膜およびそれを用いた磁気抵抗効果素子

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JP2000068569A
JP2000068569A JP10234578A JP23457898A JP2000068569A JP 2000068569 A JP2000068569 A JP 2000068569A JP 10234578 A JP10234578 A JP 10234578A JP 23457898 A JP23457898 A JP 23457898A JP 2000068569 A JP2000068569 A JP 2000068569A
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film
exchange
antiferromagnetic
ferromagnetic
exchange coupling
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Masahisa Yoshikawa
将寿 吉川
Hiromi Fukuya
ひろみ 福家
Kazuhiro Saito
和浩 斉藤
Hitoshi Iwasaki
仁志 岩崎
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Original Assignee
Toshiba Corp
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    • H01F10/3268Exchange coupling of magnetic film pairs via a very thin non-magnetic spacer, e.g. by exchange with conduction electrons of the spacer the exchange coupling being asymmetric, e.g. by use of additional pinning, by using antiferromagnetic or ferromagnetic coupling interface, i.e. so-called spin-valve [SV] structure, e.g. NiFe/Cu/NiFe/FeMn

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐食性や熱特性に優れるMn合金からなる反
強磁性膜の特性を高めることによって、交換結合膜のブ
ロッキング温度や交換結合磁界などの交換結合特性を向
上させる。そのような交換結合膜を使用することによっ
て、磁気抵抗効果素子の出力特性や長期信頼性を向上さ
せる。 【解決手段】 R−Mn(RはIr、Rh、Pt、A
u、Ag、Co、Pd、Ni、Cr、Ge、Ru、Re
およびCuから選ばれる少なくとも 1種の元素)を含
み、かつ面心立方晶構造を有する反強磁性合金からなる
反強磁性膜3と、これと交換結合された強磁性膜4とを
具備する交換結合膜2であって、反強磁性膜3はその
(111)面が膜面に平行に成長しており、かつX線回折に
よる (111)ピークのロッキングカーブ半値幅が10.0度以
下である。磁気抵抗効果素子、上記した交換結合膜と、
この交換結合膜のうち少なくとも強磁性膜に電流を流す
電極とを具備する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、反強磁性膜と強磁
性膜との交換結合膜と、この交換結合膜を用いた磁気抵
抗効果素子に関する。
【0002】
【従来の技術】近年の磁気記録の高記録密度化により、
磁気抵抗効果素子(MR素子)を使用した磁気へッドの
研究が進められている。MR素子に用いられる磁気抵抗
効果膜(MR膜)としては、異方性磁気抵抗効果(AM
R)を示すパーマロイ合金などが知られているが、AM
R膜は磁気抵抗変化率(MR変化率)が約3%と小さいこ
とから、これに代わるMR膜材料として、巨大磁気抵抗
効果(GMR)を示す(Co/Cu)n などの人工格子
膜やCoFe/Cu/CoFeなどのスピンバルブ膜が
注目を集めている。
【0003】スピンバルブ膜は強磁性体層/非磁性体層
/強磁性体層の積層構造からなるサンドイッチ膜を有
し、一方の強磁性体層の磁化をピン止めすることにより
GMRを得ている。このようなスピンバルブ膜の一方の
強磁性体層(ピン層)の磁化のピン止めには、反強磁性
膜と強磁性膜との交換結合を利用する技術が一般的に普
及している。また、信号検知時のバルクハウゼンノイズ
を低減するために、他方の強磁性体層(フリー層)の磁
区を除去する必要があるが、このような場合にも上記し
た交換結合が利用されている。
【0004】ところで、MR素子に交換結合膜を用いる
際の条件は、最近の記録密度の向上に伴ってより厳しく
なってきている。具体的には、室温での大きな交換結合
磁界、および良好な交換結合磁界の温度特性はもとよ
り、MR素子やそれを用いた磁気ヘッドの形成プロセス
に耐え得る耐食性や耐熱性が要求される。さらに、ハー
ドディスクドライブに搭載される場合には、その動作環
境温度で出力の安定性を確保するために、高いブロッキ
ング温度(250℃以上)、および動作温度での十分大きな
交換結合磁界(例えば 120℃で 150Oe 以上)が必要と
されている。
【0005】代表的な反強磁性膜としては、γ−Mn系
合金であるFeMn合金が知られている。しかし、Fe
Mn合金は交換結合磁界が小さく、また交換結合力の消
失温度であるブロッキング温度が 200℃以下と低い。さ
らに耐食性が悪く、特に水により腐食しやすいという問
題を有している。
【0006】一方、交換結合特性や耐熱性に優れる反強
磁性材料として、面心立方晶構造を有するIrMn合金
(日本特許第 2672802号参照)、RhMn合金、PtM
n合金(米国特許第 5,315,468号明細書参照)などのM
n系合金が知られている。これらの反強磁性合金はFe
Mn合金よりブロッキング温度が高く、さらに大きな交
換結合磁界および高耐食性を有している。
【0007】しかし、上述したように交換結合膜を用い
たMR素子や磁気ヘッドの使用環境はさらに厳しい方向
に進んでおり、動作時の環境温度は上昇している。ま
た、高記録密度化に伴って、狭トラック化や狭ギャップ
化が進んでいる。このような状況下では、IrMn合金
やRhMn合金などの反強磁性膜を用いた交換結合膜に
おいても、さらに良好な交換結合特性、すなわちより高
いブロッキング温度、より大きな交換結合磁界、優れた
交換結合磁界の温度特性が求められている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、交換
結合膜を用いたMR素子や磁気ヘッドの使用環境がさら
に厳しい方向に進んでいることから、IrMn合金やR
hMn合金などの反強磁性膜を用いた交換結合膜には、
より一層高いブロッキング温度や室温および高温域でよ
り大きな交換結合力を示すことが求められている。
【0009】本発明はこのような課題に対処するために
なされたもので、耐食性や熱特性に優れるMn合金から
なる反強磁性膜の特性を高めることによって、ブロッキ
ング温度や交換結合磁界などの交換結合特性をより一層
向上させた交換結合膜を提供することを目的としてお
り、さらにそのような交換結合膜を使用することによっ
て、安定した出力と長期信頼性を備えた磁気抵抗効果素
子を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の交換結合膜は、
請求項1に記載したように、R−Mn(ただし、RはI
r、Rh、Pt、Au、Ag、Co、Pd、Ni、C
r、Ge、Ru、ReおよびCuから選ばれる少なくと
も 1種の元素を示す)を含み、かつ少なくとも面心立方
晶構造を有する合金を用いた反強磁性膜と、前記反強磁
性膜と交換結合された強磁性膜とを具備する交換結合膜
において、前記反強磁性膜はその (111)面が膜面に略平
行に成長しており、かつX線回折による (111)ピークの
ロッキングカーブ半値幅が10.0度以下であることを特徴
としている。
【0011】本発明の他の交換結合膜は、請求項3に記
載したように、R−Mn(ただし、RはIr、Rh、P
t、Au、Ag、Co、Pd、Ni、Cr、Ge、R
u、ReおよびCuから選ばれる少なくとも 1種の元素
を示す)を含み、かつ少なくとも面心立方晶構造を有す
る合金を用いた反強磁性膜と、前記反強磁性膜と交換結
合された強磁性膜とを具備する交換結合膜において、反
強磁性膜はその (111)面が膜面に略平行に成長してお
り、かつX線回折による (111)ピークのロッキングカー
ブ半値幅が 7.0度以下であると共に、膜厚が 3〜20nmの
範囲であることを特徴としている。
【0012】本発明の磁気抵抗効果素子は、請求項5に
記載したように、上記した本発明の交換結合膜と、前記
交換結合膜のうち少なくとも前記強磁性膜に電流を流す
電極とを具備することを特徴としている。本発明の磁気
抵抗効果素子において、強磁性膜は請求項6に記載した
ように、特に強磁性体層/非磁性体層/強磁性体層の積
層構造を含む磁性多層膜を有し、かつ一方の前記強磁性
体層が前記反強磁性膜により磁化固着されていることを
特徴としている。
【0013】本発明の交換結合膜においては、面心立方
晶構造を有する合金からなる反強磁性膜の (111)ピーク
のロッキングカーブ半値幅を10.0度以下としている。こ
のような良好な配向性と結晶性を有する反強磁性膜を使
用することによって、ブロッキング温度、交換結合磁界
およびその温度特性を向上させることができる。すなわ
ち、ブロッキング温度は結晶磁気異方性の熱的安定性で
決まると考えられることから、良好な配向性および結晶
性を有する反強磁性膜はブロッキング温度の向上に寄与
する。また、交換結合磁界およびその温度特性について
も、反強磁性膜の配向性および結晶性を高めることによ
り向上させることができる。
【0014】また、上記したような交換結合膜を用いた
本発明の磁気抵抗効果素子によれば、安定した出力が得
られると共に、長期信頼性を向上させることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施するための形
態について説明する。
【0016】図1は本発明の交換結合膜の一実施形態の
構成を模式的に示す図である。基板1上に形成された交
換結合膜2は、積層された反強磁性膜3と強磁性膜4と
を有している。反強磁性膜3と強磁性膜4は、これらの
間で交換結合が生じるように、少なくとも一部が積層す
るように形成される。
【0017】なお、反強磁性膜3と強磁性膜4との積層
順は用途に応じて設定される。図1は強磁性膜4が反強
磁性膜3の上側に配置された状態を示しているが、反強
磁性膜3は強磁性膜4の上側に配置してもよい。また、
反強磁性膜3と強磁性膜4とを多重積層した積層膜で交
換結合膜を構成することも可能である。
【0018】反強磁性膜3は、Ir、Rh、Pt、A
u、Ag、Co、Pd、Ni、Cr、Ge、Ru、Re
およびCuから選ばれる少なくとも 1種のR元素と、M
nとを少なくとも含む反強磁性合金からなる。反強磁性
合金の具体例としては、 一般式:Rx Mn100-x ……(1) (式中、xは 2≦x≦50at% を満足する数を示す)で実
質的に表されるRMn合金や、 一般式:(Rx'Mn1-x'100-y Fey ……(2) (式中、x′は0.02≦x′≦0.50を満足する数を、yは
0<y<30at% を満足する数を示す)で実質的に表され
るRMnFe合金などが挙げられる。なお、以下ではR
Mn合金およびRMnFe合金を総称してRMn系合金
と記す。
【0019】これら反強磁性合金の結晶構造は、R元素
の種類や組成に応じて面心立方晶構造、面心正方晶構
造、体心立方晶構造または体心正方晶構造となるが、本
発明では少なくとも面心立方晶構造(fcc構造)を有
するRMn系合金を用いる。少なくとも面心立方晶構造
を有するRMn合金は、特に高いネール温度を有するこ
とから、交換結合膜2のブロッキング温度を向上させる
ことができる。
【0020】上述した (1)式で示されるRMn合金にお
いて、R元素量を規定するxの値は面心立方晶構造を得
る上で 2〜50at% の範囲とすることが好ましい。R元素
量が少なすぎると耐食性が低下する傾向があることから
も、R元素量は2at%以上とすることが好ましい。xの値
は 5〜40at% の範囲とすることがさらに好ましい。ま
た、R元素としては面心立方晶構造が安定となりやす
い、Ir、Rh、Au、Ag、Co、Ge、Ru、R
e、Ptなどを使用することが好ましい。
【0021】ただし、バルクでは面心正方晶構造などが
安定となりやすいRMn合金であっても、面心立方晶構
造を有するCuなどからなる下地膜上、また同様に面心
立方晶構造を有するFe、Co、Niやこれらの合金な
どを主体とする強磁性膜4上に、RMn合金からなる反
強磁性膜3をエピタキシャル的に成長させる場合には、
少なくとも面心立方晶構造を有するRMn合金膜を得る
ことができる。
【0022】(2)式で表されるRMnFe合金において
も、R元素量を規定するx′の値は同様な理由から0.02
〜0.50の範囲とすることが好ましく、さらに好ましくは
0.05〜0.40の範囲である。RMnFe合金中のFeは、
RMn合金と強磁性膜4との格子整合性を良好にして、
交換結合膜2の交換結合力を大きくする作用を有する。
ただし、Feの含有量が 30at%以上になると耐食性が大
きく低下するため、Feの含有量は 30at%未満とするこ
とが好ましい。より好ましいFe量は0.01≦y≦25at%
の範囲である。
【0023】RMn系合金からなる反強磁性膜3は、さ
らにΤa、Ηf、Τi、Nb、Si、Al、W、Ζr、
Ga、Βe、In、Sn、V、Mo、Ru、Os、C
d、ZnおよびNから選ばれる少なくとも 1種の成分を
含有していてもよい。RMn系合金においては、上述し
た組成範囲や結晶構造などに基いて、従来のFeMn合
金に比べて十分良好な耐食性が得られているが、このよ
うな添加成分を含有させることで一段と耐食性を向上さ
せることができる。ただし、上記したような添加成分を
あまり多量に含有すると、交換結合膜2の交換結合力が
低下するおそれがあるため、上記したような元素の配合
量はRMn系合金に対して 50at%以下とすることが好ま
しく、さらに好ましくは30at% 以下である。
【0024】上述したような面心立方晶構造を有するR
Mn系合金は、膜形成プロセスにおいて容易に (111)面
が膜面と平行になるように成長( (111)優先配向)させ
ることができ、また熱力学的な結晶構造エネルギー的に
も安定である。なお、 (111)面が膜面に平行に成長して
いることは、X線回折によるθ−2θスキャンにおいて
(111)面に起因するピークが存在し、その積分強度が他
のピークの積分強度よりも大きいことにより確認するこ
とができる。
【0025】そして、 (111)面を膜面に平行に成長させ
たRMn系合金からなる反強磁性膜3は、X線回折によ
る (111)ピークのロッキングカーブ半値幅が10.0度以下
とされている。X線回折による (111)ピークのロッキン
グカーブ半値幅が10.0度以下ということは、反強磁性膜
3が良好な配向性と良好な結晶性を有することを意味す
る。このように、反強磁性膜3の配向性および結晶性を
高めることによって、良好なブロッキング温度を安定し
て付与することが可能となる。
【0026】一般的に、ブロッキング温度は結晶磁気異
方性の熱的安定性で決まると考えられている。従って、
良好な配向性を有する結晶性のよい反強磁性膜3は、交
換結合膜2の高ブロッキング温度化に寄与する。また、
磁気抵抗効果素子を用いた磁気ヘッドに必要とされるブ
ロッキング温度(250℃)をより再現性よく確保するため
には、反強磁性膜3の (111)ピークのロッキングカーブ
半値幅を 7.0度以下とすることが好ましい。
【0027】さらに、良好な配向性および結晶性を有す
る反強磁性膜3を用いることによって、交換結合膜2の
交換結合磁界の値自体を高めることができると共に、交
換結合磁界の温度特性を向上させることが可能となる。
温度と交換結合磁界との関係において、図11のような
上に凸の曲線を描くことが高熱安定性の指標となる。交
換結合膜2がこのような特性を有することによって、室
温での大きな交換結合磁界が高温でも安定に維持され
る。 (111)ピークのロッキングカーブ半値幅を10.0度以
下である反強磁性膜3を用いた交換結合膜2によれば、
上記したような優れた交換結合磁界の温度特性を安定し
て得ることができる。
【0028】交換結合膜2を磁気ヘッドに適用される磁
気抵抗効果素子に用いる場合には、例えば 120℃で 150
Oe 以上の交換結合磁界が必要とされることから、この
ような特性をより再現性よく確保する上で、反強磁性膜
3の (111)ピークのロッキングカーブ半値幅は 5.0度以
下とすることがさらに好ましい。
【0029】なお、反強磁性膜3の (111)面の配向度は
X線回折のロッキングカーブで評価することができる
が、その他の方法として電子顕微鏡を用いても評価可能
である。すなわち、反強磁性膜3の (111)面と平行とな
るように、交換結合膜2の断面に対して電子線を入射
(例えば [110]入射(図2))し、その際の電子回折像
の(111)面に起因する回折点の広がりが、図3に示すよ
うにダイレクト電子入射点を中心にした角度(θ)とし
て30.0度以下である場合に、 (111)ピークのロッキング
カーブ半値幅を10.0度以下としたときと同様な配向性を
有している。交換結合膜2を磁気ヘッドに適用される磁
気抵抗効果素子に用いる場合には、電子回折像の (111)
回折点の広がりが15.0度以下であることが好ましい。こ
の際の入射電子ビームとして 1.0nm程度に収束させたナ
ノビームを用いることによって、各結晶粒の配向の傾き
を調べることもできる。
【0030】上述したような反強磁性膜3の平均結晶粒
径は、その面内配向度に応じて設定することが好まし
い。例えば、反強磁性膜3の (111)面の膜面内の方位が
無秩序である場合、その平均結晶粒径は 3nm以上50nm以
下とすることが好ましい。図4に示すように、 (111)面
の面内方位がランダムな反強磁性膜3では、結晶粒界で
様々な粒界傾角を形成するために、結晶粒間の磁気的結
合の効果が薄れ、磁区境界は結晶粒界と重なる確率が高
くなる。このため、結晶磁気異方性の大きさおよび結晶
粒内の面内磁区構造が交換結合磁界の大きさを決定する
要因となる。
【0031】このような場合に、反強磁性膜3の平均結
晶粒径が 3nm未満であると、結晶磁気異方性が小さすぎ
るため、交換結合磁界が著しく小さくなるか、あるいは
発生しない。一方、反強磁性膜3の平均結晶粒径が50nm
より大きいと結晶粒内に多数の磁区が形成され、それら
が粒内で環流するような安定磁区構造をとることによ
り、マクロな交換結合磁界を担う界面の割合が減少す
る。このため、交換結合磁界が著しく小さくなるか、あ
るいは発生しなくなる。言い換えると、反強磁性膜3の
平均結晶粒径が 3〜50nmの場合に、交換結合膜2の交換
結合磁界を高めることができる。
【0032】また、上記した平均結晶粒径の範囲内で
は、平均結晶粒径が大きくなるにつれて、交換結合磁界
は小さくなる傾向を示す。交換結合膜2を磁気抵抗効果
素子に適用する場合には、室温で十分に大きな交換結合
磁界(例えば 300Oe 以上)が必要であることから、反
強磁性膜3の平均結晶粒径は 5nm以上20nm以下とするこ
とが特に好ましい。磁気抵抗効果素子に用いる場合、反
強磁性膜3の平均結晶粒径が小さい方がその電気比抵抗
を大きくすることができるため、反強磁性膜3への分流
が減少し、より高いMR変化率が発現する。従って、反
強磁性膜3の平均結晶粒径は 7nm以上10nm以下であるこ
とがさらに好ましい。
【0033】ここで、反強磁性膜3の平均結晶粒径は、
X線回折における (111)ピークの半値幅を用い、Scherr
erの式を用いて計算される。この方法は結晶粒径に対し
て膜厚が大きい場合に適用する。この場合、面内の結晶
粒径と面に対して垂直方向の結晶粒径が等しいと考え
る。仮に、面内における結晶粒径が反強磁性膜3の膜厚
よりも大きい場合には、上記の方法は適用せずに、面内
の平均結晶粒径を適用する。この場合、反強磁性膜3の
平均結晶粒径は、電子顕微鏡観察により評価する。ま
ず、膜面におおよそ垂直な方向から電子線を入射して電
子回折像を得て、それに制限視野絞りを入れた暗視野像
を得ることにより評価することができる。
【0034】また、面内配向がランダムであることは、
電子顕微鏡観察により得られる膜平面から垂直方向への
電子線入射の電子回折像が、図5に示すように実質的に
連続した少なくとも 1種以上の電子回折リングを形成す
ることで確認することができる。ここで、実質的な電子
回折リングとは、ダイレクト回折点を中心とするある特
定の面に起因する回折点のとぎれが少なくとも10度以下
であることにより定義される。
【0035】上述したように、本発明の交換結合膜2を
磁気ヘッドに適用される磁気抵抗効果素子に用いる場合
には、反強磁性膜3のX線回折による (111)ピークのロ
ッキングカーブ半値幅は 7.0度以下とすることが好まし
く、また反強磁性膜3の膜厚を 3nm以上20nm以下とする
ことが好ましい。 (111)ピークのロッキングカーブ半値
幅は 5.0度以下とすることがさらに好ましい。このよう
な条件を満たすことによって、膜形成プロセスの容易
さ、室温での高い交換結合磁界、優れた交換結合磁界の
温度特性、高いブロッキング温度、さらには高MR変化
率を合わせ持つことが可能となる。
【0036】反強磁性膜3の膜厚を 3〜20nmの範囲とす
ることによって、反強磁性膜3の平均結晶粒径を小さく
抑えることができ、十分に大きな交換結合磁界を得られ
る。また、たとえ膜面内の平均結晶粒径が大きくなり電
気比抵抗が小さくなったとしても、膜厚が20nm以下であ
る場合には磁気抵抗効果素子に適用する際に十分に大き
なMR効果を得ることができる。さらに、より大きなM
R効果、高いブロッキング温度、大きな交換結合磁界を
確保するためには、反強磁性体膜の膜厚を 5〜15nmの範
囲とすることが望ましい。
【0037】上述したような配向性を高めた反強磁性膜
3は、例えばスパッタ法で成膜する際に、例えばAr圧
を下げた状態でスパッタ成膜することにより再現性よく
得ることができる。具体的には、平均自由工程が 3nm以
下のガス雰囲気中でスパッタ成膜することが好ましい。
このようなガス雰囲気下で反強磁性膜3をスパッタ成膜
することによって、反強磁性膜3の配向性を再現性よく
高めることができる。また、バイアススパッタを適用す
ることも有効である。バイアススパッタによれば、堆積
時の原子の移動度が上がるため、反強磁性膜3の配向性
を向上させることができる。
【0038】交換結合膜2において、強磁性膜4にはF
e、Co、Niやこれらの合金からなる単層構造の強磁
性体層、強磁性的な性質を示す磁性多層膜やグラニュラ
ー膜などを用いることができる。具体的な強磁性膜4と
しては、異方性磁気抵抗効果膜(AMR膜)や、スピン
バルブ膜、人工格子膜、グラニュラー膜、強磁性トンネ
ル接合膜などの巨大磁気抵抗効果膜(GMR膜)などが
挙げられる。
【0039】上述した強磁性体のうち、特にCoまたは
Co合金はRMn系合金からなる反強磁性膜3と積層形
成することで、ブロッキング温度の非常に高い交換結合
膜2が得られることから好ましい。強磁性膜4がMR膜
である場合には、CoにFe、Ni、その他の元素を添
加したCo合金は大きなMR変化率を示すことから好ま
しく用いられる。
【0040】Co合金に添加する元素としては、上記し
たFeやNiの他に、Pd、Au、Ag、Cu、Pt、
Ir、Rh、Ru、Os、Hfなどの 1種または 2種以
上を用いることができる。これらの添加元素量は 5〜50
at% の範囲とすることが好ましい。さらには、Feを 5
〜40at% の範囲で含有させたCoFe合金を使用するこ
とが望ましい。CoFe合金は、強磁性膜4と反強磁性
膜3との交換結合力を大きくする上で有利である。
【0041】このようなことから、強磁性膜4は面心立
方晶構造を有するCo層またはCo合金層を有している
ことが好ましい。特に、CoFe合金のようなCo合金
層は、Co単体以上の交換結合特性およびMR変化率が
得られることから、強磁性膜4もしくはその一部として
好適である。また、強磁性膜4を強磁性体層/非磁性体
層/強磁性体層の積層構造を含む磁性多層膜で構成する
場合、各強磁性体層はMR変化率を十分に大きな値に
し、かつ高耐熱性を持たせるに、その膜厚を1nm以上と
することが好ましい。さらに同時に良好な交換結合特性
を得るために、強磁性体膜の膜厚は 1nm以上50nm以下と
することが好ましい。
【0042】交換結合膜2は、スパッタ法、蒸着法、M
BE法などの各種公知の成膜方法を用いて、例えばガラ
ス、樹脂などの非晶質基板、Si、MgO、Al
2 3 、アルチック(Al2 3 ・TiC)、フェライ
トなどの単結晶基板、配向基板、焼結基板などの各種基
板1上に形成される。MR素子や磁気ヘッドなどに適用
する場合には、それらの構造に応じた各種下地上に形成
される。交換結合膜2の成膜方法は特に限定されるもの
ではないが、反強磁性膜3の配向性を高める得る上で、
前述した低圧ガス雰囲気下でのスパッタ成膜を適用する
ことが好ましい。
【0043】上述した実施形態の交換結合膜2は、磁気
抵抗効果素子(MR素子)における強磁性膜のバルクハ
ウゼンノイズの除去、あるいは人工格子膜やスピンバル
ブ膜における強磁性体層の磁化固着などに有効に使用さ
れる。ただし、交換結合膜2の用途はMR素子に限られ
るものではなく、例えば強磁性膜からなる磁気ヨークの
磁気異方性制御など、各種の用途に使用し得るものであ
る。
【0044】次に、上述したような交換結合膜を使用し
た磁気抵抗効果素子(MR素子)の実施形態について、
図6および図7を参照して説明する。なお、MR素子は
HDDのような磁気記録装置の再生素子や磁界検出用セ
ンサなどとして有効であるが、これら以外に磁気抵抗効
果メモリ(MRAM(Magnetoresistive random access
memoty))のような磁気記憶装置にも使用することがで
きる。
【0045】図6は、本発明の交換結合膜を巨大磁気抵
抗効果膜(GMR膜)の強磁性体層の磁化固着に適用し
たGMR素子10の一構成例を示している。GMR素子
10は強磁性膜としてGMR膜11を有している。すな
わち、GMR素子10はスピンバルブ膜からなるGMR
膜(スピンバルブGMR膜)11を有している。
【0046】スピンバルブGMR膜11は、強磁性体層
12/非磁性体層13/強磁性体層14のサンドイッチ
膜を有する。このうち、上側の強磁性体層14上に反強
磁性膜3が積層形成されており、強磁性体層14と反強
磁性膜3は交換結合膜を構成している。上側の強磁性体
層14は、反強磁性膜3との交換結合力により磁化固着
されたいわゆるピン層である。一方、下側の強磁性体層
12は、磁気記録媒体などからの信号磁界(外部磁界)
により磁化方向が変化するいわゆるフリー層である。
【0047】強磁性体層12は、必要に応じて磁性下地
層15上に形成される。磁性下地層15は 1種類の磁性
膜で構成してもよいし、異なる種類の磁性膜の積層膜で
あってもよい。磁性下地層15としてはアモルファス系
軟磁性体や、例えばNiFe合金、NiFeCo合金、
これらに各種添加元素を添加した合金などの面心立方晶
構造を有する軟磁性体が用いられる。さらに、アモルフ
ァス系軟磁性体と面心立方晶構造を有する軟磁性体との
積層膜が好ましく用いられる。なお、図中16はTaな
どからなる保護膜であり、必要に応じて形成される。
【0048】スピンバルブGMR膜11の両端部には、
Cu、Ag、Au、Al、これらの合金などからなる一
対の電極17が形成されている。この一対の電極17に
よりスピンバルブGMR膜11に電流(センス電流)が
供給される。これらスピンバルブGMR膜11および一
対の電極17によりGMR素子10が構成されている。
なお、電極17はスピンバルブGMR膜10の下側に配
置してもよい。スピンバルブGMR膜11は、後に詳述
するように、必要に応じてハードバイアス膜などを有す
る。
【0049】強磁性体層12、14には、前述したよう
にCoまたはCo合金を用いることが好ましい。強磁性
体層12、14間に配置される非磁性体層13には、各
種の導電性非磁性材料を使用することができるが、スピ
ン依存散乱の大きいCuを用いることが好ましい。
【0050】スピンバルブGMR膜11におけるピン層
とフリー層の位置は、上下逆であってもよい。図7はピ
ン層を下側に配置したスピンバルブGMR膜11を示し
ている。このスピンバルブGMR膜11は、基板1側に
反強磁性膜3が形成され、この反強磁性膜3上に強磁性
体層14/非磁性体層13/強磁性体層12のサンドイ
ッチ膜が形成されている。この場合、下側の強磁性体層
14と反強磁性膜3とが交換結合膜を構成しており、下
側の強磁性体層14がピン層、上側の強磁性体層12が
フリー層である。
【0051】反強磁性膜3を基板1側に形成する場合、
その結晶構造の安定性や結晶配向性を高めるために、反
強磁性膜3は下地膜18上に設けることができるが、下
地膜18がなくても、RMn系反強磁性合金は (111)面
を膜面に平行に成長させることができる。下地膜18と
しては、Ta、Zr、Nb、Cu、Cr、Hf、Tiな
ど、あるいは面心立方晶構造を有する合金などが用いら
れる。
【0052】フリー層である強磁性体層12上には、必
要に応じて軟磁性アシスト膜19が形成される。特に、
強磁性体層12にCoFe合金などのCo合金を用いる
場合には、NiFe合金、NiFeX(X:Cr、N
b、Ta、Zr、Hf、W、Mo、V、Ti、Rh、I
r、Cu、Au、Ag、Mn、Re、Ruから選ばれる
少なくとも 1種の元素)合金、CoZrNb系、CoF
eRe系、CoFeAlO系などのアモルファス磁性合
金、FeZrN、CoFeTaNなどの窒化微結晶合
金、CoNbC、FeTaVなどの炭化微結晶合金、あ
るいはこれらの積層膜などからなる軟磁性アシスト膜1
9を形成して、強磁性体層12の軟磁性を高めることが
望ましい。
【0053】スピンバルブ型のGMR素子10におい
て、一方の強磁性体層14の磁化固着に本発明の交換結
合膜を使用した場合、前述したように室温での高い交換
結合磁界、優れた交換結合磁界の温度特性、高いブロッ
キング温度が得られることから、ピン層の磁化固着状態
が安定かつ強固となる。これによって、良好なGMR特
性、ひいては良好な出力を安定して得ることができ、G
MR素子10の長期信頼性を向上させることが可能とな
る。
【0054】なお、図6や図7に示したGMR素子10
において、GMR膜11には強磁性体層と非磁性体層と
の多層積層膜を有する人工格子膜、強磁性トンネル接合
膜などを用いることもできる。強磁性トンネル接合素子
では、スピンバルブ型のGMR素子と同様に、一方の強
磁性体層の磁化固着に反強磁性膜が用いられる。
【0055】さらに、本発明の交換結合膜は、異方性磁
気抵抗効果膜(AMR膜)のバルクハウゼンノイズの除
去などに適用することもできる。この場合、電流の方向
と磁性膜の磁化モーメントの成す角度に依存して電気抵
抗が変化するNi80Fe20などの強磁性体膜(AMR
膜)の両端部上にそれぞれ反強磁性膜を積層形成した
り、あるいは強磁性体膜(AMR膜)と反強磁性膜とを
交換バイアス磁界調整膜を介して積層する。これらは交
換結合膜を構成し、それに基づいてAMR膜の磁区を制
御することによって、バルクハウゼンノイズの発生が抑
制される。
【0056】次に、前述した実施形態のGMR素子を、
再生用MRヘッドおよびそれを用いた記録・再生一体型
の磁気ヘッドに適用する場合の実施形態について、図8
および図9を参照して説明する。
【0057】図8に示すように、Al2 3 ・TiCな
どからなる基板21の主表面上には、Al2 3 絶縁層
22を介して、軟磁性材料からなる下側磁気シールド層
23が形成されている。下側磁気シールド層23上に
は、Al2 3 などの非磁性絶縁膜からなる下側再生磁
気ギャップ24を介して、図6や図7に示したGMR素
子10が形成されている。
【0058】図中25はスピンバルブGMR膜11にバ
イアス磁界を付与するCoPt合金などからなる硬磁性
膜である。また、一対の電極17は硬磁性膜25上に形
成されており、スピンバルブGMR膜11と一対の電極
17とは硬磁性膜25を介して電気的に接続されてい
る。スピンバルブGMR膜11にバイアス磁界を付与す
る硬磁性膜25は、図9に示すように、予め下側再生磁
気ギャップ24上に形成しておいてもよい。この場合に
は、一対の硬質磁性膜25上を含めて下側再生磁気ギャ
ップ24上にスピンバルブGMR膜11を形成し、その
上に一対の電極17が形成される。
【0059】GMR素子10上には、Al2 3 などの
非磁性絶縁膜からなる上側再生磁気ギャップ26が形成
されている。さらにその上には、軟磁性材料からなる上
側磁気シールド層27が形成されており、これらにより
再生ヘッドとして機能するシールド型GMRヘッド28
が構成されている。
【0060】シールド型GMRヘッド28からなる再生
ヘッド上には、誘導型薄膜磁気ヘッド29からなる記録
ヘッドが形成されている。シールド型GMRヘッド28
の上側磁気シールド層27は、誘導型薄膜磁気ヘッド2
9の下部記録磁極を兼ねている。この上側磁気シールド
層兼下部記録磁極27上には、Al2 3 などの非磁性
絶縁膜からなる記録磁気ギャップ30を介して、所定形
状にパターニングされた上部記録磁極31が形成されて
いる。
【0061】このようなシールド型GMRヘッド28か
らなる再生ヘッドと、誘導型薄膜磁気ヘッド29からな
る記録ヘッドとによって、録再一体型磁気ヘッド32が
構成されている。なお、上部記録磁極31は記録磁気ギ
ャップ上にトレンチを有するSiO2 絶縁層などを設
け、このトレンチ内に埋め込み形成したものであっても
よい。録再一体型磁気ヘッド32は、例えば半導体プロ
セスを利用して形状形成や分割などを行うことにより作
製される。
【0062】この実施形態の録再一体型磁気ヘッド32
におけるシールド型GMRヘッド28では、RMn系合
金からなる反強磁性膜と強磁性膜との交換結合膜が大き
な交換結合磁界、良好な交換結合磁界の温度特性、およ
び高いブロッキング温度を有することから、良好なヘッ
ド特性を安定して得ることが可能となる。
【0063】上述したような録再一体型磁気ヘッドはヘ
ッドスライダに組み込まれる。録再一体型磁気ヘッドを
備えるヘッドスライダは、例えば図10に示す磁気ディ
スク装置などの磁気記録装置に搭載される。図10はロ
ータリーアクチュエータを用いた磁気ディスク装置40
の概略構造を示している。
【0064】磁気ディスク41はスピンドル42に装着
され、駆動装置制御源(図示せず)からの制御信号に応
答するモータ(図示せず)により回転する。磁気ディス
ク41上を浮上した状態で情報の記録再生を行うヘッド
スライダ43は、薄膜状のサスペンション44の先端に
取り付けられている。
【0065】磁気ディスク41が回転すると、ヘッドス
ライダ43の媒体対向面(ABS)は磁気ディスク41
の表面から所定の浮上量をもって保持される。ヘッドス
ライダ43は、上述した実施形態の録再一体型磁気ヘッ
ドを具備するものである。
【0066】サスペンション44は、図示しない駆動コ
イルを保持するボビン部などを有するアクチュエータア
ーム45の一端に接続されている。アクチュエータアー
ム45の他端には、リニアモータの 1種であるボイスコ
イルモータ46が設けられている。ボイスコイルモータ
46は、アクチュエータアーム45のボビン部に巻き上
げられた図示しない駆動コイルと、それを挟み込むよう
に対向して配置された永久磁石および対向ヨークからな
る磁気回路とから構成される。
【0067】アクチュエータアーム45は、固定軸47
の上下 2カ所に設けられた図示しないボールベアリング
によって保持され、ボイスコイルモータ46により回転
摺動が自在にできるようになっている。
【0068】
【実施例】次に、本発明の具体的な実施例およびその評
価結果について述べる。
【0069】実施例1 まず、DCマダネトロンスパッタ装置を用いて、熱酸化
Si基板上にそれぞれIrMn合金、RhMn合金、R
uMn合金からなる膜厚15〜30nmの反強磁性膜と、Co
Fe合金からなる膜厚 2nmの強磁性膜を磁界中で成膜し
た。保護膜および下地膜としては膜厚 5nmのTa膜を用
いた。
【0070】これら交換結合膜の成膜時の条件(スパッ
タ条件)は以下の通りである。表1の試料1はArガス
圧を5mTorrとして、基板バイアスを100Wかけて成膜し
た。試料2〜4は、Arガス圧を5mTorrとして成膜し
た。ここで、Arガス圧はできる限り低い方がよい。す
なわち、スパッタリングガス圧は、その平均自由工程が
短くなるように設定することが好ましい。
【0071】一方、本発明との比較例1として、スパッ
タ条件をArガス圧 20mTorrに変更して、IrMn合金
からなる反強磁性膜とCoFe合金からなる強磁性膜を
磁界中で成膜した。この際、基板バイアスはかけなかっ
た。
【0072】このようにして得た各交換結合膜の結晶構
造をX線回折により解析した。得られた各交換結合膜の
結晶構造は、全て (111)面配向を示す面心立方晶構造を
有していた。X線回折による (111)ロッキングカーブ半
値幅の測定結果とブロッキング温度、室温での交換結合
磁界を表1に示す。
【0073】
【表1】 表1から明らかなように、実施例1による各交換結合膜
は (111)ロッキングカーブ半値幅が10.0度以下であり、
このような交換結合膜は室温で 300Oe 以上の大きな交
換結合磁界と高いブロッキング温度を示すことが分か
る。
【0074】次に、実施例1の試料1、2と比較例1
(試料5)に関して、交換結合磁界の温度特性を測定し
た。その結果を図11に示す。図11から (111)ロッキ
ングカーブ半値幅が10度以下になると、上に凸な良好な
交換結合磁界の温度特性を示すことが分かる。
【0075】実施例2 RFスパッタリング法により、Si基板/Ta(5nm)/
NiFe(10nm)/CoFe(3nm)/Cu(3nm)/CoF
e(2nm)/Ir22Mn78(xnm)/Ta(5nm)の膜構成
を有するスピンバルブ膜を作製した。電子顕微鏡の平面
観察による電子回折像の代表例を図5に示した。図4は
この場合の結晶構造の模式図である。磁化測定はVSM
により行った。
【0076】IrMn合金からなる反強磁性膜を用いた
スピンバルブ膜について、MR変化率の膜厚依存性を表
2に示す。全ての試料において、反強磁性膜は面心立方
晶構造を有し、 (111)面が膜面に平行に成長し、かつ
(111)ロッキングカーブの半値幅は 7.0度以下であっ
た。
【0077】
【表2】 以上のことから、IrMn合金からなる反強磁性膜の膜
厚が20nm以下の場合に、優れた交換結合特性と4%以上の
高いMR変化率を示すことが分かる。
【0078】実施例3 DCマグネトロンスパッタ法により、成膜時のArガス
圧、下地膜などを変えて様々な平均結晶粒径を有する交
換結合膜を作製した。膜構成は、実施例2と同様に、S
i基板(またはMgO(111) 基板)/NiFe(10nm)/
CoFe(1nm)/Cu(3nm)/CoFe(2nm)/Ir22
Mn78(またはRh19Mn81)/Ta(5nm)とした。そ
れぞれの試料における平均結晶粒径は、X線回折より得
られたメインピークの半値幅より、Scherrerの式で評価
した。
【0079】交換結合磁界と平均結晶粒径との関係を図
12に示す。図12には (111)配向したIrMn合金
(黒丸)およびRhMn合金(白丸)を用いた場合の実
測値を示した。なお、図中の点線は理論値である。図1
2から明らかなように、およそ平均結晶粒径を50nm以下
とすることにより、実質的な交換結合磁界を得ることが
できることが分かる。ただし、実測値から分かるよう
に、平均結晶粒径が 3nmより小さくなってしまうと、交
換結合磁界は著しく低下してしまう。
【0080】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の交換結合
膜によれば、耐食性や熱特性に優れるMn合金からなる
反強磁性膜の配向性および結晶性を高めたことに基づい
て、ブロッキング温度や交換結合磁界などの交換結合特
性をより一層向上させることが可能となる。そして、こ
のような交換結合膜を用いた本発明の磁気抵抗効果素子
によれば、良好な特性および長期信頼性を安定して得る
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の交換結合膜の一実施形態の構成を示
す断面図である。
【図2】 本発明の交換結合膜における反強磁性膜の配
向性を確認するための他の方法として示した電子線回折
像を示す図である。
【図3】 図2に示す電子線回折像で反強磁性膜の配向
性を確認するための方法を説明するための図である。
【図4】 本発明の交換結合膜における反強磁性膜の面
内配向性の一例を示す図である。
【図5】 図4に示す反強磁性膜の面内配向性を確認す
るための電子線回折像を示す図である。
【図6】 本発明の磁気抵抗効果素子をGMR素子に適
用した一実施形態の概略構造を示す断面図である。
【図7】 図6に示すGMR素子の変形例を示す断面図
である。
【図8】 本発明の磁気抵抗効果素子を使用した録再一
体型磁気ヘッドの一実施形態の構成を示す断面図であ
る。
【図9】 図8に示す録再一体型磁気ヘッドの変形例を
示す断面図である。
【図10】 本発明の磁気抵抗効果素子を使用した録再
一体型磁気ヘッドを搭載した磁気ディスク装置の一構成
例を示す斜視図である。
【図11】 本発明の実施例1による交換結合膜の交換
結合磁界の温度特性の測定結果を示す図である。
【図12】 本発明の実施例3による交換結合膜の交換
結合磁界と平均結晶粒径との関係の示す図である。
【符号の説明】
2……交換結合膜 3……反強磁性膜 4……強磁性膜 10……GMR素子 11……スピンバルブGMR膜 12、14……強磁性体層 13……非磁性体層
フロントページの続き (72)発明者 斉藤 和浩 神奈川県川崎市幸区堀川町72 株式会社東 芝川崎事業所内 (72)発明者 岩崎 仁志 神奈川県川崎市幸区堀川町72 株式会社東 芝川崎事業所内 Fターム(参考) 5D034 BA05 BA08 CA02 5E049 AA04 AC00 AC05 BA12

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 R−Mn(ただし、RはIr、Rh、P
    t、Au、Ag、Co、Pd、Ni、Cr、Ge、R
    u、ReおよびCuから選ばれる少なくとも 1種の元素
    を示す)を含み、かつ少なくとも面心立方晶構造を有す
    る合金を用いた反強磁性膜と、前記反強磁性膜と交換結
    合された強磁性膜とを具備する交換結合膜において、 前記反強磁性膜は、その (111)面が膜面に略平行に成長
    しており、かつX線回折による (111)ピークのロッキン
    グカーブ半値幅が10.0度以下であることを特徴とする交
    換結合膜。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の交換結合膜において、 前記反強磁性膜は、前記 (111)面の膜面内の方位が無秩
    序であり、かつ平均結晶粒径が 3〜50nmの範囲であるこ
    とを特徴とする交換結合膜。
  3. 【請求項3】 R−Mn(ただし、RはIr、Rh、P
    t、Au、Ag、Co、Pd、Ni、Cr、Ge、R
    u、ReおよびCuから選ばれる少なくとも 1種の元素
    を示す)を含み、かつ少なくとも面心立方晶構造を有す
    る合金を用いた反強磁性膜と、前記反強磁性膜と交換結
    合された強磁性膜とを具備する交換結合膜において、 前記反強磁性膜は、その (111)面が膜面に略平行に成長
    しており、かつX線回折による (111)ピークのロッキン
    グカーブ半値幅が 7.0度以下であると共に、膜厚が 3〜
    20nmの範囲であることを特徴とする交換結合膜。
  4. 【請求項4】 請求項1ないし請求項3のいずれか1項
    記載の交換結合膜において、 前記強磁性膜は、強磁性体層/非磁性体層/強磁性体層
    の積層構造を含む磁性多層膜を有し、かつ前記強磁性体
    層にCoまたはCo系合金を用いたことを特徴とする交
    換結合膜。
  5. 【請求項5】 請求項1ないし請求項4のいずれか1項
    記載の交換結合膜と、 前記交換結合膜のうち少なくと
    も前記強磁性膜に電流を流す電極とを具備することを特
    徴とする磁気抵抗効果素子。
  6. 【請求項6】 請求項5記載の磁気抵抗効果素子におい
    て、 前記強磁性膜は、強磁性体層/非磁性体層/強磁性体層
    の積層構造を含む磁性多層膜を有し、かつ一方の前記強
    磁性体層が前記反強磁性膜により磁化固着されているこ
    とを特徴とする磁気抵抗効果素子。
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