JP7001259B2 - 磁性材料およびその製造法 - Google Patents

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本発明は、軟磁性材料または半硬磁性材料を示す磁性材料、特に軟磁性を示す磁性材料とその製造方法に関する。
地球温暖化や資源枯渇など地球環境問題が深刻化し、各種電子や電気機器の省エネルギー、省資源に対する社会的要請が日増しに高まっている。中でも、モータを初めとする駆動部や変圧器のトランスなどで使用される軟磁性材料のさらなる高性能化が求められている。また、各種情報通信機器の小型多機能化、演算処理速度の高速化、記録容量の高密度化、さらにインフラなどの環境衛生保全や複雑化の一途をたどる物流システムや多様化するセキュリティ強化に関する諸問題を解決するため、各種素子やセンサーやシステムに利用される各種軟磁性材料や半硬磁性材料の電磁気特性、信頼性、そして感度向上が求められている。
電気自動車、燃料電池自動車、ハイブリット自動車などの高回転(以下、400rpmを超える回転数を言う)で駆動する大型モータを搭載した次世代自動車の需要は、これら環境やエネルギー問題に対する時代の要請に答えていくために、今後もさらに期待される。中でも、モータに使用されるステータ向けの軟磁性材料の高性能化、低コスト化は大きな重要課題の一つである。
以上の用途に用いられる既存の軟磁性材料は、金属系磁性材料と酸化物系磁性材料の2種類に大別される。
前者の金属系磁性材料には、電磁鋼の代表格であるSi含有の結晶性材料である珪素鋼(Fe-Si)、さらにAlを含有させた金属間化合物であるセンダスト(Fe-Al-Si)、C含有量0.3質量%以下の低炭素量で低不純物量の純鉄である電磁軟鉄(Fe)、Fe-Niを主成分とするパーマロイ、メトグラス(Fe-Si-B)を初めとするアモルファス合金、さらにそのアモルファス合金に適切な熱処理を加えて微結晶を析出させたナノ結晶-アモルファスの相分離型であるファインメットなどのナノ結晶軟磁性材料群(その代表的組成としてはFe-Cu-Nb-Si-B、Fe-Si-B-P-Cuなど)がある。ここで言う「ナノ」とは、1nm以上1μm未満の大きさのことである。ナノ結晶軟磁性材料以外の磁性材料では、できるだけ均一な組成として磁壁の移動を容易にすることが、保磁力の低減及び鉄損の低下には重要になる。なお、ナノ結晶軟磁性材料は、結晶相と非結晶相、Cu富化相などを含む不均一な系となっており、磁化反転は主に磁化回転によるものと考えられる。
後者の酸化物系磁性材料の例としては、Mn-ZnフェライトやNi-Znフェライトなどのフェライト系磁性材料が挙げられる。
珪素鋼は、高性能軟磁性材料用途において、現在までに最も普及している軟磁性材料であり、飽和磁化は1.6~2.0T、保磁力は3~130A/mの高磁化低保磁力の磁性材料である。この材料は、FeにSiを4質量%程度まで添加したもので、Feに備わる大きな磁化をあまり損なわないで、結晶磁気異方性と飽和磁歪定数を低下させ、保磁力を低減させたものである。この材料を高性能化するためには、適切に組成管理された材料を熱間や冷間の圧延と焼鈍を適宜組み合わせることにより、結晶粒径を大きくしながら、磁壁の移動を妨げる異物を除去することが必要である。結晶粒の配向方向がランダムである無配向性鋼板のほか、保磁力をさらに低下させる材料として、容易磁化方向であるFe-Siの(100)方向が圧延方向に高度に配向した方向性鋼板も広く使用されている。
この材料は、圧延材であるため概ね0.5mm未満の厚みであり、また均質な金属材料であるため概ね0.5μΩmと電気抵抗率が低く、通常、それぞれの珪素鋼板表面を絶縁膜で覆い、型で打ち抜いて、積層や溶接により、次世代自動車向けなどの高回転用途で生じる渦電流損失を抑えながら、厚みを持たせて大型機器に応用されている。従って、打ち抜きや積層にかかる工程費や磁気特性劣化が大きな問題点となっている。
Fe-Cu-Nb-Si-Bを初めとするナノ結晶軟磁性体は、一旦急冷することでアモルファスとなった合金を結晶化温度よりも高温で熱処理をすることにより、10nm程度の結晶粒をアモルファス中に析出させて、アモルファスの粒界相を有したランダムな配向をしたナノ結晶型の組織を持つ軟磁性材料である。この材料の保磁力は、0.6~6A/mと極めて低く、飽和磁化が1.2~1.7Tとアモルファス材料より高いため、現在市場が広がっている。この材料は1988年に開発された比較的新しい材料であり、その磁気特性発現の原理は、結晶粒径を強磁性交換長(交換結合長ともいう)より小さくすることと、ランダム配向した主相の強磁性相がアモルファス界面相を通じて強磁性結合をすることにより、結晶磁気異方性の平均化がなされて低保磁力となるものである。この機構をランダム磁気異方性モデル、或いはランダム異方性モデルという(例えば、非特許文献1を参照)。
しかしこの材料は、まず液体超急冷法により薄帯を作製してから製造されるので、その製品厚みは0.02~0.025mm程度であって、絶縁や、切断や、整列や、積層や、溶接や、焼鈍の工程が珪素鋼よりも煩雑なうえ、加工性、熱安定性などの問題を抱えている。更に、電気抵抗率も1.2μΩmと小さく、他の圧延材や薄帯同様の渦電流損失の問題点が指摘されている。
この問題を解決するために、SPS(放電プラズマ焼結)法を用いて、上記薄帯状のナノ結晶軟磁性材料を粉砕し、バルク成形材料を作製した試みが成されているが(例えば、非特許文献2を参照)、保磁力が300A/mで、飽和磁化が1Tであるため、0.02mm薄帯に比べて磁気特性が大きく劣化している。現在のところ、0.5mmより厚い製品の作製には、積層する方法以外に良い方法がない。
既存の軟磁性材料において、高回転用途で、最も渦電流損の問題がないのがフェライト系酸化物材料である。この材料の電気抵抗率は、10~1012μΩmであり、また、焼結により容易に0.5mm以上にバルク化でき、渦電流損のない成形体にできるので、高回転や高周波用途にふさわしい材料である。また、酸化物なので錆びることもなく、磁気特性の安定性にも優れる。但し、この材料の保磁力は2~160A/mと比較的高く、特に飽和磁化が0.3~0.5Tと小さいために、例えば次世代自動車用高性能高回転モータ向けには適さない。
総じて、珪素鋼などの金属系の軟磁性材料は圧延材などであって厚みが薄いため積層して使用されるが、電気抵抗が低く、高回転の高性能モータ向けには渦電流損が生じる問題があり、それを解決し得る積層を行う必要がある。そのため、工程は煩雑になり、積層前の絶縁処理が必須で、さらに打ち抜きなどによる磁気特性劣化や、工程費にかかるコスト高が大きな問題になっている。一方、フェライトなどの酸化物系の軟磁性材料は、電気抵抗が大きく渦電流損失の問題はないが、飽和磁化が0.5T以下と小さいために、次世代自動車用高性能モータ向けには適さない。一方、耐酸化性の観点からいえば、金属系の軟磁性材料よりも酸化物系の軟磁性材料の方が、安定性が高く優位性がある。
永久磁石を利用した次世代自動車用高性能モータ向けに多く生産されている珪素鋼の無配向電磁鋼板について、そのモータに使用しうる厚みの上限は、特許文献1及び2に示されているように、板厚で約0.3mmとなるが、次世代自動車用モータの厚みでは例えば9cmにもおよぶため、0.3mm厚のような薄い珪素鋼板を使用する場合、約300枚をそれぞれ絶縁して積層しなければならないことになる。このような薄板を絶縁や、打抜や、整列や、溶接や、焼鈍する工程は煩雑でコスト高である。この積層する板厚をなるべく厚くするためには、材料の電気抵抗率を大きくすることが必要である。
以上のように、従来の酸化物系磁性材料(特に、フェライト系磁性材料)よりも、高い飽和磁化と低い保磁力を併せ持つ磁気安定性に優れ、また高耐酸化性を有する磁性材料(特に、軟磁性材料)の出現が望まれていた。更には、酸化物系磁性材料と金属系磁性材料の双方の利点を発揮することが可能な軟磁性材料、具体的には、金属系の珪素鋼板などよりも高い電気抵抗を示し、また、金属系磁性材料の高い飽和磁化と、酸化物系磁性材料のように渦電流損失が小さく、積層やそれに関わる煩雑な工程を必要としないという利点を発揮することが可能な軟磁性材料の出現が望まれていた。
国際公開第2017/164375号 国際公開第2017/164376号
G.Herzer, IEEE Transactions on Magnetics, vol.26, No.5(1990) pp.1397-1402 Y.Zhang, P.Sharma and A.Makino, AIP Advances, vol.3, No.6(2013) 062118
本発明は、bcc又はfcc-(FM,M)相とM成分富化相をナノ分散した磁性材料を用いることで、従来のフェライト系磁性材料よりも格段に大きな飽和磁化と低い保磁力の双方を実現することができる磁気安定性の高い、そして耐酸化性に優れた新しい磁性材料とその製造方法を提供することを目的とする。また、既存の金属系磁性材料よりも電気抵抗率が高いために前述の渦電流損失などの問題点を解決することが可能な、高磁気安定性、高磁気飽和抑制能、そして高周波吸収能等の様々な要求性能を達成することが可能な新しい磁性材料とその製造方法を提供することを目的とする。
なお、本願における、bcc又はfcc-(FM,M)とは、FM成分及びM成分を含むbccまたはfcc構造を意味する。ここで、FM成分とは、成分として、Feを含み、更にCo及び/又はNiを含むものを言い、またM成分とは、成分として、Ti、Mnのうちのいずれか一種以上を含むものを言う。また、これらの構造はいずれも立方晶系(Cubic Crystal System)に属する構造であるため、本願ではこれら2相をまとめてccs-(FM,M)相と称することもある。
また、本発明では、積層などの煩雑な工程を経ることなく、簡便な工程で厚みが0.5mm以上、さらに1mm以上、そして5mm以上の成形体を製造することが可能で、同時に渦電流も低減させ得る粉体焼結磁性材料を提供することを目的とする。
また、本発明は、特にccs-(FM,M)相がナノ分散していることに加えて、Feの一定割合をCo及び/又はNiで置換した磁性材料とすることにより、bcc-Feの質量磁化(218emu/g)を上回る巨大な飽和磁化を実現し得る点が特徴的である。特に、Coで置換する場合は、Coの広い含有量域においてbcc-Feの質量磁化(218emu/g)を単に上回るだけでなく、最大で約10%程度もbcc-Feの質量磁化を上回る極めて巨大な飽和磁化(約240emu/g)を実現することも可能で、その巨大な飽和磁化を利用して従来よりも遙かに小型で高性能な軟磁性部材の作製に使用可能な新しい磁性材料とその製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明において、FM成分としてNiを含有する場合は、bcc-Feの質量磁化(218emu/g)を上回る巨大な飽和磁化が得られるだけでなく、そのNiにより構造が安定化され、生産が容易になる利点もある。更に、Niに由来する耐酸化性の向上も見込める。その巨大な飽和磁化、耐酸化性と生産の安定性を利用して従来よりも遙かに小型で高性能な軟磁性部材の作製に使用可能な新しい磁性材料とその製造方法を提供することを目的とする。
上記の課題の解決のために、飽和磁化が一般的な既存のフェライトの0.3T(これは、本発明の磁性材料では金属系に近い密度を有しているため、Feの密度を用いて計算すると30emu/gになる。)と同程度かそれより高い磁性材料が求められる。特に軟磁性材料に限ると、その飽和磁化は、好ましくは100emu/g以上、さらに好ましくは150emu/g以上が求められる。同時に、軟磁性領域又は半硬磁性領域の保磁力を発現できることも求められる。更に、耐酸化性にも優れることが求められる。
本発明者らは、これらの事情等を考慮しながら、従来の酸化物系磁性材料(特に、フェライト系磁性材料)よりも優れた電磁気特性を有する磁性材料、金属系磁性材料と酸化物系磁性材料の双方の利点を併せ持った電磁気特性の優れた磁性材料、加えて空気中でも磁気特性が安定した磁性材料を鋭意検討した。その結果、従来から使用されている均質な結晶性、非晶性材料、或いは非晶質の中に均質なナノ結晶が析出するナノ結晶軟磁性材料と全く異なる、M―FMフェライト(FM及びM成分から構成されるフェライトであり、「M成分-FMフェライト」とも記載する)の還元反応中の不均化により、多様な2種以上の結晶相、或いは1種の結晶相及びアモルファス相を含む磁性材料を見出し、その組成及び結晶構造、結晶粒径並びに粉体粒径を制御すること、及びその磁性材料の製造法を確立すること、さらにその磁性材料を積層せず固化する方法を確立することにより、本発明を成すに至った。
FM成分であるFe、Co及び/又はNiを含んでなる合金系において、Feの一部をCo及び/又はNiで置換していった場合(即ち、Fe量に対するCo及び/又はNi量を増やしていった場合)、飽和磁化は置換度に強く依存し、ある特定の置換度で最大値を有する上に凸の関係を示す(スレーター・ポーリング曲線)ことが知られている。そのため、FM組成に揺らぎがある場合、すなわち置換度が異なる複数の領域で磁性材料が構成される場合は、飽和磁化が小さくなる領域が必ず生じることになる。本発明の磁性材料において、M成分の組成は個々のccs-(FM,M)相で異なるが、FM相の組成は個々のccs-(FM,M)相によらず一定であるため、飽和磁化の大きな組成を全材料中において実現することが可能である。そのため、本発明の磁性材料では、bcc-Feの質量磁化(218emu/g)を上回る巨大な飽和磁化を実現し得る点が特徴的である。換言すると、本発明の磁性材料においては、M成分には揺らぎがあるものの、FM成分は均質であるccs-(FM,M)相がナノ分散することにより構成されているため、その構造的特徴が反映されて、bcc-Feの質量磁化(218emu/g)を上回るという本発明の磁性材料に特徴的な巨大な飽和磁化が実現し得る。
本発明は、具体的には以下の通りである。
(1) FM成分(ここでFM成分は、Feを含み、且つNi及び/又はCoを含むものである)とM成分(ここでM成分は、Mn、Tiのうちいずれか一種以上である)を含むbcc又はfcc構造の結晶を有する第1相と、M成分を含む相であって、その相に含まれるFM成分とM成分の総和を100原子%とした場合のM成分の含有量(原子%)が、第1相に含まれるFM成分とM成分の総和を100原子%とした場合のM成分の含有量(原子%)よりも多い第2相とを含む、軟磁性又は半硬磁性の磁性材料。
(2) 磁性材料が軟磁性である、(1)に記載の磁性材料。
(3) FM成分中のCo及び/又はNiの含有量(原子%)が0.001原子%以上90原子%未満である、(1)又は(2)に記載の磁性材料。
(4) 第1相が、(Fea/100Cob/100Nic/100100-x(ここで、xは原子百分率で0.001≦x≦33であり、a,b,cは第1相に含まれるFeとCoとNiの総和を100原子%とした場合の原子百分率で0.001≦b+c≦99.999であり、MはTi、Mnのいずれか1種以上である)の組成式で表される組成を有する、(1)~(3)のいずれかに記載の磁性材料。
(5) 第1相が(Fea/100Cob/100Nic/100100-x(Md/100TMe/100(ここで、xは原子百分率で0.001≦x≦33であり、a,b,cは第1相に含まれるFeとCoとNiの総和を100原子%とした場合の原子百分率で、a+b+c=100且つ0.001≦b+c≦99.999であり、d,eは第1相に含まれるM成分とTM成分の総和を100原子%とした場合の原子百分率で、d+e=100且つ0.001≦e<50であり、MはTi、Mnのいずれか1種以上であり、TMはZr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Cu、Zn、Siのうちのいずれか一種以上である)の組成式で表される組成を有する、(1)~(4)のいずれかに記載の磁性材料。
(6) 前記組成式において、(b+c)×(100-x)≧(d+e)×xの関係を有する、(5)に記載の磁性体。
(7) 第2相はFM成分とM成分を含むbcc又はfcc構造の結晶を有し、その相に含まれるFM成分とM成分の総和を100原子%とした場合のM成分含有量(原子%)が、第1相に含まれるFM成分とM成分の総和を100原子%とした場合のM成分の含有量(原子%)に対して1.5倍以上10倍以下の量、及び/又は2原子%以上100原子%以下の量である、(1)~(6)のいずれかに記載の磁性材料。
(8) 第2相はFM成分とM成分を含むbcc又はfcc構造の結晶を有し、その相に含まれるFM成分とM成分の総和を100原子%とした場合のFM成分中のCo及び/又はNi含有量(原子%)が、第1相に含まれるFM成分とM成分の総和を100原子%とした場合のFM成分中のCo成分及び/又はNi成分含有量(原子%)に対して、0.91倍以上1.1倍未満の量である、(1)~(7)のいずれかに記載の磁性材料。
(9) 第2相がM成分と酸素成分を含有する酸化物相を含む、(1)~(8)のいずれかに記載の磁性材料。
(10) 第2相が、FM成分とM成分とを含むフェライト相又はM成分を含むウスタイト相の何れか1種以上を含む、(1)~(9)のいずれかに記載の磁性材料。
(11) FM成分とM成分を含むbcc又はfcc構造の結晶を有する相の体積分率が磁性材料全体の5体積%以上である、(1)~(10)のいずれかに記載の磁性材料。
(12) 磁性材料全体の組成に対して、磁性材料中のFe含有量(原子%)が10原子%以上99.998原子%以下、磁性材料中のM成分含有量(原子%)が0.001原子%以上50原子%以下、磁性材料中のO成分含有量(原子%)が0.001原子%以上55原子%以下の範囲である、(9)に記載の磁性材料。
(13) 第1相若しくは第2相、又は磁性材料全体の平均結晶粒径が1nm以上10μm未満である、(1)~(12)のいずれかに記載の磁性材料。
(14) 少なくとも第1相が(Fea/100Cob/100Nic/100100-x(ここで、xは原子百分率で0.001≦x≦2であり、a,b,cは第1相に含まれるFeとCoとNiの総和を100原子%とした場合の原子百分率で、a+b+c=100且つ0.001≦b+c≦99.999である)の組成式で表される組成のbcc又はfcc相を有し、そのbccまたはfcc相の結晶子サイズが1nm以上500nm以下である、(1)~(13)のいずれかに記載の磁性材料。
(15) 少なくとも第1相が(Fea/100Cob/100Nic/100100-x(ここで、xは原子百分率で0.001≦x≦33であり、a,b,cは第1相に含まれるFeとCoとNiの総和を100原子%とした場合の原子百分率で、a+b+c=100且つ0.001≦b+c≦99.999である)の組成式で表される組成のbcc又はfcc相を有し、そのbccまたはfcc相の結晶子サイズが1nm以上200nm以下である、(1)~(13)のいずれかに記載の磁性材料。
(16) 粉体の形態の磁性材料であって、軟磁性の磁性材料の場合には10nm以上5mm以下の平均粉体粒径を有し、半硬磁性の磁性材料の場合には10nm以上10μm以下の平均粉体粒径を有する、(1)~(15)のいずれかに記載の磁性材料。
(17) 第1相又は第2相の少なくとも1相が隣り合う相と強磁性結合している、(1)~(16)のいずれかに記載の磁性材料。
(18) 第1相と第2相が、直接、又は金属相若しくは無機物相を介して連続的に結合し、磁性材料全体として塊状を成している状態である、(1)~(17)のいずれかに記載の磁性材料。
(19) 平均粉体粒径が1nm以上1μm未満の、FM成分とM成分とを含むフェライト粉体を、水素ガスを含む還元性ガス中で、還元温度400℃以上1500℃以下にて還元することによって(16)に記載の磁性材料を製造する方法。
(20) 平均粉体粒径が1nm以上1μm未満の、FM成分とM成分とを含むフェライト粉体を、水素ガスを含む還元性ガス中で還元し、不均化反応により第1相と第2相を生成させることによって、(1)~(17)のいずれかに記載の磁性材料を製造する方法。
(21) (19)又は(20)に記載の製造方法によって製造される磁性材料を焼結することによって、(18)に記載の磁性材料を製造する方法。
(22) (19)に記載の製造方法における還元工程後に、又は(20)に記載の製造方法における還元工程後若しくは生成工程後に、又は(21)に記載の製造方法における焼結工程後に、最低1回の焼鈍を行う、軟磁性又は半硬磁性の磁性材料を製造する方法。
本発明によれば、飽和磁化が高く、渦電流損失の小さな磁性材料、特に高回転モータなどにも好適に利用される軟磁性材料、さらに耐酸化性の高い、或いは磁気飽和抑制能や高周波吸収能などの要求性能に答えられる各種軟磁性材料及び半硬磁性材料を提供することが可能である。
本発明によれば、フェライトのように粉体材料の形態で使用できるので、焼結などにより容易にバルク化でき、そのため、既存の薄板である金属系軟磁性材料を使用することによる積層などの煩雑な工程やそれによるコスト高などの問題も解決することが可能である。
(A)は、(Co0.100Ti0.005Fe0.850)フェライトナノ粉体を900℃で1時間、水素ガス中で還元した粉体(本発明の一実施態様)のSEM像である。(B)は(A)の5万倍より高倍率である10万倍で撮影したSEM像である。 (Co0.100Ti0.005Fe0.850)フェライトナノ粉体を900℃で1時間、水素ガス中で還元した粉体(本発明の一実施態様)のSEM像である(図中数値は、+位置でのTi含有量(原子%)を表す。)。 (Co0.100Ti0.005Fe0.850)フェライトナノ粉体を900℃で1時間、水素ガス中で還元した粉体(本発明の一実施態様)の、図2とは異なる場所のSEM像である(図中数値は、+位置でのTi含有量(原子%)を表す。)。 (Co0.100Ti0.005Fe0.850)フェライトナノ粉体を900℃で1時間、水素ガス中で還元した粉体(本発明の一実施態様)の、図2と同じ場所のSEM像である(図中数値は、+位置でのCo含有量(原子%)を表す。)。 (Co0.100Ti0.005Fe0.850)フェライトナノ粉体を900℃で1時間、水素ガス中で還元した粉体(本発明の一実施態様)の、図3と同じ場所のSEM像である(図中数値は、+位置でのCo含有量(原子%)を表す。)。 (Fe0.40Co0.50Ti0.1フェライトナノ粉体(本発明の比較例)のSEM像である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明で言う「磁性材料」とは、「軟磁性」と称される磁性材料(即ち、「軟磁性材料」)と「半硬磁性」と称される磁性材料(即ち、「半硬磁性材料」)のことである。ここで、「軟磁性材料」とは、保磁力が800A/m(≒10Oe)以下の磁性材料のことで、「半硬磁性材料」とは、保磁力が800A/mを超え40kA/m(≒500Oe)以下の磁性材料のことである。優れた軟磁性材料とするには、低い保磁力と高い飽和磁化或いは透磁率を有し、低鉄損であることが重要である。鉄損の原因には、主にヒステリシス損失と渦電流損失があるが、前者の低減には保磁力をより小さくすることが必要で、後者の低減には材料そのものの電気抵抗率を高くすることや実用に供する成形体全体の電気抵抗を高くすることが重要になる。半硬磁性材料では、用途に応じた適切な保磁力を有し、飽和磁化や残留磁束密度が高いことが要求される。中でも高周波用の軟磁性或いは半硬磁性材料では、大きな渦電流が生じるため、材料が高い電気抵抗率を有すること、また粉体粒子径を小さくすること、或いは板厚を薄板或いは薄帯の厚みとすることが重要になる。
本発明で言う「強磁性結合」とは、磁性体中の隣り合うスピンが、交換相互作用により強く結びついている状態を言い、特に本発明では隣り合う2つの結晶粒(及び/又は非晶質粒)中のスピンが結晶境界を挟んで、交換相互作用により強く結びついている状態を言う。ここで言う結晶粒などの「粒」とは、一つ又は二つ以上の「相」により構成され、三次元の空間から境界を持って隔てられていることを認識できる塊のことである。交換相互作用は材料の短距離秩序に基づく距離にしか及ばない相互作用なので、結晶境界に非磁性の相が存在すると、その両側の領域にあるスピンに交換相互作用が働かず、両側の結晶粒(及び/又は非晶質粒)間に強磁性結合が生じない。本願で「結晶粒」と言うときは、場合によっては非晶質粒も含む。また、磁気特性が異なった異種の隣り合う結晶粒の間で強磁性結合がなされた材料の磁気曲線の特徴については、後述する。
本発明で言う「不均化」とは、均質組成にある相から、化学的な反応により、2種以上の組成又は結晶構造が異なる相を生じることであり、本発明においては、当該均質組成の相に水素などの還元性物質が関与し還元反応が生じた結果としてもたらされる。この「不均化」をもたらす化学的な反応を、本願では「不均化反応」と称するが、この「不均化」反応の際には、水が副生することが多い。
本発明で言う「M-FMフェライト」とは、マグネタイトFeのFe成分を、Co及び/又はNiで一部置換し、且つM成分でも一部置換した材料のことである。なお、本発明において、「FM成分」とは、Feを含み、更にCo及び/又はNiを含む成分を意味し、単に「FM」と記載することもある。また、「M成分」とは、Ti、Mnのいずれか1種以上のことであり、単に「M」と記載することもある。また、M成分酸化物とはM成分と酸素Oが結合した物質又は材料(即ち、M成分を含有する酸化物)のことで、そのうち非磁性(本願では非常に磁性の低い場合も含む)であるものを言う。さらに「TM成分」又は「TM」と記載された場合、それらは、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Cu、Zn、Siのうちのいずれか一種以上を意味する。
本発明において、「FMとM成分を含み」とは、本発明の磁性材料には、その成分として必ずFM成分及びM成分を含有していることを意味する。ここで、上述のとおり、FM成分とは、Feを含み、更にCo及び/又はNiを含む成分を意味し、M成分とは、Mn、Tiのうちいずれか一種以上の成分を意味するが、M成分については、特に他の原子(具体的には、本願において「TM成分」と称する、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Cu、Zn、Siのうちのいずれか1種以上)で一定量置き換えられていてもよい。また、FM成分とM成分以外に酸素(O成分)が含有されていてもよい。さらにO成分やオキシ水酸化鉄などが副相として存在する場合は、O成分がH成分と結合したOH基(主に磁性粉体表面に存在するOH基)として含まれていてもよく、また、その他不可避の不純物、原料由来のKなどのアルカリ金属やClなどが含まれていてもよい。Kなどのアルカリ金属は、還元反応の促進作用を及ぼす場合があるという点で好適な成分である。
「磁性粉体」は、一般に磁性を有する粉体を言うが、本願では、本発明の磁性材料の粉体を「磁性材料粉体」と言う。よって、「磁性材料粉体」は「磁性粉体」に含まれる。
本発明において、「FMフェライト」と表記した場合は、マグネタイトFeのFe含有量の0.001以上99.999原子%以下をCo及び/又はNi成分で置き換えた組成を言う。
本発明は、ccs-(FM,M)相(第1相)と、その相よりもM成分含有量が多いM成分富化相(第2相)を含む磁性材料に関するもので、その最良な形態は、両者の相がナノレベルで混合して結合した「粉体」である。これらの磁性材料粉体をそのまま圧粉したり、焼結したりして各種機器に用いられる。また、用途によっては、樹脂などの有機化合物、ガラスやセラミックなどの無機化合物、またそれらの複合材料などを配合して成形することもできる。
以下、FM成分及びM成分を含む第1相、及びM成分が富化された第2相の組成、結晶構造や形態、結晶粒径と粉体粒径、又それらの製造方法、その中で特に、本発明の磁性材料の前駆体となるナノ複合酸化物粉体を製造する方法、その粉体を還元する方法、還元した粉体を固化する方法、さらにこれら製造方法の各工程で焼鈍する方法について説明する。
なお、本発明では、成分含有量を単に「含有量」と表記することがあるが、これには、原子比や原子百分率(%)で示す場合も含まれる。但し、成分含有量を原子百分率(%)で示す場合には、「含有量(原子%)」と表記することもある。
<第1相>
本発明において、第1相は、FM成分とM成分を含むbcc構造の立方晶(空間群Im3m)またはfcc構造の立方晶(空間群Fm3m)を結晶構造とする結晶である。この相のM成分含有量(原子%)は、その相中に含まれるFMとM成分の総和(総含有量)を100原子%として、好ましくは0.001原子%以上33原子%以下である。即ち、第1相の組成は、組成式を用いると、FM100-x(xは原子百分率で0.001≦x≦33)と表される。
ここでM成分含有量又はFM含有量とは、特に断わらない限り、それぞれ、その相に含まれるFM成分とM成分の総和(本願では、上述のとおり「総含有量」と称することもあるし、「総量」と称することもある。)に対するM成分又はFMの原子比の値をいう。本発明では、これを、その相中に含まれるFM成分とM成分の総和(総含有量)を100原子%として、原子百分率で表す場合もある。
また、ある特定の元素に対する成分含有量は、特に断わらない限り、その元素を含む相中のFM成分とM成分の総和(総含有量)に対する当該元素の原子比の値を言い、原子百分率で表す場合もある。例えばFe成分含有量とは、特に断わらない限り、それぞれ、その相に含まれるFM成分とM成分の総和(本願では、上述のとおり総含有量と称することもあるし、総量と称することもある。)に対するFe成分(本願では、単に「Fe」と称することもある。)の原子比の値を意味する。これを原子百分率で表す場合には、その相中に含まれるFM成分とM成分の総和(総含有量)を100原子%として表記することになる。
各M成分に共通する性質として、M成分含有量を33原子%以下にすることが、磁化の低下を抑制するうえで好ましい。また、M成分含有量を20原子%以下にすると、製造方法や条件によっては、1Tを超える磁化が実現できるのでより好ましい。さらに10原子%以下にすると、飽和磁化が1.6Tを超える磁性材料の製造が可能になるので特に好ましい。また、0.001原子%以上にすることが、Fe単独の場合と異なり、M成分添加の効果による軟磁性領域での磁気特性の調整、例えば磁気飽和抑制能の付加を可能にさせる点で好ましい。よって、特に好ましいM成分の含有量の範囲は、0.01原子%以上10原子%以下であり、この領域では、製造条件により、軟磁性から半硬磁性材料を調製することができ、特に高周波吸収能を有する軟磁性又は半硬磁性材料とすることができ、より好ましい電磁気特性を有した磁性材料の製造が可能となる。保磁力を少々犠牲にしてでも、さらに磁化が高い軟磁性材料としたい場合には、第1相のM成分含有量を5原子%以下にすることが好ましい。
上述したように、本発明の材料では、FM成分であるFe、Co及び/又はNiを含んでなる合金系において、Feの一部を適当量のCo及び/又はNiで置換していく(即ち、Fe量に対するCo及び/又はNi量を増やしていく)ことにより、bcc-Feの質量磁化(218emu/g)を上回る巨大な飽和磁化を実現しうる点が特徴的であるが、そのような巨大な飽和磁化を実現するためには、M成分含有量を制御することも好ましい効果をもたらす。各M成分に共通する性質として、FM成分に含まれるCo及び/又はNi成分量よりもM成分量を少なくすることが、bcc-Feの質量磁化(218emu/g)を上回る巨大な飽和磁化を実現させる上でより好ましい。
この場合の第1相中の「FM成分に含まれるCo及び/又はNi成分量」と「M成分量」の関係は、(Fea/100Cob/100Nic/100100-x(ここで、xは原子百分率で0.001≦x≦33であり、a,b,cは第1相に含まれるFeとCoとNiの総和を100原子%とした場合の原子百分率で0.001≦b+c≦99.999であり、MはTi、Mnのいずれか1種以上である)の組成式で表される組成を有することが望ましい。
更に、「M成分」の一部が「TM成分」で置換される場合、「FM成分に含まれるCo及び/又はNi成分量」と「M成分量」と「TM成分量」の関係は、(Fea/100Cob/100Nic/100100-x(Md/100TMe/100(ここで、xは原子百分率で0.001≦x≦33であり、a,b,cは第1相に含まれるFeとCoとNiの総和を100原子%とした場合の原子百分率で、a+b+c=100且つ0.001≦b+c≦99.999であり、d,eは第1相に含まれるM成分とTM成分の総和を100原子%とした場合の原子百分率で、d+e=100且つ0.001≦e<50であり、MはTi、Mnのいずれか1種以上であり、TMはZr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Cu、Zn、Siのうちのいずれか一種以上である)の組成式で表される組成を有することがより望ましい。この場合、(b+c)×(100-x)≧(d+e)×xの関係も満たすことが更に望ましい。
本発明では、FM成分とM成分を含む第1相(即ち、FM-M組成の第1相)は、bcc又はfcc構造をとる。本願ではこれらの相をbcc-(FM,M)又はfcc-(FM,M)とも称する。また、これらの構造(bcc及びfcc構造)はいずれも立方晶系(Cubic Crystal System)に属する構造であるため、本願ではこれら2相をまとめてccs-(FM,M)相と称することもある。高飽和磁化、低保磁力、原料供給の安定性を兼ね備えた磁性材料とする場合は、bcc構造を主体とする本発明の磁性材料が好ましいが、磁気飽和が抑制された優れた高周波用磁性材料とするなどの目的に応じ、fcc構造を有する本発明の磁性材料が選択される場合がある。
本発明の第1相のM成分含有量を100原子%とした時、そのM成分の0.001原子%以上50原子%未満は、TM成分(即ち、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Cu、Zn、Siのいずれか1種以上)で置換することができる。そのため、本発明においては、第1相に含まれるM成分の一部がTM成分によって置換されている組成を有する場合には、その組成中のM成分とTM成分を併せたものが上述した「M成分」に相当し、そのM成分含有量(具体的には、その組成中のM成分含有量とTM成分含有量の総和)は100原子%となる。これらのM成分の中で、数多くの元素種を本発明の軟磁性材料に添加すると磁性材料のエントロピーが増加して保磁力が低減される効果がある。
M成分にMn、Tiのうちいずれか一種以上を含むとき、特に飽和磁化が大きな軟磁性材料又は半硬磁性材料となる。M成分としてMn、Tiのうちいずれか一種以上を使用することは、還元処理や焼鈍処理における降温速度に大きく依存せず、本発明のナノ微結晶を容易に製造できる点でも有効である。M成分としてMn、Tiのうちいずれか一種以上を使用すると異方性磁場を低減させるので、本発明の軟磁性材料の成分としても好ましい。
M成分としてMn、Tiのうちいずれか一種以上を使用すると、還元工程での「不適切な粒成長」を抑えることが可能である。
TM成分としてMn、Tiのうちいずれか一種以上を使用することは、耐酸化性や成形性を向上させるので好ましい。
さらに、TM成分を共添加すると、上記の効果のみならず、低い保磁力と高い磁化が両立する特異な相乗効果が発現され得る。例えば、第1相がFM100-x(xは原子百分率で0.001≦x≦33)の組成式を有する場合に、そのM成分がTM成分によって0.01原子%以上50原子%未満の範囲で置換されたとすると、その組成式は、FM100-x(M100-yTMx/100(ここで、x、yは原子百分率で0.001≦x≦33、0.001≦y<50、MはTi,Mnのいずれか1種以上、TMはZr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Cu、Zn、Siのうち1種以上である)で表される。TM成分がこれらの種のいずれの1種以上であっても、第1相のTM成分含有量を100原子%としたときの原子百分率で0.001原子%以上の添加が、上記の共添加による効果の観点から好ましく、50原子%未満の添加が、本発明の磁性材料におけるM成分による諸効果の阻害防止という観点から好ましい。
FMの0.001原子%以上99原子%未満は「均質」なCo及び/又はNi成分でもよい。「均質」とは、相内の当該成分の含有量が概ね±4.99%以内の揺らぎに収まっている(即ち、例えば、10原子%のCo含有量を有する材料においては、各相のCo含有量(原子%)が9.501~10.499原子%の範囲に収まる)状態のことである。
本発明の磁性材料が「均質」なCo及び/又はNi成分組成分布を有することは、実施例で述べるように、分解能200nm程度のFE-SEM/EDX装置により、磁性材料上の1μm×1.5μm領域内において、均一且つ任意に10点以上の測定点を選び、EDX測定を行って、当該領域内における任意の2測定点間のFM成分濃度比が0.91倍以上1.1倍未満であることで判定する。この判定方法を「均質判定法」と言う。
課題を解決するための手段(8)で規定される本発明の磁性材料かどうかを判定するためには、上記均質判定法において、任意の2測定点が、第1相と第2相の組み合わせのみで構成されることを必要条件とする。均質判定法であると第1相同士、第2相同士のFM成分比を求めている場合も含まれるので、この方法でFM成分濃度比が0.91倍以上1.1倍未満である磁性材料であれば、十分上記(8)で規定される範囲にあることを保証するものである。
Coが共存すると飽和磁化が上昇するだけでなく、保磁力の低下効果もある。Ni含有量は、概ね5原子%以下であることが飽和磁化の向上という点で好ましく、0.001原子%以上50原子%未満であることが保磁力の低下という点で好ましい。飽和磁化や保磁力のバランスを考えてCoとNiを共添し、それらの比を0.001:99.999から99.999:0.001の範囲に調整することも適宜可能である。
なお「不適切な粒成長」とは、本発明の磁性材料のナノ微細組織が崩れ、均質な結晶組織を伴いながら結晶が粒成長することである。一方、本発明で適切とする「粒成長」は、本発明の特徴であるナノ微細構造を維持しながら粉体粒径が大きく成長するか、粉体粒径が大きく成長した後に不均化反応、相分離などにより結晶内にナノ微細構造が現れるか、或いはその両方である場合のいずれかである。特に断らない限り、本発明で単に「粒成長」と言う場合は、不適切でない粒成長のことを言い、概ね適切と言える粒成長を指すものとする。なお、適切な粒成長と不適切な粒成長のいずれの粒成長が起こった場合でも、単位質量当たり、或いは単位体積当たりの磁性材料の表面積が小さくなることから、一般に耐酸化性が向上する傾向にある。
本発明においては、「M成分」と表記した場合、又は「ccs-(FM,M)」相などの式中や磁性材料組成を論ずる文脈の中で「M」或いは「M成分」と表記した場合、M成分単独の場合だけでなく、M成分含有量の0.001原子%以上50原子%未満をTM成分で置き換えた組成も含む。また、工程中混入する不純物はできるだけ取り除く必要があるが、H、C、Al、S、Nの元素、或いはLi、K、Naなどのアルカリ金属、Mg、Ca、Srなどのアルカリ土類、希土類、Cl、F、Br、Iなどのハロゲンなどの不可避の不純物を含んでもよい。しかし、その含有量(原子%)は、全体(即ち、第1相に含まれるFMとM成分の総和)の5原子%以下、好ましくは2原子%以下、さらに好ましくは0.1原子%以下、特に好ましくは0.001原子%以下とする。これらの不純物が多く含有されるほど磁化が低下し、場合によっては保磁力にも悪影響を与え、用途によっては目標とする範囲を逸脱してしまうこともあるからである。一方で、Kのようなアルカリ金属のように、ある程度含有すると還元助剤の働きをする成分もあり、全体(即ち、第1相に含まれるFMとM成分の総和)の0.001原子%以上5原子%以下の範囲で含む方が、飽和磁化の高い磁性材料が得られる場合もある。従って、上記不純物は、本発明の目的を阻害する限り、含まれないのが最も望ましい。
M成分を含まないccs-FM相(即ち、FM成分のみから構成されるbcc又はfcc構造)は、第1相や第2相と区別し、第1相や第2相には含めない。M成分を含まないccs-FM相は、M成分以外の元素の含有量も極めて小さい場合、ナノ領域の粉体であっても、電気抵抗率に与える影響が芳しくなく、耐酸化性に乏しく、しかも切削加工性に劣る材質となるからである。但し、このM成分を含まないccs-FM相は、本発明の目的を阻害しない限り、別相として存在してもよい。なお、ccs-FM相の体積分率は、本発明が軟磁性材料の場合には、本発明の磁性材料全体に対して50体積%未満が好ましい。
ここでいう体積分率とは、磁性材料の全体の体積に対して、対象成分が占有する体積の割合のことである。
<第2相>
本発明において、第2相は、該相に含まれるFMとM成分の総和に対するM成分の含有量が、第1相に含まれるFMとM成分の総和に対するM成分の含有量よりも多い相である。換言すると、本発明において、第2相は、該相に含まれるFMとM成分の総和に対するM成分の原子百分率が、第1相に含まれるFMとM成分の総和に対するM成分の原子百分率よりも大きい相である。第2相としては、立方晶系に属するccs-(FM,M)相、M-FMフェライト相(代表的組成は(FM1-w相)、M-ウスタイト相など、M成分酸化物相(正方晶系のTiOなど)、又はそれらの混合物が挙げられる。
なお、本願では、ウスタイトは代表的組成FeO(ここで、fは通常0.85から1未満である)で表される相とする。また、M-ウスタイトはFe成分の一部をM成分で置換したものであり、代表的組成は(Fe1-zO(ここで、fは通常0.85から1未満である)とする。本明細書では、この相を単に(M,Fe)O相や(Fe,M)O相と表記する場合もある。
なお、本願におけるウスタイトには上記組成以外にも、代表的組成FMO(gは通常0.85から1未満である)で表される相も含まれる。当該M-ウスタイトはFM成分の一部をM成分で置換したものであり、代表的組成は(FM1-zO(gは通常0.85から1未満である)とする。本願では、この相を単に(M,FM)O相や(FM,M)O相と表記する場合もある。
なお、アモルファス相、共晶点組成相及び共析点組成相(本願では、「アモルファス相など」とも呼ぶ)も第2相になり得るが、これらに関しては、M成分含有量や還元条件によって異なるが、アモルファス相などが存在する際には、前述した既存のナノ結晶-アモルファス相分離型材料のような微結晶が島状となってアモルファスの海に浮かぶような微細構造は取らずに、第1相と分離して島状に存在することが多い。アモルファス相などの含有量は0.001から10体積%の間であって、この範囲よりも多くしないのが、磁化の低下抑制の観点から好ましい。さらに高磁化の磁性材料とするためには、5体積%以下とするのが好ましい。アモルファス相などは、不均化反応自体を制御するために、敢えて含有させることもあるが、この場合のアモルファス相などの含有量は、0.001体積%超とするのが、この反応制御効果の発揮という観点から好ましい。
ここでいう体積分率とは、磁性材料全体の体積に対して、対象成分が占有する体積の割合のことである。
上記の第2相は第1相より飽和磁化に劣るが、これらの相が併存することにより、電気抵抗率が大きく上昇する。さらに本発明において、半硬磁性材料を構成する時には、保磁力が向上する。逆に、本発明において、軟磁性材料を構成するときには、相の結晶構造、組成、微細構造、界面構造などによっては、それらと強磁性結合することにより、小さな保磁力を実現することができる。さらに第2相においても、第1相同様、そのM成分含有量の50原子%未満(但し、この場合、第2相のM成分の含有量を100原子%とする)をTM成分に置換することができる。ここで、本発明では、第2相の「M成分」も、上述した第1相の「M成分」と同様、第2相に含まれるM成分がTM成分によって置換されている組成を有する場合には、その組成中のM成分とTM成分を併せた場合も「M成分」という表記に含まれることがある。
<副相、その他の相>
FMもM成分も含まず、TM成分の化合物だけで混在する相は、第1相や第2相に含まれない。しかし、電気抵抗率、耐酸化性、焼結性、及び本発明の半硬磁性材料の電磁特性改善に寄与する場合がある。上記のTM成分の化合物相やFM化合物相などM成分を含まない相、及び、TM成分の含有量がM成分元素の含有量以上である相を本願では「副相」という。
第1相や第2相以外の相である、M成分を含まないウスタイト相、マグネタイト相(Fe)、マグヘマイト相(γ-Fe)、ヘマタイト相(α-Fe)、α-Fe相、γ-Fe相などの副相や、M成分含有の有無を問わずゲーサイト、アカゲナイト、レピドクロサイト、フェロオキシハイト、フェリヒドライト、グリーンラストなどのオキシ水酸化鉄相、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどの水酸化物、塩化カリウム、塩化ナトリウムなどの塩化物、フッ化物、炭化物、窒化物、水素化物、硫化物、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩なども含まれていてよいが、これらの体積は、本発明の磁性材料が高い飽和磁化を有するために、また継時的に安定した磁気特性や高い磁化を発揮するために、第1相の体積より少ないことが求められる。飽和磁化の低下を抑制する観点から、これらの相の含有量の好ましい範囲は、磁性材料全体の体積に対して50体積%以下である。
第1相、第2相及び副相を含めた全相のTM成分の含有量は、第1相及び第2相に含まれるM成分の上記全相に対する含有量を超えてはならない。TM成分がM成分含有量を超えて含まれると、M成分特有の電磁気特性への効果、例えば、結晶磁気異方性低減や電気抵抗率向上、さらに粉体表面の不働態化による耐酸化性向上など、その特異な特徴が失われてしまうからである。本願では、第1相及び/又は第2相のM成分含有量と言えば、このようなTM成分も含めた量を言う。
<第2相が第1相と同じ結晶構造を有する場合>
第2相が第1相と同じ結晶構造を有してもよいが、組成には相互に十分に差があることが望ましく、例えば、第2相中のFMとM成分の総和に対する第2相のM成分含有量は、第1相中のFMとM成分の総和に対する第1相のM成分含有量よりも多く、更に、その差が1.5倍以上であることが好ましい。
第2相のM成分含有量自体が100原子%を超えることはなく、また、第1相のM成分含有量の下限値が0.001原子%では、第2相のM成分含有量が第1相のM成分含有量の10倍を超えることはない。第2相のM成分含有量(原子%)は、好ましくは、第1相のM成分含有量(原子%)の90原子%以下である。第2相が常温で第1相と同じ結晶構造を保ったまま、M成分含有量(原子%)が90原子%を超えると(従って、第2相のM成分含有量が第1相のM成分含有量の9×10倍を超えると)、本発明の磁性材料全体の熱的安定性が悪くなることがあるためである。
上記で、第2相の「M成分含有量」が第1相の「1.5倍以上」である場合とは、各相のM成分含有量を有効数字1桁以上で求めたうえで、第2相のM成分含有量が第1相のM成分含有量の1.5倍以上になることをいう。
本発明は、前出のランダム磁気異方性モデル、若しくはそのモデルに準じた磁気異方性のゆらぎを利用した低保磁力化を目指したものであり、結晶学上独立している第1相と第2相が、ナノレベルで交換結合により磁気的に連結していること、或いは第1相と第2相を含めたccs相中のM成分含有量がナノスケールで空間的な変化がある(このことを本発明では「濃度のゆらぎ」ということがある)こと、のいずれかが重要である。但し、この2相のM成分組成比が近すぎると、その結晶相の結晶方位が同方向に揃っている場合があり、十分に低い保磁力が実現しない。したがって、好ましい第2相のM成分含有量は、第1相の1.5倍以上であるが、さらに好ましくは2.0倍以上である。
M成分含有量が本発明の磁性材料全体のM成分含有量よりも低い相(第1相)が存在すれば、M成分含有量が本発明の磁性材料より高い相(第2相)も同一の磁性材料内に存在することになる。そのため、それらが強磁性結合して等方性が実現していれば、本発明の磁性材料、具体的には軟磁性材料となるし、また第1相の界面に介在して保磁力を適切な範囲として電気抵抗を高める働きを持てば、本発明の磁性材料、具体的には半硬磁性材料となる。また、十分に等方化されていない場合でも、ある結晶相の中でM成分含有量の空間的な濃度のゆらぎがある場合、磁気異方性にゆらぎが生じ、ランダム異方性モデルと多少異なるメカニズムで保磁力が低下する場合もある。このようなメカニズムで保磁力が低下する本発明の磁性材料は総じて、その磁性材料中のM成分とFMの総和に対する当該M成分含有量が10原子%以下になっていることが多い。以上は、均質性の高い組成として、異相を徹底的に除去し、磁壁移動が阻害されないように設計された電磁鋼板、センダストなどの多くの既存の軟磁性材料には見られない本発明の磁性材料の一つの特徴であり、磁化反転が磁化の回転によって起こる磁性材料に共通した特徴とも言える。
なお、第1相のみ、第2相のみがナノレベルで交換結合により磁気的に連結している状態が含まれていてもよく、この場合でも隣り合うナノ結晶の結晶軸方位が揃っておらず、等方的であるか、第1相と第2相を含むccs相中にM成分含有量のナノスケールでの空間的な分布があることが重要である。しかし、本発明においては、第1相のみの微結晶で構成された磁性材料や第2相のみの微結晶で構成された磁性材料は達成されず、このような構造を含むような場合でも、本発明では、磁性材料内に第1相と第2相が必ず存在する。この理由は、ナノ結晶の生成自体が、本発明の磁性材料を製造するために用いる、M成分を含むFMフェライトの粉体であって、ナノスケールの大きさを有する粉体(本願では、「M-FMフェライトナノ粉体」或いは「M成分-FM成分フェライトナノ粉体」とも称する)の還元を端緒とする還元工程の各過程における不均化反応に大きく関与するからである。なお、本願では、ナノスケールの大きさのFMフェライト粉体を「FMフェライトナノ粉体」とも称し、また、ナノスケールとは、特に定めがない場合には、1nm以上1μm未満までのスケールをいう。
<第2相の特定>
以下に、第2相の特定の仕方について述べる。まず、上述の通り、第1相はccs-(FM,M)相であり、主に高い飽和磁化を保証する。第2相は、その相に含まれるFMとM成分の総和に対するM成分の含有量が第1相に含まれるFMとM成分の総和に対するM成分の含有量よりも多い相である。本発明では、第2相は、磁性材料全体のM成分含有量よりも多いccs-(FM,M)相でもよく、他の結晶相或いはアモルファス相、又はそれらの混合相でもよい。いずれであっても、本発明の軟磁性材料においては、保磁力を低く保つ効果があり、半硬磁性材料を含めても、耐酸化性を付与し電気抵抗率を向上させる効果がある。従って、第2相はこれらの効果を有する相の総体であるため、M成分の含有量が第1相よりも高い、先に例示した何れかの相の存在を示すことができれば本発明の磁性材料であるとわかる。もし、このような第2相が存在せず、第1相のみで構成されていれば、保磁力などの磁気特性、耐酸化性及び電気伝導率のうち何れかが劣るか、さらに加工性に乏しく、成形工程が煩雑にならざるを得ない磁性材料となる。
第2相がccs-(FM,M)相である場合、第1相とM成分組成が連続して変化している場合がある。或いは、材料を同定する方法によっては、第1相と第2相のM成分組成が連続的に変化しているように観察される場合がある。このような場合も、第2相のM成分含有量が第1相のM成分含有量の1.5倍以上となる必要がある。M成分としてMnが主成分であるときは、第2相のM成分含有量が第1相のM成分含有量の1.5倍以上で保磁力などの電磁気特性の調整が可能となるが、Mn以外のM成分が主成分となるときは、2倍以上がより望ましい。また、Mnが主成分のときも2倍以上であれば、保磁力の小さな軟磁性材料を得るうえで、好ましい範囲となる。
第1相や第2相を併せて、FMとM成分の組成比は1:1以下であることが望ましい。言い換えれば、磁性材料全体の組成に対して、その組成中のFM成分とM成分の総量に対する当該組成中のM成分の含有量は0.01原子%以上50原子%以下であることが望ましい。
第1相及び第2相を併せたM成分の含有量が50原子%以下であることは、飽和磁化の低下を避けるうえで好ましく、また0.01原子%以上であることは、耐酸化性などに対するM成分の添加効果がなく、保磁力が目的の用途に対応しない程度に高くなることを避けるうえで好ましい。さらに、耐酸化性や磁気特性のバランスが良いという観点から好ましい第1相及び第2相を併せたM成分の含有量(即ち、磁性材料全体におけるM成分の含有量)は、0.05原子%以上33原子%以下であり、そのうち特に好ましい範囲は、0.1原子%以上25原子%以下である。
第1相と第2相の体積比は任意であるが、第1相、第2相及び副相を合わせた本発明の磁性材料全体の体積に対して、第1相、又は第1相及び第2相中のccs-(FM,M)相の体積の総和は5体積%以上99.99体積%以下であることが好ましい。ccs-(FM,M)相は本発明の磁性材料の主な磁化を担うため、5体積%以上99.99体積%以下であることが、磁化の低下を避けるうえで好ましい。さらに、好ましくは25体積%以上、さらに好ましくは50体積%以上である。電気抵抗率をあまり低下させないで、特に高い磁化を実現させるためには、ccs-(FM,M)相の体積の総和を75体積%以上とするのが望ましい。
本発明の軟磁性材料の第2相の中には、強磁性か反強磁性(本願では、弱磁性もこの中に含める)の相があることが好ましく、その理由は第1相の結晶磁気異方性を低下させる効果があるからである。
<好ましい第2相の例>
本発明の磁性材料において、強磁性として好ましい第2相の代表例としては、第2相中のFM成分とM成分の総和を100原子%とした場合の第2相のM成分含有量が、第1相中のFM成分とM成分の総和を100原子%とした場合の第1相よりもM成分含有量が多い、ccs-(FM,M)相が挙げられる。中でも、このM成分含有量(原子%)が、第2相中のFM成分とM成分の総和を100原子%とした場合に、0.1原子%以上20原子%以下であることが好ましく、2原子%以上15原子%以下であることがさらに好ましく、5原子%以上10原子%以下であることが特に好ましい。
第1相も、第1相中のFMとM成分の総和を100原子%とした場合にM成分含有量を0.01原子%以上10原子%以下で含む場合、低い保磁力が実現する。しかしながら、この程度までM成分含有量が多くなると、2Tに近い飽和磁化を発揮できなくなることもある。この場合には、M成分含有量が0原子%超で5原子%よりも少ない第1相とM成分含有量が0.1原子%以上50原子%以下の第2相を組み合わせることにより、飽和磁化が大きく、保磁力の小さな磁性材料を実現することが好ましい。
続いて好ましい第2相としては、M-FMフェライト相とM―ウスタイト相が挙げられる。前者は、強磁性であり後者は反強磁性であるが、何れも、第1相の間にあれば、強磁性結合を促すことができる。これらの酸化物相はナノサイズで非常に微細な組織である場合もあり、特にM―ウスタイト相においては、数原子層の厚みで、ccs相中に微分散していたり、ccs微結晶相間に層状で存在したりしていることもある。このような酸化物層が存在する場合、数百nmから数十μmの領域で、ccs相の結晶方位が揃っていることがあるが、このような微構造でも、本発明の結晶粒径などの範囲に入っていれば、本発明の磁性材料に含まれる。特に上記構造の磁性材料が軟磁性材料である場合、ランダム異方性と多少異なったメカニズムで保磁力が低下している。そのメカニズムとは以下のようなものであると想定している。
不均化により、第1相中のFMとM成分の総和に対する第1相のM成分含有量と、第2相中のFMとM成分の総和に対する第2相のM成分含有量との間に差が生じていて、空間的にナノスケールの微細なM成分含有量の濃度のゆらぎがあれば、磁気異方性の空間的なゆらぎが生じ、外部磁場が付与されたときに一気に(あたかも共鳴現象が起こったように)磁化反転していくようなメカニズムに含まれる。上記の濃度のゆらぎは第2相が酸化物相である場合だけでなく、ccs-(FM,M)相の場合であっても、同様な保磁力低減の効果がある。
因みに、フェライト相が強磁性結合を促す例も知られてはいるが(この点について、国際公開第2009/057742号(以後、「特許文献3」と称する)や、N.Imaoka, Y.Koyama, T.Nakao, S.Nakaoka, T.Yamaguchi, E.Kakimoto, M.Tada, T.Nakagawa, and M.Abe, J.Appl.Phys., vol.103, No.7(2008) 07E129(以後、非特許文献3と称する)を参照)、いずれも、硬磁性材料のSmFe17相間にフェライト相が存在し、これらの相が強磁性結合して交換スプリング磁石を構成するものである。
しかし、本発明は軟磁性材料や半硬磁性材料に関するもので、上記の硬磁性の交換スプリング磁石とは発揮する機能が全く異なる。本発明において、M-FMフェライト相やM-ウスタイト相である第2相の存在によって、第1相間の交換相互作用を仲介して、このような第2相が第1相を取り囲むように存在すれば、電気抵抗も高く、保磁力も低減される。従って、特に本発明の軟磁性材料において非常に好ましい第2相の一つとなる。
一方、非磁性のM成分酸化物相が第2相中に存在すると、特に電気抵抗が向上するので好ましい。第1相間に存在していても、M-FMフェライト相のような強磁性結合が生じて磁気特性に直接的な効果をもたらさないが、これらの強磁性結合をした粉体の表面を覆うようにM成分酸化物が存在すると、電気抵抗や耐酸化性が向上するだけでなく、場合によっては保磁力を低減させる効果をもたらすこともある。
本発明の磁性材料において、第2相が酸化物相(具体的には、M-FMフェライト相、M-ウスタイト相、又はM成分酸化物相の何れか1種、或いはそれらのいずれか1種以上からなる混合相)である場合、その酸化物相の体積分率は、磁性材料全体の95体積%以下とするのが好ましく、より好ましくは75体積%以下、さらに好ましくは50体積%以下とする。例えばM-FMフェライト相は強磁性とはいえccs-(FM,M)相よりも磁化が低く、また、M-ウスタイト相もM-FMフェライト相よりも磁化が低い。また、M成分酸化物相は非磁性である。そのため、上記酸化物相を組み合わせた混合酸化物相は、組み合わせる酸化物の種類に拘わらず、その体積分率が磁性材料全体の95体積%を超えると本発明の磁性材料の磁化が極めて低くなる。それを回避するためには、上記混合酸化物相の体積分率は、磁性材料全体の95体積%以下とするのが好ましい。M-ウスタイト相やM成分酸化物相を主成分として組み合わせた混合酸化物相の場合には、これらの全酸化物相の含有量が75体積%を超えると磁化が低くなるので、それを回避するうえでは、磁性材料全体の75体積%以下とするのが好ましい。M成分酸化物相を主成分とする酸化物相の場合には、50体積%を超えたところで磁化の高い本発明の磁性材料の特徴が失われるので、それを回避するうえでは、磁性材料全体の50体積%以下とするのが好ましい。電気抵抗率をある程度維持しながら、特に磁化が高い磁性材料とするときは、上記M成分酸化物相を25体積%以下とするのが好ましい。
逆にM成分酸化物相などが存在すると電気抵抗率が上昇するため、積極的にM成分酸化物相などを含有させることもある。この場合は、その体積分率は0.001体積%以上が好ましく、特にあまり磁化の低下を伴わずにM成分酸化物などを存在させる場合で、有効に電気抵抗率を向上させる場合には0.01体積%以上がさらに好ましく、0.1体積%以上が特に好ましい。
また、例えば酸化物相がM-FMフェライトとM-ウスタイトの混合物の場合でも、好ましい体積分率の範囲などはM成分酸化物相の場合と同様である。
以上のように、第2相の好ましい相として、第1相よりもM成分含有量が多いccs-(FM,M)相、M-FMフェライト相、M-ウスタイト相、M成分酸化物相を例示したが、その中でM成分酸化物相以外の3種の相は強磁性体又は反強磁性体である。従って、これらの相が強磁性結合をせずに分離していると、磁気曲線には加成性があるので、これらの混合材料の磁気曲線はそれぞれの磁気曲線の単なる和となり、磁性材料全体の磁気曲線上に滑らかな段差が生じる。例えば外部磁場0から7.2MA/mの広い磁場範囲で磁化測定を行って得た、磁性材料全体の磁気曲線のうち1/4メジャーループ(7.2MA/mから、零磁場まで掃引したときの磁気曲線を1/4メジャーループと呼ぶ)の形状を観察すると、その1/4メジャーループ上には上記の事情が起因する滑らかな段差、或いはそれに基づく変曲点の存在が確かであると推測できる。一方、これらの異種の磁性材料が強磁性結合で一体をなす場合、7.2MA/mから零磁場の範囲のメジャーループ上に滑らかな段差や変曲点が見られず、単調増加する、上に凸の磁気曲線を呈する。強磁性結合の有無を見積もるためには、上述の粒界領域での微細構造観察などに加えて、以上の磁気曲線の詳細な観察を行うことが一つの目安となる。
<組成分布>
本願の実施例において、本発明の磁性材料の金属元素の局所的な組成分析は、主にEDX(エネルギー分散型X線分光法)により行われ、磁性材料全体の組成分析はXRF(蛍光X線元素分析法)により行われた。一般に第1相と第2相のM成分含有量は、SEM(走査型電子顕微鏡)、FE-SEM、或いはTEM(透過型電子顕微鏡)などに付属したEDX装置により測定する(本願においては、このEDXを付属したFE-SEMなどをFE-SEM/EDXなどと記載することがある)。装置の分解能にもよるが、第1相と第2相の結晶構造が300nm以下の微細な構造であれば、SEM或いはFE-SEMでは正確な組成分析はできないが、本発明の磁性材料のM成分やFe成分の差のみを検出するためであれば、補助的に利用することができる。例えば、M成分含有量が5原子%以上で、300nm未満の第2相を見出すには、磁性材料中のある1点を観測して、その定量値がM成分含有量として5原子%以上であることを確認すれば、その一点を中心として直径300nmの範囲内に、M成分含有量(原子%)が5原子%以上の組織或いはその組織の一部が存在することになる。また、逆にM成分含有量(原子%)が2原子%以下の第1相を見出すためには、磁性材料中のある1点の観測をして、その定量値がM成分含有量(原子%)として2原子%以下であることを確認すれば、その一点を中心として直径300nmの範囲内に、M成分含有量2原子%以下の組織或いはその組織の一部が存在することになる。
TEMに付属したEDX装置を用いて組成の分析を行うときは、例えば電子ビームを0.2nmに絞ることも可能で、非常に微細な組成分析を行うことが可能である。しかし逆に、ある一定の領域を満遍なく調べ、本発明の材料の全体像を知るためには、例えば6万点などといった大量のデータを扱う必要性が生じる。
即ち、上記の組成分布測定法を適宜選択して、本発明の磁性材料の組成上、構造上の特徴、例えば第1相、第2相の組成や結晶粒径などを特定しなければならない。
また、ccs-(FM,M)相の組成は、XRD(X線回折装置)により、回折ピークの位置を確認することでも、決定できる。例えば、bcc-(FM,M)相の回折ピークは全般にM成分含有量が多くなるにつれ、低角にずれていく傾向にあり、この中で(110)、(200)のピークの挙動を観察し、当該bcc-(FM,M)相からM成分を除いたbcc-FM相の回折位置と比較する(本発明の方法を参考にして、M成分やTM成分等を含まないFMフェライトナノ粉体を別途比較例として調製し比較する)ことで、またfcc-(FM,M)相においても上記と同様な比較をすることで、ccs-(FM,M)相のM成分含有量を有効数字1桁で知ることもできる。
本発明の特徴であるM組成が不均化し、多様な結晶相が存在することや、それらの結晶軸がランダムな配向をしているか否かを検証するのに役立つ。さらに、ccs-(FM,M)相と他の酸化物相を区別するためには、例えばSEM-EDXを用いた酸素特性X線面分布図を解析するのが簡便で有効である。
<磁性材料全体の組成>
本発明における磁性材料全体における各組成は、磁性材料全体の組成に対して、FM成分が20原子%以上99.999原子%以下、M成分が0.001原子%以上50原子%以下、O(酸素)成分が0原子%以上55原子%以下の範囲とし、これらを同時に満たすものが好ましい。さらに、Kなどのアルカリ金属が0.0001原子%以上5原子%以下で含まれてもよい。Kなどを含めた副相は全体の50体積%を超えないのが望ましい。
FMが20原子%以上の場合、飽和磁化が低くなるのを回避でき、99.999原子%以下の場合、耐酸化性が低くなることや、加工性が乏しくなることを回避できるので好ましい。M成分が0.001原子%以上の場合、耐酸化性が低くなることや、加工性が乏しくなることを回避でき、50原子%以下の場合、飽和磁化が低くなることを回避できるので、好ましい。Oは、第2相を構成するのに重要な元素となる場合には、55原子%以下の範囲が、飽和磁化が低いだけでなく、M成分-FMフェライトナノ粉体の還元による第1相や第2相への不均化反応が生じず、低保磁力の軟磁性材料への展開が難しくなることを回避できるので好ましい。本発明の磁性材料には必ずしも酸素を含む必要はないが、耐酸化性や電気抵抗率が顕著に高い磁性材料にするためには、僅かでも含まれる方が望ましい。例えば、後述する徐酸化工程で還元した金属粉体の表面を不働態化したり、或いはその操作によって固形磁性材料の結晶粒界の一部に、主にM成分酸化物を中心とする酸化層を存在させたりする場合で、この場合、本発明の磁性材料全体における各組成範囲は、FM成分(原子%)が20原子%以上99.998原子%以下、M成分(原子%)が0.001原子%以上50原子%以下、O成分(原子%)が0.001原子%以上55原子%以下の範囲とするのが望ましい。
本発明の磁性材料のさらに好ましい組成は、FM成分が50原子%以上99.98原子%以下、M成分が0.01原子%以上49.99原子%以下、O成分が0.01原子%以上49.99原子%以下であり、この範囲にある本発明の磁性材料は、飽和磁化と耐酸化性のバランスがよい。
さらに、FM成分が66.95原子%以上99.9原子%以下、M成分が0.05原子%以上33原子%以下、O成分が0.05原子%以上33原子%以下の組成範囲にある本発明の磁性材料は、電磁特性が優れ、耐酸化性に優れる点で好ましい。
上記組成範囲の中で、特に磁化が1T以上あるようなパフォーマンスに優れた、本発明の磁性材料とする場合は、FM成分が79.95原子%以上99.9原子%以下、M成分が0.05原子%以上20原子%以下、O成分が0.05原子%以上20原子%以下の組成範囲とするのが好ましい。
M成分の含有量にも依存するが、本発明においては軟磁性材料よりも半硬磁性材料の方が酸素を多く含有する傾向にある。
<磁気特性と電気特性、耐酸化性>
本発明のひとつは、保磁力が800A/m以下である軟磁性用途に好適な磁気特性と電気特性、並びに耐酸化性を有する磁性材料であるが、この点について以下に説明する。
ここにいう「磁気特性」とは、材料の磁化J(T)、飽和磁化J(T)、磁束密度(B)、残留磁束密度B(T)、交換スティフネス定数A(J/m)、結晶磁気異方性磁場H(A/m)、結晶磁気異方性エネルギーE(J/m)、結晶磁気異方性定数K(J/m)、保磁力HcB(A/m)、固有保磁力HcJ(A/m)、透磁率μμ、比透磁率μ、複素透磁率μμ、複素比透磁率μ、その実数項μ’、虚数項μ”及び絶対値|μ|のうち少なくとも一つを言う。本願明細書における「磁場」の単位は、SI単位系のA/mとcgsガウス単位系のOeを併用しているが、その換算式は、1(Oe)=1/(4π)×10(A/m)である。即ち、1Oeは約80A/mに相当する。本願明細書における「飽和磁化」、「残留磁束密度」の単位は、SI単位系のTと、cgsガウス単位系のemu/gを併用しているが、その換算式は、1(emu/g)=4π×d/10(T)、ここにd(Mg/m=g/cm)は密度である。従って、218emu/gの飽和磁化を持つFeは、d=7.87なので、SI単位系での飽和磁化の値Mは2.16Tとなる。なお、本願明細書中では、特に断らない限り、保磁力と言えば、固有保磁力HcJのことを言うものとする。
ここにいう「電気特性」とは、材料の電気抵抗率(=体積抵抗率)ρ(Ωm)であり、ここにいう「耐酸化性」とは各種酸化性雰囲気、例えば室温空気中などでの上記磁気特性の経時変化のことである。
上記磁気特性と電気特性を合わせて「電磁気特性」とも言う。
本発明の磁性材料において、磁化、飽和磁化、磁束密度、残留磁束密度、電気抵抗率はより高い方が好ましく、飽和磁化については0.3T或いは30emu/g以上の高さが望ましく、特に軟磁性材料に限ると100emu/g以上の高さが望ましく、電気抵抗率については1.5μΩm以上の高さが望ましい。他の本発明の磁気特性、例えば結晶磁気異方性定数、保磁力、透磁率、比透磁率などは半硬磁性材料とするか或いは軟磁性材料とするかを初めとして、用途に応じて適正に制御する。特に透磁率、比透磁率は、用途によっては必ずしも高い必要はなく、保磁力が十分に低くて鉄損を低く抑えられていれば、例えば敢えて比透磁率を10-1から10内外の大きさに調整して、特に直流重畳磁場下における磁気飽和を抑えることで、効率の低下を抑えたり、線形に制御しやすくしたりすることもできるし、或いは特許文献1,2の従来技術に記載されている材料の厚みと透磁率の関係に基づくと、透磁率を1桁下げる毎に、渦電流損失が生じる限界厚みを約3.2倍ずつ厚くすることもできる。本発明の特徴の一つは、磁壁移動による磁化反転ではなく、主に磁化の直接回転による磁化反転機構を備えるため、保磁力が低く磁壁移動による渦電流損失も少なく、鉄損を低く抑えることができ、また、外部磁場による磁化回転を抑制する何らかの局所的な磁気異方性を結晶境界に生じさせ、透磁率を低減できることである。
ここで、本発明の大きな特徴は、本発明のM成分とTM成分を併せて用いることにより例えばTM成分がない場合や、TM成分のみである場合に比べ、比透磁率を自由に制御することができ、目的に応じて磁気飽和抑制能(磁気飽和させない磁性材料の機能、或いは特性)を付与できる点にある。比透磁率を上昇させるTM成分としては、Zn、Si、Cu、Taが挙げられ、比透磁率を低下させるTM成分としては、Zr、Hf、V、Nb、Cr、Mo、Wが挙げられる。双方の性質を持つTM成分を適宜混合添加することで、要求性能に合わせた磁性材料が供給される。
因みに、本発明において、このような透磁率の調整ができる理由は、そのまま焼結するだけでも磁性材料の電気抵抗率が大きいため、渦電流による鉄損が小さく、そのため、保磁力を少々犠牲にして透磁率を抑制する材料設計を行うことによってヒステリシス損が多少増加しても、依然トータルの鉄損を小さく保つことができるからである。
本発明の軟磁性材料によれば、1.5μΩm以上の電気抵抗率を示し、半硬磁性材料においては、さらに高い電気抵抗率を示すことも可能である。
10μΩm以上の電気抵抗率を示す本発明の軟磁性材料では、電気抵抗率が増すにつれて飽和磁化が低下する傾向があるので、所望の電磁気特性に合わせて、原材料の組成や還元度合を決定する必要がある。特に1000μΩm未満が、本発明の磁性材料の磁化が高いという特徴を得るのに好ましい。よって、好ましい電気抵抗率の範囲は1.5μΩm以上1000μΩm未満である。
<結晶境界>
本発明の磁性材料が、軟磁性になるか半硬磁性になるかは、前述のように保磁力の大きさによって分かれるが、特にその微細構造と密接な関係がある。ccs-(FM,M)相は一見連続相に観察される場合があるが、図1の(A)及び(B)の本発明の一実施態様を示すSEM像に見られるとおり、多くの異相界面、結晶粒界を含み、また、接触双晶、貫入双晶などの単純双晶や集辺双晶、輪座双晶、多重双晶などの反復双晶を含む双晶、連晶、骸晶(本発明では、異相界面、多結晶粒界だけでなく、これらの様々な晶癖、晶相、連晶組織、転位などにより、結晶が区分されている場合、それらの境界面を総称して”結晶境界“と呼んでいる)などが含まれている。そして、通常よく見られる直線的な結晶粒界と異なって曲線群として結晶境界を呈する場合が多くあって、さらに、そのような組織においては、場所により大きくM成分含有量に差が見られる。このような微細構造を有する磁性材料は、軟磁性材料となる場合が多い。したがって、図1に示す本発明の磁性材料は、軟磁性材料であると推認できる。
本発明の磁性材料が軟磁性材料の場合、第1相と第2相は、第2相がccs-(FM,M)相である場合には、M-FMフェライトナノ粉体から出発して、粒成長を伴いながら、還元反応の進行にしたがい、組成の不均化反応とともに結晶格子中の酸素を失っていき、最終的に最大52体積%に及ぶ大きな体積減少が生じる。これが起因して、ccs-(FM,M)相である、第1相及び第2相は、水晶などの宝石、黄鉄鉱、霰石などの鉱物や岩石の結晶を見るような多彩な微細構造をナノスケールに縮小した形で保有しており、内部には、様々なM成分含有量を有した多様な相やナノ結晶が含まれている。
結晶粒界や連晶に見える組織も、M成分含有量には観測場所によって差が見られ、異相界面である場合もある。
<ランダム磁気異方性モデルと本発明特有の保磁力低下メカニズム>
ランダム異方性モデルで説明される本発明の軟磁性材料では、以下の3条件を充足していることが大切である。
(1)ccs-(FM,M)相の結晶粒径が小さいこと、
(2)交換相互作用により強磁性結合していること、
(3)ランダムな配向をしていること。
(3)について、特にccs相のM成分の含有量が10原子%以下である領域では、必ずしも必須ではなく、この場合、保磁力の低下はランダム異方性モデルとは異なる原理で生じている。即ち、第1相と第2相、第1相同志、第2相同志の何れか1種以上の相互作用により、ナノスケールのM成分含有量の濃度のゆらぎに基づく磁気異方性のゆらぎが生じて、磁化反転が促され、保磁力の低減がなされる。このメカニズムによる磁化反転機構は、本発明に特有のものであり、本発明者らが知りうる限り、本発明者らによって初めて見出されたものである。
還元時に粒成長や、強磁性相が連続するように粒子同士が融着していない場合や、粒子同士が分離してしまうような相分離が生じている場合に、本発明の磁性材料の保磁力を軟磁性領域に持っていくためには、その後に焼結などを施して固化、即ち、「第1相と第2相が、直接、或いは金属相若しくは無機物相を介して連続的に結合し、全体として塊状を成している状態」にするのが望ましい。
上記(2)の交換相互作用により強磁性結合するためには、交換相互作用が数nmの短距離秩序内で働く相互作用或いは力であることから、第1相同志が連結する場合では直接結合するか、第1相と第2相或いは第2相同志が連結する場合では、交換相互作用を伝えるために、第2相が強磁性か反強磁性である必要がある。第1相及び/又は第2相の一部が超常磁性領域にあったとしても、その材料自体がバルク状態では強磁性或いは反強磁性であるため、周囲の強磁性或いは反強磁性の相と十分交換結合していれば、交換相互作用を伝達する相にできる場合もある。
本発明の半硬磁性材料の場合は、以上の限りではないが、残留磁束密度の高い半硬磁性材料を得るには、上記の固化は必要である。
<第1相、第2相、磁性材料全体の平均結晶粒径>
本発明の軟磁性材料の第1相、又は第2相の平均結晶粒径、或いは磁性材料全体の平均結晶粒径は、1nm以上10μm未満であることが好ましい。第1相及び第2相の平均結晶粒径が10μm未満である場合、磁性材料全体の平均結晶粒径も10μm未満となる。
特に本発明の軟磁性材料に関しては、上記のランダム磁気異方性モデル或いは本発明に特有のメカニズムによる低保磁力化を実現させるために、第1相若しくは第2相の何れかはナノ領域にあることが好ましい。第1相、第2相ともに強磁性相である場合、双方とも平均結晶粒径が10μm未満であることが好ましく、1μm未満であることがランダム磁気異方性モデルに基づく低保磁力化を実現させるために好ましく、500nm以下であることがさらに好ましく、200nm以下であれば、M成分含有量にもよるが、本発明特有のメカニズムによる保磁力の顕著な低減効果もあって、特に好ましい。以上の場合、第2相より、第1相の磁気異方性エネルギーの方が大きい場合が多いので、特に、第1相が、10μm未満、好ましくは500nm以下、さらに好ましくは200nm以下であれば、保磁力は極めて小さくなり、各種トランス、モータ等に好適な軟磁性材料となる。
また1nm未満となると、室温で超常磁性となり、磁化や透磁率が極端に小さくなる場合があるので、1nm以上とすることが好ましい。上述でも触れたが、もし1nm未満の結晶粒やアモルファス状の相が存在する場合は、これらを1nm以上の結晶粒と十分に交換相互作用で連結させることが求められる。
第2相が強磁性相でない場合、上記のランダム異方性化モデル或いは本発明に特有のメカニズムによる保磁力低減に第2相は関与しないが、その存在により電気抵抗率が大きくなるため好ましい成分である。
本発明の半硬磁性材料の場合は、以上とは逆に保磁力を発現するために、第1相をナノレベルの平均結晶粒径に保ち、適度な表面酸化層を第2相としたり、第2相を数nmの平均結晶粒径として第1相の粒界に存在させたりして、半硬磁性領域の保磁力を発現しつつ高い磁化を保ち、耐酸化性を付与させる方法が有効である。
<結晶粒径の測定>
本発明の結晶粒径の測定はSEM法、TEM法又は金属顕微鏡法で得た像を用いる。観察した範囲内で、異相界面や結晶粒界だけでなく全ての結晶境界を観察し、それに囲まれた部分の結晶領域の径を結晶粒径とする。結晶境界が見えにくい場合は、ナイタール溶液などを用いた湿式法やドライエッチング法などを用いて結晶境界をエッチングする方がよい。平均結晶粒径は、代表的な部分を選び、最低100個の結晶粒が含まれている領域で計測することを原則とする。これより少なくてもよいが、その場合は、統計的に十分全体を代表する部分が存在していて、その部分を計測していることが求められる。平均結晶粒径は、観測領域を撮影して、その写真平面(対象の撮影面への拡大射影面)上に適当な直角四角形領域を定め、その内部にJeffry法を適用して求める。なお、SEMや金属顕微鏡で観察した場合は、分解能に対して結晶境界幅が小さすぎて観測されないこともあるが、その場合、結晶粒径の計測値は実際の結晶粒径の上限値を与える。具体的には、上限が10μmの結晶粒径測定値を有していればよい。但し、例えばXRD上で明確な回折ピークを持たない、超常磁性が磁気曲線上で確認されるなどの現象から、磁性材料の一部乃至全部が結晶粒径の下限である1nmを切る可能性が示された場合は、TEM観察により実際の結晶粒径を改めて決定しなければならない。また、本発明において結晶境界とは関わらない結晶粒径の測定が必要な場合がある。即ち、M成分含有量の濃度のゆらぎにより、微細に結晶組織が変調している場合などであって、そのような微細構造を有する本発明の磁性材料の結晶粒径は、そのM成分含有量の変調幅を結晶粒径とする。この結晶粒径はTEM-EDX解析などで決定する場合が多いが、その大きさは、次の項で記載する結晶子サイズとほぼ対応している場合が多い。
<結晶子サイズの測定>
結晶子とは、結晶物質を構成する顕微鏡的レベルでの小さな単結晶のことであり、多結晶を構成する個々の結晶(いわゆる結晶粒)よりも小さい。
本発明では、不均化反応により相分離が生じ、第1相及び/又は第2相のccs相のM成分含有量に組成幅が生じる。M成分含有量により、X線の回折線ピーク位置は変化するので、例えばbcc相の(200)における回折線の線幅を求め、これにより結晶子サイズを決定しても、誤差が大きくなる。そのため、この方法により得られる結晶子サイズは、M成分を含むbcc相構造の結晶の場合、有意とは認められないこともあり得る。このように、結晶子サイズが有意とは認められない場合もあり得ることから、本願では、上述のようにbcc相の(200)における回折線に基づいて得られた結晶子サイズを「見掛けの結晶子サイズ」と呼ぶ。
他方、FM成分に含まれるNiやCoは、Feと原子半径が近く、不均化の度合いもM成分ほどではなく、組成分布による結晶子サイズの大きさの変化はほとんど見られない。そのため、本発明のように、上記の方法により得られたFM成分からなる結晶(例えば、磁性材料として、少なくとも第1相が(Fea/100Cob/100Nic/100100-x(ここで、xは原子百分率で0.001≦x≦33であり、a,b,cは第1相に含まれるFeとCoとNiの総和を100原子%とした場合の原子百分率で、a+b+c=100且つ0.001≦b+c≦99.999である)の組成式で表される組成のbcc又はfcc相を有する結晶)の結晶子サイズの値は有意である。
また、M成分を含むbcc又はfcc相構造の結晶の場合でも、本発明のように、bcc相のM成分含有量が0.001原子%以上2原子%以下の場合(例えば、少なくとも第1相が(Fea/100Cob/100Nic/100100-x(ここで、xは原子百分率で0.001≦x≦2であり、a,b,cは第1相に含まれるFeとCoとNiの総和を100原子%とした場合の原子百分率で、a+b+c=100且つ0.001≦b+c≦99.999である)の組成式で表される組成のbcc又はfcc相を有する磁性材料の場合)、(200)の回折線のずれがとても小さいので、1nm以上500nm以下の範囲で、有効数字1桁の見掛けの結晶子サイズを測定しても、実質的にその「結晶子サイズ」と同視できる。これらのことは、fcc相についても言うことができる。
そのため、このような場合の見掛けの結晶子サイズを本願では、単に「結晶子サイズ」と呼ぶ。
具体的には、本発明における「結晶子サイズ」は、Kα回折線の影響を除いた(200)回折線幅とシェラーの式を用い、無次元形状因子を0.9として、(200)回折線幅(bcc構造及びfcc構造の場合)又は(110)回折線幅(fcc構造の場合)を用いて求めた。
第1相がbcc相である場合、第2相はbcc、fcc及びその他の構造を取り得るがあるが、第1相がfcc相である場合は、第2相の構造はbcc構造以外の構造となる。その好ましいbcc(fcc)相の結晶子サイズの範囲は1nm以上500nm未満である。
1nm未満となると、室温で超常磁性となり、磁化や透磁率が極端に小さくなる場合があるので、1nm以上とすることが好ましい。
bcc相の結晶子サイズが500nm以下とすると、保磁力は軟磁性領域に入って極めて小さくなり、各種トランス、モータ等に好適な軟磁性材料となるので好ましい。さらに、200nm以下は、M成分含有量の低い領域であるから2Tを超える高い磁化が得られるだけでなく、低い保磁力も同時に達成でき、非常に好ましい範囲である。
見掛けの結晶子サイズの大きさは、一般的の結晶では、ccs相(bcc及び/又はfcc相)のM成分含有量(原子%)が0.001原子%以上2原子%以下の材料(例えば、少なくとも第1相が(Fea/100Cob/100Nic/100100-x(ここで、xは原子百分率で0.001≦x≦2であり、a,b,cは第1相に含まれるFeとCoとNiの総和を100原子%とした場合の原子百分率で、a+b+c=100且つ0.001≦b+c≦99.999である)の組成式で表される組成のbcc又はfcc相を有する磁性材料)の結晶子サイズに比べ、かなり小さめに測定される危険性がある。しかしながら、上述の理由により、本発明(例えば、磁性材料として、少なくとも第1相が(Fea/100Cob/100Nic/100100-x(ここで、xは原子百分率で0.001≦x≦33であり、a,b,cは第1相に含まれるFeとCoとNiの総和を100原子%とした場合の原子百分率で、a+b+c=100且つ0.001≦b+c≦99.999である)の組成式で表される組成のbcc又はfcc相を有する結晶)では、例えば見掛けの結晶子サイズの大きさを1nm以上500nm以下の範囲内の1nm以上200nm以下の範囲内に限定すれば、上記で述べた結晶子サイズと磁気特性の好ましさの関係は維持される。
<軟磁性材料の大きさ>
本発明の軟磁性材料の粉体の大きさは10nm以上5mm以下が好ましい。10nm未満であると、保磁力が十分小さくならず、5mmを超えると、焼結の際に大きな歪みがかかり、固化後の焼鈍処理が無いと保磁力が反って大きくなる。さらに好ましくは100nm以上1mm以下であり、特に好ましくは0.5μm以上500μm以下である。この領域に平均粉体粒径が収まれば、保磁力の低い軟磁性材料となる。また、上記で規定した各平均粉体粒径範囲内で粒径分布が十分広ければ、比較的小さな圧力で容易に高充填が達成され、固化した成形体の体積当たりの磁化が大きくなるため、好ましい。粉体粒径が大きすぎると磁壁の移動が励起される場合があり、本発明の軟磁性材料の製造過程における、不均化反応によって形成される異相により、その磁壁移動が妨げられ、むしろ保磁力が大きくなる場合もある。そのため、本発明の軟磁性材料の成形の際、適切な粉体粒径を有した本発明の磁性材料粉体の表面が酸化された状態であった方がよい場合がある。M成分を含む合金は、酸化により表面に非磁性のM成分酸化物相の不働態膜を形成することがあるため、耐酸化性が極めて優れるだけでなく、保磁力の低減、電気抵抗率の向上などの点でも効果がある。粉体表面の適切な徐酸化、空気中での各工程ハンドリング、還元性雰囲気だけでなく、不活性ガス雰囲気などでの固化処理なども有効である。
<半硬磁性材料の大きさ>
本発明の半硬磁性材料の磁性粉体の平均粉体粒径は10nm以上10μm以下の範囲にあるのが好ましい。10nm未満であると成形しづらく、合成樹脂やセラミックに分散して利用する際も分散性が極めて悪いことがある。また10μmを超える平均粉体粒径では、保磁力が軟磁性領域に至るので、本発明の軟磁性材料の範疇に属する。さらに好ましい平均粉体粒径は10nm以上1μm以下で、この範囲であれば、飽和磁化と保磁力双方のバランスが取れた半硬磁性材料となる。
<平均粉体粒径の測定>
本発明の磁性材料の粉体粒径は、主としてレーザー回折式粒度分布計を用いて体積相当径分布を測定し、その分布曲線より求めたメジアン径によって評価する。又は粉体のSEM法やTEM法で得た写真、又は金属顕微鏡写真を元に代表的な部分を選び、最低100個の直径を計測して求める。これより少なくてもよいが、その場合は、統計的に十分全体を代表する部分が存在していて、その部分を計測していることが求められる。特に500nmを下回る粉体、1mmを超える粉体の粒径を計測するときは、SEMやTEMを用いる方法を優先する。又、N種類(N≦2)の測定法又は測定装置を併用し、合計n回の測定(N≦n)を行った場合、それらの数値Rは、R/2≦R≦2Rの間にある必要があって、その場合、下限と上限の相乗平均であるRを持って平均粉体粒径を決定する。
以上のように、本発明の磁性材料の粉体粒径の測定法は、原則として、(1)計測値が500nm以上1mm以下である場合、レーザー回折式粒度分布計を優先し、(2)500nm未満又は1mmを超える場合は、顕微鏡法を優先する。(3)500nm以上1mm以下で(1)と(2)を併用する場合は、上記Rを持って平均粉体粒径を決定する。本願では、粉体粒径の標記は、(1)或いは(2)の場合、有効数字1桁乃至2桁であり、(3)の場合は有効数字1桁で表現する。粉体粒径の測定法を併用する理由は、500nm直上、1mm直下の粉体粒径を有する場合、(1)の方法では有効数字一桁でも不正確な値となる可能性があり、一方、(2)の方法では局所的な情報でないことを確かめるのに手間を要するので、(1)の方法でまず平均粉体粒径の値を得て、(2)の方法でも簡便に値を得ることにより、両者を比較検討し、上記Rを持って平均粉体粒径を決定するのが、非常に合理的であるからである。本願では、本発明の磁性材料の粉体の平均粒径を、以上の方法によって決定している。但し、(1)と(3)、或いは(2)と(3)が有効数字一桁で一致しない場合は、平均粉体粒径範囲によって、再度(1)又は(2)で精密に測定し、Rを決定しなければならない。但し、明らかに強い凝集があって(1)で粉体粒径を求めるのが不適切であったり、あまりに不均一でサンプル画像によって見積もられる粉体粒径が極端に異なって明らかに(2)で粉体粒径を定めるのが不適切であったり、さらには測定装置の仕様によっては、上記の粉体粒径測定法を定める基準とした500nm及び1mmという区分が不適切であったりなど、明白な不適切事由が存在する場合は、上記原則に依らず、(1)、(2)又は(3)の何れかの手法を限定的に選定し直して採用してもよい。本発明の磁性材料を、それ以外の磁性材料と区別する為だけであれば、平均粉体粒径は有効数字1桁で決定されていれば足りる。
なお、例えばM成分含有量が10原子%以下のM-FMフェライトナノ粉体を1000℃以上に還元する場合など、マクロな粉体形状が、多くの貫通孔である中空部分を内部に含む立体網目状、いわばスポンジ形状となる場合がある。これらは、還元反応により粒成長が進むと同時に結晶格子から酸素が抜けて大きな体積減少が生ずることにより形成されるものと考えている。この場合の粉体粒径は、内部の中空部分の体積を含んで計測される。
<固形磁性材料>
本発明の磁性材料は、第1相と第2相が、直接、或いは、金属相若しくは無機物相を介して連続的に結合し、全体として塊状を成している状態の磁性材料(本願では、「固形磁性材料」とも称する。)として活用できる。また、前述したように、粉体の中に多くのナノ結晶がすでに結合されている場合には、その粉体を樹脂などの有機化合物、ガラスやセラミックなどの無機化合物、またそれらの複合材料などを配合して成形することもできる。
<充填率>
充填率について、本発明の目的を達成できる限り特に限定はないが、M成分の少ない本発明の磁性材料の場合は、60体積%以上100体積%以下とするのが、耐酸化性、及び電気抵抗率と磁化の高さのバランスの観点から優れているので好ましい。
ここにいう充填率とは、空隙も含む本発明の磁性材料全体の体積に対する本発明の磁性材料の体積(即ち、空隙や樹脂などの本発明の磁性材料でない部分を除いた、本発明の磁性材料のみによって占有される体積)の割合を百分率で表したものである。
上記充填率のさらに好ましい範囲は80体積%以上であり、特に好ましくは90体積%以上である。本発明の磁性材料はもともと耐酸化性が高いが、充填率が大きくなるほど、さらに耐酸化性が増し、適用される用途範囲が広がるだけでなく、飽和磁化が向上して、高いパフォーマンスを有した磁性材料が得られる。また、本発明の軟磁性材料においては、粉体同志の結合が高まり保磁力が低下する効果ももたらす。
<本発明の磁性粉体、固形磁性材料の特徴>
本発明の磁性材料粉体は、フェライトのように、焼結可能な粉体材料であることが大きな特徴の一つである。0.5mm以上の厚みを持った各種固形磁性材料を容易に製造することができる。さらに1mm以上、そして5mm以上の厚みを持った各種固形磁性材料でも、10cm以下の厚みであれば、焼結などにより、比較的容易に製造可能である。
さらに、本発明の磁性材料の一つの特徴は、電気抵抗率が大きいことである。他の金属系圧延材料や薄帯材料が、結晶粒界、異相や欠陥を含まないような製法で作られるのに対し、本発明の磁性材料粉体は多くの結晶境界や多様な相を含んでおり、それ自体電気抵抗率を上昇させる効果がある。その上、粉体を固化する際には、特に固化前の粉体の表面酸化層(即ち、第1相や第2相の表面に存在するM成分酸化物相、ウスタイト、マグネタイト、M-FMフェライト、M-ウスタイト、M-ヘマタイト、アモルファスなどの酸素量が高い層、中でもM成分を多く含む酸化物層)及び/又は金属層(即ち、M成分を多く含む金属層)が介在するので、バルク体の電気抵抗率も上昇する。
特に、電気抵抗率を上昇させる表面酸化層の好ましい構成化合物としては、M成分酸化物相、M-ウスタイト、M-FMフェライトのうち少なくとも1種が挙げられる。
本発明の磁性材料が上記の特徴を有するのは、本発明が、高磁化であって高周波用途の他の金属系軟磁性材料とは本質的に異なった方法で形成された磁性材料、即ちM-FMフェライトナノ粉体を還元して、まずナノ微結晶を有する金属粉体を製造し、さらにそれを成形して固形磁性材料とする、ビルドアップ型のバルク磁性材料を主に提供しているからである。
また、上述のとおり、珪素鋼で代表される既存の金属系軟磁性材料に比べて電気抵抗が高いために、例えば回転機器などを製造する際に通常必要とされる積層工程などがかなり簡略化できる。仮に本発明の磁性材料の電気抵抗率が珪素鋼の約30倍とすると、渦電流が生じない厚みの限界は特許文献1、2の記載に基づけば約5倍となるので、積層が必要な場合でも積層数も1/5となる。例えば、周波数が667Hzの高回転領域のモータのステータに適用する際にも、厚みが1.5mmまで許容される。
本発明の固形磁性材料は、樹脂などのバインダを含まず、かつ密度が高く、切削加工及び/又は塑性加工により、任意の形状に、通常の加工機で容易に加工することができる。特に、工業的利用価値の高い角柱状、円筒状、リング状、円板状又は平板状などの形状に、容易に加工できることが大きな特徴の一つである。一旦これらの形状に加工した後、さらにそれらに切削加工などを施し、瓦状や任意の底辺形状を有する角柱などに加工することも可能である。即ち、任意の形状や、円筒面を含む曲面或いは平面により囲まれたあらゆる形態に、容易に切削加工及び/塑性加工を施すことが可能である。ここで言う切削加工とは、一般的な金属材料の切削加工であり、鋸、旋盤、フライス盤、ボール盤、砥石などによる機械加工であり、塑性加工とは、プレスによる型抜きや成形、圧延、爆発成形などである。また、冷間加工後の歪み除去のために、常温から1500℃の範囲で焼鈍を行うことができる。
<製造方法>
次に本発明の磁性材料の製造方法について記載するが、特にこれらに限定されるものではない。
本発明の磁性材料の製造方法は、
(1)M-FMフェライトナノ粉体製造工程
(2)還元工程
の両工程を含み、必要に応じて、さらに以下の工程のいずれか1工程以上を含んでもよい。
(3)徐酸化工程
(4)成形工程
(5)焼鈍工程
以下に、それぞれの工程について、具体的に述べる。
(1)M-FMフェライトナノ粉体製造工程(本願では、「(1)の工程」とも称する。)
本発明の磁性材料の原料であるナノ磁性粉体の好ましい製造工程としては、湿式合成法を用いて全室温で合成する方法を備えるものがある。
公知のフェライト微粉体の製造方法としては、乾式ビーズミル法、乾式ジェットミル法、プラズマジェット法、アーク法、超音波噴霧法、鉄カルボニル気相分解法などがあり、これらの方法を用いても、本発明の磁性材料が構成されれば好ましい製造法である。但し、本発明の本質である、組成が不均化したナノ結晶を得るためには、主として水溶液を用いた湿式法を採用するのが最も工程が簡便で好ましい。
本製造工程は、特許文献3に記載されている「フェライトめっき法」を本発明の磁性材料を製造するために使用するM-FMフェライトナノ粉体の製造工程に応用したものである。
通常の「フェライトめっき法」は、粉体表面めっきだけでなく、薄膜などにも応用され、また、その反応機構なども既に開示されているが(例えば、阿部正紀、日本応用磁気学会誌、22巻、9号(1998)1225頁(以後、「非特許文献4」と称する。)や国際公開第2003/015109号(以後、「特許文献4」と称する。)を参照)、本製造工程においては、このような「フェライトめっき法」とは異なり、めっきの基材となる粉体表面は利用しない。本製造工程においては、フェライトめっきに利用される原料など(例えば、塩化クロム及び塩化鉄)を100℃以下の溶液中で反応させて、強磁性で結晶性のM-FMフェライトナノ粉体そのものを直接合成する。本願では、この工程(或いは方法)を「M-FMフェライトナノ粉体製造工程」(或いは「M-FMフェライトナノ粉体製造法」)と呼ぶ。
以下に、スピネル構造を有した「M-FMフェライトナノ粉体製造工程」に関して例示して説明する。
予め酸性領域に調整した適量の水溶液を容器(本願では、反応場とも称する)に入れ、室温大気下、超音波励起しながら、若しくは適切な強度或いは回転数で、機械的撹拌を行いながら、反応液とともにpH調整液を同時に滴下して、酸性からアルカリ性領域に溶液pHを徐々に変化させ、M-FMフェライトナノ粒子を反応場中に生成させる。その後、溶液とM-FMフェライトナノ粉体を分離し、乾燥して平均粉体粒径1nm以上1000nm(1μm)未満のM-FMフェライト粉体を得る。以上の方法は、工程が簡便であるため、コスト的に安価な方法として挙げられる。特に、本発明の実施例で挙げられた例は、全工程が室温でなされており、そのため、この熱源を使用しない製造工程によって、設備費用やランニングコストなどの負担が軽減される。本発明で用いられるM-FMフェライトナノ粉末を製造するための方法は、勿論上記製法に限られるわけではないが、上記製法で用いられる反応開始前の反応場の初期液(本願では、これを反応場液とも称する)、反応液、そしてpH調整液に関して、以下に説明を加える。
反応場液としては、酸性溶液が好ましく、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸などの無機酸のほか、金属塩、さらにその複塩や錯塩溶液などを水などの親水性溶媒に溶解した溶液(例えば、塩化鉄溶液やM成分塩化物溶液等)、若しくは、有機酸の水溶液(例えば、酢酸やシュウ酸等)などの親水性溶媒溶液、さらにそれらの組み合わせなども使用可能である。反応場液として、予め反応液を反応場に用意することは効率的にM-FMフェライトナノ粉体の合成反応を進めるのに有効である。pHは-1未満であると、反応場を提供する材質に制限が生じ、また不可避ではない不純物の混入を許してしまう場合があるので、-1以上7未満の間で制御することが望まれる。反応場での反応効率を高め、不要な不純物の溶出、析出を最小限に食い止めるために、特に好ましいpH領域は0以上7未満である。反応効率と収率のバランスがよいpH領域として、さらに好ましくは1以上6.5未満である。反応場としての溶媒は、有機溶媒などのうち親水溶媒も使用できるが、無機塩が十分電離できるように、水が含まれることが好ましい。
反応液は、塩化鉄を含むFM成分塩化物、M成分塩化物などの塩化物、硝酸鉄を含むFM成分硝酸塩、M成分硝酸塩などの硝酸塩、或いは、FM成分及び/又はM成分(任意にTM成分を含んでもよい)を含む、亜硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、若しくはフッ化物などの無機塩の水を主成分とする溶液でも、場合よっては有機酸塩の水などの親水性溶媒を主成分とする溶液も必要に応じて使用可能である。また、それらの組み合わせでもよい。但し、反応液の中には、FM成分イオンとM成分イオンを含むことが必須である。反応液中のFM成分イオンについて述べると、二価のFMイオン(Fe2+と、Ni2+及び/又はCo2+)のみの場合と、三価のFM成分イオン(Fe3+と、Ni3+及び/又はCo3+)との混合物の場合と、三価のFM成分イオンのみの場合の何れでもよいが、FM3+イオンのみの場合は、M成分元素の二価以下の金属イオンが含まれている必要がある。反応液中のM成分イオンの価数としては、一価、二価、三価、四価、五価、或いは六価が代表的であるが、反応液或いは反応場液中においては、二価以上六価以下が反応の均質性の点で特に優れる。
M成分塩化物(M成分と塩素が結合した物質、MnClやTiCl)水溶液は、予め水溶液とした市販品を使用してもよいが、任意の濃度の水溶液或いはTM成分塩化物水溶液を得るために固体か原液から調製する際は、水に溶けるときに爆発的に反応する危険があるので、氷冷などで溶液を冷却しながら混合する方法が推奨される。また、大気に触れると塩化水素を発煙するので、酸素濃度抑えたグローブボックス中で取り扱う方が望ましい。さらに、水溶液は塩酸酸性にしておくか、或いは濃塩酸を使用することにより、M成分塩化物やオキシ塩化物等が沈殿したり、溶解しない成分が残ったりせずに、着色はあっても透明な水溶液が得られる。
pH調整液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化アンモニウムなどのアルカリ溶液や、塩酸などの酸性溶液、及びその組み合わせが挙げられる。酢酸-酢酸ナトリウム混合溶液のようなpH緩衝液の使用やキレート化合物などの添加なども可能である。
酸化剤は必ずしも必須ではないが、反応場液及び反応液中のFeイオンとして、Fe2+イオンのみが含まれている場合には、必須な成分である。酸化剤の例としては、亜硝酸塩、硝酸塩、過酸化水素水、塩素酸塩、過塩素酸、次亜塩素酸、臭素酸塩、有機過酸化物、溶存酸素水など、及びそれらの組み合わせが挙げられる。大気中や酸素濃度が制御された雰囲気中で撹拌することによって、M-FMフェライトナノ粒子反応場へ連続的に、酸化剤としての働きを持つ溶存酸素が供給されている状況を保ち、反応の制御を行うことも有効である。また、反応場にバブリングするなどして、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスを連続的あるいは一時的に導入し、酸素の酸化作用を制限することによって、他の酸化剤の効果を阻害せず、安定して反応制御を行うこともできる。
典型的なM-FMフェライトナノ粉体製造法では、以下のような反応機構でM-FMフェライトナノ粒子の形成が進む。M-FMフェライトナノ粒子の核は、反応液中にグリーンラストのような中間生成物を介して、或いは直接生成する。反応液としてFe2+イオンが含まれており、これが既に生成した粉体核、或いはある程度成長した粉体表面のOH基に吸着され、Hを放出する。次いで空気中の酸素や酸化剤、陽極電流(e)などによって酸化反応を行うと、吸着されたFe2+イオンの一部がFe3+イオンに酸化される。液中のFe2+イオンを含むFM2+イオン、又はFe2+イオンを含むFM2+イオン(或いは、FM3+イオン、さらにFM2+イオンを含めた混合価数イオン)及びM3+イオン(或いは、M2+イオン、M4+イオン、M5+イオン、M6+イオン、さらにM3+イオンを含めた混合価数イオン)が、既に吸着していた金属イオン上に再び吸着しつつ、加水分解を伴いながら、Hを放出してスピネル構造を有したFMフェライト相が生成する。このFMフェライト相の表面には、OH基が存在しているので、再び金属イオンが吸着して、同様のプロセスが繰り返され、M-FMフェライトナノ粒子に成長する。
この反応機構のなかで、Fe2+を主体とするFM2+イオンとM3+から直接スピネル構造のフェライトに変化させるためには、FeのpH-電位図における平衡曲線で、Fe2+イオンとフェライトを仕切る線を横切るように、pHと酸化還元電位を調整しながら、Fe2+イオンの安定な領域からフェライトが析出する領域に、反応系をゆっくりとずらすのがよい。例えばM3+を用いた場合、特別な場合を除いて反応初期から三価の状態であり、酸化還元電位変化に対する影響はほとんどなく、多くの場合Feの酸化還元電位の変化により反応(即ち混合溶液からフェライト固相への進行)が記述される。他の価数のM成分元素のイオンが含まれ、そのイオンの酸化数が変化し反応に関与する場合も、その組成や温度に対応するpH-電位図を用いるか、或いは予測することにより、同様な議論ができる。従って、pH調整剤や酸化剤の種類、濃度、添加方法などの条件を適宜調整しながらフェライト相を生成することが望ましい。
一般的によく知られているフェライトナノ粉体の製造法では、酸性側で反応液を調整し、一気にアルカリ溶液を添加するなどして反応場を塩基性領域とし、共沈によって微粒子を瞬時に発生させることが多い。M-FMフェライトナノ粉体を製造する場合であれば、FM成分とM成分の溶解度積の差により、不均一にならないように配慮されたものと考えることができる。勿論、この方法で調製してもよく、非常に小さなナノ粒子を作製することができるので、本発明の磁性材料のFMフェライト原料としても使用できる。
一方、本発明の実施例では、反応液を滴下してM-FMフェライトナノ粉体製造法における原料を反応場に供給しながら、pH調整剤も同時に滴下して、徐々にpHを酸性から塩基性へ変化させることにより、M成分を着実にFM-FMフェライト構造中に取り込んでいくように工程を設計している。この工程によれば、M-FMフェライトナノ粒子を製造する段階で、上述のようなメカニズムでフェライトが生成される際に放出されるHが、pH調整液の連続的な反応場への投入により中和されていき、次々にM-FMフェライト粒子の生成や成長が生じる。また、反応初期には、グリーンラストが生じて反応場が緑色になる期間がある(反応場や反応液のpHなどの条件によっては黄色、黄緑色になる期間が前段にある)が、このグリーンラスト中にM成分が混在することが重要であり、これが最終的にフェライトに転化した際、格子内にM成分が取り込まれ、さらにこの後の還元反応において、第1相や第2相の中で、ccs-FM構造にM成分が取り込まれていく。
上記のほかに、反応を制御するためのその他の因子としては、撹拌と反応温度が挙げられる。
M-FMフェライトナノ粉体合成反応により生じた微粒子が凝集して、均質な反応を阻害するのを防ぐために、分散は非常に重要であるが、超音波で分散しながら反応励起を同時に行う方法、分散液をポンプで搬送や循環する方法、単に撹拌バネや回転ドラムで撹拌したり、アクチュエータなどで揺動や振動させたりする方法など、反応の制御の目的に応じて、公知の方法の何れか、或いはその組み合わせが用いられる。
反応温度としては、一般に、本発明で用いるM-FMフェライトナノ粉体製造法では水共存下での反応であるために、大気圧下での水の凝固点から沸点までの0から100℃の間が選ばれる。
本発明では、系全体を高圧下に置くなどして100℃を超える温度領域でM-FMフェライトナノ粉体を合成する方法(例えば超臨界反応法など)は、本発明の効果を発揮するM-FMフェライトナノ粉体が形成できる限り、本発明の磁性材料に属する。
反応の励起方法としては、上記の温度や超音波の他に、圧力や光励起なども有効な場合がある。
さらに、本発明では、反応液としてFe2+を主成分とするFM2+含む水溶液を用いてM-FMフェライトナノ粉体製造法を適用する場合(特にM-FMフェライトナノ粒子にFeを主成分とするFMが二価イオンとして混入する条件で反応させる場合)には、M成分の含有量が40原子%未満であれば、最終的に生成した本発明の磁性材料のFMフェライト被覆層中にFeの二価イオンが観測されることが重要である。その量はFe2+/Fe3+比で、0.001以上であることが好ましい。この同定法としては、電子線マイクロアナライザー(EPMA)を用いると良い。具体的には、M-FMフェライトナノ粒子の表面をEPMAで分析し、FeLα-FeLβのX線スペクトルを得て、上記2種の材料の差分を取り、Fe2+を含む酸化鉄(例えばマグネタイト)及びFe3+のみの酸化鉄(例えばヘマタイトやマグヘマタイト)標準試料のスペクトルと比較することによりM-FMフェライトナノ粒子中のFe2+イオン量が同定できる。
このとき、EPMAの測定条件は、加速電圧7kV、測定径50μm、ビーム電流30nA、測定時間1秒/ステップである。
M-FMフェライトナノ粉体の代表的な不純物相としては、M-ヘマタイトなどの酸化物、ゲーサイト、アカゲナイト、レピドクロサイト、フェロオキシハイト、フェリヒドライト、グリーンラストなどのオキシ水酸化鉄、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどの水酸化物があるが、この中で特にフェリヒドライト相、M-ヘマタイト相を含む場合、これらは還元後にccs-(FM,M)相及びその他の第2相を形成するので、必ずしも取り除く必要のない相である。これらのフェリヒドライト相、M-ヘマタイト相はSEM観察などにおいて、数nmの厚みを持った板状の組織として観察される。しかし、厚みの割に面積の大きい粒子であるため、還元反応過程において大きな不適切な粒成長を助長することがあり、FM成分、M成分、酸素以外の不純物も多いため、この量はM-FMフェライトナノ粉体より体積分率で少ないことが望まれる。特に、FM成分に対するM成分の原子比が、0.33を超え0.5以下である場合、フェリヒドライト、M-ヘマタイトを中心とするM-FMフェライトナノ粉体以外の相のM成分比がM-FMフェライトナノ粉体より大きくなり、還元時に生じる不均化が制御しにくくなるのでフェリヒドライト相などの凝集具合(特に、数ミクロン程度にまで偏在して不均一にならないようにすること)などに十分注意を要することが望ましい。なお、上記に関わらず、M成分を取り込みやすいフェリヒドライト相、M-FMフェライト相の全磁性材料に対する含有量を、上述のM成分を含まない不適切な副相を析出させないように、意図して0.01体積%から33体積%までの範囲に制限して共存させることも可能である。この方が、FMフェライトナノ粉体製造時の制御条件を厳密に保持する必要がないので、工業的なメリットが大きい。
本発明の原料となるM-FMフェライトナノ粉体の平均粉体粒径は、1nm以上1μm(1000nm)未満であることが好ましい。さらに好ましくは、1nm以上100nm以下である。1nm未満であると、還元時の反応が十分に制御できず、再現性に乏しい結果となる。100nmを超えると、還元工程で還元した金属成分の不適切な粒成長が著しくなり、軟磁性材料の場合には、保磁力が上昇してしまうことがあるので、100nm以下が好ましい。また、1μm以上では、ccs-FM相が分離してしまい、この相の中にMが取り込まれず、本発明の優れた電磁気特性、耐酸化性の乏しい磁性材料しか得られないことがあるので、1μm未満が好ましい。
本発明で使用されるM-FMフェライトナノ粉体は、主に水溶液中で製造を行った場合、デカンテーション、遠心分離、濾過(その中でも特に吸引濾過)、膜分離、蒸留、気化、有機溶媒置換、粉体の磁場回収による溶液分離、又はそれらの組み合わせなどによって水分を除去する。その後、常温、又は300℃以下の高温で真空乾燥させたり、空気中で乾燥させたりする。空気中での熱風乾燥や、アルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガスなどの不活性ガス(但し、本発明において、窒素ガスは、熱処理時の温度領域によっては不活性ガスにならないこともある)若しくは水素ガスなどの還元性ガス、或いはそれらの混合ガス中で熱処理することにより乾燥することもできる。液中の不要成分を除去し、一切熱源を使用しない乾燥方法としては、遠心分離後に上澄みを捨て、さらに精製水中にM-FMフェライトナノ粉体を分散させては遠心分離を繰り返し、最後にエタノールなどの低沸点で高蒸気圧の親水性有機溶媒で置換し、常温真空乾燥させる方法が挙げられる。
(2)還元工程(本願では、「(2)の工程」とも称する。)
上記方法で製造したM-FMフェライトナノ粉体を還元して、本発明の磁性材料を製造する工程である。この還元工程で均質なFMフェライトナノ粉体が不均化反応を起こして、本発明の磁性材料は第1相と第2相に分離する。
気相中で還元する方法が最も好ましく、還元雰囲気としては、水素ガス、一酸化炭素ガス、アンモニアガス、ギ酸ガスなどの有機化合物ガス及びそれらとアルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガスの混合気体や低温水素プラズマ、過冷却原子状水素などが挙げられ、これらを横型、縦型の管状炉、回転式反応炉、密閉式反応炉などに流通したり、還流したり、密閉したりしてヒーター加熱する方法、赤外線、マイクロ波、レーザー光などで加熱する方法などが挙げられる。流動床を用いたりして、連続式に反応させる方法も挙げられる。また、固体であるC(炭素)やCaで還元する方法、塩化カルシウムなどを混合して不活性ガス若しくは還元性ガス中で還元する方法、そして工業的にはM成分酸化物を一旦塩化物としてからMgで還元する方法もある。何れも、本発明の磁性材料が得られれば、本発明の製造法の範疇に入る。
しかし、本発明の製造法において好ましい方法は、還元性ガスとして、水素ガス、或いはそれと不活性ガスとの混合ガス中で還元する方法である。ナノスケールで相分離した本発明の磁性材料を製造するためには、CやCaでの還元では還元力が強すぎて、本発明の軟磁性材料を構成するための反応のコントロールが非常に難しく、また還元後有毒なCOが発生したり、水洗して除かなくてはならない酸化カルシウムが混在したりするなどの問題点があるが、水素ガスによる還元では、一貫してクリーンな状況下で還元処理が行えるからである。
但し、熱力学的な見地においては、エリンガム図から想定されることとして、Fe酸化物はHガスフロー中で還元されるが、M成分酸化物は必ずしもHガスでは容易に還元されないと理解される。例えば、1000℃では、Feの場合、マグネタイトから金属鉄に還元されるときのH/HO比はほぼ1になるのに対して、MnOでは10程度となり、Hガスがフローされているとは言え、Mn酸化物はほとんど還元される見込みがないと理解される。従って、Fe酸化物とMn酸化物の単なる混合物や固溶体では、水素還元により、bcc-FeとMnOになると通常考えるはずである。
よって、M-FMフェライトを水素ガスで還元した場合に、M-FMフェライト中のMイオンがM成分金属の価数まで還元される事実は、今までのところ公知ではなく、今回、本発明者が初めて見出したものと考えている。その理由に関して、現時点では、以下のように考えている。
本発明のM-FMフェライトは1nm以上1000nm(1μm)未満の径を有していて非常に活性の高いナノ粉体の中にM成分が原子状に分散されており、しかもMとFMの親和性が高いために、水素ガス気流下でccs―(FM,M)として合金化される。ナノ領域の粉体の反応性は高く、また酸化還元の雰囲気がナノスケールであるため、しばしばマクロな性質を特徴づける古典的な熱力学的な予想に反して、金相学上の常識を超えた結果をもたらす。従来、CaやCなどの存在下でしか実質上還元できなかったSiやVといったM酸化物であるが、本発明の方法によれば、一部のM成分が、第1相、又は第1相及び第2相のccs-(FM、M)相中などに、金属状態まで還元され合金として存在することができる。このとき、Kなどのアルカリ金属が微量共存することも、反応の促進作用に影響を与えていると本発明者らは類推している。
また、FM-M成分の平衡状態図では一般に温度が高くなるほど、ccs-(FM、M)相中のMの固溶限が大きくなるが、本発明の製造法においては、必ずしも還元温度が高いほどccs-(FM,M)相中の平均のM成分含有量が高くなるとは言えない。M-FMフェライトナノ粉体全体のM成分の種類と含有量や昇降温条件の設定、共存する第2相や副相の種類などによって異なる。また、以上の現象は、合金全体を一旦溶製する通常の金属系磁性材料製造技術とは異なり、M-FMフェライトナノ粉体を還元して粒成長させ、続いて好ましくは粉末焼結させる工程を有した、ビルトアップ型と称する本発明の製造法の一つの特徴でもある。
本発明の材料中の酸素含有量については、不活性ガス融解法で求めるのが一般的であるが、還元前の酸素含有量が判っている場合には、還元前後の重量差から、本発明の材料中の酸素含有量を推定することができる。但し、同時に還元前後に含有量が変化しやすい塩素などのハロゲン元素や、K、Naなどのアルカリ元素、或いは水や有機成分などの揮発性に富む成分が多量に含まれている場合には、酸素含有量を厳密に見積もるという点では、これらの元素や成分の含有量を別途同定するのがよい。
因みに、原料由来のアルカリ金属のうち、例えばKは、450℃で磁性材料内から気化により散逸し始め、M成分の種類と含有量や還元時間にもよるが、900℃以上では、そのほとんどが除去される。従って、還元反応初期においては、その触媒的な働きを利用するために残存した方がよい原料由来のアルカリ金属が、用途によっては製品の段階では残存すると好ましくない場合にあっては、還元条件を適切に選ぶことにより、上記アルカリ金属を最終的に許容される範囲にまで適宜取り除くことができる。還元に有効な効果をもたらしながら、容易に除去できるKなどのアルカリ金属の最終的な含有量の範囲は、下限値は0.0001原子%以上で、上限値は5原子%以下であり、この上限値は、さらに1原子%以下に制御でき、最も精密に制御した場合には0.01原子%とすることができる。勿論、還元条件によっては、さらに検出限界以下にまでKなどのアルカリ金属を低減することも可能である。M-FMフェライトナノ粉体に残存するCl(塩素)などのハロゲン元素については、還元雰囲気下では主にHClなどのハロゲン化水素として材料系外に放出される。残存Clなどは450℃以上の還元温度で顕著に減量し始め、M成分やK含有量、さらにそれらの還元工程での含有量変化にもよるが、概ね700℃以上の還元温度を選択すれば、材料内部からほぼ完全に除去することができる。
本発明の還元反応前後の、O成分が主にHOとなって蒸散することによる重量減少は、M成分の種類と含有量、TM成分含有量、酸素量、副相や不純物量、水などの揮発成分量、或いは還元性ガス種などの還元反応条件などにもよるが、通常、0.1質量%から80質量%の間である。
なお、本発明の実施例の一部のように、SEMなどの写真やEDXをもとに局所的な酸素含有量を求めたり、XRDなどで同定した相をSEMなどの顕微鏡観察による画像上で特定したりすることもできる。第1相や第2相の酸素含有量やその分布を見積もるのに適した方法である。
以下に、還元性ガス中で熱処理することにより本発明の磁性材料を製造する方法について詳述する。典型的な還元工程での熱処理は、材料を還元性ガスフロー中で、一種又は二種以上の昇温速度を用いて線形或いは指数関数的に室温から一定温度まで温度上昇させ、直ちに一種又は二種以上の降温速度を用いて線形或いは指数関数的に室温まで降温させることにより、或いは、昇降温過程での昇温若しくは降温中、若しくは昇温後の何れかの段階で一定時間(=還元時間)温度を保持する過程(以下、一定温度保持過程という)を加えることにより行われる。特に断らない限り、本発明の還元温度とは、昇温過程から降温過程に切り替わるときの温度、及び一定時間温度を保持する過程における温度のうちの最も高い温度を言う。
本発明の軟磁性材料の製造法として、M-FMフェライトを水素ガスで還元する方法を選んだ場合、M成分の種類とTM成分の含有量によるが、還元温度は、400℃以上1550℃以下とすることが可能であり、中でも400℃以上1480℃以下の温度範囲を選ぶことが好ましい。総じて、400℃未満の温度では、還元速度が非常に遅く、還元時間が長くなって生産性に乏しくなることがあるためである。さらに、還元時間を1時間以下にしたい場合、還元温度の下限を500℃以上にすることが好ましい。
但し、419℃以上で還元を行う際は、M成分含有量によって、還元中の磁性材料が溶解することがあるが、通常M成分含有量が、0.01原子%以上33原子%以下の領域であれば、400℃以上1500℃以下の温度範囲の中で自由に選んで、還元処理を施すことができる。総じて、400℃以上の温度では、還元速度が非常に遅く、還元時間が長くなって生産性に乏しくなるのを回避できるので好ましい。
1230℃以上1550℃以下で還元を行う際は、Feを置換するCo含有量によって、還元中の磁性材料が溶解することがある。そのため、通常Co含有量が0.01原子%以上15原子%以下の領域であれば、概ね400℃以上1500℃以下の温度範囲を自由に選んで、還元処理を施すことができるが、Co含有量が15原子%を超えて70原子%までの場合、400℃以上1480℃以下の温度を選ぶのが好ましい。
本発明の軟磁性材料に関する製造方法では、好ましい還元温度の範囲は、400℃以上1500℃以下であり、さらに好ましい還元温度の範囲は、800℃以上1200℃以下である。M成分が金属まで還元される際に、本発明の磁性材料の融点直下での還元反応による組織の粗大化や、セラミック容器などのリアクターとの反応や、低温による還元反応速度の低下に起因する生産性の減少を回避できるからである。
同じ温度で還元した場合、還元時間が長いほど還元反応が進む。従って、還元時間が長いほど飽和磁化は高くなるが、保磁力については、還元時間を長くしたり、還元温度を高くしたりしても、保磁力が必ず小さくなると限らない。還元時間に関しては、所望の磁気特性に応じて、適宜選ぶのが望ましい。
本発明の半硬磁性材料の製造法として、M-FMフェライトを水素ガスで還元する方法を選んだ場合、M成分の種類と含有量にもよるが、概ね400℃以上1500℃以下の範囲で還元温度が選択するのが好ましい。その理由は、400℃未満では、還元速度が非常に遅く、還元時間が長くなって生産性に乏しくなるためであり、逆に1500℃を超えると、Feの融解が始まる危険性があるので、本発明のナノ結晶の特徴が阻害され、保磁力が適正に制御されないことがあり得るためである。さらに好ましい還元温度の範囲は、概ね450℃以上850℃以下であり、特に好ましい範囲は概ね500℃以上700℃以下である。
以上より、本発明の軟磁性又は半硬磁性の磁性材料を、M-FMフェライトを水素ガスで還元する方法によって製造する場合、還元温度の範囲は400℃以上1500℃以下とするのが好ましい。
本発明の磁性材料では、M-FMフェライトの還元速度の遅さが起因して、高温での還元が許され、ccs-FM相にMを含有したままナノ微細組織は極端に粗大化せず、不均化反応により第1相と第2相を含む微結晶組織の集合体とすることができる。
本発明の磁性材料は、その製造の際の還元工程において、ナノスケールで第1相と第2相が相分離することが望ましい。特に本発明の軟磁性材料の場合は、多様なM成分含有量や結晶構造の相が不均化反応によって分離し、しかもそれらの配向性がランダムになっているか、或いは、ナノスケールでのM成分含有量の濃度のゆらぎが内在されていることが必要であり、さらに、それぞれの結晶相が強磁性結合している必要がある。
還元が進んでM-FMフェライトナノ粒子が粒成長していくが、その際、還元温度によって、もともとのM-FMフェライトナノ粒子のM成分の種類と含有量に起因して、生成する結晶相の第1相と第2相の結晶構造やM成分含有量が多様に変化する。400℃以上1500℃以下の温度範囲であれば、一般に金属相まで還元される温度が高くなればなるほど、第1相のM成分含有量は多くなる。
従って、昇温過程の昇温速度や反応炉内の温度分布により結晶相の構成が変化する。
本発明の軟磁性材料の微細構造は、超徐冷や超急冷ではない降温速度を適宜選ぶことによって制御される。
しかし、本発明の磁性材料は、バルクの既存材料とは全く異なった微細構造を有し、常温では平衡状態図に従った組成分布を有してはいないが、還元温度付近で、本発明の磁性材料内にナノ領域に広がる、平衡状態図に沿った均一相が生じていることがあり、その場合には、昇温過程も含めた昇降温の速度制御が、その微細構造にとって重要なことがある。かかる観点から、本発明の還元工程における昇降温速度としては、目的とする電磁気特性やM成分含有量によって最適な条件は異なるが、通常、0.1℃/minから5000℃/minの間で適宜選択することが望ましい。
特に、本発明の軟磁性材料を製造する場合、M成分含有量が20原子%より多い場合は、昇降温速度を1℃/minから500℃/minの間の速度で行うと保磁力の低い軟磁性材料を調整できるので好ましい。
上述した水素ガスを用いた還元反応において、「不均化」反応を起因とする相分離過程は、M成分の種類と還元工程の条件によって変わる。
本発明の磁性材料は第2相としてM成分酸化物相を含むことがあるが、この相が粒界や粉体粒子表面に存在することにより、強固な酸素遮断効果を及ぼし、本発明の磁性材料の耐酸化性向上に大きく寄与する。特に本発明の半硬磁性材料においては、耐酸化の効果を顕著にするだけでなく、保磁力の向上に対しても効果を発揮する。
なお、本発明において、例えば800℃を超える高温領域でも、ナノ微細構造を保ちながら適切な粒成長が起きる理由は、不明である。しかし、原料がM―FMフェライトナノ粉体であり、これが水素還元されて第1相のような金属状態となったとしても、適切な還元条件を選べば、元々の粒形状や組成分布が全く微細構造に反映されずに、組成分布が均質な組織となって結晶粒径が粗大化するような不適切な粒成長は起きていない。このように粒成長が還元反応とともに生じることから、還元による体積減少が最大52体積%も起こることを考え合わせると、連晶や骸晶に似た組織を残しながら不均化が進んでいくことも容易に類推できる。さらに、還元反応初期に不均化により相分離した相の還元速度の差も関与しながら、ナノ微細構造を維持しつつ、且つ、ナノ領域内の大きさである程度均質化した高温相からも、降温過程での不均化反応による相分離が主にccs-(FM,M)相内で生じて、ナノ粒子やナノ組織が析出することにより、最終的に全体としてナノスケールの非常に微細な不均化構造が構成されるものと考えられる。
還元速度については、M-FMフェライト相などのM成分を含む酸化物相では、M成分含有量が高いほど遅くなる傾向もわかっており、一度不均化が生じると還元反応速度が材料内で一律でなくなることもナノ構造を保持するのに好都合に働いていると考えている。
以上の一連の考察は、本発明の磁性材料は融解してしまうと通常その特徴を失うことからも支持される。
(3)徐酸化工程(本願では、「(3)の工程」とも称する。)
上記還元工程後の本発明の磁性材料はナノ金属粒子を含むので、そのまま大気に取り出すと自然発火して燃焼する可能性が考えられる。従って必須の工程ではないが、必要に応じて、還元反応の終了後直ちに徐酸化処理を施すことが好ましい。
徐酸化とは、主に還元後のナノ金属粒子の表面を酸化してウスタイト、マグネタイト、M-FMフェライト、M-ウスタイト、M成分酸化物相などとして不働態化することにより、内部の磁性材料本体の急激な酸化を抑制することである。本発明の製造方法によると、還元工程までで、第1相、又は、第1相及び第2相中にM成分が金属成分として含まれる。本発明の磁性材料は、このM成分が徐酸化工程により合金表面に析出して不動態膜となるが、M成分を含まないFM磁性材料に比べて格段の耐酸化性を備えることになる。徐酸化は、例えば常温付近~500℃内で、酸素ガスのような酸素源を含むガス中で行うが、大気より低酸素分圧の不活性ガスを含む混合ガスを使用する場合が多い。500℃を超えると、どのような低酸素分圧ガスを用いても、表面にnm程度の薄い酸化膜を制御して設けることが難しくなる。また、一旦真空に引いた後、反応炉を常温で徐々に開放して酸素濃度を上げていき、急激に大気に触れさせないようにする徐酸化方法もある。
本願では、以上のような操作を含む工程を「徐酸化工程」と称する。この工程を経ると次の工程である成形工程でのハンドリングが非常に簡便になる。
この工程の後、酸化膜を再び取り除く方法としては、成形工程を水素ガスなどの還元雰囲気下で実施する方法が挙げられる。但し、徐酸化工程における表面酸化反応は完全な可逆反応ではないので、表面酸化膜の全てを除去することはできない。
勿論、還元工程から成形工程までのハンドリングをグローブボックスのような無酸素状態で操作できるように工夫した装置で行う場合は、この徐酸化工程を必要としない。
さらに、M成分含有量が多く、還元温度や時間が十分長くて、粒成長した本発明の磁性材料粉体の場合、この徐酸化工程を経ず、大気中にそのまま解放しても、安定な不動態膜が形成される場合があって、この場合は、特段な徐酸化工程を必要としない。この場合は、大気に開放すること自体が徐酸化工程と見なせる。
徐酸化により、耐酸化性や磁気安定性を確保する場合、その酸化層や不動態膜の層によって強磁性結合が切断される場合があるので、なるべく粒成長を起こしてから徐酸化を行う方が好ましい。そうでない場合は、上述の通り徐酸化工程を経ず、次の成形工程を行うことが好ましく、脱酸素或いは低酸素プロセスにより、還元工程と成形工程を連続させることが望ましい。
(4)成形工程(本願では、「(4)の工程」とも称する。)
本発明の磁性材料は、第1相と第2相が、直接、或いは金属相若しくは無機物相を介して連続的に結合し、全体として塊状を成している状態である磁性材料(即ち、固形磁性材料)として利用される。本発明の磁性材料粉体は、そのもののみ固化するか、又は金属バインダや、他の磁性材料や、樹脂などを添加して成形するなどして、各種用途に用いる。なお、(2)の工程後、或いは更に(3)の工程後の磁性材料粉体の状態で、すでに第1相と第2相が、直接、或いは、金属相若しくは無機物相を介して連続的に結合されている場合があって、この場合は本成形工程を経ずとも固形磁性材料として機能する。
本発明の磁性材料のみを固化する方法としては、型に入れ冷間で圧粉成形(この成型方法を冷間圧縮成形とも言う)して、そのまま使用したり、或いは続いて、冷間で圧延、鍛造、衝撃波圧縮成形などを行って成形したりする方法もあるが、多くの場合、50℃以上の温度で熱処理をしながら焼結して成形を行う。加圧せずにそのまま、熱処理をすることにより焼結する方法を常圧焼結という。熱処理雰囲気は非酸化性雰囲気であることが好ましく、アルゴン、ヘリウムなどの希ガスや窒素ガス中などの不活性ガス中で、或いは水素ガスを含む還元性ガス中で熱処理を行うと良い。500℃以下の温度条件なら大気中でも可能である。また、常圧焼結のように、熱処理雰囲気の圧力が常圧の場合のみならず、200MPa以下の加圧気相雰囲気中での焼結でも、さらには真空中の焼結でも構わない。
熱処理温度については、50℃未満で行われる常温成形のほか、加圧成形では50℃以上1500℃以下、常圧焼結では400℃以上1500℃以下の温度が好ましい。1400℃を超える温度では材料が融解する恐れがあるので、一般的に最も好ましい成形温度の範囲は50℃以上1400℃以下である。
この熱処理は圧粉成形と同時に行うこともでき、ホットプレス法やHIP(ホットアイソスタティックプレス)法、さらには通電焼結法、SPS(放電プラズマ焼結)法などの加圧焼結法でも、本発明の磁性材料を成形することが可能である。なお、本発明に対する加圧効果を顕著とするためには、加熱焼結工程における加圧力を0.0001GPa以上10GPa以下の範囲内とするのが良い。0.0001GPa未満であると、加圧の効果が乏しく常圧焼結と電磁気特性に変わりがないため、加圧焼結すると生産性が落ちる分不利となる。10GPaを超えると、加圧効果が飽和するので、むやみに加圧しても生産性が落ちるだけである。
また、大きな加圧は磁性材料に誘導磁気異方性を付与し、透磁率や保磁力が制御すべき範囲から逸脱する可能性がある。従って、加圧力の好ましい範囲は0.001GPa以上2GPa以下、さらに好ましくは0.01GPa以上1GPa以下である。
ホットプレス法の中でも、圧粉成形体を塑性変形するカプセルの中に仕込み、1軸~3軸方向から、大きな圧を掛けながら、熱処理してホットプレスする超高圧HP法は、不要な過度の酸素の混入を阻止することが可能である。一軸圧縮機を用い超硬やカーボン製の金型中で加圧熱処理するホットプレス法と異なり、タングステンカーバイド超硬金型を用いても難しい2GPa以上の圧を金型の破損などの問題なく材料に加えることができ、しかも圧力でカプセルが塑性変形し内部が密閉されることより大気に触れず成形できるからである。
成形する前に、粉体粒径を調整するために、公知の方法を用いて、粗粉砕、微粉砕又は分級をすることもできる。
粗粉砕は、還元後の粉体が数mm以上の塊状物であった場合、成形前に実施する工程、或いは成形の後、再び粉体化する際に行う工程である。ジョークラッシャー、ハンマー、スタンプミル、ローターミル、ピンミル、コーヒーミルなどを用いて行う。
さらに、粗粉砕の後、ふるい、振動式あるいは音波式分級機、サイクロンなどを用いて粒度調整を行うことも、より成形時の密度や成形性の調節を行うために有効である。粗粉砕、分級の後、不活性ガスや水素中で焼鈍を行うと構造の欠陥や歪みを除去することができ、場合によっては効果がある。
微粉砕は、還元後の磁性材料粉体、或いは成形後の磁性材料を、サブミクロンから数十μmに粉砕する必要がある場合に実施する。
微粉砕の方法としては上記粗粉際で挙げた方法のほか、回転ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ウエットミル、ジェットミル、カッターミル、ピンミル、自動乳鉢などの乾式や湿式の微粉砕装置及びそれらの組合せなどが用いられる。
本発明の固形磁性材料の製造方法の典型例としては、(1)の工程によりM-FMフェライトナノ粉体を製造し、続いて(2)の工程で還元した後、(3)の工程→(4)の工程、或いは(4)の工程のみで成形する場合がある。特に好ましい製造法の一つとして、(1)の工程で例示した湿式法でM-FMフェライトナノ粉体を調製してから、(2)の工程で示した水素ガスを含む方法で還元し、(3)の工程で示した常温で低酸素分圧に晒す徐酸化を行った後、(4)の工程で示した常圧又は加圧での焼結法により成形する工程、特に、(3)の工程として材料粉体表面の脱酸素を行った後、(4)の工程として更なる材料中の酸素混入を避けるため水素中で成形する工程を用いる製造法が挙げられる。本固形磁性材料は、0.5mm以上の厚みに成形でき、また切削加工及び/又は塑性加工により、任意の形状に加工することができる。
上記(1)の工程→(2)の工程、(1)の工程→(2)の工程→(3)の工程、(1)の工程→(2)の工程→後述の(5)の工程、(1)の工程→(2)の工程→(3)の工程→後述の(5)の工程で得た磁性材料粉体、又は、以上の工程で得た磁性材料粉体を(4)の工程で成形した磁性材料を再び粉砕した磁性材料粉体、さらに、以上の工程で得た磁性材料粉体を後述の(5)の工程で焼鈍した磁性材料粉体を、高周波用の磁性シートなどの樹脂との複合材料に応用する場合には、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂と混合した後に圧縮成形を行ったり、熱可塑性樹脂と共に混練した後に射出成形を行ったり、さらに押出成形、ロール成形やカレンダ成形などを行ったりすることにより成形する。
シートの形状の種類としては、例えば電磁ノイズ吸収シートに応用する場合、厚み5μm以上10000μm、幅5mm以上5000mm以下、長さは0.005mm以上1000mm以下の圧縮成形によるバッチ型シート、ロール成形やカレンダ成形などによる各種ロール状シート、A4版を初めとする各種サイズを有した切削若しくは成形シートなどが挙げられる。
(5)焼鈍工程
本発明の磁性材料は、第1相と第2相を有し、その一方或いは双方の結晶粒径がナノの領域にある場合が典型的である。
各工程で生じる結晶の歪みや欠陥、非酸化の活性相の安定化など、様々な目的で焼鈍を行うことは、本発明の目的を阻害しない限りにおいて、好ましいこともある。
例えば、(1)のM-FMフェライトナノ粉体製造工程後に、含有水分などの揮発成分の除去を目的とした乾燥と同時に安定した還元を行うため、後工程における不適切な粒成長の阻止や格子欠陥を除去するなどの目的で、数nm程度の微細粒子成分を熱処理する、いわゆる予備熱処理(焼鈍)が行われることがある。この場合、大気中、不活性ガス中や真空中で50℃から500℃程度で焼鈍することが好ましい。
また、(2)の還元工程後に、粒成長や還元による体積減少で生じた結晶格子や微結晶の歪みや欠陥を除去することで、本発明の軟磁性材料の保磁力を低減させることができる。この工程の後、粉体状のままで使用する用途、例えば粉体を樹脂やセラミックなどで固めて使用する圧粉磁心などの用途では、この工程後、或いはこの工程後に粉砕工程などを挟んだ後で、適切な条件で焼鈍すると電磁気特性を向上させることができることがある。
また、(3)の徐酸化工程では、焼鈍が、表面酸化により生じた表面、界面、境界付近の歪みや欠陥の除去に役立つことがある。
(4)の成形工程後における焼鈍が、最も効果的で、予備成形や圧縮成形、ホットプレスなど、その後の切削加工及び/又は塑性加工などで生じる結晶格子、微細構造の歪み、欠陥を除去するために積極的にこの工程後に焼鈍工程を実施することがある。この工程では、それよりも前にある工程で、積算された歪や欠陥などを一気に緩和させることも期待できる。さらには、前述した切削加工及び/又は塑性加工後に、(1)~(4)の工程、(2)~(4)の工程、(3)及び(4)の工程、さらに(4)の工程での歪などを、或いは積算された歪などをまとめて、焼鈍することもできる。
焼鈍の雰囲気としては、真空中、減圧中、常圧中、200MPa以下の加圧中の何れも可能で、ガス種としては、アルゴンのような希ガスを代表とする不活性ガス、窒素ガス、水素ガスなどの還元性ガス、さらには、大気中など酸素源を含む雰囲気などが可能である。焼鈍温度は常温から1500℃、場合によっては、液体窒素温度~常温の低温での処理も可能である。焼鈍工程の装置としては、還元工程や成形工程で用いる装置とほぼ同様であり、また公知の装置を組み合わせて実施することが可能である。
以下、実施例などにより本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例などにより何ら限定されるものではない。
本発明の評価方法は以下の通りである。
以下、実施例などにより本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例などにより何ら限定されるものではない。
本発明の評価方法は以下の通りである。
(I) 飽和磁化及び保磁力
磁性粉体を、ポリプロプレン製の円筒ケース(内径2.4mm、粉体層の厚みはほぼ1.5mm)に仕込み、振動試料型磁力計(VSM)を用いて外部磁場が-7.2MA/m以上7.2MA/m以下の領域で磁気曲線のフルループを描かせ、室温の飽和磁化(emu/g)及び保磁力(A/m)の値を得た。飽和和磁化は5NのNi標準試料で補正し、飽和漸近則により求めた。保磁力は低磁場の領域の磁場のずれを、常磁性体のPd及び/又はGd標準試料を用いて補正した。また、保磁力については、ヘルムホルツ型コイルを用いたVSM法によっても測定を行い、上記測定値の妥当性を確認した。この測定において、7.2MA/mまで着磁した後、零磁場までの磁気曲線上に滑らかな段差、変曲点が見られない場合、「1/4メジャーループ上の変曲点」が「無」いと判断した。なお、測定磁場の方向は、磁性粉体の場合には軸方向である。
因みに、以下に示す本実施例においてはいずれも、「1/4メジャーループ上の変曲点」が「無」いことを確認しており、強磁性結合が認められることがわかった。
成形体の磁気特性は、試料サイズ15mm×5mm×1mmの固形磁性材料を微小単板測定冶具が備わった直流磁化測定機(直流BHループトレーサー)を用いて測定した。成形体の磁化測定については、外部磁場150Oeにおける磁化を飽和磁化として、その値をT(テスラ)単位で表した。
(II) 耐酸化性
大気中に60日放置した磁性粉体の飽和磁化σst(emu/g)を上記の方法で測定し、初期の飽和磁化σs0(emu/g)と比較して、その低下率を、
Δσ(%)=100×(σs0-σst)/σs0の式
により評価した。Δσの絶対値が0に近いほど高い耐酸化性能を有すると判断できる。本発明では、Δσの絶対値が1%以下の磁性粉体を、期間60日において耐酸化性が良好と評価した。
(III) 電気抵抗率
試料サイズ15mm×5mm×1mmの成形体を四端子法で測定した。ファン・デル・ポー(van der Pauw)法でも測定し、上記測定値の妥当性を確認した。
(IV) Fe含有量、Ni及び/又はCo含有量、酸素含有量、ccs-(FM,M)相体積分率
粉体やバルクの磁性材料におけるFe、Co及びNi含有量は、蛍光X線元素分析法(XRF)により定量した。磁性材料中の第1相や第2相のFe及びM成分含有量は、FE-SEMで観察した像をもとに、それに付属するEDXにより定量した。ある成分のEDX測定値が0.00原子%であったとき、その成分の含有量を0とした。また、ccs-(FM,M)相の体積分率については、XRD法の結果とともに上記FE-SEMを用いた方法を組み合わせて画像解析により定量した。主として、観察された相が、ccs-(FM,M)相と酸化物相のいずれであるかを区別するために、SEM-EDXを用いた酸素特性X線面分布図を使用した。さらに、(I)で測定した飽和磁化の値からも、ccs-(FM,Co)相体積分率の値の妥当性を確認した。
還元工程後の磁性材料の酸素量は、還元後の重量の減少によっても確認した。さらにSEM-EDXによる画像解析を各相の同定に援用した。
K量については、蛍光X線元素分析法により定量した。
(V) 平均粉体粒径
磁性粉体を走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)で観察して粉体粒径を決定した。十分全体を代表する部分を選定し、n数は100以上として、有効数字1桁で求めた。
レーザー回折式粒度分布計を併用する場合は、体積相当径分布を測定し、その分布曲線より求めたメジアン径(μm)で評価した。但し、求められたメジアン径が500nm以上1mm未満であるときのみ、その値を採用し、上記顕微鏡を用いる方法で見積もった粉体粒径と有効数字1桁で一致することを確認した。
(VI) 平均結晶粒径
磁性材料を走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、結晶境界で囲まれた部分の大きさを有効数字1桁で求めた。測定領域は十分全体を代表する部分を選定し、n数は100以上とした。結晶粒径は、全体の平均値、第1相及び第2相のみの平均値をそれぞれ別途計測して決定した。
(VII) 結晶子サイズ
X線回折法により測定したbcc相の(200)回折線の線幅に対して、シェラーの式をあてはめ、無次元形状因子を0.9として、見掛けの結晶子サイズサイズを求めた。
[実施例1及び比較例1]
CoCl・6HO(塩化コバルト(II)六水和物)、TiCl4(塩化チタン)、及びFeCl・4HO(塩化鉄(II)四水和物)の水溶液を別途調製し、これらを混合して50.3mMに調製したCoCl、TiCl4及びFeClの混合水溶液をリアクターに入れて反応場液とした。なお、上記混合水溶液中に含まれるコバルト及びチタンの組成、即ち、仕込みコバルト組成と仕込みチタン組成をそれぞれ10及び0.5原子%とした。続いて、大気中にて激しく撹拌しながら、660mMの水酸化カリウム水溶液(pH調整液)を滴下して、系のpHを4.57以上10.1以下の範囲で酸性側からアルカリ性側に徐々に移行して調整し、同時に84mMのFeCl、TiCl4及びCoClの混合水溶液を反応液(反応液中のコバルト組成(仕込みコバルト組成)及びチタン組成(仕込みチタン組成)はそれぞれ10及び0.5原子%)として滴下して15分間反応させた後、pH調整液と反応液の滴下を中止して、さらに15分間撹拌操作を続けた。続いて、遠心分離により固形成分を沈殿させ、精製水に再度分散し遠心分離を繰り返すことにより、上澄み溶液のpHを9.97として、最後にエタノール中に沈殿物を分散した後、遠心分離を行った。
このあと、一昼夜常温にて真空乾燥を行うことにより、(Co0.100Ti0.005Fe0.850)組成(XRFで測定)を有し平均粉体粒径が20nmのTi-FMフェライトナノ粉体を得た。また、このナノ粉体をX線回折法により解析した結果、立方晶のTi-FMフェライト相が主な相であり、不純物相として菱面体晶のフェリヒドライトが含有されていることが確認された。従って、この粉体にはccs-(FM,Ti)相は含まれておらず、これを比較例1の粉体とし、その粒径、磁気特性などを表1に示した。なお、得られたTi-FMフェライト粉体におけるCo組成及びTi組成の値(XRFで測定)は仕込み量と%の位まで一致した。
このTi-FMフェライトナノ粉体を、アルミナ製のるつぼに仕込み、水素ガス中、300℃まで10℃/minで昇温し、300℃で15分保持した後、300℃から900℃まで10℃/minで昇温した後、900℃で1時間還元処理を行った。この後400℃までは95℃/minで降温し、400℃から室温までは40分をかけて放冷した。続いて20℃にて、酸素分圧1体積%のアルゴン雰囲気中で1時間徐酸化処理を行い、チタン、コバルトと鉄の含有量比(チタン、コバルトと鉄の合計含有量を100原子%としたときの含有量比)が、Ti0.47Co11.81Fe88.72組成(XRFで測定)の磁性材料を得た。この磁性材料全体に対するO含有量は1.7原子%であり、K含有量は0であった。また、この磁性材料の平均粉体粒径は30μmであった。このナノ粉体のSEM像を図1の(A)と(B)に示した(なお、図1(B)は図1(A)と対象は同じで、(A)よりも倍率をあげたSEM像である。)。この磁性材料に関する解析は以下の方法により行い、この磁性材料を実施例1とした。
得られた磁性材料をX線回折法で観測した結果、bcc-(FM,Ti)相のみが明確に認められたことにより、bcc-(FM,Ti)相が主成分であることが確認された。
また、この磁性材料粉体を磁性材料の局所的なTi含有量及び不均化の存在や度合を知るのに適しているFE-SEM/EDX法によって、ある粉末粒子(粉末粒子1)を観察した(倍率は1万倍とした。)。その結果、図2に示したように、本磁性材料の各相におけるTiの含有量(図の数値は、各相におけるTi含有量で、各相のTi、CoとFeの総和に対するTiの原子比の値を百分率で表したものである)は、0.15原子%以上0.45原子%以下と大きく不均化して分布していることがわかった。なお、図1(B)には、一つのbcc-(FM,Ti)相と見られる領域の中にも10nmオーダーの間隔で湾曲した曲線状の無数の結晶境界が観察された。よって、bcc-(FM,Ti)相の領域の中にも、Ti含有量で区別できる相、例えば、Ti含有量が0.15原子%のbcc-(FM,Ti)相に対してTi含有量が、その相よりも1.5倍以上10 倍以下の範囲内の3.2倍である0.45原子%のbcc-(FM,Ti)相が存在していること、即ち、bcc-(FM,Ti)相に関して、第1相以外に第2相に相当する相も存在していることが、この結果からも明らかになった。
更に、上記粉末粒子1と同様にして得られた粉末粒子ではあるが、図2とは異なる粉末粒子(粉末粒子2)において、図2と同様の計測を行ったところ(図3)、各相におけるTi含有量は0.14原子%以上0.32原子%以下と大きく不均化して分布しており、Ti含有量が0.14原子%のbcc-(FM,Ti)相に対してTi含有量がその相よりも1.5倍以上10倍以下の範囲内の2.3倍である0.32原子%のbcc-(FM,Ti)相も存在していることを確認した。
この磁性材料全体の平均結晶粒径は、200nmであった。また、75万倍の倍率で上記結晶境界付近の観察を行った結果、これらの結晶境界付近には異相が存在していないことを確認した。
図2及び図3を合わせた上記21点で計測した各相全体の結果から、本実施例の磁性材料では、Ti含有量が0.14原子%以上0.41原子%以下の範囲で大きく不均化して分布していると言える。なお、これらの21相のTi含有量の平均値は、0.25原子%となり、上記に示したXRF測定値であるTi含有量の0.47原子%よりも低く、さらに視野を増やしていくと、0.14原子%の1.5倍である0.21原子%よりもTi含有量が高い多くの第2相の存在が確定されるため、全体として更に大きな不均化が起きている可能性が高いと推察される。
この磁性材料全体の平均結晶粒径は、200nmであった。また、75万倍の倍率で上記結晶境界付近の観察を行った結果、これらの結晶境界付近には異相が存在していないことを確認した。
Ti含有量が0.15原子%のbcc-(FM,Ti)相に対してTi含有量が、その相よりも1.5倍以上10倍以下の範囲内の3.2倍である0.45原子%のbcc-(FM,Ti)相が存在していること、即ち、bcc-(FM,Ti)相に関して、第1相以外に第2相に相当する相も存在していることが明らかになっている図2と同じ領域を、磁性材料の局所的なCo含有量及び不均化の存在や度合を知るのに適しているFE-SEM/EDX法によって、観察した(倍率は1万倍とした)。その結果、図4に示したように、本磁性材料の各相におけるCoの含有量(図の数値は、各相におけるCo含有量で、各相のTi、CoとFeの総和に対するCoの原子比の値を百分率で表したものである)は、10.94原子%以上12.00原子%以下と不均化はほとんど起こっていないことがわかった。
例えば、Ti含有量が0.15原子%であるbcc-(FM,Ti)相(第1相、図2のA)のCo含有量は11.30原子%である(図4のA)。その相のTi含有量よりも1.5倍以上10倍以下の範囲内の1.7倍である0.26原子%のTi含有量のbcc-(FM,Ti)相(第2相、図2のB)のCo含有量は、0.9~1.1倍の範囲内に含まれる12.00原子%である(図4のB)。従って、Ti含有量の異なるbcc-(FM,Ti)相(第1相及び第2相)であっても、それらのCo含有量の違いは極めて小さく、Co成分の組成分布が均質であることが明らかとなった。
この磁性材料全体の平均結晶粒径は、200nmであった。また、75万倍の倍率で上記結晶境界付近の観察を行った結果、これらの結晶境界付近には異相が存在していないことを確認した。
また、図3において、Ti含有量が0.14原子%のbcc-(FM,Ti)相に対してTi含有量が、その相よりも1.5倍以上10倍以下の範囲内の2.3倍である0.32原子%のbcc-(FM,Ti)相が存在していること、即ち、bcc-(FM,Ti)相に関して、第1相以外に第2相に相当する相も存在していることが明らかになっている領域と同じ領域を、磁性材料の局所的なCo含有量及び不均化の存在や度合を知るのに適しているFE-SEM/EDX法によって、観察した(倍率は1万倍とした)。その結果を図5に示す。図5に示されるように、本磁性材料の各相におけるCoの含有量(図の数値は、各相におけるCo含有量で、各相のTi、CoとFeの総和に対するCoの原子比の値を百分率で表したものである)は、11.51原子%以上12.16原子%以下と不均化はほとんど起こっていないことがわかった。
例えば、Ti含有量が0.14原子%であるbcc-(FM,Ti)相(第1相、図3のA)のCo含有量は11.90原子%である(図5のA)。その相よりもTi含有量が1.5倍以上10倍以下の範囲内の2.3倍である0.32原子%のbcc-(FM,Ti)相(第2相、図3のB)のCo含有量は、Ti含有量が0.14原子%の相のCo含有量(11.90原子%)の0.9~1.1倍の範囲内に含まれる同じ11.90原子%である(図5のB)。従って、Ti含有量の異なるbcc-(FM,Ti)相(第1相及び第2相)であっても、そのCo含有量の違いは極めて小さく、Co成分の組成分布が均質であることが明らかとなった。
図4及び図5を合わせた、上記21点で計測した各相全体の結果から、本実施例では、Co含有量は11.30原子%以上12.16原子%以下の範囲、すなわち、含有量の違いは最大で1.08倍であり、組成の均一度は極めて高いと言える。なお、これらの21相のTi含有量の平均値は、11.70原子%となり、上記に示したXRF測定値であるCo含有量の11.81原子%とほぼ等しい。そのため、全体として大きな不均化は起きておらず、均一な組成分布が実現されていると推察される。
ここで、本発明における磁性材料で観察されたM成分の不均質分布についての結果を纏める。
・分解能200nm程度のFE-SEM/EDX法により、ある粉末粒子(粉末粒子1)に対して、大きさ約1μm×1.5μmの領域内(図2参照)において均一に10点程度の測定を行った。その結果、当該領域内におけるM成分濃度の揺らぎ(最大値/最小値)は1.5倍以上であることが判明した。
・同様の測定を異なる粉末粒子(粉末粒子2、図3参照)に対しても行った。その結果、当該領域内におけるM成分濃度の揺らぎ(最大値/最小値)は1.5倍以上であることが判明した。
・すなわち、大きさ約1μm×1.5μmの領域内という比較的狭い領域内においても、M成分の分布に揺らぎがあること、及びその結果が他の粉末粒子という全く異なる観測場所でも再現されることを確認した。
次に、本発明における磁性材料で観察されたFM成分の均質分布についての結果を纏める。
・分解能200nm程度のFE-SEM/EDX法により、ある粉末粒子(粉末粒子1)に対して、大きさ1μm×1.5μmの領域内(図4参照)において均一に10点程度の測定を行った。その結果、当該領域内におけるFM成分濃度の揺らぎは0.91倍以上1.1倍未満であることが判明した。
・同様の測定を異なる粉末粒子(粉末粒子2、図5参照)に対しても行った。その結果、当該領域内におけるFM成分濃度の揺らぎは0.91倍以上1.1倍未満であることが判明した。
・すなわち、大きさ1μm×1.5μmの領域内という比較的狭い領域内においても、FM成分が極めて均質に分布していること、及びその結果が他の粉末粒子という全く異なる観測場所でも、FM成分が極めて均質に分布している構造が再現されていることが確認された。
M成分濃度とFM成分濃度の分布についての観察の結果、本磁性材料は、M成分濃度が異なるが、FM成分濃度は等しいccs-(FM,M)相がナノ分散した構造を形成していることが確認された。
また、本磁性材料におけるM(Ti)成分量は、bcc-Feの質量磁化(218emu/g)を上回る巨大な飽和磁化を実現させる上でより好ましい条件(即ち、FM成分に含まれるCo及び/又はNi成分量(本磁性材料ではCo)よりも少ないこと)を満たしていることが判明した。
X線回折の上記結果(即ち、観測した磁性材料について、bcc-(FM,Ti)相のみが明確に観測されたこと)と、FE-SEMの上記結果(即ち、観測した磁性材料が0.14原子%から0.45原子%のTi含有量を有する結晶相を有していること)とを併せると、観測した磁性材料には、bcc-(FM,Ti)相と、その相よりもTi含有量の多いbcc-(FM,Ti)相が形成されていることがわかった。これを前述した第1相と第2相の定義に当て嵌めると、前者の相が第1相に相当し、後者が第2相に相当する。
これらの画像解析、X線回折及び酸素含有量などにより、bcc相の体積分率は99体積%以上と見積もられた。なお、上記のように第2相を決定することにより、SEM像から第1相及び第2相の結晶粒径を決めることができ、画像解析の結果、それらの値は何れも200nmであった。
また、本実施例の結晶子サイズは、200nmであった。
この磁性材料の飽和磁化は、223.6emu/gであり、M成分濃度は異なるがFM成分濃度は等しいccs-(FM,M)相がナノ分散することによりbcc-Feの質量磁化(218emu/g)を上回る巨大な飽和磁化を実現するという、本発明の特徴が確認できた。また、保磁力は1337A/mであり、4分の1メジャーループ上に変曲点はなかった。
従って、実施例1の磁性材料は保磁力が800A/mを超え40kA/m以下なので、本実施例の磁性材料が半硬磁性材料であることも確認された。
この磁性材料全体の平均結晶粒径は、200nmであった。第1相及び第2相の結晶粒径もほぼ全体の平均結晶粒径と同じ大きさであった。また、75万倍の倍率で上記結晶境界付近の観察を行った結果、これらの結晶境界付近には異相が存在していないことを確認した。
本実施例の相、組成、粒径及び磁気特性の測定結果については表1に纏めて示した。
[比較例2~7]
仕込みCo組成及び仕込みM組成を表1に示した値とする以外は比較例1と同様にして、FMフェライトナノ粉体を作製した。これらの実施例の磁気特性及び結晶子サイズを表1に纏めて示した。なお、得られたM-FMフェライト粉体におけるCo組成及びM組成の値(XRFで測定)は仕込み量と%の位まで一致した。なお、図6に比較例3((Fe0.40Co0.50Ti0.1フェライトナノ粉体)のSEM像を示す。
[実施例2]
仕込みCo組成を10原子%、及び仕込みM組成をM=Tiで1原子%とする以外は実施例1と同様にして作製した。
なお、第1相、第2相の平均結晶粒径は全体の平均結晶粒径と一致した。また、75万倍の倍率で上記結晶境界付近の観察を行った結果、これらの結晶境界付近には異相が存在していないことを確認した。
この磁性材料粉体を磁性材料の局所的なTi含有量及び不均化の存在や度合を知るのに適しているFE-SEM/EDX法によって、実施例1と同様に評価した結果、Mn組成の揺らぎは1.5倍以上10倍以下の範囲内に収まることがわかった。また、同一領域を磁性材料の局所的なCo含有量及び不均化の存在や度合を知るのに適しているFE-SEM/EDX法によって、実施例1と同様に評価した結果、Co組成の揺らぎが0.91倍以上1.1倍未満であることも判明した。
すなわち、本材料は、M成分濃度が異なるが、FM成分濃度は等しいccs-(FM,M)相がナノ分散した構造を形成していることが確認された。
また、本磁性材料におけるM(Ti)成分量は、bcc-Feの質量磁化(218emu/g)を上回る巨大な飽和磁化を実現させる上でより好ましい条件(即ち、FM成分に含まれるCo及び/又はNi成分量(本磁性材料ではCo)よりも少ないこと)を満たしていることが判明した。
この磁性材料の飽和磁化は、233.2emu/gであり、M成分濃度は異なるがFM成分濃度は等しいccs-(FM,M)相がナノ分散することによりbcc-Feの質量磁化(218emu/g)を上回る巨大な飽和磁化を実現するという、本発明の特徴が確認できた。また、保磁力は642.9A/mであり、4分の1メジャーループ上に変曲点はなかった。
従って、実施例2の磁性材料は保磁力が800A/m以下なので、軟磁性材料であることが確認された。以上の本実施例の相、ccs相体積分率、結晶子サイズ及び磁気特性の測定結果を表1に示した。
[実施例5]
仕込みCo組成を10原子%、及び仕込みM組成をM=Mnで1原子%とする以外は実施例1と同様にして作製した。
なお、第1相、第2相の平均結晶粒径は全体の平均結晶粒径と一致した。また、75万倍の倍率で上記結晶境界付近の観察を行った結果、これらの結晶境界付近には異相が存在していないことを確認した。
この磁性材料粉体を磁性材料の局所的なMn含有量及び不均化の存在や度合を知るのに適しているFE-SEM/EDX法によって、実施例1と同様に評価した結果、Mn組成の揺らぎは1.5倍以上10倍以下の範囲内に収まることがわかった。また、同一領域を磁性材料の局所的なCo含有量及び不均化の存在や度合を知るのに適しているFE-SEM/EDX法によって、実施例1と同様に評価した結果、Co組成の揺らぎが0.91倍以上1.1倍未満であることも判明した。
すなわち、本材料は、M成分濃度が異なるが、FM成分濃度は等しいccs-(FM,M)相がナノ分散した構造を形成していることが確認された。
また、本磁性材料におけるM(Mn)成分量は、bcc-Feの質量磁化(218emu/g)を上回る巨大な飽和磁化を実現させる上でより好ましい条件(即ち、FM成分に含まれるCo及び/又はNi成分量(本磁性材料ではCo)よりも少ないこと)を満たしていることが判明した。
この磁性材料の飽和磁化は、253.8emu/gであり、bcc-Feの質量磁化(218emu/g)を10%以上も凌ぐ飽和磁化が得られるという本発明の磁性材料の特徴が確認できた。このような巨大な飽和磁化は、M成分は異なるが、FM成分は等しいccs-(FM,M)相がナノ分散することに由来するという、本発明の特徴が確認できた。また、保磁力は607.0A/mであり、4分の1メジャーループ上に変曲点はなかった。
従って、実施例5の磁性材料は保磁力が800A/m以下なので、軟磁性材料であることが確認された。以上の本実施例の相、ccs相体積分率、結晶子サイズ及び磁気特性の測定結果を表1に示した。
[実施例6]
仕込みCo組成を50原子%、及び仕込みM組成をM=Mnで2原子%とする以外は実施例1と同様にして作製した。
なお、第1相、第2相の平均結晶粒径は全体の平均結晶粒径と一致した。また、75万倍の倍率で上記結晶境界付近の観察を行った結果、これらの結晶境界付近には異相が存在していないことを確認した。
この磁性材料粉体を磁性材料の局所的なMn含有量及び不均化の存在や度合を知るのに適しているFE-SEM/EDX法によって、実施例1と同様に評価した結果、Mn組成の揺らぎは1.5倍以上10倍以下の範囲内に収まることがわかった。また、同一領域を磁性材料の局所的なCo含有量及び不均化の存在や度合を知るのに適しているFE-SEM/EDX法によって、実施例1と同様に評価した結果、Co組成の揺らぎが0.91倍以上1.1倍未満であることも判明した。
すなわち、本材料は、M成分濃度が異なるが、FM成分濃度は等しいccs-(FM,M)相がナノ分散した構造を形成していることが確認された。
また、本磁性材料におけるM(Mn)成分量は、bcc-Feの質量磁化(218emu/g)を上回る巨大な飽和磁化を実現させる上でより好ましい条件(即ち、FM成分に含まれるCo及び/又はNi成分量(本磁性材料ではCo)よりも少ないこと)を満たしていることが確認された。
この磁性材料の飽和磁化は、227.7emu/gであり、M成分濃度は異なるがFM成分濃度は等しいccs-(FM,M)相がナノ分散することによりbcc-Feの質量磁化(218emu/g)を上回る巨大な飽和磁化を実現するという、本発明の特徴が確認できた。また、保磁力は317.0A/mであり、4分の1メジャーループ上に変曲点はなかった。
従って、実施例6の磁性材料は保磁力が800A/m以下なので、軟磁性材料であることが確認された。以上の本実施例の相、ccs相体積分率、結晶子サイズ及び磁気特性の測定結果を表1に示した。
[実施例3,4]
仕込みCo組成及び仕込みM組成を表1に示した値とする以外は実施例1と同様にして作製した。以上の本実施例の相、ccs相体積分率、結晶子サイズ及び磁気特性の測定結果を表1に示した。
[比較例7~12]
仕込みNi組成及び仕込みM組成を表2に示した値とする以外は比較例1と同様にして、FMフェライトナノ粉体を作製した。これらの試料の磁気特性及び結晶子サイズを表2に纏めて示した。なお、得られたM-FMフェライト粉体におけるNi組成及びM組成の値(XRFで測定)は仕込み量と%の位まで一致した。
[実施例7]
仕込みNi組成を1原子%、及び仕込みM組成をM=Tiで0.5原子%とする以外は実施例1と同様にして作製した。
なお、第1相、第2相の平均結晶粒径は全体の平均結晶粒径と一致した。また、75万倍の倍率で上記結晶境界付近の観察を行った結果、これらの結晶境界付近には異相が存在していないことを確認した。
この磁性材料粉体を磁性材料の局所的なTi含有量及び不均化の存在や度合を知るのに適しているFE-SEM/EDX法によって、実施例1と同様に評価した結果、Mn組成の揺らぎは1.5倍以上10倍以下の範囲内に収まることがわかった。また、同一領域を磁性材料の局所的なNi含有量及び不均化の存在や度合を知るのに適しているFE-SEM/EDX法によって、実施例1と同様に評価した結果、Ni組成の揺らぎが0.91倍以上1.1倍未満であることも判明した。
すなわち、本材料は、M成分濃度が異なるが、FM成分濃度は等しいccs-(FM,M)相がナノ分散した構造を形成していることが確認された。
また、本磁性材料におけるM(Ti)成分量は、bcc-Feの質量磁化(218emu/g)を上回る巨大な飽和磁化を実現させる上でより好ましい条件(即ち、FM成分に含まれるCo及び/又はNi成分量(本磁性材料ではNi)よりも少ないこと)を満たしていることが判明した。
この磁性材料の飽和磁化は、226.7emu/gであり、M成分濃度は異なるがFM成分濃度は等しいccs-(FM,M)相がナノ分散することによりbcc-Feの質量磁化(218emu/g)を上回る巨大な飽和磁化を実現するという、本発明の特徴が確認できた。また、保磁力は1038.5A/mであり、4分の1メジャーループ上に変曲点はなかった。
従って、実施例7の磁性材料は保磁力が800A/mを超え40kA/m以下なので、本実施例の磁性材料が半硬磁性材料軟磁性材料であることが確認された。以上の本実施例の相、ccs相体積分率、結晶子サイズ及び磁気特性の測定結果を表2に示した。
[実施例10]
仕込みNi組成を1原子%、及び仕込みM組成をM=Mnで0.1原子%とする以外は実施例1と同様にして作製した。
なお、第1相、第2相の平均結晶粒径は全体の平均結晶粒径と一致した。また、75万倍の倍率で上記結晶境界付近の観察を行った結果、これらの結晶境界付近には異相が存在していないことを確認した。
この磁性材料粉体を磁性材料の局所的なMn含有量及び不均化の存在や度合を知るのに適しているFE-SEM/EDX法によって、実施例1と同様に評価した結果、Mn組成の揺らぎは1.5倍以上10倍以下の範囲内に収まることがわかった。また、同一領域を磁性材料の局所的なNi含有量及び不均化の存在や度合を知るのに適しているFE-SEM/EDX法によって、実施例1と同様に評価した結果、Ni組成の揺らぎが0.91倍以上1.1倍未満であることも確認した。
すなわち、本材料は、M成分濃度が異なるが、FM成分濃度は等しいccs-(FM,M)相がナノ分散した構造を形成していることが確認された。
また、本磁性材料におけるM(Mn)成分量は、bcc-Feの質量磁化(218emu/g)を上回る巨大な飽和磁化を実現させる上でより好ましい条件(即ち、FM成分に含まれるCo及び/又はNi成分量(本磁性材料ではNi)よりも少ないこと)を満たしていることが判明した。
この磁性材料の飽和磁化は、224.0emu/gであり、M成分濃度は異なるがFM成分濃度は等しいccs-(FM,M)相がナノ分散することによりbcc-Feの質量磁化(218emu/g)を上回る巨大な飽和磁化を実現するという、本発明の特徴が確認できた。また、保磁力は434.5A/mであり、4分の1メジャーループ上に変曲点はなかった。
従って、実施例10の磁性材料は保磁力が800A/m以下なので、軟磁性材料であることが確認された。以上の本実施例の相、ccs相体積分率、結晶子サイズ及び磁気特性の測定結果を表2に示した。
[実施例11]
仕込みNi組成を2原子%、及び仕込みM組成をM=Mnで0.2原子%とする以外は実施例1と同様にして作製した。
なお、第1相、第2相の平均結晶粒径は全体の平均結晶粒径と一致した。また、75万倍の倍率で上記結晶境界付近の観察を行った結果、これらの結晶境界付近には異相が存在していないことを確認した。
この磁性材料粉体を磁性材料の局所的なMn含有量及び不均化の存在や度合を知るのに適しているFE-SEM/EDX法によって、実施例1と同様に評価した結果、Mn組成の揺らぎは1.5倍以上10倍以下の範囲内に収まることがわかった。また、同一領域を磁性材料の局所的なNi含有量及び不均化の存在や度合を知るのに適しているFE-SEM/EDX法によって、実施例1と同様に評価した結果、Ni組成の揺らぎが0.91倍以上1.1倍未満であることも判明した。
すなわち、本材料は、M成分濃度が異なるが、FM成分濃度は等しいccs-(FM,M)相がナノ分散した構造を形成していることが確認された。
また、本磁性材料におけるM(Mn)成分量は、bcc-Feの質量磁化(218emu/g)を上回る巨大な飽和磁化を実現させる上でより好ましい条件(即ち、FM成分に含まれるCo及び/又はNi成分量(本磁性材料ではNi)よりも少ないこと)を満たしていることが判明した。
この磁性材料の飽和磁化は、221.8emu/gであり、M成分濃度は異なるがFM成分濃度は等しいccs-(FM,M)相がナノ分散することによりbcc-Feの質量磁化(218emu/g)を上回る巨大な飽和磁化を実現するという、本発明の特徴が確認できた。また、保磁力は544.3A/mであり、4分の1メジャーループ上に変曲点はなかった。
従って、実施例11の磁性材料は保磁力が800A/m以下なので、軟磁性材料であることが確認された。以上の本実施例の相、ccs相体積分率、結晶子サイズ及び磁気特性の測定結果を表2に示した。
[実施例8]
仕込みNi組成を2原子%、及び仕込みM組成をM=Tiで1原子%とする以外は実施例1と同様にして作製した。
なお、第1相、第2相の平均結晶粒径は全体の平均結晶粒径と一致した。また、75万倍の倍率で上記結晶境界付近の観察を行った結果、これらの結晶境界付近には異相が存在していないことを確認した。
この磁性材料粉体を磁性材料の局所的なMn含有量及び不均化の存在や度合を知るのに適しているFE-SEM/EDX法によって、実施例1と同様に評価した結果、Mn組成の揺らぎは1.5倍以上10倍以下の範囲内に収まることがわかった。また、同一領域を磁性材料の局所的なNi含有量及び不均化の存在や度合を知るのに適しているFE-SEM/EDX法によって、実施例1と同様に評価した結果、Ni組成の揺らぎが0.91倍以上1.1倍未満であることも判明した。
すなわち、本材料は、M成分濃度が異なるが、FM成分濃度は等しいccs-(FM,M)相がナノ分散した構造を形成していることが確認された。
また、本磁性材料におけるM(Ti)成分量は、巨大な飽和磁化を実現させる上でより好ましい条件(即ち、FM成分に含まれるCo及び/又はNi成分量(本磁性材料ではNi)よりも少ないこと)を満たしていることが確認された。
この磁性材料の飽和磁化は、215.2emu/gであり、M成分濃度は異なるがFM成分濃度は等しいccs-(FM,M)相がナノ分散することによりbcc-Feの質量磁化(218emu/g)にほぼ匹敵する巨大な飽和磁化が得られるという、本発明の特徴が確認できた。また、保磁力は878.5A/mであり、4分の1メジャーループ上に変曲点はなかった。
従って、実施例8の磁性材料は保磁力が800A/mを超え40kA/m以下なので、本実施例の磁性材料が半硬磁性材料であることも確認された。以上の本実施例の相、ccs相体積分率、結晶子サイズ及び磁気特性の測定結果を表2に示した。
[実施例9,12]
仕込みNi組成及び仕込みM組成を表2に示した値とする以外は実施例1と同様にして作製した。以上の本実施例の相、ccs相体積分率、結晶子サイズ及び磁気特性の測定結果を表2に示した。
[実施例13]
比較例1と同様にして、(Fe0.959Ni0.040Mn0.001フェライトナノ粉体を作製した。このMn-FMフェライト粉体に、実施例1と同様な還元処理を施すことにより、粉体粒径40μmのFe95.9Ni4.0Mn0.1磁性材料粉体を得た。
第1相、第2相、全体の結晶粒径は200nmであり、見掛けの結晶子サイズは約80nmであった。また、ccs相体積分率は99%以上であり、この磁性材料全体に対するO含有量は0.8原子%、K含有量は0であった。
この磁性材料粉体を磁性材料の局所的なMn含有量及び不均化の存在や度合を知るのに適しているFE-SEM/EDX法によって、実施例1と同様に評価した結果、Mn組成の揺らぎは1.5倍以上10倍以下の範囲内に収まることがわかった。また、同一領域を、磁性材料の局所的なNi含有量及び不均化の存在や度合を知るのに適しているFE-SEM/EDX法によって、実施例1と同様に評価した結果、Ni組成の揺らぎが0.91倍以上1.1倍未満であることも判明した。
即ち、本材料は、M成分濃度が異なるが、FM成分濃度は等しいccs-(FM,M)相がナノ分散した構造を形成していることが確認された。
また、本磁性材料におけるM(Mn)成分量は、bcc-Feの質量磁化(218emu/g)を上回る巨大な飽和磁化を実現させる上でより好ましい条件(即ち、FM成分に含まれるCo及び/又はNi成分量(本磁性材料ではNi)よりも少ないこと)を満たしていることが判明した。
この磁性材料の飽和磁化は、246.3emu/gであり、M成分濃度は異なるがFM成分濃度は等しいccs-(FM,M)相がナノ分散することによりbcc-Feの質量磁化(218emu/g)を上回る巨大な飽和磁化を実現するという、本発明の特徴が確認できた。また、保磁力は224.2A/mであり、4分の1メジャーループ上に変曲点はなかった(表中には示さず)。
従って、実施例13の磁性材料は保磁力が800A/m以下なので、軟磁性材料であることが確認された。
[実施例14]
実施例13の磁性材料粉体をタングステンカーバイド製超硬金型に仕込み、大気中、室温、1GPaの条件で冷間圧縮成形を行った。
次いで、この冷間圧縮成形体をアルゴン気流中、300℃まで10℃/minで昇温し、300℃で15分保持した後、300℃から900℃まで10℃/minで昇温した後、直ちに400℃まで75℃/minで降温し、400℃から室温までは40分をかけて放冷した。この常圧焼結を施すことにより、本発明の固形磁性材料を得た。
この固形磁性材料の密度は7.29g/cmであった。直流磁化測定装置で得た飽和磁化及び保磁力は、1.690T及び48.10A/mであり、1/4メジャーループ上に変曲点はなかった。また、本固形磁性材料の電気抵抗率は4.1μΩmであった(表中には示さず)。
本実施例により、本発明の固形磁性材料は、その特徴である1.5μΩmより電気抵抗率が高く、さらに既存材料である、例えば純鉄の0.1μΩmや電磁鋼板の0.5μΩmと比べ、1桁以上高い電気抵抗率を有することがわかった。
[比較例13~15]
Co成分とTi成分を添加しないこと以外は実施例1と同様な方法で、フェライトナノ粉体を作製した。
このフェライトナノ粉体を、還元条件を425℃で1時間(比較例13)、同温度で4時間(比較例14)、450℃で1時間(比較例15)とする以外は、実施例1と同様な方法でFe金属粉体を作製した。これらの比較例の磁性粉体の飽和磁化及び保磁力は、85.9emu/g及び12000A/m(比較例13)、214.8emu/g及び3700A/m(比較例14)、216.6emu/g及び3200A/m(比較例15)であった(表中には示さず)。
これらの金属粉体は、室温大気中に放置するだけで、磁気特性が一気に低下する性質がある。t=60のときの本比較例13~15の飽和磁化の変化率Δσ(%)は、5.4、19.0、21.3であった。
なお、実施例1のΔσは0.1%であった。
以上より、実施例1の磁性材料は、耐酸化性に優れることがわかった。実施例2~13及び15の磁性粉体も耐酸化性に優れており、室温大気中放置で、飽和磁化が一気に低下する性質はなかった。
なお、上記実施例1~14と比較例1~15の結果に鑑みて、本磁性粉体の電気抵抗率は、既存の一般的な金属系磁性材料よりも高い1.5μΩm以上を有すると推認可能なことから、本磁性粉体によれば渦電流損失などの問題点を解決することが可能であることがわかった。
因みに、本実施例における不均化の存在や度合を知るのに適しているFE-SEM/EDX法による観察結果から、上記実施例1~13の本磁性粉体中の第1相及び第2相は、原料フェライト粉体の主原料相及び副原料相からそれぞれ由来しているものではなく、均質な原料フェライト相が還元反応により、不均化反応を起こして相分離したものであることがわかった。
Figure 0007001259000001


Figure 0007001259000002
本発明の磁性材料によれば、従来の磁性材料では背反する特性、飽和磁化が高く、かつ電気抵抗率が高くて渦電流損失の問題点を解決でき、しかも積層工程などの煩雑な工程を要しない、金属系材料と酸化物双方の利点を併せ持った電磁気特性の優れた磁性材料、加えて空気中でも磁気特性が安定した磁性材料を提供できる。
本発明は、主として動力機器、変圧器や情報通信関連機器に用いられる、トランス、ヘッド、インダクタ、リアクトル、コア(磁芯)、ヨーク、マグネットスイッチ、チョークコイル、ノイズフィルタ、バラストなど、さらに各種アクチュエータ、ボイスコイルモータ、インダクションモータ、リアクタンスモータなどの回転機用モータやリニアモータ、特に中でも、回転数400rpmを超える自動車駆動用モータ及び発電機、工作機、各種発電機、各種ポンプなどの産業機械用モータ、空調機、冷蔵庫、掃除機などの家庭用電気製品向けモータなどの、ロータやステータ等に用いられる軟磁性材料に関する。
さらに、アンテナ、マイクロ波素子、磁歪素子、磁気音響素子など、ホール素子、磁気センサー、電流センサー、回転センサー、電子コンパスなどの磁場を介したセンサー類に用いられる軟磁性材料に関する。
また、単安定や双安定電磁リレーなどの継電器、トルクリミッター、リレースイッチ、電磁弁などの開閉器、ヒステリシスモーターなどの回転機、ブレーキなどの機能を有するステリシスカップリング、磁場や回転速度などを検出するセンサー、磁性タグやスピンバルブ素子などのバイアス、テープレコーダー、VTR、ハードディスクなどの磁気記録媒体や素子等に用いられる半硬磁性材料に関する。
また、高周波用トランスやリアクトルを初め、電磁ノイズ吸収材料、電磁波吸収材料や磁気シールド用材料などの不要な電磁波干渉による障害を抑制する磁性材料、ノイズ除去用インダクタなどのインダクタ素子用材料、RFID(Radio Frequency Identification)タグ用材料やノイズフィルタ用材料等の高周波用の軟磁性や半硬磁性材料に用いられる。

Claims (22)

  1. FM成分(ここでFM成分は、Feを含み、且つNi及び/又はCoを含むものである)とM成分(ここでM成分は、Mn、Tiのうちいずれか一種以上である)を含むbcc又はfcc構造の結晶を有し、且つFM成分に含まれるNi及び/又はCo成分量よりもM成分量が少ない第1相と、M成分を含む相であって、その相に含まれるFM成分とM成分の総和を100原子%とした場合のM成分の含有量(原子%)が、第1相に含まれるFM成分とM成分の総和を100原子%とした場合のM成分の含有量(原子%)よりも多い第2相とを含む、軟磁性又は半硬磁性の磁性材料。
  2. 磁性材料が軟磁性である、請求項1に記載の磁性材料。
  3. FM成分中のCo及び/又はNiの含有量(原子%)が0.001原子%以上90原子%未満である、請求項1又は2に記載の磁性材料。
  4. 第1相が、(Fea/100Cob/100Nic/100100-x(ここで、xは原子百分率で0.001≦x≦33であり、a,b,cは第1相に含まれるFeとCoとNiの総和を100原子%とした場合の原子百分率で0.001≦b+c≦99.999であり、MはTi、Mnのいずれか1種以上である)の組成式で表される組成を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の磁性材料。
  5. 第1相が(Fea/100Cob/100Nic/100100-x(Md/100TMe/100(ここで、xは原子百分率で0.001≦x≦33であり、a,b,cは第1相に含まれるFeとCoとNiの総和を100原子%とした場合の原子百分率で、a+b+c=100且つ0.001≦b+c≦99.999であり、d,eは第1相に含まれるM成分とTM成分の総和を100原子%とした場合の原子百分率で、d+e=100且つ0.001≦e<50であり、MはTi、Mnのいずれか1種以上であり、TMはZr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Cu、Zn、Siのうちのいずれか一種以上である)の組成式で表される組成を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の磁性材料。
  6. 前記組成式において、(b+c)×(100-x)≧(d+e)×xの関係を有する、請求項5に記載の磁性材料。
  7. 第2相はFM成分とM成分を含むbcc又はfcc構造の結晶を有し、その相に含まれるFM成分とM成分の総和を100原子%とした場合のM成分含有量(原子%)が、第1相に含まれるFM成分とM成分の総和を100原子%とした場合のM成分の含有量(原子%)に対して1.5倍以上10倍以下の量、及び/又は2原子%以上100原子%以下の量である、請求項1~6のいずれか一項に記載の磁性材料。
  8. 第2相はFM成分とM成分を含むbcc又はfcc構造の結晶を有し、その相に含まれるFM成分とM成分の総和を100原子%とした場合のFM成分中のCo及び/又はNi含有量(原子%)が、第1相に含まれるFM成分とM成分の総和を100原子%とした場合のFM成分中のCo成分及び/又はNi成分含有量(原子%)に対して、0.91倍以上1.1倍未満の量である、Co及び/又はNiの組成分布が均質な請求項1~7のいずれか一項に記載の磁性材料。
  9. 第2相がM成分と酸素成分を含有する酸化物相を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の磁性材料。
  10. 第2相が、FM成分とM成分とを含むフェライト相又はM成分を含むウスタイト相の何れか1種以上を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の磁性材料。
  11. FM成分とM成分を含むbcc又はfcc構造の結晶を有する相の体積分率が磁性材料全体の5体積%以上である、請求項1~10のいずれか一項に記載の磁性材料。
  12. 磁性材料全体の組成に対して、磁性材料中のFe含有量(原子%)が10原子%以上99.998原子%以下、磁性材料中のM成分含有量(原子%)が0.001原子%以上50原子%以下、磁性材料中のO成分含有量(原子%)が0.001原子%以上55原子%以下の範囲である、請求項9に記載の磁性材料。
  13. 第1相若しくは第2相、又は磁性材料全体の平均結晶粒径が1nm以上10μm未満である、請求項1~12のいずれか一項に記載の磁性材料。
  14. 少なくとも第1相が(Fea/100Cob/100Nic/100100-x(ここで、xは原子百分率で0.001≦x≦2であり、a,b,cは第1相に含まれるFeとCoとNiの総和を100原子%とした場合の原子百分率で、a+b+c=100且つ0.001≦b+c≦99.999である)の組成式で表される組成のbcc又はfcc相を有し、そのbccまたはfcc相の結晶子サイズが1nm以上500nm以下である、請求項1~13のいずれか一項に記載の磁性材料。
  15. 少なくとも第1相が(Fea/100Cob/100Nic/100100-x(ここで、xは原子百分率で0.001≦x≦33であり、a,b,cは第1相に含まれるFeとCoとNiの総和を100原子%とした場合の原子百分率で、a+b+c=100且つ0.001≦b+c≦99.999である)の組成式で表される組成のbcc又はfcc相を有し、そのbccまたはfcc相の結晶子サイズが1nm以上200nm以下である、請求項1~13のいずれか一項に記載の磁性材料。
  16. 粉体の形態の磁性材料であって、軟磁性の磁性材料の場合には10nm以上5mm以下の平均粉体粒径を有し、半硬磁性の磁性材料の場合には10nm以上10μm以下の平均粉体粒径を有する、請求項1~15のいずれか一項に記載の磁性材料。
  17. 第1相又は第2相の少なくとも1相が隣り合う相と強磁性結合している、請求項1~16のいずれか一項に記載の磁性材料。
  18. 第1相と第2相が、直接、又は金属相若しくは無機物相を介して連続的に結合し、磁性材料全体として塊状を成している状態である、請求項1~17のいずれか一項に記載の磁性材料。
  19. 平均粉体粒径が1nm以上1μm未満の、FM成分とM成分とを含むフェライト粉体を、水素ガスを含む還元性ガス中で、還元温度400℃以上1500℃以下にて還元することによって請求項16に記載の磁性材料を製造する方法。
  20. 平均粉体粒径が1nm以上1μm未満の、FM成分とM成分とを含むフェライト粉体を、水素ガスを含む還元性ガス中で還元し、不均化反応により第1相と第2相を生成させることによって、請求項1~17のいずれか一項に記載の磁性材料を製造する方法。
  21. 請求項19又は20に記載の製造方法によって製造される磁性材料を焼結することによって、請求項18に記載の磁性材料を製造する方法。
  22. 請求項19に記載の製造方法における還元工程後に、又は請求項20に記載の製造方法における還元工程後若しくは生成工程後に、又は請求項21に記載の製造方法における焼結工程後に、最低1回の焼鈍を行う、軟磁性又は半硬磁性の磁性材料を製造する方法。
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