JP4382893B2 - カルボキシルプロテアーゼ、それを生産する微生物およびカルボキシルプロテアーゼの製造方法 - Google Patents

カルボキシルプロテアーゼ、それを生産する微生物およびカルボキシルプロテアーゼの製造方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なカルボキシルプロテアーゼ、それを生産する微生物および前記カルボキシルプロテアーゼの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
微生物を利用した好気的発酵処理による有機性廃棄物の堆肥化は、農業の現場において古くより行われてきた技術である。この原理を工学的に応用した、高速堆肥化施設やバイオ式生ゴミ処理装置は、現在広く普及している。特に、バイオ式生ゴミ処理装置は、従来の大規模な回収一括集中処理に代わり、有機性廃棄物をその発生場所において速やかに処理するといった個別分散処理を可能にした。この個別分散処理は、有機性廃棄物の回収までの保管場所の衛生改善、回収運搬コストの削減に大きく貢献している。また、微生物を利用した好気的発酵処理は、ランニングコストが低廉で、エネルギー消費量の少ない省資源的な方法であるばかりでなく、発酵処理物を堆肥として土壌に還元することができ、有機性廃棄物の再利用を可能にした。
しかし、微生物を利用した好気的発酵処理法は、有機物の分解反応の主体である微生物が活発に生育可能な環境条件下でのみ機能し得る。したがって、不適当な環境条件下においては、環境条件の調整が必要になる。発酵処理過程で関与する微生物の多くは、中性から弱アルカリ性に生育の至適pHを持ち、酸性環境下では、その増殖活性が低下し、pH4−5以下では、全く増殖を示さなくなるものが多い。このため発酵処理過程で、pHの低下が生じると分解反応速度が低下し、処理過程の大幅な遅延や停止を引き起こすことが知られている(衛生工学研究論文集、20巻、175頁、1984年)。こうした発酵処理過程におけるpHの低下は、主に有機酸などの酸性物質の生成とその蓄積に起因する。この有機酸生成は、急速な分解反応時に、酸素の濃度が低下して嫌気的な状態になると起こりやすく、停電などの不慮の事故により攪拌や切り返し等の操作が停止し、酸素の供給が不足した場合にも同様の現象を起こす。
【0003】
こうした酸性物質を中和するために、有機物処理装置に測定器を用いて発酵物質のpHを測定する機構や、pH値が適正範囲を外れた場合に消石灰などのアルカリ剤を投入する機構が既に提案されている(特開昭55−113688号公報、特開平1−145388号公報)。しかし、処理装置にpHを測定する機構やアルカリ剤を投入する機構を搭載すると、装置が煩雑になりコストも高くなり、ことに装置が小規模であるバイオ式生ゴミ処理装置による個別分散処理に適用することは難しい。また固相反応系である発酵処理物の正確なpH測定は困難であり、アルカリ剤の供給が不足すれば効果が得られないばかりか、過剰のアルカリ剤の供給によりpHが上昇し過ぎて逆に微生物の活性低下を引き起こすなどの問題があった。
また、有機物処理装置の発酵槽内に、水素イオン濃度を中性から弱アルカリ性に保つpH調整剤および有機物を分解する微生物を固定した水分調整剤を充填することで、有機物を高速発酵させる方法が提案されている(特開平7−303871号公報)。しかしこの水分調節剤は作成に1週間以上の日数を要し、製造コストが高くなるという問題があった。
【0004】
有機性廃棄物の発酵処理過程で、pHを低下させる要因は、有機酸の蓄積であるが、逆にpHを高める要因はアンモニアの発生である。良好な発酵処理が進行すると、タンパク質の分解によって生じたアンモニアは、水に溶解し水酸化アンモニウムとなりpHを上昇させる。ある程度pHが上昇すると、アンモニアがアンモニアガスとして揮散するため発酵に障害を与えるほどpHが上昇することはない。したがって、特別な装置を用いることなく、酸性環境下において効果的にタンパク質を分解し、pHを改善することが可能となるシステムの実現、特にそれに適する酵素、さらに好ましくは微生物の提供が求められていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
したがって本発明の目的は、低pH域でも高いタンパク質分解能をもち、直接的ではないにしろアンモニアを生じせしめて、コンポストの低pH環境を改善することができる酵素、並びにかかる酵素を菌体外に効率よく生産する微生物、及び当該微生物を用いたカルボキシルプロテアーゼの製造法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる実情において、本発明者らはその研究途上、偶然にも発酵処理物のpHが4.5付近まで低下しているにもかかわらず活発な分解反応が継続するといった特異的現象を見いだした。そこで、この発酵処理物を分離源として耐酸性微生物を探索したところ、これらの中に、新規カルボキシルプロテアーゼを産生するタンパク質資化性微生物を見いだし、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち本発明は、χ−プロテオバクテリア sp. MB8(χ-Proteobacteria sp. MB8)と命名され、FERM P−16948として受託された微生物から生産され、配列表の配列番号1(N末端フラグメント)および配列番号2(中間部フラグメント )で表されるアミノ酸配列を含む、次の酵素学的性質を有するカルボキシルプロテアーゼMB8を提供するものである。
(1)基質特異性: カゼインおよびヘモグロビンをよく加水分解する。
(2)作用pH及び最適pH: 少なくともpH1.5〜5で作用し、最適pHは約3〜4である。pH5において最大活性値の約5〜15%、pH2において最大活性値の約25〜35%の活性を保持する。
(3)pH安定性: 4℃、12時間の処理条件において少なくともpH3.5〜5.5範囲で安定である。
(4)作用温度及び最適温度: 少なくとも10〜70℃で作用し、最適温度は50〜60℃である。40℃で最適温度における活性の約50〜60%、30℃で最適温度における活性の約25〜35%、70℃で最適温度における活性の約15〜25%の活性を保持する。
(5)温度安定性: pH4.7、10分間の処理条件で少なくとも約40〜50℃まで安定である。
(6)分子量: SDS−PAGEによる見かけの推定分子量は、約61,000±1,000である。
(7)阻害剤: ペプスタチンによっては阻害されない。
また本発明は、χ−プロテオバクテリア sp. MB8(χ-Proteobacteria sp.MB8)と命名され、FERM P−16948として受託された前記のカルボキシルプロテアーゼMB8を生産する微生物を提供するものである。
さらに本発明は、前記の微生物を培地に培養し、その培養物から前記のカルボキシルプロテアーゼMB8を採取することを特徴とする、カルボキシルプロテアーゼMB8の製造法を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のカルボキシルプロテアーゼMB8は、例えばχ−プロテオバクテリア sp. MB8(χ-Proteobacteria sp. MB8)を培養し、その培養物から採取することにより製造される。
【0009】
χ−プロテオバクテリア sp. MB8(χ-Proteobacteria sp. MB8)の分類学的性質を以下に示す。
(a)顕微鏡的観察結果
0.5〜0.8μm ×1.5〜3.5μm の桿菌であり、運動性がある。黄色の色素を産生する。胞子の形成は認められない。
(b)グラム染色性:−
(c)3% KOHによる溶菌:+
(d)アミノペプチダーゼ活性:+
(e)胞子形成能:−
(f)運動性:+
(g)カタラーゼ活性:+
(h)オキシダーゼ活性:+
(i)β−ガラクトシダーゼ活性:−
(j)アルコールデヒドロゲナーゼ活性:−
(k)硝酸からの亜硝酸の生成:+
(l)ウレアーゼ活性:−
(m)ゼラチンの加水分解:−
(n)Tween 80の加水分解:+
(m)esculinの加水分解:−
(o)利用性:
グルコース:+
phenlyacetat:−
アラビノース:−
citrat:−
malat:−
adipat:−
マルトース:+
mannit:−
マンノース:+
N-acetylglucosamin:+
Cellobiose:++
β-hydroxybutyrat:−
L-histidin:−
【0010】
16SrDNAの部分配列は、Stenotrophomonas maltophilia と89.5%の相同性、他のχ-Proteobacteria とは約80−88%の相同性を示した。しかし細胞の脂肪酸組成は明らかに、Stenotrophomonas属のものとは異なっていた。以上の菌学的性質に基づき、ドイツDSMZにより、本菌株は、χ−プロテオバクテリア(χ-Proteobacteria )に属するStenotrophomonas属に近縁の新属新種であると同定された。そこで、本菌株をχ−プロテオバクテリア sp. MB8(χ-Proteobacteria sp. MB8 )と命名し、FERM P−16948として工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託した。受託証を添付する。
【0011】
上記の菌株を用いて、本発明のカルボキシルプロテアーゼMB8を得るには、培地に菌株を接種し、常法に従って培養することでこれを得ることができる。
培養に用いる培地中には、資化しうる炭素源及びタンパク質を適当量含有せしめておくことが望ましいが、タンパク質以外の窒素源を与えると、微生物は生育できるが本発明の酵素の生産は低下する。
この炭素源及び窒素源は特に制限されないが、その例としては、炭素源として例えばグルコースや資化し得る有機酸があげられるが各種のスターチが最も好適である。またタンパク質源としては、カゼイン、大豆粉、肉エキス等の有機窒素源が有効であるが、低分子のペプチドやアミノ酸が豊富に存在する窒素源を供給すると、本発明の酵素の生産は著しく低下する。また、リン酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等の無機塩や、必要であれば、無機、有機微量成分を培地中に適宜添加することができる。
このような培地として、例えば、ACS培地は特に好適に用いることができる。
[ACS培地](Soil Biol. Biochem. 7巻、345頁、1975年をもとに改変)
スターチ:1%、カゼイン:0.3%、NaCl:0.2%、MgSO7HO:0.005%、CaCO:0.002%、FeSO7HO:0.001%、KHPO:0.3%、pH:4.5。
培養温度は、30℃前後が好ましく、培養初発pH4.5付近が好ましい。この条件下において通常3−5日間で培養は完了する。
【0012】
かくして得られた培養液の中から目的の酵素であるカルボキシルプロテアーゼMB8を採取するには、一般の酵素採取の手段に準じて行えばこれを得ることができる。即ち、培養後、遠心分離、濾過等の通常の分離手段により菌体を培養液から除去して粗酵素液を得る。この粗酵素液はそのまま使用することもできるが、必要に応じて、限外濾過、沈澱法等の手段により回収し、適当な方法を用いて粉末化して用いることもできる。この粗酵素液を、更に、酵素精製の一般的手段、例えば適当なイオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー等の組合わせによって精製することもできる。なお、好適な酵素の精製方法は以下の通りである。即ち、pH5.8に調節した粗酵素液をDEAEイオン交換クロマトグラフィに付し、さらにゲル濾過を必要に応じ繰り返すことができる。
【0013】
本発明のカルボキシルプロテアーゼMB8の酵素学的諸性質について以下に説明する。
(酵素活性測定法)
ヘモグロビン1.33%を含むMcllvaine緩衝液(pH3.0)(J. Biol. Chem. 49巻、183頁、1921年)(酸成分:0.1Mクエン酸、塩基成分:0.2MKHPO)0.700mlに、0.250mlの酵素液を加え37℃、10分間反応させた(以降「反応液」と記す)。反応停止液(0.44Mトリクロロ酢酸)1.0mlを加え、30℃、20分間静置した。次に遠心分離(1000G×5分間)し、上清の0.5mlについて、さらに0.44M炭酸ナトリウム2.5mlを加え、1N Folin-Ciocalteu試薬(シグマ社製)0.5mlを加え、37℃で20分間静置後、660nmの吸光度を測定する。上記反応条件下において、1分間に1μgのチロシンに相当する酸可溶性蛋白分解物を(反応液中に)生成する酵素量を1単位(U)とする。
(タンパク量測定法)
クロマトグラフィー操作においては、吸光度(280nm)の測定値を用いた。また各精製ステップにおいて、分取した活性画分においては、Bradford法(Anal. Biochem.、72巻、248頁)により牛血清アルブミン(ナカライテスク社製)を標準タンパク質として測定した。
(酵素学的性質)
(1)作用および基質特異性
McIlvaine緩衝液(pH3.5)中に最終濃度1.0%となるようにヘモグロビン(シグマ社製、Bovine)又は、カゼイン(和光純薬工業社製、ハマルステン氏法)を加え、37℃で10分間酵素反応を行い、活性を測定した。その結果、本酵素は、ヘモグロビンおよびカゼインをよく分解することが分かった。
(2)作用pH及び最適pH
Clark-Lubs緩衝液(pH1−2)(J. Bact.、2巻、191頁、1917年)(酸成分:0.2M HCl、塩基成分:0.2M KCl)およびMcIlvaine緩衝液(pH2−8)中に最終濃度1.0%となるようにヘモグロビン(シグマ社製、Bovine)を加え、37℃で10分間酵素反応を行い、活性を測定した。図1に示したように、少なくともpH1.5〜5で作用し、最適pHは約3〜4である(Clark-Lubs緩衝液は黒丸で、McIlvaine緩衝液は白丸で表した)。pH5において最大活性値の約5〜15%、PH2において最大活性値の約25〜35%の活性を保持する。
(3)pH安定性
Clark-Lubs緩衝液(pH1−2)およびMcIlvaine緩衝液(pH2−8)中に本酵素を加え、4℃で12時間放置した。ヘモグロビンを基質として、pH3.5、37℃の条件下で10分間酵素反応を行い、残存活性を測定した。図2に示したように、4℃、12時間の処理条件において少なくともpH3.5〜5.5の範囲で安定である(Clark-Lubs緩衝液は黒丸で、McIlvaine緩衝液は白丸で表した)。
(4)作用温度及び最適温度
McIlvaine緩衝液(pH3.5)中に最終濃度1.0%となるようにヘモグロビンを加え、各温度で10分間酵素反応を行い、活性を測定した。図3に示したように、少なくとも10〜70℃で作用し、最適温度は50〜60℃である。40℃ で最適温度における活性の約50〜60%、30℃で最適温度における活性の約25〜35%、70℃ で最適温度における活性の約15〜25%の活性を保持する。
(5)温度安定性
本酵素を、20mMクエン酸緩衝液(pH4.7)中で、各温度により10分間放置した後氷冷した。ヘモグロビンを基質として、pH3.5、37℃の条件下で10分間酵素反応を行い、残存活性を測定した。図4に示したように、本酵素はpH4.7、10分間の処理条件で少なくとも約40〜50℃まで安定である。
(6)分子量
Molecular Weight Standards (Low Range) (バイオ ラッド社製、ホスホリラーゼb(97.4kD)、血清アルブミン(66.2kD)、卵白アルブミン(45.0kD)、炭酸脱水素酵素(31.0kD)、トリプシンインヒビター(21.5kD)、リソチーム(14.4kD)を含む)を分子量マーカーとして、10%SDS−PAGEにより測定した推定分子量は、約61,000±1,000である(図5。白丸が本タンパク質)。
(7)阻害剤
ブタペプシン(シグマ社製)を対照区として、カルボキシルプロテアーゼの特異的阻害剤であるペプスタチンに対する感受性を検討した。McIlvaine緩衝液(pH4.0)に本酵素を最終濃度10(μg/ml)となるように添加し、各濃度のペプスタチンを37℃で10分間作用させた。作用後、ヘモグロビンを基質として、pH3.5、37℃の条件下で10分間酵素反応を行い残存活性を測定した。図6に示したように、本酵素はペプスタチンによっては阻害されないことが分かる(白丸が本酵素。黒丸は、従来のカルボキシルプロテアーゼ)。
【0014】
このように、本発明のカルボキシルプロテアーゼMB8は、過去に報告のない新規酵素である。中温性バクテリアの産生するカルボキシルプロテアーゼに関しては、Pseudomonas sp.101(Biochimica et Biophysica Acta、923巻、463頁、1987年。J. Biol. Chem.、269巻、26518頁、1994年)、およびXanthomonas sp.(Agric. Biol. Chem.、51巻、3073頁、1987年。 J. Biochem.、120巻、564頁、1996年)等に報告が見られる。本酵素は、これらPseudomonas sp.101およびXanthomonas sp.が産生する酵素と共にペプスタチン非感受性カルボキシルプロテアーゼの一種と考えられるものの、その起源とする微生物および酵素の分子量に差異を認めることができ、その他の性質を比較しても明らかに本発明の酵素とは異なっている。
【0015】
本発明の微生物は、タンパク質の一連の資化過程をへて、最終的に脱アミノ化反応により、アンモニアを生じることにより、これが結果として生育環境のpHを上昇させる。
【0016】
本発明のカルボキシプロテアーゼMB8は、有機性廃棄物の醗酵処理工程の他に、酸性洗浄剤への配合によりタンパク質汚れの除去、あるいは酸性食料品の製造ライン洗浄剤としても有効に利用することができる。
【0017】
【実施例】
以下、実施例を挙げて更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
本発明者らは、研究途上、偶然にも発酵処理物のpHが4.5付近まで低下しているにもかかわらず活発な分解反応が継続するといった特異的現象を見いだした。そこで、この発酵処理物から本発明の菌株の分離を試みた。
先ず、一次スクリーニングとして、酸性培地(SPYN培地)による選択培養により耐酸性微生物の分離を行った。
[SPYN培地] (J. Gen. Appl. Microbiol. 41巻、175頁、1995年)
Soluble Starch : 1%、Pepton : 0.1%、Yeast extract : 0.01%、Nutrient broth : 0.05%、KNO3 : 0.2%、NaCl : 0.2%、MgSO4 7H20 : 0.005%、CaCl2 2H2O : 0.002%、FeSO4 7H2O : 0.001%、(pH: 4.5)
上記の発酵処理物をSPYN液体培地に添加し、30℃で好気的培養を行い、培養1−7日後に適時SPYN寒天培地を用いて発生した菌株を分離した。得られた菌株は、SPYN寒天培地により画線培養を繰り返し純化した。
次に、プロテアーゼ活性の有無による二次スクリーニングを行った。プロテアーゼ活性を有する菌株をACS寒天培地上で培養すると、コロニーの周辺に透明帯(ハロ)が形成される。この性質を指標とし、タンパク質資化性微生物の分離を行った。得られた分離株について、カルボキシルプロテアーゼ活性を定量したところ、該酵素活性を有していた。このようにして、χ−プロテオバクテリア sp. MB8(χ-Proteobacteria sp. MB8 )株を選抜した。
【0018】
(実施例2)
次に実施例1で得られたχ−プロテオバクテリア sp. MB8株のカルボキシルプロテアーゼの産生、およびタンパク質の分解にともなうpHを改善する効果について検証した。ACS培地により本菌株を30℃で5日間培養し、菌体の生育、培地のpH、およびプロテアーゼ活性を測定した。
[菌体の生育測定法]
菌体の生育は、ATP濃度を測定しその指標とした。ATP濃度の測定は、ATP測定用試薬キット ルシフェールLU(キッコーマン社製)を使用した。
菌体の生育、培地中に分泌されたプロテアーゼ活性、および培地のpH値の経時変化を図7−9に示した。本菌株は、その生長にともない盛んにプロテアーゼを産生していることが分かる。また菌体の生育によってプロテアーゼが産生されるとともに培地のpH値が中性付近にまで増加している。図10に示したように、本発明の微生物の増殖に伴う培地中のプロテアーゼ活性とpH値の関係をプロットしてみると、プロテアーゼが産生されタンパク質の分解が進行すると、結果として明らかにpH値が中性側にシフトしており、本発明の目的に合致していることが示された。
【0019】
(実施例3)
次に本発明により得られる酵素の精製法について説明する。実施例1で得られたχ−プロテオバクテリア sp. MB8株をACS液体培地(pH4.5)に接種し、30℃で4日間培養した。培養後、遠心により菌体を除去した上清に20mMのNaHPOを添加し、pHを5.8に調整した。本粗酵素液を、予め20mMのクエン酸緩衝液(pH5.8)で平衡化したDEAE-Sepharose CL-6B(ファルマシア社製、カラム径1.84cm×長さ15.0cm)に添加し、0−0.4M塩化ナトリウムの濃度勾配により溶出させた(図11)。プロテアーゼ活性の高い画分を分取し、コロジオンバック(ザルトリウス社製)によって濃縮した。濃縮液を、0.2M塩化ナトリウムを含有する20mMのクエン酸緩衝液(pH5.8)で平衡化したBio-Gel P-100(バイオ ラッド社製、カラム径1.7cm×長さ81cm)に添加し、同一の緩衝液により溶出し活性画分を分取した(図12)。以上の操作により、電気泳動的に単一のバンドを示す酵素標品を得た。この結果、本酵素は約13倍まで精製された。精製の各段階を下記の表1の精製表にまとめた。この中で注目されるのは、ACS培地を培養基として得られた粗酵素液の比活性は、649(U/mg)と極めて高い値を示し、この培地が本酵素の生産および精製に適した培地であるという点である。このため本培地の使用は、本酵素の精製を容易にすることを可能にした。
【0020】
【表1】
Figure 0004382893
【0021】
プロテインシークエンサー(Applied Biosystem社製 477A)により本酵素のアミノ酸配列を決定したした結果、本酵素は次のN末端フラグメントおよび中間部フラグメントを含むタンパク質であることが分かった。
【0022】
Figure 0004382893
【0023】
Figure 0004382893
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、低pH域でも高性能のタンパク質分解能をもち、直接的でないにしろアンモニアを生じせしめて、コンポストの低pH環境を改善することができる、酵素並びにかかる酵素を菌体外に効率よく生産する微生物及び当該微生物を用いたカルボキシルプロテアーゼの製造法が提供される。
【0025】
【配列表】
Figure 0004382893
Figure 0004382893

【図面の簡単な説明】
【図1】本発明プロテアーゼMB8のpH特性を示す図である。
【図2】本発明プロテアーゼMB8のpH安定性を示す図である。
【図3】本発明プロテアーゼMB8の温度特性を示す図である。
【図4】本発明プロテアーゼMB8の温度安定性を示す図である。
【図5】本発明プロテアーゼMB8のSDS−PAGEによる推定分子量を示す図である。
【図6】本発明プロテアーゼMB8のペプスタチン感受性を示す図である。
【図7】本発明の微生物の生育曲線を示す図である。
【図8】本発明の微生物のプロテアーゼ産生を示す図である。
【図9】本発明の微生物の増殖にともなう培地pHの変化を示す図である。
【図10】本発明の微生物の増殖にともなう培地pH値とプロテアーゼ産生との関係を示す図である。
【図11】本発明の酵素の精製過程における、イオン交換クロマトグラム(DEAE-Sepharose CL-6B)を示す図である。
【図12】本発明の酵素の精製過程における、ゲル濾過クロマトグラム(Bio-Gel P100)を示す図である。

Claims (3)

  1. χ−プロテオバクテリア sp. MB8(χ-Proteobacteria sp. MB8)と命名され、FERM P−16948として受託された微生物から生産され、配列表の配列番号1(N末端フラグメント)および配列番号2(中間部フラグメント )で表されるアミノ酸配列を含む、次の酵素学的性質を有するカルボキシルプロテアーゼMB8。
    (1)基質特異性: カゼインおよびヘモグロビンをよく加水分解する。
    (2)作用pH及び最適pH: 少なくともpH1.5〜5で作用し、最適pHは約3〜4である。pH5において最大活性値の約5〜15%、pH2において最大活性値の約25〜35%の活性を保持する。
    (3)pH安定性: 4℃、12時間の処理条件において少なくともpH3.5〜5.5の範囲で安定である。
    (4)作用温度及び最適温度: 少なくとも10〜70℃で作用し、最適温度は50〜60℃である。40℃ で最適温度における活性の約50〜60%、30℃で最適温度における活性の約25〜35%、70℃ で最適温度における活性の約15〜25%の活性を保持する。
    (5)温度安定性: pH4.7、10分間の処理条件で少なくとも約40〜50℃まで安定である。
    (6)分子量: SDS−PAGEによる見かけの推定分子量は、約61,000±1,000である。
    (7)阻害剤: ペプスタチンによっては阻害されない。
  2. χ−プロテオバクテリア sp. MB8(χ-Proteobacteria sp. MB8)と命名され、FERM P−16948として受託された請求項1に記載のカルボキシルプロテアーゼMB8を生産する微生物。
  3. 請求項記載の微生物を培地に培養し、その培養物から請求項1に記載のカルボキシルプロテアーゼMB8を採取することを特徴とする、カルボキシルプロテアーゼMB8の製造法。
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