JP2008024961A - ニッケル−鉄合金ナノ粒子の製造方法およびニッケル−鉄合金ナノ粒子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明のニッケル−鉄合金ナノ粒子の製造方法は、ニッケル塩と鉄塩を含む水溶液に還元剤を添加して、前記混合水溶液に含まれるニッケルイオンおよび鉄イオンを同時に還元することにより、ニッケル−鉄合金ナノ粒子を生成することを特徴とする。
【選択図】なし
Description
このような高周波数帯を使用する電子機器に用いられる高周波デバイスの基板では、高周波デバイスの電磁場特性を制御するために、基板に磁性特性を付与する目的で、ニッケル、鉄、コバルトなどのような磁性を有する金属粒子が、エポキシ樹脂などの基板材料中に、フィラーとして分散されて用いられている。
さらに、実験室レベルでは、特殊な装置を用いた金属粒子の製造方法により、平均一次粒子径が20nm〜100nm程度の金属粒子が得られることも報告されている。しかし、この金属粒子の製造方法は、800℃以上の高温にて熱的に気相還元を行う方法であり、得られた金属粒子には、粒子同士の融着や焼結による結合が見られる。このように結合した金属粒子は、エポキシ樹脂などの基板材料中に分散させた場合にも分離しないので、実際には粒子径が200nm以上の粒子として振る舞うから、渦電流損失を低減させる働きを示さない。
そこで、このニッケル−鉄合金のように磁気特性の強い合金であり、平均一次粒子径が200nm以下、かつ、粒子同士の融着や焼結による結合がないナノ粒子が、上述のような金属粒子フィラーとして望まれている。
ニッケル−鉄合金粒子の製造方法としては、水アトマイズ法、ガスアトマイズ法などのアトマイズ法が良く知られている。これらの方法は、高温にて溶融したニッケル−鉄合金を、水あるいはガスによって粉砕する方法であり、通常得られる粒子は、平均一次粒子径が1μm以上、かつ、粒度分布が大きなものであるから、このニッケル−鉄合金粒子は、GHz帯に用いた場合、渦電流損失が大きくなり不適である。
また、平均一次粒子径が比較的小さなニッケル−鉄合金粒子の製造方法としては、気相還元法を用いた製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この気相還元法を用いた製造方法は、ニッケルおよび鉄の単体、合金、あるいは化合物を蒸発させて気化した後、これらの気化したものを、水素中で還元しながら冷却することによって、粒子を生成させる方法である。
以上の状況から、高周波デバイスなどに用いられる基板材料に磁気特性を付与するためのフィラーとしてのニッケル−鉄合金粒子の製造方法として、平均一次粒子径が200nm以下であり、粒子同士の融着や粗大粒子の生成の原因となる高温プロセスを用いない製造方法が求められていた。
また、ニッケル塩と鉄塩を含む水溶液に還元剤を添加した後、高温に加熱することがないため、得られたニッケル−鉄合金ナノ粒子は、粒子同士の融着や焼結がなく、磁気特性を付与するためのフィラーとして好適であり、また、水系溶媒中でも安定なことから汎用性に優れ、塗料やペーストにも用いることができる。
このような本発明のニッケル−鉄合金ナノ粒子を含む塗料やペーストは、磁性流体としての利用や、印刷技術を適用してチョークコイル、ノイズフィルタ、インダクタおよび磁気ヘッドなどの電子回路部品や電波吸収体に適用することができる。さらに、平均一次粒子径が微細なため、成形性にすぐれ圧粉磁心の原料として使用することもできる。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
ニッケル塩および鉄塩を溶解する純水の量を、金属イオン(ニッケルイオン(Ni+)および鉄イオン(Fe+))0.1molに対して、0.1L以上かつ2L以下とするのが好ましい理由は、純水の量が0.1L未満では、還元剤によりこのニッケル塩−鉄塩水溶液に含まれるニッケルイオンおよび鉄イオンを還元した際、ニッケル−鉄合金粒子の生成する量が少なく、粗大粒子化し易くなるからであり、一方、純水の量が2Lを超えると、ニッケル−鉄合金の結晶核の量が多くなり過ぎて、ニッケル−鉄合金粒子同士が近付き過ぎて成長するため、凝集が起こり易くなるからである。
本発明のニッケル−鉄合金ナノ粒子の製造方法では、比較的強い還元力を得られることから、還元剤として、水酸化アルカリとヒドラジンを併用してなるものが好ましい。
水酸化アルカリの添加量を、ニッケル塩−鉄塩水溶液中のニッケルイオンおよび鉄イオンのモル量に対して5倍量以上かつ10倍量以下とした理由は、水酸化アルカリの添加量が5倍量未満では、ヒドラジンが十分に還元性を発揮するpH12以上の強アルカリ性に達しないからであり、一方、水酸化アルカリの添加量が10倍量を超えても、pHがあまり変わらないからである。
ヒドラジンの添加量を、ニッケル塩−鉄塩水溶液中のニッケルイオンおよび鉄イオンのモル量に対して2倍量以上かつ50倍量以下とした理由は、ヒドラジンの添加量が2倍量未満では、ニッケルイオンおよび鉄イオンの還元反応が十分に進行しないからであり、一方、ヒドラジンの添加量が50倍量を超えても、未反応のヒドラジンが残るだけで生成するニッケル−鉄合金ナノ粒子に変化がないからである。
還元剤を添加した後のニッケル塩−鉄塩水溶液を加熱する温度が50℃未満では、ニッケルイオンおよび鉄イオンの還元反応の進行が緩慢となるため、ニッケル−鉄合金ナノ粒子の生成効率が悪くなる。一方、還元剤を添加した後のニッケル塩−鉄塩水溶液を加熱する温度が80℃を超えると、生成したニッケル−鉄合金ナノ粒子が酸化するおそれがある。
また、ニッケルイオンおよび鉄イオンの還元反応が均一に進行するようにするために、還元剤を添加した後のニッケル塩−鉄塩水溶液を、攪拌しながら加熱することが好ましい。
ニッケル−鉄合金ナノ粒子から不純物イオンを除去する方法としては、例えば、ニッケル−鉄合金ナノ粒子を純水中に分散させた後、ろ過する工程を繰り返す方法が挙げられる。
本発明のニッケル−鉄合金ナノ粒子の製造方法によって得られた、本発明のニッケル−鉄合金ナノ粒子は、粒子同士の融着や焼結による結合が生じることがなく、平均一次粒子径が200nm以下であることから、エポキシ樹脂などの基板材料中にフィラーとして分散した際、GHz帯の表皮厚み以下の粒子径で分散するため、高周波がフィラー内に侵入して損失する渦電流損失が小さくなる。
本発明のニッケル−鉄合金ナノ粒子の製造方法によって得られた、本発明のニッケル−鉄合金ナノ粒子は、上記のような結晶構造をなしているから、ニッケルや鉄のような金属単体よりも、結晶異方性や磁歪が小さく、保持力が小さく、最大磁化が大きな軟磁性を示す。したがって、本発明のニッケル−鉄合金ナノ粒子は、エポキシ樹脂などの基板材料中にフィラーとして分散した際、ヒステリシス損失が小さく、優れた磁気特性を示す。
塩化ニッケル六水和物(NiCl2・6H2O、特級試薬、関東化学社製)16.6gと、塩化第一鉄四水和物(FeCl2・4H2O、特級試薬、関東化学社製)4.0gとを、純水165mLとメタノール100mLの混合溶液に溶解し、塩化ニッケルと塩化第一鉄の水溶液を調製した。
次いで、この水溶液に、濃度が5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液100mLを攪拌しながら添加した。
次いで、この水溶液を攪拌しながら60℃に加熱し、さらに、ヒドラジン一水和物(N2H4・H2O、特級試薬、関東化学社製)135gを添加して、これらの水溶液を攪拌しながら60℃にて1時間、加熱して、黒色の粒子を得た。
次いで、この黒色の粒子を純水とエタノールで洗浄した後、真空中で乾燥して微粒子を得た。
また、このニッケルと鉄の合金粒子は磁石に引き付けられることから、磁性を有することも分かった。さらに、振動試料型磁力計(VSM)により、このニッケルと鉄の合金粒子の飽和磁化を測定したところ93emu/gであった。
そして、透過型電子顕微鏡(TEM)により、このニッケルと鉄の合金粒子の電子顕微鏡像(図1参照)を得、この電子顕微鏡像から無作為に50個の粒子を選び出し、その一次粒子径を測定し、その測定結果の平均値を計算することによって、このニッケルと鉄の合金粒子の平均一次粒子径を算出した。その結果、このニッケルと鉄の合金粒子の平均一次粒子径は160nmであった。
また、図1に示す電子顕微鏡像から、このニッケルと鉄の合金粒子は、粒子同士の融着や焼結による結合がないことが確認された。
塩化ニッケル六水和物(NiCl2・6H2O、特級試薬、関東化学社製)9.6gと、塩化第一鉄四水和物(FeCl2・4H2O、特級試薬、関東化学社製)9.8gとを、純水265mLに溶解し、塩化ニッケルと塩化第一鉄の水溶液を調製した。
次いで、この水溶液に、濃度が5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液100mLを攪拌しながら添加した。
次いで、この水溶液を攪拌しながら60℃に加熱し、さらに、ヒドラジン一水和物(N2H4・H2O、特級試薬、関東化学社製)135gを添加して、これらの水溶液を攪拌しながら60℃にて1時間、加熱して、黒色の粒子を得た。
次いで、この黒色の粒子を純水とエタノールで洗浄した後、真空中で乾燥して微粒子を得た。
また、このニッケルと鉄の合金粒子は磁石に引き付けられることから、磁性を有することも分かった。さらに、振動試料型磁力計(VSM)により、このニッケルと鉄の合金粒子の飽和磁化を測定したところ104emu/gであった。
そして、透過型電子顕微鏡(TEM)により、このニッケルと鉄の合金粒子の電子顕微鏡像(図1参照)を撮影し、この電子顕微鏡像から無作為に50個の粒子を選び出し、その一次粒子径を測定し、その測定結果の平均値を計算することによって、このニッケルと鉄の合金粒子の平均一次粒子径を算出した。その結果、このニッケルと鉄の合金粒子の平均一次粒子径は180nmであった。
塩化ニッケル六水和物(NiCl2・6H2O、特級試薬、関東化学社製)21.4gを、純水165mLとメタノール100mLの混合溶液に溶解し、塩化ニッケルと塩化第一鉄の水溶液を調製した以外は、実施例1と同様にして、微粒子を生成した。
得られた微粒子をX線回折(XRD)により分析した結果、ニッケル粒子であることが分かった。この微粒子は、結晶構造が面心立方をなすことも確認された。また、(111)面のピーク角度より格子定数を算出したところ、0.352nmであった。
また、このニッケル粒子は磁石に引き付けられることから、磁性を有することも分かった。さらに、振動試料型磁力計(VSM)により、このニッケル粒子の飽和磁化を測定したところ48emu/gであり、上記の実施例1および2よりもはるかに低い値であった。
そして、透過型電子顕微鏡(TEM)により、このニッケル粒子の電子顕微鏡像を撮影し、この電子顕微鏡像から無作為に50個の粒子を選び出し、その一次粒子径を測定し、その測定結果の平均値を計算することによって、このニッケル粒子の平均一次粒子径を算出した。その結果、このニッケル粒子の平均一次粒子径は160nmであった。
気相還元法により生成した、市販の鉄粒子をX線回折(XRD)により分析した結果、この微粒子は、結晶構造が体心立方をなすことが確認された。
また、この鉄粒子は磁石に引き付けられることから、磁性を有することも分かった。さらに、振動試料型磁力計(VSM)により、この鉄粒子の飽和磁化を測定したところ70emu/gであり、上記の実施例1および2よりもはるかに低い値であった。
そして、透過型電子顕微鏡(TEM)により、この鉄粒子の電子顕微鏡像(図2参照)を撮影した結果、この鉄粒子は、粒子同士が融着して結合して繋がっており、球状の粒子形状を維持していないことが確認された。
Claims (6)
- ニッケル塩と鉄塩を含む水溶液に還元剤を添加して、前記水溶液に含まれるニッケルイオンおよび鉄イオンを同時に還元することにより、ニッケル−鉄合金ナノ粒子を生成することを特徴とするニッケル−鉄合金ナノ粒子の製造方法。
- 前記還元剤は、水酸化アルカリおよびヒドラジンを含有してなることを特徴とする請求項1に記載のニッケル−鉄合金ナノ粒子の製造方法。
- 前記水酸化アルカリの添加量は、前記水溶液中のニッケルイオンおよび鉄イオンのモル量に対して5倍量以上かつ10倍量以下、前記ヒドラジンの添加量は、前記水溶液中のニッケルイオンおよび鉄イオンのモル量に対して2倍量以上かつ50倍量以下であることを特徴とする請求項2に記載のニッケル−鉄合金ナノ粒子の製造方法。
- 前記水溶液に還元剤を添加した後、この水溶液を50℃以上かつ80℃以下に加熱することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のニッケル−鉄合金ナノ粒子の製造方法。
- 請求項1ないし4のいずれか1項記載のニッケル−鉄合金ナノ粒子の製造方法によって得られたニッケル−鉄合金ナノ粒子であって、平均一次粒子径が200nm以下であることを特徴とするニッケル−鉄合金ナノ粒子。
- 結晶構造が面心立方であり、その格子定数が0.353nm以上かつ0.363nm以下であることを特徴とする請求項5記載のニッケル−鉄合金ナノ粒子。
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