JP4560784B2 - 金属微粒子およびその製造方法ならびに磁気ビーズ - Google Patents

金属微粒子およびその製造方法ならびに磁気ビーズ Download PDF

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Description

本発明は、磁性微粒子が単独、または樹脂など有機物材料中に分散、または成形体として供される分野に関する。例えば磁気テープや磁気記録ディスク等の磁気記録媒体、または不要電磁波の吸収あるいは特定帯域電磁波の選択機能を有する電波吸収体やフィルター、インダクタやヨーク等の電子デバイス、DNAや蛋白質成分さらに細胞などの抽出・分離の機能を有する磁気ビーズの原材料に用いる金属粒子に関する。
電子機器の小型軽量化さらには高機能化に伴い、電子デバイスを構成する原材料自体も従来を超える特性を創出することが求められている。その目的を達成する手段の一つとして粉体粒子径のナノサイズ化が要求されている。粉体を緻密成形した磁性構造体では、微細な粉体粒子構造とすることで軟質磁気特性や硬質磁気特性が向上することが期待できる。
例えば、磁気記録に採用されている磁気テープでは硬質磁性粉体粒子を基体上に塗布し媒体としているが、その記録密度の一層の向上のためにはその磁性粒子の微細化と磁気特性の向上が同時に求められている。従来はフェライト粉が用いられてきたが、磁化が小さいことに起因し信号強度が低いという問題があった。十分な出力特性を得るためにはFe、Coで代表される金属磁性粒子が適しているが、例えば高記録密度化のために粒子径を1μm以下に微細化すると、金属粒子は酸化に対して活性であるため大気中で酸化反応が激しく進行し、金属の一部または全部が酸化物に変質して磁化が低下してしまう。微細な金属粒子の取り扱いを改善するために、Fe、Coを含む磁性粒子表面をフェライト層で被覆する方法(例えば、特許文献1)、Fe粉表面をグラファイトで被覆する方法(例えば、特許文献2)等が提案されている。
上述の例のように粒径が1μm以下の金属粒子において、金属としての機能を損なわせないためには、粒子を直接大気(酸素)に触れさせないようにするため、粒子表面に被膜を付与することが不可欠である。しかし、特許文献1のように金属酸化物で表面を被覆する方法は、少なからず金属を酸化劣化させている。
一方、金属磁性粉体粒子を成形体構造で使用する目的においては、特に高周波用途においての特性を向上させるためには、粒子間が電気的に絶縁されていることが求められる。このためには個々の粒子表面が電気的不導体、すなわち高抵抗の絶縁物質で被覆されていることが要求される。
これら諸問題を打開する被覆方法として、高抵抗を示す窒化ほう素(BN)による金属粒子の被覆が挙げられる(例えば、非特許文献1)。BNは「るつぼ」に用いられる材料であり、融点が3000℃と高く熱的安定性に優れているとともに、金属との反応性が低い。また絶縁性を有する特徴がある。金属粒子にBN被膜を付与する製法は、(1)金属とBの混合粉末を窒素雰囲気中でアーク放電によって加熱する、あるいは(2)金属とBの混合粉末を水素とアンモニアの混合雰囲気中で加熱する、あるいは(3)硝酸金属塩と尿素とホウ酸の混合物を水素雰囲気中で熱処理する、といった方法がある。
一方、近年、医療診断や生物学的検査において微小な磁性粒子が利用されている。例えば核酸結合性の担体として、超常磁性金属酸化物を用いたものなどがある(特許文献3)。超常磁性金属酸化物とは、外部磁場が印加された時のみ強磁性を示す性質を有する。上記用途において磁性粒子は酸性またはアルカリ性溶液に曝されるため、表面が化学的に安定であることが好ましい。同時に目的物質を結合させる抗体が容易に張り付く表面であることが好ましい。磁性粉体粒子を核酸抽出担体の媒介として使用する目的においては、金属または金属酸化物がケイ素酸化物よりなる被覆または微粒子によって覆う方法が提案されている(例えば、特許文献4)。この方法によれば、金属または金属酸化物の表面は、ケイ素酸化物のみで被覆または微粒子によって覆われている。ケイ素酸化物はケイ素アルコキシドの加水分解法や水ガラス法などにより作製されている。
また、分散性の向上のために比重を軽くする為や、高塩濃度中での安定性の保証のために無機材料からなる微粒子に樹脂で被覆する際、無機材料からなる微粒子は凝集しやすく、単分散させることは困難なため、界面活性剤を用い予め無機材料からなる微粒子を分散させたり、カップリング剤等で表面処理を行うなどし、樹脂被覆する方法が知られている(例えば、特許文献5)。また、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、単軸押出機、2軸押出機等によって分散し金属微粒子に均一に樹脂を被覆する方法が知られている(例えば、特許文献6)。
特開2000−30920号公報(第9〜11頁、図2) 特開平9−143502号公報(第3〜4頁、図5) 特開2001−78761(第4頁) 特開2000−256388号公報(第1、2頁) 特開平9−194208号公報(第1〜6貢、図1) 特開2001−114901号公報(第6頁) 「インターナショナル ジャーナル オブ インオーガニック マテリアルズ 3 2001(International Journal of Inorganic Materials 3 2001)」,2001年,p.597
特許文献2のように金属粒子をグラファイトでコーティングする場合は、コーティングするためには、金属が炭素を溶融する状態を作るために、1600℃〜2800℃という極めて高い温度で熱処理しなければならないため、工業的利用には適していない。
一方、上記BN被膜の製法において、製法(1)及び(2)は金属粒子を原料としているため、特に粒径1μm以下の超微粒子を取り扱う際、急激な酸化反応による発火などの危険がある。また製法(3)では硝酸金属塩を加熱分解するため、有毒ガス(NO)が発生する。また製法(1)のアーク放電を利用する手法は処理量が少なく生産性が低いだけでなく、反応温度が2000℃付近の高温であるため工業的利用には適していない。また製法(2)及び(3)で使用する水素ガスは爆発の危険があるため、工業的に利用するのは好ましくない。これらの製法は生産性が著しく低い。また、従来の技術で得られる被覆された金属粒子は、金属粒子の一部を改質することによって飽和磁化の劣化が生じるなどの問題があった。すなわち、これらの従来技術のよって製造される微粒子を、DNAや蛋白質の抽出などのバイオ用途、磁気記録媒体用途などに直ちに適用することは困難であった。
また、上記磁気ビーズ用の磁性粒子は、超常磁性を発現させるため、その粒径は主に1〜10nmと小さくする必要があった。そのため外部磁場によって磁性粒子に働く外力は極端に小さく、粒子を効率よく集めることができないという問題があった。更に溶液を排出する際に、磁場による吸引力が弱いために一旦集めた磁性粒子が流出してしまうという問題があった。また、金属または金属酸化物がケイ素酸化物よりなる被覆または微粒子によって覆われた磁性粉体粒子は、粒子核が金属の場合は、核酸抽出工程において、金属の溶媒中への溶出または酸化により、磁気特性が低下するという問題があった。また、核酸抽出工程に使用する溶液中への金属の溶出により、緩衝液と錯体を形成してしまい、DNAの抽出を阻害してしまう。さらに、粒子核が金属酸化物の場合には、金属(磁性金属)と比べると、磁気特性が著しく低くなり、核酸抽出の効率が低くなるといった問題があった。
そこで本発明では、これらの問題に鑑み、高い飽和磁化と化学的安定性・性質に優れた金属微粒子を提供することを目的とした。
発明者等は、上記課題を解決すべく、工業的利用に適した生産性の高い方法で、絶縁性等を高くし且つ飽和磁化の劣化を抑制すべく、無機材料被膜が金属粒子表面に被覆された金属微粒子およびその製造方法を鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
本発明の金属微粒子は、その表面が、異なる2以上の無機材料、または無機材料と樹脂で被覆された多層被覆金属微粒子であることを主な特徴とする。また、本発明の金属微粒子の製造方法は、金属の酸化物を含有する粉末と、炭素等を含有する粉末とを混合した粉末を、窒素を含む雰囲気中等で熱処理することにより、金属粒子核に接して一部分または全体を被覆する前記無機材料被覆された金属微粒子を得ること、さらに該金属微粒子に無機材料または樹脂の被覆を設けることを主な特徴とする。以下、本発明について具体的に説明する。
(1) 本発明の金属微粒子は、磁性金属を主成分とする平均10μm以下の粒径を有する磁性金属粒子核が、互いに異なる2種以上の無機材料で多層に被覆されており、前記金属粒子核に接して一部分または全体を被覆する前記無機材料は、六方晶の結晶構造を有する炭素または窒化ほう素で構成され、前記金属粒子核に接して一部分または全体を被覆する無機材料の外側に、ケイ素酸化物、アルミナ、チタニアまたはジルコニアの被覆層を有することを特徴とする。前記磁性金属は少なくともFe、Co、Niの1種を含む磁性金属であることが望ましい。平均粒径が10μmを超えると溶媒中で金属微粒子の分散性が低く、短時間で沈降してしまう。平均粒径は望ましくは0.1μm〜5μmの範囲内とする。平均粒径が0.1μm〜5μmの範囲内では、溶媒中で金属粒子の分散性が極めて高くなる。
前記金属粒子核に接して一部分または全体を被覆する前記無機材料は、結晶格子面が2層以上積層された層状構造体であることが好ましい。
さらに、前記金属粒子核に接して一部分または全体を被覆する無機材料は、膜厚が100nm以下であることが好ましい。
(2) 本発明の金属微粒子は、上記(1)の金属微粒子において、前記金属粒子核は、Feを主成分とし、元素X(Xは次の元素から選択される少なくとも1種:Al,As,Be,Cr,Ga,Ge,Mo,P,Sb,Si,Sn,Ti,V,W,Zn)を1mass%以上且つ50mass%未満含むことを特徴とする。
(3) 本発明の金属微粒子は、上記(1)に記載の金属微粒子において、前記金属粒子核は、FeおよびCoを含み、CoとFeの質量比Co/Feが0.3〜0.9の範囲であることを特徴とする。さらに、前記発明において、FeおよびCoに加えてNiを含み、NiとFeの質量比Ni/Feを0.01〜0.5の範囲としてもよい。
(8)本発明の金属微粒子は、上記金粒子において、前記金属粒子核が、前記無機材料の少なくとも一種に複数内包されたことを特徴とする。前記無機材料の少なくとも一種に複数内包されたとは、金属粒子核に接して一部分または全体を被覆する無機材料に複数内包される場合と、一部分または全体が無機材料によって被覆された金属微粒子が別の無機材料に複数内包される場合を含む趣旨である。
(10) 本発明の金属微粒子は、上記金属微粒子において、前記金属粒子核に接して一部分または全体を被覆する無機材料の外側の被覆層がケイ素酸化物であり、前記ケイ素酸化物被覆は、膜厚が400nm以下であることを特徴とする。
(12) 本発明の金属微粒子は、上記金属微粒子において、前記互いに異なる2種以上の無機材料の外側は、樹脂で被覆されていることを特徴とする。なお、樹脂で被覆された金属微粒子には、複数の金属微粒子からなる集合体が樹脂に包含される場合も含まれる。
(13) 本発明の金属微粒子は、上記(12)に記載の金属微粒子において、前記樹脂の外側は、ケイ素酸化物で被覆されていることを特徴とする。
(15) 本発明の金属微粒子は、上記金属微粒子において、金属粒子核に接して一部分または全体を被覆する無機材料の外側の無機材料は、その表面に−NH基、−OH基、−COOH基の少なくとも一種の官能基を有することを特徴とする。上記官能基を金属微粒子表面へ導入することにより、生体物質への活性度を増加させることができる。
(29) 本発明の金属微粒子は、上記金属微粒子を用いる生体物質抽出用磁気ビーズである。
(30) 本発明の金属微粒子の製造方法は、磁性金属を主成分とする平均10μm以下の粒径を有する磁性金属粒子核が、互いに異なる2種以上の無機材料で多層に被覆された金属微粒子の製造方法であって、ほう素を含有する粉末および炭素を含有する粉末のうち少なくとも一方と、磁性金属の酸化物を含有する粉末とを混合した粉末を、窒素を含む雰囲気中で熱処理することにより、前記磁性金属の金属粒子核が、前記金属粒子核に接する、六方晶の結晶構造を有する窒化ほう素または炭素で被覆された金属微粒子を得たのち、該金属微粒子にさらにケイ素酸化物、アルミナ、チタニアまたはジルコニアの被覆を設けることを特徴とする金属微粒子の製造方法である。
(32) 本発明の金属微粒子の製造方法は、磁性金属を主成分とする平均10μm以下の粒径を有する磁性金属粒子核が、互いに異なる2種以上の無機材料で多層に被覆された金属微粒子の製造方法であって、ほう素を含有する粉末および炭素を含有する粉末のうち少なくとも一方と、磁性金属の酸化物を含有する粉末と、Al,As,Be,Cr,Ga,Ge,Mo,P,Sb,Si,Sn,Ti,V,W,Znのうちの少なくとも1種の元素を含む粉末とを混合した粉末を、窒素を含む雰囲気中で熱処理することにより、前記Al,As,Be,Cr,Ga,Ge,Mo,P,Sb,Si,Sn,Ti,V,W,Znのうち少なくとも1種の元素が添加された前記磁性金属の金属粒子核が、六方晶の結晶構造を有する、窒化ほう素または炭素の被膜で被覆された金属微粒子を得たのち、該金属微粒子にさらにケイ素酸化物、アルミナ、チタニアまたはジルコニアの被覆を設けることを特徴とする金属微粒子の製造方法である。かかる方法により、Al,As,Be,Cr,Ga,Ge,Mo,P,Sb,Si,Sn,Ti,V,W,Znのうちの少なくとも1種の元素を磁性金属に添加することができる。
(37) 本発明の金属微粒子の製造方法は、上記金属微粒子の製造方法であって、前記窒化ほう素または炭素の被膜で被覆された金属微粒子に設けられた被覆がケイ素酸化物であり、前記ケイ素酸化物の被覆は、ケイ素アルコキシドを加水分解することにより生成することを特徴とする。
(38) 本発明の金属微粒子の製造方法は、上記(37)に記載の金属微粒子の製造方法であって、前記ケイ素酸化物を主体とする被覆は、アルコール溶媒中において、ケイ素アルコキシド、水、触媒および電解質を添加することにより生成することを特徴とする。これらの試薬の添加量および反応時間を適宜調整することによって、ケイ素酸化物の厚さを制御することができる。
(39) 本発明の金属微粒子の製造方法は、上記金属微粒子の製造方法であって、前記製造法で得られた金属微粒子に、アミノ基を含有するシランカップリング剤により−NH官能基を導入することを特徴とする。
本発明によれば、高い化学安定性と高い飽和磁化を兼ね備えた金属微粒子を提供することができる。すなわち、本発明に係る磁性金属を主成分とする平均10μm以下の粒径を有する金属粒子核が、互いに異なる2種以上の無機材料、または1種類以上の無機材料と樹脂で多層に被覆されて成る金属微粒子により、飽和磁化の劣化が抑制され且つ分散性の優れた磁性微粒子を得ることができる。また、本発明の磁性微粒子は、高い生産性をもって製造することができる。
本発明の金属微粒子は、金属から成る核とそれを被覆する層で構成される。粒子核径は平均が10μm以下であり、被覆層は互いに異なる2種以上の無機材料、または1種以上の無機材料と樹脂を有する。前記無機材料、および樹脂は多層構造無機材料として被膜を構成する。本発明の対象とする産業分野においては、粒子径は特にこの範囲に限定されるものではないが、良好な軟磁気特性を実現するために、その粒子径は前記範囲とする。下限は特に規定されるものではないが、Fe、Co、Niそれぞれの単体金属粒子が超常磁性となる臨界粒子径を含む10nm以上とする。
[金属核]
金属核はFe、Co、Niの少なくとも1種以上の遷移金属磁性元素から成ることが望ましい。Fe、Co、Niいずれかの単体またはその合金、例えばFe−Co系、Fe−Ni系、さらには他の遷移金属元素であるCr、Ti、Nb、Si、Zrなどの遷移金属元素との2元、3元または4元系等の各種合金で構成されていても良い。
特に、Fe系合金の場合、添加する遷移金属元素(以下、元素Xとする。)は、Feと合金化した場合に1000℃以上の高温でもα相が安定となる元素から選ばれるのが好ましく、Al,As,Be,Cr,Ga,Ge,Mo,P,Sb,Si,Sn,Ti,V,W,Znの少なくとも一つを含むことが好ましい。金属Fe粒子が微細化すると面心立方構造を有する常磁性のγ相が析出し、磁気特性が低下するという問題があるため、平均粒径が1μm以下の場合は、前記γ相の析出を抑制するため、元素Xを含む化合物粉末は、最終的に金属微粒子とした時に元素Xが1〜50mass%の範囲で含まれることがγ相の抑制に好適である。かかる元素を添加した金属微粒子は、ほう素を含有する粉末および炭素を含有する粉末のうち少なくと一方と、磁性金属の酸化物を含有する粉末と、Al,As,Be,Cr,Ga,Ge,Mo,P,Sb,Si,Sn,Ti,V,W,Znのうちの少なくとも1種の元素を含む粉末とを混合した粉末を、窒素を含む雰囲気中で熱処理することにより得られる。元素Xを添加することによりα−Fe相の微粒子が生成し、X線回折パターンにおいて面心立方構造を有するγ−Feの(111)回折ピークと体心立方構造を有するα−Feの(110)回折ピークの強度比I(111)/I(110)が0.3以下となる。その結果、1μm以下、さらには100nm以下の平均粒径の金属微粒子であっても高い飽和磁化が得られる。このことは、金属粒子核に無機材料を多層に被覆する本発明において、特に金属粒子核が小さい場合に、粒子全体における高飽和磁化に寄与するという点で、これらの構成が好適に用いられることを意味する。
また、Feを主成分としてCoおよびNiのうちの少なくとも一種以上を含む組成の金属粒子とすることもできる。特に、前記金属粒子の粒径が、例えば1〜1000nmの範囲内の場合に好適に用いることができる。また、高飽和磁化の観点から被覆層の膜厚は1〜40nmの範囲内とすることが好ましい。Coの含有量は、最終的に鉄系ナノサイズ粒子とした時に、CoがFeに対する質量比で0.3〜0.9の範囲内にあることが好ましい。この2元系組成においては、FeにCoを添加して合金化させることにより、α相から高温相であるγ相への転移温度が上昇してα相が安定化するため、γ−Fe相の析出を抑制することができる。CoのFeに対する質量比が0.3未満の場合はCoの添加効果が期待できず、0.9を越える場合は飽和磁化が120Am/kg未満となる。上記好適範囲のCoを含むことによりγ相の析出を抑制でき、X線回折パターンにおいて面心立方晶構造の(111)回折ピーク(γ相に相当する)と体心立方晶構造の(110)回折ピーク(α相に相当する)の強度比I(111)/I(110)が0.2以下となり、高い飽和磁化が得られる。また、Fe−Co−Niの3元系組成においても上記と同様の効果が期待されるが、耐食性や軟磁気特性に優れるという特徴があり、高い飽和磁化と低い磁歪を有する材料が得られる。この場合、NiがFeに対する質量比で0.01〜0.5の範囲内であることが好ましい。Niの添加量が質量比で0.01未満では磁歪が大きく、Niの添加量が質量比で0.5超では飽和磁化が100Am/kg以下となる。すなわちFeを主成分としてCoまたは、CoおよびNiを含む組成の金属粒子核は、高い飽和磁化を有するため、被覆も含めた粒子全体の高飽和磁化維持の観点から、金属粒子核に無機材料を多層に被覆する本発明に好適に用いられる。特に、これらγ−Fe相を抑制した金属核は、互いに異なる2種以上の無機材料等にて多層に被覆される構成のうち特に粒径が1μm以下と小さい場合に有効である。一方、FeにNiを添加してFeとNiで合金化することにより、軟磁気特性が改善され低保磁力・高透磁率が発現する。軟磁気特性の改善は、磁化が飽和しやすいことを意味する。すなわち、軟磁気特性が改善された粒子では高透磁率であるが故に、特に0.3T以下の低磁界を印加した場合でも高磁化を示し、磁界に対する粒子の反応性が良くなる。すなわち、この場合は、飽和磁化の絶対値ではなく、主として磁気応答性を向上させることで、例えば生体物質抽出用磁気ビーズとして用いた場合抽出能の向上を図ることができる。また、FeとNiを合金化することにより、耐食性の向上にも寄与する。さらに熱力学的考察によればNi酸化物はFe酸化物よりも容易に還元されるため、製造上、より低い温度での熱処理を可能にする。NiのFeに対する質量比は0.01〜0.1または0.4〜15のいずれかの範囲であることが好ましい。Niを含有することで低保磁力・高透磁率が発現して軟磁気特性が改善されるが、NiのFeに対する質量比が該範囲を外れると飽和磁化が40Am/kg未満まで低下し、フェライトで代表される酸化物磁性材料との優位差が消失してしまうので好ましくない。
[金属粒子核に接する無機材料被覆]
金属粒子の被覆層は2種以上の無機材料にて多層に被覆されて成る。金属粒子核に接する無機材料(もしくは無機質材料)は一部分または全体を被覆し、炭素または窒化ほう素を主体として構成されることが好ましい。炭素および窒化ほう素は潤滑性に優れるため、分散性の高い金属粒子を得ることができる。なお、ここで炭素単体は無機材料に含まれるものとする。炭素はグラファイト構造に特徴的な6員環構造を有し、その員環構造が層状に積層した構造である。窒化ほう素も同様に員環構造で層状構造が積層した形態を有する。これら無機材料は金属核全体を一様に覆うことが好ましいが、金属核が大気中に暴露された場合の酸化を防ぐ目的を達成するのであれば、一部分が被覆された状態であっても良い。
員環構造の面が金属核を被覆することで粒子は層状構造に覆われた。被覆が炭素の場合にはグラファイト構造であればその実現が容易である。また、窒化ほう素の場合には六方晶系であればその構造となる。このような層状構造は、ダングリングボンドなどの末端枝が少なくなることから。化学的にも安定となり好ましい。
前記、金属粒子核に接して一部分または全体を被覆する炭素または窒化ほう素等の無機材料(もしくは無機質材料)は、膜厚が100nm以下であることが好ましい。膜厚が100nmを超えると非磁性相が多くなり、飽和磁化が低下する。より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは40nm以下である。
前記無機材料は、耐食性確保の観点から、結晶格子面が2層以上積層された層状構造体であることが好ましい。結晶格子面が2層未満であると欠陥の存在が直接耐食性の低下につながる。さらに膜厚は1nm以上であることが好ましい。
また、当該金属粒子核に接して一部分または全体を被覆する無機質材料は特に上記炭素または窒化ほう素に限定されるものではない。例えば、Al、As、B、Ce、Cl、Co、Cr、Ga、Hf、In、Mn、Nb、Ti、V、Zr、Sc、Si、Y、Taから選ばれた一種以上の金属元素(M元素)の酸化物もしくは窒化物であってもよい。例えば酸化に要する活性化エネルギーが小さな典型元素として、より好ましくはSi、V、Ti、Al、Nb、Zr、Crの少なくとも1種の元素を主体として構成された炭化物や窒化物あるいは酸化物に係る被覆層であっても構わない。金属粒子核に接して一部分または全体を前記Al等の元素を主体として構成された酸化物等で被覆することによって、その外側に形成する無機材料被覆、樹脂被覆とあいまって、絶縁性向上にも寄与しうる。上記の金属のM元素は、酸化物の標準生成自由エネルギーが数1という関係を満足するので、Fe,CoおよびNiを含む酸化物を還元することができる。
ここで、ΔG(Fe,Co,Ni)−OはFe、CoおよびNiが酸素と反応し、その酸化物を形成する反応の標準生成自由エネルギーである。また、ΔGM−Oは金属のM元素が酸素と反応し、酸化物を形成する反応の標準生成自由エネルギーであり、M元素はFe,CoおよびNiより酸化されやすい元素と定義される。
例えば、Feの酸化物としてFeを考えた場合、ΔGFe2O3=−740kJ/molよりも小さいΔGM−Oを有する酸化物は、Al、As、B、CeO、Ce、Co、Cr、Ga、HfO、In、Mn、Mn、Nb、TiO、Ti、Ti、V、V、V、ZrO、Sc、Y、Ta、あるいは各種の希土類元素の酸化物等が挙げられる。
[金属粒子核と金属粒子核に接する無機材料被覆の形成]
本発明の金属核とそれに接する第一の被覆層は、Fe、Co、Niなどの酸化物微粒子を炭素またはほう素と接触させた状態で、窒素ガス、または窒素ガスと不活性ガスとの混合雰囲気中で熱処理を施すことで合成できる。
金属核が無機材料によって被覆された金属微粒子の形態について、該被覆層が炭素である場合について詳述する。かかる金属微粒子は、Fe、Co、Ni等の金属の酸化物を含有する粉末と炭素を含有する粉末を混合した粉末を、窒素を含む雰囲気中で熱処理することにより、炭素で被覆された金属粒子を作製する金属微粒子の製造方法によって得ることができる。この製造方法により、酸化物が還元されると共にグラファイトを主体とする炭素が金属粒子の表面に形成されるのである。出発原料の構成元素である遷移金属、なかでもFe、Co、Niは、グラファイト層形成の触媒の役割を果たしていると考えられる。したがって、前記方法は、金属微粒子の生成と炭素の被覆を別々の工程で行なう場合に比べて、工程を著しく簡略化するとともに、工程中での酸化を防止することができる。特に、非常に活性で酸化されやすい1μm以下の金属微粒子を取り扱う場合に特に有効である。さらに、前記金属微粒子が磁性金属の場合、酸化による磁気特性の劣化が小さいため、例えば、金属核に無機材料を多層に被覆する場合、磁気ビーズ用途等においても十分な磁化を有し、これらの用途に最適な金属微粒子を提供することができる。
炭素供給源となる原料の粉末としては、グラファイトやカーボンブラック、天然黒鉛等の炭素粉が適しているが、炭素を含む化合物であってもよい。すなわち石炭や活性炭、コークスや脂肪酸、ポリビニルアルコールなどの高分子、B−C化合物、金属を含む炭化物であってもよい。従って、特許請求の範囲や課題を解決するための手段において、“炭素粉末”は、炭素粉や、炭素を含む化合物のいずれも包含する用語として用いている。ただし、被膜の炭素純度を高くするためには、炭素粉を用いるとよい。
金属酸化物の粉末(a粉末)の平均粒径は0.001〜1μmが好ましい。平均粒径0.001μm未満の粉末は作製困難であり実用的でない。平均粒径が1μmを越えると粒の中心部まで酸素を十分に還元することができず、均一な金属粒子が得ることは容易ではない。また炭素粉末(b粉末)の平均粒径は0.01〜100μmが好ましく、さらには0.1〜50μmが好ましい。0.1μm未満の平均粒径の炭素粉末は高価であり実用的でない。また、平均粒径が100μmを越えると混合粉末中でのb粉末の分散に偏りが生じ、最終的に金属微粒子を均一に被覆することができなくなる。a粉末とb粉末との混合比は、b粉末が重量比で25〜95%の範囲となることが好ましい。b粉末の重量比が25%未満であると炭素が不足することにより還元反応が十分に進行しない。また粉末bの配合比が95%を越えると還元される金属の体積率が極端に小さくなり実用的ではない。平均粒径を0.001〜1μm、より望ましくは0.01μm〜0.1μmの範囲内とすることは、磁気記録媒体、磁気シールド、電子デバイス等に本発明の金属微粒子を適用する上で望ましい。
a粉末とb粉末の混合にはV型混合機や、粉砕機(例えば、ライカイ機のように粉砕と混合を兼ねる装置)や、乳鉢などを使用する。混合粉末はアルミナ、窒化ほう素、黒鉛等の耐熱ルツボに遷移金属酸化物および炭素化合物の所定量を充填して所定の条件で加熱処理される。熱処理時の雰囲気は不活性ガスであれば限定しないが、窒素ガスや、窒素を主要成分として含んだアルゴンガス等の不活性ガスとの混合雰囲気などを用いることができる。熱処理温度は600℃〜1600℃が好ましく、さらに好ましくは900℃〜1400℃の範囲が好ましい。900℃未満では反応が完了するまでの所要時間が長くなる。また600℃未満では反応自体が進行しない。また非酸素雰囲気中で1400℃を越えると炉部材として使用している酸化物セラミックスの分解により酸素が放出されることが懸念されると同時に例えばアルミナ製ルツボが短期間で破損する場合がある。1600℃を越えるとルツボのみならず設備自体に耐熱部材の使用が不可欠になり、製造コスト高となり工業化に適しない。
次に、前記第一の被覆層がAl、Ti等の少なくとも1種の元素を主体として構成される場合について説明する。磁性金属の酸化物を含有する粉末と、Si、V、Ti、Al、Nb、Zr、Crの少なくとも1種の元素を含む粉末とを混合した粉末を、例えばAr、Heなどの不活性ガスやH、N、CO、NHの単独もしくは1種以上の混合ガスなどを使用して、非酸化性雰囲気中で熱処理する。
酸化物微粒子粉末の粒径は、目標とする金属微粒子の粒径に応じて選択することができるが、実用的には1〜1000nmの範囲が好適である。Feを主成分としてCoおよびNiのうちの少なくとも一種以上を含む組成の金属粒子を得る場合は、Fe,CoおよびNiを含む酸化物粉末としては、Feの酸化物とCoもしくはNiの酸化物粉末との混合粉末であっても良いし、FeとCoと酸素を含んだ化合物粉末或いはFeとNiと酸素を含んだ化合物粉末であっても良い。あるいは上記酸化物粉末とFeとCoと酸素を含んだ粉末の混合粉末であっても良い。Feの酸化物粉末としては、例えばFe、Fe、FeOが挙げられ、Coの酸化物としては、例えばCo、Coが挙げられ、Niの酸化物としては、例えばNiOが挙げられる。FeとCoと酸素を含んだ化合物としては、例えばCoFeが挙げられ、FeとNiと酸素を含んだ化合物としては例えばNiFeなどが挙げられる。
なお、M元素を含む粉末は、M元素単体であっても構わないが、炭化物(M−C)、ほう化物(M−B)、窒化物(M−N)であっても構わない。M元素を含有する金属粉末の粒径は1〜1000nmの範囲内にあることが好ましく、還元反応をさらに効率的に行なうためには1nm〜0.1mmの範囲内がより好ましい。なお、BやAsは半金属的な元素であるが、本明細書では金属元素と呼ぶことにする。
Fe、CoおよびNiを含む酸化物粉末と、M元素(Mは、Al、As、B、Ce、Cl、Co、Cr、Ga、Hf、In、Mn、Nb、Ti、V、Zr、Sc、Si、Y、Taから選ばれる一種以上)を含む粉末との混合比は、Fe、CoおよびNiの酸化物を還元するに足る化学量論比の近傍とすることが好ましい。より好ましくはM元素を含む粉末が上記化学量論比よりも過剰となることが好ましい。M元素を含む粉末が不足すると、熱処理中にFe、CoおよびNiを含む酸化物が十分に還元されず、上記M元素の粒子が焼結してしまい、最終的にバルク化してしまうので不都合である。
熱処理は管状芯を有する固定静止型電気炉、ロータリーキルンなどのように炉心管が熱処理時に動的に動く機能を有する電気炉、流動層などのように粉体自体が飛散された状態で熱を印加される機構を有する装置、微粒子を重力を利用して落下させる途上で高周波プラズマなど高エネルギーを印加させる手段を有する装置、などにより達成できる。いずれも酸化物原料が還元されることにより金属核ならびに前記第一の被覆層が同時に形成される。
このことにより、金属粒子核に接して一部分または全体を被覆する前記第一の被覆層の形成においても酸化等の金属核の劣化が抑制される。さらに、耐食性や耐酸化性に乏しい金属を核としても、前記第一の被覆層を有することにより、耐食性、耐酸化性が極めて高い金属微粒子を得ることができる。この金属微粒子を用いることで、第一の被覆層の表面へケイ素酸化物を主体とする被覆を形成させる工程中における、金属の劣化を防ぐ効果が極めて高くなる。さらには、ケイ素酸化物を主体とする被覆を施した粒子は、核酸抽出媒介として使用する際に、金属を粒子核としていても、磁気特性、耐食性や耐酸化性が極めて高い特徴を有する。
[金属核に接する無機材料被覆の外側の無機材料被覆]
金属核を被覆する多層構造無機質材料の最外殻(若しくは最外層とも言う)は、粒子間の電気的絶縁を保証するため、また、核酸抽出担体としての特性を持たせるためにケイ素酸化物を主体とする被覆層である。ケイ素酸化物以外の絶縁性無機質材料の形成も可能であるが、工業的に大量かつ安価に製造できる観点からケイ素酸化物が最も実用的である。金属磁性粉体粒子の核となる金属は酸化等しにくい不活性な無機材料で覆われていることが望ましいが、生体物質抽出の媒介として使用する場合には、粒子最表面はDNA等の生体物質に対して活性である必要があり、かかる観点からもケイ素酸化物が好ましい。このケイ素酸化物は、例えばケイ素アルコキシドの加水分解反応で得られる。ケイ素アルコキシドの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。また、3−トリエトキシシリルーンー(1,3−ジメチルーブチリデン)プロピルアミン、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニルー3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルー3−アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラプロポキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等でも良い。このケイ素酸化物は、例えばテトラエトキシシランの加水分解反応で得られ、シリカを析出させるテトラエトキシシランの加水分解反応を制御することで、再現性をもって製造することができる。また、テトラエトキシシランはケイ素酸化物源と成り得るアルコキシシランの中でも、生成した被膜の絶縁性が高いという作用効果に優れ、コストも比較的安い。前記ケイ素アルコキシドは単独で使用してもよいし、二種類以上を用いてもよい。例えば、アミノプロピルトリメトキシシラン、さらにはテトラエトキシシランを用いてケイ素酸化物を主体とする被覆層を設けて、耐食性の向上を図ることもできる。
なお、当該多層構造無機質材料の最外殻は特に上記ケイ素酸化物に限定される物ではない。例えば、電気的絶縁性を保証する無機材料として、アルミナ、チタニア、ジルコニアなどの酸化物であっても構わない。これらの被覆層は金属アルコキシドの加水分解法およびアルコキシド誘導物質を作製することにより達成される。
テトラエトキシシランを採用する場合には、金属核が第一の無機物層で被覆層でされた金属微粒子を、アルコール溶液中に分散させる。当該アルコール溶液としては、例えばエタノール、メタノール、イソプロパノールなどの低級アルコールが挙げられる。テトラエトキシシランの加水分解を行わせるためには、反応を促進させるために触媒としてアンモニア水を添加する。アンモニア水はテトラエトキシシランを理論上100%加水分解可能な量以上の水を含む。具体的にはテトラエトキシシラン1molに対して水2mol以上である。アルコール溶液の使用割合は、テトラエトキシシラン100重量部に対して100〜10000重量部が好ましい。さらに、テトラエトキシシランの使用割合は、金属微粒子100重量部に対してテトラエトキシシランが5〜80重量部が好ましい。さらに好ましくはテトラエトキシシランが10〜60重量部である。テトラエトキシシランが5重量部以下であると、金属微粒子の表面がケイ素酸化物被覆により均一に被覆することが困難となる。一方、テトラエトキシシランの使用割合が80重量部を超える場合は、金属微粒子の被覆を形成するケイ素酸化物の他に、ケイ素酸化物単体の微粒子が形成されてしまう。テトラエトキシシランの加水分解に用いられる水の使用割合は、テトラエトキシシラン100重量部に対して、好ましくは1〜1000重量部である。この割合が1重量部未満の場合には、テトラエトキシシランの加水分解の進行が遅くなり、作製効率が悪くなる。一方、1000重量部を越えると、ケイ素酸化物を主体として構成されるケイ素酸化物の単離球が形成されてしまうため、好ましくない。触媒として用いられるアンモニア水の使用割合は、例えば、アンモニア水の濃度が28%の場合には、テトラエトキシシラン100重量部に対して、10〜100重量部が好ましい。10重量部よりも少ない場合には、触媒としての作用が発揮されないため、好ましくない。また、100重量部よりも多い場合には、ケイ素酸化物を主体として構成されるケイ素酸化物の単離球が形成されてしまうため、好ましくない。上記手法において、溶媒中にはアンモニア水およびケイ素アルコキシドが含まれるため、pHが約11と弱アルカリ性である。そのため、金属粒子が腐食することが懸念されるが、本発明の金属核ならびに無機材料が同時に形成した金属微粒子を採用することにより、金属を粒子核としているにも関わらず、金属核の腐食を防ぐことができる。
前記金属微粒子に均一にケイ素酸化物をコーティングするためには、モーター攪拌機、V型混合機、ボールミル混合機やディゾルバー攪拌機または超音波装置などを用いて、溶液と金属微粒子を十分混合する。混合時間はテトラエトキシシランの加水分解反応が十分に進行する時間以上必要である。生成する残留水和物を除去し、被覆膜の強度を増加させるためには熱処理を行うことが望ましい。
ケイ素酸化物被覆層は非晶質結晶構造で、前記多層の無機質材料被覆層の厚みが平均で500nm以下となる範囲で構成される。十分な磁力を得るためには、金属微粒子の飽和磁化は、前記磁性金属の飽和磁化の10%以上かつ100%未満であることが望ましいが、500nmを超えると飽和磁化の低下が大きくなり、それが困難となる。より好ましくは100nm以下である。当該発明の磁性微粒子は、磁気ビーズと称される生体物質抽出の媒体として供される場合には、被覆厚はケイ素酸化物の化学的性質が発現される、例えば電気二重層の観点で規定される表面電位(ζ電位)がケイ素酸化物単体と同等の数値を示す、5nm以上が最小の膜厚となる。
ここで、膜の厚さとは、被覆された粒子の表面から、被覆表面まで間の距離に相当する。膜の厚さは、例えば透過型電子顕微鏡により、電子顕微鏡観察を行い測定する。試料粒子を透過型電子顕微鏡で観察すると、金属微粒子と炭素もしくは窒化ほう素、およびケイ素酸化物膜ではコントラストが生じ、炭素もしくは窒化ほう素、およびケイ素酸化物膜が金属微粒子の表面に形成されていることがわかる。本発明において、粒子10個以上の粒子について各々の粒子の膜厚を測定しその平均値を膜厚とした。各々の粒子の膜厚は、その粒子の膜の厚さを4箇所以上計測し、平均値をその粒子の膜厚とした。樹脂の膜厚も同様にして測定することができる。さらに、高分解能電子顕微鏡観察を行うことにより、前記ケイ素酸化物膜においては周期配列した格子は観察されず、アモルファス状の非晶質構造であることを確認することができる。金属微粒子表面に上記のケイ素酸化物膜が形成していることは、例えばエネルギー分散型蛍光X線分析(EDX分析)などの元素分析、または赤外分光光度計で測定を行うことで確認できる。金属微粒子を透過型電子顕微鏡観察し、上述したように金属微粒子表面の膜に対して、EDX分析を行うと、膜がケイ素酸化物によって構成されていることを確認することができる。赤外分光光度計で金属微粒子の吸収スペクトルを測定すると、波数1250〜1020cm−1の範囲でケイ素酸化物に起因する吸収ピークを観察することができ、このことによりケイ素酸化物膜の形成を確認することができる。
平均粒径は、例えば、金属超微粒子の試料粉末を溶媒中に分散させて、レーザー光線を照射させ回折を利用して粒径分布を測定する方法により求めることができる。本発明においては、平均粒径には、該測定方法におけるメジアン径d50値を用いた。あるいは、粒径が100nm以下と小さい場合、金属微粒子内の金属粒子核の粒径を測定する場合は、試料を透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡で観察して平均粒径を測定する。試料の電子顕微鏡写真を撮影し、写真内で任意の面積内に観察された金属粒子の粒径を測定し、その平均値を粒径として求める。後述の方法では、測定粒子の数が少なくとも50個以上になるようにして、平均値を得ることが望ましい。測定面積内の粒子数が少ない場合には、電子顕微鏡の倍率を変えるか若しくは視野を移動することにより、他の粒子も測定して合計の測定粒子数を50個以上にする。さらに、個々の微粒子の粒径(直径)とは、例えば被覆層を有する微粒子の外径に相当するが、断面が円形でない場合には最大長さと最小長さの平均値をその微粒子の粒径と見なす。
ケイ素酸化物膜の厚さは、テトラエトキシシランの加水分解反応を利用して形成する場合には、テトラエトキシシランの調合量に加えて、水、触媒の量等にも依存する。しかしながら、これらの量が過剰であると、ケイ素酸化物の膜厚は大きくなるが、膜を形成しない過剰なシリカが単独で形成されてしまう。ケイ素酸化物の膜厚は電解質を添加することにより増加させることができる。ここで、電解質の具体例としては、KCl、NaCl、LiClおよびNaOHなどが挙げられる。また、電解質の添加量を調整することによって、ケイ素酸化物の厚さを5nm〜400nmの範囲で制御することができる。ケイ素酸化物の厚さが400nmを越えると飽和磁化の低下が大きくなる。さらに好ましくは、5nm〜100nmである。
多層構造無機質材料の外側は、前記ケイ素酸化物以外にも金を主体とする元素から成る被覆層であっても良い。また、ケイ素酸化物の被覆層の上にさらに、金を被覆しても良い。被覆層として形成する手段としては、コロイド状の金微粒子を被覆層に固着させるだけでも良いが、固着後に熱処理を施すことで溶解させ被覆層とすることも可能である。また、第一の被覆層を形成させたのち、対象とする金属磁性微粒子の表面に予めNiなどのめっき層を施しAu層を同様にめっき法で形成することも可能である。
[樹脂被覆]
多層構造無機質材料の外側や無機材料間に樹脂層を設けてもよい。また、多層の被覆のうち、金属粒子核に接して一部分または全体を被覆する無機材料の外側の無機材料に換えて樹脂層を設ける構成でもよい。樹脂被覆層を設けることによって、高塩濃度のカオトロピック溶液中においても飽和磁化の劣化が抑制される。また、比重を調整し、分散性を向上させることも可能である。樹脂層は熱可塑性樹脂を主体とする被膜層であることが好ましい。熱可塑性樹脂は、熱を加えると溶解流動し、冷却すると固化するため、金属微粒子を被覆することができる。また、樹脂が複数の金属微粒子を内包した構成とすることもできる。本発明では、樹脂層を設ける前に、金属粒子核には前記の無機材料被覆が設けてある。該無機材料被覆は金属粒子核が酸化されることを抑制するため、金属粒子核に無機材料被覆を設けた前期構成は、加熱を必要とする熱可塑性樹脂を被覆する場合に極めて好適な構成ということができる。熱可塑性樹脂は、これを特に限定するものではないが、例えばポリスチレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミドなどがある。このうちポリアミドとしては例えばナイロン6、ナイロン12、ナイロン66などのナイロン類が挙げられる。また、本発明の熱可塑性樹脂は互いに異なる2種以上の樹脂の混合物であっても良い。また、本発明の分散媒体は、熱可塑性樹脂に対して、実質的に相溶性を有さないことが好ましい。分散媒体は、例えばポリエチレングリコールなどのポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコール等を用いることができ、互いに異なる2種以上の樹脂の混合物であっても良い。また、金属微粒子の分散は、用いる熱可塑性樹脂の融点以上の温度に加熱して行なうが、融点より10〜150℃高い温度に加熱して行なうことが好ましい。加熱温度が高すぎると樹脂の分解や金属微粒子の酸化が起こるため好ましくない。一方、加熱温度が低すぎると均一な被覆が困難となる。分散方法は、これを特に限定するものではないが、例えばニーダー等の混練機を用いることができる。融点よりも低い温度に冷却した後は、例えば磁気分離などによって樹脂を設けた金属微粒子を分離することができる。
樹脂被覆微粒子においては、前記樹脂被膜は、析出重合により形成することもできる。前記樹脂被膜の形成には、原料モノマーとして、単官能ビニル系モノマーを用いることができる。この単官能ビニル系モノマーには、多官能ビニル系モノマーを実質上架橋が起こらない範囲、例えば全モノマーに対して0.5モル%未満の量で加えてなるモノマー混合物であってもよい。この樹脂被膜としては、特にポリスチレン樹脂被膜が好適である。また、金属微粒子が樹脂で被覆された構成としては、複数の金属微粒子が樹脂被覆されて集合体をなしたものでもよい。かかる構成により、2次粒子径を制御することができる。また、樹脂被覆した外側に上述のケイ素酸化物を主体とした被覆を設けることもできる。さらに、樹脂は金属粒子核に接して一部分または全体を被覆する前記無機材料と外側の無機材料の間に中間層として設けてもよい。すなわち、金属粒子核に接して一部分または全体を被覆する前記無機材料として、炭素または窒化ほう素を主体とした被覆層もしくはSi、V、Ti、Al、Nb、Zr、Crの少なくとも1種の元素を主体とした被覆層を設け、その外側に前記樹脂層を設け、さらにその外側にケイ素酸化物を主体とした被覆を設ける構成とすることができる。これら樹脂被覆を設ける構成により、2次粒子として粒径を調整したり、比重の調整をすることができる。
高飽和磁化を維持する観点からは、樹脂で構成される層の膜厚は平均で0.01〜5μmであることが好ましい。樹脂の膜厚が、大きくなりすぎると、飽和磁化が低下するほか、金属微粒子全体の粒径が大きくなりすぎるために比表面積が減少し、生体物質抽出用媒体として用いる場合に、その抽出能が低下する。また、樹脂の膜厚が小さくなりすぎると高塩濃度のカオトロピック溶液中において飽和磁化の劣化を抑制することが困難になる。樹脂の膜厚は、より好ましくは、0.05〜3μm、さらに好ましくは0.1〜0.4μmである。また、樹脂の割合を多くすることによって、飽和磁化は低下するものの、上述のように比重の調整を図ることができる。この場合、金属微粒子全体に対する樹脂の重量比率は90%以下であることが好ましい。磁気分離等に必要な十分な磁力を得るためには、金属微粒子の飽和磁化は、前記金属核の飽和磁化の10%以上かつ100%未満であることが望ましいが、重量比率が90%を超えると非磁性相が多くなり飽和磁化が低下し、それが困難となる。また、磁気ビーズと称される生物物質抽出の媒体として使用される場合には、分散性の観点からは樹脂の重量比率は20%以上であることが好ましい。比重が大きくなると沈降速度が速くなり分散性が低下するため比重は6g/cm以下であることが望ましいが、体積比率が20%を下回るとそれが困難となる。また、無機材料で被覆された金属粒子核が、樹脂に複数内包されている場合、金属微粒子核は5μm以下であることが好ましい。金属微粒子核の平均粒径が5μmを超えると金属微粒子全体が大きくなり、比表面積が低下してしまう。
本発明では、最外殻がケイ素酸化物膜、金または樹脂で被覆されていることが望ましいが、必ずしも全ての粒子が被覆されていなくてもよい。また、個々の微粒子は表面が全て当該膜で完全に被覆されていることが望ましいが、必ずしも表面が完全に被覆されている粒子で構成される必要は無い。ただし、粒子の被覆率が90%以上であることが好ましい。ここで、被覆率とは、粒子N個のうち、粒子表面の50%以上がケイ素酸化物により被覆された粒子の数をnとした場合の100×n/Nのことを差す。被覆率は例えば透過型電子顕微鏡で多層被覆金属微粒子をN個観察し、ケイ素酸化物被覆が粒子表面の50%以上を被覆している粒子の数nを求めて、得ることができる。ケイ素酸化物により被覆されている粒子が少ない場合には、粒子の耐酸化性や耐食性が、被覆により改善される効果が減少してしまう。そのためより好ましくは、ケイ素酸化物による被覆率が95%以上であることが望ましい。互いに異なる2種以上の無機材料、または1種以上の無機材料と樹脂で多層に被覆されている本発明の金属微粒子は、温度120℃、湿度100%で12時間の条件の耐食性試験における減磁率が10%以下と良好な耐食性を示し、磁気ビーズとして安定な特性を発揮する。
[表面修飾]
ケイ素酸化物被覆、金被膜および樹脂被膜の表面にはカップリング処理により、−NH基等の官能基を設けることができる。カップリング処理には官能基を含むカップリング剤を用いることができるが、好ましくはシラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤又はアルミニウム系カップリング剤であり、特にシラン系カップリング剤が好ましい。シラン系カップリング剤は具体的には、γ−アミノプロピルトリアルコキシシラン,N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリアルコキシシラン,N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジアルコキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリアルコキシシラン。γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、または、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。ケイ素酸化物被覆、金被膜および樹脂被膜の表面に−NH基、−OH基、−COOH基などの官能基を設けることにより、生体物質抽出能を向上させることができる。
本発明に係る金属微粒子、特に無機材料の外側をケイ素酸化物および金で被覆した金属微粒子、さらにはその表面に−NH基、−OH基の少なくとも一種を設けた金属微粒子は、安定且つ、飽和磁化も高いことから、いわゆる磁気ビーズとして、生体物質抽出用に好適に用いることができる。
ケイ素酸化物被膜、金被膜および樹脂被膜の表面に官能基を設けた表面に、グルタルアルデヒド法で抗体を固定化することが出来る。本発明に係る金属微粒子、特に無機材料の外側をケイ素酸化物もしくは樹脂で被覆した金属微粒子、さらにはその表面に官能基を少なくとも一種を設けた金属微粒子、さらにはその表面に抗体を固定した金属微粒子は、生物物質、特に特定の細胞及びタンパク質と特異的吸着することから、いわゆる磁気ビーズとして生物物質抽出用、特にタンパク質および細胞抽出用に好適に用いることが出来る。
以下、本発明に係る実施例を詳細に説明する。ただし、これら実施例によって必ずしも本発明が限定されるわけではない。
本発明に用いられる無機材料被覆金属微粒子の例およびその比較例を以下に示す。
参考例1)
平均粒径0.03μmのα−Fe粉73gと平均粒径20μmのGe粉2.7gおよび平均粒径0.02μmのカーボンブラック粉24.3gをそれぞれ秤量し、ボールミル混合機にて16時間混合した。上記配合では、質量比でFe:Ge=95:5となる。得られた混合粉をアルミナボートに適量充填し、窒素ガス中にて1000℃×2時間の熱処理を行なった。室温まで冷却した後にアルミナボートを取り出し、熱処理された試料粉末を回収した。
上記試料粉末のX線回折パターンを図1に示す。リガク製解析ソフト「Jade,ver.5」にて解析すると、図1の回折パターンは面心立方構造のγ−Fe(111)と体心立方構造のα−Fe(110)に同定された。図1のグラフの横軸は回折の2θ(°)に相当し、縦軸はIntensity即ち回折の強度I(但し、単位(a.u.)は相対値)に相当する。各回折ピーク強度の比(I(111)/I(110))を表1に示す。また、TEM観察像による測定の代わりに便宜的に半値幅より求めたα−Feの平均粒径は92nmであった。上記粉末試料の磁気特性をVSM(振動型磁力計)により測定した結果を表1に示す。後述する比較例に比べてピーク強度比は小さく、高い飽和磁化が得られている。
参考例2)
Geの代わりにAlを用いた以外は参考例1と同様に試料粉末を作製した。上記試料粉末のX線回折パターンを図1に示す。リガク製解析ソフト「Jade,ver.5」にて解析すると、図1の回折パターンは面心立方構造のγ−Fe(111)と体心立方構造のα−Fe(110)に同定された。TEM観察像による測定の代わりに便宜的に各回折ピーク強度の比および半値幅より求めたα−Feの平均粒径を表1に示す。また、VSMにより測定した上記試料粉末の磁気特性を表1に示す。後述する比較例に比べてピーク強度比は小さく、高い飽和磁化が得られている。
参考例3)
平均粒径0.03μmのα−Fe粉73gと平均粒径20μmの炭化バナジウム(VC)粉3.8gおよび平均粒径0.02μmのカーボンブラック粉23.2gをそれぞれ秤量し、参考例1と同様に混合、熱処理し試料粉末を回収した。上記配合では、質量比でFe:V=95:5となる。上記試料粉末のX線回折パターンを図1に示す。また、各回折ピーク強度の比およびα−Feの平均粒径を表1に示す。また、VSMにより測定した上記試料粉末の磁気特性を表1に示す。後述する比較例に比べてピーク強度比は小さく、高い飽和磁化が得られている。
(比較例1)
元素Xを含む化合物は添加せずに、平均粒径0.03μmのα−Fe粉75gと平均粒径0.02μmのカーボンブラック粉25gをそれぞれ秤量し、実施例1と同様に混合、熱処理し試料粉末を回収した。上記試料粉末のX線回折パターンを図1に示す。また実施例と同様に得られた強度比(I(111)/I(110))、平均粒径、および磁気特性を表1に示す。実施例1〜3に比べてI(111)ピーク強度比が大きく、飽和磁化が低いことが分かる。

参考例4〜7)
平均粒径0.03μmのα−Fe粉と平均粒径0.6μmのCo粉とを所定の配合比(表2参照)となるよう秤量し、さらに平均粒径0.02μmのカーボンブラック粉が30mass%となるように加えてボールミル混合機にて16時間乾式混合した。得られた混合粉をアルミナボートに適量充填し、純度99.9%以上の窒素ガスを用いて雰囲気酸素量を10ppm以下に制御し、1000℃×2時間の熱処理を行なった。加熱処理終了後に室温まで冷却した後にアルミナボートを取り出し、熱処理された試料粉末を回収した。なお、配合前の原料の平均粒径は、透過電子顕微鏡写真を撮影して測定した。写真内で任意の微粒子について各々の直径を測定して60個の平均値を求めた。
上記試料粉末についてX線回折測定を行った。リガク製RINT2500を用いて、測定はθ/2θスキャンで2θ=40°〜50°の範囲で行った。面心立方晶構造(fcc)の(111)ピークと体心立方晶構造(bcc)の(110)ピーク強度を求めた。得られたX線回折パターンを図2に示す。図2の横軸は回折角の2θ(°)であり、縦軸は回折パターンの相対的な強度に相当する。ただし、回折パターン同士が重なっていると見え難いので、カーブの強度の基準を任意にずらして図示した。リガク製解析ソフト「Jade,ver.5」を用いて解析を行い、透過電子顕微鏡写真による測定の代わりに便宜的に各回折ピーク強度の比(I(111)/I(110))及び(110)ピークの半値幅より求まる平均粒径を表3にまとめた。また、上記試料粉末の磁気特性をいわゆるVSM:振動試料磁束計(東英工業社製VSM−5型)にて印加磁界が±5Tの範囲で測定した結果を表3に示す。
(比較例2)
平均粒径0.03μmのα−Fe粉を70mass%、平均粒径0.02μmのカーボンブラック粉を30mass%とした以外は参考例と同様の製造方法で試料粉末を作製した。X線回折パターンを図2に示し、各特性を表2に示す。
(比較例3)
平均粒径0.6μmのCo粉を70mass%、平均粒径0.02μmのカーボンブラック粉を30mass%とした以外は参考例4〜7と同様の原料(表2参照)と製造方法で試料粉末を作製した。X線回折パターンを測定したところ、参考例4〜7の試料は面心立方構造を示した。試料の各特性を表3に示す。なお、試料を構成するナノサイズ粒子の平均粒径は透過電子顕微鏡写真による測定の代わりに便宜的に(111)ピークから求めた。
表3から、参考例4〜7によれば、比較例と比較すると、I(111)/I(110)は0.2以下と小さく、Co添加によりγ相の析出が抑制されていることが分かった。また飽和磁化は120Am/kg以上の高い値を示した。実際、Co/Fe質量比が0.3〜0.82では130Am/kg以上の高い飽和磁化を示した。すなわち、Coの添加によって強磁性を示すα相の体積率が増加したため、飽和磁化が向上した。さらに、粉末を構成するナノサイズ粒子の平均粒径は比較例よりも小さく、体心立方晶構造(α相)の微細な粒子が得られることが分かった。
(実施例8)
平均粒径0.6μmのα−Fe粉と平均粒径30μmのほう素粉を各々等量混合し、窒素ガス気流中で、1100℃で2時間の熱処理を行った。この生成物の非磁性不要成分を分離・除去することで、粒子表面が窒化ほう素で被覆された平均粒子径が2μmの鉄微粒子を得た。この微粒子5gをエタノール溶媒100ml中に分散し、これにテトラエトキシシランを添加した。この溶媒を攪拌しながら純水とアンモニア水の混合溶液を添加した。純水とアンモニア水はそれぞれ22gと4g使用した。その後、ボールミルにおいて攪拌した。ここに前記テトラエトキシシランの濃度とボールミルの攪拌時間を適宜調整した。その後大気中において100℃以上に加熱して乾燥した。その後さらに、窒素雰囲気において400℃で加熱処理した。
得られた微粒子を透過型電子顕微鏡で観察し、またエネルギー分散型X線検出装置で分析を行った結果、鉄微粒子に接して窒化ほう素、その外側がケイ素酸化物で多層被覆された微粒子が生成していることを確認した。窒化ほう素被覆膜は4nmの厚みであった。一方、ケイ素酸化物被覆膜の膜厚は、ボールミル攪拌時間を10分から3時間まで変化させたところ、5〜80nmまで変化していた。また、ボールミル攪拌時間を3時間として、テトラエトキシシランの添加量を0.5gから2gまで変化させたところ、膜厚は5〜80nmまで変化していた。窒化ほう素被覆膜には六方晶の結晶構造に帰属する格子縞が観察された。一方、ケイ素酸化物膜被覆においては、格子縞は観察されず非晶質構造であった。さらに、赤外分光光度計により吸収スペクトルを測定したところ、波数1250〜1020cm−1の範囲でケイ素酸化物に起因する吸収ピークを観察することができた。このことによりケイ素酸化物膜が形成していることが確かめられた。
ケイ素酸化物被覆による高電気抵抗化への効果を調べるために、上記方法で得られた多層無機材料被覆微粒子のうち、ケイ素酸化物被覆の膜厚が60nmであった微粒子を20MPa以上の圧力で加圧し、平板状の成形体を得た。成型体の両端に銀ペーストを塗布し電極とし、2端子間の抵抗を測定することで電気抵抗を測定した。ここに電気抵抗は抵抗率とした。前記観察手法によって測定したケイ素酸化物被覆膜厚(nm)と抵抗率(Ω・m)との関係を図3に示す。
また、上記窒化ほう素およびケイ素酸化物との複合被覆鉄微粒子の耐食性を調べるために、耐食試験前後の磁気特性を比較した。耐食試験はPCT試験機にて、温度120℃、湿度100%で12時間行った。磁気特性はVSMで測定した。VSM測定から得られた耐食試験前後の飽和磁化の値、またそれにより求められた減磁率を表4に示す。得られた複合被覆鉄微粒子耐食試験前後の飽和磁化の値は、それぞれ鉄の飽和磁化の値の64%と61%であった。
(実施例9)
平均粒径30nmの酸化鉄粉末と平均粒径20μmの炭素粉とを等量混合し、窒素ガス雰囲気において1000℃で2時間熱処理を施すことで、粒子表面が炭素で被覆された平均粒子径が1μmの鉄微粒子を得た。その後、実施例8と同様に粒子表面にケイ素酸化物の被覆処理を行った。得られた微粒子を透過型電子顕微鏡で観察し、またエネルギー分散型X線検出装置で分析を行った結果、鉄微粒子に接して炭素、その外側がケイ素酸化物で多層被覆された微粒子が生成していることを確認した。炭素被覆膜は平均10nmの厚みであった。一方、ケイ素酸化物被覆膜の膜厚は8〜90nmまで変化していた。炭素被覆膜には六方晶の結晶構造に帰属する格子縞が観察されグラファイト相が主体であることを確認した。一方、ケイ素酸化物膜被覆においては格子縞は観察されず非晶質構造であった。得られた複合被覆鉄微粒子の飽和磁化の値は、鉄の飽和磁化の値の68%であった。これら磁性微粒子を実施例8と同様に電気比抵抗を測定した。前記観察手法によって測定したケイ素酸化物被覆膜厚と電気比抵抗値との関係を図3に示す。また、同じく実施例8と同様に耐食性の評価を行った。結果を表4に示す。
実施例9で得た鉄微粒子について、平均粒径1μmの粉の粒径分布のうち、特に径の小さい1つの鉄微粒子に着目し、透過型電子顕微鏡で観察した様子を図4の写真に示す。図5は、図4の写真の要部を模写した模式図である。Fe粒子核1に接して炭素被覆2、その外側をケイ素酸化物被覆3で多層被覆された微粒子を得ることが出来た。この部分の炭素被覆2の膜は約5nmの厚みであった。炭素被覆膜には六方晶の結晶構造に帰属する格子縞が観察されグラファイト相が主体であることを確認した。ケイ素酸化物被覆2の膜は10nm〜40nmまで変化していた。一方、ケイ素酸化物膜被覆においては格子縞は観察されず非晶質構造であった。周囲にある径の小さい他の微粒子はケイ素の副生成物であり、鉄微粒子とは別々に生成された。図5中の右下に示した横棒と100nmという表記は図4のスケールを表わす。
図6は、図4の写真の一部を更に拡大した透過型電子顕微鏡による写真である。図7は、図6の写真の要部を模写した模式図である。図6に示すように、Fe粒子核1の表面は均一な膜厚の炭素被覆2の膜で覆われていることが分かった。
なお、図8は、図4における図6の位置を概略的に示すための写真である。図9は図8の様子を模写した模式図である。図8中の(a)は図4に対応し、(b)は図6に対応する。
(実施例10)
炭素が被覆された磁性微粒子を合成する際に同じ粒子径の酸化鉄と酸化コバルト粒子を混合し、これに等量の炭素紛を混合した以外は実施例9と同様な手法で、鉄―コバルト合金磁性粒子を粒子核として炭素被覆膜ならびに10nmのケイ素酸化物被覆膜が複合被覆された磁性微粒子を作製した。実施例8と同様に耐食性の評価を行った結果を表4に示す。得られた複合被覆鉄微粒子耐食試験前後の飽和磁化の値は、それぞれ鉄の飽和磁化の値の70%と66%であった。
(実施例11)
磁性微粒子合成の原料に炭素の代わりに粒子径が2μmのアルミニウムを使用した以外実施例9同様な手法で、熱処理を行った。得られた磁性微粒子の表面は電子顕微鏡観察、またエネルギー分散型X線検出装置で分析を行った結果から、酸化アルミニウムから成る被覆層が3nm形成していることを確認した。次に実施例と同様な手法で5nmのケイ素酸化物を複合被覆した。得られた複合被覆鉄微粒子の飽和磁化の値は、鉄の飽和磁化の値の71%であった。鉄粒子を酸化アルミニウム被覆膜とケイ素酸化物被覆膜で順に被覆した磁性微粒子について、実施例8と同様に電気比抵抗を測定した結果を図3に、また耐食性の評価を行った結果を表4に示す。
(実施例12)
磁性微粒子合成の原料に炭素の代わりに粒子径が2μmのチタンを使用した以外実施例9と同様な手法で、熱処理を行った。得られた磁性微粒子の表面は電子顕微鏡観察、またエネルギー分散型X線検出装置で分析を行った結果から、チタン化合物から成る被覆層が5nm形成していることを確認した。次に実施例と同様な手法で50nmのケイ素酸化物を複合被覆した。得られた複合被覆鉄微粒子の飽和磁化の値は、鉄の飽和磁化の値の65%であった。
(実施例13)
実施例8と同様な手法で窒化ほう素および最外殻層に10nmのケイ素酸化物の複合被覆層が形成されて成る鉄微粒子を作製した。得られた複合被覆鉄微粒子の飽和磁化の値は、鉄の飽和磁化の値の73%であった。これをほぼ中性の水中に分散させ、予め製造し表面の電気二重層電位(ζ電位)が正に帯電するように表面電位を調整した粒子径4nmの金コロイド粒子と混合した。中性の水中では前記鉄微粒子の表面電位は負に帯電しているため、十分攪拌することで、個々の鉄微粒子の回りに金のコロイド粒子を被着させることができた。これをろ過乾燥し、窒素ガス雰囲気中500℃で熱処理を行うことで、表面に被着した金微粒子が溶融し一様な被覆層を形成し、多層被覆鉄微粒子を得た。実施例8と同様に耐食性の評価を行った結果を表4に示す。次に、当該多層被覆鉄粒子をフルオレセイン標識したウサギのタンパク質(イムノグロブリン)溶液中に懸濁させて固着し、洗浄後にフルオレセインによる蛍光強度を測定することで、イムノグロブリンの多層被覆鉄粒子への結合量(g)を計測した。使用したタンパク質溶液中のイムノグロブリン濃度(g/mol)の変化に対する当該多層被覆鉄粒子への結合量との関係を図10に示す。
(実施例14)
ケイ素酸化物の粒子表面への被覆処理の際に、電解質としてKClを0.03g加えた以外は、実施例9と同様にして試料を作製した。得られた鉄微粒子について、透過型電子顕微鏡で観察した様子を図11の写真に示す。図12は、図11の写真の要部を模写した模式図である。Fe粒子核1に接して炭素被覆、その外側をケイ素酸化物被覆3で多層被覆された微粒子を得ることが出来た。得られ微粒子を透過型電子顕微鏡で観察した結果、ケイ素酸化物被覆の膜厚は360nmであった。得られた複合被覆鉄微粒子の飽和磁化の値は、鉄の飽和磁化の値の66%であった。
(実施例15)
実施例9と同様な手法で炭素および最外殻層に100nmのケイ素酸化物の複合被覆層が形成されて成る鉄微粒子を作製した。得られた微粒子に対して、アミノ基と特異的に結合する蛍光体(Rohodamine−x NHS)を担持させる蛍光修飾法で、微粒子表面にアミノ基が固着していることを確認した。すなわち前記複合被覆鉄微粒子表面へアミノ基を担持させるために、微粒子を前記0.5% 3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン水溶液へ3時間攪拌させた。その後、微粒子をRohodamine−x NHSのN、N−ジメチルホルムアミド溶液中で攪拌した。得られた微粒子を蛍光倒立顕微鏡で観察した結果を図13へ示す。図14は、図13の写真を模写した模式図である。図14に示された個所は蛍光発色している粒子を示している。このことはRohodamine−x NHSが粒子に担持されていること、つまり複合被覆金属微粒子表面へ−NH2基が担持されていることを示している。
(実施例16)
まず実施例9と同様な手法で炭素および最外殻層に100nmのケイ素酸化物の複合被覆層が形成されて成る複合被覆鉄微粒子を作製した。DNAの抽出性能を評価するために東洋紡績製「Mag Extractor −Genome−」(登録商標)DNA抽出キットを使用して、下記の手順でDNA抽出実験を行った。まず25mgの複合被覆微粒子をTrisEDTA溶液(pH8.0)100μLへ分散し、前記微粒子分散液へDNA(630bp)を1μg分注した。その後、DNA抽出キット付属の溶解・吸着液中におけるDNAの複合被覆微粒子への固着、抽出キット付属の洗浄液と70%エタノール水溶液による洗浄を行った。その後、滅菌水中における攪拌により、DNAが抽出された水溶液を得た。これらの工程において、複合被覆微粒子の分離はPromega社製の磁気スタンドを使用した。抽出されたDNAの定量評価は、電気泳動法でおこなった。観察結果を図15のレーン1および2に示す。図16は、図15の写真を模写した模式図である。図16に示された箇所は、抽出された核酸に対応するバンド6を示している。この結果から、本発明で得られた、最表面がケイ素酸化物で被覆された金属粒子は、DNAを抽出することができることが分かった。DNAの抽出量は、導入DNA1μgから、0.70μgを抽出することができ、本発明の金属微粒子を用いた磁気ビーズは優れた核酸抽出能を示した。
(実施例17)
実施例15と同様な方法で、炭素、ケイ素酸化物および最外殻層にアミノ基が担持されて成る鉄微粒子を作製した。この微粒子を用いて、実施例16と同様な方法で、DNAの抽出評価および電気泳動実験を行った。観察結果を図15のレーン3および4に示す。電気泳動実験の結果から、DNAを抽出していることが分かった。DNAの抽出量は、導入DNA1μgから、0.77μgを抽出することができた。実施例16のDNAの抽出量と比較すると10%高くなった、このことから、炭素および最外殻層にケイ素酸化物の複合被覆層が形成されて成る鉄微粒子の最表面にアミノ基を担持することにより、DNAの抽出性能が向上することが分かった。
(比較例4)
平均粒子径が3μmのカルボニル鉄を用いて、実施例8と同様な手法で粒子表面にケイ素酸化物の被覆層を形成し、電気比抵抗および耐食性を評価した。その結果をそれぞれ図3および表4に示す。比較例4で得られたケイ素酸化物被覆カルボニル鉄微粒子は高い飽和磁化の値を示した。しかし、耐食試験による減磁率が20%と、本発明による実施例8から11および13で得られた多重被覆磁性金属微粒子と比較すると、極めて高い値となった。このことから、金属微粒子が炭素または窒化ほう素ならびにケイ素酸化物により多重被覆されていることにより、耐食性が極めて高くなることがわかった。一方、比較例4で得られた微粒子の抵抗率は本発明による実施例8から9および11で得られた多重被覆磁性金属微粒子と比較すると、低い値を示した。これは、金属微粒子が炭素または窒化ほう素ならびにケイ素酸化物の多重被覆を有することが高い抵抗率を示す効果を与えていると解釈できる。
(比較例5)
テトラエトキシシラン、アンモニア水および水の添加量をそれぞれ5g、22g、4gとした以外は、実施例9と同様にして試料を作製した。ケイ素酸化物の被覆は600nmであった。飽和磁化の値は、100A・m/kgであり、鉄の飽和磁化の値の46%であった。このことから、ケイ素酸化物被覆の膜厚が600nmと大きすぎると、飽和磁化の値が低減することがわかった。また、この試料中には、膜を形成しない過剰なシリカ球が多量に形成されていた。
(比較例6)
磁性微粒子として平均粒子径が30nmの磁鉄鉱Fe粒子を用い、実施例13と同様に表面に金を被覆した後に、同じくフルオレセイン標識したウサギのイムノグロブリンの結合量を計測した。このときの結果を図4に示す。
(参考例)
テトラエトキシシラン、アンモニア水および水の添加量を金属粒子粉の単位質量当たりそれぞれ6.4mol/kg(6.7g)、25.7mol/kg(4.5g)、79.3mol/kg(7.1g)とした以外は、実施例9と同様にして試料を作製した。その後、実施例9と同様に電気抵抗測定を行った。その結果を図3に示す。ケイ素酸化物の被膜は70nmで、抵抗率も高い値を示したが、試料作製直後でケイ素酸化物単体の粒子が多量に生成していた。
図3に示した結果から、窒化ほう素、炭素または酸化アルミニウムなど、磁性金属核に接して形成された第一の被覆層と表面がケイ素酸化物から成る第2の被覆層の複合被覆層を持つ、本発明の微粒子は、従来の材料に比較して高い抵抗を示すことが確認できた。また、ケイ素酸化物被覆層形成において、テトラエトキシシランの添加量を適宜変えることで酸化物層の厚みを変化させ、電気抵抗値を調整することも可能であることが明らかである。さらに、表4の結果から、本発明のように炭素、窒化ほう素または酸化アルミニウム、およびケイ素酸化物によって多層被覆された微粒子においては、耐酸化性など環境に対して十分な安定性を示すことも明確に理解できる。
本発明では最表面層を金などのように生体物質の固着に適した構造とすることも可能であり、図10の結果のように、粒子核(内核に相当)は高い磁束密度を有する金属磁性体であるため、生体物質の分離精製にも顕著な効果を発現した。
(実施例18)
平均粒径30nmの酸化鉄粉末と平均粒径20μmの炭素粉とを等量混合し、窒素ガス雰囲気において1000℃で2時間熱処理を施した後、非磁性不要成分を分離・除去し、粒子表面が炭素で被覆された平均粒子径が1μmの鉄微粒子を得た。この微粒子50g、ナイロン12を150g、ポリエチレングリコール260gを良く混合した後、混練機中で、230℃に加熱しながら混合した。この混合物を170℃よりも低い温度まで冷却後、水4リットルを分散媒体として混合した後、生成物の非磁性不要成分を分離・除去した。その後、加熱乾燥して、表面がナイロンで被覆された平均粒子径が9μmの金属微粒子を得た。得られた金属微粒子25mgを50mmol/リットルのTris−HCl、7mol/リットルのグアニジン塩酸塩、20mmol/リットルのEDTAを含むph7.5である水溶液(カオトロピック溶液)2ミリリットルに浸漬させ、10分間攪拌後上澄み液を取り出しICP(プラズマ発光分析装置)によりFeの溶出量を測定した。Fe溶出量の値は7mg/リットルとなり、樹脂で被覆する前の金属微粒子で測定した溶出量490mg/リットルに比べて大幅に少ないものとなった。また、磁気特性をVSMで測定し、飽和磁化の値は53.7A・m/kgであった。さらに、赤外分光光度計により吸収スペクトルを測定したところ、波数1800〜1600cm−1の範囲でナイロン12に起因する吸収ピークを観察することができた。得られた微粒子の一部を走査型電子顕微鏡で観察した結果を図17へ示す。
(実施例19)
上記実施例18で得た金属微粒子10gをエタノール溶媒100ミリリットル中に分散し、これにテトラエトキシシラン5gを添加した。この溶媒を超音波装置により分散させながら、純水とアンモニア水の混合溶液と電解質としてKClを添加した。非磁性不要成分を分離・除去することで目的とする金属微粒子を分離した。純水、アンモニア水、KClはそれぞれ22gと4gと0.03g使用した。その後大気中において乾燥し金属微粒子を得た。得られた金属微粒子25mgを50mmol/リットルのTris−HCl、7mol/リットルのグアニジン塩酸塩、20mmol/リットルのEDTAを含むph7.5である水溶液2mlに浸漬させ、10分間攪拌後上澄み液を取り出しICPによりFeの溶出量を測定した。Fe溶出量の値は1mg/リットルであった。また、磁気特性をVSMで測定し、飽和磁化の値は34.7A・m/kgであった。さらに、赤外分光光度計により吸収スペクトルを測定したところ、波数1250〜1020cm−1の範囲でケイ素酸化物に起因ずる吸収ピークを観察することができた。
本発明の金属微粒子は、磁気テープや磁気記録ディスク等の磁気記録媒体、または不要電磁波の吸収あるいは特定帯域電磁波の選択機能を有する電波吸収体やフィルター、インダクタやヨーク等の電子デバイス、DNAや蛋白質成分さらに細胞などの抽出・分離の機能を有する磁気ビーズの原材料に用いる微粒子として利用することができる。
試料粉末のX線回折図である。 Fe−Co粒子のX線回折図である。 ケイ素酸化物被覆層の膜厚と電気抵抗値との関係を示すグラフである。 多層被覆された微粒子の透過型電子顕微鏡による写真である。 図4の写真の要部を模写した模式図である。 図4の一部を拡大した透過型電子顕微鏡による写真である。 図6の写真の要部を模写した模式図である。 図4と図6の透過型電子顕微鏡写真の関係を模式的に示す写真である。 図8の様子を模写した模式図である。 タンパク質懸濁溶液中のイムノグロブリン濃度と磁性微粒子に固着されたイムノグロブリン量との関係を示すグラフである。 多層被覆された微粒子の透過型電子顕微鏡による写真である。 図11の写真を模写した模式図である。 蛍光修飾法における本発明の微粒子を蛍光倒立顕微鏡で観察した写真である。 図13の写真を模写した模式図である。 本発明の微粒子を用い、DNA抽出液で電気泳動実験を行った観察結果を示す写真である。 図15の写真を模写した模式図である。 多層被覆された微粒子の走査型電子顕微鏡による写真である。
符号の説明
1 Fe粒子核、2 炭素被覆、3 ケイ素酸化物被覆、4 他の粒子、
5 複合被覆微粒子、6 バンド

Claims (12)

  1. 磁性金属を主成分とする平均10μm以下の粒径を有する磁性金属粒子核が、互いに異なる2種以上の無機材料で多層に被覆されており、
    前記金属粒子核に接して一部分または全体を被覆する前記無機材料は、六方晶の結晶構造を有する炭素または窒化ほう素で構成され、
    前記金属粒子核に接して一部分または全体を被覆する無機材料の外側に、ケイ素酸化物、アルミナ、チタニアまたはジルコニアの被覆層を有することを特徴とする金属微粒子。
  2. 前記金属粒子核に接して一部分または全体を被覆する前記無機材料は、結晶格子面が2層以上積層された層状構造体であることを特徴とする請求項に記載の金属微粒子。
  3. 前記金属粒子核に接して一部分または全体を被覆する無機材料は、膜厚が100nm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の金属微粒子。
  4. 前記金属粒子核は、Feを主成分とし、元素X(Xは次の元素から選択される少なくとも1種:Al,As,Be,Cr,Ga,Ge,Mo,P,Sb,Si,Sn,Ti,V,W,Zn)を1mass%以上且つ50mass%未満含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金属微粒子。
  5. 前記金属粒子核は、FeおよびCoを含み、CoとFeの質量比Co/Feが0.3〜0.9の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金属微粒子。
  6. 前記金属粒子核に接して一部分または全体を被覆する無機材料の外側の被覆層がケイ素酸化物であり、
    記ケイ素酸化物被覆層は、膜厚が400nm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の金属微粒子。
  7. 前記互いに異なる2種以上の無機材料の外側は、樹脂で被覆されていることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の金属微粒子。
  8. 金属粒子核に接して一部分または全体を被覆する無機材料の外側の無機材料は、その表面に−NH基、−OH基、−COOH基の少なくとも一種の官能基を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の金属微粒子。
  9. 請求項1〜のいずれかに記載の金属微粒子を用いることを特徴とする生体物質抽出用磁気ビーズ。
  10. 磁性金属を主成分とする平均10μm以下の粒径を有する磁性金属粒子核が、互いに異なる2種以上の無機材料で多層に被覆された金属微粒子の製造方法であって、
    ほう素を含有する粉末および炭素を含有する粉末のうち少なくとも一方と、磁性金属の酸化物を含有する粉末とを混合した粉末を、窒素を含む雰囲気中で熱処理することにより、前記磁性金属の金属粒子核が、前記金属粒子核に接する、六方晶の結晶構造を有する窒化ほう素または炭素で被覆された金属微粒子を得たのち、該金属微粒子にさらにケイ素酸化物、アルミナ、チタニアまたはジルコニアの被覆を設けることを特徴とする金属微粒子の製造方法。
  11. 磁性金属を主成分とする平均10μm以下の粒径を有する磁性金属粒子核が、互いに異なる2種以上の無機材料で多層に被覆された金属微粒子の製造方法であって、
    ほう素を含有する粉末および炭素を含有する粉末のうち少なくと一方と、磁性金属の酸化物を含有する粉末と、Al,As,Be,Cr,Ga,Ge,Mo,P,Sb,Si,Sn,Ti,V,W,Znのうち少なくとも1種の元素を含む粉末とを混合した粉末を、窒素を含む雰囲気中で熱処理することにより、前記Al,As,Be,Cr,Ga,Ge,Mo,P,Sb,Si,Sn,Ti,V,W,Znのうち少なくとも1種の元素が添加された前記磁性金属の金属粒子核が、六方晶の結晶構造を有する、窒化ほう素または炭素の被膜で被覆された金属微粒子を得たのち、該金属微粒子にさらにケイ素酸化物、アルミナ、チタニアまたはジルコニアの被覆を設けることを特徴とする金属微粒子の製造方法。
  12. 前記窒化ほう素または炭素の被膜で被覆された金属微粒子に設けられた被覆がケイ素酸化物であり、
    前記ケイ素酸化物の被覆は、ケイ素アルコキシドを加水分解することにより生成することを特徴とする請求項10または11に記載の金属微粒子の製造方法。
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