JPH11225755A - 生分解性ポリマー分解酵素及びその製造方法 - Google Patents

生分解性ポリマー分解酵素及びその製造方法

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JPH11225755A
JPH11225755A JP3743598A JP3743598A JPH11225755A JP H11225755 A JPH11225755 A JP H11225755A JP 3743598 A JP3743598 A JP 3743598A JP 3743598 A JP3743598 A JP 3743598A JP H11225755 A JPH11225755 A JP H11225755A
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JP
Japan
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esterase
strain
pbs
microorganism
culture
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Application number
JP3743598A
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Toshiaki Kanbe
敏明 神戸
Tadaatsu Nakahara
忠篤 中原
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Mitsubishi Chemical Corp
Original Assignee
Mitsubishi Chemical Corp
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Publication date
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  • Separation, Recovery Or Treatment Of Waste Materials Containing Plastics (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 生分解性ポリマーであるポリブチレンサクシ
ネート(PBS)の分解に適する微生物、酵素、及びP
BSの分解方法を提供する。 【解決手段】 ポリブチレンサクシネートの加水分解を
触媒する酵素活性を有するエステラーゼを生産するアシ
ドボラックス属微生物の培養物またはその処理物、ある
いはこの微生物菌体または培養物から採取したエステラ
ーゼの粗精製画分もしくは精製酵素をポリブチレンサク
シネートに、直接またはポリブチレンサクシネートを含
有する水溶液中で、接触させることにより、ポリブチレ
ンサクシネートを加水分解する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、生分解性ポリマー
であるポリブチレンサクシネート(以下、PBSと略記
する)の加水分解を触媒する微生物由来の酵素であるエ
ステラーゼ、該エステラーゼを生産する微生物、該微生
物を培養することによるエステラーゼの製造法、及びそ
のようにして得られるエステラーゼを用いるPBSの効
率的な分解方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、生分解性プラスチック製品は、投
棄後、土壌中や海水中に存在する微生物により分解され
得る素材として注目され、様々な生分解性ポリマーの開
発が試みられてきた。PBSは、大量に利用、廃棄され
るプラスチックに起因する諸問題を踏まえて開発された
生分解性プラスチックである。PBSの構成成分は1,
4−ブタンジオールとコハク酸とから成る脂肪族ポリエ
ステルであり、完全な生分解性であり、耐熱性に優れ
(Tm>100℃)、物性はポリエチレンに類似してお
り、その優れた物性から、将来性の高い高分子ポリマー
として注目されている。
【0003】PBSの生分解性については、土壌中への
埋設試験等で証明されているものの、これを分解する微
生物及び分解酵素に関しては、本発明者が知る限り全く
報告されていない。使用後のPBS製品を効率的に分解
し、リサイクルあるいは他の有用物質へ転換する等の有
効利用技術の開発が望まれていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、PBSの分
解に適する微生物、および分解酵素を新たに見出し、ま
た微生物を用いた分解酵素の製造法、及びPBSの分解
方法を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、PBSを
分解し得る微生物の分離を目的として鋭意研究を重ねた
結果、PBSを唯一の炭素源として分解、利用して生育
し、PBSを加水分解する触媒活性を有する酵素を産生
する新規微生物を自然界から分離することに成功し、本
発明を完成するに至った。
【0006】かくして本発明によれば、(a)アシドボ
ラックス属微生物に由来する、PBSの加水分解を触媒
する酵素活性を有する新規エステラーゼ、(b)該エス
テラーゼを生産する微生物、(c)上記(b)の微生物
を培地で培養し、その培養物から上記(a)のエステラ
ーゼを採取することを特徴とするエステラーゼの製造
法、(d)上記(b)の微生物菌体、またはこの微生物
菌体の培養物から採取したエステラーゼの粗精製画分も
しくは精製画分をPBSに作用させ、PBSを効率的に
分解する方法が提供される。
【0007】本願において、ポリブチレンサクシネート
(PBS)を加水分解する触媒活性を、単に「エステラ
ーゼ活性」ということがある。また、ポリブチレンサク
シネート(PBS)を加水分解する触媒活性を有する酵
素を、単に「エステラーゼ」ということがある。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明をその実施の形態と
ともに詳細に説明する。
【0009】<1>本発明のエステラーゼ及び該エステ
ラーゼを生産する微生物 本発明のエステラーゼの製造及び該エステラーゼを用い
たPBSの分解に用いられる微生物は、アシドボラック
ス(Acidovorax)属に属し、エステラーゼを構成的に発
現するか、または誘導物質あるいは温度等により誘導的
に発現するかなどの如何にかかわらず、培地で培養して
得られる菌体もしくは培養液中に該酵素活性を有してい
れば特に制限されない。このような微生物は、例えば以
下のような方法によって自然界より分離、取得、あるい
は既存の保存菌株より選定、取得することができる。
【0010】(1)PBS分解微生物の分離 土壌、コンポスト、活性汚泥等から採取した試料を、培
地A[組成:PBS(分子量約4万、微粉末)2g、K
2PO4 0.2g、K2HPO4 1.6g、(NH
4)2SO4 1g、MgSO4・7H2O 0.2g、Na
Cl 0.1g、CaCl2・2H2O 20mg、Fe
SO4・7H2O 10mg、MnSO40.5mg、N
2WO4・2H2O 0.5mg、Na2Mo4・2H2
0.5mg、Plysurf(界面活性剤、第一化学
薬品社製)40ppm、蒸留水1L(pH7.0)]に
入れ、20〜40℃にて2〜4日間、好気的に振とう培
養し、その一部を新たな培地Aに植え継ぐ操作を4〜5
回繰り返す集積培養を行う。培養後の培養物を寒天2%
を含む上記培地Aの組成からなる乳化PBS寒天平板培
地に塗抹し、20〜40℃にて2〜4日培養する。この
平板培地上にハローを形成するコロニーを単離し、以下
の固形PBS分解試験に供し、PBS分解酵素活性を有
する微生物を選定する。
【0011】(2)固形PBS分解試験 上記(1)で単離された微生物を、直径2.5mm、長
さ4mmの円筒状のPBSペレット 0.2g/Lを唯
一炭素源とした前記培地Aに接種し、20〜70℃にて
1〜2日間振とう培養後、PBSの重量が減少している
微生物を、PBS分解酵素活性を有する微生物として選
定することができる。また、培養物をパラニトロフェニ
ルアセテートに作用させ、遊離するパラニトロフェノー
ルを405nmの吸光度として検出することにより、エ
ステル加水分解活性を指標として選定することもでき
る。
【0012】このようにして取得できる微生物として、
アシドボラックス属に属する微生物、例えば、アシドボ
ラックス・エスピー(Acidovorax sp.)BS−3株、ア
シドボラックス・エスピー(Acidovorax sp.)BS−4
株、アシドボラックス・エスピー(Acidovorax sp.)B
S−5株等を挙げることができる。これらの微生物は、
以下に詳述するような菌学的諸性質を有しており、互い
に近縁な、いずれも新規微生物と推定される。
【0013】ア)BS−3株 1.形態学的性質(+:陽性、−:陰性) 形 態 : 短桿菌 胞子形成 : − グラム染色性: − 運動性 : −
【0014】2.生理的性質 カタラーゼ :(+) オキシダーゼ : − O−Fテスト : − 硝酸塩の還元 :(+) インドールの生成 : − グルコースからの酸生成:− アルギニン・ジヒドロラーゼ:− ウレアーゼ :− aesculin hydrolysis:+ ゼラチンの液化 :(+) β−ガラクトシダーゼ:+ グルコースの資化性:+ アラビノースの資化性:+ マンノースの資化性:+ マンニトールの資化性:+ N−アセチルグルコサミンの資化性:− マルトースの資化性:+ グルコン酸の資化性:+ カプロン酸の資化性:− アジピン酸の資化性:+ リンゴ酸の資化性 :− クエン酸の資化性 :− フェニルアセテートの資化性:− チトクロム・オキシダーゼ:−
【0015】以上の菌学的諸性質を、バージェイズ・マ
ニュアル・オブ・システマティック・バクテリオロジー
(Bergey's Manual of Systematic Bacteriology Vol.
2,[P.H.A.Sneath, N.S.Mair, M.E.Sharpe and J.G.Hol
(1986) Williams & Wilkins])に従って調べたとこ
ろ、アシドボラックス・デラフィルディ(Acidovorax d
elafieldii)に近縁の新規の菌株であることが判明し
た。本発明者らは、本菌をアシドボラックス・エスピー
(Acidovorax sp.)BS−3株と命名した。尚、本菌は
工業技術院生命工学工業技術研究所に受託番号:FER
M P−16633として寄託されている。
【0016】イ)BS−4株 1.形態学的性質 形 態 : 短桿菌 胞子形成 : − グラム染色性: − 運動性 :(+)
【0017】2.生理的性質 カタラーゼ : + オキシダーゼ : + O−Fテスト : − 硝酸塩の還元 : + インドールの生成 : − グルコースからの酸生成:− アルギニン・ジヒドロラーゼ:− ウレアーゼ : − aesculin hydrolysis: + ゼラチンの液化 : − β−ガラクトシダーゼ:+ グルコースの資化性: + アラビノースの資化性:+ マンノースの資化性: + マンニトールの資化性:+ N−アセチルグルコサミンの資化性:− マルトースの資化性: + グルコン酸の資化性: + カプロン酸の資化性: − アジピン酸の資化性: + リンゴ酸の資化性 : − クエン酸の資化性 : − フェニルアセテートの資化性:− チトクロム・オキシダーゼ:+
【0018】以上の菌学的諸性質を、Bergey's Manual
of Systematic Bacteriology Vol.2,[P.H.A.Sneath,
N.S.Mair, M.E.Sharpe and J.G.Hol(1986)Williams&Wil
kins]に従って調べたところ、アシドボラックス・デラ
フィルディ(Acidovorax delafieldii)に近縁な新規の
菌株であることが判明した。本発明者らは、本菌をアシ
ドボラックス・エスピー(Acidovorax sp.)BS−4株
と命名した。尚、本菌は工業技術院生命工学工業技術研
究所に受託番号:FERM P−16634として寄託
されている。
【0019】ウ)BS−5株 1.形態学的性質 形 態 : 短桿菌 胞子形成 : − グラム染色性: − 運動性 : +
【0020】2.生理的性質 カタラーゼ : + オキシダーゼ : − O−Fテスト : − 硝酸塩の還元 : + インドールの生成 : − グルコースからの酸生成:− アルギニン・ジヒドロラーゼ:− ウレアーゼ : − aesculin hydrolysis: + ゼラチンの液化 : + β−ガラクトシダーゼ:+ グルコースの資化性: + アラビノースの資化性:+ マンノースの資化性: − マンニトールの資化性:+ N−アセチルグルコサミンの資化性:− マルトースの資化性: + グルコン酸の資化性: + カプロン酸の資化性: − アジピン酸の資化性: + リンゴ酸の資化性 : − クエン酸の資化性 : − フェニルアセテートの資化性:− チトクロム・オキシダーゼ:−
【0021】以上の菌学的諸性質を、Bergey's Manual
of Systematic Bacteriology Vol.2,[P.H.A.Sneath,
N.S.Mair, M.E.Sharpe and J.G.Hol(1986)Williams&Wil
kins]に従って調べたところ、アシドボラックス・デラ
フィルディ(Acidovorax delafieldii)に近縁な新規の
菌株であることが判明した。本発明者らは、本菌をアシ
ドボラックス・エスピー(Acidovorax sp.)BS−5株
と命名した。尚、本菌は工業技術院生命工学工業技術研
究所に受託番号:FERM P−16635として寄託
されている。
【0022】尚、アシドボラックス・デラフィルディの
公知菌株は、運動性:−、オキシダーゼ:+、マルトー
スの資化性:−であるのに対し、BS−3株は運動性:
−、BS−3株及びBS−5株はオキシダーゼ:−、B
S−3株、BS−4株及びBS−5株は共にマルトース
資化性:+であった。
【0023】<2>PBS分解活性を有するエステラー
ゼの製造及びPBSの分解 前記<1>に記載した方法で分離されるエステラーゼ活
性を有する微生物を培地で培養し、その培養物から前記
エステラーゼを採取するまたは培養物から、エステラー
ゼを採取することにより、エステラーゼを製造すること
ができる。ここで培養物とは、前記微生物菌体又は/及
び培養後の培地(培地に液体培地を用いた場合にはその
培養上清)をいう。前記微生物としては、アシドボラッ
クスに属し、エステラーゼを生産する微生物であれば特
に制限されないが、具体的にはアシドボラックス・エス
ピー BS−3株、BS−4株及びBS−5株が好まし
い菌株として挙げることができる。
【0024】エステラーゼ活性を有する微生物の培養
は、炭素源、窒素源、無機塩、各種ビタミン等を含む通
常の栄養培地で行うことができ、炭素源としては、例え
ばPBS等のポリエステル類、ブドウ糖、ショ糖、果
糖、麦芽糖等の糖類、エタノール、メタノール等のアル
コール類、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、マレイン
酸、フマル酸等の有機酸類、廃糖蜜等、好ましくはPB
Sを単独、もしくはその他の炭素源と混合して用いられ
る。窒素源としては、例えばアンモニア、硫酸アンモニ
ウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素等が
それぞれ単独もしくは混合して用いられる。また、無機
塩としては、例えばリン酸一水素カリウム、リン酸二水
素カリウム、硫酸マグネシウム等が用いられる。この他
にペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンステイープ
リカー、カザミノ酸、ビオチン等の各種ビタミン等の栄
養素を培地に添加することができる。更に、鉄、マンガ
ン、モリブデン、タングステン、カルシウム等の金属塩
を培地に添加してもよい。尚、本願記載の3つの菌株で
は、エステラーゼの産生は乳化したPBSで誘導される
ことが確認されており、本発明のエステラーゼの製造
法、及び本発明のPBSの分解方法に用いるアシドボラ
ックス属微生物の培養物の調製においては、使用する培
地にPBSを、好ましくは単独の炭素源として、添加し
ておくことが好ましい。
【0025】培養条件は、通常、通気撹拌、振とう等の
好気条件下に、エステラーゼ活性を有する微生物の生育
し得る温度であれば特に制限はなく、また、培養途中の
pHについても該微生物が生育し得るpHであれば特に
制限はない。培養中のpH調整は、酸またはアルカリを
添加して行うことができる。
【0026】かくして得られる培養物から遠心分離等に
より、エステラーゼ活性を含有する培養液上清、及び微
生物菌体を取得することができる。
【0027】培養液上清、あるいは微生物菌体からエス
テラーゼを抽出、精製する方法は、公知の酵素の精製法
のいずれの方法も適用できる。例えば、培養液上清から
の酵素の分離法としては、硫安沈殿法、限外濾過法等を
用い分離・濃縮でき、粗酵素画分として使用することが
できる。菌体の破壊法としては、超音波破砕、フレンチ
プレス、ホモジナイザー等を用いた機械的破壊法、リゾ
チーム等を用いた酵素的破壊法を用いることができる。
このようにして得られた菌体破壊物の可溶性画分または
その分画物についても、エステラーゼの粗酵素画分とし
て使用することができる。また、これらの粗酵素画分を
更に精製して得られる精製酵素を用いても良い。粗酵素
画分からのエステラーゼの精製は、通常、(イ)沈殿法
による分離、例えば硫安沈殿法、(ロ)クロマトグラフ
ィーによる分離、例えばイオン交換クロマトグラフィ
ー、アフィニティー吸着クロマトグラフィー、ゲル濾過
クロマトグラフィー等、(ハ)電気泳動法による分離
法、及びこれらの方法の任意の組み合わせによって実施
することができる。
【0028】上記の精製過程におけるエステラーゼを含
む画分の検出は、エステラーゼ活性を(Kayらの方法に
従い(International Biodeterioration and Biodegrad
ation, Vol.31, p.209-225 (1993))、パラニトロフェ
ニルアセテートを基質とした加水分解反応により生成す
るパラニトロフェノールを、405nmの吸光度増加と
して測定することにより行うことができる。また、PB
S微粉末の乳化液の濁度(660nm)の低下、あるい
は固形状PBSの重量減少によっても、エステラーゼ活
性を測定することができる。
【0029】上記のようにして得られるエステラーゼ活
性を有する微生物の培養物またはその処理物、あるいは
この微生物菌体または培養物から採取したエステラーゼ
の粗精製画分もしくは精製酵素をPBSに、直接または
PBSを含有する水溶液中で、接触させることにより、
PBSを加水分解することができる。微生物菌体として
は、培養液から分離した菌体はもちろんのこと、菌体の
破砕物もしくは抽出物等も用いることができる。また、
培地として液体培地を用いた場合には、培養液を用いる
こともできる。さらに、微生物菌体、あるいは培養液上
清より得られるエステラーゼの粗酵素標品を用いてもよ
く、更に精製した酵素標品を使用してもよい。更に、上
記微生物菌体、その破砕物もしくは抽出物、または精製
酵素を担体に固定化したものも使用することができる。
【0030】前記のようにして得られるエステラーゼを
生産する微生物菌体を担体に固定化する場合には、培養
物から回収されたまま、あるいは適当な緩衝液、例えば
0.02〜0.2M程度のリン酸緩衝液(pH6〜1
0)等で洗浄された菌体を使用することができる。ま
た、エステラーゼ活性を有する培養液上清、あるいは培
養物から回収された菌体を、超音波、圧搾等の手段で粉
砕して得られる粉砕物、該粉砕物を水等で抽出して得ら
れるエステラーゼを含有する抽出物、培養液上清または
菌体からの抽出物を更に硫安塩析、カラムクロマトグラ
フィー等の処理を行って得られるエステラーゼの部分精
製成分等を担体に固定化したものも、本発明のPBSの
加水分解に使用することができる。
【0031】これら菌体、菌体破砕物、抽出物または精
製物の固定化は、それ自体既知の通常用いられている方
法に従い、アクリルアミドモノマー、アルギン酸、また
はカラギーナン等の適当な担体に固定化させる方法によ
り行うことができる。
【0032】PBSの加水分解反応は、上記菌体もしく
はエステラーゼ等又はこれらを担体に固定化したもの
(以下、「菌体等」という)とPBSを直接接触させる
ことにより、あるいは水溶液中で接触させることにより
行われる。水溶液中で反応を行う場合は、菌体等とPB
Sを水溶液中で混合すればよい。その際、菌体等とPB
Sを水溶液に加える順序は問わない。
【0033】反応に用いる水性溶液は、PBSを含有す
る水溶液または適当な緩衝液、例えば0.02〜0.2
M程度のリン酸緩衝液(pH6〜10)とすることがで
きる。PBSの形態は、固形状ペレット、フィルム、超
音波破砕処理による微粉末等、何れの形態でも用いるこ
とができ、通常はこれらのPBSを水溶液中に分散さ
せ、菌体等を作用させることにより、効率的に加水分解
を進行させることができる。
【0034】上記の水性溶液における酵素反応温度およ
びpHは特に限定されないが、通常10〜60℃、好ま
しくは20〜40℃が適当であり、反応液中のpHは5
〜10、好ましくは6〜8付近とすることができる。ま
た、pHの調整は、酸またはアルカリを添加して行うこ
とができる。
【0035】かくして得られるPBSの加水分解による
分解生成物は、PBS合成のためのリサイクル原料、あ
るいはその他の有用物質を生産するための原料として利
用することもできる。
【0036】
【実施例】以上に本発明を説明してきたが、下記の実施
例により更に具体的に説明する。しかしながら、実施例
は本発明の具体的な認識を得る一助とみなすべきのもの
であり、本発明の範囲を何等限定するものではない。
尚、本実施例に用いたPBSは、市販品(商品名「ビオ
ノーレ」#3020、昭和高分子社製)を使用した。
【0037】
【実施例1】エステラーゼ活性を有する微生物の分離 (1)PBS分解微生物の分離 土壌、コンポスト、活性汚泥等から採取した試料を、培
地A[組成:PBS(分子量約4万、微粉末) 2g、
KH2PO4 0.2g、K2HPO4 1.6g、(NH
4)2SO4 1g、MgSO4・7H2O 0.2g、Na
Cl 0.1g、CaCl2・2H2O 20mg、Fe
SO4・7H2O 10mg、MnSO40.5mg、N
2WO4・2H2O 0.5mg、Na2Mo4・2H2
0.5mg、Plysurf 40ppm、蒸留水
1L(pH7.0)]10mlに投入し、30℃にて4
日間、好気的に振とう培養した。この培養物1mlを新
たな培地A10mlに植え継ぎ、更に4日間培養した。
この集積培養の操作を5回行った後、寒天2%を含む上
記培地Aの組成からなる乳化PBS寒天平板培地に塗抹
し、30℃にて2〜4日培養した。この平板培地上に生
育し、ハローを形成するコロニーを単離した。
【0038】(2)固形PBS分解試験 上記(1)で単離された微生物のうちハロー形成能が高
い菌株を、直径2.5mm、長さ4mmの円筒状のPB
Sペレット 0.2g/Lを唯一炭素源とした前記培地
Aに接種後、30℃にて2週間振とう培養を行い、PB
Sの重量が減少している微生物を、エステラーゼ活性を
有する微生物として選定した。
【0039】上記分離操作、及び固形PBS分解試験に
より、エステラーゼ活性を有するそれぞれ異なる3株、
BS−3,BS−4,BS−5株を取得した。この分離
菌株について、前記の如く更に菌学的諸性質を調べた結
果、アシドボラックス・デラフィルディ(Acidovorax d
elafieldii)に類似しているが、いずれも異なる性質を
有しており、新規菌株であることが判明した。そこで、
取得した3菌株を、アシドボラックス・エスピー(Acid
ovorax sp.)BS−3株、アシドボラックス・エスピー
(Acidovorax sp.)BS−4株、アシドボラックス・エ
スピー(Acidovorax sp.)BS−5株と各々命名した。
【0040】
【実施例2】アシドボラックス・エスピー(Acidovorax
sp.)BS−3株によるエステラーゼの生産 (1)PBS分解活性の検出 PBSとして、直径2.5mm、長さ4mmの円筒状の
PBSペレットを用いた、前記培地A100mlに、実
施例1で単離されたBS−3株を植菌し、30℃にて1
5日間振とう培養した。培養後の培養液1mlを、0.
2重量%の微粉末を乳化させた10mMリン酸ナトリウ
ム緩衝液(pH7.0)に添加後、30℃にて振とう条
件下反応させ、溶液の濁度の減少を660nmにて測定
することによりPBSの分解を検出し、エステラーゼの
存在を確認した。対照系として、培養液無添加系につい
ても同様に濁度を測定した。反応後の濁度の反応前の濁
度に対する相対値を表−1に示した。
【0041】
【表1】
【0042】(2)エステル加水分解活性の検出 上記(1)で得られた培養液を遠心分離(3,000x
g,20分)により上清画分と菌体画分とに分け、各画
分につきエステル加水分解活性を測定した。エステル加
水分解活性は、10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH
7.0、30℃)中にて、パラニトロフェニルアセテー
トを基質とし、1分間加水分解反応させることにより生
成するパラニトロフェノールを405nmの吸光度増加
として検出した。尚、菌体画分については、10mMリ
ン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)により十分洗浄
後、活性測定に供した。エステル加水分解活性は、培養
液1ml量当たりの吸光度増加をエステル加水分解活性
とした。結果は、培養液上清画分の活性値を100とし
た相対値として表−2に示した。
【0043】
【表2】 表−2:BS−3株のエステル加水分解活性 ─────────────────────── 培養液上清画分 菌体画分 対照(無添加) ─────────────────────── 100 26 <0.01 ───────────────────────
【0044】以上より、培養液上清画分と菌体画分の双
方にエステラーゼが存在することが確認された。
【0045】
【実施例3】アシドボラックス・エスピー(Acidovorax
sp.)BS−4株によるエステラーゼの生産 (1)PBS分解活性の検出 前記、実施例2と同様に、BS−4株を培養し、培養液
についてPBSの分活性を測定した。結果を表−3に示
した。
【0046】
【表3】
【0047】(2)エステル加水分解活性の検出 前記、実施例2と同様にして培養液上清画分と菌体画分
とについてエステル加水分解活性を測定した。結果を表
−4に示した。
【0048】
【表4】 表−4:BS−4株のエステル加水分解活性 ─────────────────────── 培養液上清画分 菌体画分 対照(無添加) ─────────────────────── 100 20 <0.01 ───────────────────────
【0049】以上より、培養液上清画分と菌体画分の双
方にエステラーゼが存在することが確認された。
【0050】
【実施例4】アシドボラックス・エスピー(Acidovorax
sp.)BS−5株によるエステラーゼの生産 (1)PBS分解活性の検出 前記、実施例2と同様に、BS−5株を培養し、培養液
についてPBSの分解活性を測定した。結果を表−5に
示した。
【0051】
【表5】
【0052】(2)エステル加水分解活性の検出 前記、実施例2と同様にして培養液上清画分と菌体画分
とについてエステル加水分解活性を測定した。結果を表
−6に示した。
【0053】
【表6】 表−6:BS−5株のエステル加水分解活性 ─────────────────────── 培養液上清画分 菌体画分 対照(無添加) ─────────────────────── 100 22 <0.01 ───────────────────────
【0054】以上より、培養液上清画分と菌体画分の双
方にエステラーゼが存在することが確認された。
【0055】
【実施例5】アシドボラックス・エスピー(Acidovorax
sp.)BS−3株によるエステラーゼの生産、及びPB
S分解の経時変化 PBSとして、直径2.5mm、長さ4mmの円筒状の
PBSペレットを用いた、前記培地A100mlに、実
施例1で単離されたBS−3株を植菌し、30℃にて1
8日間振とう培養した。培養経過に伴い5mlの培養液
を適宜採取し、菌体の生育度、PBSの分解度、エステ
ル加水分解活性につき各々分析した。
【0056】採取した培養液は、5分間静置後、上層液
につき580nmの濁度を測定し、生育菌体量とした。
この時沈降したPBSペレットを回収し、蒸留水にて洗
浄、乾燥後、重量測定することによりPBS分解度(m
g/100ml培養液)とした。エステル加水分解活性
は、PBSペレットを除いた上記上層液について、更に
遠心分離後(3,000xg,20分)、上清液画分、
及び菌体画分とに分離し、各画分について、パラニトロ
フェニルアセテートを基質として測定した。これらの測
定の結果を表−7に示した。
【0057】
【表7】 表−7:BS−3株によるエステラーゼ生産、及びPBSの分解 ─────────────────────────────────── 培養日数 生育量 エステラーゼ活性 PBS減少量 ────────────── (Day) (OD580nm) 培養上清液 菌体画分 (mg/100ml培地) (U/ml) (U/ml) ─────────────────────────────────── 0 0 <0.01 <0.01 0 7 0.11 <0.01 <0.01 4 12 0.18 0.05 0.02 9 14 0.56 0.4 0.08 47 16 0.75 0.3 0.1 75 18 0.92 0.05 0.06 90 ───────────────────────────────────
【0058】
【発明の効果】本発明により、ポリブチレンサクシネー
ト(PBS)を分解する新規エステラーゼ、該エステラ
ーゼ生産微生物、該エステラーゼの製造法、及び該エス
テラーゼを用いたPBSの分解法が提供される。
【0059】本発明のエステラーゼを用いることによ
り、PBSを効率的に分解することができ、プラスチッ
ク廃棄物問題の解決に寄与するとともに、リサイクル
等、資源の有効利用が図れる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C12N 1/20 B09B 3/00 ZABA //(C12N 9/18 C12R 1:19) (C12N 1/20 C12R 1:01)

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アシドボラックス(Acidovorax)属微生
    物に由来する、ポリブチレンサクシネートの加水分解を
    触媒する酵素活性を有するエステラーゼ。
  2. 【請求項2】 アシドボラックス属微生物が、アシドボ
    ラックス・エスピー(Acidovorax sp.)BS−3株、B
    S−4株又はBS−5株から選ばれる請求項1記載のエ
    ステラーゼ。
  3. 【請求項3】 請求項1記載のエステラーゼを生産する
    アシドボラックス・エスピー BS−3株。
  4. 【請求項4】 請求項1記載のエステラーゼを生産する
    アシドボラックス・エスピー BS−4株。
  5. 【請求項5】 請求項1記載のエステラーゼを生産する
    アシドボラックス・エスピー BS−5株。
  6. 【請求項6】 ポリブチレンサクシネートの加水分解を
    触媒する酵素活性を有するエステラーゼを生産するアシ
    ドボラックス属微生物を培地で培養し、その培養物から
    前記エステラーゼを採取することを特徴とするエステラ
    ーゼの製造法。
  7. 【請求項7】 ポリブチレンサクシネートの加水分解を
    触媒する酵素活性を有するエステラーゼを生産するアシ
    ドボラックス属微生物の培養物またはその処理物、ある
    いはこの微生物菌体または培養物から採取したエステラ
    ーゼの粗精製画分もしくは精製酵素をポリブチレンサク
    シネートに、直接またはポリブチレンサクシネートを含
    有する水溶液中で、接触させることを特徴とする、ポリ
    ブチレンサクシネートの分解方法。
  8. 【請求項8】 アシドボラックス属微生物が、アシドボ
    ラックス・エスピー(Acidovorax sp.)BS−3株、B
    S−4株又はBS−5株から選ばれる請求項6記載のエ
    ステラーゼの製造法。
  9. 【請求項9】 アシドボラックス属微生物が、アシドボ
    ラックス・エスピー(Acidovorax sp.)BS−3株、B
    S−4株又はBS−5株から選ばれる請求項7記載のポ
    リブチレンサクシネートの分解方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006008780A (ja) * 2004-06-23 2006-01-12 Mitsubishi Chemicals Corp ポリエステル系樹脂の分解処理方法
WO2006078011A1 (ja) 2005-01-21 2006-07-27 Japan Science And Technology Agency 新規ポリエステル系プラスチック分解菌、ポリエステル系プラスチック分解酵素およびその酵素をコードするポリヌクレオチド。

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JP2006008780A (ja) * 2004-06-23 2006-01-12 Mitsubishi Chemicals Corp ポリエステル系樹脂の分解処理方法
WO2006078011A1 (ja) 2005-01-21 2006-07-27 Japan Science And Technology Agency 新規ポリエステル系プラスチック分解菌、ポリエステル系プラスチック分解酵素およびその酵素をコードするポリヌクレオチド。

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