JP2020100895A - 鉄ニッケルナノワイヤーの製造方法 - Google Patents

鉄ニッケルナノワイヤーの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】液相で、鉄ニッケルナノワイヤーを得ることができ、かつ、鉄イオンおよびニッケルイオンの還元反応性、ナノワイヤーへの形状選択性、ならびに鉄ニッケルナノワイヤーの収率、組成制御特性および分散性に優れている、鉄ニッケルナノワイヤーの製造方法を提供する。【解決手段】ニッケルイオンを含有した反応溶媒に、アルカリ性化合物を添加し、その後、アンモニアを添加し、磁場を印加して還元反応をおこなうことを特徴とする鉄ニッケルナノワイヤーの製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、鉄とニッケルからなるナノワイヤーの製造方法に関する。
ナノワイヤーは、その形状から、従来の金属ナノ粒子にはない光学特性や電気特性を示し、透明導電膜等への応用が検討されている。特に、ニッケルのナノワイヤーは、銀や銅等のナノワイヤーより、安定性やコスト等に優れ、電池電極部材、透明導電膜、電気配線部材、電磁波シールド材等への応用が検討されている(特許文献1〜3)。
電磁波シールド材等の特性に影響する磁気的な性質は、ニッケル単体よりも、鉄を含有することにより優れ、さらにニッケルと鉄が特定組成のパーマロイにすることによりさらに優れることが知られている。パーマロイ等の鉄とニッケルのナノワイヤーの製造方法としては、非特許文献1に、アルミナ等のテンプレートを用いて、電析法で合金のナノワイヤーを製造する方法が開示されている。しかしながら、非特許文献1の製造方法は、生産性が低く、工業的な量産には向かない方法である。また、生産性の高い液相還元法では、非特許文献2には、鉄とニッケルの粒子や粒子が数個連鎖したものが得られることは開示されているが、アスペクト比(長さ/径)が数十を超える鉄とニッケルのナノワイヤーは、液相還元法での製造方法については知られていなかった。
国際公開2014/147885号パンフレット 国際公開2017/159537号パンフレット 特開2017−165996号公報
Journal of Physics D Applied Physics(2009),42,115008. Colloids and Surfaces A : Physicochem.Eng.Aspects(2012),407,p.23−28. Journal of The Electrochemical Society (2012),159(2),p.37−44.
本発明は、液相で、鉄とニッケルからなるナノワイヤー(以下、単に「鉄ニッケルナノワイヤー」または「ナノワイヤー」ということがある)を得ることができる方法を提供することを目的とする。
本発明はまた、鉄ニッケルナノワイヤーを得ることができ、かつ、鉄イオンおよびニッケルイオンの還元反応性、ナノワイヤーへの形状選択性、ならびに鉄ニッケルナノワイヤーの収率、組成制御特性および分散性に優れている、鉄ニッケルナノワイヤーの製造方法を提供することを目的とする。
本明細書中、鉄イオンおよびニッケルイオンの還元反応性は、還元反応により、磁場に吸着し得る生成物を生成し得る特性のことである
ナノワイヤーへの形状選択性は、鉄イオンおよびニッケルイオンの還元反応により、選択的にナノワイヤーを形成し得る特性のことである。ここで、ナノワイヤーは、例えば、後述する平均繊維径およびアスペクト比を有するナノワイヤーをいう。
鉄ニッケルナノワイヤーの収率は、原料に含まれる鉄およびニッケルの合計質量に対する生成ナノワイヤーの重量比率のことである。
鉄ニッケルナノワイヤーの組成制御特性は、原料としての鉄とニッケルの仕込質量比率が、生成したナノワイヤーの組成における鉄とニッケルの質量比率とよく一致する特性のことである。
鉄ニッケルナノワイヤーの分散性は、溶媒(例えばグリコール、水等の極性溶媒)への添加および分散により、沈殿し難い特性のことである。
本発明者らは、ニッケルイオンを含有した反応溶媒に、アルカリ性化合物を添加した後、アンモニアを添加して、鉄イオンおよびニッケルイオンの還元反応をおこなうことにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
(1) ニッケルイオンを含有した反応溶媒に、アルカリ性化合物を添加し、その後、アンモニアを添加し、磁場を印加して還元反応をおこなうことを特徴とする鉄ニッケルナノワイヤーの製造方法。
(2) 還元反応を反応溶媒への還元剤の添加により開始し、鉄イオンを還元剤の添加前に反応溶媒に添加する、(1)に記載の鉄ニッケルナノワイヤーの製造方法。
(3) 鉄イオンを、以下のタイミングからなる群から選択されるタイミングで、反応溶媒に添加する、(2)に記載の鉄ニッケルナノワイヤーの製造方法:
タイミング(A1):アルカリ性化合物の添加前;
タイミング(A2):アルカリ性化合物の添加と同時;
タイミング(B1):アルカリ性化合物の添加後であって、アンモニアの添加前;
タイミング(B2):アンモニアの添加と同時;および
タイミング(C1):アンモニアの添加後であって、還元反応の開始前。
(4) 鉄とニッケルの合計と還元剤のモル比が1:1〜1:20の範囲である、(2)または(3)に記載の鉄ニッケルナノワイヤーの製造方法。
(5) 鉄とニッケルの仕込質量比率が20/80〜65/35である、(1)〜(4)のいずれかに記載の鉄ニッケルナノワイヤーの製造方法。
(6) 鉄とニッケルの仕込質量比がパーマロイの質量比に該当する、(1)〜(5)のいずれかに記載の鉄ニッケルナノワイヤーの製造方法。
(7) アルカリ性化合物が、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムからなる群から選択される1種以上の化合物である、(1)〜(6)のいずれかに記載の鉄ニッケルナノワイヤーの製造方法。
(8) 鉄とニッケルの合計とアルカリ性化合物のモル比が1:0.2〜1:1の範囲である、(1)〜(7)のいずれかに記載の鉄ニッケルナノワイヤーの製造方法。
(9) アルカリ性化合物とアンモニアのモル比が1:3〜1:30の範囲である(1)〜(8)のいずれかに記載の鉄ニッケルナノワイヤーの製造方法。
(10) クエン酸塩の添加により、鉄イオンおよびニッケルイオンの一部とクエン酸イオンとの錯体を形成させた後、還元反応をおこなう、(1)〜(9)のいずれかに記載の鉄ニッケルナノワイヤーの製造方法。
(11) クエン酸塩の添加量が、鉄イオンおよびニッケルイオンの合計に対して、0.5〜10mol%である、(10)に記載の鉄ニッケルナノワイヤーの製造方法。
本発明によれば、液相で、パーマロイなどの鉄ニッケルナノワイヤーを得ることができる方法を提供することができる。
また、本発明によれば、用いた原料の鉄とニッケルの仕込質量比率とほぼ同一組成のナノワイヤーを得ることができる。そのため、鉄とニッケルの仕込質量比率を厳密に制御することができ、パーマロイのような鉄とニッケルが特定の質量比のナノワイヤーを容易に製造することができる。
また、予め、鉄イオンおよびニッケルイオンの一部とクエン酸イオンとの錯体を形成させた後、還元反応をおこなうことにより、分散性に優れたナノワイヤーを得ることができる。
鉄ニッケルナノワイヤーは、電磁波シールドや電磁波吸収体等の電子デバイスに好適に用いることできる。
実施例1のナノワイヤーを走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した図である。 実施例1のナノワイヤーにおける鉄元素の分布を走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分析法(SEM−EDS)でマッピングした図である。 実施例1のナノワイヤーにおけるニッケル元素の分布をSEM−EDSでマッピングした図である。
本発明において、製造できるナノワイヤーは、1本のナノワイヤーに鉄とニッケルを含むものであって、置換めっき等で製造可能なコアシェルのような構造のナノワイヤーは含まれない。詳しくは本発明の鉄ニッケルナノワイヤーにおいて、鉄およびニッケルはそれぞれ、1本のナノワイヤー中、略均一に分散されている。
本発明のナノワイヤーの製造方法は、以下の工程から構成される:
合成工程:反応溶媒中で鉄イオンとニッケルイオンを還元しナノワイヤー分散液を作製する工程;および
精製工程:得られたナノワイヤー分散液から、ナノワイヤーを回収する工程。
合成工程において、鉄イオン、ニッケルイオンは、いずれも塩を供給元として用いることが好ましく、塩化物、酢酸物を供給元として用いることがより好ましく、分散性に優れたナノワイヤーを製造するためには、塩化物を供給元として用いることがさらに好ましい。具体的には、鉄は、塩化鉄(II)、塩化鉄(II)四水和物を供給源として用いることが好ましく、ニッケルイオンは、塩化ニッケル、塩化ニッケル六水和物を供給源として用いることが好ましい。鉄イオンおよびニッケルイオンの供給元は通常、後述の反応溶媒または水に予め溶解された溶液の形態で使用される。
本発明において、鉄とニッケルの仕込質量比率は特に限定されない。例えば、磁性材料として用いるためには、鉄とニッケルの仕込質量比率を20/80〜65/35とすることが好ましく、さらに、鉄とニッケルが特定質量比であるパーマロイの質量比であることが好ましい。パーマロイの質量比とは、透磁率が必要な用途では、鉄:ニッケル=21.5:78.5(質量比率)のパーマロイA型の組成比であり、ガラス、セラミックと近い熱膨張係数が必要な用途では、鉄:ニッケル=55:45(質量比率)のパーマロイB型の組成比であり、低熱膨張率が必要な用途では、鉄:ニッケル=64:36(質量比率)のパーマロイDの組成比である。本発明の方法は、鉄ニッケルナノワイヤーの組成制御特性に優れるため、鉄とニッケルの仕込質量比率を、上記のように、所望の鉄ニッケルナノワイヤー組成と同一の比率に設定することにより、容易に、所望比率の鉄ニッケル比を有するナノワイヤーを製造することができる。
鉄イオンとニッケルイオンの濃度は特に限定されず、合計で通常は10〜1000μmol/gであり、ナノワイヤーへの形状選択性および鉄ニッケルナノワイヤーの収率のさらなる向上の観点から、10〜100μmol/gで還元することが好ましく、15〜85μmol/gで還元することがより好ましい。鉄イオンおよびニッケルイオンの上記合計濃度は、反応液中で上記範囲内であればよい。反応液とは、還元反応に供される反応液であって、全ての添加成分および反応溶媒を含む混合液のことである。
本発明の製造方法においては、分散性に優れたナノワイヤーを得ることができることから、還元反応前に、鉄およびニッケルイオンの一部とクエン酸イオンとの錯体を予め形成させておくことが好ましい。クエン酸塩の添加量は、分散性の観点から、鉄イオンとニッケルイオンの合計に対して0.5〜10mol%であることが好ましい。ナノワイヤーの分散性および収率のさらなる向上の観点から、クエン酸塩の添加量は、鉄イオンとニッケルイオンの合計に対して、0.5〜5mol%であることがより好ましく、0.5〜3mol%であることがさらに好ましい。クエン酸イオンの供給元としてのクエン酸塩は、そのままの形態で使用されてもよいし、または後述の反応溶媒または水に予め溶解された溶液の形態で使用されてもよい。鉄イオンおよびニッケルイオンの一部とクエン酸イオンとの錯体は、鉄イオンおよび/またはニッケルイオンを含む水溶液とクエン酸イオンを含む水溶液を混合することで形成することが好ましい。クエン酸塩としては、クエン酸三ナトリウム二水和物等が挙げられる。
反応溶媒は、鉄イオンおよびニッケルイオンの供給源が溶解可能である限り特に限定されず、例えばグリコール類や水が挙げられる。グリコール類は、飽和脂肪族鎖式炭化水素または脂環式炭化水素の2つの炭素原子に1つずつヒドロキシル基が置換している構造を有する有機化合物のことである。グリコール類は、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等の飽和脂肪族鎖式炭化水素系グリコールが挙げられる。反応溶媒は、鉄イオンおよびニッケルイオンの供給源の溶解性ならびに反応溶媒の沸点および粘度の観点から、極性の高い反応溶媒が好ましく、エチレングリコールが好ましい。
還元反応の溶液の液性は重要であり、酸性から中性の領域では還元反応が進行せず、アルカリ性でないとナノワイヤーが生成しない。溶液の液性は、アルカリ性の化合物の添加により調整すればよく、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ性化合物を添加することにより、ナノワイヤーの生成をおこなうことができる。ただし、アルカリ性の化合物として、アンモニア、アミン類を用いた場合、反応中に気化する場合があり、ナノワイヤーが得られなかったり、ナノワイヤーの形状が不均一になったりする場合がある。アルカリ性化合物の添加量は特に限定されず、鉄イオンとニッケルイオンの合計1molに対して、通常は0.1〜2molであり、鉄イオンおよびニッケルイオンの還元反応性、ナノワイヤーへの形状選択性および鉄ニッケルナノワイヤーの収率のさらなる向上の観点から、0.2〜1molの範囲が好ましく、さらに0.5〜0.8molの範囲が好ましい。アルカリ性化合物の、鉄イオンとニッケルイオンの合計1molに対する上記添加量は、反応液中で上記範囲内であればよい。アルカリ性化合物は、そのままの形態で使用されてもよいし、または反応溶媒または水に予め溶解された溶液の形態で使用されてもよい。
水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ性化合物を添加すると、鉄イオンやニッケルイオンと反応し、水酸化物ニッケルや水酸化鉄の沈殿が発生する。沈殿した水酸化物自体は還元しにくい状態になっており、還元反応が著しく遅延したり、かつ/または、鱗片状や不定形の粒子が生成したりするなどの問題が生じる。そのため、沈殿した水酸化物を再溶解するためアンモニアを添加しアンミン錯体化する。アンモニアの添加量は特に限定されず、アルカリ性化合物1molに対して通常は3〜30molの範囲であり、鉄イオンおよびニッケルイオンの還元反応性およびナノワイヤーへの形状選択性、ならびに鉄ニッケルナノワイヤーの収率、組成制御特性および分散性のさらなる向上の観点から、10〜30molの範囲が好ましく、15〜30molの範囲がより好ましく、20〜30molの範囲がより好ましい。アンモニアは入手管理等の観点からアンモニア水での添加が好ましい。アンモニアのアルカリ性化合物1molに対する上記添加量は、反応液中で上記範囲内であればよい。
本発明の製造方法(特に合成工程)において、鉄ニッケルナノワイヤーを得るには、ニッケルイオンを含有した反応溶媒中に、アルカリ性化合物を添加した後、アンモニアを添加し、次いで磁場を印加して、鉄イオンおよびニッケルイオンの還元反応をおこなう必要がある。還元反応は通常、還元剤の添加により開始され、還元剤は通常、アンモニアの添加後において、反応溶媒中に添加される。本発明においては、水酸化物をアンモニアでアンミン錯体に変換することが重要であるので、アルカリ性化合物またはアンモニアの一方のみしか添加しない場合、これらの両方を添加しない場合、およびアンモニアを添加した後、アルカリ性化合物を添加する場合、ナノワイヤーは生成しない。
鉄イオンの添加のタイミングは、還元反応開始時において、反応溶媒(特に反応液)中に鉄イオンが存在していれば、特に限定されない。詳しくは、鉄イオンは反応溶媒への還元剤の添加前に添加され、例えば、以下のタイミングからなる群から選択される1つ以上(特に1つ)のタイミングで、反応溶媒に対して添加される:
タイミング(A1):アルカリ性化合物の添加前;
タイミング(A2):アルカリ性化合物の添加と同時;
タイミング(B1):アルカリ性化合物の添加後であって、アンモニアの添加前;
タイミング(B2):アンモニアの添加と同時;および
タイミング(C1):アンモニアの添加後であって、還元反応の開始前。
タイミング(A1)において、鉄イオンは、反応溶媒に対して、ニッケルイオンの添加前に添加されてもよいし、ニッケルイオンの添加と同時に添加されてもよいし、またはニッケルイオンの添加後に添加されてもよい。
本発明においては、鉄イオンは、鉄イオンおよびニッケルイオンの還元反応性およびナノワイヤーへの形状選択性、ならびに鉄ニッケルナノワイヤーの収率、組成制御特性および分散性のさらなる向上の観点から、上記タイミング(A1)、(B1)または(C1)で添加されることが好ましく、上記タイミング(C1)で添加されることがより好ましい。
還元反応時に印加する磁場は、ネオジム磁石で作る磁気回路程度で印加すればよく、その強度は100mT程度が好ましい。通常、パーマロイは、鉄とニッケルを含む合金を還元雰囲気下1000℃以上の温度で焼成する焼鈍処理をして、高い磁気特性(磁束密度、透磁率等)を有するものとするが、本発明の製造方法を用いれば、磁場中でナノワイヤーを作製することにより結晶および形状磁気異方性が一致したナノワイヤーが得られるため、焼鈍処理等をおこなうことなく、高い磁気特性を有するパーマロイのナノワイヤーを得ることができる。
還元反応は、還元剤を用いることが好ましい。還元剤としては、ヒドラジンを用いることが好ましい。ヒドラジン以外の還元剤を用いた場合、例えば、次亜リン酸のようなリン系やジメチルアミノボランのようなホウ素系の還元剤を用いた場合、ナノワイヤーが得られない場合がある。ヒドラジンとしては、入手の観点からヒドラジン一水和物が好ましい。還元剤は、そのままの形態で使用されてもよいし、または反応溶媒または水に予め溶解された溶液の形態で使用されてもよい。
還元剤(特にヒドラジン一水和物))の濃度は特に限定されず、鉄イオンおよびニッケルイオンの還元反応性およびナノワイヤーへの形状選択性、ならびに鉄ニッケルナノワイヤーの収率、組成制御特性および分散性のさらなる向上の観点から、0.1〜10質量%とすることが好ましく、0.2〜7.5質量%とすることがより好ましく、0.8〜3.0質量%とすることがさらに好ましく、0.8〜2.0質量%とすることが特に好ましい。また、鉄イオンとニッケルイオンの合計1molに対して、還元剤(特にヒドラジン一水和物)の添加量は、鉄イオンおよびニッケルイオンの還元反応性およびナノワイヤーへの形状選択性、ならびに鉄ニッケルナノワイヤーの収率、組成制御特性および分散性のさらなる向上の観点から、1〜20molとすることが好ましく、2〜10molとすることが好ましく、2〜4molとすることが好ましく、2.5〜3.5molとすることが特に好ましい。還元剤の上記濃度および上記添加量は、反応液中で上記範囲内であればよい。
還元反応の温度および反応時間は、鉄イオンおよびニッケルイオンの還元反応が進行する限り特に限定されない。例えば、ヒドラジン類を還元剤として用いる場合、還元反応の反応温度は、鉄イオンおよびニッケルイオンの還元反応性およびナノワイヤーへの形状選択性のさらなる向上の観点から、70〜100℃とすることが好ましく、80〜100℃とすることがより好ましく、80〜95℃とすることがさらに好ましい。また、還元反応の反応時間は、鉄イオンおよびニッケルイオンの還元反応性およびナノワイヤーへの形状選択性、ならびに鉄ニッケルナノワイヤーの収率、組成制御特性および分散性のさらなる向上の観点から、30分以上とすることが好ましく、60分以上とすることがより好ましい。
本発明において各成分の添加は通常、反応容器を上記の反応温度に維持しつつ、撹拌下にて順番に行われる。「撹拌下」とは、反応容器内の内容物(例えば反応溶媒を含む)が撹拌されている状態にあることをいう。各成分の添加の「順番」は、ニッケルイオンの添加のタイミングがアルカリ性化合物の添加のタイミングよりも早く、かつ当該アルカリ性化合物の添加のタイミングがアンモニアの添加のタイミングよりも早く、かつ当該アンモニアの添加のタイミングが還元剤の添加のタイミングよりも早い限り、特に限定されず、他の成分(例えば鉄イオンは、クエン酸イオン)の各々は、それぞれ独立して、あらゆるタイミングで添加されてもよい。各成分が順番に添加されるに際し、各成分の添加の間隔は、先に添加された成分が均一に混合された反応溶媒に対して、後に添加される成分が添加される限り特に限定されず、例えば1秒以上、特に2〜600秒であってもよく、製造コストの観点から好ましくは5〜60秒、より好ましくは5〜30秒である。各成分が順番に添加される場合、全成分の添加が完了してからの経過時間が前記した「反応時間」に対応する。
このような合成工程により、量産性が高い液相で、鉄ニッケルナノワイヤーを製造することができる。また、得られるナノワイヤーの鉄とニッケルの質量比率が、用いた原料の鉄とニッケルの質量比率とほぼ同組成のナノワイヤーを得ることができ、用途に応じて鉄とニッケルの質量比率を制御することができ、パーマロイのような特定組成のナノワイヤーを得ることができる。
精製工程において、ナノワイヤーは、濾過やデカンテーション等により回収することができ、好ましくは濾過により回収することができる。濾過の方法としては、吸引濾過、加圧濾過等が挙げられる。
濾過に用いるフィルターは、アルカリ性溶媒や極性溶媒が用いることができるフィルターであれば特に限定されない。フィルターは、PVDF等の疎水性フィルターであっても、アルコール等で濾過面を湿潤させておけば用いることができる。フィルターの孔径は、ナノワイヤー長より小さいものであれば特に限定されず、具体的には10μm以下であることが好ましい。
本発明で得られたナノワイヤーは、再度溶媒に展開して分散液とすることができる。展開方法としては特に限定されないが、例えば混合して攪拌すればよい。展開溶媒としては、ナノワイヤーを分散させやすいことから、グリコール類、水等の高極性溶媒が挙げられる。
本発明の製造方法によれば、平均繊維径が1μm未満であって、アスペクト比が50以上(特に50超)のナノワイヤーを得ることができる。例えば、平均繊維径が50nm〜1μmであって、アスペクト比が50〜500のナノワイヤーを得ることができる。ナノワイヤーの平均繊維径は50〜500nmであることがより好ましく、アスペクト比は100以上(特に100超)であることがより好ましく、150以上(特に150超)であることがさらに好ましい。アスペクト比の上限値は特に限定されず、アスペクト比は通常、500以下である。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、評価は、以下の方法によりおこなった。
(1)反応性
合成工程で得られた生成物が、磁場に吸着するか否かで、以下のように評価した。
◎:還元反応の進行を確認した。実用上問題なし。
×:還元反応が起こらなかった。実用上問題あり。
(2)収率
得られたナノワイヤーを真空乾燥し、収率を算出し、以下の基準で評価した。ナノワイヤーの収率は、上記したように、原料に含まれる鉄およびニッケルの合計質量に対する生成ナノワイヤーの重量比率として算出される値である。
◎:90%以上(最良)。
○:50%以上90%未満(優良)。
△:20%以上50%未満(実用上問題なし)。
×:20%未満(実用上問題あり)。
(3)ナノワイヤー化(形状選択性)
得られた生成物を真空乾燥し得られたものを、SEMを用いて、形状を観察し、ナノワイヤーが得られているか判断した。
◎:粒子(球状、鱗片状、不定形)は認められず、ナノワイヤーのみが生成していた(最良)。
△:粒子(球状、鱗片状、不定形)とナノワイヤーが混ざって生成していた(実用上問題なし)。
×:粒子(球状、鱗片状、不定形)のみが生成していた(実用上問題あり)。
(4)ナノワイヤーの鉄とニッケルの質量比率(ナノワイヤーの組成制御特性)
得られたナノワイヤーを真空乾燥し得られたものを、ICP−AES法により、鉄とニッケルの質量比率を求め、原料に含まれるニッケルと鉄の質量比と対比し、以下の基準で評価した。
◎:差が0.1質量%未満である(実用上問題なし)。
×:差が0.1質量%以上である(実用上問題あり)。
(5)ナノワイヤーの分散性
得られたナノワイヤーを真空乾燥し得られたものを、0.1質量%濃度になるようにエチレングリコールに展開し、シェーカーで10分間振とうした後、静置し、以下の基準で評価した。
◎:振とう終了後、5分間、沈殿することなく、分散状態を維持できた。
△:振とう終了後、1分間、沈殿することなく、分散状態を維持できたが、その後、すぐに沈殿が起こった(実用上問題なし)。
×:振とう終了後、1分間以内に、沈殿が起こった(実用上問題あり)。
(6)総合評価
反応性、収率、形状選択性、組成制御特性および分散性の評価結果に基づいて、総合的に評価した。
◎:全ての評価結果が◎であった。
○:全ての評価結果うち、最も低い評価結果が○であった。
△:全ての評価結果うち、最も低い評価結果が△であった。
×:全ての評価結果うち、最も低い評価結果が×であった。
(7)ナノワイヤーの平均繊維径およびアスペクト比
得られた生成物を真空乾燥し得られたものを、SEMを用いて、観察した。任意の10本のナノワイヤーを選択し、その繊維径を測定し、平均繊維径を求めた。ナノワイヤーの選択に際しては、アスペクト比50以上のナノワイヤーの中から上記選択を行った。
全ての実施例の各々の生成物において、選択された10本のナノワイヤーの各々は、アスペクト比が100超であることを確認した。なお、アスペクト比は「平均繊維長/平均繊維径」に基づく値である。
実施例1
(1)ニッケル溶液の作製
塩化ニッケル六水和物3.11g(13.08mmol)をエチレングリコールに添加し、全量で400.0gとした。この溶液を90℃に加熱し、塩化ニッケルを溶解させた。
(2)水酸化ナトリウム溶液の作製
水酸化ナトリウム1.00g(25.01mmol)をエチレングリコールに添加し、全量で472.5gにした。この溶液を90℃に加熱し、水酸化ナトリウムを溶解させた。
(3)鉄溶液の作製
塩化鉄(II)四水和物0.75g(3.77mmol)をエチレングリコールに添加し、全量で100.0gとした。室温で撹拌することで、塩化鉄(II)四水和物を溶解させた。
(4)合成工程
中心に磁場を印加できる磁気回路の中にある反応容器を90〜95℃に加熱し、ニッケル溶液、水酸化ナトリウム溶液、28%アンモニア水25.00g(アンモニア量7.00g)、鉄溶液、ヒドラジン一水和物2.50g(49.94mmol)をこの順で添加した。各成分の添加は、反応容器中の撹拌を行いながら、記載の順序にて10秒間隔で行った。すべて添加後、150mTの磁場を印加し、90〜95℃で、90分間還元反応をおこなった。
(5)精製工程
反応終了後、T100A090CのPTFE製フィルターを用いて生成物(ナノワイヤー)を回収した。
得られたナノワイヤーを、走査型電子顕微鏡(SEM)による撮影および走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分析法(SEM−EDS)による分析に供し、それらの結果を図1〜図3に示した。図1は、実施例1のナノワイヤーをSEMで撮影した図である。図2は、実施例1のナノワイヤーにおける鉄元素の分布をSEM−EDSでマッピングした図である。図3は、実施例1のナノワイヤーにおけるニッケル元素の分布をSEM−EDSでマッピングした図である。
実施例2
(1)ニッケル−クエン酸類溶液の作製
塩化ニッケル六水和物3.11g(13.08mmol)とクエン酸三ナトリウム二水和物0.20g(0.68mmol)をエチレングリコールに添加し、全量で400.0gとした。この溶液を90℃に加熱し、塩化ニッケルを溶解させた。
(2)水酸化ナトリウム溶液の作製
水酸化ナトリウム1.00g(25.01mmol)をエチレングリコールに添加し、全量で470.0gにした。この溶液を90℃に加熱し、水酸化ナトリウムを溶解させた。
(3)鉄溶液の作製
塩化鉄(II)四水和物0.75g(3.77mmol)をエチレングリコールに添加し、全量で100.0gとした。室温で撹拌することで、塩化鉄(II)四水和物を溶解させた。
(4)合成工程
中心に磁場を印加できる磁気回路の中にある反応容器を90〜95℃に加熱し、ニッケル−クエン酸類溶液、水酸化ナトリウム溶液、28%アンモニア水25.00g(アンモニア量7.000g)、鉄溶液100.0g、ヒドラジン一水和物5.00g(99.88mmol)をこの順で添加した。各成分の添加は、反応容器中の撹拌を行いながら、記載の順序にて10秒間隔で行った。すべて添加後、150mTの磁場を印加し、90〜95℃で、90分間還元反応をおこなった。
(5)精製工程
反応終了後、T100A090CのPTFE製フィルターを用いて生成物(ナノワイヤー)を回収した。
実施例3
(1)ニッケル−クエン酸類溶液の作製
塩化ニッケル六水和物3.11g(13.08mmol)とクエン酸三ナトリウム二水和物0.29g(0.98mmol)をエチレングリコールに添加し、全量で400.0gとした。この溶液を90℃に加熱し、塩化ニッケルを溶解させた。
(2)水酸化ナトリウム溶液の作製
水酸化ナトリウム1.00g(25.01mmol)をエチレングリコールに添加し、全量で470.0gにした。この溶液を90℃に加熱し、水酸化ナトリウムを溶解させた。
(3)鉄溶液の作製
塩化鉄(II)四水和物0.75g(3.77mmol)をエチレングリコールに添加し、全量で100.0gとした。室温で撹拌することで、塩化鉄(II)四水和物を溶解させた。
(4)合成工程
中心に磁場を印加できる磁気回路の中にある反応容器を90〜95℃に加熱し、ニッケル−クエン酸類溶液、水酸化ナトリウム溶液、28%アンモニア水25.00g(アンモニア量7.00g)、鉄溶液、ヒドラジン一水和物5.00g(99.88mmol)をこの順で添加した。各成分の添加は、反応容器中の撹拌を行いながら、記載の順序にて10秒間隔で行った。すべて添加後、150mTの磁場を印加し、90〜95℃で、90分間還元反応をおこなった。
(5)精製工程
反応終了後、T100A090CのPTFE製フィルターを用いて生成物(ナノワイヤー)を回収した。
実施例4
(1)ニッケル−クエン酸類溶液の作製
塩化ニッケル六水和物15.35g(64.58mmol)とクエン酸三ナトリウム二水和物0.30g(1.02mmol)をエチレングリコールに添加し、全量で350.0gとした。この溶液を90℃に加熱し、塩化ニッケルを溶解させた。
(2)水酸化ナトリウム溶液の作製
水酸化ナトリウム2.50g(62.52mmol)をエチレングリコールに添加し、全量で388.5gにした。この溶液を90℃に加熱し、水酸化ナトリウムを溶解させた。
(3)鉄溶液の作製
塩化鉄(II)四水和物3.70g(18.61mmol)をエチレングリコールに添加し、全量で150.0gとした。室温で撹拌することで、塩化鉄(II)四水和物を溶解させた。
(4)合成工程
中心に磁場を印加できる磁気回路の中にある反応容器を90〜95℃に加熱し、ニッケル−クエン酸類溶液、水酸化ナトリウム溶液、28%アンモニア水100.00g(アンモニア量28.00g)、鉄溶液、ヒドラジン一水和物11.50g(229.72mmol)をこの順で添加した。各成分の添加は、反応容器中の撹拌を行いながら、記載の順序にて10秒間隔で行った。すべて添加後、150mTの磁場を印加し、90〜95℃で、90分間還元反応をおこなった。
(5)精製工程
反応終了後、T100A090CのPTFE製フィルターを用いて生成物(ナノワイヤー)を回収した。
実施例5,6
表1記載のように塩化ニッケル六水和物と塩化鉄(II)四水和物の添加量を変更した以外は実施例4と同様の操作を行った。
実施例7
(1)ニッケル−クエン酸類溶液の作製
塩化ニッケル六水和物149.67g(629.69mmol)とクエン酸三ナトリウム二水和物2.94g(10.00mmol)を水に添加し、全量で349.0gとした。この溶液を80℃に加熱し、塩化ニッケルを溶解させた。
(2)水酸化ナトリウム溶液の作製
水酸化ナトリウム24.39g(609.90mmol)を水に添加し、全量で300.0gにした。この溶液を80℃に加熱し、水酸化ナトリウムを溶解させた。
(3)鉄溶液の作製
塩化鉄(II)四水和物36.09g(181.53mmol)を水に添加し、全量で150.0gとした。室温で撹拌することで、塩化鉄(II)四水和物を溶解させた。
(4)合成工程
中心に磁場を印加できる磁気回路の中にある反応容器を85〜90℃に加熱し、ニッケル−クエン酸類溶液、水酸化ナトリウム溶液、28%アンモニア水150.00g(アンモニア量42.00g)、鉄溶液、ヒドラジン一水和物51.0g(1018.78mmol)をこの順で添加した。各成分の添加は、反応容器中の撹拌を行いながら、記載の順序にて10秒間隔で行った。すべて添加後、150mTの磁場を印加し、85〜90℃で、90分間還元反応をおこなった。
(5)精製工程
反応終了後、T100A090CのPTFE製フィルターを用いて生成物(ナノワイヤー)を回収した。
比較例1
(1)ニッケル溶液の作製
塩化ニッケル六水和物3.11g(13.08mmol)をエチレングリコールに添加し、全量で400.0gとした。この溶液を90℃に加熱し、塩化ニッケルを溶解させた。
(2)水酸化ナトリウム溶液の作製
水酸化ナトリウム1.00g(25.00mmol)をエチレングリコールに添加し、全量で495.0gにした。この溶液を90℃に加熱し、水酸化ナトリウムを溶解させた。
(3)鉄溶液の作製
塩化鉄(II)四水和物0.75g(3.77mmol)をエチレングリコールに添加し、全量で100.0gとした。室温で撹拌することで、塩化鉄(II)四水和物を溶解させた。
(4)合成工程
中心に磁場を印加できる磁気回路の中にある反応容器を90〜95℃に加熱し、ニッケル溶液、水酸化ナトリウム溶液、鉄溶液、ヒドラジン一水和物5.00g(99.88mmol)をこの順で添加した。各成分の添加は、反応容器中の撹拌を行いながら、記載の順序にて10秒間隔で行った。すべて添加後、150mTの磁場を印加し、90〜95℃で、90分間還元反応をおこなったが、溶液は黒色にはなったものの、磁石に吸着する生成物は得られなかった。
比較例2
(1)ニッケル−クエン酸類溶液の作製
塩化ニッケル六水和物3.11g(13.08mmol)とクエン酸三ナトリウム二水和物0.20g(0.68mmol)をエチレングリコールに添加し、全量で400.0gとした。この溶液を90℃に加熱し、塩化ニッケルを溶解させた。
(2)水酸化ナトリウム溶液の作製
水酸化ナトリウム1.00g(25.00mmol)をエチレングリコールに添加し、全量で495.0gにした。この溶液を90℃に加熱し、水酸化ナトリウムを溶解させた。
(3)鉄溶液の作製
塩化鉄(II)四水和物0.75g(3.77mmol)をエチレングリコールに添加し、全量で100.0gとした。室温で撹拌することで、塩化鉄(II)四水和物を溶解させた。
(4)合成工程
中心に磁場を印加できる磁気回路の中にある反応容器を90〜95℃に加熱し、ニッケル−クエン酸類溶液、水酸化ナトリウム溶液、鉄溶液、ヒドラジン一水和物5.00g(99.88mmol)をこの順で添加した。各成分の添加は、反応容器中の撹拌を行いながら、記載の順序にて10秒間隔で行った。すべて添加後、150mTの磁場を印加し、90〜95℃で、90分間還元反応をおこなったが、黒色変化が見られず、磁石に吸着する生成物も得られなかった。
比較例3
(1)ニッケル−クエン酸類溶液の作製
塩化ニッケル六水和物3.11g(13.08mmol)とクエン酸三ナトリウム二水和物0.38g(1.28mmol)をエチレングリコールに添加し、全量で400.0gとした。この溶液を90℃に加熱し、塩化ニッケルを溶解させた。
(2)水酸化ナトリウム溶液の作製
水酸化ナトリウム1.00g(25.01mmol)をエチレングリコールに添加し、全量で495.0gにした。この溶液を90℃に加熱し、水酸化ナトリウムを溶解させた。
(3)鉄溶液の作製
塩化鉄(II)四水和物0.75g(3.77mmol)をエチレングリコールに添加し、全量で100.0gとした。室温で撹拌することで、塩化鉄(II)四水和物を溶解させた。
(4)合成工程
中心に磁場を印加できる磁気回路の中にある反応容器を90〜95℃に加熱し、ニッケル−クエン酸類溶液、水酸化ナトリウム溶液、鉄溶液、ヒドラジン一水和物5.00g(99.88mmol)をこの順で添加した。各成分の添加は、反応容器中の撹拌を行いながら、記載の順序にて10秒間隔で行った。すべて添加後、150mTの磁場を印加し、90〜95℃で、90分間還元反応をおこなったが、黒色変化が見られず、磁石に吸着する生成物も得られなかった。
比較例4
(1)ニッケル−クエン酸類溶液の作製
塩化ニッケル六水和物3.11g(13.08mmol)とクエン酸三ナトリウム二水和物0.20g(0.68mmol)をエチレングリコールに添加し、全量で895.0gとした。この溶液を90℃に加熱し、塩化ニッケルを溶解させた。
(2)鉄溶液の作製
塩化鉄(II)四水和物0.75g(3.77mmol)をエチレングリコールに添加し、全量で100.0gとした。室温で撹拌することで、塩化鉄(II)四水和物を溶解させた。
(3)合成工程
中心に磁場を印加できる磁気回路の中にある反応容器を90〜95℃に加熱し、ニッケル−クエン酸類溶液、鉄溶液100.0g、ヒドラジン一水和物5.00g(99.88mmol)をこの順で添加した。各成分の添加は、反応容器中の撹拌を行いながら、記載の順序にて10秒間隔で行った。すべて添加後、150mTの磁場を印加し、90〜95℃で、90分間還元反応をおこなったが、黒色変化が見られず、磁石に吸着する生成物も得られなかった。
比較例5
(1)ニッケル−クエン酸類溶液の作製
塩化ニッケル六水和物3.11g(13.08mmol)とクエン酸三ナトリウム二水和物0.20g(0.68mmol)をエチレングリコールに添加し、全量で870.0gとした。この溶液を90℃に加熱し、塩化ニッケルを溶解させた。
(2)鉄溶液の作製
塩化鉄(II)四水和物0.75g(3.77mmol)をエチレングリコールに添加し、全量で100.0gとした。室温で撹拌することで、塩化鉄(II)四水和物を溶解させた。
(3)合成工程
中心に磁場を印加できる磁気回路の中にある反応容器を90〜95℃に加熱し、ニッケル−クエン酸類溶液、28%アンモニア水25.00g(アンモニア量7.000g)、鉄溶液100.0g、ヒドラジン一水和物5.00g(99.88mmol)をこの順で添加した。各成分の添加は、反応容器中の撹拌を行いながら、記載の順序にて10秒間隔で行った。すべて添加後、150mTの磁場を印加し、90〜95℃で、90分間還元反応をおこなったが、磁石に吸着する生成物は得られなかった。
比較例6
アルカリ性化合物の代わりにアンモニアを表1記載の量で添加した以外は実施例2と同様の操作を行ったところ、合成工程において、磁石に吸着する生成物は得られなかった。
実施例および比較例で得られた生成物(特にナノワイヤー)の評価結果を表1に示す。
実施例1〜7では、液相で、鉄ニッケルナノワイヤーを製造することができた。また、得られたナノワイヤーの質量比率は、用いた原料のニッケルと鉄の質量比率とほぼ同一組成であった。
実施例2〜7は、クエン酸類を所定量以上添加し、ニッケルイオンとの錯体を形成した後、還元反応をおこなったため、ナノワイヤーの分散性が優れていた。
実施例4〜6はクエン酸類、アルカリ性化合物、アンモニアおよび還元剤をそれぞれ所定の添加量で用いたため、高収率かつ高分散性でナノワイヤーを作製することができた。
比較例1〜3では、アルカリ性化合物の添加は行ったが、アンモニアを添加しなかったため、磁石に吸着する生成物は得られなかった。
比較例4では、アルカリ性化合物の添加も、アンモニアの添加も行わなかったため、磁石に吸着する生成物は得られなかった。
比較例5では、アンモニアの添加は行ったが、アルカリ性化合物を添加しなかったため、磁石に吸着する生成物は得られなかった。
比較例6では、所定のアルカリ性化合物の添加を行う代わりに、アンモニアを添加したため、磁石に吸着する生成物は得られなかった。
本発明で得られた鉄ニッケルナノワイヤーは、電磁波シールド材、電磁波吸収材等の電子デバイスに好適に用いることができる。

Claims (11)

  1. ニッケルイオンを含有した反応溶媒に、アルカリ性化合物を添加し、その後、アンモニアを添加し、磁場を印加して還元反応をおこなうことを特徴とする鉄ニッケルナノワイヤーの製造方法。
  2. 還元反応を反応溶媒への還元剤の添加により開始し、
    鉄イオンを還元剤の添加前に反応溶媒に添加する、請求項1に記載の鉄ニッケルナノワイヤーの製造方法。
  3. 鉄イオンを、以下のタイミングからなる群から選択されるタイミングで、反応溶媒に添加する、請求項2に記載の鉄ニッケルナノワイヤーの製造方法:
    タイミング(A1):アルカリ性化合物の添加前;
    タイミング(A2):アルカリ性化合物の添加と同時;
    タイミング(B1):アルカリ性化合物の添加後であって、アンモニアの添加前;
    タイミング(B2):アンモニアの添加と同時;および
    タイミング(C1):アンモニアの添加後であって、還元反応の開始前。
  4. 鉄とニッケルの合計と還元剤のモル比が1:1〜1:20の範囲である、請求項2または3に記載の鉄ニッケルナノワイヤーの製造方法。
  5. 鉄とニッケルの仕込質量比率が20/80〜65/35である、請求項1〜4のいずれかに記載の鉄ニッケルナノワイヤーの製造方法。
  6. 鉄とニッケルの仕込質量比がパーマロイに該当する、請求項1〜5のいずれかに記載の鉄ニッケルナノワイヤーの製造方法。
  7. アルカリ性化合物が、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムからなる群から選択される1種以上の化合物である、請求項1〜6のいずれかに記載の鉄ニッケルナノワイヤーの製造方法。
  8. 鉄とニッケルの合計とアルカリ性化合物のモル比が1:0.2〜1:1の範囲である、請求項1〜7のいずれかに記載の鉄ニッケルナノワイヤーの製造方法。
  9. アルカリ性化合物とアンモニアのモル比が1:3〜1:30の範囲である請求項1〜8のいずれかに記載の鉄ニッケルナノワイヤーの製造方法。
  10. クエン酸塩の添加により、鉄イオンおよびニッケルイオンの一部とクエン酸イオンとの錯体を形成させた後、還元反応をおこなう、請求項1〜9のいずれかに記載の鉄ニッケルナノワイヤーの製造方法。
  11. クエン酸塩の添加量が、鉄イオンおよびニッケルイオンの合計に対して、0.5〜10mol%である、請求項10に記載の鉄ニッケルナノワイヤーの製造方法。
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