JPH11329882A - 交換結合膜の製造方法および磁気抵抗効果素子 - Google Patents

交換結合膜の製造方法および磁気抵抗効果素子

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JPH11329882A
JPH11329882A JP10130617A JP13061798A JPH11329882A JP H11329882 A JPH11329882 A JP H11329882A JP 10130617 A JP10130617 A JP 10130617A JP 13061798 A JP13061798 A JP 13061798A JP H11329882 A JPH11329882 A JP H11329882A
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film
plane
exchange coupling
layer
ferromagnetic layer
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Masaji Michijima
正司 道嶋
Masanori Kiyouho
昌則 享保
Keiya Nakabayashi
敬哉 中林
Haruhiko Deguchi
治彦 出口
Tomohisa Komoda
智久 薦田
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    • B82YSPECIFIC USES OR APPLICATIONS OF NANOSTRUCTURES; MEASUREMENT OR ANALYSIS OF NANOSTRUCTURES; MANUFACTURE OR TREATMENT OF NANOSTRUCTURES
    • B82Y25/00Nanomagnetism, e.g. magnetoimpedance, anisotropic magnetoresistance, giant magnetoresistance or tunneling magnetoresistance
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01FMAGNETS; INDUCTANCES; TRANSFORMERS; SELECTION OF MATERIALS FOR THEIR MAGNETIC PROPERTIES
    • H01F10/00Thin magnetic films, e.g. of one-domain structure
    • H01F10/32Spin-exchange-coupled multilayers, e.g. nanostructured superlattices
    • H01F10/324Exchange coupling of magnetic film pairs via a very thin non-magnetic spacer, e.g. by exchange with conduction electrons of the spacer
    • H01F10/3268Exchange coupling of magnetic film pairs via a very thin non-magnetic spacer, e.g. by exchange with conduction electrons of the spacer the exchange coupling being asymmetric, e.g. by use of additional pinning, by using antiferromagnetic or ferromagnetic coupling interface, i.e. so-called spin-valve [SV] structure, e.g. NiFe/Cu/NiFe/FeMn

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高い交換結合磁界を示す交換結合膜の製造方
法を提供する。 【解決手段】 反強磁性層4の配向面を、磁気モーメン
トが面に対して平行で、かつ、面内で強磁性的に配列し
ている(100)面とするために、窒素ガスが添加され
たアルゴンガス中で、fcc構造の強磁性体を材料とし
て、強磁性層3を形成する。これにより、強磁性層3を
(100)面配向とできるので、反強磁性層4の配向面
を(100)面とすることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気記録用再生ヘ
ッドあるいは磁気センサ等に使用される磁気抵抗効果素
子に用いられる、強磁性層と反強磁性層とを積層した構
造の交換結合膜の製造方法、および、この製造方法で製
造された交換結合膜を用いた磁気抵抗効果素子に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】磁気ディスク装置等の磁気記録装置にお
いては、媒体の記録密度の向上に伴い、磁気ヘッドの高
性能化が求められている。すなわち、記録ヘッドでは、
磁気記録媒体の高保磁力化に伴い、飽和磁束密度の大き
な材料が求められている。また、再生ヘッドでは、従来
の誘導型ヘッドに代えて、磁気抵抗効果を利用したいわ
ゆるMR(magnetoresistive effect)ヘッドを用いるこ
とで、再生出力の増加が図られている。これは、媒体の
小型化に伴い、再生ヘッドと媒体との相対速度が低下す
るという問題に対処するためである。
【0003】このようなMRヘッドに用いられる、磁気
抵抗効果を示す磁気抵抗効果素子の材料としては、従来
より、NiFe合金やNiCo合金からなる磁性体薄膜
が知られている。これらの薄膜の抵抗変化率はNiFe
合金で2〜3%程度、NiCo合金では最大6%程度で
ある。このような薄膜の磁気抵抗効果は、スピン軌道相
互作用によるものであり、測定電流の方向と磁性体の磁
化方向とのなす角度に依存しており、異方性磁気抵抗効
果(AMR:anisotropic magnetoresistive effect)と
呼ばれている。
【0004】これに対して、近年、磁性体薄膜と非磁性
薄膜とを交互に積層した人工格子多層膜において、AM
Rによって得られる抵抗変化率より一桁以上大きな抵抗
変化率が得られることが報告され、注目されている。こ
の人工格子多層膜における磁気抵抗効果は、従来のAM
Rとは発現機構が異なる。この人工格子多層膜では、非
磁性層を介して上下に配置された磁性層の磁化が反平行
の場合と平行の場合とで、伝導電子の散乱が大きく異な
るために抵抗変化が現れるのである。すなわち、この人
工格子多層膜では、磁性層間の磁化が反平行の場合、伝
導電子の散乱が大きくなり、抵抗値が高くなる。一方、
磁性層間の磁化が平行の場合、伝導電子の散乱は減少
し、抵抗値が小さくなる。
【0005】このような人工格子多層膜の磁気抵抗効果
は、抵抗変化率の値がAMRに比較して非常に大きいた
め、巨大磁気抵抗効果(GMR:giant magnetoresisti
ve effect)と呼ばれている。また、GMRを発現する積
層膜は、GMR膜と呼ばれている。このようなGMR膜
のなかでも、現在最大の磁気抵抗変化を示す材料系であ
るCo/Cu多層膜を用いれば、常温においても60%
以上の抵抗変化率を得ることができる。
【0006】しかしながら、このCo/Cu多層膜のよ
うな人工格子多層膜では、抵抗変化率は非常に大きいも
のの、無磁界で磁化の反平行状態を実現するために、磁
性層間の交換相互作用を用いているので、磁性層間の結
合が非常に強くなっている。従って、この交換相互作用
を断ち切り、磁化の平行状態を実現するために、数10
0〜数kOeの外部磁界が必要となる。このため、微弱
な磁界に対する感度が小さくなってしまうので、この人
工格子多層膜からなるGMR膜を磁気記録再生ヘッドに
適用するには不充分である。
【0007】そこで、磁界感度の高いGMR膜を得るた
めに、人工格子多層膜の他に、スピンバルブ構造の人工
格子膜(以下、スピンバルブ膜とする)からなるGMR
膜が考案され、注目されている。このスピンバルブ膜
は、反強磁性体からなる反強磁性層,強磁性体からなる
強磁性層,非磁性層,強磁性体からなる強磁性層が、こ
の順に積層された構造を有している。
【0008】そして、このスピンバルブ膜では、反強磁
性層と隣接している強磁性層(固定磁化層)の磁化は、
反強磁性体との交換結合によって、反強磁性層の界面と
平行な一つの方向に固定されている。また、他方の強磁
性層(自由磁化層)の磁化は、磁界に応じて、上記界面
と平行な面内で回転するようになっている。そして、こ
のような構成のスピンバルブ膜では、これら固定磁化層
の磁化の向きと自由磁化層の磁化の向きとがなす角にお
ける余弦に依存した大きさの、磁気抵抗効果を得ること
ができる。また、この自由磁化層に、NiFe合金等の
ソフト性の高い薄膜を用いることで、磁界感度の向上を
図ることができる。このように、スピンバルブ膜の構造
は、GMR膜の構造として最も実用的なものといえる。
【0009】ところで、このスピンバルブ膜において、
反強磁性層と、この反強磁性層との交換結合によって磁
化が一方向に固定されている強磁性層(固定磁化層)と
からなる積層膜を、交換結合膜という。また、この交換
結合により強磁性層に与えられる、強磁性層の磁化を固
定する磁界を、交換結合磁界という。
【0010】このような交換結合膜における反強磁性層
について、様々な反強磁性体を用いた報告がなされてい
る。例えば、従来より、反強磁性層としてFeMn合金
やNiOを用いる例がよく知られている。
【0011】しかしながら、FeMn合金を用いた交換
結合膜では、交換結合磁界が温度の上昇とともに単調に
減少し、約150℃で消失してしまう。この、交換結合
磁界が消失する温度を、ブロッキング温度(Tb)とい
う。このように、FeMn合金を用いた交換結合膜に
は、150℃という低いブロッキング温度、および、温
度上昇による交換結合磁界の単調減少など、熱安定性の
点に関する問題がある。また、このFeMn合金は、耐
食性が悪い。
【0012】このため、この交換結合膜を用いた磁気抵
抗効果素子は、低温に維持しておかないと使用できず、
さらに、使用環境よっては、腐食による特性の劣化が生
じやすいという欠点がある。
【0013】また、上記したNiOは酸化物であるた
め、耐食性は非常に良好である。また、このNiOを反
強磁性層に用いた交換結合膜のブロッキング温度は20
0℃であり、FeMn合金を用いた交換結合膜よりも高
い。しかしながら、NiOを反強磁性層に用いた交換結
合膜は、FeMn合金を用いたものに比べ交換結合磁界
が小さいといった問題がある。さらに、ブロッキング温
度は200℃であるが、100℃以下でも交換結合磁界
の減少が大きい。このように、反強磁性層にFeMn合
金を用いた交換結合膜にも、熱安定性の点で問題があ
り、磁気抵抗効果素子等に応用する場合の欠点となる。
【0014】そこで、これらFeMn合金やNiO以外
の反強磁性層の材料として、Mnに第2元素を添加した
ものを用い、熱安定性や耐食性に優れた交換結合膜を得
るための検討が行われている。例えば、特開平6−31
4617号公報には、反強磁性材料として、MnにC
u,Ru,Rh,Re,Ag,Au,Os,Irを25
〜76原子%、あるいはPd,Ptを25〜60原子%
または65〜76原子%添加したものを用いることによ
って、反強磁性層の耐食性と熱的安定性を向上させ、こ
れを強磁性層と積層することによって交換結合膜を形成
する例が開示されている。
【0015】また、この公報に記載の構成は、反強磁性
層の材料として、結晶構造が正方晶系となるものを用い
ることを特徴としているが、反強磁性層の配向方位は特
に規定されていない。また、この公報には、X線回折に
よる測定の結果、この反強磁性層は(101)面配向で
ある、と記載されている。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】交換結合膜において
は、その交換結合磁界が高いことが重要である。そし
て、交換結合膜の交換結合磁界は、強磁性層の磁化方向
と平行な反強磁性層の磁気モーメントが、反強磁性層と
強磁性層との界面に多く存在するほど、高くなると考え
られている。従って、高い交換結合磁界を得るために
は、反強磁性層と強磁性層との界面において、反強磁性
層の磁気モーメントが、この界面に対して平行に、か
つ、この面内で強磁性的に配列していることが望まし
い。
【0017】しかし、現在、反強磁性層に用いられてい
る上記したFeMn合金などには、磁気モーメントが強
磁性的に配列している結晶面が存在しない。従って、上
記界面における反強磁性層の磁気モーメントを、この界
面に対して平行に、かつ、この面内で強磁性的に配列さ
せることはできない。
【0018】また、磁性体ハンドブック(朝倉書店,1
975)の401頁および402頁に記載されているよ
うに、Mnに他の元素を添加して得られる反強磁性規則
合金のなかには、正方晶系のCuAu−I型結晶構造を
とるもののように、磁気モーメントが強磁性的な配列と
なる結晶面を持つ磁気構造を持つものが存在する。例え
ば、MnPt反強磁性規則合金等のBタイプのCuAu
−I型の結晶構造を有するものでは、室温において、磁
気モーメントが、(100)面および(010)面に平
行で、かつ、これらの面内で強磁性的な配列となってい
る。
【0019】しかしながら、非晶質あるいは多結晶基板
上に、交換結合膜の各層をスパッタ法等によって積層す
る場合、所望の結晶面が上記した界面と平行となるよう
に各層を積層することは、通常は困難である。すなわ
ち、強磁性体あるいは反強磁性体からなる薄膜を形成す
ると、薄膜は、一般に、結晶エネルギーが最小となるよ
うに配向する傾向がある。例えば、MnPt反強磁性規
則合金などのCuAu−I型結晶構造の反強磁性体を用
いて薄膜を作成した場合には、(111)面配向した結
晶からなる薄膜が得られやすくなる。このように、従来
の反強磁性層の作成方法では、高い交換結合磁界を発生
するために有利と考えられる結晶配向を得ることはでき
ない。
【0020】また、「Mnx Pt1-x : A new exchange bia
s material for Permalloy,J. Appl. Phys. 81 (8) 15
April 1997 」という文献には、(001)面配向した
MgOの単結晶からなる基板上に、200℃でNiFe
合金膜をエピタキシャル成長させ、この膜の上にMnP
t合金膜を成長させるという交換結合膜の製造方法が開
示されている。この方法では、熱処理なしでMnPt合
金膜の規則合金化を行い、交換結合磁界を得るようにな
っている。
【0021】さらに、この文献には、上記の製造方法に
よって得られた交換結合膜に対してX線回折測定を行っ
た結果、あるサンプルから、MnPt合金膜の(11
1)面からの回折線と(200)面からの回折線とが測
定されたことが記載されている。さらに、このサンプル
では、MnPt合金膜の(200)面が現れていないサ
ンプルに比べて、大きな結合エネルギーが得られたと記
載されている。
【0022】この文献の記載より、MnPt合金層の
(200)面からの回折線が現れたサンプルでは、Ni
Fe合金膜が(100)面で配向した結果、MnPt合
金膜が(100)面で配向したと考えられる。そして、
この配向により、NiFe合金膜とMnPt合金膜との
界面において、MnPt合金膜の磁気モーメントが、こ
の界面に対して平行に、かつ、この面内で強磁性的に配
列している状態に近い状態が実現されている可能性があ
る。
【0023】しかしながら、このサンプルでは、MnP
t合金膜の(111)面からの回折線の強度が大きいこ
とから、MnPt合金膜の(100)面配向の状態はか
なり不完全であると考えられる。また、この文献に記載
の製造方法では、特定の単結晶基板を用いる必要があ
る。従って、この製造方法によって得られる交換結合膜
を応用して、実用的な磁気抵抗効果素子を作成すること
は困難である。
【0024】本発明は上述の問題点を解決するためにな
されたもので、その目的は、高い交換結合磁界、高い耐
食性、高い耐熱性を有する交換結合膜の製造方法、およ
び、この製造方法によって得られた交換結合膜を用い
た、信頼性の高い磁気抵抗効果素子を提供することにあ
る。
【0025】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明の請求項1に記載の交換結合膜の製造方法
は、強磁性層と、この強磁性層に隣接して形成された反
強磁性層とを備え、これら強磁性層と反強磁性層との交
換結合により、上記強磁性層の磁化の方向が固定されて
いる交換結合膜の製造方法において、窒素ガスが添加さ
れたアルゴンガス雰囲気中で、面心立方構造を有する強
磁性体を材料として、上記強磁性層を形成する第1の工
程と、反強磁性体を材料として、上記反強磁性層を上記
強磁性層の上に形成する第2の工程とを含んでいること
を特徴としている。
【0026】交換結合膜は、反強磁性層との交換結合に
より、強磁性層の磁化が一方向に固定されているもので
ある。そして、この強磁性層における磁化の固定は、こ
の交換結合により発生する交換結合磁界によるものであ
る。そして、交換結合膜の交換結合磁界は、強磁性層と
反強磁性層との界面において、この界面に平行な磁気モ
ーメントが反強磁性層に多く存在する場合に、高くなる
ものである。そこで、上記の製造方法では、第1の工程
において、強磁性層の形成を、面心立方構造の結晶構造
を有する強磁性体を材料として、窒素ガスを添加したア
ルゴンガス中で行うようになっている。なお、この雰囲
気中での強磁性層の形成は、例えば、反応性スパッタリ
ング法によって行うことが好ましい。
【0027】窒素ガスを添加しないアルゴンガス中で、
面心立方構造の結晶構造を有する強磁性体を用いて、強
磁性層のような薄膜を形成すると、膜の配向面は、結晶
構造における最密面である(111)面となる。ところ
が、窒素ガスを添加したアルゴンガス中で上記材料を用
いて薄膜を形成すると、その配向面は(100)面とな
る。これは、薄膜を構成する特定の原子間に窒素原子が
入り込むことにより、結晶エネルギー的に安定な配向面
が、(111)面から(100)面に変化することに起
因すると考えられる。
【0028】このように、上記の製造方法によれば、特
定の単結晶基板を用いなくても、強磁性層の配向面を
(100)面とすることができる。このため、このよう
に配向した強磁性層の上に形成する反強磁性層も、(1
00)面配向とすることができる。従って、第2の工程
において、面に平行な磁気モーメントが(100)面に
多く存在するような反強磁性体を材料として反強磁性層
を形成すれば、高い交換結合磁界を発生する交換結合膜
を製造することができる。
【0029】また、上記第1の工程において、アルゴン
ガスに添加する窒素ガスの濃度は、請求項2に記載のよ
うに、0%より大きく、かつ、9%以下の範囲であるこ
とが好ましい。この窒素ガスの濃度とは、ガス全体のモ
ル数に対する窒素ガスのモル数、すなわち、窒素ガスの
モル100分率のことである。
【0030】窒素ガスの濃度を上記の範囲に設定して強
磁性層を形成すれば、窒素ガスを添加しないアルゴンガ
ス中で強磁性層を形成する場合よりも、高い交換結合磁
界を有する交換結合膜を製造することが可能となる。従
って、請求項1に記載の交換結合膜の製造方法を実現
し、高い交換結合磁界を有する交換結合膜を製造するこ
とが容易となる。
【0031】また、請求項3に記載の交換結合膜の製造
方法は、請求項1に記載の製造方法において、上記第2
の工程における材料として、(100)面の磁気モーメ
ントが、この面に対して平行であって、かつ、この面内
において強磁性的に配列されている反強磁性体を用いる
ことを特徴としている。
【0032】上記したように、交換結合膜の交換結合磁
界は、強磁性層と反強磁性層との界面において、この界
面に平行な磁気モーメントが反強磁性層に多く存在する
場合に、高くなるものである。さらに、請求項1に記載
の製造方法によれば、反強磁性層の配向面を(100)
面とすることができるようになっている。
【0033】従って、(100)面の磁気モーメント
が、この面に対して平行であって、かつ、この面内にお
いて強磁性的に配列されている反強磁性体を材料として
反強磁性層を形成すれば、強磁性層と反強磁性層との界
面における反強磁性層の磁気モーメントの数を、非常に
多くすることが可能となる。これにより、さらに高い交
換結合磁界を発生することのできる交換結合膜を製造す
ることが可能となる。
【0034】また、このように、(100)面の磁気モ
ーメントがこの面に対して平行であって、かつ、この面
内において強磁性的に配列されている反強磁性体として
は、例えば、請求項4に記載のように、CuAu−I型
の結晶構造を有する反強磁性体が挙げられる。このよう
な反強磁性体を材料として用いれば、請求項3に記載の
交換結合膜の製造方法を実現することが容易となる。
【0035】さらに、このCuAu−I型の結晶構造を
有する反強磁性体としては、例えば、請求項5に記載の
ように、Pt組成組成比)が42原子%より大きく、か
つ、55原子%より小さいMnPt合金を用いることが
好ましい。ここで、Pt組成とは、MnPt合金におけ
るPtの組成比のことである。
【0036】MnPt合金は、BタイプのCuAu−I
型の結晶構造を有する反強磁性体であり、4つの等価な
(100)面を有するものである。また、MnPt合金
は、耐食性および耐熱性に優れている反強磁性体であ
る。そして、上記の組成範囲のPtを含むMnPt合金
によって反強磁性層を形成すれば、発生される交換結合
磁界を高くすることができる。
【0037】従って、請求項5の製造方法によれば、請
求項3あるいは4に記載の製造方法を実現することが容
易となるとともに、耐食性、熱安定性および熱処理に対
する安定性に優れ、かつ、交換結合磁界が高い交換結合
膜を製造することが可能となる。
【0038】また、このように、Pt組成が42原子%
より大きく、かつ、55原子%より小さいMnPt合金
を反強磁性層の材料に用いる場合には、請求項6に記載
のように、反強磁性層の厚さを、50Å以上とすること
が好ましい。反強磁性層の厚さを上記の範囲とすること
で、交換結合磁界が非常に高い交換結合膜を製造するこ
とが容易となる。
【0039】また、請求項7に記載の磁気抵抗効果素子
は、請求項1〜6の何れかに記載の交換結合膜の製造方
法によって製造された交換結合膜を備え、上記交換結合
膜における強磁性層に隣接して金属非磁性層が形成され
ているとともに、この金属非磁性膜に隣接して第2の強
磁性層が形成されており、上記交換結合膜における強磁
性層と上記第2の強磁性層との磁化の向きのなす角度に
よって、磁気抵抗効果をもつことを特徴としている。
【0040】上記の磁気抵抗効果素子は、従来のものよ
り高い交換結合磁界を発生し、耐食性、熱安定性および
熱処理に対する安定性の何れにも優れた交換結合膜を備
えている。従って、外乱磁界に安定であり、環境による
磁気特性の経時変化や、温度上昇磁気特性の劣化、ある
いは製造時の熱処理プロセスによる磁気特性の劣化等が
少ない磁気抵抗効果素子となっている。
【0041】
【発明の実施の形態】〔実施の形態1〕本発明の第1の
実施形態について以下に説明する。図1は、本実施の形
態にかかる交換結合膜(以下、本交換結合膜)の構成を
示す説明図である。この図に示すように、本交換結合膜
は、基板1と、下地層2と、強磁性層3と、反強磁性層
4とが、この順に積層された構成である。
【0042】基板1は、ガラス、あるいはSi等からな
る基板である。下地層2は、強磁性層3の結晶配向性を
高めるためのものである。また、下地層2には、熱処理
により基板1と強磁性層3とが反応してしまうことを防
止する働きがある。この熱処理による反応は、基板1と
してSi等を用いた場合に生じやすいものである。この
下地層2の材料としては、例えば、Ta等を用いること
ができる。
【0043】強磁性層3は、面心立方構造(fcc構
造)を有する強磁性体からなる薄膜である。また、この
強磁性層3の配向面は、(100)面となっており、強
磁性層3の磁気モーメントは、この面に平行な状態とな
っている。
【0044】この強磁性層3は、窒素ガスが添加された
アルゴンガス雰囲気中で、fcc構造を有する強磁性体
を材料として形成される。形成方法としては、例えば、
RFコンベンショナルスパッタ法、DCマグネトロンス
パッタ法、RFマグネトロンスパッタ法等の、反応性ス
パッリング法を採用することができる。反応性スパッタ
リング法では、雰囲気中の窒素ガスを、プラズマにより
材料に化合させることができる。すなわち、材料をプラ
ズマにより窒化することができる。
【0045】アルゴンガスのみの雰囲気中で、NiFe
合金のようなfcc構造の強磁性体からなる薄膜を形成
すると、薄膜の結晶エネルギーが最小となるように、通
常、最密面である(111)面が配向面になりやすい。
また、(111)面配向した強磁性層3上に反強磁性層
4を形成すると、反強磁性層4の配向面も、(111)
面となりやすい。
【0046】ところが、アルゴンガスに窒素ガスを添加
した雰囲気中で、fcc構造の強磁性体からなる薄膜を
形成すると、薄膜の結晶配向が著しく変化し、(10
0)面配向となる。これは、窒素原子が、薄膜を構成す
る特定の原子間に入り込むことにより、結晶エネルギー
を最小とする配向状態が変化することによると考えられ
る。
【0047】反強磁性層4は、BタイプのCuAu−I
型結晶構造を有する反強磁性体からなる薄膜である。ま
た、この反強磁性層4の配向面は(100)面となって
いる。図2は、このBタイプのCuAu−I型結晶構造
を有する反強磁性体である、MnPt合金の磁気構造
(スピン構造)を示す説明図である。この図における
a,b,およびcとして示した方向は、それぞれ反強磁
性層4の<100>軸,<010>軸および<001>
軸の方向を表している。また、Mn原子上の矢印は、磁
気モーメントの向きを表している。
【0048】この図に示すように、この反強磁性体で
は、(100)面および(010)面内で、磁気モーメ
ントが各面に平行であり、かつ、強磁性的に配列してい
る。従って、反強磁性層4の磁気モーメントは、配向面
内で強磁性的な配列となっているとともに、この面に平
行な状態となっている。
【0049】反強磁性層4は、上記のように(100)
面配向している強磁性層3上に、BタイプのCuAu−
I型結晶構造を有する反強磁性体を材料として、例えば
DCマグネトロンスパッタ法等によって形成される。
【0050】図3は、(100)面配向している強磁性
層3の上に、図2に示したMnPt合金が反強磁性層4
として形成された状態を示す説明図である。反強磁性層
4の配向は、強磁性層3の結晶配向が反映されたものと
なるので、(100)面配向した強磁性層3の上に成膜
すれば、図3に示すように、反強磁性層4の配向面を
(100)面とすることができる。なお、この図におい
ては、反強磁性層4として、図2と同様に、反強磁性体
のひとつの磁気単位胞のみを示した。また、強磁性層3
内に示した矢印は、強磁性層3の磁気モーメントの向き
を表している。
【0051】このように、本交換結合膜の製造方法で
は、強磁性層3が、窒素ガスが添加されたアルゴンガス
雰囲気中で、fcc構造を有する強磁性体を形成するよ
うになっている。そして、この形成により、強磁性層3
の配向面を(100)面とすることができる。
【0052】そして、この(100)面配向した強磁性
層3上に、BタイプのCuAu−I型結晶構造を有する
反強磁性体からなる反強磁性層4を成膜することによ
り、反強磁性層4の配向面を(100)面とすることが
できる。すなわち、反強磁性層4における配向面内の磁
気モーメントを、配向面内で強磁性的な配列とするとと
もに、この面に平行な状態とすることが可能となってい
る。これにより、強磁性層3と反強磁性層4との積層界
面において、反強磁性層4の磁気モーメントを、この面
内に対して平行に、かつ、この面内で強磁性的な配列と
することが可能となっている。
【0053】従って、強磁性層3および反強磁性層4の
磁気転移点以下で、強磁性層3の磁気モーメントと反強
磁性層4の磁気モーメントとを、互いに平行な状態とす
ることができ、高い交換結合磁界を得ることが可能とな
っている。そして、高い交換結合磁界により、外乱磁界
に対して非常に安定な交換結合膜を得ることが可能とな
っている。
【0054】また、強磁性層3を形成する際に用いられ
る、窒素ガスが添加されたアルゴンガスは、ガス全体に
対する窒素ガスの濃度が所定の範囲にあることが好まし
い。この所定の範囲とは、ガス全体に対する窒素ガスの
濃度を、ガス全体のモル数に対する窒素ガスのモル数、
すなわち、窒素ガスのモル100分率Cで表現すると、
0%<C≦9%の範囲である。窒素ガスの濃度をこのよ
うな範囲として強磁性層3を形成することで、窒素ガス
を添加しない場合に比して、交換結合膜の交換結合磁界
を高くすることができる。なお、以下では、強磁性層3
の形成時にアルゴンガスに添加される窒素ガスを、添加
窒素ガスと称する。また、窒素ガスが添加されたアルゴ
ンガスに対する窒素ガスのモル100分率を、添加窒素
ガス濃度と称する。
【0055】また、強磁性層3の材料としては、例え
ば、NiFe合金等を用いることができる。また、強磁
性層3として、Coからなる膜と、NiFe合金からな
る膜とを積層してなる膜を用いることもできる。
【0056】また、反強磁性層4の材料となる反強磁性
体としては、上記したように、BタイプのCuAu−I
型結晶構造を有する反強磁性体を用いることができる。
さらに、この結晶構造を有する反強磁性体として、Mn
Pt合金を用いることが好ましい。MnPt合金からな
る反強磁性規則合金のブロッキング温度は約350℃で
あるため、交換結合膜の熱安定性と、熱処理に対する安
定性とを高めることができる。
【0057】また、反強磁性層4の材料としてMnPt
合金を用いる場合には、その組成比は、Mn1-x Ptx
として、0.42<x<0.55であることが好まし
く、0.43≦x≦0.51であることがさらに好まし
い。すなわち、MnPt合金のPt組成が、42原子%
より大きく、かつ、55原子%より小さいことが好まし
く、43原子%以上、かつ、51原子%以下であること
がさらに好ましい。このように、反強磁性層4における
MnPt合金のPt組成を約50原子%とすることで、
本交換結合膜の交換結合磁界を高めることが可能となる
とともに、交換結合膜の耐食性を高めることが可能とな
る。
【0058】また、反強磁性層4の膜厚は、50Å以上
であることが好ましく、150Å以上であることがさら
に好ましい。このような膜厚とすることで、本交換結合
膜の交換結合磁界を高めることが可能となる。
【0059】また、本交換結合膜の製造においては、反
強磁性層4を形成した後、反強磁性層4の規則合金化を
図るために、熱処理を行うことが好ましい。また、本交
換結合膜の製造においては、反強磁性層4を形成した
後、強磁性層3と反強磁性層4との交換結合磁界を高め
るために、所定の温度以上において、外部磁界を印加す
ることが好ましい。また、この外部磁界は、反強磁性層
4の面内方向に印加されることが好ましい。外部磁界を
印加しながら、反強磁性層4を所定の温度(例えば反強
磁性層4のネール点以上の温度)とすると、反強磁性層
4の磁気モーメントが、外部磁界に対する磁気エネルギ
ーが小さくなるような方向を向くようになる。従って、
外部磁界を印加する方向を制御すれば、反強磁性層4に
おける磁気モーメントを所望の方向とすることができ
る。従って、強磁性層3と反強磁性層4との交換結合磁
界を高くすることが可能となる。
【0060】従って、本交換結合膜の製造においては、
反強磁性層4の形成後、外部磁界中で熱処理を行うこと
が好ましいといえる。また、外部磁界の印加は、反強磁
性層4の成膜中に行うようにしてもよい。すなわち、外
部磁界中で基板加熱を行うようにすれば、成膜後に加熱
および外部磁界の印加を行わなくても、成膜中に、強磁
性層3と反強磁性層4との高い交換結合磁界を実現する
ことが可能となる。
【0061】ここで、(100)面配向している強磁性
層3上に反強磁性層4を成膜することにより、反強磁性
層4の平行面が(100)面となることについての、1
つの理由を以下に述べる。
【0062】強磁性層3の材料となる強磁性体は、a,
b,c軸の長さが全て等しく、(100)面,(01
0)面および(001)面が全て等価な面となっている
fcc構造である。また、BタイプのCuAu−I型結
晶構造を有する反強磁性体は、a軸とb軸とが等しい長
さであり、c軸が他の2軸より短いfct構造である。
このように、fct構造では、(100)面と(01
0)面とは等価な面である。例えば、fcc構造の強磁
性体であるNiFe合金の格子定数は、a,b,c軸が
全て3.55Åである。また、fct構造の反強磁性体
であるMnPt合金の格子定数は、a軸およびb軸が
4.00Å,c軸が3.67Åである。
【0063】従って、強磁性層3の材料としてNiFe
合金を、反強磁性層4の材料としてMnPt合金を採用
した場合、格子定数の整合の観点からすれば、NiFe
合金の(100)面上に形成されやすいMnPt合金の
面は、(001)面ではなく、(100)面であるとい
える。以上より、反強磁性層4の材料としては、いずれ
かの格子定数が、強磁性層3の格子定数に近い長さとな
っているものが好ましいといえる。このような反強磁性
層4に熱処理を加えると、格子定数の整合により、さら
に(100)面配向を強くすることが可能となる。
【0064】なお、上記では、強磁性層3を形成する際
に用いられる添加窒素ガス濃度の好ましい範囲は、モル
百分率で表現した場合、0%より大きく9%以下である
としたが、この濃度を窒素ガスの流量%で表現した場合
も、好ましい範囲は、同様に、0%より大きく9%以下
となる。
【0065】この窒素ガスの流量%とは、成膜装置に流
入される窒素ガスとアルゴンガスとの全流量に対する窒
素ガスの流量のことであり、実質的には、窒素ガスのモ
ル百分率と同様のものである。例えば、全流量が34.
7sccmであり、窒素ガスの流量が1sccmである場合に
は、窒素ガスの流量%は、2.9%となる。ここで、sc
cmとは、0℃,1atomにおける1分あたりの流量のこと
である。
【0066】また、上記では、反強磁性層4を形成した
後、反強磁性層4の規則合金化を図るために、熱処理を
行うことが好ましいとしているが、反強磁性層4の形成
中に基板加熱を行うようにしても、反強磁性層4の規則
合金化を図ることが可能である。以下に、本交換結合膜
の製造方法の実施例を、実施例1ないし3として説明す
る。 〔実施例1〕本交換結合膜の製造方法における第1の実
施例について説明する。本実施例における製造方法は、
基板1上に、下地層2となるTa膜,強磁性層3となる
NiFe合金膜および反強磁性層4となるMnPt合金
膜を、後述する方法でこの順に成膜し、本交換結合膜の
前段階となる積層膜を形成した後、この積層膜に、後述
する熱処理を施したものである。
【0067】まず、上記積層膜の形成における、各膜の
成膜方法と成膜条件とを以下に示す。なお、各膜の成膜
は、一つの成膜装置を用いて、4×10-7Torr以下
まで排気後、同一真空中で行った。また、基板1として
は、ガラス基板(コーニング社製:#7059)を用い
た。
【0068】Ta膜は、DCマグネトロンスパッタ法に
て、Arガス圧:5mTorr,Power:64mW
/cm2 の成膜条件で、ガラス基板上に50Åの厚さに
成膜した。NiFe合金膜は、RFコンベンショナルス
パッタ法にて、窒素ガスが添加されたアルゴンガス圧:
5mTorr,Power:130mW/cm2 の成膜
条件で、Ta膜上に、100Åの厚さに成膜した。ま
た、添加窒素ガス濃度を、0%〜20.2%の範囲で変
化させた。
【0069】MnPt合金膜は、DCマグネトロンスパ
ッタ法にて、Arガス圧:5mTorr,Power:
64mW/cm2 の成膜条件で、NiFe合金膜上に、
200Åの厚さに成膜した。また、MnPt合金膜の成
膜では、Mnターゲット上に、Ptペレットを配置した
複合ターゲットを用いた。また、MnPt合金膜におけ
るPtの量は、47.4原子%とした。
【0070】積層膜の形成後、MnPt合金膜の規則合
金化のために、積層膜に対して、300Oeの外部磁界
中で、250℃、12時間の熱処理を行い、本交換結合
膜のサンプルを得た。なお、上記の外部磁界は、MnP
t合金膜の面内方向に印加した。また、MnPt合金膜
の規則合金化は200℃程度から始まるが、十分に規則
化するためには、230℃以上で熱処理を行うことが好
ましい。
【0071】本実施例では、このような製造方法によ
り、サンプル♯1〜♯6なる6つのサンプルを得た。こ
れらサンプル♯1〜♯6は、NiFe合金膜の形成時に
おける添加窒素ガス濃度が、それぞれ異なるものであ
る。なお、各サンプル♯1〜♯6におけるこの添加窒素
ガス濃度は、それぞれ、0%,1.4%,2.9%,
5.8%,11.5%および20.2%である。
【0072】図4は、これらサンプル♯1〜♯6に対し
て、X線回折測定を行った結果を示す説明図である。こ
の図において、横軸はX線回折測定における散乱角
(θ)の2倍の角度を示しており、縦軸は回折線の強度
(回折強度)を示している。また、サンプル名の隣に記
載されている数値は、NiFe合金膜の形成時における
添加窒素ガス濃度である。
【0073】この図に示すように、アルゴンガスに窒素
ガスを全く添加しないでNiFe合金膜を形成したサン
プル♯1では、観測される回折線は、NiFe合金の
(111)面、MnPt合金の(111)面のみであ
る。従って、このサンプル♯1におけるMnPt合金膜
の優先配向面は、(111)面であることがわかる。
【0074】一方、添加窒素ガス濃度が1.4%のサン
プル♯2であっても、NiFe合金膜およびMnPt合
金膜の配向面は著しく変化し、観測される回折線は、N
iFe合金の(200)面からの回折線と、MnPt合
金の(200)面からの回折線とのみとなる。これら2
つの面からの回折線の強度は、添加窒素ガス濃度が2.
9%のサンプル♯3で最大となる。
【0075】そして、添加窒素ガス濃度が11.5%で
あるサンプル♯5では、これらの回折線の強度は急激に
低下しているとともに、MnPt合金の(111)面か
らの弱い回折線が観測されている。
【0076】また、図5は、図4に示したX線回折測定
の結果から求めた、MnPt合金の(200)面からの
回折線の強度の、添加窒素ガス濃度(図5では窒素濃度
と表記)に対する依存性を示すグラフである。図4およ
び図5に示すように、強磁性層3であるNiFe合金膜
の形成時に、窒素ガスを添加したアルゴンガスを用いる
ことで、NiFe合金膜の配向面は(111)面から
(100)面に変化し、この膜の上に成膜されるMnP
t合金膜の結晶配向面も、(111)面から(100)
面に変化することがわかる。
【0077】また、添加窒素ガス濃度を2.9%より大
きくしてNiFe合金膜を形成したサンプル♯4〜♯6
では、NiFe合金の(200)面およびMnPt合金
の(200)面からの回折線の強度が低下する。この回
折線強度の低下の原因は、添加窒素ガスの量が多すぎ
て、NiFe合金膜の結晶性が低下し、この低下にとも
なってMnPt合金膜の結晶性も低下してしまったこと
と考えられる。
【0078】なお、これらサンプル♯1〜♯6における
MnPt合金膜は、250℃,12時間の熱処理によっ
て、全て規則合金化していると考えられる。しかしなが
ら、サンプル♯1およびサンプル♯6では(111)面
配向が、サンプル♯2〜サンプル♯4では(100)面
配向が、サンプル♯5では(111)面および(10
0)面配向がそれぞれ強いために、MnPt規則合金に
おける他の面に応じた回折線(規則格子線)が観測され
ないと考えられる。
【0079】ここで、MnPt規則合金における他の面
とは、例えば、(001)面,(110)面,(20
1)面,(112)面,(221)面,(310)面お
よび(312)面である。
【0080】特定の面配向が強い状態、例えば、完全に
(111)面配向している状態とは、膜面に平行な結晶
面が(111)面のみとなっている状態である。しかし
ながら、通常、このような特定の面の完全な配向は得ら
れない。従って、特定の面配向の程度により、実際に現
れる回折線の種類・強度が変化する。
【0081】上記したX線回折測定は、θ−2θスキャ
ンと呼ばれるものであり、膜面に平行な結晶面(格子
面)に応じた回折線が観測されるものである。また、規
則合金化により、MnPt合金膜が上記した各面からの
回折線が現れる状態となっても、特定の面配向が強い場
合には、この特定の面以外には、膜面に平行な面はほと
んどない状態となる。このため、結果的に、特定の面以
外の面に応じた回折線は、上記の測定では観測されない
ことになる。
【0082】また、これらサンプル♯1〜♯6に対し
て、NiFe合金膜における磁化容易方向に外部磁界を
印加して、磁化曲線を測定した。そして、各サンプルの
NiFe合金膜における磁化を反転させる磁界の強さ
(磁化曲線の0磁界からのシフト量)から、各サンプル
における交換結合磁界を求めた。図6は、各サンプルに
対する交換結合磁界の測定結果から得られた、添加窒素
ガス濃度(図6では窒素濃度と表記)と交換結合磁界と
の関係を示すグラフである。このグラフにおいては、添
加窒素ガス濃度が0%のサンプル♯1における交換結合
磁界の値を1として、各サンプルの交換結合磁界の値を
規格化して示している。
【0083】この図に示すように、交換結合磁界は、添
加窒素ガス濃度が2.9%のときに極大となり、その
後、濃度が増すにつれて低下している。この低下は、前
述したように、MnPt合金膜の結晶性が低下したこと
が原因と考えられる。
【0084】窒素ガスが添加されたアルゴンガス雰囲気
中でNiFe合金膜を形成する場合、最終的に製造され
る交換結合膜の交換結合磁界は、添加窒素ガス濃度0%
のサンプル♯1における交換結合磁界を上回ることが好
ましい。従って、図6より、添加窒素ガス濃度は、0%
より大きく、かつ、9%以下であることが好ましいとい
える。
【0085】以上のように、窒素ガスが添加されたアル
ゴンガス雰囲気中でNiFe合金膜を成膜すると、この
膜を(100)面配向とすることができる。そして、こ
の膜の上にMnPt合金膜を成膜することで、MnPt
合金膜を(100)面配向とすることができる。従っ
て、本実施例の製造方法を用いれば、NiFe合金膜と
MnPt合金膜との界面で、MnPt合金膜の磁気モー
メントを、この界面に平行に、かつ、この界面内で強磁
性的に配列させることが可能となり、高い交換結合磁界
を発生する交換結合膜を得ることができる。
【0086】〔実施例2〕本交換結合膜の製造方法にお
ける第2の実施例について説明する。本実施例に示す製
造方法は、実施例1に示した製造方法において、添加窒
素ガス濃度を2.9%として、反強磁性層4となるMn
Pt合金におけるPt組成を、39〜55原子%の範囲
で種々に変化させたものである。なお、MnPt合金膜
の成膜後には、実施例1の製造方法と同様に、積層膜に
対して、300Oeの磁界中で、かつ、250℃の温度
で、12時間の熱処理を行った。また、各膜の膜厚,成
膜方法および成膜条件は、実施例1に示した通りであ
る。
【0087】図7は、この製造方法によって製造され
た、MnPt合金膜のPt組成が異なる複数のサンプル
における、交換結合磁界の測定結果を示すグラフであ
る。なお、このグラフでは、測定された交換結合磁界の
最大値を1として、他の値を規格化して示している。
【0088】このグラフに示すように、Pt組成を42
原子%以上として製造されたサンプルでは、交換結合磁
界が発生している。そして、交換結合磁界は、Pt組成
を約48原子%(47.4原子%)としたときに極大値
となり、55原子%以上とすると消失してしまう。
【0089】従って、この測定より、本交換結合膜にお
けるMnPt合金膜の組成は、Mn1-x Ptx として、
0.42<X<0.55の範囲であることが好ましいと
いえる。さらに、十分大きな交換結合磁界を得るため
の、より好ましいXの範囲は、0.43≦X≦0.51
であることがわかる。
【0090】なお、このように、Pt組成が42原子%
より小さい場合、あるいは、55原子%より大きい場合
には、交換結合磁界は発生しない。この理由は、Pt組
成がこの範囲にある場合には、MnPt合金における規
則合金化が生じないためである。また、交換結合磁界と
Ptの組成範囲との関係は、(111)面配向したMn
Pt合金膜に、上記と同様の熱処理を施した場合とほぼ
一致しており、配向面の違いによる、交換結合磁界のP
t組成依存性における差は現れていない。
【0091】〔実施例3〕本交換結合膜の製造方法にお
ける第3の実施例について説明する。本実施例に示す製
造方法は、実施例1に示した製造方法において、添加窒
素ガス濃度を2.9%とするとともに、強磁性層3であ
るNiFe合金膜の膜厚を300Åとし、反強磁性層4
であるMnPt合金膜の膜厚を、50〜1000Åの範
囲で変化させたものである。なお、MnPt合金膜のP
t組成(47.4原子%)、Ta膜の膜厚(50Å)、
および、MnPt合金膜の成膜後の熱処理、各膜の成膜
方法・成膜条件は、実施例1に示した通りである。
【0092】図8は、この製造方法によって製造され
た、MnPt合金膜の厚さが異なる複数のサンプルにお
ける、交換結合磁界の測定結果を示すグラフである。な
お、このグラフでは、膜厚が1000Åのサンプルにお
ける交換結合磁界の値(この測定における最大値)を1
として、他の値を規格化して示している。
【0093】この図に示すように、MnPt合金膜の膜
厚が50Å以上であるサンプルでは、交換結合磁界が発
生している。そして、交換結合磁界は、MnPt合金膜
の膜厚が150Åとなるまで急激に増加し、その後、1
000Åとなるまで緩やかに増加している。
【0094】このように、MnPt合金膜の膜厚が50
〜150Åの範囲では、膜厚の増加に対する交換結合磁
界の増加が顕著であるが、150Å〜1000Åの範囲
では、この増加の度合いが小さくなる。従って、本交換
結合膜におけるMnPt合金膜の膜厚は、50Å以上で
あることが好ましく、また、十分大きな交換結合磁界を
得るためのより好ましいMnPt合金膜の膜厚は、15
0Å以上であることがわかる。
【0095】〔実施の形態2〕本発明の第2の実施形態
について以下に説明する。なお、説明の便宜上、前述の
実施の形態1にて示した部材と同一の機能を有する部材
には、同一の符号を付記し、その説明を省略する。
【0096】本実施の形態にかかる磁気抵抗効果素子
(以下、本GMR素子とする)は、実施の形態1におい
て、図1を用いて示した交換結合膜の構成を採用した、
スピンバルブ膜のGMR素子である。図9は、本GMR
素子の構成を示す説明図である。この図に示すように、
本GMR素子は、基板1,下地層2,第2の強磁性層
5,金属非磁性層6,強磁性層3,反強磁性層4および
保護膜7が、この順に積層された構成である。
【0097】強磁性層3は、反強磁性層4との交換結合
によって磁化が固定されており、本GMR素子における
固定磁化層となっている。第2の強磁性層5は、磁化方
向が外部磁界に応じて回転する強磁性層であり、本GM
R素子における自由磁化層となっている。この第2の強
磁性層5は、強磁性体の薄膜や、強磁性体の薄膜が積層
された膜からなり、例えばCoやNiFe合金の薄膜、
あるいは、Co膜とNiFe合金膜との積層膜によって
形成することができる。
【0098】金属非磁性層6は、非磁性の金属からなる
膜であり、例えば、Cuからなる膜によって形成するこ
とができる。保護膜7は、非磁性の金属等を用いること
ができ、例えば、Taからなる膜によって形成すること
ができる。
【0099】本GMR素子は、自由磁化層としての第2
の強磁性層5と、反強磁性層4に隣接して形成された、
固定磁化層としての強磁性層3との、それぞれの磁化の
向きのなす角に依存した大きさの磁気抵抗効果をもつG
MR素子となっている。
【0100】そして、反強磁性層4が(100)面で配
向しているので、反強磁性層4の磁気モーメントが、反
強磁性層4と強磁性層3との界面に平行で、かつ、この
面内で強磁性的に配列している。このため、これら強磁
性層3と反強磁性層4とが強い交換結合磁界を有する交
換結合膜となっており、固定磁化層である強磁性層3の
保磁力は非常に高くなっている。従って、本GMR素子
は、外乱磁界に対して非常に安定なGMR素子となって
いる。
【0101】さらに、反強磁性層4を、Pt組成が42
原子%以上55%以下のMnPt合金を用いて形成すれ
ば、本GMR素子の耐食性、熱安定性、および、熱処理
に対する安定性を高めることができる。
【0102】このように、本GMR素子は、環境による
磁気特性の経時変化や、温度上昇による磁気特性の劣
化、および、製造過程における熱処理による磁気特性の
劣化の少ない、優れた磁気抵抗効果素子となっている。
以下に、本GMR素子の実施例を、実施例4として説明
する。
【0103】〔実施例4〕本GMR素子の一実施例につ
いて説明する。本実施例にかかる本GMR素子のサンプ
ル(以下、サンプル♯11とする)は、基板1上に、下
地層2となるTa膜と、第2の強磁性層5となるNiF
e合金膜およびCo膜と、金属非磁性層6となるCu膜
と、強磁性層3となるCo膜およびNiFe合金膜と、
反強磁性層4となるMnPt合金膜と、保護膜7となる
Ta膜とが、この順に積層された構成である。基板1と
しては、ガラス基板(コーニング社製:#7059)を
用いた。
【0104】また、上記した各膜の厚さは、下地層2に
おけるTa膜が50Å,第2の強磁性層5におけるNi
Fe合金膜およびCo膜がそれぞれ70Åおよび7Å,
Cu膜が28Å,強磁性層3におけるCo膜およびNi
Fe合金膜がそれぞれ10Åおよび100Å,MnPt
合金膜が200Å,保護膜7におけるTa膜が100Å
となっている。
【0105】また、下地層2におけるTa膜,強磁性層
3におけるNiFe合金膜およびMnPt合金膜の成膜
方法および成膜条件は、実施例1に示した通りである。
また、第2の強磁性層5におけるNiFe合金膜および
2つのCo膜の成膜方法および成膜条件は、添加窒素ガ
スを用いないこと以外は、強磁性層3におけるNiFe
合金膜の成膜方法および成膜条件と同様である。また、
保護膜7におけるTa膜および金属非磁性層6における
Cu膜の成膜方法および成膜条件は、実施例1に示した
Ta膜の成膜方法および成膜条件と同様である。
【0106】また、強磁性層3におけるNiFe合金膜
の添加窒素ガス濃度は、実施例1において最大の交換結
合磁界が得られたサンプル♯3と同様に、2.9%とし
た。また、MnPt合金膜のPt組成は、実施例2にお
いて最大の交換結合磁界が得られた47.4%とした。
【0107】また、サンプル♯11は、保護膜7におけ
るTa膜を成膜した後、MnPt合金膜の規則合金化の
ために、300Oeの磁界を印加しながら、250℃の
温度で、12時間の熱処理を行ったものである。
【0108】このようにして得られたサンプル♯11に
対して、X線回折測定を行ったところ、NiFe合金の
(200)面からの強い回折線と、MnPt合金の(2
00)面からの強い回折線とが観測された。また、第2
の強磁性層5におけるNiFe合金膜からのものと思わ
れる、NiFe合金の(111)面からの弱い回折線が
観測された。また、このサンプル♯11に対して、交換
結合磁界の測定を行ったところ、実施例1のサンプル♯
3と同等の、大きな交換結合磁界が測定された。また、
このサンプル♯11に外部磁界を印加して、磁気抵抗効
果を測定したところ、抵抗変化率7%、磁界感度0.8
%という良好な値が測定された。
【0109】このように、サンプル♯11は、強磁性膜
3を構成するNiFe合金膜と下地層2を構成するTa
膜との間に、NiFe合金膜およびCo膜からなる第2
の強磁性層5、Cu膜からなる金属非磁性層6、およ
び、強磁性層3を構成するCo膜が介在する構成となっ
ている。このような構成においても、上記したX線回折
測定および交換結合磁界の測定の結果より、実施の形態
1および実施例1〜3に示した交換結合膜と同様に、強
磁性層3を構成するNiFe合金膜が(100)面配向
していることによってMnPt合金膜の(200)面配
向が実現されていることがわかる。
【0110】なお、上記のように、サンプル♯11にお
ける強磁性層3および第2の強磁性層5は、NiFe合
金膜とCo膜とから構成されている。そして、これら両
強磁性層3・5のCo膜は、金属非磁性層6であるCu
膜側に配置されている。このように、NiFe合金膜と
Cu膜のと間に若干のCo膜を挿入することで、本GM
R素子の抵抗変化率を増加させることができる。また、
このCo膜は、NiFe合金膜とCu膜とが、加熱によ
って互いに拡散してしまうことを防止する働きがある。
従って、このCo膜によって、本GMR素子の耐熱性を
向上させることが可能となる。また、このCo膜は、N
iFe合金膜に比べて非常に薄いので、強磁性層3,反
強磁性層4の磁気特性および結晶配向に対して、ほとん
ど影響を及ぼすことはない。
【0111】以上のように、実施の形態1に示した交換
結合膜の製造方法は、単結晶基板などの特別な基板を基
板としてを用いることなく、強磁性層と反強磁性層との
積層界面において、反強磁性層の磁気モーメントをこの
面に平行とし、かつ、この面内で強磁性的な配置とする
ことができる。従って、高い交換結合磁界を発生する交
換結合膜を製造することが可能となる。さらに、実施の
形態2に示したように、この交換結合膜を応用すれば、
外乱磁界に対して安定な、GMR素子をはじめとする優
れた磁気デバイスを構成することが可能となる。
【0112】また、この交換結合膜における反強磁性層
を、Pt組成が約50%のMnPt合金膜から形成すれ
ば、この合金の高いブロッキング温度を利用でき、耐食
性と熱安定性とに優れた交換結合膜を製造することがで
きる。また、この交換結合膜をGMR素子に応用すれ
ば、外乱磁界に対して安定で、環境による磁気特性の経
時変化や温度上昇による磁気特性の劣化が少ない、GM
R素子をはじめとする優れた磁気デバイスを構成するこ
とが可能となる。
【0113】なお、上記した実施例1〜4では、本交換
結合膜における下地層2として、Taを用いるようにし
ているが、下地層2の材料はこれに限るものではない。
下地層2には、強磁性層3の配向性を高めるものであれ
ば、どのような材料を用いてもよい。また、必ずしも下
地層2を用いる必要はなく、ガラス基板からなる基板1
上に、強磁性層3を直接に成膜するようにしてもよい。
【0114】また、強磁性層3の材料として、NiFe
合金を用いるようにしてるが、強磁性層3の材料はこれ
に限るものではない。強磁性層3の形成には、fcc構
造を有する強磁性体であれば、どのような材料を用いて
もよい。
【0115】また、反強磁性層4の材料として、MnP
t合金を用いるようにしてるが、反強磁性層4の材料は
これに限るものではない。反強磁性層4には、Bタイプ
のCuAu−I型の結晶構造を有する反強磁性体であれ
ば、どのような材料を用いてもよい。また、本実施の形
態では、反強磁性層4の配向面が(100)面であると
している。しかしながら、BタイプのCuAu−I型の
結晶構造を有する反強磁性体では、(100)面と(0
10)面とは、結晶構造の点でも、磁気構造の点でも等
価な面である。従って、反強磁性層4は、(010)面
配向しているということもできる。
【0116】さらに、反強磁性層4の材料として、Aタ
イプのCuAu−I型の結晶構造を有する反強磁性体を
用いることもできる。この結晶構造を有する反強磁性体
は、(010)面内と(001)面内とで、磁気モーメ
ントが各面に平行であり、かつ、強磁性的に配列してい
る。従って、反強磁性層4がこれらの面のいずれかの面
で配向するように、強磁性層3の配向面と反強磁性層4
の形成条件とを設定すれば、反強磁性層4の材料とし
て、AタイプのCuAu−I型の結晶構造を有する反強
磁性体を用いることができる。
【0117】また、膜において特定の面配向が強い状
態、例えば、完全に(111)面配向している状態と
は、膜面に平行な結晶面が(111)面のみとなってい
る状態である。すなわち、(111)面に対して立てた
垂線(<111>軸)が、膜面に垂直な状態である。こ
の状態では、<111>軸を回転軸として結晶が回転し
ても、配向状態は(111)面のままである。
【0118】従って、膜内に複数の結晶が含まれている
場合、各結晶の<111>軸が膜面に垂直であれば、各
結晶がこの軸を回転軸として任意の方向に回転していた
としても、膜面の配向状態は(111)面である。ま
た、この回転に対して各結晶が同じ方向を向いていれ
ば、膜は単結晶となる。
【0119】
【発明の効果】以上のように、本発明の請求項1に記載
の交換結合膜の製造方法は、窒素ガスが添加されたアル
ゴンガス雰囲気中で、面心立方構造を有する強磁性体を
材料として、強磁性層を形成する第1の工程と、反強磁
性体を材料として、反強磁性層を上記強磁性層の上に形
成する第2の工程とを含んでいる製造方法である。
【0120】上記の製造方法によれば、強磁性層の配向
面を(100)面とすることができる。このため、この
ように配向した強磁性層の上に形成する反強磁性層も、
(100)面配向とすることができる。従って、第2の
工程において、面に平行な磁気モーメントが(100)
面に多く存在するような反強磁性体を材料として反強磁
性層を形成すれば、特定の単結晶基板を用いなくても、
高い交換結合磁界を発生する交換結合膜を製造すること
ができるという効果を奏する。
【0121】また、請求項2に記載の交換結合膜の製造
方法は、請求項1に記載の製造方法において、上記第1
の工程においてアルゴンガス中に添加される窒素ガスの
濃度が、0%より大きく、かつ、9%以下の範囲である
製造方法である。窒素ガスの濃度を上記の範囲に設定し
て強磁性層を形成すれば、窒素ガスを添加しないアルゴ
ンガス中で強磁性層を形成する場合よりも、高い交換結
合磁界を有する交換結合膜を製造することが可能とな
る。従って、上記の製造方法によれば、請求項1の効果
に加えて、請求項1に記載の交換結合膜の製造方法を実
現し、高い交換結合磁界を有する交換結合膜を製造する
ことが容易となるという効果を奏する。
【0122】また、請求項3に記載の交換結合膜の製造
方法は、請求項1に記載の製造方法において、上記第2
の工程における材料として、(100)面の磁気モーメ
ントが、この面に対して平行であって、かつ、この面内
において強磁性的に配列されている反強磁性体を用いる
製造方法である。
【0123】上記の製造方法によれば、反強磁性層の配
向面である(100)面で、反強磁性層の磁気モーメン
トが、この面に対して平行であって、かつ、この面内に
おいて強磁性的に配列されるようになる。従って、強磁
性層と反強磁性層との界面における反強磁性層の磁気モ
ーメントの数を、非常に多くすることが可能となる。こ
れにより、請求項1の効果に加えて、さらに高い交換結
合磁界を発生することのできる交換結合膜を製造するこ
とが可能となるという効果を奏する。
【0124】また、請求項4に記載の交換結合膜の製造
方法は、請求項3に記載の製造方法において、上記第2
の工程における材料として、CuAu−I型の結晶構造
を有する反強磁性体を用いる製造方法である。このよう
な反強磁性体を材料として用いれば、請求項3の効果に
加えて、請求項3に記載の交換結合膜の製造方法を実現
することが容易となるという効果を奏する。
【0125】また、請求項5に記載の交換結合膜の製造
方法は、請求項4に記載の製造方法において、上記第2
の工程における材料として、Pt組成が42原子%より
大きく、かつ、55原子%より小さいMnPt合金を用
いる製造方法である。
【0126】MnPt合金は、4つの等価な(100)
面を有し、耐食性および耐熱性に優れている反強磁性体
である。さらに、上記の組成範囲のPtを含むMnPt
合金によって反強磁性層を形成すれば、発生される交換
結合磁界を高くすることができる。これにより、請求項
4の効果に加えて、請求項3あるいは4に記載の製造方
法を実現することが容易となるとともに、耐食性、熱安
定性および熱処理に対する安定性に優れ、かつ、交換結
合磁界が非常に高い交換結合膜を製造することが可能と
なるという効果を奏する。
【0127】また、請求項6に記載の交換結合膜の製造
方法は、請求項5に記載の製造方法に加えて、上記第2
の工程において形成する反強磁性層の厚さを、50Å以
上とする製造方法である。反強磁性層の厚さを上記の範
囲とすることで、請求項5の効果に加えて、交換結合磁
界が非常に高い交換結合膜を製造することが容易となる
という効果を奏する。
【0128】また、請求項7に記載の磁気抵抗効果素子
は、請求項1〜6の何れかに記載の交換結合膜の製造方
法によって製造された交換結合膜を備え、上記交換結合
膜における強磁性層に隣接して金属非磁性層が形成され
ているとともに、この金属非磁性膜に隣接して第2の強
磁性層が形成されており、上記交換結合膜における強磁
性層と上記第2の強磁性層との磁化の向きのなす角度に
よって、磁気抵抗効果をもつ構成である。
【0129】これにより、外乱磁界に安定であり、環境
による磁気特性の経時変化や、温度上昇磁気特性の劣
化、あるいは製造時の熱処理プロセスによる磁気特性の
劣化等が少ない磁気抵抗効果素子を得ることが可能とな
るという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる交換結合膜の
構成を示す説明図である。
【図2】図1に示した交換結合膜における反強磁性層の
材料として使用可能な、BタイプのCuAu−I型結晶
構造を有する反強磁性体の磁気構造を示す説明図であ
る。
【図3】図1に示した交換結合膜の構成において、(1
00)面配向している強磁性層の上に、図2に示した反
強磁性体が反強磁性層として形成された構成を示す説明
図である。
【図4】添加窒素ガス濃度を変化させて作成した、図1
に示した交換結合膜の複数のサンプルに対する、X線回
折測定の結果を示す説明図である。
【図5】図4に示したX線回折測定の結果から求めた、
MnPt合金の(200)面からの回折線の強度の、添
加窒素ガス濃度に対する依存性を示すグラフである。
【図6】図1に示した交換結合膜における、添加窒素ガ
ス濃度と交換結合磁界との関係を示すグラフである。
【図7】図1に示した交換結合膜における、反強磁性層
のMnPt合金膜における、Pt組成と交換結合磁界と
の関係を示すグラフである。
【図8】図1に示した交換結合膜における、反強磁性層
のMnPt合金膜における膜厚と交換結合磁界との関係
を示すグラフである。
【図9】本発明の第2の実施形態にかかる磁気抵抗効果
素子における構成を示す説明図である。
【符号の説明】
1 基板 2 下地層 3 強磁性層 4 反強磁性層 5 第2の強磁性層 6 金属非磁性層 7 保護膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 出口 治彦 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内 (72)発明者 薦田 智久 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】強磁性層と、この強磁性層に隣接して形成
    された反強磁性層とを備え、これら強磁性層と反強磁性
    層との交換結合により、上記強磁性層の磁化の方向が固
    定されている交換結合膜の製造方法において、 窒素ガスが添加されたアルゴンガス雰囲気中で、面心立
    方構造を有する強磁性体を材料として、上記強磁性層を
    形成する第1の工程と、 反強磁性体を材料として、上記反強磁性層を上記強磁性
    層の上に形成する第2の工程とを含んでいることを特徴
    とする交換結合膜の製造方法。
  2. 【請求項2】上記第1の工程においてアルゴンガス中に
    添加される窒素ガスの濃度が、0%より大きく、かつ、
    9%以下の範囲であることを特徴とする請求項1に記載
    の交換結合膜の製造方法。
  3. 【請求項3】上記第2の工程における材料として、(1
    00)面の磁気モーメントが、この面に対して平行であ
    って、かつ、この面内において強磁性的に配列されてい
    る反強磁性体を用いることを特徴とする請求項1に記載
    の交換結合膜の製造方法。
  4. 【請求項4】上記第2の工程における材料として、Cu
    Au−I型の結晶構造を有する反強磁性体を用いること
    を特徴とする請求項3に記載の交換結合膜の製造方法。
  5. 【請求項5】上記第2の工程における材料として、Pt
    組成が42原子%より大きく、かつ、55原子%より小
    さいMnPt合金を用いることを特徴とする請求項4に
    記載の交換結合膜の製造方法。
  6. 【請求項6】上記第2の工程において形成する反強磁性
    層の厚さを、50Å以上とすることを特徴とする請求項
    5に記載の交換結合膜の製造方法。
  7. 【請求項7】請求項1〜6の何れかに記載の交換結合膜
    の製造方法によって製造された交換結合膜を備え、 上記交換結合膜における強磁性層に隣接して金属非磁性
    層が形成されているとともに、この金属非磁性膜に隣接
    して第2の強磁性層が形成されており、 上記交換結合膜における強磁性層と上記第2の強磁性層
    との磁化の向きのなす角度によって、磁気抵抗効果をも
    つことを特徴とする磁気抵抗効果素子。
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