JP2007224323A - 磁性シリカ粒子およびその製造方法 - Google Patents

磁性シリカ粒子およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】金属磁性粒子を用いて、高い飽和磁化を有するとともに、比表面積を高めた磁性シリカ粒子を提供する。
【解決手段】Fe、Co、Niのうち少なくとも一種を含む磁性金属粒子を、磁性酸化物粒子を添加したシリカゾル中で攪拌し、前記シリカゾルを加水分解させて、前記磁性金属粒子の芯粒子に磁性酸化物粒子を包含するシリカの外殻を形成することを特徴とする。該磁性シリカ粒子は、Fe、Co、Niのうち少なくとも一種を含む磁性金属粒子を芯粒子とし、前記芯粒子の外殻としてシリカを備え、前記シリカは磁性酸化物粒子を包含する。
【選択図】 図5

Description

本発明は、DNAや細胞などの生体物質を抽出するための磁気ビーズなど、広く磁気を利用して応用される微粒子に関する。
近年、医療診断や生物学的検査において微小な磁性粒子が利用されている。検体を固定する固相として超常磁性磁気ビーズが用いられ、タンパク質、細胞、DNAの分離、分析等に利用されている(例えば特許文献1)。超常磁性磁気ビーズとは、酸化鉄等の磁性体を磁区の大きさよりも小さい微粒子にしてビーズ中に分散して含ませたものであり、外部磁場が印加された時のみ強磁性を示す性質を有する。上記用途において磁性粒子は酸性、中性またはアルカリ性溶液に曝されるため、表面が化学的に安定であることが好ましい。同時に目的物質を結合させる抗体が容易に張り付く表面であることが好ましい。そのためマグネタイト粒子にシリカ(SiO)をコートしたり(例えば、特許文献2)、酸化鉄粒子にポリマーをコートする(例えば、特許文献3)手法がある。
特表平4−501956号公報 特開2004−65132号公報 特開平9−183862号公報
従来の磁性シリカ粒子からなる磁気ビーズは超常磁性を発現する酸化鉄微粒子をコアとするため、磁化が本質的に低いという問題があった。すなわち磁石で磁気ビーズを回収する際、磁気ビーズの磁場応答性が低く、結果として回収速度が遅くなってしまうという問題があった。上記問題を解決するためには、高磁化を有するFe、Coなどの金属磁性粒子をコアとして用いることが好ましいが、金属磁性粒子は非常に酸化活性であるため微粒子化するほど不安定となり、直ぐに酸化物へと変質してしまう。一方、酸化による変質をできるだけ避けるために金属磁性粒子の粒径を大きくすると粉末の比表面積が小さくなり、DNA等の生体物質を回収する上で重要な磁気ビーズの有効表面積が実質的に小さくなるという問題があった。そこで、本発明は、金属磁性粒子を用いて、高い飽和磁化を有するとともに、比表面積を高めた磁性シリカ粒子を提供することを目的とする。
本発明者は上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果本発明に至った。
本発明の磁性シリカ粒子は、Fe、Co、Niのうち少なくとも一種を含む磁性金属粒子を芯粒子とし、前記芯粒子の外殻としてシリカを備え、前記シリカは磁性酸化物粒子を包含する。磁性金属粒子を芯粒子とすることにより、酸化鉄微粒子を用いた従来の磁性シリカ粒子よりも高磁化が得られる。さらに、磁性金属粒子とは別の磁性酸化物粒子が外殻であるシリカに包含されるため、表面の凹凸が増え、単なるシリカを外殻とするよりも、比表面積をおおきくすることができる。また、シリカに包含される酸化物粒子に磁性酸化物粒子を用いることで、磁性シリカ粒子全体の飽和磁化低下の抑制に寄与する。
また、前記磁性シリカ粒子において、磁性シリカ粒子の芯粒子となる磁性金属粒子は、その表面に非金属被覆層を有することが好ましい。上記非金属の被覆層を有することにより芯粒子の耐食性を向上させることができる。非金属被覆層とは、金属単体または合金以外の被覆層をいう。例えば、酸化物層、窒化物層、炭化物層、樹脂層などである。生体物質抽出の用途に用いる場合、前記非金属被覆層はTi酸化物などの生体適合物質であることが好ましい。
更に、前記磁性シリカ粒子において、前記非金属被覆層がルチル構造のTiOを主体とするTi酸化物であることが好ましい。ここでTiOを主体とするとは、X線回折測定で検出されるTi酸化物に相当する回折ピークの中で、TiOに相当するピークの強度が最大であることを意味する。TiOを主体とするTi酸化物は結晶性が高いため、コアとなる磁性金属粒子をより完全に被覆して優れた耐食性を維持することができる。
また、本発明の磁性シリカ粒子の平均粒径は0.2μm〜10μmが好ましい。これにより溶液中でも沈降が遅く分散性に優れた磁性シリカ粒子とすることができる。
また、本発明の磁性シリカ粒子の保磁力が10kA/m以下であることが好ましい。保磁力が小さいことから残留磁化が小さく磁気凝集を抑制することができる。
また、本発明の磁性シリカ粒子の残留磁化Mrと飽和磁化Msの比Mr/Msが0.03以下であることが好ましい。高Ms、低Mrとすることにより、磁気捕捉性に優れるともに、再分散性に優れた磁性シリカ粒子が得られる。
本発明の磁性シリカ粒子の製造方法は、Fe、Co、Niのうち少なくとも一種を含む磁性金属粒子を、磁性酸化物粒子を添加したシリカゾル中で攪拌し、前記シリカゾルを加水分解させて、前記磁性金属粒子の芯粒子に磁性酸化物粒子を包含するシリカの外殻を形成することを特徴とする。本手法によれば、高磁化の磁性金属粒子を芯粒子とする磁性シリカ粒子において比表面積を大きくすることができる。
また、前記磁性シリカ粒子の製造方法において、上記磁性酸化物粒子の添加量は、磁性金属粒子100重量部に対して、前記磁性酸化物粒子が0.5〜8重量部であることを特徴とする。これにより磁性金属粒子による高磁化を維持しながら効果的に磁性シリカ粒子の表面積を増大させることができる。
本発明によれば、高い磁化を有するとともに比表面積が大きいシリカ磁性粒子を提供することができる。これによりDNAなどの生体物質を抽出する際には高速で高効率回収を実現することができる。
以下本発明について具体的に説明する。本発明の磁性シリカ粒子は、Fe、Co、Niのうち少なくとも一種を含む磁性金属粒子を芯粒子とし、前記芯粒子の外殻としてシリカを備え、前記シリカは磁性酸化物粒子を包含する。すなわち、芯粒子の外殻としてシリカを備える構造とは、磁性金属粒子をシリカが覆っている構造である。
(1)芯粒子
芯粒子はFe、Co、Niのうち少なくとも一種を含む磁性金属粒子とする。すなわちFe、CoおよびNi、Fe、Co、Niの合金、Fe、Co、Niを含む化合物などである。高飽和磁化を得る観点からは、Fe、Feの一部を他の元素で置き換えた合金、或いはFeを含む化合物が好ましく、特にFeが好ましい。芯粒子である磁性金属粒子は、磁性金属のみで構成されていてもよく、その表面に非金属被覆層が形成されていてもよい。表面に被覆が形成されている場合は、耐酸化性や磁性シリカ粒子とした場合の耐食性にも有利である。また、不可避不純物の酸素を含有していてもよい。磁性金属のみで構成されている磁性金属粒子としては、例えばカルボニル鉄などの金属粉末を用いればよい。表面に非金属被覆層が形成されている磁性金属粒子としては、例えばAl、Ti、V、Mn、Nb、Bなどの酸化物、窒化物、炭化物、炭素、樹脂などによって被覆されたものを用いることができる。このうちTi酸化物は生体物質に対する適合性の点で優れているため、磁性金属粒子はTi酸化物で被覆されていることが好ましい。
Fe、Co、Niの少なくとも一種を含む磁性金属粒子の製造方法について、Ti酸化物の被覆を有する場合を例に説明する。なお、非金属被覆層は、既知のゾルゲル法、プラズマ処理法、樹脂コート法などの方法を用いて形成することができるが、下記方法は金属部分の酸化を抑えることができる点、被覆層の耐食性に優れた膜が形成できる点、簡易な方法である点で特に優れる。Fe、Co、Niの少なくとも一種を含む金属Mの酸化物粉末とTiを含む粉末(但し、Ti酸化物粉末を除く)とを混合し、その混合粉末を非酸化性雰囲気中で熱処理する。これにより、Tiによって還元された金属Mが粒子として生成し、同時に当該還元反応において生成したTi酸化物が金属Mの粒子の表面を被覆する。
この製法において用いられる金属Mの酸化物粉末は、目標とする磁性金属粒子の粒径に合わせてその粒径を自由に選択することができる。金属Mの酸化物粉末の粒子径は0.001μm〜5μmの範囲から選ばれることが好ましい。粒径が0.001μm未満の酸化物粒子は合成が困難で高コスト化を招くだけでなく、2次凝集が激しいためにその後の製造プロセスでの取り扱いが困難になる。また5μmを越える粒子は比表面積が小さくなり、結果として還元反応が進行しにくくなる。実用的には0.001μm〜1μmの範囲が好適である。また金属Mとしては上述のようにFe、Co、Ni、またはこれらを含む合金等が好ましく、その酸化物粉末としてはFe、Fe、CoO、Co、NiOが挙げられる。このうち、Feは飽和磁化が高いため、金属Mとして特に好ましい。また、その酸化物のFeが安価である点でも好ましい。TiはFeに比べて酸化物の標準生成エネルギーが小さいため、Feの酸化物を効率よくかつ確実に還元することができる。
Tiを含む粉末(但し、Ti酸化物粉末を除く)とは、Ti単体粉の他、Ti−X(X:Ag、Au、B、Bi、C、Cu、Cs、Cd、Ge、Ga、Hg、K、N、Na、Pd、Pt、Rb、Rh、S、Sn、Tl、Te、Znから少なくとも一つ)等のTi化合物、あるいはそれらの混合物であっても良い。Tiの酸化物は還元剤として機能しないので好ましくない。Xの限定理由は、Xの酸化物生成の標準生成自由エネルギーΔGX−OがTiOの生成標準自由エネルギーΔGTiO2よりも大きい物質である。もしΔGX−O<ΔGTiO2なる元素Xを選択すると元素Xが還元剤として作用し、Ti酸化物が生成しなくなる。M酸化物を還元するに足るTiが含まれていれば、Xの含有量は特に限定されない。また、Tiを含む粉末に限らず、Al、V、Mn、Nb、B等を含む粉末を用いてTiを含む粉末の場合と同様の原理を用いてAl酸化物等の被覆を形成することができる。さらにTiを含む粉末の代わりにB、Cの粉末を用いれば、BNやCの被覆も形成することができる。
Tiを含む非酸化物粉末の粒径は1nm〜1mmの範囲のものを用いることができるが、還元反応を効率的に行なうためには1nm〜0.1mmの範囲が好ましい。0.1mmを超える粒径となると還元反応温度が高温となり、昇降温に時間がかかるために熱処理サイクルが長くなって効率が落ちる、あるいは炉自体の部材に耐熱品を使用しなければならず、設備コストが高くなる、などの短所が顕著となる。さらに好ましくは、0.01μm〜20μmの範囲であり、特に好ましくは0.1μm〜5μmである。粒子径が0.01μm未満であると大気中で取り扱う際にTiの酸化が著しくなり、還元剤として機能しにくくなる。20μm超であると比表面積が小さく、還元反応が十分かつ均一に進行しない。特に0.1μm〜5μmの範囲であれば、大気中での酸化を抑制しつつ、還元反応の十分な進行を図ることができる。
上記M酸化物の粉末とTi含有粉末(但し、Ti酸化物粉末を除く)との混合比は、TiがM酸化物を還元する化学量論比近傍が好ましく、より好ましくはTiが上記化学量論比よりも過剰となることが好ましい。Tiが不足すると、熱処理中にM酸化物粉末が焼結してしまい、最終的にバルク化してしまうので適さない。例えばTi含有粉末としてTiC、M酸化物としてFeを用いる場合、TiCは混合粉全体の25〜60mass%が好ましい。25mass%未満であると還元が不十分となり、60mass%超とするとFeの比率が低下して磁化低下の原因となり相応しくない。より好ましくは30〜50mass%である。上記M酸化物の粉末とTi含有非酸化物粉末との混合には、乳鉢、スターラー、V字型ミキサー、ボールミル、振動ミル、その他一般的な攪拌機の中から選択できる。
M酸化物粉末とTi含有粉末(但し、Ti酸化物粉末を除く)の混合粉を非酸化性雰囲気中で熱処理すると、M酸化物粉末とTi含有粉末との接触部で還元反応が開始され、最終的にはTiOを主体とするTi酸化物で被覆された金属Mの粒子が生成する。以下、金属Mの粒子を「M金属粒子」と記載する。熱処理時の雰囲気は非酸化性雰囲気が好ましい。例えばAr,Heなどの不活性ガスやN、CO、NHなどを使用することができるが、これらに限定されない。また熱処理温度は650℃〜900℃が好ましい。650℃未満であると還元反応が十分に進行せず好ましくない。900℃超であると還元反応は進行するが、TiOではなく、不定比組成のTi2n−1が主として生成してしまう場合がある。Ti2n−1は、900℃以下で還元された金属Mが900℃超の高温でTiOから再び酸素を取り込んで除酸化されることにより生成する。これは金属Mの還元が結果として十分進行していない状態となる。あるいは被覆層が劣化してしまい、M金属粒子の被覆が不十分となってしまう。すなわち、熱処理温度を650〜900℃の範囲とすることは、処理温度が低く、生産性にも優れるうえに、Ti酸化物によって完全に被覆することによりM金属粒子の耐食性を維持する上で特に好ましいのである。
上記芯粒子において、被覆物質とM金属粒子は、必ずしもコアーシェル構造になっている必要はなく、TiOを主体とするTi酸化物粒子の中に2個以上のM金属粒子が分散した構造であっても構わない。すなわちTiOを主体とするTi酸化物粒子の中にM金属粒子が2個以上含まれている構成によれば、M金属粒子を確実に被覆しやすく、耐食性を向上するうえで好ましい。また、金属粒子部分は、必ずしも、完全にTiOを主体とするTi酸化物で被覆されている必要はなく、部分的に金属粒子が表面に露出している粒子が含まれていても構わないが、完全にTiOを主体とするTi酸化物で被覆されていることがより好ましい。
上記製造方法により、Ti含有粉末(但し、Ti酸化物粉末を除く)とM酸化物の粉末との混合粉末を非酸化性雰囲気で上記条件で熱処理することにより、Tiによって還元された金属Mの微粒子であって、表面をTiOを主体とするTi酸化物によって被覆されていることを特徴とする磁性金属粒子を得ることができる。該磁性金属粒子の平均粒径は、0.1μm〜6μmが好ましい。0.1μm未満であると十分な厚さの被覆を確保できずM金属粒子が剥き出しとなる部分が多くなるため耐食性が低下する。また6μmを超えると液体中での沈降速度が速くなり、分散性が低下する。なお、本発明における平均粒径は、特に断りのない限り、レーザー回折による湿式粒度測定器で測定したd50の値を用いる。また、平均粒径が0.1μm以下となるような微細なものに対しては、SEM写真において、粒子の最大径と最小径の平均を100粒の粒子についてとって平均粒径とする。また、TiOを主体とするTi酸化物被覆の厚さは1〜10000nmが好ましい。1nm未満であると十分な耐食性が得られない。また、10000nm超であると、粒子全体の粒径が大きくなり液中での分散性が低下する他、磁性金属微粒子の場合は飽和磁化が減少する。より、好ましくは5〜5000nmである。なお、被覆の厚さは粒子を直接観察した透過電子顕微鏡(TEM)写真または断面が観察できるように加工した粒子のTEM写真から算出し、厚さが不均一な場合は、最大厚さと最小厚さの平均を被覆の厚さとする。
また、本発明では、M酸化物の還元によるM金属微粒子の生成とTiOを主体とするTi酸化物被覆の形成を同一の熱処理工程で行なうため、熱処理で得られた被覆磁性金属粒子の、M金属部分とTiOを主体とするTi酸化物被覆との間にM金属の酸化層は明確には確認されない。また、650℃以上に加熱した熱処理を施すため、被覆の結晶性が高く、被覆層は主にルチル構造のTiOで構成される。したがって当該被覆層はゾル−ゲル法等によって得られるアモルファス或いは結晶性の低い被覆に比べて緻密であり高耐食性を発揮する。上記被覆層は複数(2個以上)の結晶粒で構成されており、ルチル構造のTiOとM金属粒子との間には特定の結晶方位関係はないが、あっても良い。
金属微粒子の部分が磁性金属Feである場合、前記製法によって得られた磁性金属粒子は、110〜180A・m/kgの範囲の飽和磁化を有することが好ましい。金属Feの飽和磁化(=218A・m/kg)との比をとることによりFeの含有率が計算されるが、前記磁性金属粒子中におけるFeの含有率は質量比で50〜83%であることに相当する。したがって被覆層を形成しているTiOを主体とするTi酸化物の含有率は17〜50%である。前記磁性金属粒子の飽和磁化が110A・m/kg未満であると飽和磁化が小さいので、磁性粒子として十分機能しないので好ましくない。また180A・m/kg超であるとTiOを主体とするTi酸化物の含有率が17%未満と小さくなり、金属Fe粒子を十分被覆することができず磁気特性が酸化劣化してしまうので好ましくない。したがって、高い飽和磁化を得るためには非磁性部分である被覆はなるべく薄いことが好ましいが、十分な耐食性を得るためには、十分な被覆厚を有していることが好ましく、その場合の飽和磁化は180A・m/kg以下とする。また前記磁性金属粒子はTiOを主体とするTi酸化物の非磁性成分を過剰に含んでいる場合があるため、永久磁石を用いて磁性粒子だけを回収する磁気分離操作を施すことが好ましい。磁性金属粒子において、コアとなる金属MをFeとしてTiOを主体とするTi酸化物で被覆することにより、高い耐食性を実現することができる。
(2)磁性シリカ粒子
次に、外殻としてのシリカについて説明する。本発明に係る磁性シリカ粒子は、Fe、Co、Niの少なくとも一種を含む磁性金属粒子を芯粒子とし、磁性酸化物粒子を包含したシリカを外殻とする粒子構造である。図5に本発明に係る磁性シリカ粒子の構造の模式図を示す。図5に示すように、芯粒子1の周りには、該芯粒子覆うように外殻としてシリカ2が存在する。そしてシリカは磁性酸化物粒子を包含している。図5に示すように、芯粒子である磁性金属粒子が、磁性酸化物粒子よりも大きい構造である。磁性酸化物粒子によって磁性シリカ粒子の表面の凸凹が顕著になり、比表面積を増大させる。また、該粒子構造では、シリカの外殻が一つの芯粒子を被覆するものでよいし(図5(a))、シリカの外殻が2以上の芯粒子を包含するものでもよい(図5(b))。
上記磁性シリカ粒子(A粒子)はシリカ被覆工程で磁性酸化物粒子を添加することにより、(1)で記載した芯粒子を単独でシリカ被覆した粒子(B粒子)よりも比表面積を大きくすることができる。本発明のA粒子の比表面積はB粒子の比表面積よりも1%〜60%増加することが好ましい。比表面積の増加が1%未満であると増分が小さすぎて磁性酸化物微粒子を添加した効果が期待できない。また比表面積の増加が60%超とするためには磁性酸化物粒子を芯粒子に対して質量比で8%以上添加しなければならず、結果として磁気凝集を招くため、好ましくない。ここで比表面積とはBET法により測定した値を指す。
Fe、Co、Niの少なくとも一種を含む磁性金属粒子が、その表面にTi酸化物などの酸化物、窒化物、炭素等の被覆を有する場合、高い耐食性を示す。磁性金属がTi酸化物等で被覆されているだけでなく、磁性酸化物粒子を包含するシリカで被覆されているため、直接的に大気または溶液が上記磁性金属粒子に接触することがなく、酸化性環境下であっても高い耐食性を維持することができる。すなわち、上記磁性シリカ粒子は磁性金属粒子によってその磁性を発現しているにもかかわらず、高い耐食性を示す。更には本発明の磁性シリカ粒子の最表面は、磁性酸化物微粒子を包含したシリカで構成されているため、表面性状が従来の磁気ビーズと酷似している。なおかつ芯粒子の磁性金属粒子によって高い磁化を発現するため、従来にない磁気捕集性に優れた磁気ビーズを提供することができる。
上記磁性シリカ粒子の平均粒径は0.2μm〜10μmであることが好ましい。平均粒径が0.2μm未満であると1粒子当たりの磁化が極端に小さくなり、外部磁場と粒子との相互作用が極めて小さくなるので好ましくない。また平均粒径が10μmを越えると1粒子の重量が極端に重くなるため、溶液中に分散させた場合は沈降が速く直ぐに沈殿してしまう。このため磁性シリカ粒子が溶液中の生体物質と反応する確率が小さくなり、例えば血液からDNAを抽出する際に上記磁性シリカ粒子が抽出できるDNA量が極めて少なくなる。高い磁場応答性を維持しつつ、溶液中における生体物質と本発明の粒子とを十分反応させるためには、上記磁性シリカ粒子の平均粒径は0.2μm〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5μm〜7μmである。
また、前記磁性シリカ粒子において、磁性酸化物粒子の平均粒径が磁性シリカ粒子の平均粒子径の1/10以下であることが好ましい。このような微細な磁性酸化物粒子をシリカ外殻に包含させることにより、比表面積を大きくしやすい。この場合、磁性シリカ粒子のTEM写真において、シリカ膜中に含まれる磁性酸化物粒子の最大径と最小径の平均をもってその粒子の粒径とし、該粒径の個数平均を算出して磁性酸化物粒子の平均粒径とする。磁性シリカ粒子の平均粒径は、上述のようにレーザー回折による湿式粒度測定器で測定したd50の値である。また、磁性シリカ粒子において、芯粒子である磁性金属粒子は、磁性酸化物粒子よりも大きいことが好ましい。飽和磁化および比表面積を高く維持するためである。かかる大小関係は、SEM写真またはTEM写真において、それぞれの粒子の最大径と最小径の平均で比較する。
当該磁性シリカ粒子は保磁力が10kA/m(110Oe)以下であることが好ましい。さらに残留磁化Mrと飽和磁化Msとの比Mr/Msが0.03以下であることが好ましい。Mr/Msが0.03を超えて残留磁化が大きくなると、粒子同士が磁気的に凝集してしまう。また、保磁力が10kA/mを越える値であるとMrが大きくなり、前記磁気凝集を引き起こす。この粒子凝集が顕著になると、生体物質と反応し得る有効な表面積が少なくなるだけでなく、溶液中における粒子の沈降が速くなってしまい、溶液中の生体物質と反応する時間が限られるため、好ましくない。高分散性を得るためには、保磁力が10kA/m以下であって、Mr/Msが0.03以下であることが好ましい。より好ましくはMr/Msは0.023以下である。また、本発明に係る磁性シリカ粒子は、磁性金属を用いるので、100A・m/kg以上の飽和磁化Msを実現することが可能である。マグネタイトFeの飽和磁化は92A・m/kg程度であるから、被覆を設けた状態での磁性シリカ粒子の飽和磁化を100A・m/kg以上とすることによって、磁性酸化物粒子では実現できなかった、高飽和磁化を有する、すなわち磁気捕集速度に優れた磁性シリカ粒子を実現することができる。逆にMsが100A・m/kg未満であると外部磁場との相互作用が小さくなり、例えば溶液中に分散させた磁性シリカ粒子を磁気捕集する際に時間が掛かる、あるいは所定の時間内に十分回収できなくなるので好ましくない。磁性シリカ粒子のMsを100A・m/kg以上、保磁力を10kA/m以下、かつMr/Msを0.03以下とすることによって、高飽和磁化を維持しつつ、分散性も高められる。これは、よりいっそう高速で高効率の生体物質回収にも寄与する。
本発明の磁性シリカ粒子は例えば以下の製造方法によって製造される。上述した芯粒子と磁性酸化物微粒子とをアルコール溶液中に分散させ、ケイ素アルコキシドの加水分解反応を当該アルコール溶液中で進行させることにより、上記芯粒子に磁性酸化物微粒子を包含するシリカ被覆を施す。また、(1)上述した芯粒子をアルコール溶液中に分散させ、ケイ素アルコキシドの加水分解反応を当該アルコール溶液中で進行させることにより、上記芯粒子にシリカ被覆を施し、(2)上記シリカ被覆粒子と磁性酸化物微粒子とをアルコール溶液中に分散させ、ケイ素アルコキシドの加水分解反応を再び当該アルコール溶液中で進行させる、という二段階にわけて外殻であるシリカ被覆を形成してもよい。
ケイ素アルコキシドの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。また、3−トリエトキシシリルーンー(1,3−ジメチルーブチリデン)プロピルアミン、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニルー3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルー3−アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラプロポキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等でも良い。シリカ(ケイ素酸化物)は、例えばテトラエトキシシランの加水分解反応で得られ、シリカを析出させるテトラエトキシシランの加水分解反応を制御することで、磁性シリカ粒子は再現性をもって製造することができる。
アルコール溶液としては、例えばエタノール、メタノール、イソプロパノールなどの低級アルコールが挙げられる。ケイ素アルコキシドとしてテトラエトキシシランを用いる場合には、テトラエトキシシランの加水分解反応を促進させるために触媒としてアンモニア水を添加する。アンモニア水はテトラエトキシシランを理論上100%加水分解可能な量以上の水を含む。具体的にはテトラエトキシシラン1molに対して水2mol以上である。アルコール溶液の使用割合は、テトラエトキシシラン100重量部に対して100〜10000重量部が好ましい。さらに、テトラエトキシシランの使用割合は、金属微粒子100重量部に対してテトラエトキシシランが5〜80重量部が好ましい。さらに好ましくはテトラエトキシシランが10〜60重量部である。テトラエトキシシランが5重量部以下であると、金属微粒子の表面がケイ素酸化物被覆により均一に被覆することが困難となる。一方、テトラエトキシシランの使用割合が80重量部を超える場合は、磁性シリカ粒子の外殻を形成するシリカの他に、ケイ素酸化物単体の微粒子が形成されてしまう。テトラエトキシシランの加水分解に用いられる水の使用割合は、テトラエトキシシラン100重量部に対して、好ましくは1〜1000重量部である。この割合が1重量部未満の場合には、テトラエトキシシランの加水分解の進行が遅くなり、作製効率が悪くなる。一方、1000重量部を越えると、ケイ素酸化物を主体として構成されるケイ素酸化物の単離球が形成されてしまうため、好ましくない。触媒として用いられるアンモニア水の使用割合は、例えば、アンモニア水の濃度が28%の場合には、テトラエトキシシラン100重量部に対して、10〜100重量部が好ましい。10重量部よりも少ない場合には、触媒としての作用が発揮されないため、好ましくない。また、100重量部よりも多い場合には、ケイ素酸化物を主体として構成されるケイ素酸化物の単離球が形成されてしまうため、好ましくない。上記手法において、溶媒中にはアンモニア水およびケイ素アルコキシドが含まれるため、pHが約11と弱アルカリ性である。そのため、金属粒子が腐食することが懸念されるが、上述の芯粒子を適用することにより、金属を粒子核としているにも関わらず、金属核の腐食を防ぐことができる。
(3)磁性酸化物粒子
前記磁性酸化物粒子としては、Fe(マグネタイト)、γ―Fe(マグヘマイト)、FeO(ウスタイト)、各種フェライト(ZO・Feで表される組成、ZはMn2+、Fe+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+の少なくとも一つ)、またはこれらの混合物が挙げられる。
添加する磁性酸化物粒子の平均粒径は、用いる芯粒子の平均粒子径に対して1/10以下であることが好ましい。平均粒径を1/10以下とすることにより、シリカ被覆層内に上記酸化物微粒子を内包させることができ、最終的に得られる磁性シリカ粒子の比表面積を効率的に増大させることができる。前記大小関係は、磁性シリカ粒子内においても維持される。したがって、磁性酸化物粒子の平均粒径を、用いる芯粒子の平均粒子径に対して1/10以下とすることによって得られた磁性シリカ粒子は、外殻であるシリカ被覆内に芯粒子である磁性金属微粒子よりも微細な磁性酸化物粒子を包含する構造となる。上記磁性酸化物粒子は完全にシリカ膜中に埋め込まれている必要はなく、芯粒子表面にシリカを介して接着された状態でも構わない。上記磁性酸化物微粒子の平均粒子径が上述の芯粒子の平均粒子径に対して1/10を越える大きさであると、当該酸化物粒子は芯粒子に付着することなく単独でシリカ被覆されてしまう。上記単独シリカ被覆粒子の磁性は酸化物粒子が担っているため、その飽和磁化が極めて小さく、磁気応答性が低いため好ましくない。ここで磁性酸化物を用いる理由は、最終的に得られる磁性シリカ粒子において飽和磁化を出来る限り高く維持するためである。
当該磁性酸化物粒子の添加量は、上述の芯粒子となる磁性金属粒子100重量部に対して0.5〜8重量部であることが好ましい。0.5重量部未満であると磁性酸化物微粒子を添加した効果が顕著に現れないため好ましくない。一方、8重量部を越えると磁性シリカ粒子の飽和磁化が低下するだけでなく、酸化物微粒子自身の保磁力が作用して残磁が大きくなり、磁気凝集してしまうので好ましくない。あるいはシリカ被覆された磁性酸化物粒子が単独で存在する割合が増加するため、好ましくない。より効果的には、当該磁性酸化物粒子を質量比で1〜6重量部の割合で添加することが好ましい。
前記芯粒子に均一にシリカを被覆するためには、モーター攪拌機、V型混合機、ボールミル混合機やディゾルバー攪拌機または超音波装置などを用いて、溶液と芯粒子を十分混合する。混合時間はテトラエトキシシランの加水分解反応が十分に進行する時間以上必要である。生成する残留水和物を除去し、被覆膜の強度を増加させるためには熱処理を行うことが望ましい。更に当該シリカ被覆粒子に前記磁性酸化物微粒子を所定量添加し、この混合粉を同様にシリカ被覆することにより、本発明に係る磁性シリカ粒子が得られる。
(実施例1)
まず、芯粒子となる磁性金属粒子を作製する。平均粒径0.03μmのα−Fe粉と平均粒径1μmのTiC粉を質量比で7:3となるように秤量し、ボールミル混合機で50時間混合した。得られた混合粉をアルミナボートに適量充填し、窒素ガス中にて800℃×2時間の熱処理を行なった。室温まで冷却した後にアルミナボートを取り出し、熱処理された試料粉末を回収した。
上記試料粉末のX線回折パターンを図1に示す。図1のグラフの横軸は回折の2θ(°)に相当し、縦軸は回折の強度(相対値)に相当する。MDI社製解析ソフト「Jade,ver.5」にて解析すると、図1の回折パターンはα−Fe、TiO(ルチル構造)に同定された。TiOに対応した回折ピークの強度が最大となるのは、2θ=27.5°の時であり、この回折ピークの半値幅は0.14であり、ピーク強度のα−Fe(110)ピーク強度に対する比率は0.18であった。これによりTiOが高い結晶性を有することが分かる。上記試料粉末の平均粒径をレーザー回折粒度分布測定機(HORIBA製LA−920)にて測定した結果、d50は1.3μmであった。
また図2は上記試料粉末をTEMにより直接観察した像を表す。粒子中央部に観察される黒色コントラストの粒子はFe粒子であり、Fe粒子の周囲に見られる半透明の被覆層はTiOである。Fe及びTiOの同定はEDX分析により実施した。以上、X線回折測定及びTEM解析により、上記試料粉末はルチル構造のTiOで被覆されたFe粒子であることが確認された。すなわち、上記方法によって、表面にTiOを主体とするTi酸化物の被覆を有する磁性金属粒子を得た。
更に上記試料粉末の磁気特性をVSM(振動型磁力計)により測定した。最大印加磁界を1.6MA/mとして測定した結果、飽和磁化Ms:132A・m/kg、保磁力Hc:4.8kA/mであった。飽和磁化の値はバルクFeの飽和磁化値(=218A・m/kg)の60.5%に相当するため、本実施例試料のFe含有率は質量比で60.5%、TiO含有率は39.5%である。
次に上述の方法で得られた磁性金属粒子に以下に説明する手法で3回シリカ被覆処理を施し、磁性シリカ粒子を作製した。第1処理として、上述の磁性金属粒子の試料粉末5gをエタノール溶媒100ml中に分散し、これにテトラエトキシシランを1ml添加した。次にこの溶媒を攪拌しながら純水22gとアンモニア水4gの混合溶液を添加し、上記混合溶液を1時間攪拌した。攪拌後、磁性粒子を磁石でビーカ内壁に捕捉しながら上澄み液を除去した。第2処理として、上述の第1処理後の粉末をエタノール溶媒100ml中に分散し、更に平均粒径100nmのFe(マグネタイト)粒子を0.05g(1重量部)添加し、これにテトラエトキシシランを1ml添加して5分間攪拌した。次にこの溶媒を攪拌しながら純水22gとアンモニア水4gの混合溶液を添加し、上記混合溶液を1時間攪拌した。攪拌後、磁性粒子を磁石でビーカ内壁に捕捉しながら上澄み液を除去した。第3処理として、第2処理によって得られた粉末に対して第1処理と同様にしてシリカ被覆処理を行なった。上記3回シリカ被覆処理後、イソプロピルアルコールで溶媒置換を行い、磁性シリカ粒子をドラフト内で乾燥させた。
ガスを用いたBET法により、上記磁性シリカ粒子の比表面積を測定した結果、4.2m/gを得た。また前記磁性金属粒子と同様に上記磁性シリカ粒子の試料粉末の平均粒径を測定した結果、5.3μmを得た。また実施例1と同様に上記試料粉末の磁気特性をVSMにて測定した結果、飽和磁化Ms:127Am/kg、保磁力Hc:5.5kA/mを得た。また残留磁化MrとMsとの比を算出した結果、Mr/Msは0.02であった。各測定結果を表1にまとめた。
(実施例2、3、4)
マグネタイト粒子の添加量を2重量部(実施例2)、4重量部(実施例3)、6重量部(実施例4)とした以外は実施例1と同様にしてシリカ被覆処理を実施した。得られた試料粉末の各測定値を表1にまとめた。マグネタイト粒子の添加量が1〜6重量部である実施例1〜4の磁性シリカ粒子は飽和磁化Msが100Am/kg以上、具体的には123Am/kg以上の高い飽和磁化を示している。また、実施例1〜4の磁性シリカ粒子では、保磁力は8.0kA/m以下、残留磁化Mrは3.5Am/kg以下、Mr/Msは0.028以下と低く、ともに良好な値を示した。また、実施例1〜4ではいずれも、後述する比較例1に比べて比表面積であるBET値が2%以上増加した。これは磁性シリカ粒子が磁場中で高い磁化を発現するにも関わらず、無磁場での残留磁化が小さいために磁気凝集が極めて小さいことを表している。
(比較例1)
マグネタイト粒子を無添加とした以外は実施例1と同様にシリカ被覆処理を実施し、磁性シリカ粒子を得た。表1に各測定データをまとめた。
また、本発明の磁性粒子のDNA抽出性能を評価するため、Roch社製DNA抽出キット「MagNA Pure LC DNA Isolation Kit I」を用いて馬血100μlからDNAを精製した。実施例1〜4、比較例1の磁性シリカ粒子12mgをそれぞれイソプロピルアルコール(IPA)150μl中に分散させた溶液を各々磁気ビーズ液として用いた以外は上記Kitのプロトコルに準拠してDNAを抽出した。結果を表2に示す。マグネタイトを添加した実施例1〜4の磁性シリカ粒子は、マグネタイトを添加していない比較例1に比べてDNAを8%以上多く抽出していることが分かる。Fe微粒子を添加したことによる比表面積の増加により高抽出能が発現している。
(実施例5、6)
マグネタイト粒子の添加量を10重量部(実施例5)、20重量部(実施例6)とした以外は実施例1と同様にしてシリカ被覆処理を実施し、磁性シリカ粒子を得た。表2に各測定データをまとめた。実施例5、6とも、マグネタイト無添加の比較例1に比べて比表面積が増大し、また120Am/kg以上の飽和磁化も維持している。但し、実施例1〜4に比べて飽和磁化がやや減少するとともに、保磁力Hcが増加し、10kA/mを超えていることが分かる。Hcの増加に伴い残留磁化Mrも増加し、結果としてMr/Msの値も0.03を超える値となっている。
また上記磁性シリカ粒子のDNA抽出性能を実施例1〜4と同様にして評価した。結果を表2に示す。実施例5、6では保磁力及びMr/Msが大きいことから、粒子の磁気凝集が激しいと予測され、DNA抽出量としては低くなった。
(比較例2)
市販の磁性シリカ粒子(Roche製、MagNAPure LC DNA Isolation Kit Iに付属)について比表面積、平均粒径、磁気特性を測定した結果を表1にまとめた。
また実施例3および比較例1の磁性シリカ粒子をそれぞれ50,000倍でSEM観察した結果を図3および図4に示す。実施例3ではFe微粒子に対応した微細な凹凸が観察された(図3中黄色で囲んだ部分)。この微細な凹凸により比較例1よりも表面積を大きく保つことができ、効率的にDNAなどの生体物質を吸着させることができる。
磁性金属粒子のX線回折パターンである。 磁性金属粒子のTEM観察像である。 本発明の実施例に係る磁性シリカ粒子のSEM観察像である。 比較例に係る磁性シリカ粒子のSEM観察像である。 本発明に係る磁性シリカ粒子の構造を示す模式図である。
符号の説明
1:芯粒子 2:シリカ 3:磁性酸化物粒子

Claims (8)

  1. Fe、Co、Niのうち少なくとも一種を含む磁性金属粒子を芯粒子とし、前記芯粒子の外殻としてシリカを備え、前記シリカは磁性酸化物粒子を包含する磁性シリカ粒子。
  2. 前記磁性金属粒子は、その表面に非金属被覆層を有することを特徴とする請求項1に記載の磁性シリカ粒子。
  3. 前記被覆層がルチル構造のTiOを主体とするTi酸化物であることを特徴とする請求項1または2に記載の磁性シリカ粒子。
  4. 前記磁性シリカ粒子の平均粒径が0.2μm〜10μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の磁性シリカ粒子。
  5. 前記磁性シリカ粒子の保磁力が10kA/m以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の磁性シリカ粒子。
  6. 前記磁性シリカ粒子の残留磁化Mrと飽和磁化Msの比Mr/Msが0.03以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の磁性シリカ粒子。
  7. Fe、Co、Niのうち少なくとも一種を含む磁性金属粒子を、磁性酸化物粒子を添加したシリカゾル中で攪拌し、前記シリカゾルを加水分解させて、前記磁性金属粒子の芯粒子に磁性酸化物粒子を包含するシリカの外殻を形成する磁性シリカ粒子の製造方法。
  8. 前記磁性金属粒子100重量部に対して、前記磁性酸化物粒子は0.5〜8重量部添加されることを特徴とする請求項7に記載の磁性シリカ粒子の製造方法。
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