JPH11219911A - 微結晶シリコン膜の作製方法 - Google Patents

微結晶シリコン膜の作製方法

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JPH11219911A
JPH11219911A JP10302643A JP30264398A JPH11219911A JP H11219911 A JPH11219911 A JP H11219911A JP 10302643 A JP10302643 A JP 10302643A JP 30264398 A JP30264398 A JP 30264398A JP H11219911 A JPH11219911 A JP H11219911A
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silicon film
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crystal silicon
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舜平 山崎
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 プラズマCVD法により、高い成膜速度でも
って良質な微結晶シリコン膜を成膜する技術を提供す
る。 【解決手段】 容量結合型のプラズマCVD装置におい
て、珪素の結晶化を助長する金属元素を導入できるソー
スガスと珪化物気体と水素ガスとを用いて、微結晶珪素
膜を基板上に成膜する。この際、珪素の結晶化を助長す
る金属元素の作用により、高い成膜速度を得ることがで
きる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本明細書で開示する発明は、太陽
電池や薄膜トランジスタの構成材料に用いられる微結晶
シリコン膜、および微結晶シリコン膜の作製方法に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、非晶質シリコンと結晶シリコ
ンとの中間的な性質を示す材料として微結晶シリコンが
知られている。微結晶シリコンの作製方法は、例えば特
公平3−8102号公報や特開昭57−67020号公
報に示されているように、シランガスと水素ガスを用
い、この混合ガスをグロ─放電分解し、基板上に微結晶
シリコン膜を堆積させるプラズマCVD法が知られてい
る。この方法で微結晶シリコン膜を作製するには、被膜
が形成される反応空間に供給される前記混合ガスのシラ
ンガスに対する水素ガスの割合をを数十から数百倍にす
るとともに、高密度の電力を投入してグロー放電を発生
させることに特徴がある。またこの時、価電子制御を目
的として前記混合ガス中にジボランやフォスフィン等の
ガスを添加すると、ド─ピングが効率良く行われ、非晶
質シリコンでは実現できない高い電気伝導度を得ること
が可能となる。従って、微結晶シリコン膜は太陽電池や
薄膜トランジスタを構成するP型やN型に価電子制御さ
れたドープ層にしばしば適用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】微結晶シリコン膜の作
製においては、原料のシランガスが希釈されているの
で、成膜速度はシランガスの供給量でほぼ決まり、非晶
質シリコン膜の成膜速度に比べ低下してしまう。その成
膜速度は、およそ0.01nm/secから0.1nm
/secの範囲である。この範囲以下の成膜速度では実
用的でなく、またこれ以上の成膜速度では微結晶シリコ
ン膜は形成されない。
【0004】成膜速度を速くするには、シランガスの濃
度を高めたり、投入放電電力を高めたりする技術が考え
られる。しかし、微結晶シリコン膜が形成される条件は
範囲が限られており、その条件から外れると形成される
膜の結晶粒径は小さくなってしまう。また、結晶密度が
低下して良質な微結晶シリコン膜を得ることが出来なく
なってしまう。
【0005】また、微結晶シリコン膜は成膜時にジボラ
ンやポスフィン等のド─ピングガスを同時に添加するこ
とで、価電子制御が可能となりP型やN型の導電性の膜
を得ることができるが、これらド─ピングガスの内、特
にジボランを添加した場合には、微結晶化がなされにく
いという経験的な事実がある。
【0006】微結晶シリコン膜はしばしば太陽電池のP
型層やN型層として応用されているが、通常その厚さは
光吸収損失を低減させる目的から、10nmから厚くて
も50nm程度とされていた。しかし、このような膜厚
の場合、微結晶シリコン膜は下地の材料との相互作用に
より、微結晶化が十分成されないことが問題となる。
【0007】例えば、PIN接合を有する太陽電池を作
製する場合には、I型の非晶質シリコン膜上に10nm
程度のP型層を堆積して、いわゆるヘテロ接合を形成す
るわけであるが、非晶質膜上に微結晶の膜を堆積する
と、格子歪みが発生し、堆積初期段階の領域は十分に微
結晶化せず非晶質成分が支配的となってしまう。従っ
て、従来技術によって作製さた太陽電池の微結晶シリコ
ン層は必ずしも十分な特性を有してはいなかった。
【0008】また、PIN接合のすべてを微結晶シリコ
ンで作製する太陽電池も作製可能ではあるが、微結晶シ
リコン膜の光学的特性との関係から、I型層の膜厚は少
なくとも1000nm程度好ましくはそれ以上必要とさ
れる。しかし、そもそも微結晶シリコン膜の成膜速度が
遅いのでこのような構成は実用的ではない。例えば、微
結晶シリコン膜の代表的な成膜速度である0.03nm
/secの成膜条件を使用した場合、1000nmの厚
さの膜を堆積するためには9時間以上の時間が必要とな
ってしまいその実用性は大きく低下する。
【0009】従って、上記の課題を解決するために、本
明細書で開示する発明では、結晶性の優れた良質な微結
晶シリコン膜を作製すると共に、微結晶シリコン膜の成
膜速度の向上を課題とる。また、本明細書で開示する発
明では、太陽電池のP型層やN型層、または薄膜トラン
ジスタ等の薄膜素子において結晶性の良好な微結晶シリ
コン膜を作製することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本明細書で開示する発明
は、上記課題を解決するための手段として、従来のプラ
ズマCVD法を用い、従来以上の良質な微結晶シリコン
膜を作製する為に、膜の微結晶化を促進させる手段とし
て、成膜時に珪素の結晶化を助長する金属元素を添加す
る。
【0011】上記金属元素としては、Fe、Co、N
i、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Au
から選ばれた一種または複数種類の元素を利用すること
ができる。特にNiを利用することはその効果の高さと
再現性の高さとから非常に好ましいものとなる。
【0012】上記の金属元素を利用することにより、微
結晶化が容易に進行し、さらに成膜速度を向上させるこ
とができる。その結果、10nm程度の薄膜においても
結晶性の優れた良質な微結晶シリコン膜を得ることがで
きる。
【0013】金属元素としてニッケルを利用する場合、
ニッケルを主成分とする化合物の気体を従来のプラズマ
CVD法の技術を使用して、原料ガス中に同時に添加す
ることで、堆積される膜中に添加する。その濃度は5×
1016cm-3〜5×1019cm-3の濃度が適当である。
この濃度範囲よりも少ない場合は、顕著な効果は観測さ
れず、また多い場合には膜の特性はかえって悪化する。
【0014】また、ニッケルを添加するための、他の方
法としては、やはり同様に従来のプラズマCVD法を基
本として、さらにグロ─放電が形成される空間にニッケ
ル等の金属元素によるフィラメントを設け、成膜中に高
温に加熱することで、膜中に添加することも可能であ
る。
【0015】本明細書で開示する発明は、一般に称され
る太陽電池のみではなく、原理的には同様な機能を有す
る光電変換装置、即ち、光を電気エネルギーに変換する
機能を有する光センサー等の光電変換装置に利用するこ
とができる。
【0016】
【作用】微結晶シリコン膜をプラズマCVD法で堆積す
る時、反応ガス中にシリコンの微結晶化を促進する金属
元素を同時に添加することにより、当該金属元素が結晶
成長の核となり、当該金属元素が添加されない場合に比
べ微結晶化が容易に進行する。さらに微結晶化は堆積さ
れた膜の初期の極めて薄い段階から起こる。そして金属
元素が結晶成長の核となることにより、微結晶シリコン
膜の成膜速度を速くすることが容易となる。
【0017】結晶性が向上することは、膜の電気的特性
に対し、例えばP型やN型に価電子制御された膜では、
ドーピングが効果的になされ、従来よりも低抵抗の膜の
作製が可能となる。さらに従来の膜と同程度の電気的特
性がより薄い膜厚で実現できる。
【0018】さらにこのような特徴は、太陽電池のP型
層やN型層として使用される微結晶シリコン膜に対して
効果的に作用する。通常これらのド─プ層は10nmか
らせいぜい50nmの厚さで形成されるが、このような
厚さでは従来十分結晶化しなかったのに対し、本明細書
で開示する発明の方法に従えば、結晶性が大きく改善さ
れる。このような効果により、太陽電池の光入射側に形
成されるP型またはN型の微結晶シリコン層に対しては
その厚さを十分薄くすることが可能となる。
【0019】
【実施例】〔実施例1〕本実施例は、微結晶シリコン膜
をガラス基板上に作製する例について示す。ここでは微
結晶シリコン膜を作製するための装置として、図1に示
す従来から良く知られた容量結合型のプラズマCVD装
置を利用する。
【0020】なお微結晶シリコン膜を作製するための装
置としては、誘導結合型の装置やマイクロ波CVD装置
やECR−CVD装置を用いることも可能である。
【0021】図1に示すプラズマCVD装置は反応室1
01、真空排気手段102、ガス供給手段103、珪素
の結晶化を助長する金属元素の供給源108、グロー放
電発生手段104(高周波電源)、基板加熱手段105
(ヒーター電源)が設けられている。基板106はグロ
─放電発生手段104のアノ─ド電極側に設置され、基
板加熱手段105により室温から300℃の温度に加熱
される。
【0022】グロー放電発生手段104(高周波電源)
から供給される電力は、通常13.56MHzの高周波が利
用される。しかし、さらに高い周波数を利用するのでも
よい。
【0023】微結晶シリコン膜の作製に用いるガスは、
シランガスと水素ガスと金属元素となるニッケルのソー
スガスとを混合したものを用いる。ニッケルのソースガ
スとしては、ビスメチルシクロベンタジェニルニッケル
(以下Bis−Niと記す)を用いる。また、シランガ
スの替わりにジシランガスや四フッ化シリコンガス等を
用いることも可能である。さらに、ジボランやフォスフ
ィンを添加することでP型やN型の微結晶シリコン膜を
作製することも可能である。
【0024】微結晶シリコン膜の作製は、プラズマCV
D法で通常行われるプロセスが適用可能であり、真空排
気、基板加熱、原料ガスの供給、グロー放電の発生とい
った工程により行われる。
【0025】Bis−Niは専用の容器に入れられ、反
応室に供給するために温度を約40℃に加熱する。この
時Bis−Niの飽和蒸気圧は約0.05mmHgであ
る。またBis−Niの反応室への供給量を制御するた
めに、キャリアガスに水素を用いる。この水素は、前記
容器中の圧力を2kgf/cm2 として、マスフローコ
ントローラーを介して反応室へ供給する。
【0026】膜を堆積する基板にはコ─ニング社の#7
059ガラス基板を用いる。基板106は接地されたア
ノード電極にセットする。成膜時の基板温度は80℃〜
300℃の範囲で行う。この基板温度は、好ましくは1
00℃〜160℃とする。
【0027】なお、基板の加熱温度を100℃程度また
はそれ以下とすると、基板としてPETフィルムに代表
される樹脂材料を用いることができる。即ち、樹脂材料
上に本明細書で開示する微結晶シリコン膜を成膜するこ
とができる。
【0028】反応ガスは純水素ガスを100SCCM、
Bis−Niの蒸気が混合された水素ガスを100SC
CM、シランガスを5SCCM導入し、反応空間におけ
る圧力を0.1Torrに保持する。
【0029】P型やN型へのドーピングはシランガスに
対して0.2〜5%の割合でジボランガスやフォスフィ
ンガスを添加することで行うことができる。放電は通常
用いられる13.56MHzの高周波電源を用い、50
Wの電力を投入して行う。
【0030】放電は90分間行うことにより、500n
mの厚さの膜が得られる。従って、成膜速度は0.12
nm/secとなる。これは従来の2倍から5倍の速度
であっる。
【0031】以上のようにして、微結晶シリコン膜が作
製される。得られた膜の結晶性についてはラマン分光法
により調べると、結晶シリコンによる520cm-1のピ
ークと、非晶質シリコンに起因する480cm-1のピー
クの2つが観測され、この膜が微結晶シリコンであるこ
とが確認される。
【0032】結晶性の良さはこの2つのピーク強度比を
とることにより比較することができる。本方法で得られ
た膜は10:1の強度比が得られる。なお比較の為に測
定した従来の成膜法で得られた強度比は2:1から良く
ても7:1程度である。
【0033】また膜中に取り込まれたニッケルの濃度を
2次イオン質量分析法により測定すると、膜の厚さ方向
に対して8×1017cm-3のニッケルが含有していること
が観測された。
【0034】膜中に含まれるニッケルの濃度は5×10
16cm-3〜5×1019cm-3が好ましい。即ち、この範
囲以上の濃度では膜の微結晶性はかえって悪化する。ま
たこれ以下の濃度ではニッケル添加による効果は観測さ
れなかい。またその効果が顕著に小さいものとなる。
【0035】またこのときニッケルのガスソースに含ま
れる炭素の存在も確認されるが、その濃度は6×1018
cm-3である。これは、なにも添加されていない従来の微
結晶シリコン膜の2倍程度の値であり、膜の特性を損な
う濃度レベルではない。
【0036】本実施例では微結晶シリコン膜をガラス基
板上に作製した例について示したが、このガラス基板上
に形成される微結晶シリコン膜は、太陽電池や薄膜トラ
ンジスタ等の薄膜素子に適用することが可能である。
【0037】〔実施例2〕本実施例は、微結晶シリコン
膜の形成に際し、プラズマCVD法で成膜時にニッケル
を添加するためにニッケルフィラメントを用いた例につ
いて示す。この装置の構成を図2に示す。
【0038】図2に示すのは、従来の容量結合型のプラ
ズマCVD装置のアノードとカソードの2つの電極間に
ニッケルフィラメントを設け、成膜時に電流を流し加熱
させて微量のニッケルの蒸気を放出させるものである。
【0039】図2において、反応室201はロ─タリ─
ポンプ、タ─ボ分子ポンプを併用した排気手段202に
より真空排気される。ガラス基板206は基板加熱手段
205により加熱される。微結晶シリコン膜の作製にお
いて基板温度は80℃〜300℃の範囲で作製可能であ
るが、本実施例では120℃とする。
【0040】また水素ガスをガス導入手段203により
反応室201に導入し、排気手段202に設けられたコ
ンダクタンスバルブにより反応圧力を0.01Torr
から10Torrの範囲で制御する。本実施例では代表
的な値として1.0Torrとした。その状態でニッケ
ルフィラメント207に電流を流し加熱する。ニッケル
フィラメントは太さ1mmのものを用いる。
【0041】ニッケルフィラメントの温度は電流により
制御し、色温度計を用いて温度測定をする。ニッケルフ
ィラメントの温度は、ニッケルの融点が1455℃であ
ることからそれ以下の温度が望ましく、700℃から1
400℃の範囲で制御する。但し、温度が低い場合には
ニッケルフィラメントの表面に膜の堆積が起こり、長時
間の使用は困難となる。フィラメントの温度が1300
℃以上の場合にはやはり膜の堆積は起こるもののその傾
向は穏やかなものとなる。
【0042】このことから、ニッケルフィラメントの温
度は1350℃程度が妥当であると判断される。この状
態でシランガスを導入し、放電発生手段205によりグ
ロ─放電を発生させ膜の堆積を行う。ガスの流量はシラ
ンガスが5SCCMであり、水素ガスを200SCCM
として1.0Torrの圧力に制御する。放電電力は5
0Wの電力を投入する。成膜時間は90分であり、50
0nmの厚さの膜が堆積される。
【0043】以上のようにして、微結晶シリコン膜が作
製される。この微結晶シリコン膜の結晶性について、ラ
マン分光法により調べところ結晶シリコンによる520
cm -1のピ─クと、非晶質シリコンに起因する480c
-1の─クの2つが観測される。結晶性の良さは相対的
にこの2つのピーク強度比をとることにより比較するこ
とができる。ここでは、この2つのピーク強度比は1
0:1程度得られる。
【0044】比較のために測定した従来の成膜法で得ら
れた微結晶シリコン膜では、その強度比は2:1から良
くても7:1程度となる。
【0045】また膜中に取り込まれたニッケルの濃度を
2次イオン質量分析法により測定しすると、膜の厚さ方
向に対して8×1017cm-3のニッケルの濃度が観測され
る。膜中に含まれるニッケルの濃度は5×1016cm-3
〜5×1019cm-3が好ましく、この範囲以上の濃度で
は膜の微結晶性はかえって悪化し、またこれ以下の濃度
ではニッケル添加による効果が低いものとなる。
【0046】ここでは、微結晶シリコン膜をガラス基板
上に作製した例について示したが、この技術はその他の
応用として太陽電池や薄膜トランジスタ等の薄膜素子に
適用することが可能である。
【0047】〔実施例3〕本実施例では、微結晶シリコ
ン膜を薄膜トランジスタに応用した例について示す。本
実施例ではトップゲート型の構造について示すが、ボト
ムゲート型の構造においても当然適用できるものであ
る。
【0048】本実施例では薄膜トランジスタを作製する
基板301には安価なソーダガラスを用いる。このガラ
ス基板上に公知のプラズマCVD法でI型の非晶質シリ
コン膜302を200nmの厚さに形成する。そしてフ
ォトリソグラフィ─の技術を用いてアイランド状に形成
する。
【0049】次に実施例1に示す方法を利用して、N型
の微結晶シリコン膜を全面に形成する。微結晶シリコン
膜の作製に用いたガスはシランガスと水素ガスと触媒元
素となるニッケルのソースガスとを混合したものであ
る。
【0050】ニッケルのソースガスは、ビスメチルシク
ロベンタジェニルニッケル(以下Bis−Niと記す)
を用いる。また、シランガスの替わりにジシランガスや
四フッ化シリコンガス等を用いることも可能である。さ
らにフォスフィンをシランに対して1%添加しN型にド
─ピングする。
【0051】Bis−Niは専用の容器に入れられ、反
応室に供給するために温度を約40℃に加熱する。この
ときBis−Niの飽和蒸気圧は約0.05mmHgと
なる。Bis−Niの反応室への供給量を制御するた
に、キャリアガスに水素を用いる。
【0052】成膜時の基板温度は80℃〜300℃の範
囲で制御する。この基板温度は、好ましくは100℃〜
160℃とする。使用した反応ガスの供給量は純水素ガ
スを100SCCM、Bis−Niの蒸気が混合された
水素ガスを100SCCM、1%のフォスフィンが添加
されたシランガスを5SCCM導入する。反応圧力は、
0.1Torrとする。
【0053】放電は通常用いられる13.56MHzの
高周波電源を用い、50Wの電力を投入して行う。堆積
する膜の厚さは50nmとする。そしてフォトリソグラ
フィーの技術を用いソース領域303、ドレイン領域3
04を残すようにパターニングを行う。
【0054】次にゲイト絶縁膜305として酸化シリコ
ン膜をスパッタリング法により100nmの厚さに堆積
する。スパッタリングにはタ─ゲットとして純度99.
99%の酸化シリコンを用い、スパッタリング時の基板
温度は80〜300℃、例えば150℃とする。
【0055】スパッタリング雰囲気は酸素とアルゴン
で、アルゴン/酸素=0〜0.5、例えば0.1以下と
する。そしてソース、ドレイン領域にそれぞれコンタク
トホ─ルを形成し、ゲイト電極306、ソース電極30
7、ドレイン電極308を金属材料、例えばAlや窒化
チタンとAlの多層膜により形成し、薄膜トランジスタ
を完成させる。
【0056】〔実施例4〕本実施例は、微結晶シリコン
膜をPIN接合を有する太陽電池に応用した例について
示す。太陽電池の断面構造を図4に示す。太陽電池は、
基板401上に金属電極402、N型微結晶シリコン層
403、真性または実質的に真性な非晶質シリコン層4
04、P型微結晶シリコン層405、透明電極406が
積層された構造となっている。基板401はソーダガラ
スやその他の材料としてステンレス等の金属板やプラス
チックフィルム等も適用できる。裏面電極402はアル
ミニウムや銀等の金属が好ましく、3000Åの厚さに
形成する。
【0057】さらにこのような金属上にクロムやステン
レス、または酸化亜鉛等の金属が数nmの厚さで形成さ
れているとさらに良好な特性が得られる。
【0058】PIN層は従来のプラズマCVD装置を用
いて作製する。PIN層は金属電極側からN型微結晶シ
リコン、I型非晶質シリコン、P型微結晶シリコンの順
で堆積する。それぞれの層の厚さは30nm、500n
m、10nmする。しかし、これらの膜厚は特に限定さ
れるものではない。微結晶シリコン膜の成膜にあたって
は微結晶化を促進するための触媒元素としてニッケルを
ガス中に添加する。ニッケルを効果的に添加するために
ビスメチルシクロベンタジェニルニッケル(以下Bic
−Niと記す)を用いる。
【0059】Bis−Niは専用の容器に入れられ、反
応室に供給するために温度を約40℃に加熱する。この
ときBis−Niの飽和蒸気圧は約0.05mmHgで
ある。Bis−Niの反応室への供給量を制御するた
に、キャリアガスに水素を用いる。前記容器中の水素の
圧力を2kgf/cm2 として、マスフローコントロー
ラーを介して反応室へ供給する。
【0060】成膜時の基板温度は80℃〜300℃の範
囲で行う。この基板温度は、好ましくは100℃〜16
0℃とする。使用する反応ガスの供給量は純水素ガスを
100SCCM、Bis−Niの蒸気が混合された水素
ガスを100SCCMとし、P型層の場合にはジボラン
ガス、またN型層の場合にはフォスフィンガスを1%添
加したシランガスを5SCCM導入し1.0Torrの
圧力に保持して行う。
【0061】放電は通常用いられる13.56MHzの
高周波電源を用い、50Wの電力を投入して行う。ま
た、I型の非晶質シリコン層は純シランガスを用い1.
0Torr、20Wの条件で堆積する。最後に光入射側
の透明電極を公知のスパッタリング法を用いITO膜を
60nmの厚さに成膜して太陽電池とする。
【0062】このようにして得られる、本明細書で開示
する微結晶シリコン膜を用いた太陽電池は、同じ構造で
作製した従来の太陽電池と比較して開放電圧が向上す
る。
【0063】例えば従来の太陽電池の開放電圧は0.8
6Vであったのに対し、本実施例の太陽電池では0.9
3Vが得られる。その結果従来に比べ変換効率が約8%
向上する。
【0064】〔実施例5〕本実施例は、本明細書に開示
する微結晶シリコン膜をPIN接合を有する太陽電池に
応用した例について示す。太陽電池の断面構造を図4に
示す。太陽電池は、基板401上に金属電極402、N
型微結晶シリコン層403、真性微結晶シリコン層40
4、P型微結晶シリコン層405、透明電極406が積
層された構造となっている。基板401はソ─ダガラス
やその他の材料としてステンレス等の金属板やプラスチ
ックフィルム等も適用できる。
【0065】裏面電極402はアルミニウムや銀等の金
属が好ましく、3000Åの厚さに形成する。さらにこ
のような金属上にクロムやステンレス、または酸化亜鉛
等の金属が数nmの厚さで形成されているとさらに良好
な特性が得られた。
【0066】PIN層は従来のプラズマCVD装置を用
いて作製する。PIN層は金属電極側からN型微結晶シ
リコン、I型微結晶シリコン、P型微結晶シリコンの順
で堆積する。それぞれの層の厚さは30nm、1000
nm、10nmとする。なお、これらの膜厚は特に限定
されるものではない。
【0067】微結晶シリコン膜の成膜にあたっては微結
晶化を促進するための金属元素としてニッケルをガス中
に添加する。ニッケルを効果的に添加するためにビスメ
チルシクロベンタジェニルニッケル(以下Bic−Ni
と記す)を用いる。
【0068】Bis−Niは専用の容器に入れられ、反
応室に供給するために温度を約40℃に加熱する。この
時Bis−Niの飽和蒸気圧は約0.05mmHgとす
る。Bis−Niの反応室への供給量を制御するため
に、キャリアガスに水素を用いる。成膜時の基板温度は
80℃〜300℃の範囲で行うが、好ましくは100℃
〜160℃とする。使用した反応ガスの供給量は純水素
ガスを100SCCM、Bis−Niの蒸気が混合され
た水素ガスを100SCCMとし、P型層の場合にはジ
ボランガス、またN型層の場合にはフォスフィンガスを
1%の添加したシランガスを5SCCM導入する。また
反応圧力は1.0Torrとする。
【0069】放電は通常用いられる13.56MHzの
高周波電源を用い、50Wの電力を投入して行う。この
ときの成膜速度は0.12nm/secとなる。これは
従来の成膜法に比べ約3.5倍となる。このように本明
細書に開示する発明を利用すると、プロセスのスル─プ
ットが大幅に向上させることができる。最後に光入射側
の透明電極を公知のスパッタリング法を用いITO膜を
60nmの厚さに成膜して太陽電池とする。
【0070】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本明細
書に開示する発明によれば、微結晶シリコン膜をプラズ
マCVD法で堆積させる時、反応ガス中にシリコンの微
結晶化を促進させる金属元素を同時に添加させることに
より、金属元素が結晶成長の核となり、この金属元素が
添加されない場合に比べ微結晶シリコン膜を容易に作製
することができる。
【0071】即ち、金属元素が微結晶の成長の核となる
ことにより、従来の成膜法とくらべ、成膜速度を速くす
ることが可能となる。また、触媒元素が微結晶の成長の
核となることにより、膜堆積時の最初から微結晶化がな
され、10nm程度の薄膜においても良質な微結晶膜が
得られる。
【0072】微結晶性が向上することにより、微結晶シ
リコン膜の電気的特性が向上し、P型やN型に価電子制
御された膜に対し、ド─ピングが効果的に行われ、従来
よりも低抵抗の膜を得ることができる。
【0073】このような特徴は、太陽電池や薄膜トラン
ジスタのP型層やN型層に使用することによって、素子
の特性を向上させることができる。例えば、PIN接合
を有する太陽電池の光入射側の層では、その厚さを10
nm程度とするが、従来の技術では十分結晶化せず、開
放電圧の低下させたことに対し、本明細書で開示する発
明の微結晶シリコン膜を用いることで、微結晶性が改善
され、開放電圧が向上する。このような効果により、太
陽電池の光入射側に形成される窓層の厚さを十分薄くす
ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で用いたプラズマCVD装置を示す図
【図2】実施例2で用いたプラズマCVD装置を示す図
【図3】実施例3で作製した薄膜トランジスタの断面構
造を示す図
【図4】実施例4、実施例5で作製した太陽電池の断面
構造を示す図
【符号の説明】
101、201・・・反応室 102、202・・・排気手段 103、203・・・ガス供給手段 104、204・・・放電発生手段 105、205・・・基板加熱手段 106、206・・・基板 108・・・・・・・触媒元素供給源 207・・・・・・・ニッケルフィラメント及び加熱手
段 301・・・・・・・基板 302・・・・・・・非晶質シリコン層 303・・・・・・・ソ─ス領域 304・・・・・・・ドレイン領域 305・・・・・・・ゲ─ト絶縁膜 306・・・・・・・ゲ─ト電極 307・・・・・・・ソ─ス電極 308・・・・・・・ドレイン電極 401・・・・・・・基板 402・・・・・・・金属電極 403・・・・・・・N型半導体層 404・・・・・・・真性半導体層 405・・・・・・・P型半導体層 406・・・・・・・透明電極

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】反応室にシリコンを含む反応ガスとシリコ
    ンの結晶化を助長する金属元素が含まれた気体を導入し
    て、プラズマCVD法によって微結晶シリコン膜を形成
    する工程を有することを特徴とする微結晶シリコン膜の
    作製方法。
  2. 【請求項2】反応室にシリコンを含む反応ガスとシリコ
    ンの結晶化を助長する金属元素が含まれた気体を導入し
    て、プラズマCVD法によって微結晶シリコン膜を形成
    する工程を有し、 前記微結晶シリコン膜はラマン分光法により520cm
    -1と480cm-1の2つのピークを示すことを特徴とす
    る微結晶シリコン膜の作製方法。
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