JP4560784B2 - 金属微粒子およびその製造方法ならびに磁気ビーズ - Google Patents
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Description
一方、上記BN被膜の製法において、製法(1)及び(2)は金属粒子を原料としているため、特に粒径1μm以下の超微粒子を取り扱う際、急激な酸化反応による発火などの危険がある。また製法(3)では硝酸金属塩を加熱分解するため、有毒ガス(NOx)が発生する。また製法(1)のアーク放電を利用する手法は処理量が少なく生産性が低いだけでなく、反応温度が2000℃付近の高温であるため工業的利用には適していない。また製法(2)及び(3)で使用する水素ガスは爆発の危険があるため、工業的に利用するのは好ましくない。これらの製法は生産性が著しく低い。また、従来の技術で得られる被覆された金属粒子は、金属粒子の一部を改質することによって飽和磁化の劣化が生じるなどの問題があった。すなわち、これらの従来技術のよって製造される微粒子を、DNAや蛋白質の抽出などのバイオ用途、磁気記録媒体用途などに直ちに適用することは困難であった。
本発明の金属微粒子は、その表面が、異なる2以上の無機材料、または無機材料と樹脂で被覆された多層被覆金属微粒子であることを主な特徴とする。また、本発明の金属微粒子の製造方法は、金属の酸化物を含有する粉末と、炭素等を含有する粉末とを混合した粉末を、窒素を含む雰囲気中等で熱処理することにより、金属粒子核に接して一部分または全体を被覆する前記無機材料被覆された金属微粒子を得ること、さらに該金属微粒子に無機材料または樹脂の被覆を設けることを主な特徴とする。以下、本発明について具体的に説明する。
前記金属粒子核に接して一部分または全体を被覆する前記無機材料は、結晶格子面が2層以上積層された層状構造体であることが好ましい。
さらに、前記金属粒子核に接して一部分または全体を被覆する無機材料は、膜厚が100nm以下であることが好ましい。
金属核はFe、Co、Niの少なくとも1種以上の遷移金属磁性元素から成ることが望ましい。Fe、Co、Niいずれかの単体またはその合金、例えばFe−Co系、Fe−Ni系、さらには他の遷移金属元素であるCr、Ti、Nb、Si、Zrなどの遷移金属元素との2元、3元または4元系等の各種合金で構成されていても良い。
金属粒子の被覆層は2種以上の無機材料にて多層に被覆されて成る。金属粒子核に接する無機材料(もしくは無機質材料)は一部分または全体を被覆し、炭素または窒化ほう素を主体として構成されることが好ましい。炭素および窒化ほう素は潤滑性に優れるため、分散性の高い金属粒子を得ることができる。なお、ここで炭素単体は無機材料に含まれるものとする。炭素はグラファイト構造に特徴的な6員環構造を有し、その員環構造が層状に積層した構造である。窒化ほう素も同様に員環構造で層状構造が積層した形態を有する。これら無機材料は金属核全体を一様に覆うことが好ましいが、金属核が大気中に暴露された場合の酸化を防ぐ目的を達成するのであれば、一部分が被覆された状態であっても良い。
本発明の金属核とそれに接する第一の被覆層は、Fe、Co、Niなどの酸化物微粒子を炭素またはほう素と接触させた状態で、窒素ガス、または窒素ガスと不活性ガスとの混合雰囲気中で熱処理を施すことで合成できる。
金属核を被覆する多層構造無機質材料の最外殻(若しくは最外層とも言う)は、粒子間の電気的絶縁を保証するため、また、核酸抽出担体としての特性を持たせるためにケイ素酸化物を主体とする被覆層である。ケイ素酸化物以外の絶縁性無機質材料の形成も可能であるが、工業的に大量かつ安価に製造できる観点からケイ素酸化物が最も実用的である。金属磁性粉体粒子の核となる金属は酸化等しにくい不活性な無機材料で覆われていることが望ましいが、生体物質抽出の媒介として使用する場合には、粒子最表面はDNA等の生体物質に対して活性である必要があり、かかる観点からもケイ素酸化物が好ましい。このケイ素酸化物は、例えばケイ素アルコキシドの加水分解反応で得られる。ケイ素アルコキシドの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。また、3−トリエトキシシリルーンー(1,3−ジメチルーブチリデン)プロピルアミン、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニルー3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルー3−アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラプロポキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等でも良い。このケイ素酸化物は、例えばテトラエトキシシランの加水分解反応で得られ、シリカを析出させるテトラエトキシシランの加水分解反応を制御することで、再現性をもって製造することができる。また、テトラエトキシシランはケイ素酸化物源と成り得るアルコキシシランの中でも、生成した被膜の絶縁性が高いという作用効果に優れ、コストも比較的安い。前記ケイ素アルコキシドは単独で使用してもよいし、二種類以上を用いてもよい。例えば、アミノプロピルトリメトキシシラン、さらにはテトラエトキシシランを用いてケイ素酸化物を主体とする被覆層を設けて、耐食性の向上を図ることもできる。
多層構造無機質材料の外側や無機材料間に樹脂層を設けてもよい。また、多層の被覆のうち、金属粒子核に接して一部分または全体を被覆する無機材料の外側の無機材料に換えて樹脂層を設ける構成でもよい。樹脂被覆層を設けることによって、高塩濃度のカオトロピック溶液中においても飽和磁化の劣化が抑制される。また、比重を調整し、分散性を向上させることも可能である。樹脂層は熱可塑性樹脂を主体とする被膜層であることが好ましい。熱可塑性樹脂は、熱を加えると溶解流動し、冷却すると固化するため、金属微粒子を被覆することができる。また、樹脂が複数の金属微粒子を内包した構成とすることもできる。本発明では、樹脂層を設ける前に、金属粒子核には前記の無機材料被覆が設けてある。該無機材料被覆は金属粒子核が酸化されることを抑制するため、金属粒子核に無機材料被覆を設けた前期構成は、加熱を必要とする熱可塑性樹脂を被覆する場合に極めて好適な構成ということができる。熱可塑性樹脂は、これを特に限定するものではないが、例えばポリスチレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミドなどがある。このうちポリアミドとしては例えばナイロン6、ナイロン12、ナイロン66などのナイロン類が挙げられる。また、本発明の熱可塑性樹脂は互いに異なる2種以上の樹脂の混合物であっても良い。また、本発明の分散媒体は、熱可塑性樹脂に対して、実質的に相溶性を有さないことが好ましい。分散媒体は、例えばポリエチレングリコールなどのポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコール等を用いることができ、互いに異なる2種以上の樹脂の混合物であっても良い。また、金属微粒子の分散は、用いる熱可塑性樹脂の融点以上の温度に加熱して行なうが、融点より10〜150℃高い温度に加熱して行なうことが好ましい。加熱温度が高すぎると樹脂の分解や金属微粒子の酸化が起こるため好ましくない。一方、加熱温度が低すぎると均一な被覆が困難となる。分散方法は、これを特に限定するものではないが、例えばニーダー等の混練機を用いることができる。融点よりも低い温度に冷却した後は、例えば磁気分離などによって樹脂を設けた金属微粒子を分離することができる。
ケイ素酸化物被覆、金被膜および樹脂被膜の表面にはカップリング処理により、−NH2基等の官能基を設けることができる。カップリング処理には官能基を含むカップリング剤を用いることができるが、好ましくはシラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤又はアルミニウム系カップリング剤であり、特にシラン系カップリング剤が好ましい。シラン系カップリング剤は具体的には、γ−アミノプロピルトリアルコキシシラン,N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリアルコキシシラン,N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジアルコキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリアルコキシシラン。γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、または、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。ケイ素酸化物被覆、金被膜および樹脂被膜の表面に−NH2基、−OH基、−COOH基などの官能基を設けることにより、生体物質抽出能を向上させることができる。
(参考例1)
平均粒径0.03μmのα−Fe2O3粉73gと平均粒径20μmのGe粉2.7gおよび平均粒径0.02μmのカーボンブラック粉24.3gをそれぞれ秤量し、ボールミル混合機にて16時間混合した。上記配合では、質量比でFe:Ge=95:5となる。得られた混合粉をアルミナボートに適量充填し、窒素ガス中にて1000℃×2時間の熱処理を行なった。室温まで冷却した後にアルミナボートを取り出し、熱処理された試料粉末を回収した。
Geの代わりにAlを用いた以外は参考例1と同様に試料粉末を作製した。上記試料粉末のX線回折パターンを図1に示す。リガク製解析ソフト「Jade,ver.5」にて解析すると、図1の回折パターンは面心立方構造のγ−Fe(111)と体心立方構造のα−Fe(110)に同定された。TEM観察像による測定の代わりに便宜的に各回折ピーク強度の比および半値幅より求めたα−Feの平均粒径を表1に示す。また、VSMにより測定した上記試料粉末の磁気特性を表1に示す。後述する比較例に比べてピーク強度比は小さく、高い飽和磁化が得られている。
平均粒径0.03μmのα−Fe2O3粉73gと平均粒径20μmの炭化バナジウム(VC)粉3.8gおよび平均粒径0.02μmのカーボンブラック粉23.2gをそれぞれ秤量し、参考例1と同様に混合、熱処理し試料粉末を回収した。上記配合では、質量比でFe:V=95:5となる。上記試料粉末のX線回折パターンを図1に示す。また、各回折ピーク強度の比およびα−Feの平均粒径を表1に示す。また、VSMにより測定した上記試料粉末の磁気特性を表1に示す。後述する比較例に比べてピーク強度比は小さく、高い飽和磁化が得られている。
元素Xを含む化合物は添加せずに、平均粒径0.03μmのα−Fe2O3粉75gと平均粒径0.02μmのカーボンブラック粉25gをそれぞれ秤量し、実施例1と同様に混合、熱処理し試料粉末を回収した。上記試料粉末のX線回折パターンを図1に示す。また実施例と同様に得られた強度比(I(111)/I(110))、平均粒径、および磁気特性を表1に示す。実施例1〜3に比べてI(111)ピーク強度比が大きく、飽和磁化が低いことが分かる。
平均粒径0.03μmのα−Fe2O3粉と平均粒径0.6μmのCo3O4粉とを所定の配合比(表2参照)となるよう秤量し、さらに平均粒径0.02μmのカーボンブラック粉が30mass%となるように加えてボールミル混合機にて16時間乾式混合した。得られた混合粉をアルミナボートに適量充填し、純度99.9%以上の窒素ガスを用いて雰囲気酸素量を10ppm以下に制御し、1000℃×2時間の熱処理を行なった。加熱処理終了後に室温まで冷却した後にアルミナボートを取り出し、熱処理された試料粉末を回収した。なお、配合前の原料の平均粒径は、透過電子顕微鏡写真を撮影して測定した。写真内で任意の微粒子について各々の直径を測定して60個の平均値を求めた。
平均粒径0.03μmのα−Fe2O3粉を70mass%、平均粒径0.02μmのカーボンブラック粉を30mass%とした以外は参考例と同様の製造方法で試料粉末を作製した。X線回折パターンを図2に示し、各特性を表2に示す。
平均粒径0.6μmのCo3O4粉を70mass%、平均粒径0.02μmのカーボンブラック粉を30mass%とした以外は参考例4〜7と同様の原料(表2参照)と製造方法で試料粉末を作製した。X線回折パターンを測定したところ、参考例4〜7の試料は面心立方構造を示した。試料の各特性を表3に示す。なお、試料を構成するナノサイズ粒子の平均粒径は透過電子顕微鏡写真による測定の代わりに便宜的に(111)ピークから求めた。
平均粒径0.6μmのα−Fe2O3粉と平均粒径30μmのほう素粉を各々等量混合し、窒素ガス気流中で、1100℃で2時間の熱処理を行った。この生成物の非磁性不要成分を分離・除去することで、粒子表面が窒化ほう素で被覆された平均粒子径が2μmの鉄微粒子を得た。この微粒子5gをエタノール溶媒100ml中に分散し、これにテトラエトキシシランを添加した。この溶媒を攪拌しながら純水とアンモニア水の混合溶液を添加した。純水とアンモニア水はそれぞれ22gと4g使用した。その後、ボールミルにおいて攪拌した。ここに前記テトラエトキシシランの濃度とボールミルの攪拌時間を適宜調整した。その後大気中において100℃以上に加熱して乾燥した。その後さらに、窒素雰囲気において400℃で加熱処理した。
平均粒径30nmの酸化鉄粉末と平均粒径20μmの炭素粉とを等量混合し、窒素ガス雰囲気において1000℃で2時間熱処理を施すことで、粒子表面が炭素で被覆された平均粒子径が1μmの鉄微粒子を得た。その後、実施例8と同様に粒子表面にケイ素酸化物の被覆処理を行った。得られた微粒子を透過型電子顕微鏡で観察し、またエネルギー分散型X線検出装置で分析を行った結果、鉄微粒子に接して炭素、その外側がケイ素酸化物で多層被覆された微粒子が生成していることを確認した。炭素被覆膜は平均10nmの厚みであった。一方、ケイ素酸化物被覆膜の膜厚は8〜90nmまで変化していた。炭素被覆膜には六方晶の結晶構造に帰属する格子縞が観察されグラファイト相が主体であることを確認した。一方、ケイ素酸化物膜被覆においては格子縞は観察されず非晶質構造であった。得られた複合被覆鉄微粒子の飽和磁化の値は、鉄の飽和磁化の値の68%であった。これら磁性微粒子を実施例8と同様に電気比抵抗を測定した。前記観察手法によって測定したケイ素酸化物被覆膜厚と電気比抵抗値との関係を図3に示す。また、同じく実施例8と同様に耐食性の評価を行った。結果を表4に示す。
なお、図8は、図4における図6の位置を概略的に示すための写真である。図9は図8の様子を模写した模式図である。図8中の(a)は図4に対応し、(b)は図6に対応する。
炭素が被覆された磁性微粒子を合成する際に同じ粒子径の酸化鉄と酸化コバルト粒子を混合し、これに等量の炭素紛を混合した以外は実施例9と同様な手法で、鉄―コバルト合金磁性粒子を粒子核として炭素被覆膜ならびに10nmのケイ素酸化物被覆膜が複合被覆された磁性微粒子を作製した。実施例8と同様に耐食性の評価を行った結果を表4に示す。得られた複合被覆鉄微粒子耐食試験前後の飽和磁化の値は、それぞれ鉄の飽和磁化の値の70%と66%であった。
磁性微粒子合成の原料に炭素の代わりに粒子径が2μmのアルミニウムを使用した以外実施例9同様な手法で、熱処理を行った。得られた磁性微粒子の表面は電子顕微鏡観察、またエネルギー分散型X線検出装置で分析を行った結果から、酸化アルミニウムから成る被覆層が3nm形成していることを確認した。次に実施例と同様な手法で5nmのケイ素酸化物を複合被覆した。得られた複合被覆鉄微粒子の飽和磁化の値は、鉄の飽和磁化の値の71%であった。鉄粒子を酸化アルミニウム被覆膜とケイ素酸化物被覆膜で順に被覆した磁性微粒子について、実施例8と同様に電気比抵抗を測定した結果を図3に、また耐食性の評価を行った結果を表4に示す。
磁性微粒子合成の原料に炭素の代わりに粒子径が2μmのチタンを使用した以外実施例9と同様な手法で、熱処理を行った。得られた磁性微粒子の表面は電子顕微鏡観察、またエネルギー分散型X線検出装置で分析を行った結果から、チタン化合物から成る被覆層が5nm形成していることを確認した。次に実施例と同様な手法で50nmのケイ素酸化物を複合被覆した。得られた複合被覆鉄微粒子の飽和磁化の値は、鉄の飽和磁化の値の65%であった。
実施例8と同様な手法で窒化ほう素および最外殻層に10nmのケイ素酸化物の複合被覆層が形成されて成る鉄微粒子を作製した。得られた複合被覆鉄微粒子の飽和磁化の値は、鉄の飽和磁化の値の73%であった。これをほぼ中性の水中に分散させ、予め製造し表面の電気二重層電位(ζ電位)が正に帯電するように表面電位を調整した粒子径4nmの金コロイド粒子と混合した。中性の水中では前記鉄微粒子の表面電位は負に帯電しているため、十分攪拌することで、個々の鉄微粒子の回りに金のコロイド粒子を被着させることができた。これをろ過乾燥し、窒素ガス雰囲気中500℃で熱処理を行うことで、表面に被着した金微粒子が溶融し一様な被覆層を形成し、多層被覆鉄微粒子を得た。実施例8と同様に耐食性の評価を行った結果を表4に示す。次に、当該多層被覆鉄粒子をフルオレセイン標識したウサギのタンパク質(イムノグロブリン)溶液中に懸濁させて固着し、洗浄後にフルオレセインによる蛍光強度を測定することで、イムノグロブリンの多層被覆鉄粒子への結合量(g)を計測した。使用したタンパク質溶液中のイムノグロブリン濃度(g/mol)の変化に対する当該多層被覆鉄粒子への結合量との関係を図10に示す。
ケイ素酸化物の粒子表面への被覆処理の際に、電解質としてKClを0.03g加えた以外は、実施例9と同様にして試料を作製した。得られた鉄微粒子について、透過型電子顕微鏡で観察した様子を図11の写真に示す。図12は、図11の写真の要部を模写した模式図である。Fe粒子核1に接して炭素被覆、その外側をケイ素酸化物被覆3で多層被覆された微粒子を得ることが出来た。得られ微粒子を透過型電子顕微鏡で観察した結果、ケイ素酸化物被覆の膜厚は360nmであった。得られた複合被覆鉄微粒子の飽和磁化の値は、鉄の飽和磁化の値の66%であった。
実施例9と同様な手法で炭素および最外殻層に100nmのケイ素酸化物の複合被覆層が形成されて成る鉄微粒子を作製した。得られた微粒子に対して、アミノ基と特異的に結合する蛍光体(Rohodamine−x NHS)を担持させる蛍光修飾法で、微粒子表面にアミノ基が固着していることを確認した。すなわち前記複合被覆鉄微粒子表面へアミノ基を担持させるために、微粒子を前記0.5% 3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン水溶液へ3時間攪拌させた。その後、微粒子をRohodamine−x NHSのN、N−ジメチルホルムアミド溶液中で攪拌した。得られた微粒子を蛍光倒立顕微鏡で観察した結果を図13へ示す。図14は、図13の写真を模写した模式図である。図14に示された個所は蛍光発色している粒子を示している。このことはRohodamine−x NHSが粒子に担持されていること、つまり複合被覆金属微粒子表面へ−NH2基が担持されていることを示している。
まず実施例9と同様な手法で炭素および最外殻層に100nmのケイ素酸化物の複合被覆層が形成されて成る複合被覆鉄微粒子を作製した。DNAの抽出性能を評価するために東洋紡績製「Mag Extractor −Genome−」(登録商標)DNA抽出キットを使用して、下記の手順でDNA抽出実験を行った。まず25mgの複合被覆微粒子をTrisEDTA溶液(pH8.0)100μLへ分散し、前記微粒子分散液へDNA(630bp)を1μg分注した。その後、DNA抽出キット付属の溶解・吸着液中におけるDNAの複合被覆微粒子への固着、抽出キット付属の洗浄液と70%エタノール水溶液による洗浄を行った。その後、滅菌水中における攪拌により、DNAが抽出された水溶液を得た。これらの工程において、複合被覆微粒子の分離はPromega社製の磁気スタンドを使用した。抽出されたDNAの定量評価は、電気泳動法でおこなった。観察結果を図15のレーン1および2に示す。図16は、図15の写真を模写した模式図である。図16に示された箇所は、抽出された核酸に対応するバンド6を示している。この結果から、本発明で得られた、最表面がケイ素酸化物で被覆された金属粒子は、DNAを抽出することができることが分かった。DNAの抽出量は、導入DNA1μgから、0.70μgを抽出することができ、本発明の金属微粒子を用いた磁気ビーズは優れた核酸抽出能を示した。
実施例15と同様な方法で、炭素、ケイ素酸化物および最外殻層にアミノ基が担持されて成る鉄微粒子を作製した。この微粒子を用いて、実施例16と同様な方法で、DNAの抽出評価および電気泳動実験を行った。観察結果を図15のレーン3および4に示す。電気泳動実験の結果から、DNAを抽出していることが分かった。DNAの抽出量は、導入DNA1μgから、0.77μgを抽出することができた。実施例16のDNAの抽出量と比較すると10%高くなった、このことから、炭素および最外殻層にケイ素酸化物の複合被覆層が形成されて成る鉄微粒子の最表面にアミノ基を担持することにより、DNAの抽出性能が向上することが分かった。
平均粒子径が3μmのカルボニル鉄を用いて、実施例8と同様な手法で粒子表面にケイ素酸化物の被覆層を形成し、電気比抵抗および耐食性を評価した。その結果をそれぞれ図3および表4に示す。比較例4で得られたケイ素酸化物被覆カルボニル鉄微粒子は高い飽和磁化の値を示した。しかし、耐食試験による減磁率が20%と、本発明による実施例8から11および13で得られた多重被覆磁性金属微粒子と比較すると、極めて高い値となった。このことから、金属微粒子が炭素または窒化ほう素ならびにケイ素酸化物により多重被覆されていることにより、耐食性が極めて高くなることがわかった。一方、比較例4で得られた微粒子の抵抗率は本発明による実施例8から9および11で得られた多重被覆磁性金属微粒子と比較すると、低い値を示した。これは、金属微粒子が炭素または窒化ほう素ならびにケイ素酸化物の多重被覆を有することが高い抵抗率を示す効果を与えていると解釈できる。
テトラエトキシシラン、アンモニア水および水の添加量をそれぞれ5g、22g、4gとした以外は、実施例9と同様にして試料を作製した。ケイ素酸化物の被覆は600nmであった。飽和磁化の値は、100A・m2/kgであり、鉄の飽和磁化の値の46%であった。このことから、ケイ素酸化物被覆の膜厚が600nmと大きすぎると、飽和磁化の値が低減することがわかった。また、この試料中には、膜を形成しない過剰なシリカ球が多量に形成されていた。
磁性微粒子として平均粒子径が30nmの磁鉄鉱Fe3O4粒子を用い、実施例13と同様に表面に金を被覆した後に、同じくフルオレセイン標識したウサギのイムノグロブリンの結合量を計測した。このときの結果を図4に示す。
テトラエトキシシラン、アンモニア水および水の添加量を金属粒子粉の単位質量当たりそれぞれ6.4mol/kg(6.7g)、25.7mol/kg(4.5g)、79.3mol/kg(7.1g)とした以外は、実施例9と同様にして試料を作製した。その後、実施例9と同様に電気抵抗測定を行った。その結果を図3に示す。ケイ素酸化物の被膜は70nmで、抵抗率も高い値を示したが、試料作製直後でケイ素酸化物単体の粒子が多量に生成していた。
平均粒径30nmの酸化鉄粉末と平均粒径20μmの炭素粉とを等量混合し、窒素ガス雰囲気において1000℃で2時間熱処理を施した後、非磁性不要成分を分離・除去し、粒子表面が炭素で被覆された平均粒子径が1μmの鉄微粒子を得た。この微粒子50g、ナイロン12を150g、ポリエチレングリコール260gを良く混合した後、混練機中で、230℃に加熱しながら混合した。この混合物を170℃よりも低い温度まで冷却後、水4リットルを分散媒体として混合した後、生成物の非磁性不要成分を分離・除去した。その後、加熱乾燥して、表面がナイロンで被覆された平均粒子径が9μmの金属微粒子を得た。得られた金属微粒子25mgを50mmol/リットルのTris−HCl、7mol/リットルのグアニジン塩酸塩、20mmol/リットルのEDTAを含むph7.5である水溶液(カオトロピック溶液)2ミリリットルに浸漬させ、10分間攪拌後上澄み液を取り出しICP(プラズマ発光分析装置)によりFeの溶出量を測定した。Fe溶出量の値は7mg/リットルとなり、樹脂で被覆する前の金属微粒子で測定した溶出量490mg/リットルに比べて大幅に少ないものとなった。また、磁気特性をVSMで測定し、飽和磁化の値は53.7A・m2/kgであった。さらに、赤外分光光度計により吸収スペクトルを測定したところ、波数1800〜1600cm−1の範囲でナイロン12に起因する吸収ピークを観察することができた。得られた微粒子の一部を走査型電子顕微鏡で観察した結果を図17へ示す。
上記実施例18で得た金属微粒子10gをエタノール溶媒100ミリリットル中に分散し、これにテトラエトキシシラン5gを添加した。この溶媒を超音波装置により分散させながら、純水とアンモニア水の混合溶液と電解質としてKClを添加した。非磁性不要成分を分離・除去することで目的とする金属微粒子を分離した。純水、アンモニア水、KClはそれぞれ22gと4gと0.03g使用した。その後大気中において乾燥し金属微粒子を得た。得られた金属微粒子25mgを50mmol/リットルのTris−HCl、7mol/リットルのグアニジン塩酸塩、20mmol/リットルのEDTAを含むph7.5である水溶液2mlに浸漬させ、10分間攪拌後上澄み液を取り出しICPによりFeの溶出量を測定した。Fe溶出量の値は1mg/リットルであった。また、磁気特性をVSMで測定し、飽和磁化の値は34.7A・m2/kgであった。さらに、赤外分光光度計により吸収スペクトルを測定したところ、波数1250〜1020cm−1の範囲でケイ素酸化物に起因ずる吸収ピークを観察することができた。
5 複合被覆微粒子、6 バンド
Claims (12)
- 磁性金属を主成分とする平均10μm以下の粒径を有する磁性金属粒子核が、互いに異なる2種以上の無機材料で多層に被覆されており、
前記金属粒子核に接して一部分または全体を被覆する前記無機材料は、六方晶の結晶構造を有する炭素または窒化ほう素で構成され、
前記金属粒子核に接して一部分または全体を被覆する無機材料の外側に、ケイ素酸化物、アルミナ、チタニアまたはジルコニアの被覆層を有することを特徴とする金属微粒子。 - 前記金属粒子核に接して一部分または全体を被覆する前記無機材料は、結晶格子面が2層以上積層された層状構造体であることを特徴とする請求項1に記載の金属微粒子。
- 前記金属粒子核に接して一部分または全体を被覆する無機材料は、膜厚が100nm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の金属微粒子。
- 前記金属粒子核は、Feを主成分とし、元素X(Xは次の元素から選択される少なくとも1種:Al,As,Be,Cr,Ga,Ge,Mo,P,Sb,Si,Sn,Ti,V,W,Zn)を1mass%以上且つ50mass%未満含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金属微粒子。
- 前記金属粒子核は、FeおよびCoを含み、CoとFeの質量比Co/Feが0.3〜0.9の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金属微粒子。
- 前記金属粒子核に接して一部分または全体を被覆する無機材料の外側の被覆層がケイ素酸化物であり、
前記ケイ素酸化物の被覆層は、膜厚が400nm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の金属微粒子。 - 前記互いに異なる2種以上の無機材料の外側は、樹脂で被覆されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の金属微粒子。
- 金属粒子核に接して一部分または全体を被覆する無機材料の外側の無機材料は、その表面に−NH2基、−OH基、−COOH基の少なくとも一種の官能基を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の金属微粒子。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の金属微粒子を用いることを特徴とする生体物質抽出用磁気ビーズ。
- 磁性金属を主成分とする平均10μm以下の粒径を有する磁性金属粒子核が、互いに異なる2種以上の無機材料で多層に被覆された金属微粒子の製造方法であって、
ほう素を含有する粉末および炭素を含有する粉末のうち少なくとも一方と、磁性金属の酸化物を含有する粉末とを混合した粉末を、窒素を含む雰囲気中で熱処理することにより、前記磁性金属の金属粒子核が、前記金属粒子核に接する、六方晶の結晶構造を有する窒化ほう素または炭素で被覆された金属微粒子を得たのち、該金属微粒子にさらにケイ素酸化物、アルミナ、チタニアまたはジルコニアの被覆を設けることを特徴とする金属微粒子の製造方法。 - 磁性金属を主成分とする平均10μm以下の粒径を有する磁性金属粒子核が、互いに異なる2種以上の無機材料で多層に被覆された金属微粒子の製造方法であって、
ほう素を含有する粉末および炭素を含有する粉末のうち少なくと一方と、磁性金属の酸化物を含有する粉末と、Al,As,Be,Cr,Ga,Ge,Mo,P,Sb,Si,Sn,Ti,V,W,Znのうち少なくとも1種の元素を含む粉末とを混合した粉末を、窒素を含む雰囲気中で熱処理することにより、前記Al,As,Be,Cr,Ga,Ge,Mo,P,Sb,Si,Sn,Ti,V,W,Znのうち少なくとも1種の元素が添加された前記磁性金属の金属粒子核が、六方晶の結晶構造を有する、窒化ほう素または炭素の被膜で被覆された金属微粒子を得たのち、該金属微粒子にさらにケイ素酸化物、アルミナ、チタニアまたはジルコニアの被覆を設けることを特徴とする金属微粒子の製造方法。 - 前記窒化ほう素または炭素の被膜で被覆された金属微粒子に設けられた被覆がケイ素酸化物であり、
前記ケイ素酸化物の被覆は、ケイ素アルコキシドを加水分解することにより生成することを特徴とする請求項10または11に記載の金属微粒子の製造方法。
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