JPH11255559A - 耐食性セラミックス及びその製造方法 - Google Patents

耐食性セラミックス及びその製造方法

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JPH11255559A
JPH11255559A JP35100998A JP35100998A JPH11255559A JP H11255559 A JPH11255559 A JP H11255559A JP 35100998 A JP35100998 A JP 35100998A JP 35100998 A JP35100998 A JP 35100998A JP H11255559 A JPH11255559 A JP H11255559A
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JP
Japan
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corrosion
ceramic
rare earth
resistant
film
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JP35100998A
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English (en)
Inventor
Takakimi Yanagiya
高公 柳谷
Hideki Yagi
秀喜 八木
Moriteru Imagawa
盛輝 今川
Hitoshi Kubo
仁 久保
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Konoshima Chemical Co Ltd
Original Assignee
Konoshima Chemical Co Ltd
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Publication date
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  • Vessels And Coating Films For Discharge Lamps (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 耐食性に優れ、高強度な高圧放電灯用の透光
性セラミックスを提供する。 【構成】 Si含有量が100ppm以下,CaとMg
との合計含有量が200ppm以下のTAG,LAG,
YbAG耐食膜を、放電管の管状YAG母体の内面に設
ける。耐食膜の平均粒径は20μm以上とし、母体の平
均粒径は15μm以下とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の利用分野】この発明は耐食性セラミックスに関
し、特にメタルハライドランプ等の高圧放電灯に適した
透光性セラミックスに関する。
【0002】
【従来技術】高圧水銀灯や高圧ナトリウムランプなどの
高圧放電灯は、道路やスタジアムなどの野外照明をはじ
め、店舗などの一般照明、自動車用ヘッドライト、OH
Pや液晶プロジェクタ等の光源としても用いられてい
る。さらに高圧水銀灯や高圧ナトリウムランプよりも発
光効率が高く、演色性に優れたメタルハライドランプが
注目を集めている。
【0003】メタルハライドランプは、発光管内に、N
aI,CsI,HgI2などの金属ハロゲン化物を封入
し、電極間に高電圧を印加して放電させて、金属ハロゲ
ン化物を熱的に蒸発させて、金属とハロゲンに解離さ
せ、金属固有の発光を行わせる。また発光物質には、N
aやHg等のハロゲン化物よりも、希土類元素のハロゲ
ン化物の方が発光効率が高く、NaやHg等のハロゲン
化物から、希土類ハロゲン化物への転換が検討されてい
る。
【0004】発光管材料には石英ガラス(SiO2)や
透光性アルミナ(Al2O3)が用いられるが、石英ガラ
スは耐食性に劣り、耐熱性も不十分である。透光性アル
ミナは耐熱性や耐食性は石英ガラスよりも優れている
が、結晶が六方晶で、直線光透過率が10%〜20%程
度と低い。
【0005】発光管材料としてイットリウム・アルミニ
ウム・ガーネット(Y3Al5O12:YAG)が提案され
ている(例えば特開昭59−207555号公報)。Y
AGは立方晶で、理論透過率80%以上の高い透明度
と、透光性アルミナに匹敵する機械的強度や耐熱性を備
えている。
【0006】しかしながらYAGは希土類元素のハロゲ
ン化物と反応しやすく、化学的耐食性に欠けている。例
えばYAGは、Li,Na,Hg,CsやTl等のハロゲ
ン化物には安定であるが、希土類元素のハロゲン化物と
反応し、点灯中に発光管が白濁して、ランプ特性が低下
する。発光管内部の白濁反応は、以下の機構で進行する
と考えられる。 (M'-X)(g)+(M"-O)(s)→(M'-O)(s)+
(M"-X)(g)
【0007】式中(g)はガスを、(s)は固体を、X
はハロゲン元素を、M’,M”は希土類元素を表す。即
ち、高温で発光物質の金属ハロゲン化物(M'-X)(g)
がM'(g)とX(g)に解離し、解離したM'(g)が酸
化物セラミックス(M"-O)(s)から酸素元素を奪い,
(M'-O)(s)として発光管内壁に付着する。これに伴
って発光管は白濁する。
【0008】上記の白濁反応を回避するため、Hg系ガ
ス等の封入圧を上げて、金属ハロゲン化物から解離した
金属原子と発光管材料との接触を抑制することや、発光
管を均一に加熱してハロゲンサイクルを円滑に行わせる
ことが考えられる。しかしながら、封入圧を上げあるい
は発光管を加熱すると、発光管が破裂しやすくなる。
【0009】ここで関連する先行技術を示すと、特開平
7−237983号公報は透光性アルミナ発光管の内面
に、希土類酸化物の耐食膜を設けることを提案してい
る。しかし、この耐食膜には母体との反応性が有り、高
圧放電灯を1000℃以上で使用すると、徐々に母体と
反応・結晶化して不透明層を形成する。また耐食膜は、
結晶構造や格子定数、熱膨張率等が異なる母体から、ラ
ンプの点灯・消灯に伴う熱疲労で、徐々に剥離する。ま
た特開平10−45467号公報は、YAGをドライエ
ッチング装置の耐食容器に用いることを提案している。
【0010】
【発明の課題】この発明の目的は、高強度で耐食性に優
れた耐食性セラミックスを提供することにあり(請求項
1〜13)、特に、希土類ハロゲン化物を用いた発光管
に使用しても白濁しない、透光性セラミックスを提供す
ることにある(請求項3,7〜10)。この発明の副次
的課題は、安価に高圧放電灯を形成し得るようにするこ
と及び、高圧放電灯内面の鏡面研磨を不要にすることに
ある(請求項10,11)。
【0011】
【用語法】この明細書では、ppmや%は特に断らない
限り重量ppmや重量%を示す。CaとMgとはほぼ均
等で、これらの量は原則としてCaとMgとの合計含有
量を示す。CaやMg,Siの含有量を200ppm以
下や100ppm以下とするときは0を含み、平均粒径
は0を含まない。耐食性は、特に断らない限り、メタル
ハライドランプでの希土類ハロゲン化物に対するランプ
点灯時の耐食性を意味し、白濁が生じないことを意味す
る。
【0012】
【発明の構成】この発明の耐食性希土類アルミニウムガ
ーネットセラミックスでは、構成希土類元素中のTm,
Yb,Luの合計含有量が10〜100モル%で、かつ
前記セラミックス中の、Si含有量が金属換算で0〜1
00wtppm、CaとMgの合計含有量が金属換算で
0〜200wtppmである。この条件で耐食性が著し
く向上し、希土類ハロゲン化物を用いた高圧放電灯の放
電管として、長時間使用しても、白濁しない。Tm,Y
b,Lu以外の構成希土類元素は例えばYとする。
【0013】好ましくは、前記Tm,Yb,Luの構成
希土類元素中での合計含有量が10〜50モル%であ
る。この条件で、Tm,Yb,Luの使用量を削減しな
がら、耐食性を増すことができる。
【0014】好ましくは、前記耐食性セラミックスは、
透光性で、高圧放電灯用の発光管である。
【0015】好ましくは、前記耐食性セラミックスの平
均粒径を1〜20μm、より好ましくは1〜15μm、
最も好ましくは1〜10μmとする。この条件で高い直
線透過率が得られ、また平均3点曲げ強度を400MP
a以上、ワイブル係数を6以上にできる。
【0016】好ましくは、前記耐食性セラミックスの、
平均3点曲げ強度が400MPa以上、ワイブル係数が
6以上である。この条件で、熱疲労への耐久性が得られ
る。
【0017】この発明の耐食性セラミックスでは、希土
類アルミニウムガーネットセラミックスからなる母体の
少なくとも1面に、構成希土類元素がTm,Yb,Lu
の少なくとも一員からなり、かつSi含有量が金属換算
で0〜100wtppm,CaとMgの合計含有量が金
属換算で0〜200wtppmの、希土類アルミニウム
ガーネット耐食膜を設ける。この条件で、母体を安価な
YAG等で構成でき、かつ耐食性に優れた耐食膜が得ら
れる。
【0018】好ましくは、前記母体は管状で、前記耐食
膜と前記母体は共に透光性で、かつ前記耐食膜を前記母
体の内面に設け、耐食性セラミックスを高圧放電灯用発
光管とする。
【0019】好ましくは、前記母体は、Si含有量が4
ppm以下、Ca及びMgの合計含有量が5〜1000
wtppm、平均粒径が1〜15μmである。好ましく
は、前記母体は、平均3点曲げ強度が400MPa以
上、ワイブル係数が6以上である。
【0020】好ましくは、前記耐食膜は、平均粒径が2
0μm以上、Si含有量が金属換算で0〜60wtpp
m、CaとMgの合計含有量が金属換算で0〜100w
tppmである。
【0021】好ましくは、前記耐食性セラミックスの母
体外面側のみが研磨されている。すなわち、耐食膜の平
均粒径を20μm以上とすると、光透過率が著しく増す
ため、発光管の内面研磨が不要になり、母体外面のみの
研磨で十分になる。
【0022】この発明の耐食性セラミックスの製造方法
では、希土類アルミニウムガーネットセラミックスから
なる管状母体の、未焼結成形体の内面に、構成希土類元
素がTm,Yb,Luの少なくとも一員からなり、かつ
焼結後のSi含有量が金属換算で0〜100wtppm
となり、焼結後のCaとMgの合計含有量が金属換算で
0〜200wtppmとなるように、希土類アルミニウ
ムガーネット耐食膜の前駆体膜を形成し、ついで前記管
状母体と前駆体膜とを焼結する。
【0023】好ましくは、前記管状母体の未焼結体は、
焼結後のSi含有量が金属換算で4ppm以下(不純物
レベル以下)となり、焼結後のCa及びMgの合計含有
量が金属換算で5〜1000wtppmとなるように構
成されている。
【0024】希土類アルミニウムガーネットセラミック
スは、一般式がLn3Al5O12で表され、Lnはイ
ットリウムを含むランタニド元素で、希土類元素を明示
しない場合、Yであるものとし、例えば希土類元素でT
m,Yb,Luの残部はYとし、また母体の希土類元素
は例えばYとする。
【0025】Tm,Yb,Luは相互に均等であり、こ
れらの合計含有量が問題であるが、安価なYbが特に好
ましい。CaとMgも均等で、これらの合計含有量が問
題である。
【0026】この発明の耐食性セラミックスは、ハロゲ
ン等への耐食性に優れていることを用いて、発光管以外
の用途にも用いることができる。
【0027】
【発明の作用と効果】発明者は、構成希土類元素をT
m,Yb,Luの少なくとも1員とすると、希土類ハロ
ゲン化物との反応性が極端に低下し、白濁が起こらなく
なることを見出した。ただしこのことには、Ca及びM
gの含有量やSi含有量が関係し、例えば図9に示すよ
うに、CaとMgとの合計含有量が200ppmを超え
ると、耐食性が低下して、白濁が生じる。同様にSi含
有量が100ppmを超えると、白濁が生じる。Caと
Mgの合計含有量は100ppm以下が好ましく、Si
含有量は60ppm以下が好ましい。そして構成希土類
元素がTm,Yb,Luの少なくとも1員で、CaとM
gとの合計含有量が200ppm以下で、Si含有量が
100ppm以下の透光性セラミックスは、実質上全て
の希土類ハロゲン化物発光物質に対して白濁しない。
【0028】なおSi含有量が100ppmを超え、あ
るいはCaとMgの合計含有量が200ppmを超える
と、Tm3Al5O12(TAG)ではSc及びErのハロ
ゲン化物で白濁し、Lu3Al5O12(LAG)ではS
c, Ho, ErおよびTmで白濁し、またYb3Al5O
12(YbAG)ではSc, Dy, Ho, Er, Tm, 及
びLuで白濁する。
【0029】希土類アルミニウムガーネットでは、高純
度原料を用いても、一般に不純物としてのCa量は1〜
4ppm程度、Mg量は1ppm以下,Si量は1〜4
ppm程度で、CaやMgを添加する場合、意味のある
最低添加量は5ppmとなる。これ以外の不純物、例え
ばアルカリ金属は容易に除去できるので、不純物はC
a,Mg,Siのみを問題にすればよい。
【0030】Tm,Yb,Luは高価な元素であり、図
8に示すように、これらの合計含有量が10モル%を越
えると、耐食性が劇的に増加するので、セラミックス全
体にこれらを含有させる場合、Tm,Yb,Luの合計
含有量は好ましくは10〜50モル%とする。この場合
にも、Si含有量を金属換算で100wtppm以下,
CaとMgの合計含有量を金属換算で200wtppm
以下としないと、白濁が生じやすくなった。
【0031】発明者は、TmやLu,Ybの使用量を、
これらを透光性セラミックス耐食膜として用いることに
より、節減に成功した。構成希土類元素がTm,Yb,
Luのうちの少なくとも1員からなる希土類アルミニウ
ムガーネット耐食膜を、YAGやホルミウム・アルミニ
ウム・ガーネット(HAG)やエルビウム・アルミニウ
ム・ガーネット(EAG),ジスプロシウム・アルミニ
ウム・ガーネット(DyAG)等からなる透光性の発光
管の母体内面に形成する。すると直線光透過率が高く、
白濁がほとんどなく、長期間安定な(数1,000〜1
0,000時間以上の安定性)ランプ特性が得られた。
これらの母体の内、YAGは安価な標準的材料であり、
EAG,HAG,DyAGは可視光線領域に希土類元素
固有の吸収があり、着色放電灯となる。
【0032】母体内面に設ける耐食膜は、薄膜(膜厚1
μm未満)でも厚膜(膜厚1μm以上)でも良く、耐食
性は薄膜でも厚膜でも変わらない。ただし薄膜では内面
の鏡面研磨に耐えないので、例えば母体焼結後、耐食膜
の形成前に内面を鏡面研磨する。または耐食膜を厚膜と
して、母体の粒成長を抑制した条件で焼結し、母体の平
均粒径を好ましくは15μm以下、より好ましくは10
μm以下で、特に好ましくは1〜10μmとし、耐食膜
の研磨を不要とするため好ましくはその平均粒径を20
μm以上とし、より好ましくは20μm以上で耐食膜の
膜厚以下とし、もっとも好ましくは30μm以上で耐食
膜の膜厚以下とする(図3,図4)。
【0033】透光性セラミックスの平均粒径は、高圧放
電灯に用いた場合の強度に本質的な影響を与える。そこ
で透光性セラミックスの母体部分に関して、平均粒径を
好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下
で1μm以上とする。平均粒径が15μm以下で、平均
3点曲げ強度が400MPa以上、かつワイブル係数が
6以上となり、この条件で高圧放電灯としての充分な強
度が得られる(図5)。そして平均粒径を10μm以下
で1μm以上とすれば、より確実に平均3点曲げ強度と
ワイブル係数に関する条件を満たすことができる。
【0034】透光性セラミックスの母体部分の平均粒径
は、SiやCa,Mgの影響を強く受け、Siは粒成長
を促進し、CaやMgは粒成長を抑制する(図1)。そ
こでCaとMgとの合計含有量を問題とし、これらがモ
ル比でSi含有量以上で、かつCa及びMgの合計含有
量が5〜1000wtppmとすることが、平均粒径を
15μm以下に保つために好ましい。CaとMgの合計
含有量は好ましくは600ppm以下、より好ましくは
100ppm以下、もっとも好ましくは60ppm以下
とし、Si含有量は少ないほど良く、モル比でCaとM
gの合計含有量以下で、好ましくは100ppm以下、
より好ましくは60ppm以下、もっとも好ましくは4
ppm以下とする。
【0035】このようにすれば、母体の粒成長を抑え、
平均粒径の小さな母体と、平均粒径の大きな耐食膜との
組み合わせを得ることができる。母体と耐食膜との平均
粒径の差は、母体へのCaやMgの添加の他に、耐食膜
へのSiの添加でも得ることができる。また焼結前の母
体や耐食膜でのCa,Mg,Siの含有量は、焼結後の
値に換算したものを示すが、焼結過程でのCa,Mg,
Siの消失は少ないので、焼結前のこれらの含有量と焼
結後の含有量は実質的に同じである。
【0036】この発明では、耐食膜も母体も同種の結晶
構造で格子定数も熱膨張率も類似している。このため耐
食膜と母体との密着性が高く、熱疲労による耐食膜の剥
離は生じない。また耐食膜そのものが透光性セラミック
スであるため、膜の形成による透光性の低下もない。
【0037】透光性母体の成形時に、焼結後耐食膜とな
る層を形成する方法を説明する。透光性母体ならびに膜
形成用の原料粉末は、希土類並びにアルミニウムの酸化
物微粉末をガーネット組成に混合したものでも良いが、
均一性の観点からガーネット単一相のものが好ましい。
ガーネット単一相の原料粉末は、例えば重炭酸アンモニ
ウムを沈殿剤として用いる方法等で得られる。母体は、
原料粉末をプレス成形や鋳込み成形、押出し成形や射出
成形などで成形する。
【0038】原料粉末100部に対し、純水やアルコー
ル等の媒液を例えば20〜100部、バインダー及び解
こう剤をそれぞれ例えば0.2〜10部加えて、ボール
ミル中で例えば10時間以上混合分散して、スラリーを
得る。射出成形を行う場合、媒液は用いない。バインダ
ーとしてはメチルセルロース,アクリルエマルジョン,
ポリビニルアルコール等が挙げられ、解こう剤としては
ポリアクリル酸のアンモニウム塩やポリカルボン酸等が
挙げられる。
【0039】調製したスラリーを必要に応じて乾燥ある
いは濃縮する。プレス成形ではスプレードライヤー等の
乾燥機を用いてスラリーを乾燥し、原料粉末の顆粒を得
る。この顆粒を所望の形状をした金型やゴム型により成
形する。また押出し成形では、スラリーを押出しに可能
な粘度にまで濃縮し、押出し機により成形する。鋳込み
成形では、スラリーのまま石膏型、多孔質樹脂型、ある
いは多孔質セラミックス型等を用いて鋳込み成形を行
い、成形体を得る。
【0040】予め準備しておいた、耐食膜用の希土類ア
ルミニウムガーネットのスラリーを、得られた成形体の
内面に流し込み、母体の成形体を型代わりとして鋳込み
成形により膜を形成する。母体の成形体に、バインダー
等の固化のため、吸湿性が無い場合は、一旦脱脂した
後、上記と同様の操作を行えばよい。また、後述するよ
うに、耐食膜の平均粒径を大きくして直線光透過率を向
上させる場合、例えば外面にも耐食膜をコーティング
し、内外面とも研磨を不要にする。この場合、コーティ
ング用のスラリー中に発光管の成形体をディップする。
内面及び外面に形成する膜のガーネット組成が異なる場
合には、発光管内面に外面用のスラリーが入らないよう
に、発光管成形体の両端を封止しておく。
【0041】セラミックス膜用のスラリーの調整は、母
体と同様に行えば良い。好ましくは、焼結収縮挙動並び
に焼結後の収縮率が母体のそれと同じになるようにす
る。スラリーの濃度,粘度,粒度分布などを制御するこ
とにより、収縮率の制御は容易に可能である。セラミッ
クス膜の厚みは、スラリー注入後排泥までの保持時間を
制御することにより、任意の膜厚に制御できる。厚い膜
を形成する場合には、着肉速度の速い高濃度スラリー
を、薄い膜を形成する場合には、着肉速度の遅い低濃度
スラリーを用いるのが好ましい。より薄い膜を形成する
場合、母体の成形体を膜用のスラリー調整に用いた媒液
で湿らせた後、膜の形成を行えば良い。
【0042】この様にして得られた複合成形体を脱脂し
た後に、酸素,水素,希ガス或いはこれらの混合雰囲気
若しくは真空中で、1500℃以上、より好ましくは1
600℃以上で、かつ焼結体の融点よりも50℃以上低
い温度で、1時間から100時間焼結すると、透光性セ
ラミックスが得られる。焼結雰囲気は、短時間で透光性
の良好なセラミックスを得るため、真空中または水素中
とするのが好ましい。また焼結温度を1500℃以上
で、焼結体の融点よりも50℃以上低い温度としたの
は、1500℃未満では充分な緻密化が起こらないた
め、満足な透明度が得られず、また焼結体の融点近傍で
は異常粒子成長が生じ、焼結体強度の低下が顕著になる
ためである。
【0043】以上のようにして得られた希土類アルミニ
ウムガーネット発光管の内外面を、ダイヤモンドペース
トやアルミナスラリー等を用いて鏡面研磨すると、直線
光透過率に優れたセラミックス発光管が得られる。内外
面の鏡面研磨を行わなくとも、直線光透過率として50
%以上の焼結体を得ることも可能で、特に点光源として
の放電灯を必要とする用途(例えば液晶プロジェクター
用光源)以外の分野では、鏡面研磨無しで発光管として
も良い。
【0044】研磨加工を施していない透光性セラミック
スの外表面は、一般的に半透明な状態となっている。こ
れは表面を構成する焼結体粒子の粒界が、焼結時の熱に
より腐食されるため窪んでおり、粒子と粒子との粒界で
の凹凸により光が散乱されるためである。光散乱の程度
は粒径が小さいほど大きく、逆に大きいほど小さくな
る。粒径を20μm以上、より好ましくは30μm以上
とすると、光散乱の影響は極端に軽減される。一方、焼
結体の強度は粒径が大きくなるほど弱く、逆に小さいほ
ど強くなり、好ましくは母体部の平均粒径を15μm以
下、より好ましくは10μm以下とする。そこで母体の
平均粒径を15μm以下,好ましくは10μm以下、耐
食膜の平均粒径を20μm以上、好ましくは30μm以
上とすると、高圧放電灯内面の鏡面研磨なしで充分な直
線光透過率を得ることができる。
【0045】高圧放電灯の発光管は、点灯時に数10〜
100atm以上の高圧力にさらされる。発光管が破裂
しないように耐圧性を増すには、セラミックスを構成す
る粒子の大きさを小さくすることが必要である。高圧放
電灯用発光管として、ガーネットセラミックスの場合、
平均3点曲げ強度が400MPa以上で、ワイブル係数
が6以上必要である。このような高強度セラミックスと
するためには、透光性ガーネットセラミックスの場合、
母体の平均粒径を15μm以下とする必要がある。この
ように耐食膜の平均粒径と母体の平均粒径とを変化させ
るには、母体にCaまたはMgを粒成長抑制剤として添
加し、高温焼結を行えば良い。CaやMgの効果はSi
により希釈されることから、モル比でSiと等量以上添
加し、かつCaとMgの合計添加量が5〜1000wt
ppmとなるようにする。5wtppm以下では添加効
果がなく、また1000wtppm以上では第2相が生
成し母体の光透過性が低下する。
【0046】次に、予め透光性母体を焼結しておき、こ
の内面に透光性耐食膜を形成する方法を説明する。
【0047】透光性母体の作成方法は、母体の成形時に
膜を形成しない以外は、前記と同様である。少なくとも
母体の内面を鏡面研磨した後、予め調整しておいた膜形
成用の混合金属塩溶液を母体内面に塗布する。混合金属
塩溶液としては、ガーネット組成に混合した希土類元素
とアルミニウムのアルコキシド溶液や、ステアリン酸塩
等の有機高分子酸塩をトルエンやアルコール等に溶解し
たものや、酸無水物をアミン等によりアルコールに可溶
化したもの等が挙げられる。塗布の方法は特に限定しな
いが、発光管の一端を封印しておき、他端より注射筒等
を用いて混合金属塩溶液を注入し、その後封止端を解放
して余分な金属塩溶液を排出する方法が最も簡便であ
る。この方法により、1回当たりおよそ0.01〜0.1
μmの塗布膜を形成することができる。これ以上の膜厚
にすることも可能であるが、塗布膜の乾燥中にクラック
が発生しやすくなるため、1回当たりの塗布厚みは最大
0.1μmとするのが好ましい。さらに厚くする場合、
塗布、乾燥、300〜600℃での熱処理、の工程を繰
り返せばよい。
【0048】この様にして塗布膜を形成した後、最終的
に800〜1500℃、好ましくは、1100〜140
0℃にて熱処理し、目的とする希土類アルミニウムガー
ネット耐食膜とする。熱処理温度が800℃以下では膜
の結晶性が十分ではなく、1600℃以上では母体のサ
ーマルエッチングが起こり透過率が低下する。より好ま
しくはランプ点灯中の発光管温度より若干高目の温度で
処理しておく。以上により直線光透過率に優れた、メタ
ルハライドランプに好適に用いられるセラミックス発光
管が得られる。なお母体外周面の加工が済んでいない場
合には、鏡面研磨を施す。この方法による耐食膜の形成
では、膜は単独でグレインを形成することはない。恐ら
く、耐食膜は母体の結晶粒子上にエピタキシャル成長し
ていると思われる。
【0049】透光性母体の成形時(焼結前の成形体)
に、焼結後膜となる層を形成する方法では主として厚膜
が得られるのに対して、予め透光性母体を作成してお
き、この内面に透光性膜を形成する方法では主として薄
膜が得られる。
【0050】
【実施例】以下、この発明の実施例を説明するが、この
発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
【実施例1】0.5モル/リットルの硝酸イッテルビウ
ム水溶液30リットルと、0.5モル/リットルの硝酸
アルミニウム水溶液50リットルを混合した。この溶液
を、アンモニア水を加えてpH8.0とした2モル/リ
ットルの炭酸水素アンモニウム水溶液80リットル中
に、2.8リットル/分の速度で滴下した。この際、硝
酸イッテルビウムと硝酸アルミニウムの混合水溶液なら
びに炭酸水素アンモニウム水溶液は、共に恒温層中にお
いて25℃に維持した。滴下終了後、25℃で24時間
熟成した後、濾過、水洗を4回繰り返し、140℃で4
8時間乾燥した。
【0052】得られたアモルファス沈殿を1300℃で
3時間仮焼し、分散性に優れ平均一次粒径で0.2μm
のイッテルビウム・アルミニウム・ガーネット(YbA
G)微粒子が得られた。このYbAG原料粉末2Kgに
対して可塑剤のセラミゾールC−08(日本油脂製)を
60g添加し、更にバインダーとしてメチルセルロース
を300g添加して、純水4kgを加え、ナイロンポッ
ト及びナイロンボールを用いて、100時間ボールミル
混合した。このスラリーを加熱濃縮して、押出し可能な
粘度とした後、3本ロールミルを5回通して生地の均一
性を向上させた。こうして得られた生地を、押出し機を
用いて60mm×200mm×4mmに成形した。この
成形体を充分に乾燥した後、20℃/時間で600℃ま
で昇温し、この温度で12時間保持して脱脂した。その
後、真空炉にて1680℃の温度で5時間焼結した。こ
の際、昇温速度は300℃/hr、残留圧力は10−3
Torr以下とした。
【0053】得られた焼結体は、両面をダイヤモンドス
ラリーを用いて鏡面研磨を行い、分光光度計にて直線光
透過率を測定した。その結果、波長600nmでの直線
光透過率は79.8%(試料厚み1.0mm)であった。
またこの試料を大気中1500℃にて2時間サーマルエ
ッチングを行い、微構造を光学顕微鏡にて観察した結
果、平均粒径は6.2μmであった。ここで平均粒径
は、SEM等の高分解能画像上で任意に引いた線の長さ
をCとし、この線上の粒子数をN、画像の倍率をMとし
て、 平均粒径=1.56C/(MN) で求めた。
【0054】更に真空中での焼結温度を、1470℃〜
1920℃の範囲で変えた以外は同様にして、Yb3A
l5O12の焼結体を得た。また真空中での焼結温度を1
700℃あるいは1800℃とし、CaやMg,Siの
含有量を変えた他は同様にしてYb3Al5O12の焼結体
を得た。これらの焼結体を、JIS−R1601に従っ
て3点曲げ試験に供した。曲げ試験は20点で行い、ワ
イブル確率紙(日本規格協会)を用いてワイブル係数を
求めた。曲げ強度は平均3点曲げ強度で示す。同様にし
て、Y3Al5O12(YAG)、TmAl5O12(TA
G)及びLu3Al5O12(LAG)焼結体を作成し、評
価した結果を表1に示す。特に断らない限り、CaやM
g,Siは無添加で、それらの含有量は各4wtppm
以下であった。直線光透過率は、焼結体の両面を鏡面研
磨後の値で、試料厚は1.0mmである。これらのこと
から、平均粒径は1〜20μmが好ましく、より好まし
くは1〜15μm、最も好ましくは1〜10μmとすべ
きことが分かる。さらに表1から、好ましいものの例と
して、Yb3Al5O12からなる高圧放電灯用発光菅で、
CaとMgの合計含有量が50wtppm以下,Si含有量
が5wtppm以下、かつ平均粒径が1〜15μm、特に2
〜15μmで、ワイブル係数が6以上、平均3点曲げ強
度が450MPa以上のものが挙げられる。
【0055】
【表1】 表1 希土類アルミニウムガーネット焼結体の物性 素材 添加物 焼結温度 平均粒径 直線光 曲げ強度 ワイブル (wtppm) (μm) 透過率(%) (Mpa) 係数 Yb3Al5O12 … 1470 0.65 1 780 5 Yb3Al5O12 … 1680 6.2 80 580 6 Yb3Al5O12 … 1730 10.9 82 525 8 Yb3Al5O12 … 1800 13.1 82 475 8 Yb3Al5O12 … 1880 27.6 81 395 4 Yb3Al5O12 … 1920 45.2 80 300 4 Yb3Al5O12 Ca 50 1800 2.1 82 729 7 Yb3Al5O12 Si 75 1700 18.4 79 434 6 Yb3Al5O12 Si 100 1800 32.6 80 380 6 Y3Al5O12 … 1680 7.5 79 585 8 Y3Al5O12 … 1730 14.5 81 408 6 Tm3Al5O12 … 1680 7.1 72 565 6 Tm3Al5O12 … 1700 9.8 75 555 7 Lu3Al5O12 … 1680 5.9 73 630 7 Lu3Al5O12 … 1730 12.3 73 412 6 Lu3Al5O12 … 1800 18.9 75 351 5
【0056】
【実施例2】実施例1と同様にしてYAGの平板(60
mm×100mm×1mm)を作成した。なお、この場
合、焼結助剤としてCaO、MgO及びSiO2を濃縮
前のボールミル混合過程で添加したものも作成した。1
680℃の温度で5時間焼結した場合の助剤添加量と焼
結体の平均粒径との関係を図1に(助剤添加量0,5,
50,250,500,600,1000,1250,
1500wtppm)、また助剤添加量を一定とした場合の
焼結温度と焼結体の平均粒径との関係を図2に示す。こ
の結果、SiO2には粒成長促進効果が、Ca及びMg
には粒成長抑制効果があることが判る。また、Ca及び
Mgの効果はほぼ等価で、その作用の及ぶ範囲は5〜1
000ppm、より狭くは5〜600ppmであり、そ
れ以上添加すると粒成長がはじまることが判る。また、
図2には、250ppmのSiにCaを同時添加した場
合の結果も示した。これにより、SiにはCa及びMg
の効果を打ち消す作用があり、モル比でSiと等量より
過剰のCa及びMgを加えた場合にのみ、粒成長抑制効
果が期待される。
【0057】
【実施例3】実施例2と同様にして、Caを10ppm
添加したYAGを押出し成形した。600℃で脱脂した
後、ハンドリング強度を得る目的で、800℃で1時間
加熱処理した。この処理による焼結収縮は認められなか
った。この熱処理成形体を、超純水を入れたビーカーに
浸した後、真空脱泡して充分内部まで超純水をしみ込ま
せた。次いで、熱処理成形体を超純水から引き上げ、表
面の水を軽く拭き取った後、予め用意しておいたLAG
の膜作成用スラリーに浸漬して、100mm/分の速度
で引き上げた。十分乾燥した後、実施例1と同様にして
脱脂、焼結を行った。なお、LAG膜作成用スラリー
は、実施例1と同様にして作成したLAG原料粉末2k
gに、解膠剤としてポリカルボン酸アンモニウム塩を6
g添加し、更にバインダーとしてWA−320(東亜合
成化学製)を100g添加して、純水2kgを加え、ナ
イロンポット及びナイロンボールを用いて、100時間
ボールミル混合して調整した。焼結後の耐食膜の厚さは
60μmであった。
【0058】焼結温度と焼結体の直線光透過率(未研磨
で測定)との関係を図3に示し、母体と耐食膜の平均粒
径と焼結温度との関係を図4に示す。焼結温度が高くな
り、耐食膜の平均粒径が大きくなるに従い、直線光透過
率が高くなり、約20μmで50%、30μmで60%
以上の直線光透過率が得られた。このことから耐食膜の
平均粒径は20μm以上が好ましく、より好ましくは3
0μm以上とすべきことが分かる。なお1800℃にて
焼結したものの両面を、ダイヤモンドスラリーを用いて
鏡面研磨した焼結体では、直線光透過率は82%であっ
た。
【0059】
【実施例4】図5に、Ca添加量並びに焼結温度を変え
て作成したYAG透光性焼結体(Mg,Si無添加で、
1800等の数値は焼結温度)を、10分間隔で120
0℃と室温との間で加熱冷却を1000回繰り返して、
温度変化に対する耐熱疲労試験を行った結果を示した。
この図より、ワイブル係数が6以上、平均3点曲げ強度
が400MPa以上のものであれば、ワイブル係数の低
下が少なく、温度変化に充分対応できることがわかる。
なお実施例3と同様にしてLAG膜(膜厚60μm)を
形成したYAGについても同様の試験を行ったが、結果
にはほとんど差がなかった。
【0060】従って耐食膜は高圧放電灯の強度に影響せ
ず、母体のワイブル係数を6以上、平均3点曲げ強度を
400MPa以上として、熱疲労への耐久性を得ること
ができることが分かる。
【0061】
【実施例5】YAG原料粉末200gに対して、粒成長
抑制剤としてCaOを0.01g(Ca含有量36pp
m)、また解膠剤として中京油脂製のE−503とF−
219をそれぞれ15g及び6g添加し、更にバインダ
ーとして積水化学製PVB−BL1を1.0g添加して
エタノール50gを加え、ナイロンポットおよびナイロ
ンボールを用いて、100時間ボールミル混合し、母体
成形用スラリーとした。また耐食膜成形用スラリーとし
てYbAG原料粉末(Si,Ca,Mgはいずれも4p
pm以下)を用い、同様にアルコールスラリーを調整し
た。母体用スラリーを発光管形状に型どった石膏型に流
し込み、10分間保持した後、余分のスラリーを排泥し
て、着肉厚み1.2mmの円柱状の成形体を得た。次に
この円柱状成形体の中にセラミックス膜成形用のスラリ
ーを流し込み、10秒間保持した後に排泥した。着肉後
の石膏型を、40℃で乾燥機にて12時間乾燥した後に
脱形し、成形体を得た。
【0062】この成形体を大気中にて50℃/hrで6
00℃まで昇温し、12時間保持して脱脂した後に、真
空炉にて1700℃の温度で6時間焼結した。得られた
焼結体は耐食膜の剥離のない透光性に優れたものであ
り。断面を鏡面研磨した後光学顕微鏡にて微構造を観察
した結果、YAG母体部の平均粒径は0.9μm、Yb
AG耐食膜部の平均粒径は10.5μmで、膜厚は30
μmであった。
【0063】
【実施例6】実施例5と同様にして鋳込み成形により母
体をYAG(焼結体平均粒径2.8μm,Ca含有量3
6ppm)、膜部をYbAG(焼結体平均粒径15μ
m,膜厚30μm,Ca,Mg,Si無添加)とした発
光管を作製し、内外両面を鏡面研磨して、図6,図7に
示す高圧放電灯を作製した。高圧放電灯1では、透光性
セラミックス発光管2の内部に、Hg,Arと共に発光
物質としてDy-Tl-Na-(Br-I)のハロゲン化物を
封入してあり、発光管2の両端部は溶融した封着材16
で気密に封止されている。4はタングステン電極で、電
極間距離は9.2mmとした。Nb合金のリードピン10
に100Wの定電力交流安定器にて電圧を印加すること
により、電極間にアーク放電が生じ、発光管2に封入し
たハロゲン化物がガス化して発光する。8はタングステ
ンコイル、12は電極4をリードピン10に密着させる
ためのかしめ部、14は発光物質と封着材16等の反応
を防止するためのアルミナワッシャーである。
【0064】高圧放電灯の点灯直後から10,000時
間経過後までの光束維持率、平均演色評価数(Ra)の
測定結果を表2に示す。
【0065】
【表2】 表2 高圧放電灯の特性 点灯後経過時間(hr) 光束維持率(%) 平均演色評価数(Ra) 0 100 96 100 99 96 500 97 94 1000 96 92 2500 93 90 5000 92 88 10000 91 85
【0066】実施例の高圧放電灯は、1000時間点灯
後においても、96%の光束を維持しており、また1
0,000時間点灯後においても、発光管と発光物質と
の白濁はほとんど見られなかった。
【0067】内面にYbAG耐食膜のないYAG発光管
(平均粒径2.8μm)を同様に評価すると、ランプ点
灯後約20時間後から、発光物質との反応による白濁が
生じ、300時間経過後には目視で不透明になった。
【0068】
【実施例7】実施例1と同様にして、ガーネットの構成
希土類元素としてのYとLuとの混合割合を変えた原料
粉末を作成し、それを用いて実施例5と同様に発光管
(内外両面を鏡面研磨,Ca,Mg,Siはいずれも4
ppm以下の不純物量、耐食膜無し)を作製した。希土
類元素組成による光束維持率の変化を図8に示す。構成
希土類元素の10wt%以上をLuとすれば、飛躍的に
発光元素との反応が抑制されることがわかる。Tmおよ
びYbについても同様の結果が得られた。
【0069】
【実施例8】実施例6と同様にして、略円柱状のYAG
母体の焼結体(Ca,Mg,Siはいずれも4ppm以
下の不純物量)を作製し、内外面を鏡面研磨した。金属
無水酢酸塩にジエタノールアミンを金属/ジエタノール
アミン=1/1の割合で配合して、アルコールに可溶化
した試料を調整した、この試料をTm/Al=3/5の
比率で混合して、混合アルコール溶液(金属濃度0.5
%)とし、注射筒を用いて焼結体の内側に下部から注入
し、すぐに20mm/minの速度で排液して、母体の
内面に塗布した。塗布後、100℃の乾燥機中にて30
分間乾燥した後、大気中500℃で10分間熱処理を行
い、耐食膜を焼き付けた。この操作を3回繰り返した
後、耐食膜の結晶性を安定化させるため1200℃にて
30分間熱処理し、膜厚約0.5μmの耐食膜とした。
耐食膜には、TAGの固有吸収以外に直線光透過率を低
下させる要素はなく、また母体と膜部との剥離は見られ
なかった。
【0070】このようにしてセラミックス薄膜を内面に
コーティングした発光管を得、実施例6と同様にして高
圧放電灯を作製した。高圧放電灯の点灯直後から500
0時間経過後までの光束維持率の測定結果を表3に示
す。
【0071】
【表3】 表3 光束維持率の経時変化 点灯後経過時間(hr) 0 100 500 1000 2500 5000 光束維持率(%) 100 99 96 95 93 92
【0072】TAG耐食膜の無い母体のみの発光管を用
いて、同様の高圧放電管を作製した場合、点灯後100
時間経過後の光束維持率は40%であった。
【0073】
【実施例9】TAG原料粉末(Ca:4ppm,Mg:
0.5ppm,Si:3ppm)にCa,Mg,Siを
添加し、実施例5と同様にして略円柱状の透光性セラミ
ックス発光管を作製した。この発光管を用い実施例6と
同様にして、高圧放電灯を作製した。ただし耐食膜は設
けていない。ランプを点灯し、500時間経過後の光束
維持率の評価試験を行った結果を、図9に示す。光束維
持率の低下は発光管の白濁により生じ、発光管の白濁は
SiおよびCaあるいはMgを多く含有している場合に
顕著である。これらの結果より、白濁の少ない良好な発
光管を作製するには、Siの含有量を100ppm以
下、CaとMgの合計含有量を200ppm以下とする
必要がある。より好ましくはSi含有量を60ppm以
下、CaとMgの合計含有量を100ppm以下とす
る。
【0074】
【実施例10】実施例6と同様にして、Y3Al5O12発
光管母体(Ca36ppm)の内面に、各種希土類ガー
ネット膜(Ca,Mg,Si無添加)をコーティング
し、高圧放電灯を作製し、膜材と発光物資との反応性を
評価した。結果を表4に示す。100時間点灯後反応が
生じ発光管が白濁したものは×、白濁の無かったものを
○とした。なお発光物質は希土類元素の3ヨウ化物であ
る。
【0075】
【表4】 表4 膜材と発光物質との反応性 反応物質膜材 Ce Pr Nd Sm Gd Tb Dy Ho Er Tm Yb Lu Sc Y3Al5O12 ○ ○ ○ ○ ○ × × × × × × × × Tb3Al5O12 ○ ○ ○ ○ ○ ○ × × × × × × × Dy3Al5O12 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ × × × × × × Ho3Al5O12 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ × × × × × Er3Al5O12 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ × × × × Tm3Al5O12 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ Yb3Al5O12 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ Lu3Al5O12 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
【図面の簡単な説明】
【図1】 1300℃仮焼で、真空中1680℃で焼結
したYAGでの、Ca,Mg,及びSiの平均粒径への
影響を示す特性図
【図2】 1300℃仮焼のYAGでの、真空中の焼結
温度と焼結助剤との平均粒径への影響を示す特性図
【図3】 Ca10ppm添加で1300℃仮焼のYA
Gを母体材料とし、60μm厚のLAG膜を内面に設け
た透光性セラミックスでの、焼結温度と直線光透過率と
の関係を示す特性図
【図4】 Ca10ppm添加のYAGを母体とし、6
0μm厚のLAG膜を内面に設けた透光性セラミックス
での、母体と耐食膜との平均粒径と焼結温度との関係を
示す特性図
【図5】 Ca添加量を0〜1200ppmの範囲で変
化させたYAGでの、焼結温度とCa添加量との、熱疲
労特性を示す特性図
【図6】 実施例の透光性セラミックスを用いた高圧放
電灯の断面図
【図7】 図6の要部拡大断面図
【図8】 YをLuで置換し、真空中1700℃で焼結
したYAG高圧放電灯(Dy−Tl−Na−(Br−
I)発光物質)での、ランプ点灯時間と光束維持率との
関係を示す特性図
【図9】 真空中1700℃で焼結したTAG高圧放電
灯(Dy−Tl−Na−(Br−I)発光物質)での、
光束維持率に対するCa,Mg,Siの効果を示す特性
【符号の説明】
1 高圧放電灯 2 セラミックス発光管 4 W電極 6,8 Wコイル 10 リードピン 12 かしめ部 14 ワッシャ 16 封着剤
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 久保 仁 大阪市中央区高麗橋4丁目2番7号 神島 化学工業株式会社内

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 耐食性希土類アルミニウムガーネットセ
    ラミックスにおいて、 構成希土類元素中のTm,Yb,Luの合計含有量が1
    0〜100モル%で、 かつ前記セラミックス中の、Si含有量が金属換算で0
    〜100wtppm、CaとMgの合計含有量が金属換
    算で0〜200wtppmであることを特徴とする、耐
    食性セラミックス。
  2. 【請求項2】 前記Tm,Yb,Luの構成希土類元素
    中での合計含有量が10〜50モル%であることを特徴
    とする、請求項1の耐食性セラミックス。
  3. 【請求項3】 前記耐食性セラミックスは、透光性で、
    高圧放電灯用の発光管であることを特徴とする、請求項
    1の耐食性セラミックス。
  4. 【請求項4】 前記耐食性セラミックスは、平均粒径が
    1〜20μmであることを特徴とする、請求項1の耐食
    性セラミックス。
  5. 【請求項5】 前記耐食性セラミックスの、平均3点曲
    げ強度が400MPa以上、ワイブル係数が6以上であ
    ることを特徴とする、請求項4の耐食性セラミックス。
  6. 【請求項6】 希土類アルミニウムガーネットセラミッ
    クスからなる母体の少なくとも1面に、構成希土類元素
    がTm,Yb,Luの少なくとも一員からなり、かつ
    Si含有量が金属換算で0〜100wtppm,Caと
    Mgの合計含有量が金属換算で0〜200wtppm
    の、希土類アルミニウムガーネット耐食膜を設けた、耐
    食性セラミックス。
  7. 【請求項7】 前記母体は管状で、前記耐食膜と前記母
    体は共に透光性で、かつ前記耐食膜を前記母体の内面に
    設けたことを特徴とする、高圧放電灯用発光管のための
    請求項6の耐食性セラミックス。
  8. 【請求項8】 前記母体は、Si含有量が4ppm以
    下、Ca及びMgの合計含有量が5〜1000wtpp
    m、平均粒径が1〜15μmであることを特徴とする、
    請求項7の耐食性セラミックス。
  9. 【請求項9】 前記母体は、平均3点曲げ強度が400
    MPa以上、ワイブル係数が6以上であることを特徴と
    する、請求項7の耐食性セラミックス。
  10. 【請求項10】 前記耐食膜は、平均粒径が20μm以
    上、Si含有量が金属換算で0〜60wtppm、Ca
    とMgの合計含有量が金属換算で0〜100wtppm
    であることを特徴とする、請求項8の耐食性セラミック
    ス。
  11. 【請求項11】 前記耐食性セラミックスの母体外面側
    のみが研磨されていることを特徴とする、請求項10の
    耐食性セラミックス。
  12. 【請求項12】 希土類アルミニウムガーネットセラミ
    ックスからなる管状母体の、未焼結成形体の内面に、 構成希土類元素がTm,Yb,Luの少なくとも一員か
    らなり、かつ焼結後のSi含有量が金属換算で0〜10
    0wtppmとなり、焼結後のCaとMgの合計含有量
    が金属換算で0〜200wtppmとなるように、希土
    類アルミニウムガーネット耐食膜の前駆体膜を形成し、 ついで前記管状母体と前駆体膜とを焼結することを特徴
    とする、耐食性セラミックスの製造方法。
  13. 【請求項13】 前記管状母体の未焼結体は、焼結後の
    Si含有量が金属換算で4ppm以下となり、焼結後の
    Ca及びMgの合計含有量が金属換算で5〜1000w
    tppmとなるように構成されていることを特徴とす
    る、請求項12の耐食性セラミックスの製造方法。
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