JP2018078161A - 複合磁性粉末材料の製造方法、複合磁性粉末材料及び永久磁石 - Google Patents
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Abstract
【課題】高い飽和磁化と高い保磁力を有する複合磁性粉末材料及びその製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】この複合磁性粉末材料の製造方法は、Co又はFeの少なくとも一方を含む水酸化物と、スピネル構造を有する酸化鉄と、融剤と、が混合した混合液を作製する混合工程と、前記混合液から水分を除去して得られた混合物を加熱し、溶融した融剤中で前記酸化鉄を結晶成長させると共に、母材に前記酸化鉄が分散した前駆体を得る前駆体作製工程と、 前記前駆体に付着した融剤を除去し、還元雰囲気で加熱し、前記前駆体の母材を合金化する合金化工程と、を有する。【選択図】図1
Description
本発明は、複合磁性粉末材料の製造方法、複合磁性粉末材料及び永久磁石に関する。
永久磁石用の高性能磁性粉末材料として、Nd−Fe−B系やSm−Co系の磁性粉末材料が知られている。しかしながら、これらの磁性粉末材料は希少な希土類元素を大量に使用する。そこで、希土類元素を使用しないでも高性能な特性を示す永久磁石を得ることができる磁性粉末材料が求められている。
希土類元素を利用しない磁性粉末材料として酸化鉄系の磁性粉末材料が知られている。この磁性粉末材料は、製造原価が安く、一般に広く用いられている。酸化鉄系の磁性粉末材料としては、六方晶系フェライト、スピネル系の酸化鉄、新規な酸化鉄であるε―Fe2O3系の酸化鉄が知られている。酸化鉄系の磁性粉末材料では、保磁力の向上が進められている。一方で、酸化鉄系の磁性粉末材料は、本質的に飽和磁化を大幅に向上させることが難しく、飽和磁化を向上させる検討は十分に行われていない(例えば、特許文献1及び特許文献2等)。
飽和磁化の高い磁性材料としては、単体の磁性金属又はそれらの合金が知られている。特に、Co−Fe合金は、スレータポーリング曲線でも示されるように高い飽和磁化を示すことが知られている。Co−Fe合金からなる磁性粉末は、針状の形状を有し、形状異方性に起因した高い保磁力も有する。そのため、塗布型の磁気記録媒体用の磁性粉末として利用されている(例えば、特許文献3等)。
しかしながら、塗布型の磁気記録媒体に用いられる磁性粉末をそのまま永久磁石に用いることはできない。永久磁石は、高い磁束密度が求められる。そのため、磁性粉末を所定の空間内に高充填する必要がある。所定の空間内への高い充填性を実現する為には、粒子形状が概球状であり、粒子サイズが揃っていることが求められる。
Co−Fe合金からなる磁性粉末は針状であり、そのまま所定の空間内に高充填することは難しい。一方で、Co−Fe合金からなる磁性粉末を概球状にすると、形状異方性に起因した大きな飽和磁化が発現されない。
そのため、永久磁石に用いることができ、高い保磁力及び高い飽和磁化を示すことができる磁性材料が求められている。
特許文献4には、保磁力の大きい硬磁性粒子と、飽和磁化の大きい軟磁性粒子とを混合したナノコンポジット磁石が記載されている。
上述のように、酸化鉄系の磁性粉末材料は、保磁力は大きいが飽和磁化が小さい。単体の磁性金属又はそれらの合金は、飽和磁化は大きいが永久磁石として用いるためには保磁力が小さくなる。
また特許文献4に記載のナノコンポジット磁石は、保磁力の大きい硬磁性粒子と、飽和磁化の大きい軟磁性粒子とを混合しただけであり、二つの磁性粒子の平均的特性しか実現できない。特許文献4の図5にはナノコンポジット磁石が、コバルトとフェライトの平均的な特性を示すことが記載されている。また特許文献4に記載のナノコンポジット磁石は、本質的に異なる物質を混合しているため、安定的に均質な特性を得ることは難しい。
また特許文献4のナノコンポジット磁石は、高磁性粒子及び軟磁性粒子のサイズに制限があり、交換相互作用が充分に発揮できるようにそれぞれの粒子径を微細化する必要がある。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、高い飽和磁化と高い保磁力を有する複合磁性粉末材料及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、高い飽和磁化と高い保磁力を有する複合磁性粉末材料及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、金属又は合金からなる母材中にスピネル構造を有する酸化鉄を分散させることで、磁性粉末材料の飽和磁化及び保磁力を共に高めることができることを見出した。またその磁性粉末材料の好適な製造方法を見出した。
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
(1)一態様にかかる複合磁性粉末材料の製造方法は、Co又はFeの少なくとも一方を含む水酸化物と、スピネル構造を有する酸化鉄と、融剤と、が混合した混合液を作製する混合工程と、前記混合液から水分を除去して得られた混合物を加熱し、溶融した融剤中で前記酸化鉄を結晶成長させると共に、母材中に前記酸化鉄が分散した前駆体を得る前駆体作製工程と、前記前駆体に付着した融剤を除去した後に還元雰囲気で加熱し、前記前駆体の母材を合金化する合金化工程と、を有する。
(2)上記態様にかかる複合磁性粉末材料の製造方法において、前記混合工程は、Co又はFeの少なくとも一方を含む水酸化物を有する第1懸濁液を作製する工程と、スピネル構造を有する酸化鉄を有する第2懸濁液を作製する工程と、前記第1懸濁液と前記第2懸濁液を混合し、融剤を添加する工程と、を有してもよい。
(3)上記態様にかかる複合磁性粉末材料の製造方法において、前記第1懸濁液は、2価のFeイオンと3価のFeイオンとを有してもよい。
(4)上記態様にかかる複合磁性粉末材料の製造方法において、前記第2懸濁液は、2価のFeイオンを有さなくてもよい。
(5)上記態様にかかる複合磁性粉末材料の製造方法において、前記混合液中に還元触媒を添加してもよい。
(6)上記態様にかかる複合磁性粉末材料の製造方法の前記前駆体作製工程において、前記水分を徐々に除去してもよい。
(7)上記態様にかかる複合磁性粉末材料の製造方法において、前記混合物を加熱前に微細化してもよい。
(8)上記態様にかかる複合磁性粉末材料の製造方法において、前記混合物の加熱温度が、前記融剤の融点より20℃以上高く300℃以下低い温度であってもよい。
(9)上記態様にかかる複合磁性粉末材料の製造方法の前記合金化工程における前記還元雰囲気での加熱温度が、300℃以上420℃以下であってもよい。
(10)一態様にかかる複合磁性粉末材料は、Co又はFeを含む金属又は合金からなる母材と、前記母材中に分散され、前記母材と一体化したスピネル構造を有する酸化鉄と、を有する。
(11)上記態様にかかる複合磁性粉末材料は、前記スピネル構造を有する酸化鉄は前記母材中に含有され、結晶が混晶構造であってもよい。
(12)上記態様にかかる複合磁性粉末材料は、飽和磁化が90Am2/kg以上であり、保磁力が90kA/m以上であってもよい。
(13)上記態様にかかる複合磁性粉末材料は、粒子サイズが50nm〜2μmであり、母材内に含有する前記スピネル構造を有する酸化鉄の粒子サイズが5nm〜30nmである構成でもよい。
(14)上記態様にかかる複合磁性粉末材料は、形状が概球状であってもよい。
(15)上記態様にかかる複合磁性粉末材料は、ルテニウム又はロジウムの少なくとも一方を0.1〜2.0重量%含有してもよい。
(16)一態様にかかる永久磁石は、上記態様にかかる複合磁性粉末材料を有する。
複合磁性粉末材料の飽和磁化及び保磁力を高めることができる。またその複合磁性粉末材料を簡便に作製することができる。
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。
「複合磁性粉末材料の製造方法」
図1は、本実施形態にかかる複合磁性粉末材料の製造方法のフロー図である。図1に示すように、本実施形態にかかる複合磁性粉末材料の製造方法は、大きく分けて混合工程と、前駆体作製工程と、合金化工程をと、を有する。以下、図1を参照しながら、各工程に次いて具体的に説明する。
図1は、本実施形態にかかる複合磁性粉末材料の製造方法のフロー図である。図1に示すように、本実施形態にかかる複合磁性粉末材料の製造方法は、大きく分けて混合工程と、前駆体作製工程と、合金化工程をと、を有する。以下、図1を参照しながら、各工程に次いて具体的に説明する。
(混合工程)
混合工程は、Co又はFeの少なくとも一方を含む水酸化物と、スピネル構造を有する酸化鉄と、融剤と、が混合した混合液を作製する工程である。
混合工程は、Co又はFeの少なくとも一方を含む水酸化物と、スピネル構造を有する酸化鉄と、融剤と、が混合した混合液を作製する工程である。
混合工程は、Co又はFeの少なくとも一方を含む水酸化物を有する第1懸濁液を作製する工程と、スピネル構造を有する酸化鉄を有する第2懸濁液を作製する工程と、第1懸濁液と第2懸濁液を混合し、融剤を添加する工程と、を有してもよい。
<第1懸濁液作製工程>
第1懸濁液中に分散するCo又はFeの少なくとも一方を含む水酸化物は、最終的に複合磁性粉末材料の母材の前駆体となる。母材を単体の磁性金属とする場合は、第1懸濁液は一つの金属の水酸化物が分散した懸濁液となる。母材が合金となる場合は、第1懸濁液は複数の磁性金属の水酸化物が分散した懸濁液となる。
第1懸濁液中に分散するCo又はFeの少なくとも一方を含む水酸化物は、最終的に複合磁性粉末材料の母材の前駆体となる。母材を単体の磁性金属とする場合は、第1懸濁液は一つの金属の水酸化物が分散した懸濁液となる。母材が合金となる場合は、第1懸濁液は複数の磁性金属の水酸化物が分散した懸濁液となる。
まず、所定の磁性金属イオンを含有する水溶液を作製する。水溶液は、所定の金属イオンを有する塩化物、硝酸塩又は硫酸塩を水に加えて作製する。最終的に得られる母材がCo−Fe合金の場合は、Co含有塩とFe含有塩を水に溶解させる。
最終的に得られる母材にCo、Fe以外の異なる元素を含ませる場合は、そのイオンを含む塩化物、硝酸塩又は硫酸塩を同時に水に添加する。異なる元素としては、Ni、Mn、Zn等が挙げられる。また最終的に得られる母材が金属の場合は、そのイオンを含む塩化物、硝酸塩又は硫酸塩を水に加える。
水溶液中には、二価のイオンと三価のイオンを共存させることが好ましい。例えば、二価のFeイオン(Fe2+)と三価のFeイオン(Fe3+)を水溶液中に共存させることが好ましい。二価のイオンは、原因は明確ではないが、後述する前駆体作製工程における融剤中での溶融処理時の合金の結晶成長に大きな影響を及ぼす。二価のイオンの割合が多いと結晶成長が促進され、得られる合金の粒子サイズが大きくなる。
次いで、作製した水溶液にアルカリ水溶液を添加する。アルカリ水溶液を加えると、磁性金属イオンは、水酸化物イオンと反応し水酸化物を作製する。水酸化物は、水に不溶であり沈殿する。
水酸化物は水溶液中で発生するため、水溶液中では分散している。水酸化物が乾燥し凝固すると、水溶液中に再分散させることは極めて難しい。そのため、Co又はFeの少なくとも一方を含む水酸化物を懸濁液として作製することは、重要である。
水溶液に添加するアルカリ水溶液中の水酸化物イオン濃度は、水溶液中に存在する磁性金属イオンが水酸化物を作製するために必要なモル数の1.5倍以上5倍以下であることが好ましく、3倍以上5倍以下であることがより好ましい。
水酸化物イオンは、主として磁性金属イオンとの反応に用いられる。例えば、Fe2++2(OH)−→Fe(OH)2等の反応に用いられる。そのため、原則的にはモル等量の水酸化物イオンが存在すれば十分である。
一方で、過剰に水酸化物イオンを添加すると、磁性金属イオンを漏れなく水酸化物にすることができる。また過剰に水酸化物イオンが存在すると、水酸化物を沈殿させた沈殿物の密度が高まる。これは、水酸化物の周囲に水酸化物イオンが配位する等の二次粒子のサイズが影響するものと考えられる。水酸化物の密度が高まると最終的に得られる母材の性能(保磁力、飽和磁化等)が高くなる。
上記の手順で第1懸濁液が得られる。例えば、最終的に得られる母材をCo−Fe合金とする場合は、第1懸濁液中には、Co(OH)2、Fe(OH)2及びFe(OH)3が存在する。
<第2懸濁液作製工程>
第2懸濁液中に分散するスピネル構造を有する酸化鉄は、最終的に複合磁性粉末材料の母材中に分散するスピネル構造を有する酸化鉄となる。スピネル構造を有する酸化鉄は、MeFe2O4(Meは、Fe、Mn、Ni、Co、Cu、Zn等の二価の金属イオン。)で表記されるフェライトである。
第2懸濁液中に分散するスピネル構造を有する酸化鉄は、最終的に複合磁性粉末材料の母材中に分散するスピネル構造を有する酸化鉄となる。スピネル構造を有する酸化鉄は、MeFe2O4(Meは、Fe、Mn、Ni、Co、Cu、Zn等の二価の金属イオン。)で表記されるフェライトである。
まず、所定の金属イオンを含有する水溶液を作製する。水溶液は、所定の金属イオンを有する塩化物、硝酸塩又は硫酸塩を水に加えて作製する。所定の金属イオンはスピネル構造を有する酸化鉄を構成する金属イオンである。例えば、CoFe2O4のスピネル構造を有する酸化鉄を作製する場合は、Coイオン及びFeイオンが存在する水溶液を作製する。
水溶液中の鉄イオンは三価とし、CoイオンやNiイオン等の金属(Me)イオンは二価とすることが好ましい。すなわち、水溶液中に二価の鉄イオンを共存させないことが好ましい。作製される第2懸濁液中に二価の鉄イオンを共存させないことで、理由は明確ではないが、得られる複合磁性粉末材料の保磁力を高めることができる。ここで、「二価の鉄イオンを共存させない」とは、意図的に二価の鉄イオンを加えないことを意味する。
また水溶液中における二価の金属(Me)イオンに対する三価の鉄イオンの割合は、2倍以上2.8倍以下とすることが好ましい。すなわち、最終的に得られるスピネル構造を有する酸化鉄の化学量論比よりも三価の鉄イオンの割合を高めることが好ましい。このような構成とすることで、得られる複合磁性粉末材料の保磁力を高めることができる。
またスピネル構造を有する酸化鉄の金属(Me)イオンとしてNiイオンとCoイオンを同時に用いる場合は、NiイオンよりもCoイオンの添加量を多くすることが好ましい。金属(Me)イオンとしてNiイオンとCoイオンを同時に用いると、得られる複合磁性粉末材料の保磁力が高まる。その中で、Coイオンの添加量をNiイオンの添加量よりも多くすると、得られる複合磁性粉末材料の保磁力をより高めることができる。
次いで、作製した水溶液にアルカリ水溶液を添加する。アルカリ水溶液を加えると、金属イオンは、水酸化物イオンと反応し水酸化物を作製する。水酸化物は、水に不溶であり沈殿する。水酸化物は、水溶液中で発生する為、水溶液中では分散している。水酸化物が乾燥し凝固すると、水溶液中に再分散させることは極めて難しい。
水溶液に添加するアルカリ水溶液中の水酸化物イオン濃度は、第1懸濁液と同様に、水溶液中に存在する磁性金属イオンが水酸化物を作製するために必要なモル数の1.5倍以上5倍以下であることが好ましく、3倍以上5倍以下であることがより好ましい。
次に、反応によって発生した水酸化物を含む懸濁液を、空気中で撹拌しながら加熱する。加熱温度は、水酸化物の反応に寄与できる温度以上でかつ水が蒸発しない温度以下であることが好ましい。すなわち、加熱温度は具体的には、80℃以上100℃以下であることが好ましい。
加熱処理により懸濁液中の水酸化物が反応し、スピネル構造を有する酸化鉄が得られる。ここで得られるスピネル構造を有する酸化鉄は数nm程度である。この酸化鉄は、後述する前駆体作製工程における融剤中での結晶成長の核となる。すなわち、予めスピネル構造の結晶構造を有する酸化鉄を作製しておくことで、得られる複合磁性粉末材料において母材中に分散する酸化鉄の粒子サイズを大きくできる。
上記の手順で第2懸濁液が得られる。第2懸濁液中のスピネル構造を有する酸化鉄も乾燥すると凝固する。そのため、スピネル構造を有する酸化鉄も水溶液に分散させた懸濁液として作製する。
<融剤添加工程>
作製した第1懸濁液と第2懸濁液とを混合する。第1懸濁液と第2懸濁液の混合比率は任意に設定できる。第1懸濁液と第2懸濁液の混合比率は、複合磁性粉末材料における母材と、母材中に分散するスピネル構造を有する酸化鉄との比率に寄与する。そのため、複合磁性粉末材料の母材と分散体の比率を考慮して混合比率を設定できる。
作製した第1懸濁液と第2懸濁液とを混合する。第1懸濁液と第2懸濁液の混合比率は任意に設定できる。第1懸濁液と第2懸濁液の混合比率は、複合磁性粉末材料における母材と、母材中に分散するスピネル構造を有する酸化鉄との比率に寄与する。そのため、複合磁性粉末材料の母材と分散体の比率を考慮して混合比率を設定できる。
複合磁性粉末の保磁力と飽和磁化のバランスをとるためには、第1懸濁液と第2懸濁液との混合比率は、Co又はFeの少なくとも一方を含む水酸化物の重量がスピネル構造を有する酸化鉄に対して重量比で0.2倍以上5倍以下となるように混合することが好ましい。
第1懸濁液(母材)の割合が多くなると、得られる複合磁性粉末の飽和磁化は大きくなるが、保磁力が小さくなる。これに対し、第2懸濁液(スピネル構造を有する酸化鉄)の割合が多くなると、得られる複合磁性粉末の保磁力は大きくなるが、飽和磁化が小さくなる。
次いで、第1懸濁液と第2懸濁液の混合液の溶媒を水で洗浄してアルカリを除去し、中性にする。そしてその溶液に、融剤を添加する。
融剤は、後述する前駆体作製工程において、酸化鉄の結晶成長を促進する目的で用いられる。そのため、反応には寄与せず、前駆体作製工程における溶融温度にあわせて任意に選択できる。融剤としては、例えば、KBr、FK、NaCl、LiBr等を用いることができる。
上述のような手順で、水酸化物と酸化鉄と融剤とが混合した混合液を作製する。混合液には、還元触媒を添加してもよい。還元触媒としてはルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)等を用いることができる。これらの触媒を添加すると、合金化工程での加熱温度を低くすることができる。還元反応が触媒によりサポートされるためである。
還元触媒は、第1懸濁液と第2懸濁液と融剤とが混合した混合液中に添加してもよいが、第1懸濁液中に添加することが好ましい。還元触媒を第1懸濁液中に添加することで、RuやRhの水酸化物が、FeやCoの水酸化物と共に第1懸濁液中で形成される。そのため、還元触媒が母材となる水酸化物中に取り込まれ、より触媒反応が促進される。
添加する還元触媒の量は、水溶液中に存在する遷移金属元素の総量に対して0.1〜10atm%の範囲とすることが好ましい。水溶液中に存在する遷移金属元素は、第1懸濁液中に添加する場合は、第1懸濁液中に存在する遷移金属元素量であり、混合液中に添加する場合は、混合液中に存在する遷移金属元素量である。
還元触媒が上記の量含まれていれば、還元触媒として十分機能する。一方で、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)等の還元触媒は高価である。すなわち、大量に添加するとコストアップの要因となる。またこれらの元素は磁性を有さないため、複合磁性粉末材料中に含まれるこれらの比率が高まると、複合磁性粉末材料の飽和磁化が低下する。
(前駆体作製工程)
前駆体作製工程は、混合液から水分を除去して得られた混合物を加熱し、溶融した融剤中で酸化物を結晶成長させると共に、母材中に酸化鉄が分散した前駆体を得る工程である。
前駆体作製工程は、混合液から水分を除去して得られた混合物を加熱し、溶融した融剤中で酸化物を結晶成長させると共に、母材中に酸化鉄が分散した前駆体を得る工程である。
前駆体作製工程では、まず作製した混合液から水分を除去し混合物を得る。この際水分は、徐々に除去することが好ましい。混合液を加熱し、少しの水分を蒸発させたら混合液の撹拌を行い、徐々に水分を除去する。水分を徐々に除去することで、融剤、水酸化物、酸化鉄が分離して析出することを避けることができる。
このようにして、混合物が得られる。得られた混合物は、水酸化物と酸化鉄と融剤との混合物である。混合の状態としては、水酸化物中に酸化鉄が分散し、これらの周囲を融剤が被覆しているような描像と考えられる。
混合物は、坩堝内で加熱し溶融する前に、微細化することが好ましい。微細化は公知の方法で行うことができる。例えば、乳鉢と乳棒を用いて、混合物を粉砕することができる。
混合物を粉砕すると、混合物中に含まれる水酸化物、スピネル構造を有する酸化鉄及び融剤が試料内で均一化される。この試料を坩堝内で溶融すると、溶融した融剤中における反応が均一化される。すなわち、結晶成長するスピネル構造を有する酸化鉄のサイズが均一化する。
次いで、得られた混合物を坩堝中で加熱する。加熱温度は、融剤の融点より10℃以上高いことが好ましく300℃以上高くないことが好ましい。例えば、融剤としてKBrを用いた場合は、KBrの融点が734℃であるため、750℃以上1000℃以下とすることが好ましい。
融剤を加熱すると、融剤が溶融し、流動性を持つ。溶融した融剤を用いることで、数百℃の温度領域で進行する反応を常圧下で行うことができる。溶融した融剤内では、粒子同士が会合し、酸化鉄の結晶成長が進行する。この融剤中における反応で、スピネル構造を有する酸化鉄は、数nmから10〜30nmまで結晶成長する。
この融剤中での反応においてスピネル構造を有する酸化鉄の粒子サイズは重要である。この粒子サイズが小さいと、超常磁性的挙動を示し、複合磁性粉末の示す保磁力が小さくなる。一方で、サイズが大きいと、粒子が多磁区構造を取りやすくなり、保磁力が低下する場合がある。
スピネル構造を有する酸化鉄は母材中に析出する。母材は、融剤中でCo又はFeの少なくとも一方を含む酸化物となる。母材も融剤中で、非晶質状態のまま、50nm〜2μmの大きさまで成長する。
上述のような手順で、母材中にスピネル構造を有する酸化鉄が分散した前駆体を作製する。この時点で、母材は酸化物であり磁性を示さず、またスピネル構造を有する酸化鉄の磁化も小さい。
(合金化工程)
合金化工程は、前駆体に付着した融剤を除去し、還元雰囲気で加熱し、前駆体の一部(母材)を合金化する工程である。
合金化工程は、前駆体に付着した融剤を除去し、還元雰囲気で加熱し、前駆体の一部(母材)を合金化する工程である。
まず前駆体に付着した融剤を除去する。融剤は水に可溶である。そのため、反応後の坩堝を水で洗浄することで融剤を除去できる。例えば、融剤としてKBrを用いた場合は、坩堝ごと水に浸漬し、KBrを溶解し、その後デカンテーションを繰り返すことで、融剤が除去された前駆体が得られる。
次いで、融剤が除去された前駆体を還元雰囲気で加熱する。還元媒体としては水素等のガスを用いることができる。加熱温度は、300℃以上420℃以下とすることが好ましい。
前駆体を還元処理すると、Co又はFeの少なくとも一方を含む水酸化(母材)は、合金まで還元される。一方で、スピネル構造を有する酸化鉄は、金属まで還元されることなく、スピネル構造を有する酸化鉄のままで維持される。すなわち、混晶状態の異なる物質に対して同じ条件で還元処理を施すと、一方は合金化され、他方は合金化されないということが生じる。
この理由はまだ明確になっていないが、還元処理前の段階で結晶構造を有しているか否かが影響していると考えられる。スピネル構造を有する酸化鉄は、第2懸濁液中で既に微細な結晶が生成されている。そのため、還元処理時には既にスピネル構造の結晶構造を有している。これに対し、母材は非晶質な水酸化物であり、ほとんど結晶構造をとっていない。そのため、母材は還元処理の影響を受けやすく、合金まで容易に還元されると考えられる。
このように、還元処理を行うことで、合金化した母材中にスピネル構造を有する酸化鉄が分散した複合磁性粉末材料を得ることができる。スピネル構造を有する酸化鉄は、母材中に析出しているため、混晶状態を有する。
なお、前駆体中にルテニウム(Ru)やロジウム(Rh)等の還元触媒を含有させておくと還元処理温度を低下させることができることを説明した。還元温度が高いと、スピネル構造を有する酸化鉄の一部も、母材と同様に金属又は合金化してしまう場合がある。スピネル構造を有する酸化鉄が金属化すると、スピネル構造を有する酸化鉄由来の高い保磁力が損なわれる場合がある。すなわち、還元触媒は、スピネル構造を有する酸化鉄が金属化することを防ぐ効果も有する。
上述のように、本実施形態にかかる複合磁性粉末材料の製造方法によれば、異なる物質である金属又は合金からなる母材と酸化鉄とが磁気的に結合した混晶構造を有する新規な複合磁性粉末材料を得ることができる。この新規な複合磁性粉末材料は、スピネル構造を有する酸化鉄由来の高い保磁力と、金属又は合金からなる母材由来の高い飽和磁化を併せ持つ。
また本実施形態にかかる複合磁性粉末材料の製造方法によれば、複合磁性粉末材料の保磁力と飽和磁化の値を制御して設定できる。本実施形態にかかる複合磁性粉末材料の製造方法は、母材と析出するスピネル構造を有する酸化鉄の比率、母材及びスピネル構造を有する酸化鉄の粒子径に繋がる成長度合い等を任意に設定できるためである。
「複合磁性粉末材料」
本実施形態にかかる複合磁性粉末材料は、母材と母材中に分散されたスピネル構造を有する酸化鉄とを有する。本実施形態にかかる複合磁性粉末材料は、上述の複合磁性粉末材料の製造方法を用いて作製できる。
本実施形態にかかる複合磁性粉末材料は、母材と母材中に分散されたスピネル構造を有する酸化鉄とを有する。本実施形態にかかる複合磁性粉末材料は、上述の複合磁性粉末材料の製造方法を用いて作製できる。
母材は、Co又はFeを含む金属又は合金である。すなわち、単体のCo、単体のFe、Co−Fe合金等を母材に用いることができる。また母材は、Co、Fe以外の金属を有していてもよい。例えば母材は、Niを添加したCo−Ni−Fe合金等でもよい。またNi以外にMn、Zn等を添加してもよい。
また母材は、上述の製造過程において用いたルテニウム(Ru)やロジウム(Rh)等の還元触媒を含んでいてもよい。母材中に含まれるルテニウム(Ru)又はロジウム(Rh)の量としては、0.1〜2.0重量%が好ましい。
スピネル構造を有する酸化鉄は、MeFe2O4(Meは、Fe、Mn、Ni、Co、Cu、Zn等の二価の金属イオン。)で表記されるフェライトである。スピネル構造を有する酸化鉄の具体例としては、CoFe2O4、(CoNi)Fe3O4等がある。
図2は、本実施形態にかかる複合磁性粉末材料の一例の透過型電子顕微鏡写真である。図2において黒い部分がスピネル構造を有する酸化鉄であり、その他の部分が母材に対応する。
図2に示すように、スピネル構造を有する酸化鉄は、母材中に含有され一体化している。ここで、「一体化」とは、母材とスピネル構造を有する酸化鉄とで一つの粒子を構成していることを意味する。すなわち、複合磁性粉末材料内において、母材とスピネル構造を有する酸化鉄とは混晶構造を有する。
上述のように、本実施形態にかかる複合磁性粉末材料に含有されるスピネル構造を有する酸化鉄は、母材中で結晶成長する。また母材もスピネル構造を有する酸化鉄を含有した状態で、金属又は合金化する。すなわち、本実施形態にかかる複合磁性粉末材料のように、母材とスピネル構造を有する酸化鉄とが一体化した混晶構造は、本実施形態にかかる複合磁性粉末材料の製造方法により初めて実現できるものである。
また母材とスピネル構造を有する酸化鉄とは、原子レベルで少なくとも一部が結合していると考えられる。粒子界面がどのようになっているかを明確に特定することは難しいが、上述のように複合磁性粉末材料は一体化して作製されているためである。
すなわち、本実施形態にかかる複合磁性粉末材料は、例えば特許文献4に記載のような保磁力の大きい硬磁性粒子と、飽和磁化の大きい軟磁性粒子とを単に混合したナノコンポジット材料とは、明らかに異なるものである。特許文献4に記載のナノコンポジット材料において、硬磁性粒子と軟磁性粒子とが一体化することはなく、原子レベルで結合していることも考えられない。
複合磁性粉末材料中において母材とスピネル構造を有する酸化鉄が一体化していると、複合磁性粉末材料が発現する磁気特性は、内部に混晶構造を有する一つの粒子が発現する磁気特性として現れる。図3は、本実施形態にかかる複合磁性粉末材料の減磁曲線である。図3に示すように、本実施形態にかかる複合磁性粉末材料の減磁曲線は、多段になっておらず、一つの粒子として磁気特性が発現していることを確認できる。
これに対し、特許文献4に記載のような硬磁性粒子と軟磁性粒子とが単に混合された2種類の物質の混合物の場合は、2種類の物質を足し合わせて平均化した磁気特性しか得ることができない。特許文献4の図5においても、ナノコンポジット磁石が、コバルトとフェライトの平均的な特性を示すことが記載されている。
すなわち、特許文献4に記載の混合物(ナノコンポジット磁石)は、見かけ上高い飽和磁化と高い保磁力を有していても、ヒステリシス曲線は2種類の物質を足し合わせて平均化した曲線となり、減磁曲線は変曲点を複数有する2段曲線となる。減磁曲線に変曲点や多段形状が確認できないとしても、2種類の物質の磁気特性を足し合わせて平均化した減磁曲線しか得られない。このような物質は、磁石材料には適さない。
また本実施形態にかかる複合磁性粉末材料は、高い飽和磁化と高い保磁力とを両立できる。具体的には、図3に示すように、飽和磁化が90Am2/kg以上であり、保磁力が90kA/m以上の複合磁性粉末材料を実現できる。また母材とスピネル構造を有する酸化鉄の混合比率、製造条件等を制御することで、飽和磁化が100Am2/kg以上であり、保磁力が150kA/m以上の複合磁性粉末材料を得ることもできる。
また図2に示すように、本実施形態にかかる複合磁性粉末材料は、粒子サイズが50nm〜2μmにできる。複合磁性粉末材料の大きさは、融剤中で成長する母材の大きさによって決まる。そのため、成長条件によって大きさを任意に設定できる。またスピネル構造を有する酸化鉄は、母材内部に取り込まれるため、粒子径が磁気交換相互作用の働く距離によって制限されることもない。
複合磁性粉末材料の母材内に含有されるスピネル構造を有する酸化鉄の粒子サイズは、5nm〜30nmであることが好ましい。スピネル構造を有する酸化鉄の粒子サイズが小さいと、超常磁性的挙動を示し、複合磁性粉末の示す保磁力が小さくなる。一方で、スピネル構造を有する酸化鉄の粒子サイズが大きいと、粒子内に多磁区構造をとりやすくなり、保磁力が低下する場合がある。
また複合磁性粉末材料の形状は、図2に示すように概球状であることが好ましい。ここで、「概球状である」とは、粒子を透過型電子顕微鏡で撮影した際に、長軸の長さが単軸の長さの1.5倍以下の粒子の存在比率が、倍率1万倍で撮影した透過型電子顕微鏡像内に存在する粒子の50%以上であることを意味する。
複合磁性粉末材料の形状が概球状であれば、磁性粉末を所定の空間内に高充填できる。そのため、高い磁束密度を有する永久磁石が得られる。
上述のように、本実施形態にかかる複合磁性粉末材料によれば、保磁力と飽和磁化とを共に大きくできる。本実施形態にかかる複合磁性粉末は、永久磁石に好適に用いることができる。
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
「第1懸濁液の作製」
(試料1−1の作製)
まず100mLのビーカを用いて、0.02molの塩化第二鉄六水塩(FeCl3・6H2O)、0.016molの塩化第一鉄四水塩(FeCl2・4H2O)、0.036molの塩化コバルト六水塩(FeCl2・6H2O)を60gの水に溶解した。水溶液中には、二価の鉄イオン(Fe2+)と三価の鉄イオン(Fe3+)が共存している。
(試料1−1の作製)
まず100mLのビーカを用いて、0.02molの塩化第二鉄六水塩(FeCl3・6H2O)、0.016molの塩化第一鉄四水塩(FeCl2・4H2O)、0.036molの塩化コバルト六水塩(FeCl2・6H2O)を60gの水に溶解した。水溶液中には、二価の鉄イオン(Fe2+)と三価の鉄イオン(Fe3+)が共存している。
次に、300mLのビーカを用いて、0.492molの水酸化ナトリウムを200gの水に溶解した。こうして得られた二つの溶液を混合し、10分間攪拌し、Fe及びCoイオンを含む水酸化物を含む第1懸濁液を得た。第1懸濁液中では、鉄及びコバルトの水酸化物は共沈している。そして、第1懸濁液を300mLの丸底のガラス製の反応容器に移し替え、空気中で攪拌しながら40℃で2時間加熱した。
得られた第1懸濁液の半分を用いて沈殿物を分析した。沈殿物は、半分にした第1懸濁液をろ過、乾燥して得た。沈殿物の構造解析にはX線回折を用い、沈殿物の粒子形状の観察には透過型電子顕微鏡を用い、沈殿物の磁気特性には試料振動型磁力計を用いて行った。
X線回折の結果、沈殿物は鉄及びコバルトの水酸化物が主であった。一部、スピネル構造の物質も確認されたが僅かであった。共沈時にCoとFeの一部がスピネル構造の物質を形成したものと考えられる。
図4は、試料1−1の沈殿物の透過型電子顕微鏡写真を示す。粒子サイズは数nm〜数十nmであった。飽和磁化は数Am2/kgと小さく、大部分が非磁性粒子であることが分かった。
<参考例1>
また参考検討として試料1−1の第1懸濁液を用いて磁性粒子を作製した。
まず、第1懸濁液に融剤として10gのKBrを加えた。KBrは、第1懸濁液に溶解した。そして、融剤を添加した第1懸濁液を撹拌しながら、空気中で80℃まで加温した。加温により水分が除去され、乾燥した混合物を得た。混合物は、第1懸濁液中に含まれる水酸化物と融剤とからなる。
また参考検討として試料1−1の第1懸濁液を用いて磁性粒子を作製した。
まず、第1懸濁液に融剤として10gのKBrを加えた。KBrは、第1懸濁液に溶解した。そして、融剤を添加した第1懸濁液を撹拌しながら、空気中で80℃まで加温した。加温により水分が除去され、乾燥した混合物を得た。混合物は、第1懸濁液中に含まれる水酸化物と融剤とからなる。
次いで、この混合物を乳鉢と乳棒を用いて解砕し、微細化した。そして微細化後の混合物を坩堝に入れ、空気中で850℃2時間加熱した。加熱により融剤は溶融し、溶融した融剤中で水酸化物は粒径が拡大し、成長する。
加熱処理後の混合物は、坩堝ごと水に浸漬した。水に浸漬することで、融剤は溶解除去された。残った残存物をろ過乾燥し、360℃で2時間水素還元した。そして、水素還元後の試料を分析した。
図5は、試料1−1の第1懸濁液から得られた磁性粒子(参考例1)のX線回折結果である。Co−Fe合金の(110)面に基づく明瞭な回折線が観測された。
図6は、試料1−1の第1懸濁液から得られた磁性粒子(参考例1)の透過型電子顕微鏡写真である。図6に示すように、粒子サイズは、融剤中の熱処理により、数nm〜数十nmのサイズ(図4参照)から100〜200nmまで成長した。
試料1−1の第1懸濁液から得られた磁性粒子(参考例1)の磁気特性は、保磁力が74.8kA/m(940Oe)で、飽和磁化は145.2Am2/kg(145.2emu/g)であった。
<参考例2>
参考例2は、参考例1における水素還元時の温度を360℃から380℃に変更した。その他の条件は参考例1と同様にして磁性粒子を作製した。
参考例2は、参考例1における水素還元時の温度を360℃から380℃に変更した。その他の条件は参考例1と同様にして磁性粒子を作製した。
参考例2の磁性粒子は、Co−Fe合金であると考えられる。Co−Fe合金の典型的な回折ピークである(110)面の回折線を示しているためである。サイズは200〜300nmであった。水素還元の温度を高くすることで粒子サイズが大きくなった。参考例2の磁性粒子の磁気特性は、保磁力が70.0kA/m(880Oe)で、飽和磁化が161.7Am2/kg(161.7emu/g)であった。
(試料1−2の作製)
0.0004molの塩化ルテニウム(RuCl3)を水溶液に加えた点が、試料1−1の第1懸濁液と異なる。塩化ルテニウムは、水酸化ナトリウム水溶液と混合する前の段階で加えた。
0.0004molの塩化ルテニウム(RuCl3)を水溶液に加えた点が、試料1−1の第1懸濁液と異なる。塩化ルテニウムは、水酸化ナトリウム水溶液と混合する前の段階で加えた。
得られた試料1−2の第1懸濁液の半分を用いて沈殿物を分析した。
X線回折の結果、沈殿物は鉄及びコバルトの水酸化物が主であった。一部、スピネル構造の物質も確認されたが僅かであった。共沈時にCoとFeの一部がスピネル構造の物質を形成したものと考えられる。
X線回折の結果、沈殿物は鉄及びコバルトの水酸化物が主であった。一部、スピネル構造の物質も確認されたが僅かであった。共沈時にCoとFeの一部がスピネル構造の物質を形成したものと考えられる。
図4は、試料1−1の沈殿物の透過型電子顕微写真を示す。粒子サイズは数nm〜数十nmであった。飽和磁化は数Am2/kgと小さく、大部分が非磁性粒子であった。
<参考例3>
また参考例3として試料1−2の第1懸濁液を用いて磁性粒子を作製した。
参考例3の磁性粒子は、参考例1における水素還元時の温度を360℃から340℃に変更した。その他の条件は参考例1と同様にして磁性粒子を作製した。
また参考例3として試料1−2の第1懸濁液を用いて磁性粒子を作製した。
参考例3の磁性粒子は、参考例1における水素還元時の温度を360℃から340℃に変更した。その他の条件は参考例1と同様にして磁性粒子を作製した。
参考例3の磁性粒子は、X線回折の結果から、大部分がCo−Fe合金であった。参考例3の磁性粒子の粒子サイズは50〜150nmであった。参考例3の磁性粒子の磁気特性は、保磁力が73.2kA/m(920Oe)で、飽和磁化が148.3Am2/kg(148.3emu/g)であった。ルテニウムの添加により水素還元の温度を低下しても磁性粒子化できた。
「第2懸濁液の作製」
(試料2−1の作製)
まず100mLのビーカを用いて、0.02molの塩化第二鉄六水塩(FeCl3・6H2O)、0.005molの塩化コバルト六水塩(FeCl2・6H2O)、0.003molの塩化ニッケル六水塩(NiCl2・6H2O)を60gの水に溶解した。水溶液中には、二価の鉄イオン(Fe2+)は存在していない。
(試料2−1の作製)
まず100mLのビーカを用いて、0.02molの塩化第二鉄六水塩(FeCl3・6H2O)、0.005molの塩化コバルト六水塩(FeCl2・6H2O)、0.003molの塩化ニッケル六水塩(NiCl2・6H2O)を60gの水に溶解した。水溶液中には、二価の鉄イオン(Fe2+)は存在していない。
次に、300mLのビーカを用いて、0.228molの水酸化ナトリウムを200gの水に溶解した。こうして得られた二つの溶液を混合し、10分間攪拌した。混合した液を300mLの丸底のガラス製の反応容器に移し替え、空気中で攪拌しながら95℃で2時間加熱した。そして、スピネル構造を有する酸化鉄を有する第2懸濁液を作製した。
得られた第2懸濁液の半分を用いて沈殿物を分析した。沈殿物は、半分にした第2懸濁液をろ過、乾燥して得た。沈殿物の構造解析にはX線回折を用い、沈殿物の粒子形状の観察には透過型電子顕微鏡を用い、沈殿物の磁気特性には試料振動型磁力計を用いて行った。
X線回折の結果、沈殿物はスピネル構造を有する酸化鉄が主であった。水酸化ナトリウムの添加により水酸化物が形成され、空気中での撹拌加熱によりスピネル構造を有する酸化鉄が得られたと考えられる。
図7は、試料2−1の沈殿物の透過型電子顕微鏡を示す。粒子サイズは数nm程度であった。磁気特性は、保磁力が511kA/m(6420Oe)、飽和磁化が28.5Am2/kg(28.5emu/g)であった。
<参考例4>
また参考例4として試料2−1の第2懸濁液を用いて磁性粒子を作製した。
まず、第2懸濁液に融剤として10gのKBrを加えた。KBrは、第2懸濁液に溶解した。KBrの添加量は、重量比で第2懸濁液中に含まれるスピネル構造を有する酸化鉄の10倍とした。
また参考例4として試料2−1の第2懸濁液を用いて磁性粒子を作製した。
まず、第2懸濁液に融剤として10gのKBrを加えた。KBrは、第2懸濁液に溶解した。KBrの添加量は、重量比で第2懸濁液中に含まれるスピネル構造を有する酸化鉄の10倍とした。
融剤を添加した第2懸濁液を撹拌しながら、空気中で80℃まで加温した。加温により水分が除去され、乾燥した混合物を得た。混合物は、第2懸濁液中に含まれるスピネル構造を有する酸化鉄と融剤とからなる。
次いで、この混合物を乳鉢と乳棒を用いて解砕し、微細化した。そして微細化後の混合物を坩堝に入れ、空気中で850℃2時間加熱した。加熱により融剤は溶融し、溶融した融剤中でスピネル構造を有する酸化鉄は結晶成長する。
加熱処理後の混合物は、坩堝ごと水に浸漬し、数回デカンテーションを行い、融剤を除去した。残った残存物をろ過乾燥し、360℃で2時間水素還元した。そして、水素還元後の試料を分析した。
図8は、試料2−1の第2懸濁液から得られた磁性粒子(参考例4)のX線回折結果である。回折線はすべて典型的なスピネル構造を有する酸化鉄であるFe3O4の回折線とほぼ一致し、鉄やコバルト、ニッケルなどの金属あるいは合金による回折線は観測されなかった。
図9は、試料2−1の第2懸濁液から得られた磁性粒子(参考例4)の透過型電子顕微鏡写真である。図9に示すように、粒子サイズは、融剤中の熱処理により、数nm程度のサイズから20〜30nmまで成長した。
試料2−1の第2懸濁液から得られた磁性粒子の磁気特性は、保磁力が386kA/m(4850Oe)で、飽和磁化は58.8Am2/kg(58.8emu/g)であった。
(試料2−2の作製)
塩化コバルト六水塩(FeCl2・6H2O)の添加量を0.005molから0.004molに、塩化ニッケル六水塩(NiCl2・6H2O)の添加量を0.003molから0.004molに変更した点以外は、試料2−1と同様にして第2懸濁液を作製した。
塩化コバルト六水塩(FeCl2・6H2O)の添加量を0.005molから0.004molに、塩化ニッケル六水塩(NiCl2・6H2O)の添加量を0.003molから0.004molに変更した点以外は、試料2−1と同様にして第2懸濁液を作製した。
得られた試料2−2の第2懸濁液の半分を用いて沈殿物を分析した。
X線回折の結果、沈殿物はスピネル構造を有する酸化鉄が主であった。粒子サイズは数nm程度であった。磁気特性は、保磁力が396kA/m(4980Oe)で、飽和磁化は24.1Am2/kg(24.1emu/g)であった。
X線回折の結果、沈殿物はスピネル構造を有する酸化鉄が主であった。粒子サイズは数nm程度であった。磁気特性は、保磁力が396kA/m(4980Oe)で、飽和磁化は24.1Am2/kg(24.1emu/g)であった。
<参考例5>
また参考例5として試料2−2の第2懸濁液を用いて磁性粒子を作製した。参考例5の磁性粒子は、参考例4と同様の条件で作製した。
また参考例5として試料2−2の第2懸濁液を用いて磁性粒子を作製した。参考例5の磁性粒子は、参考例4と同様の条件で作製した。
参考例5の磁性粒子は、X線回折の結果から、スピネル構造を有する酸化鉄のみであり、金属又は合金の回折線は確認されなかった。参考例5の磁性粒子の粒子サイズは、20〜30nmであった。参考例5の磁性粒子の磁気特性は、保磁力が246kA/m(3090Oe)で、飽和磁化が55.3Am2/kg(55.3emu/g)であった。
参考例4及び5に示すように、スピネル構造を有する酸化鉄のみからなる磁性粒子は、飽和磁化は、保磁力は大きいが飽和磁化の値が小さかった。
「複合磁性粉末材料の作製」
(実施例1)
試料1−1の第1懸濁液と、試料2−1の第2懸濁液を用いて複合磁性粉末材料を作製する。第1懸濁液中に含まれる水酸化物の重さを1gとし、第2懸濁液中に含まれるスピネル構造を有する酸化鉄の重さを0.5gとし、第1懸濁液と第2懸濁液を混合した。水酸化物及びスピネル構造を有する酸化鉄は、乾燥により凝集しないように懸濁液の状態で混合した。
(実施例1)
試料1−1の第1懸濁液と、試料2−1の第2懸濁液を用いて複合磁性粉末材料を作製する。第1懸濁液中に含まれる水酸化物の重さを1gとし、第2懸濁液中に含まれるスピネル構造を有する酸化鉄の重さを0.5gとし、第1懸濁液と第2懸濁液を混合した。水酸化物及びスピネル構造を有する酸化鉄は、乾燥により凝集しないように懸濁液の状態で混合した。
次いで、混合した懸濁液中に10gのKBrを加えた。KBrは懸濁液中の水分により溶解した。融剤を添加した混合液を撹拌しながら、空気中で80℃まで加温した。加温により水分が除去され、乾燥した混合物を得た。混合物は、水酸化物と、スピネル構造を有する酸化鉄と、融剤と、からなる。スピネル構造を有する酸化鉄は水酸化物中に分散し、融剤はこれらを覆っていた。
次いで、この混合物を乳鉢と乳棒を用いて解砕し、微細化した。そして微細化後の混合物を坩堝に入れ、空気中で850℃2時間加熱した。加熱により融剤は溶融し、溶融した融剤中で粒子同士が結合し成長した。スピネル構造を有する酸化鉄は10〜30nmまで成長し、Co及びFeの水酸化物は50nm〜2μmまで成長する。その結果、Co及びFeの水酸化物中に、スピネル構造を有する酸化鉄が分散した複合粒子が形成された。
加熱処理後の混合物は、坩堝ごと水に浸漬し、数回デカンテーションを行い、融剤を除去した。残った残存物をろ過乾燥し、360℃で2時間水素還元した。そして、水素還元後の試料を分析した。
図10は、実施例1の複合磁性粉末材料のX線回折結果である。図10に示すように、実施例1の複合磁性粉末材料は、Co−Fe合金に基づく回折ピーク(符号1)と、スピネル構造を有する酸化鉄に基づく回折ピーク(符号2)とを有する。
また図2は、実施例1の複合磁性粉末材料の透過型電子顕微鏡写真である。複合磁性粉末材料の粒子サイズは400〜500nmで、この粒子の中に粒子サイズが20〜30nmの粒子が分散析出していることが明瞭に観察される。
図10及び図2の結果から、図2に示す透過型電子顕微鏡写真において、母材の粒子がCo−Fe合金であり、この合金母材の中に析出している20〜30nmの粒子がスピネル構造を有する酸化鉄である。
また図3は、実施例1の複合磁性粉末材料のヒステリシス曲線である。図3に示すように、ヒステリシス曲線は、変曲点を有さず滑らかな減磁曲線を示している。すなわち、2種類の物質が磁気的に結合している。
実施例1の複合磁性粉末材料の磁気特性は、保磁力は224kA/m(2810Oe)で、飽和磁化は126.3Am2/kg(126.3emu/g)であった。
(実施例2)
実施例2は、実施例1における水素還元時の温度を360℃から380℃に変更した。その他の条件は実施例1と同様にして磁性粒子を作製した。
実施例2は、実施例1における水素還元時の温度を360℃から380℃に変更した。その他の条件は実施例1と同様にして磁性粒子を作製した。
実施例2の複合磁性粉末材料は、透過型電子顕微鏡観察から粒子サイズが500〜800nmで、この粒子の中に分散する粒子サイズが20〜30nmであった。
また実施例2の複合磁性粉末材料は、X線回折の結果、Co−Fe合金に基づく回折ピークと、スピネル構造を有する酸化鉄に基づく回折ピークから構成されていた。
さらにヒステリシス曲線を測定した結果、変曲点の存在しない滑らかな減磁曲線を示し、2種類の物質が磁気的に結合していることを示していた。保磁力は185kA/m(2320Oe)で、飽和磁化は133.4Am2/kg(133.4emu/g)であった。
(実施例3)
実施例3は、坩堝内での融剤中での加熱条件を変更した点が実施例1と異なる。実施例1では850℃2時間加熱したのに対し実施例3では830℃30分とした。その他の条件は実施例1と同様にして磁性粒子を作製した。
実施例3は、坩堝内での融剤中での加熱条件を変更した点が実施例1と異なる。実施例1では850℃2時間加熱したのに対し実施例3では830℃30分とした。その他の条件は実施例1と同様にして磁性粒子を作製した。
実施例3の複合磁性粉末材料は、透過型電子顕微鏡観察から粒子サイズが200〜300nmで、この粒子の中に分散する粒子サイズが10〜20nmであった。
また実施例3の複合磁性粉末材料は、X線回折の結果、Co−Fe合金に基づく回折ピークと、スピネル構造を有する酸化鉄に基づく回折ピークから構成されていた。
さらにヒステリシス曲線を測定した結果、変曲点の存在しない滑らかな減磁曲線を示し、2種類の物質が磁気的に結合していることを示していた。保磁力は258kA/m(3240Oe)で、飽和磁化は106.0Am2/kg(106.0emu/g)であった。
(実施例4)
実施例4は、最初に混合する第1懸濁液と第2懸濁液の比率を変更した点が実施例1と異なる。実施例4では、第1懸濁液中に含まれる水酸化物の重さを1.0gから0.75gに変更し、第2懸濁液中に含まれるスピネル構造を有する酸化鉄の重さを0.5gから0.75gに変更した。その他の条件は実施例1と同様にして磁性粒子を作製した。
実施例4は、最初に混合する第1懸濁液と第2懸濁液の比率を変更した点が実施例1と異なる。実施例4では、第1懸濁液中に含まれる水酸化物の重さを1.0gから0.75gに変更し、第2懸濁液中に含まれるスピネル構造を有する酸化鉄の重さを0.5gから0.75gに変更した。その他の条件は実施例1と同様にして磁性粒子を作製した。
図11は、実施例4の複合磁性粉末材料の透過型電子顕微鏡写真である。実施例4の複合磁性粉末材料は、粒子サイズが300〜400nmで、この粒子の中に分散する粒子サイズが20〜30nmであった。
また図12は、実施例4の複合磁性粉末材料のX線回折結果である。図12に示すように、Co−Fe合金に基づく回折ピーク(符号1)と、スピネル構造を有する酸化鉄に基づく回折ピーク(符号2)が確認された。すなわち、複合磁性粉末材料は、Co−Fe合金及びスピネル構造を有する酸化鉄から構成されている。
さらにヒステリシス曲線を測定した結果、変曲点の存在しない滑らかな減磁曲線を示し、2種類の物質が磁気的に結合していることを示していた。保磁力は245kA/m(3080Oe)で、飽和磁化は102.1Am2/kg(102.1emu/g)であった。
(実施例5)
実施例5は、最初に混合する第1懸濁液と第2懸濁液の比率を変更した点が実施例1と異なる。実施例5では、第1懸濁液中に含まれる水酸化物の重さを1.0gから0.5gに変更し、第2懸濁液中に含まれるスピネル構造を有する酸化鉄の重さを0.5gから1.0gに変更した。その他の条件は実施例1と同様にして磁性粒子を作製した。
実施例5は、最初に混合する第1懸濁液と第2懸濁液の比率を変更した点が実施例1と異なる。実施例5では、第1懸濁液中に含まれる水酸化物の重さを1.0gから0.5gに変更し、第2懸濁液中に含まれるスピネル構造を有する酸化鉄の重さを0.5gから1.0gに変更した。その他の条件は実施例1と同様にして磁性粒子を作製した。
図13は、実施例5の複合磁性粉末材料の透過型電子顕微鏡写真である。実施例5の複合磁性粉末材料は、粒子サイズが300〜400nmで、この粒子の中に分散する粒子サイズが20〜30nmであった。
また図14は、実施例5の複合磁性粉末材料のX線回折結果である。図14に示すように、Co−Fe合金に基づく回折ピーク(符号1)と、スピネル構造を有する酸化鉄に基づく回折ピーク(符号2)が確認された。すなわち、複合磁性粉末材料は、Co−Fe合金及びスピネル構造を有する酸化鉄から構成されている。
さらにヒステリシス曲線を測定した結果、変曲点の存在しない滑らかな減磁曲線を示し、2種類の物質が磁気的に結合していることを示していた。保磁力は275kA/m(3460Oe)で、飽和磁化は93.4Am2/kg(93.4emu/g)であった。
(実施例6)
実施例6は、坩堝内の融剤中での加熱条件、及び、水素還元時の処理条件を変更した点が実施例1と異なる。実施例6では、融剤中での加熱条件を850℃で2時間から900℃で4時間に、水素還元条件を360℃で2時間から380℃で2時間に変更した。その他の条件は実施例1と同様にして磁性粒子を作製した。
実施例6は、坩堝内の融剤中での加熱条件、及び、水素還元時の処理条件を変更した点が実施例1と異なる。実施例6では、融剤中での加熱条件を850℃で2時間から900℃で4時間に、水素還元条件を360℃で2時間から380℃で2時間に変更した。その他の条件は実施例1と同様にして磁性粒子を作製した。
実施例6の複合磁性粉末材料は、透過型電子顕微鏡観察から粒子サイズが800nm〜1.5μmで、この粒子の中に分散する粒子サイズが30〜50nmであった。実施例6の複合磁性粉末材料は、融剤中での粒子の成長が顕著で粒子サイズが大きかった。
また実施例6の複合磁性粉末材料は、X線回折の結果、Co−Fe合金に基づく回折ピークと、スピネル構造を有する酸化鉄に基づく回折ピークから構成されていた。
さらにヒステリシス曲線を測定した結果、変曲点の存在しない滑らかな減磁曲線を示し、2種類の物質が磁気的に結合していることを示していた。保磁力は123kA/m(1540Oe)で、飽和磁化は140.1Am2/kg(140.1emu/g)であった。
(実施例7)
実施例7は、用いた第1懸濁液を試料1−1から試料1−2に代えた点、及び、水素還元時の処理条件を変更した点が実施例1と異なる。すなわち、実施例7で用いた第1懸濁液には、コバルト、鉄及びルテニウムの水酸化物が存在する。また水素還元条件を360℃で2時間から340℃で2時間に変更した。その他の条件は実施例1と同様にして磁性粒子を作製した。
実施例7は、用いた第1懸濁液を試料1−1から試料1−2に代えた点、及び、水素還元時の処理条件を変更した点が実施例1と異なる。すなわち、実施例7で用いた第1懸濁液には、コバルト、鉄及びルテニウムの水酸化物が存在する。また水素還元条件を360℃で2時間から340℃で2時間に変更した。その他の条件は実施例1と同様にして磁性粒子を作製した。
実施例7の複合磁性粉末材料は、透過型電子顕微鏡観察から粒子サイズが400nm〜500nmで、この粒子の中に分散する粒子サイズが20〜30nmであった。
また実施例7の複合磁性粉末材料は、X線回折の結果、Co−Fe合金に基づく回折ピークと、スピネル構造を有する酸化鉄に基づく回折ピークから構成されていた。
さらにヒステリシス曲線を測定した結果、変曲点の存在しない滑らかな減磁曲線を示し、2種類の物質が磁気的に結合していることを示していた。保磁力は232kA/m(2920Oe)で、飽和磁化は121.8Am2/kg(121.8emu/g)であった。
(比較例1)
比較例1は、実施例1における融剤中における加熱処理を省略した。すなわち、第1懸濁液と第2懸濁液を単に混合し、ろ過、乾燥した粒子を、水素還元処理を行った。その他の条件は、実施例1と同様にした。
比較例1は、実施例1における融剤中における加熱処理を省略した。すなわち、第1懸濁液と第2懸濁液を単に混合し、ろ過、乾燥した粒子を、水素還元処理を行った。その他の条件は、実施例1と同様にした。
図15は、比較例1の磁性粉末材料の透過型電子顕微鏡写真である。比較例1の磁性粉末材料は、粒子サイズが20〜30nmの粒子と、粒子サイズが100〜200nmの粒子により構成されている。
比較例1の磁性粉末材料は、X線回折の結果からCo−Fe合金に基づく回折ピークと、スピネル構造を有する酸化鉄に基づく回折ピークが確認された。すなわち、比較例1の磁性粉末粒子は、スピネル構造を有する酸化鉄粒子と、Co−Fe合金の単なる混合物であり、複合化されていない。
図15に示す透過型電子顕微鏡写真において、20〜30nmのサイズの粒子はスピネル構造を有する酸化鉄であり、100〜200nmのサイズの粒子はCo−Fe合金である。図15に示す透過型電子顕微鏡写真からも、これら2種類の粒子の単なる混合物であることが確認できる。
また比較例1の磁性粉末材料は、ヒステリシス曲線を測定した結果、減磁曲線は2段ステップのある混合物特有の曲線であり、2種類の物質が磁気的に結合していなかった。
比較例1の磁性粉末材料の保磁力は88kA/m(1100Oe)であり、飽和磁化は122.1Am2/kg(122.1emu/g)であった。飽和磁化は、Co−Fe合金の飽和磁化を反映して高い値を示したが、磁気結合していないため保磁力の値は低かった。
比較例1の磁性粉末材料の保磁力は88kA/m(1100Oe)であり、飽和磁化は122.1Am2/kg(122.1emu/g)であった。飽和磁化は、Co−Fe合金の飽和磁化を反映して高い値を示したが、磁気結合していないため保磁力の値は低かった。
実施例1〜7及び比較例1の結果を表1にまとめた。
実施例1〜7の複合磁性粉末材料は、いずれも母材中に粒子サイズの小さい粒子が分散している。この母材はCo−Fe合金であり、粒子サイズの小さい粒子はスピネル構造を有する酸化鉄であった。またこれらの複合磁性粉末はいずれも変曲点の存在しない滑らかな減磁曲線を示し、透過型電子顕微鏡写真の結果を反映して2種類の物質が磁気的に結合していた。
また実施例1〜7の複合磁性粉末材料はいずれも保磁力及び飽和磁化が共に高い。これに対し、Co−Fe合金のみからなる参考例1〜3は、飽和磁化の値は大きいが保磁力の値が小さかった。またスピネル構造を有する酸化鉄のみからなる参考例4及び5は、保磁力の値は大きいが飽和磁化の値が小さかった。さらに、複合化せずに単にCo−Fe合金とスピネル構造を有する酸化鉄を混合した比較例1は、保磁力も飽和磁化もいずれも充分ではなく、高い磁気特性を示すことができなかった。
実施例1と実施例2を比較すると、還元温度が高くなることで保磁力が僅かに低下している。これは母材と共に、スピネル構造の酸化物の一部が還元され金属化されたことに起因すると考えられる。
実施例1と実施例3及び実施例6を比較すると、融剤中での処理条件が得られる粒子の粒子サイズに影響を及ぼすことが確認された。一方で、複合磁性粉末材料の粒子サイズが変わっても、保磁力及び飽和磁化を高いまま維持できた。
実施例1と実施例4及び5を比較すると、母材となるCo−Fe合金と、スピネル構造を有する酸化鉄との混合比率を変更することで、保磁力及び飽和磁化の値を調整できることが分かる。
実施例1と実施例7を比較すると、試料中に還元触媒であるルテニウムを添加することで、還元温度を低くできることが確認された。
1…Co−Fe合金に基づく回折ピーク、2…スピネル構造を有する酸化鉄に基づく回折ピーク
Claims (16)
- Co又はFeの少なくとも一方を含む水酸化物と、スピネル構造を有する酸化鉄と、融剤と、が混合した混合液を作製する混合工程と、
前記混合液から水分を除去して得られた混合物を加熱し、溶融した融剤中で前記酸化鉄を結晶成長させると共に、母材中に前記酸化鉄が分散した前駆体を得る前駆体作製工程と、
前記前駆体に付着した融剤を除去した後、還元雰囲気で加熱し、前記前駆体の母材を合金化する合金化工程と、を有する複合磁性粉末材料の製造方法。 - 前記混合工程は、Co又はFeの少なくとも一方を含む水酸化物を有する第1懸濁液を作製する工程と、スピネル構造を有する酸化鉄を有する第2懸濁液を作製する工程と、前記第1懸濁液と前記第2懸濁液を混合し、融剤を添加する工程と、を有する請求項1に記載の複合磁性粉末材料の製造方法。
- 前記第1懸濁液は、2価のFeイオンと3価のFeイオンとを有する請求項2に記載の複合磁性粉末材料の製造方法。
- 前記第2懸濁液は、2価のFeイオンを有さない請求項2又は3のいずれかに記載の複合磁性粉末材料の製造方法。
- 前記混合液に還元触媒を添加する請求項1〜4のいずれか一項に記載の複合磁性粉末材料の製造方法。
- 前記前駆体作製工程において、前記水分を徐々に除去する請求項1〜5のいずれか一項に記載の複合磁性粉末材料の製造方法。
- 前記混合物を加熱前に微細化する請求項1〜6のいずれか一項に記載の複合磁性粉末材料の製造方法。
- 前記混合物の加熱温度が、前記融剤の融点より20℃以上高く300℃以下低い温度である請求項1〜7のいずれか一項に記載の複合磁性粉末材料の製造方法。
- 前記合金化工程における前記還元雰囲気での加熱温度が、300℃以上420℃以下である請求項1〜8のいずれか一項に記載の複合磁性粉末材料の製造方法。
- Co又はFeを含む金属又は合金からなる母材と、
前記母材中に分散され、前記母材と一体化したスピネル構造を有する酸化鉄と、を有する複合磁性粉末材料。 - 前記スピネル構造を有する酸化鉄は前記母材中に含有され、結晶が混晶構造である請求項10に記載の複合磁性粉末材料。
- 飽和磁化が90Am2/kg以上であり、保磁力が90kA/m以上である請求項10又は11のいずれかに記載の複合磁性粉末材料。
- 粒子サイズが50nm〜2μmであり、母材内に含有する前記スピネル構造を有する酸化鉄の粒子サイズが5nm〜30nmである請求項10〜12のいずれか一項に記載の複合磁性粉末材料。
- 形状が概球状である請求項10〜13のいずれか一項に記載の複合磁性粉末材料。
- ルテニウム又はロジウムの少なくとも一方を0.1〜2.0重量%含有する請求項10〜14のいずれか一項に記載の複合磁性粉末材料。
- 請求項10〜請求項15のいずれか一項に記載の複合磁性粉末材料を有する永久磁石。
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JP2016217892A JP2018078161A (ja) | 2016-11-08 | 2016-11-08 | 複合磁性粉末材料の製造方法、複合磁性粉末材料及び永久磁石 |
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CN115124336A (zh) * | 2021-03-26 | 2022-09-30 | 日立金属株式会社 | 铁氧体预烧体和铁氧体烧结磁体的制造方法 |
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